説明

樹脂組成物及びそれを成形してなるシート

【課題】カレンダーロール機を用いて安価に薄いシートを成形できる樹脂組成物及びそれを用いたシートを提供する。
【解決手段】芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物からなる熱可塑性エラストマー(A)65〜75重量%、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)35〜25重量%から構成される熱可塑性成分を含んでなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びそれを成形してなるシートに関し、より詳しくは、カレンダー加工機を用いて安価にシート成形できる樹脂組成物及びそれを成形してなる床材や床材の基材樹脂層として有用なシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイルカーペット、玄関マット及びカーマット等の床材やそれに使用する基材樹脂層には、可塑剤を多量に含むポリ塩化ビニル、あるいは加硫ゴムが多く使用されていた。
【0003】
しかしながら、難燃性、耐摩耗性、耐熱性を向上させるために多量の無機系添加剤を混合するため重くなり、加硫ゴムにおいても対汚染性や施工における加工性などで意匠上の制約が大きいという問題があった。
【0004】
昨今、この問題を解決するためにスチレン系熱可塑性エラストマーを用いる技術が提案されているが、ポリ塩化ビニルや加硫ゴムの場合と同様に、多量の無機系添加剤や可塑剤を混合するなど基本的には塩化ビニルや加硫ゴムに類似する配合が用いられている。
【0005】
特許文献1では、第1樹脂成分としてスチレン系エラストマー、第2樹脂成分として酸性変性樹脂、第3樹脂成分として脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、水添ロジンエステル及びパラフィン系オイルから選ばれる樹脂を用い、それらに充填剤を混合してなる樹脂組成物からなる樹脂シートが開示されているが、充填剤の混合量が樹脂成分と同量又はそれ以上であるため、シートの厚さは2mm〜6mmであり、具体的には2本ロール試験機を用いて厚さ2mmの樹脂シートを作成している。特許文献2ではスチレン系熱可塑性エラストマーとフェニレンエーテル系樹脂とで構成されるエラストマー組成物のペレット又は粉末を作製し、金型温度200℃の加硫プレス機を用いて厚さ2mmのシート状成形体を得ている。
【0006】
最近、床材やそれに使用する基材樹脂層に対して軽量化と低コスト化の要求が高まっており、本発明者らは連続シート化が可能なカレンダーロール機を用いて安価に薄いシートを作成する方法を検討した。特許文献2で用いられている熱可塑性エラストマーを含むエラストマー組成物を3本又は4本のロールを有するカレンダーロール機を用いてシート成形しようとすると、ロール上ではゴムのような餅状の滑らかな混練物にはならず、ぱさぱさになり、シートに穴が開いたり、破れるため、厚さ1.0mm以下の薄いシートが得られず、厚さ2mm程度のシートを作成したとしてもシートの表面に凹凸が発生し、厚みが均一にならず目的とするシート物性が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008―1753号公報
【特許文献2】特開2003―213070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、カレンダーロール機を用いて安価に薄いシートを成形できる樹脂組成物及びそれを用いたシートを提供することである。さらに本発明の目的は、軽量で柔軟な床フィット性に優れた床材やそれに使用する基材樹脂層に好適なシートを、カレンダーロール機を用いて安価にシート化できる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物からなる熱可塑性エラストマー(A)65〜75重量%、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)35〜25重量%から構成される熱可塑性成分を含んでなる樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、(2)前記ブロック共重合体又はその水素添加物は、芳香族ビニル単量体単位の含有量が15重量%以下、硬度が40以下、破断伸度が1000%以上であり、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル単量体単位の含有量が40重量%以上、引張破壊ひずみが650%以上である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、(3)発泡剤、ペットボトルの粉砕物及び抗菌剤から選ばれる少なくとも一種を含んでなる前記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、(4)前記発泡剤の含有量が、熱可塑性成分100重量部に対し、2〜10重量部である前記(3)に記載の樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、(5)前記ペットボトルの粉砕物の含有量が、熱可塑性成分100重量部に対し、5〜30重量部である前記(3)に記載の樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、(6)前記抗菌剤の含有量が、熱可塑性成分100重量部に対し、0.2〜2.0重量部である前記(3)に記載の樹脂組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、(7)前記(1)〜(6)に記載の樹脂組成物を成形してなるシートに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カレンダーロール機を用いて安価に薄いシートを成形できる樹脂組成物及びそれを用いたシートを提供することができる。