説明

樹脂組成物及びこれを用いた膜状光学部材

【課題】透明、高屈折率でかつ膜状の光学部材を形成することが可能な樹脂組成物、及びこれを用いた光学部材を提供する。
【解決手段】(A)含金属高屈折中間体と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ及び/又は(C)反応性モノマとを含有する樹脂組成物であって、前記(A)含金属高屈折中間体の成分が、チタンアルコキシド、多価アルコール、水、アミノアルコール、及び(D)溶媒を用いて合成される樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物、及びこれを用いた膜状光学部材に関する。さらに、詳しくは、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、液晶ディスプレイ用部材、プラズマディスプレイ用部材、プリズムシート、ディフューザ、光散乱フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム、偏光子、太陽電池用集光フィルムなどに代表される膜状光学部材、及びその作製に用いる樹脂組成物(樹脂材料)に関し、特に、高い屈折率を有する膜状光学部材、及びその樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量でかつ加工性に富み、各種の光学部材として好適な樹脂材料として、1.6〜2.2程度の高い屈折率を有する透明樹脂材料(以下、適宜、高屈折性樹脂材料という)が要求されている。
従来技術における高屈折率樹脂材料は、ポリチオール化合物とポリイソシアネート化合物から得られるチオウレタン(例えば、特許文献1参照。)、エポキシ樹脂又はエピスルフィド樹脂から得られる重合体(例えば、特許文献2参照。)などが挙げられるが、これらイオウ系の高屈折樹脂材料は、屈折率の限界が1.72程度であるのに加え、硬化前の臭気が激しく、工程上の制約を受ける。また、ベンゼン環に臭素を導入したポリマが既に市販化されているが、その屈折率は1.6程度である。
【0003】
また、樹脂中に酸化チタンや酸化亜鉛などの高屈折率金属酸化物微粒子を分散させる技術が提案されているが(例えば、特許文献3参照)、光散乱を引き起こさないようにこれらの微粒子を分散させるのは極めて難しい。また、チタンアルコキシドのゾルゲル反応を樹脂マトリクス中で行う有機−無機ハイブリッド系も多々報告されているが(例えば、特許文献4や特許文献5参照)、光学用途としては、光散乱を引き起こしてしまうため実用化には至っていない。
また、本発明と比較的近いものとして、例えば、特許文献6や特許文献7が挙げられるが、特許文献6の発明では、粘度が低すぎて1〜1000μm程度の厚膜を形成することはできない。また、特許文献7にある有機・無機ポリマ複合体及びその製造方法では、反応性の高い金属アルコキシドを用いる場合、その反応性制御と均一分散が困難である。例えば、チタンアルコキシドのゾルゲル反応は、非常に反応性が高いため、酸化チタン粒子が光を散乱させる程度以上の粒子サイズ(>100nm)になり易い。
【0004】
【特許文献1】特公平4−58489号公報
【特許文献2】特開平3−81320号公報
【特許文献3】特開2002−277609号公報
【特許文献4】特開平6−107461号公報
【特許文献5】特開2001−89196号公報
【特許文献6】特公平7−14834号公報
【特許文献7】特開平6−322136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、透明、高屈折率でかつ膜状の光学部材を形成することが可能な樹脂組成物、及びこれを用いた膜状光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、樹脂組成物中の金属アルコキシドの反応性を抑制し、その粒子成長を抑えることで、透明、高屈折率かつ所望膜厚の膜状光学部材を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に記載の事項をその特徴とするものである。
【0007】
(1)(A)含金属高屈折中間体と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ及び/又は(C)反応性モノマとを含有する樹脂組成物であって、
前記(A)含金属高屈折中間体の成分が、チタンアルコキシド、多価アルコール、水、アミノアルコール、及び(D)溶媒を用いて合成されることを特徴とする樹脂組成物。
【0008】
(2)(A)含金属高屈折中間体と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ及び/又は(C)反応性モノマとを含有する樹脂組成物であって、
前記(A)含金属高屈折中間体の成分が、チタンアルコキシド、多価アルコール及び(D)溶媒を混合し加熱により、アルコキシド基と多価アルコールの置換により生じる副生成物の1価アルコールを留去して得たものに対して、さらに水とアミノアルコールとを混合して加熱し、加水分解による副生成物の1価アルコールを留去して合成されることを特徴とする樹脂組成物。
【0009】
(3)前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用される多価アルコールが、下記一般式(1)で表されることを特徴とする(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表し、nは2〜10の整数を表す。)
【0010】
(4)前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用される多価アルコールが、下記一般式(2)で表されることを特徴とする(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【化2】

(一般式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基を表す。)
【0011】
