説明

樹脂組成物及びその積層体

本発明は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー(A)5〜50重量部、エチレン・不飽和エステル共重合体(B)0.5〜20重量部及び高結晶性ポリオレフィン系樹脂等のその他熱可塑性樹脂(C)94.5〜30重量部からなる非帯電性、加工性、相溶性に優れた樹脂組成物及びこのような樹脂組成物層を少なくとも1層有する単層品又は多層品である。これら樹脂組成物及び積層体は、フイルム、シート、容器などの包装材料としてとくに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非帯電性、加工性、相溶性に優れた樹脂組成物及びその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に高分子材料からなる成形品は帯電し易く、保管、輸送、使用の各段階において空気中の塵埃が付着し、表面が汚染されることが多い。成形品が粉体の包装袋などである場合は、内容物が袋内面に付着して外観を損ね、商品価値を低下させることがある。このような塵埃や粉体の付着を防止するために、従来、種々の帯電防止処方が提案され、実用化されてきた。
【0003】
一般に採用されている帯電防止処方として、帯電防止剤を練りこむ方法や帯電防止剤又は帯電防止性重合体を塗布する方法があるが、それぞれに欠点を有していることも知られている。例えば、前者の方法では、帯電防止剤のブリードにより包装内容物を汚染することがあり、あるいは帯電防止効果が経時的に低下するという問題点があった。また後者の方法では、一般に塗布膜の耐水性が悪く、塗布膜が損傷したり、あるいは吸水によって表面のべとつきが増大するなどの欠点が指摘されていた。
【0004】
このような欠点を改善するものとして、高分子型帯電防止剤であるカリウムアイオノマーを配合する方法が知られている。例えば、特開平3−106954号公報には、不飽和カルボン酸含量の異なる2種以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーに関する提案がなされており、他の熱可塑性樹脂、具体的にはエチレン・酢酸ビニル共重合体や低密度ポリエチレンなどに配合した場合にも優れた帯電防止性を示すことが明らかにされている。また特開平4−93340号公報には、高カリウムイオン含量のカリウムアイオノマーをオレフィン重合体やオレフィンと不飽和エステルの共重合体に配合した非帯電性に優れたオレフィン重合体組成物に関する提案がなされており、具体的にはエチレン・酢酸ビニル共重合体や低密度ポリエチレンに上記カリウムアイオノマーを配合した例が示されている。
【0005】
ところでフイルムや中空容器分野で多用されている高結晶性のポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン、とくに高密度ポリエチレン、やポリプロピレンなどに上記のようなカリウムアイオノマーを配合した場合、カリウムアイオノマーの分散性、相溶性が悪く、成形加工時には押出機の溶融トルクが大きくなって生産性が低下し、また成形品の外観不良を起こしやすいという欠点が生じることがある。
【0006】
【特許文献1】特開平3−106954号公報
【特許文献2】特開平4−93340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高結晶性ポリオレフィン系樹脂にカリウムアイオノマーを配合した場合において、物性の低下を伴わずに加工性を改良し、外観良好な成形品を得ることができる処方を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー(カリウムイオンで中和されたエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、以後単にカリウムアイオノマーと呼ぶことがある)(A)5〜50重量部、エチレン・不飽和エステル共重合体(B)0.5〜20重量部及び(A)および(B)以外の熱可塑性樹脂(C)94.5〜30重量部からなる樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用されるカリウムアイオノマー(A)のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸,さらに任意に他の極性モノマーを共重合して得られるものである。
ここに不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、とくにアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また共重合成分となりうる他の極性モノマーとしては、酢酸ビニル、ピロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などであり,不飽和カルボン酸エステル、とくに(メタ)アクリル酸エステルは好適な共重合成分である。
このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、任意に他の極性モノマーを、高温,高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。
【0010】
カリウムアイオノマーとして、ベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の酸含量が少なすぎるもの、あるいは中和度が小さすぎるものを使用すると、帯電防止性能の優れた樹脂組成物を得ることは容易でない。そのため、ベースのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸含量(またはベースのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の平均不飽和カルボン酸含量)が10〜30重量%、好ましくは10〜20重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムイオンによる中和度が60%以上(60〜100%)、好ましくは70%以上(70〜100%)のカリウムアイオノマーを1種又は2種以上使用するのが好ましい。とくに平均酸含量の異なる2種以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを使用するのが望ましい。
【0011】