さらに本発明の目的は、軽量で柔軟な床フィット性に優れた床材やそれに使用する基材樹脂層に好適なシートを、カレンダーロール機を用いて安価にシート化できる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の樹脂組成物は、芳香族ビニル化合物と共役ジエンとのブロック共重合体又はその水素添加化物からなる熱可塑性エラストマー(A)65〜75重量%、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)35〜25重量%から構成される熱可塑性成分を含んでなる。本発明においては、均一なシートに成型する観点から、前記熱可塑性エラストマー(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)の配合比が前記範囲にあることが重要であり、前記範囲を外れる場合は、カレンダーロール機のロール上で樹脂組成物がぱさぱさになり滑らかな混練物が得られず、厚さ1.0mm以下の薄いシートを作成することができない。
【0018】
以下、本発明において用いられる各成分について説明する。
【0019】
熱可塑性エラストマー(A)
本発明において用いられる熱可塑性エラストマー(A)は、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物からなる熱可塑性エラストマーであり、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体単位を主体とするポリ芳香族ビニルブロック(a1)と共役ジエン単量体単位を主体とするポリ共役ジエンブロック(a2)とを有するものである。
【0020】
前記ポリ芳香族ビニルブロック(a1)は、芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有するものであり、芳香族ビニル単量体を単独重合させたものであることが特に好ましい。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられ、これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0021】
ポリ芳香族ビニルブロック(a1)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、芳香族ビニル単量体と、それと共重合可能な単量体とを共重合させたものを用いてもよい。芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体の好ましい例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体を挙げることができる。
【0022】
ポリ共役ジエンブロック(a2)は、共役ジエン単量体単位を主たる構成単位として含有するものであり、共役ジエン単量体を単独重合させたものであることが特に好ましい。共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0023】
ポリ共役ジエンブロック(a2)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、共役ジエン単量体と、それと共重合可能な単量体とを共重合させたものを用いてもよい。共役ジエン単量体と共重合可能な単量体の好ましい例としては、前記の芳香族ビニル単量体を挙げることができる。
【0024】
本発明で用いる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の構造としては、特に限定されず、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、テトラブロック共重合体、マルチブロック共重合体、星型ブロック共重合体などが挙げられるが、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体が好ましい。
【0025】
本発明においては、上記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体中の二重結合の一部又は全部を水素添加したものを用いることができる。
本発明で用いられる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)などが挙げられる。
【0026】
本発明において、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物は、比重が低く軽量化の観点から、芳香族ビニル単量体単位の含有量が15重量%以下であることが好ましく、12〜14重量%であることがより好ましい。また、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物は、本発明の樹脂組成物を用いたシートを凹凸のある床面に敷く場合のフィット性を考慮した柔らかさの観点から、硬度が40以下であることが好ましく、33〜39であることがより好ましい。なお、硬度はJIS A硬度であり、JIS K−6253に準拠して測定することができる。また、前記芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物は、本発明の樹脂組成物に顔料などを添加して着色シートに成形する場合、顔料の添加による破断伸度の低下防止の観点から、破断伸度が1000%以上であることが好ましく、1000〜1400%であることがより好ましい。なお、破断伸度はJIS K−6251に準拠して測定することができる。