(5)前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用される多価アルコールが、1,4−ブタンジオールであることを特徴とする(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【0012】
(6)前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用されるアミノアルコールが、下記一般式(3)で表されることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化3】

(一般式(3)中、Nは窒素原子を表し、RはH又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を表し、nは1〜3の整数を表す。R又はRが複数となる場合、当該複数の基はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【0013】
(7)前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用されるアミノアルコールが、ジエタノールアミンであることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0014】
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて形成されてなる膜状光学部材。
【0015】
(9)膜厚が1〜1000μmの範囲であることを特徴とする(8)に記載の膜状光学部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも透明、高屈折率でかつ所望する膜厚の光学部材を形成することが可能な樹脂組成物、及びこれを用いた光学部材を提供することが可能である。
本発明は、樹脂組成物中の金属アルコキシドの反応性を抑制し、その粒子成長を抑えることで、透明、高屈折率かつ所望膜厚の膜状光学部材を得ることが可能である。
また、本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、液晶ディスプレイ用部材、プラズマディスプレイ用部材、プリズムシート、ディフューザ、光散乱フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム、偏光子、太陽電池用集光フィルムなどに代表される膜状光学部材、及びその樹脂材料に適用できる。特に、高い屈折率を有する薄膜状光学部材、及び該薄膜状光学部材の作製に用いる樹脂組成物に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<樹脂組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の樹脂組成物は、第1の態様によると、(A)含金属高屈折中間体と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ及び/又は(C)反応性モノマとを含有する樹脂組成物であって、前記(A)含金属高屈折中間体の成分が、チタンアルコキシド、多価アルコール、水、アミノアルコール及び(D)溶媒を用いて合成されることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物は、第2の態様によると、(A)含金属高屈折中間体と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ及び/又は(C)反応性モノマとを含有する樹脂組成物であって、前記(A)含金属高屈折中間体の成分が、チタンアルコキシド、多価アルコール及び(D)溶媒を混合し加熱により、アルコキシド基と多価アルコールの置換により生じる副生成物の1価アルコールを留去して得たものに対して、さらに水とアミノアルコールとを混合して加熱し、加水分解による副生成物の1価アルコールを留去して合成されることを特徴とする。
また、本発明の膜状光学部材は、この樹脂組成物を用いて形成される膜状光学部材である。
以下にまず、本発明の第1の態様及び第2の態様において用いられる樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0018】
[(A)含金属高屈折中間体]
本発明の樹脂組成物において、上述の通り、前記(A)含金属高屈折中間体の成分は、チタンアルコキシド、多価アルコール、水、アミノアルコール及び(D)溶媒を用いて合成されるが、合成は、これらの成分を混合して、加熱し、加水分解することにより行う。合成に際し、前記多価アルコールは、チタンアルコキシドに配位して、加水分解反応の進行を制御し、酸化チタン粒子の成長を抑制する役割を有する。そして、加水分解による副生成物の1価アルコールを積極的に留去して前記(A)含金属高屈折中間体の成分が得られ、酸化チタン粒子の成長が抑制されるので、必要以上に大きな粒子とならず、結果として硬化物の光散乱を引き起こさないようにすることが可能となる。
【0019】
(チタンアルコキシド)
前記(A)含金属高屈折中間体のうちのチタンアルコキシドは、目的に応じて他の金属アルコキシドを部分的に用いることもできる。その金属としては、特に限定されないが、Zn、Zr、La、Th、Taなどが挙げられる。
【0020】
前記(A)含金属高屈折中間体に使用されるチタンアルコキシドの加水分解性アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。炭素数が3〜6であるとゾルゲル反応が十分に進行することから、好ましくはプロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基であり、特に好ましくはイソプロポキシ基である。金属上のこれらアルコキシ基の種類はすべて同一であっても、異なっていても構わない。
【0021】