例えば、平均酸含量が10〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である2種以上の共重合体であって、最高酸含量と最低酸含量のものの酸含量差が1重量%以上、好ましくは2〜20重量%異なるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムイオンによる中和度が60%以上、好ましくは70%以上の混合アイオノマーである。より具体的には、平均不飽和カルボン酸含量が10〜30重量%、好ましくは10〜20重量%、JIS K7210−1999に準拠して190℃、2160g荷重で測定した平均MFRが1〜300g/10分、好ましくは10〜200g/10分、さらに好ましくは20〜150g/10分の混合共重合体成分の上記中和度(60%以上)を有する混合アイオノマーがとくに好適であって、そのときの混合共重合体成分は、不飽和カルボン酸含量が1〜10重量%、好ましくは2〜10重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1〜600g/10分、好ましくは10〜500g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−1)と、不飽和カルボン酸含量が11〜25重量%、好ましくは13〜23重量%、190℃、2160g荷重におけるMFRが1〜600g/10分、好ましくは10〜500g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−2)とからなる。上記混合共重合体組成物としては、共重合体(A−1)と共重合体(A−2)の混合割合が、前者2〜60重量部、好ましくは5〜50重量部に対し、後者98〜40重量部、好ましくは95〜50重量部とするのが好ましい。尚、上述の平均MFRは、(A−1)と(A−2)の溶融混合物のMFRである。
【0012】
カリウムアイオノマーのベースポリマーとなる前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体には、すでに述べたような他の極性モノマーが含まれていてもよく、例えば他の極性モノマー含量が40重量%以下、好ましくは30重量%以下の割合で共重合された多元共重合体を使用することができる。
【0013】
カリウムアイオノマーとしてはまた、加工性や他成分との混和性等を考慮すると、JIS K7210−1999に準拠して190℃,2160g荷重で測定したMFRが、0.1〜100g/10分、とくに0.2〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物には(B)成分としてエチレン・不飽和エステル共重合体が使用される。エチレン・不飽和エステル共重合体における不飽和エステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチルなどの不飽和カルボン酸エステルを挙げることができる。とくに好適な不飽和エステルは、不飽和カルボン酸エステル、とくにアクリル酸又はメタクリル酸のエステルである。
【0015】
共重合体(B)においては、加工性、相溶性の改善効果を充分発揮させるためには、不飽和エステル含量が好ましくは5〜40重量%、とくに好ましくは10〜35重量%であり、またJIS K7210−1999に準拠して190℃,2160g荷重で測定したMFRが、好ましくは0.1〜100g/10分、とくに好ましくは0.2〜50g/10分のものを使用するのが望ましい。
【0016】
本発明で使用されるその他熱可塑性樹脂(C)は、カリウムアイオノマー(A)及びエチレン・不飽和エステル共重合体(B)以外の熱可塑性樹脂であって、具体的にはエチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体、たとえば高圧法ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン系樹脂およびポリオレフィン系エラストマーの如きオレフィン系重合体;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレンなどのゴム強化スチレン系樹脂およびABS樹脂の如きスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマーの如きエステル;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、あるいはこれらの2種以上の混合物などを例示することができる。
【0017】
上記その他熱可塑性樹脂(C)の中では、ポリオレフィン系樹脂、とくに中・高密度ポリエチレン、高結晶性ポリプロピレン、高結晶性ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどが望ましい。とりわけ中・高密度ポリエチレンを選択するのが好ましい。
【0018】
中・高密度ポリエチレンは、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの共重合体であって、密度が935kg/m以上、好ましくは940〜970kg/mのものであり、中低圧法によって製造することができる。また加工性及び実用物性を考慮すると、JIS K7210−1999に準拠して190℃,2160g荷重で測定したメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.2〜50g/10分のものの使用が好ましい。
【0019】
上記エチレン共重合体における炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテンなどを例示することができるが、とくに炭素数3〜12程度のα−オレフィンの共重合体が好ましく使用される。
【0020】
(C)成分として使用可能な結晶性ポリプロピレンとして具体的には、プロピレンの単独重合体及びプロピレンを主体とするプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。該共重合体においては、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。プロピレンの共重合体における他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチルー1−ペンテンなどの炭素数2〜20のものを例示することができる。このような他のα−オレフィンは1種又は2種以上組み合わせて共重合させることができる。また加工性及び実用物性を考慮すると、ASTM D−1238に準拠して230℃、2160g荷重で測定したメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.2〜50g/10分のポリプロピレンを使用するのが好ましい。