【0027】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)
本発明において用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)は、エチレンと酢酸ビニルを共重合させた熱可塑性樹脂であり、耐寒屈曲性の観点から、酢酸ビニル単量体単位の含有量が40重量%以上であることが好ましく、40〜45重量%であることがより好ましい。なお、酢酸ビニル単量体単位の含有量はJIS K−6924−1に準拠して測定することができる。また、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)は、本発明の樹脂組成物に顔料などを添加して着色シートに成形する場合、引張破壊ひずみが650%以上であることが好ましく、700〜850%であることがより好ましい。なお、引張破壊ひずみはJIS K−6924−2に準拠して測定することができる。
【0028】
その他の成分
本発明の樹脂組成物は、目的や用途などに応じて、発泡剤、ペットボトルの粉砕物及び抗菌剤から選ばれる少なくとも一種を含むことができる。
【0029】
発泡剤としては、特に限定されず、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド類;アクリロニトリル系コポリマーから構成されるシェルに封入された発泡剤などが挙げられ、これらのなかでもアゾジカルボンアミド、アクリロニトリル系コポリマーから構成されるシェルに封入された発泡剤が好ましい。前記発泡剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性成分100重量部に対し、2〜10重量部であることが好ましい。前記発泡剤の含有量が2重量部未満ではシート内での発泡がほとんど見られない傾向にあり、10重量部を超えると過発泡状態となり、伸度も強度も低下する傾向にある。
【0030】
ペットボトルの粉砕物としては、ペットボトルを大きさが0.5〜1.0mm程度になるよう粉砕したチップが好ましい。前記ペットボトルの粉砕物の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性成分100重量部に対し、5〜30重量部であることが好ましい。前記ペットボトルの粉砕物の含有量が5重量部未満では廃棄物のリサイクルの面から効果が少ない傾向にあり、30重量部を超えると破断伸度が300%以下になり、折り曲げによる亀裂が生じやすく、又比重が上がり目的とする軽量化に向かない傾向にある。
【0031】
抗菌剤としては、特に限定されず、無機抗菌剤が好ましく、銀系無機抗菌剤がより好ましく、例えば、銀を担持したアルミナ、シリカゲル、ゼオライト、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、チタン酸カリウム、ハイドロタルサイト、ガラスなどが例示できる。前記抗菌剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性成分100重量部に対し、0.2〜2.0重量部であることが好ましい。前記抗菌剤の含有量が0.2重量部未満では抗菌効果が顕著でない傾向にあり、2.0重量部を超えるとシートが黄変するなど着色する傾向にある。
【0032】
さらに、本発明の樹脂組成物は、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、補強材などを適宜含むことができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、上記成分を、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混合機を用いて調整することができる。各成分の混合順序は特に限定されない。混合に際しては、常温から自然発熱させ最終的には150℃程度まで温度を上げることが好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、成形してシートとして用いることができる。シートに成形する方法としては、特に限定されないが、連続シート化が可能なカレンダーロール機を用いることがコスト上、好ましい。本発明の樹脂組成物は、カレンダーロール機のロール上でぱさぱさにならず餅状の滑らかな混練物となるため、厚さ1.0mm以下の薄いシートに成形することも可能である。カレンダーロール機のロール本数、また、その配置は特に制限されない。例えば、2本ロール型、傾斜2本ロール型、3本ロール型、傾斜3本ロール型、逆L型4本ロール、L型4本ロール、Z型4本ロール、Camel−back型4本ロール、5本ロールカレンダーなどが挙げられる。カレンダーロール機のロールの温度は用いる樹脂組成物の融点および発泡剤の分解温度などによって異なるが、55〜65℃程度に設定することが好ましい。カレンダーロール機のロール通過後、樹脂は冷却ロールによって冷却固化されてシートが得られる。得られるシートはポリエチレンフイルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フイルム等のライナーは不要で、冷却後そのまま巻取りが可能であるため、後工程の成型の際に不要となるポリエチレンフイルムやPETフイルムの廃棄を軽減することができる。
【0035】
シートの厚さは、目的に応じて適宜選択されるが、床材やそれに使用する基材樹脂層に用いる場合は、0.4〜4.0mmの範囲であることが好ましく、特に軽量化を目的とする場合は0.5〜2.0mmの範囲であることが好ましい。
【0036】