前記(A)含金属高屈折中間体に使われるチタンアルコキシドとしては、例えば、チタニウムテトラメトキシ、チタニウムテトラエトキシ、チタニウムテトラ−n−プロポキシ、チタニウムテトラ−iso−プロポキシ、チタニウムテトラ−n−ブトキシ、チタニウムテトラ−sec−ブトキシ、チタニウムテトラ−tert−ブトキシ、チタニウムテトラフェノキシなどのテトラアルコキシ、チタニウムトリメトキシ、チタニウムトリエトキシ、チタニウムトリプロポキシ、チタニウムフルオロトリメトキシ、チタニウムフルオロトリエトキシ、チタニウムメチルトリメトキシ、チタニウムメチルトリエトキシ、チタニウムメチルトリ−n−プロポキシ、チタニウムメチルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムメチルトリ−n−ブトキシ、チタニウムメチルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムメチルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムメチルトリフェノキシ、チタニウムエチルトリメトキシ、チタニウムエチルトリエトキシ、チタニウムエチルトリ−n−プロポキシ、チタニウムエチルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムエチルトリ−n−ブトキシ、チタニウムエチルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムエチルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムエチルトリフェノキシ、チタニウムn−プロピルトリメトキシ、チタニウムn−プロピルトリエトキシ、チタニウムn−プロピルトリ−n−プロポキシ、チタニウムn−プロピルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムn−プロピルトリ−n−ブトキシ、チタニウムn−プロピルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムn−プロピルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムn−プロピルトリフェノキシ、チタニウムiso−プロピルトリメトキシ、チタニウムiso−プロピルトリエトキシ、チタニウムiso−プロピルトリ−n−プロポキシ、チタニウムiso−プロピルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムiso−プロピルトリ−n−ブトキシ、チタニウムiso−プロピルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムiso−プロピルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムiso−プロピルトリフェノキシ、チタニウムn−ブチルトリメトキシ、チタニウムn−ブチルトリエトキシ、チタニウムn−ブチルトリ−n−プロポキシ、チタニウムn−ブチルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムn−ブチルトリ−n−ブトキシ、チタニウムn−ブチルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムn−ブチルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムn−ブチルトリフェノキシ、チタニウムsec−ブチルトリメトキシ、チタニウムsec−ブチルトリエトキシ、チタニウムsec−ブチルトリ−n−プロポキシ、チタニウムsec−ブチルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムsec−ブチルトリ−n−ブトキシ、チタニウムsec−ブチルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムsec−ブチルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムsec−ブチルトリフェノキシ、チタニウムtert−ブチルトリメトキシ、チタニウムtert−ブチルトリエトキシ、チタニウムtert−ブチルトリ−n−プロポキシ、チタニウムt−ブチルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムtert−ブチルトリ−n−ブトキシ、チタニウムtert−ブチルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムtert−ブチルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムtert−ブチルトリフェノキシ、チタニウムフェニルトリメトキシ、チタニウムフェニルトリエトキシ、チタニウムフェニルトリ−n−プロポキシ、チタニウムフェニルトリ−iso−プロポキシ、チタニウムフェニルトリ−n−ブトキシ、チタニウムフェニルトリ−iso−ブトキシ、チタニウムフェニルトリ−tert−ブトキシ、チタニウムフェニルトリフェノキシ、チタニウムトリフルオロメチルトリメトキシ、チタニウムペンタフルオロエチルトリメトキシ、チタニウム3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシ、チタニウム3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシなどのトリアルコキシ、チタニウムジメチルジメトキシ、チタニウムジメチルジエトキシ、チタニウムジメチルジ−n−プロポキシ、チタニウムジメチルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジメチルジ−n−ブトキシ、チタニウムジメチルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジメチルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジメチルジフェノキシ、チタニウムジエチルジメトキシ、チタニウムジエチルジエトキシ、チタニウムジエチルジ−n−プロポキシ、チタニウムジエチルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジエチルジ−n−ブトキシ、チタニウムジエチルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジエチルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジエチルジフェノキシ、チタニウムジ−n−プロピルジメトキシ、チタニウムジ−n−プロピルジエトキシ、チタニウムジ−n−プロピルジ−n−プロポキシ、チタニウムジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジ−n−プロピルジ−n−ブトキシ、チタニウムジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジ−n−プロピルジフェノキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジメトキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジエトキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジ−iso−プロピルジフェノキシ、チタニウムジ−n−ブチルジメトキシ、チタニウムジ−n−ブチルジエトキシ、チタニウムジ−n−ブチルジ−n−プロポキシ、チタニウムジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジ−n−ブチルジ−n−ブトキシ、チタニウムジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジ−n−ブチルジフェノキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジメトキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジエトキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジ−sec−ブチルジフェノキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジメトキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジエトキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジ−tert−ブチルジフェノキシ、チタニウムジフェニルジメトキシ、チタニウムジフェニルジエトキシ、チタニウムジフェニルジ−n−プロポキシ、チタニウムジフェニルジ−iso−プロポキシ、チタニウムジフェニルジ−n−ブトキシ、チタニウムジフェニルジ−sec−ブトキシ、チタニウムジフェニルジ−tert−ブトキシ、チタニウムジフェニルジフェノキシ、チタニウムビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシ、チタニウムメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシなどのジオルガノジアルコキシなどが挙げられ、中でも、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基を含むものが好ましく、特に好ましくはイソプロポキシ基である。
【0022】
(多価アルコール)
前記(A)含金属高屈折中間体において、使用される多価アルコールは、下記一般式(1)で表される多価アルコールが好ましい。
【0023】
【化4】

ここで、一般式(1)中、Rは炭素数2〜20の炭化水素基、nは2〜10の整数である。
【0024】
一般式(1)中、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表すが、該炭化水素基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよく、また、不飽和結合を有していてもよい。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜6である。また、nは2〜10の整数であるが、好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜4である。
また、Rが表す炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチレン基、アリール基、環状アルケニル基が挙げられる。
【0025】
前記(A)含金属高屈折中間体に使われる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ピナコール、1,7−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,2−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−ブチル−2エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキセンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、2−メチレン−1,3−プロパンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、1−フェニル−1,3−プロパンジオール、2,3−ピナンジオール、1,14−テトラデカンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、前記(A)含金属高屈折中間体において、使用される多価アルコールは、下記一般式(2)で表される多価アルコールが好ましい。
【化5】

ここで、一般式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基である。
【0027】
一般式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基を表すが、該アルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよく、また、不飽和結合を有していてもよい。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜6である。また、nは2〜10の整数であるが、好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜4である。