【0021】
上記結晶性ポリプロピレンとしては、とくにプロピレンの単独重合体又はプロピレンとエチレンのランダム共重合体の使用がとくに好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体においては、エチレン含量が、例えば0.1〜10モル%、とくに0.5〜5モル%のものが好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体においてはまた、さらに1−ブテンのような炭素数4以上のα−オレフィンがランダム共重合した多元共重合体であってもよい。
【0022】
このような結晶性ポリプロピレンは、立体特異性触媒の存在下でプロピレンを重合させるか、あるいはこれと他のα−オレフィンを共重合させることによって得ることができる。例えば電子供与体含有高活性チタン触媒成分、有機アルミニウム化合物及び電子供与体からなるチーグラー・ナッタ型触媒、電子供与体含有メタロセン化合物とアルミノオキサンからなるシングルサイト触媒などの重合触媒を用いて製造することができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、カリウムアイオノマー(A)、エチレン・不飽和エステル共重合体(B)及び(A)および(B)以外の熱可塑性樹脂(C)の合計100重量部に対し、カリウムアイオノマー(A)が5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、エチレン・不飽和エステル共重合体(B)0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、熱可塑性樹脂(C)が、30〜94.5重量部、好ましくは40〜85重量部の割合である。カリウムアイオノマーの配合量が少なすぎると、非帯電性に優れた組成物を得ることが困難になる。またエチレン・不飽和エステル共重合体(B)の配合は、(A)と(C)の相溶性改良に効果的であるが、あまり多量に配合しても効果の増加はなく、却って(C)のすぐれた特性を損なうようになるので、上記のような配合割合とするのがよい。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じ各種添加剤を配合することができる。このような添加剤の例として、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、無機充填剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤などを例示することができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は種々の成形品として使用することができる。その場合、樹脂組成物は単層(一層)成形体として、または他材料との積層体として使用することができる。このような積層体において、本発明の樹脂組成物は表面層として、あるいは中間層として使用することができる。例えば袋体や中空成形体などにおいては、外表面層としてあるいは内表面層としては勿論のこと、中間層としても使用することができる。上記積層体に使用できる他材料の層としては、本発明の樹脂組成物以外の他の熱可塑性樹脂(D)を使用することができる。他の熱可塑性樹脂(D)は、本発明の樹脂組成物におけるエチレン・不飽和エステル共重合体(B)や他の熱可塑性樹脂(C)により構成することができる。このような他材料の層としてはまた、積層体製造の際に生じるオフスペック品や耳などの成形廃品などを回収して使用する回収層あるいは接着層であってもよい。このような回収層の材料は、基本的に積層体構成材料あるいはこれらの混合物と同等であり、積層体構成材料の少なくとも一方と相容性が優れているので、積層体の層間接着性の向上に寄与することが期待される。
【0026】
積層体構成材料として使用可能な上記接着層としては、層間接着強度を改善するものであればいかなるものでもよく、例えばホットメルト型接着剤や塗布型接着剤であってもよい。工業的には熱可塑性樹脂やそれに粘着付与剤等を配合した組成物から選択される押出成形可能な接着剤を使用するのが好ましい。
【0027】
積層体を構成する他材料の他の熱可塑性樹脂(D)としては、オレフィンの単独重合体あるいはオレフィン同士の共重合体、オレフィンと極性モノマーの共重合体から選ばれるオレフィン系重合体の使用が好ましく、とくにポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が最も好適である。積層体における各層の厚み比率は適宜選択することができ、例えば、本発明の樹脂組成物層/他の材料層(厚み比率)が0.1〜1000、好ましくは0.5〜100程度とすることができる。また総厚みは使用目的によっても異なるが、例えば10〜5000μm、好ましくは100〜3000μm程度とすることができる。上記のような積層体は、各層を好ましくは押出コーティングや共押出しフイルム、シート成形あるいは共押出しブロー成形により積層することにより製造することができる。
本発明の樹脂組成物が単層体として使用される場合、その厚みは約10〜5000μmが好ましく、約100〜3000μmがより好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例において使用した原料及び物性評価方法は次の通りである。
【0029】
1.使用原料
(1)IO:アイオノマー(メタクリル酸含量20重量%、MFR(JIS K7210−1999に準じて190℃、2160g荷重で測定した。以下、同じ)500g/10分のエチレン・メタクリル酸共重合体45重量部、メタクリル酸含量15重量%、MFR60g/10分のエチレン・メタクリル酸共重合体27重量部及びメタクリル酸含量10重量%、MFR100g/10分のエチレン・メタクリル酸共重合体18重量部の混合物(平均酸含量16.5重量%、平均MFRが265g/10分)の中和度が85%、MFRが0.3g/10分のカリウムアイオノマー)
(2)EEA:エチレン・アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含量19重量%、MFR5g/10分)
(3)EMA:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(アクリル酸メチル含量16重量%、MFR9g/10分)
(4)HDPE:高密度ポリエチレン(商品名ハイゼックス6200B、三井化学(株)製、密度956kg/m、MFR0.36g/10分)
【0030】
(5)樹脂組成物