本発明により得られるシートは、床材やそれに使用する基材樹脂層として好適に用いることができ、具体的には、床のきず防止材、床のスリップ防止材、カーペットやラグ及びマット等のバッキング材として使用することができる。一例として、バッキング材として使用する方法について以下に説明する。ナイロン糸、ポリエステル糸、再生PET糸、オレフィン糸及び綿糸を撚糸後、熱セットし、ポリエステルからなる不織布又は織布にタフトしてなる原反裏面に、本発明により得られるシートを重ね合わせ、圧力1.5〜3.5/cm、温度100〜140℃で1〜3分加圧加熱する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりで詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を制限するものではない。
【0038】
実施例及び比較例で用いた共重合体は以下の通りである。
【0039】
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1):スチレンの含有率が13重量%、硬度36、破断伸度が1200%のブロック共重合体
エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1):酢酸ビニルの含有率が42重量%、引張破壊ひずみが750%の共重合体
[実施例1]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)65部及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)35部をバンバリーミキサーを用いて150℃に保持しながら混練りして樹脂組成物を調製し、逆L型4本ロール(ロールの直径:16インチ)のカレンダーロール機を用いてロール温度を55〜65℃に設定して、厚さ1mmのシートを作成した。該樹脂組成物はロール上で餅状の滑らかな混練物となり容易にシート化することができた。
【0040】
[実施例2]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)の配合量を70部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)の配合量を30部とすること以外は、実施例1と同様に操作して、厚さ1mmのシートを作成した。該樹脂組成物はロール上で餅状の滑らかな混練物となり容易にシート化することができた。
【0041】
[実施例3]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)の配合量を75部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)の配合量を25部とすること以外は、実施例1と同様に操作して、厚さ1mmのシートを作成した。該樹脂組成物はロール上で餅状の滑らかな混練物となり容易にシート化することができた。
【0042】
[実施例4]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)75部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)25部をバンバリーミキサーを用いて150℃に保持しながら混練りした後、ミキシングロールでアゾジカルボンアミドを5部添加し更に混練りして樹脂組成物を調製し、逆L型4本ロール(ロールの直径:16インチ)のカレンダーロール機を用いてロール温度を55〜65℃に設定して、厚さ0.5mmのシートを作成した。該樹脂組成物はロール上で餅状の滑らかな混練物となり容易にシート化することができた。
【0043】
[実施例5]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)70部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)30部、1mm以下に粉砕したPETボトル粉砕チップ25部をバンバリーミキサーを用いて150℃に保持しながら混練りして樹脂組成物を調製し、逆L型4本ロール(ロールの直径:16インチ)のカレンダーロール機を用いてロール温度を55〜65℃に設定して、厚さ1mmのシートを作成した。該樹脂組成物はロール上で餅状の滑らかな混練物となり容易にシート化することができた。
【0044】
[実施例6]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)70部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)30部、リン酸ジルコニウムに銀を坦持させた抗菌剤(東亞合成株式会社製、商品名:ノバロンAG300)1部をバンバリーミキサーを用いて150℃に保持しながら混練りして樹脂組成物を調製し、逆L型4本ロール(ロールの直径:16インチ)のカレンダーロール機を用いてロール温度を55〜65℃に設定して、厚さ1mmのシートを作成した。該樹脂組成物はロール上で餅状の滑らかな混練物となり容易にシート化することができた。
【0045】
[比較例1]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)50部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)50部をバンバリーミキサーを用いて150℃に保持しながら混練りして樹脂組成物を調製し、逆L型4本ロール(ロールの直径:16インチ)のカレンダーロール機を用いてロール温度を55〜65℃に設定して、シートを作成しようとしたところ、樹脂組成物がロール上でぱさぱさになり、厚さが1mmのシートではシートに穴が開き均一なシートが作成できなかった。また、2mm設定のシートを作成したがシートの表面は凹凸になり、シートの厚さは1.4mm〜2.4mmでバラツキが生じ均一な厚さ2mmのシートが得られなかった。
【0046】
[比較例2]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)80部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)20部をバンバリーミキサーを用いて150℃に保持しながら混練りして樹脂組成物を調製し、逆L型4本ロール(ロールの直径:16インチ)のカレンダーロール機を用いてロール温度を55〜65℃に設定して、シートを作成しようとしたところ、樹脂組成物がロール上でぱさぱさになり、厚さが1mmのシートではシートに穴が開き均一なシートが作成できなかった。また、2mm設定のシートを作成したがシートの表面は凹凸になり、シートの厚さは1.8mm〜2.8mmでバラツキが生じ均一な厚さ2mmのシートが得られなかった。
【0047】
実施例1〜6で調製した各樹脂組成物を用いて、同様にして厚さ2mmのシートを作成して、硬度、比重、300%MD、抗張力、伸び、引き裂き強度、カレンダーロール加工性を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
比較例1及び2で調製した各樹脂組成物についても、同様にして厚さ2mmのシートを作成しようとしたが、均一な厚さ2mmのシートが得られず、300%MD、抗張力、伸び、引き裂き強度の測定はできなかった。
(1)硬度:JIS K 6253に従い測定した。
(2)比重:JIS K 6268に従い測定した。
(3)300%MD:JIS K 6251に従い測定した。
(4)抗張力:JIS K 6251に従い測定した。
(5)伸び:JIS K 6251に従い測定した。
(6)引き裂き強度:JIS K 6252に従い測定した。
(7)カレンダーロール加工性
カレンダーロール機を用いて、樹脂組成物をシート成形する際に、樹脂組成物がロール上で餅状の滑らかな混練物となり容易にシート化することができた場合を「○」、樹脂組成物がロール上でぱさぱさになってシート化するのが困難であった場合を「×」で示した。
【表1】

【0048】
[参考例1]
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(A1)75部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)25部をバンバリーミキサーを用いて150℃に保持しながら混練りした後、ミキシングロールでアゾジカルボンアミドを5部添加し更に混練りして樹脂組成物を調製し、逆L型4本ロール(ロールの直径:16インチ)のカレンダーロール機を用いてロール温度を55〜65℃に設定して、厚さ1mmのシートを作成した。
【0049】
再生PET糸を180回/m、200℃で1分間、撚糸後、熱セットしてなるパイル糸から構成される120g/mの不織布に、パイル長10mm、パイル重量が750g/mになるようにタフトした原反を重ね合わせた。次いで、原反裏面に上記シートを圧力2/cm、温度130℃で2分加圧加熱し、マットを作成した。得られたマットの総重量は1550gであり、バッキング材として用いた前記シートの厚さは1mmであった。得られたマットは軽量であり、滑らなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加化物からなる熱可塑性エラストマー(A)65〜75重量%、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)35〜25重量%から構成される熱可塑性成分を含んでなる樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体又はその水素添加物は、芳香族ビニル単量体単位の含有量が15重量%以下、硬度が40以下、破断伸度が1000%以上であり、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル単量体単位の含有量が40重量%以上、引張破壊ひずみが650%以上である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
発泡剤、ペットボトルの粉砕物及び抗菌剤から選ばれる少なくとも一種を含んでなる請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記発泡剤の含有量が、熱可塑性成分100重量部に対し、2〜10重量部である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ペットボトルの粉砕物の含有量が、熱可塑性成分100重量部に対し、5〜30重量部である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記抗菌剤の含有量が、熱可塑性成分100重量部に対し、0.2〜2.0重量部である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記請求項1〜6に記載の樹脂組成物を成形してなるシート。

【公開番号】特開2010−168501(P2010−168501A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13845(P2009−13845)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000104939)クリーンテックス・ジャパン株式会社 (13)
【出願人】(596151146)株式会社 シンコー (2)
【Fターム(参考)】