また、Rが表す炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチレン基、アリール基、環状アルケニル基が挙げられる。
【0028】
前記(A)含金属高屈折中間体に使われる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,3−ジメチルー1,2−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ピナコール、1,7−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチルー2−プロピルー1,3−プロパンジオール、1,2−オクタンジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチルー2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−ブチル−2エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブチンー1,4−ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、ヒドロベンゾイン、1,2−ドデカンジオール、2−メチレンー1,3−プロパンジオール、1−フェニルー1,2−エタンジオール、1−フェニル−1,3−プロパンジオール、2,3−ピナンジオール、1,14−テトラデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
前記(A)含金属高屈折中間体に使われる多価アルコールとしては、1,4−ブタンジオールが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0030】
(アミノアルコール)
前記(A)含金属高屈折中間体において、使用されるアミノアルコールは、一般式(3)で表されるアミノアルコールが好ましい。
【化6】

ここで、一般式(3)中、Nは窒素原子、RはH又は炭素数1〜20のアルキル基、Rは炭素数1〜20のアルキレン基、nは1〜3の整数である。R又はRが複数となる場合、当該複数の基はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
なお、一般式(3)において、「N」と「R」及び「ROH」との間の直線は単結合を意味しているのではなく、3本あるN原子の結合手のそれぞれに「R」及び「ROH」が、nの数に応じて分配されることを示すために便宜上描いた直線を意味する。従って、一般式(3)において、Nは常に3本の結合手を有し、0〜2個の「R」、及び1〜3個の「ROH」のうちの合計3個が3本の結合手を介してNに結合する。
【0031】
一般式(3)中、前記RはHまたは炭素数1〜20のアルキル基を表すが、該アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状でもよい。該アルキル基の炭素数は1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。
このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、ノルマルノニル基、イソノニル基、ターシャリーノニル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0032】
前記Rは炭素数1〜20のアルキレン基を表すが、該アルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状でもよい。該アルキレン基の炭素数は1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。
このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0033】
以上の一般式(3)で表されるアミノアルコールとしては、例えば、2−エチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、1,1’,1”−ニトリロトリ−2−プロパノール、N−n−ブチル−2,2’−イミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(メチルアミノ)エタノール、2−アミノエタノールなどが挙げられ、中でも、2−エチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、2−アミノエタノールが好ましい。
【0034】
他方、前記一般式(3)で表されるアミノアルコール以外のアミノアルコールの例としては、N−アセチルエタノールアミン、アセチルアミノメチルアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明の第1の態様においては、(A)含金属高屈折率中間体は、以上のチタンアルコキシド、多価アルコール、水、アミノアルコール、及び後述する(D)溶媒を混合して、加熱し、加水分解することにより合成される。加水分解によりアルコールが生成するが、当該アルコールは加熱により揮発し留去することができる。
加熱温度としては、副生成物のアルコールの沸点付近が好ましく、40〜150℃とすることが好ましく、例えば、副生成物がイソプロピルアルコールの場合には60〜100℃とすることがより好ましい。また、加熱時間としては、チタンアルコキシド量から計算されるアルコールの留去量から決定することが好ましい。
【0036】