(イ)混合物1:IO/EEA/HDPE=18/2/80(重量比)の混合物
(ロ)混合物2:IO/EEA/HDPE=9/1/90(重量比)の混合物
(ハ)混合物3:IO/EMA/HDPE=13.5/1.5/85(重量比)の混合物
【0031】
2.評価項目及び評価方法
3層ブロー成形機を用い、表1に示すような層比、層厚みで内容積が100mlの3層容器を作製し、下記項目を評価した。
【0032】
(1)電位測定
(イ)加工直後の3層容器の表面を、木綿布で10回擦った後、静電気測定器(SV−511、日本スタテック(株)製)にて電位を測定
(ロ)40℃、80%相対湿度雰囲気に24時間放置した3層容器の表面を、木綿布で10回擦った後、静電気測定器(SV−511、日本スタテック(株)製)にて電位を測定
【0033】
(2)削り節付着
(イ)加工直後の3層容器の表面を、木綿布で10回擦った後、削り節に近づけたときの削り節の付着度合いを観察した。
(ロ)40℃、80%相対湿度雰囲気に24時間放置した3層容器の表面を木綿布で10回擦った後、削り節に近づけたときの削り節の付着度合いを観察した。
A:削り節が全く付かない
B:削り節が僅かに付着する
C:削り節が多量に付着する
【0034】
(3)加工性
混合物1〜3を、3層ブロー成形機備え付けの30mmφ押出機で押出した際の押出機の許容上限負荷に対する割合により判断した。
A:30%以下
B:30%以上
【0035】
[実施例1〜4、比較例1]
3層ブロー成形機を用い、表1に示す層構成、層厚み、層比で、内容積が100mlの3層容器を製造した。この3層容器の非帯電性能及び加工性の評価結果を表1に示した。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、非帯電性、相溶性、加工性に優れた樹脂組成物を提供することができる。このような樹脂組成物は単独であるいは他材料と積層して、例えばフイルム、テープ、シート、チューブ、管、袋体、容器(例えばブロー成形による容器)、ロッド、各種射出成形品、各種ブロー成形品などの形で使用することができる。とくに包装材料としての使用が好適であり、本発明の樹脂組成物層を外層とするような袋体あるいは多層容器は、外表面が防汚性に優れる。また本発明の樹脂組成物層を内層とするような袋体あるいは多層容器は、内表面がヒートシール性、静電付着防止性に優れた包装材料とすることができる。とりわけ本発明の樹脂組成物層を外層とするような多層容器は、外表面が防汚性に優れると共に、表面反射光沢が小さく、曇り度が高い絹布状の外観を有する意匠性に優れたボトルとなる。
また上記のような積層体は包装材料の他に、ダイシングテープ基材やバックグラインドフイルムなどの半導体用粘着テープ又はフイルム、マーキングフイルム、ICキャリアテープ、電子部品テーピングテープのような電気・電子材料、食品包装材料、衛生材料、プロテクトフイルム(例えばガラス、プラスチック又は金属性のボード、レンズ用ガードフイルム又はテープ)、鋼線被覆材料、クリーンルームカーテン、壁紙、マット、床材、フレコン内袋、コンテナー、靴、バッテリーセパレーター、透湿フイルム、防汚フイルム、防塵フイルム、PVC代替フイルム、各種化粧品、洗剤、シャンプー、リンス等のチューブやボトルなどの用途に用いることができる。
本発明の樹脂組成物の成形品あるいは上記のような積層体は、その片面あるいは両面に粘着層を設けて使用することができる。このような粘着層として、ゴム系、アクリルポリマー系、シリコン系などの粘着層を挙げることができる。本発明の樹脂組成物の成形品あるいは上記のような積層体はまた、その非帯電特性、その他特性を生かすため、他の種々の基材等、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレンなどの二軸延伸フイルム又はシート等の基材、あるいはアクリル樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリアセタール等の板状成形品を含む材料に積層して使用することができる。このような防汚性の表皮材として使用する場合、このような材料に直接あるいは粘着層を介して積層することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー(A)5〜50重量部、エチレン・不飽和エステル共重合体(B)0.5〜20重量部及び(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂(C)94.5〜30重量部からなる樹脂組成物。
【請求項2】
カリウムアイオノマー(A)が、酸含量が異なる2種以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーであって、該エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の平均酸含量が10〜30重量%であり、最高酸含量のものと最低酸含量のものとの酸含量差が1重量%以上であり、カリウムイオンによる中和度が60%以上であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン系樹脂である請求の範囲第1項又は第2項記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる単層成形体。
【請求項5】
2層以上の層を有する積層体であって、その少なくとも1層が請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の樹脂組成物からなる多層成形体。
【請求項6】
前記多層成形体が、熱可塑性樹脂(D)からなる層を有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の多層成形体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(D)が、オレフィン重合体である請求の範囲第6項に記載の多層成形体。
【請求項8】
請求の範囲第4項に記載の単層成形体の、フイルム、シート、袋体又は中空成形容器への使用。

【公表番号】特表2007−520586(P2007−520586A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524142(P2006−524142)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001139
【国際公開番号】WO2005/075556
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】