一方、本発明の第2の態様においては、(A)含金属高屈折率中間体は、以上のチタンアルコキシド、多価アルコール及び後述する(D)溶媒を混合し加熱により、アルコキシド基と多価アルコールの置換により生じる副生成物の1価アルコールを留去して得たものに対して、さらに水とアミノアルコールとを混合して加熱し、加水分解による副生成物の1価アルコールを留去して得られる。第2の態様では、(1)チタンアルコールと多価アルコールとから生成する1価アルコールを留去した後(以下、「(1)の段階」と称する。)、(2)さらにアミノアルコールを加え、加水分解により生成する1価アルコールを留去するが(以下、「(2)の段階」と称する。)、このように、アルコールの留去を(1)と(2)の2段階に分けて行うことにより、反応系が単純化されチタンアルコキシドにおけるアルコシキド基と多価アルコールの置換が確実になされることで、目的とする(A)含金属高屈折率中間体が合成されやすくなり好ましい。
【0037】
第2の態様における加熱温度は、前記(1)の段階及び(2)の段階のいずれにおいても、副生成物のアルコールを留去するという観点から、生成するアルコールの沸点付近が好ましい。従って、前記(1)の段階と(2)の段階とで生成するアルコールが同じであれば、各段階で同じ加熱温度とし、生成するアルコールが異なるのであれば、それぞれのアルコールの沸点付近となるように各段階において加熱温度を異ならせることが好ましい。加熱温度は具体的には、40〜150℃とすることが好ましく、例えば、副生成物がイソプロピルアルコールの場合には60〜100℃とすることがより好ましい。
また、各段階のいずれの加熱においても、加熱時間としては、チタンアルコキシド量から計算されるアルコールの留去量から決定することが好ましい。
【0038】
また、前記(1)の段階と(2)の段階の間において、加熱を続けた状態でもよいし、一度加熱を止めて冷却してから再度加熱してもよい。
【0039】
[(B)ポリマ若しくはオリゴマ]
前記(B)ポリマ若しくはオリゴマとしては、特に限定されないが、光透過率や屈折率が高く、可塑性があり、耐候性の良いものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニル、ポリアクリル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトンなどが挙げられる。前記(B)ポリマ若しくはオリゴマの成分を配合させる場合、その配合量は、(A)含金属高屈折中間体成分100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましい。
【0040】
[(C)反応性モノマ]
前記(C)反応性モノマは、熱や光により重合、硬化する樹脂組成物において、成分となる。(C)反応性モノマ成分の重合形態には、例えば、イオン重合やラジカル重合がよく知られているが、本発明は、それら重合形態を限定するものではない。(C)成分としては、具体的には、エポキシ誘導体、イソシアネート、(メタ)アクリレート、ジカルボン酸、ジオール、ジアミン、スチレン、イソプレン、ブタジエン、アクリロニトリル、プロピレン、エチレンが挙げられ、中でも、エポキシ誘導体、イソシアネート、(メタ)アクリレート、ジカルボン酸、ジオール、ジアミン、スチレンが好ましい。
上記(C)成分を配合させる場合、その配合量は、(A)含金属高屈折中間体成分100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましい。
【0041】
[(D)溶媒]
本発明の樹脂組成物の製造過程においては(D)溶媒を使用する。前記(D)溶媒としては、炭化水素系溶剤、エーテル・ケトン類溶剤、エステル系溶剤、ハロゲン化炭化水素類、鉱物油や合成油、動植物油、アルコール系溶剤などが挙げられ、これらは1種類もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、炭化水素溶剤、エーテル・ケトン類溶剤、エステル系溶剤、ハロゲン化炭化水素類、アルコール系溶剤が好適に使用することができる。
さらに、窒素原子がチタンアルコキシドを安定化させるという観点から、窒素原子を有する溶媒を含有することがより好ましい。窒素原子を有する溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられ、N−メチルピロリドンが好適に使用することができる。
前記(D)溶媒成分の配合量は、(A)含金属高屈折中間体成分100重量部に対して、1〜1000重量部であることが好ましい。前記(D)溶媒成分は、特に塗膜形成のための希釈剤として使用され、例えば、刷毛塗り、スピン塗布法、スプレー法、スリットコーター、グラビア印刷、スクリーン印刷などの方法により塗布された後、ホットプレート、電気炉などで揮発され、均一な塗布膜を得るのに有効な成分である。
【0042】
[(E)添加剤]
また、本発明の樹脂組成物は、(E)添加剤を含有させることができる。前記(E)添加剤としては、必要な場合には、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤などの重合開始剤を用い、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤などの安定化剤、カップリング剤、難燃剤などを用いることができる。
【0043】
これらラジカル重合開始剤の配合量は、(B)ポリマ若しくはオリゴマ成分と(C)反応性モノマ成分の総量100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲であることが好ましく、0.1〜5重量部の範囲であることがより好ましい。前記紫外線吸収剤や光安定化剤は、通常、(B)ポリマ若しくはオリゴマ成分と(C)反応性モノマ成分の総量100重量部に対し0.05〜20重量部の範囲で添加されうる。前記酸化防止剤は、充填材との相性や目的とする成形作業性及び樹脂保存安定性などの条件により種類、量を変えて添加する。通常、(B)ポリマ若しくはオリゴマ成分と(C)反応性モノマ成分の総量に対し10〜10,000ppmである。カップリング剤は、通常、(B)ポリマ若しくはオリゴマ成分と(C)反応性モノマ成分の総量100重量部に対し、0.001〜5重量部添加する。
【0044】
前記難燃剤の添加量は(B)ポリマ若しくはオリゴマ成分と(C)反応性モノマ成分の総量100重量部に対し10〜300重量部の範囲で用いることが好ましい。本発明の樹脂組成物は、前記した(A)含金属高屈折中間体成分と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ成分及び/又は(C)反応性モノマ成分とを成分とし、その他必要に応じて添加される成分を、通常の樹脂組成物と同様に攪拌、混合することにより得ることができる。
【0045】
<膜状光学部材>
本発明の膜状光学部材は、例えば、本発明の樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥し、必要に応じて硬化させることにより得ることができる。樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り、スピン塗布法、スプレー法、スリットコーター、グラビア印刷、スクリーン印刷などを挙げることができる。また、前記基材としては、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム、太陽電池セルなどを挙げることができる。
【0046】
また、樹脂組成物の塗布後に行う乾燥は、膜中の溶剤が十分に揮発すればよく、その方法や条件は特に限定されないが、例えば、ホットプレート、電気炉などを用い、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜120℃の範囲で行うことができる。乾燥温度50℃未満では、(D)成分などの乾燥が不十分になる恐れがあり、150℃を超えると(C)成分などが揮発してしまう恐れがあり、良好な硬化膜をえることが困難になる傾向がある。
【0047】
また、乾燥後の硬化は、熱硬化性配合の場合には、その成分や配合量により硬化温度と時間を適宜決定すればよいが、好ましくは100〜200℃の温度で2〜60分間、より好ましくは130〜200℃の温度で2〜30分間加熱して行うことができる。この加熱が100℃未満であると、十分な硬化が行えない恐れがある。また、樹脂組成物が光硬化性配合の場合にも特に制限されないが、高圧水銀灯などを用い、100〜2000mJ/cmで露光し、硬化させることが好ましい。
【0048】
本発明に係る膜状光学部材の膜厚は、この実施形態の樹脂組成物の粘度を調整したり、膜形成手段やその条件を適宜選択したりすることにより、容易に所望厚さに形成することが可能である。例えば、前記(D)溶媒成分である溶剤の配合量を少なくすると、樹脂組成物の粘度が上昇し、比較的厚膜の光学部材を形成しやすくなり、前記(D)溶媒成分の配合量を多くすると、樹脂組成物の粘度が低下し、比較的薄膜の光学部材を形成しやすくなる。また、樹脂組成物の塗布手段として、スピン塗布法を適用する場合には、その回転数を下げたり、塗布回数を増やしたりすることで、比較的厚膜の光学部材を形成することができ、その回転数を上げたり、塗布回数を減らしたりすることで、比較的薄膜の光学部材を形成することが可能である。具体的に好ましい厚さは、用途にもよるが1〜1000μmの範囲である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
(A1液((A)含金属高屈折中間体)の調製)
4つ口のセパラブルフラスコの1つに攪拌羽、1つに窒素供給、1つに揮発成分を留去できるように連結管、リービッヒ冷却器を接続した。1,4−ブタンジオール15.77g、N−メチルピロリドン17.17gを、100mLセパラブルフラスコに入れ、窒素流下、攪拌した。数分後、攪拌が十分に行われたのを確認し、チタニウムテトライソプロポキシド35.53gをなるべく空気に触れないように注意しながら加えた。チタニウムテトライソプロポキシドを加えると、フラスコの温度は上昇するが、これを室温(25℃)程度にまで冷ました後、80℃オイルバスを用いて、揮発成分の留去を行った。なおこの際の留去物は、イソプロポキシ基と1,4−ブタンジオールの置換により生じる副生成物のイソプロピルアルコールである。
別なサンプル管を用い、水1.802g、ジエタノールアミン10.51gをよく混ぜてこれを前記フラスコ内に添加した。数分後、攪拌が十分に行われたのを確認し、揮発成分の留去を6時間行った。この際の留去物は、チタニウムテトライソプロポキシドの加水分解反応による副生成物のイソプロピルアルコールである。このようにして合成された液体をA1液((A)含金属高屈折中間体)という。
【0051】
(樹脂組成物の調製〜薄膜の作製)
A1液95重量部に対し、B1液((B)ポリマもしくはオリゴマ)としてエポキシ樹脂(阪本薬品工業社製、SR−16HL)5重量部を加え十分に攪拌した樹脂組成液(樹脂組成物)を、半導体用シリコンウエハとスライドガラスにスピンコートし、150℃のホットプレートで10分間加熱することで溶剤を除去し、透明な薄膜を得た。この薄膜の波長632.8nmの光に対する屈折率は1.67であり、透明で均質な薄膜が得られた。なお、形成した薄膜の膜厚は、1μmであった。また、屈折率の測定及び透明性の評価は以下のようにして行った。
〈屈折率の測定〉
A1液と溶媒が重量比2対1となるように混合した。この混合溶液を25mm角のシリコンウエハに滴下し、5000rpmで30秒スピンコートを行った。その後、150℃のホットプレートで10分加熱することで溶剤を乾燥し、薄膜(膜厚約1μm)を得た。自動エリプソメータ(MARY−102,ファイブラボ社製)を用いて、薄膜の波長632.8nmにおける屈折率を測定した。
〈透明性〉
透明性の評価は目視により行った。
【0052】
[比較例1]
水0.54g、N−メチルピロリドン33.44gを、100mLセパラブルフラスコに入れ、窒素流下、攪拌した。数分後、攪拌が十分に行われたのを確認し、チタニウムテトライソプロポキシド21.32gを加えた。チタニウムテトライソプロポキシドを加えると、液は瞬時に白濁した塊となり、光学的な評価は不可能であった。
【0053】
[比較例2]
N−メチルピロリドン1494g、ポリエステルポリオール(クラレ社製クラレポリオールP1010)4965gをセパラブルフラスコに入れ、十分に攪拌した。これにポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製ディスモジュール−W)1009gを約2時間かけて滴下し、B2液(ウレタン樹脂)を得た。
B2液100重量部に、チタニウムテトライソプロポキシド100重量部を加え攪拌し、透明の液体を得たが、スピンコート、ホットプレートによる溶剤乾燥により、膜は白濁して、光学的な評価は不可能であった。
【0054】
[比較例3]
チタニウムテトライソプロポキシド200重量部、ジエタノールアミン80重量部、水4重量部、B3液としてエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製EXA−4850−100)100重量部、トルエン140重量部をセパラブルフラスコに入れ、攪拌した。透明の液体を得ることができ、スピンコート、ホットプレートによる溶剤乾燥により、透明な膜を得たが、膜厚均一性が悪く、正当な評価ができなかった。
【0055】
[比較例4]
4つ口のセパラブルフラスコの1つに攪拌羽、1つに窒素供給、1つに揮発成分を留去できるように連結管、リービッヒ冷却器を接続しておいた。トリエチルアミン11.92g、水0.54g、N−メチルピロリドン19.88gを、100mLセパラブルフラスコに入れ、窒素流下、攪拌した。数分後、攪拌が十分に行われたのを確認し、チタニウムテトライソプロポキシド21.32gをなるべく空気に触れないように注意しながら、加えた。チタニウムテトライソプロポキシドを加えると、フラスコの温度は上昇するが、室温(25℃)程度にまで冷えた後、80℃オイルバスを用いて、揮発成分の留去を行った。この際の留去物は、チタニウムテトライソプロポキシドの加水分解反応による副生成物のイソプロピルアルコールである。別なサンプル管を用い、水0.27g、トリエチルアミン2.193gをよく混ぜておき、前記留去を6時間行った後に、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、この混合物を添加した。この液体をA2液という。
このA2液100重量部に対し、B3液としてエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製EXA−4850−1000)10重量部を加え十分に攪拌した樹脂組成液を、半導体用シリコンウエハとスライドガラスにスピンコートし、80℃のホットプレートで5分間加熱、溶剤を除去し、さらに150℃のホットプレートで15分間加熱硬化し、薄膜を得ようとしたが、薄膜は粉々に砕け散って製膜ができなかった。
【0056】
[比較例5]
A1液95重量部に対し、B4液としてエポキシ樹脂(東都化成社製ZX−1542)5重量部を加え十分に攪拌した樹脂組成液を、半導体用シリコンウエハとスライドガラスにスピンコートし、150℃のホットプレートで30分間加熱、溶剤を除去し、薄膜を得た。この薄膜の波長632.8nmの光に対する屈折率は1.65であり、透明で均質な薄膜が得られた。
【0057】
以上の実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
本発明により、従来よりも透明、高屈折率でかつ所望する膜厚の光学部材を形成することが可能な樹脂組成物、及びこれを用いた光学部材を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)含金属高屈折中間体と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ及び/又は(C)反応性モノマとを含有する樹脂組成物であって、
前記(A)含金属高屈折中間体の成分が、チタンアルコキシド、多価アルコール、水、アミノアルコール、及び(D)溶媒を用いて合成されることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(A)含金属高屈折中間体と、(B)ポリマ若しくはオリゴマ及び/又は(C)反応性モノマとを含有する樹脂組成物であって、
前記(A)含金属高屈折中間体の成分が、チタンアルコキシド、多価アルコール及び(D)溶媒を混合し加熱により、アルコキシド基と多価アルコールの置換により生じる副生成物の1価アルコールを留去して得たものに対して、さらに水とアミノアルコールとを混合して加熱し、加水分解による副生成物の1価アルコールを留去して合成されることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用される多価アルコールが、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Rは炭素数2〜20の炭化水素基を表し、nは2〜10の整数を表す。)
【請求項4】
前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用される多価アルコールが、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化2】

(一般式(2)中、Rは炭素数2〜20のアルキレン基を表す。)
【請求項5】
前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用される多価アルコールが、1,4−ブタンジオールであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用されるアミノアルコールが、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化3】

(一般式(3)中、Nは窒素原子を表し、RはH又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を表し、nは1〜3の整数を表す。R又はRが複数となる場合、当該複数の基はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記(A)含金属高屈折中間体の合成において使用されるアミノアルコールが、ジエタノールアミンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて形成されてなる膜状光学部材。
【請求項9】
膜厚が1〜1000μmの範囲であることを特徴とする請求項8に記載の膜状光学部材。

【公開番号】特開2009−132860(P2009−132860A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102404(P2008−102404)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】