説明

樹脂組成物

【課題】短い成形サイクルで成形が可能で、高温での寸法安定性に優れ、耐熱性、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
実質的に結晶化しない乳酸系ポリマー、乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー、フィラーを含んでなる樹脂組成物、さらには樹脂結合剤を含んでなる樹脂組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形サイクル、高温での寸法安定性に優れ、耐熱性、耐衝撃性に優れた樹脂組成物に関する。さらに、樹脂結合剤によって耐熱性、耐衝撃性を向上せしめた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリレート系、ポリカーボネート系、ポリイミド系などに代表される高分子材料は、様々な産業用資材として有効に利用されている。これらの汎用高分子材料は、耐熱性や耐衝撃性等の機械物性には優れているが、廃棄する際その処理方法を誤るとゴミの量を増すうえに、自然環境下では殆ど分解しないため、埋設処理すると、半永久的に地中に残留する。 一方、熱可塑性樹脂で生分解性のあるポリマーとして、ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーが開発されている。これらのポリマーは、動物の体内で数カ月から1年以内に100%生分解し、また土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下では数週間で分解を始め、約1年から数年で消滅し、さらに分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水になるという特性を有している。
近年、これら乳酸系ポリマーを使用した家電製品筐体、自動車部品、ボトル、フィルム、シート、食器等の開発が進められている。これら用途では一般に耐熱性が必要とされるが、乳酸系ポリマーの耐熱性は汎用高分子材料に比べると劣っており、それらの向上が望まれている。
乳酸系ポリマーの耐熱性を向上させる技術として、特許文献1には、乳酸系ポリマーにウィスカーをブレンドし、ポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度以上、融解開始温度以下の範囲に温度設定された成形機の金型に充填し、結晶化させながら成形することにより、優れた耐熱性を有する乳酸形ポリマー組成物が得られることが記載されている。この技術では、耐熱性(高荷重たわみ温度)を向上させることができているものの、金型内での成形品の固化時間が45秒と非常に長く、生産性が悪いという課題が残っていた。また、乳酸系ポリマーが結晶性である為、結晶化が完全に終了していない場合は、高温環境において結晶化が進行し、成形品の物性、寸法等が変化する場合があった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−231799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、短い成形サイクルで成形可能であり、高温及び常温での寸法安定性に優れ、高い耐熱性及び耐衝撃性有する樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、実質的に結晶化しない乳酸系ポリマー(A)、乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)及びフィラー(C)を含んでなる樹脂組成物を提供する。
【0006】
前記乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)が、示差走査熱量測定(DSC)において速度10℃/minで測定した融解熱量が5J/g以上である樹脂組成物は本発明の好ましい形態である。
【0007】
前記フィラー(C)の形状が繊維状である樹脂組成物も本発明の好ましい形態である。
【0008】
樹脂結合剤を含有する樹脂組成物も本発明の好ましい形態である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、短い成形サイクルで成形可能であり、高温及び常温での寸法安定性に優れ、高い耐熱性及び耐衝撃性を有する樹脂組成物を得ることができる。また、成形サイクルを短くすることで、成形機内での樹脂劣化を抑制することができ、連続的に安定した成形を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で示す樹脂組成物とは、後述する実質的に結晶化しない乳酸系ポリマー(A)、乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)及びフィラー(C)を含んでなる組成物をいう。
【0011】
本発明において乳酸系ポリマー(A)とは、乳酸を主成分とするポリエステルである。乳酸のホモポリマーであっても、コポリマーであっても、これらの混合物であってもよい。乳酸系ポリマー(A)には、その構成成分として乳酸が50%以上、好ましくは75%以上含有されていることが望ましい。乳酸系ポリマー(A)を構成するその他の成分としては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸類、脂肪族ジカルボン酸類、脂肪族ジオール類などを挙げることができる。また乳酸系ポリマー(A)には、ポリマーの生分解性を損なわない範囲でテレフタル酸などの芳香族化合物が含有されていてもよい。
【0012】
乳酸系ポリマー(A)の原料に用いられる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸,DL−乳酸もしくはそれらの混合物または乳酸の環状2量体であるラクタイドなどの乳酸類から適宜選択されたものを使用することができる。また乳酸と併用できるヒドロキシカルボン酸類としては、炭素数2〜10の乳酸以外のヒドロキシカルボン酸類が好ましく、具体的にはグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などを好適に使用することができ、更にヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えばグリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンも使用できる。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸類としては、炭素数2〜30の飽和及び/又は不飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、飽和脂肪族ジカルボン酸の具体例としてはシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニレンジ酢酸等を挙げることができ、不飽和脂肪族ジカルボン酸の具体例としてはフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等を挙げることができる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0014】
脂肪族ジオール類としては、炭素数2〜30の脂肪族ジオールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0015】
原料としての乳酸以外のヒドロキシカルボン酸類、脂肪族ジカルボン酸類、脂肪族ジオール類は、得られるコポリマーならびに混合物中の乳酸含有率が50%以上になるように、種々の組み合わせで使用することができる。本発明において乳酸系ポリマー(A)としては特にポリ乳酸が好ましい。
【0016】
乳酸系ポリマー(A)は、上記原料を直接脱水重縮合する方法、または上記乳類やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライド、あるいはε−カプロラクトンのような環状エステル中間体を開環重合させる方法により得られる。
【0017】
直接脱水重縮合して製造する場合、原料である乳酸類又は乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を、脂肪族ジカルボン酸類及び脂肪族ジオ−ル類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した強度を持つ高分子量の乳酸系ポリマー(A)が得られる。乳酸系ポリマー(A)の重量平均分子量は、成形性が可能な範囲で高分子量のものが好ましく、3万以上100万以下がより好ましく、更に好ましくは7万以上50万が好ましく、特に好ましくは10万以上30万以下が好ましい。
【0018】
本発明で用いられる乳酸系ポリマー(A)は実質的に結晶化しないものが好ましい。本発明で示す実質的に結晶化しない乳酸系ポリマー(A)とは、示差走査熱量測定(DSC)において速度10℃/minで20℃から250℃まで昇温した際の融解熱量(ΔHm)が10J/g以下である乳酸系ポリマー(A)を示す。この範囲内になるように、乳酸系ポリマー(A)の構成単位を適宜選択することができる。
【0019】
実質的に結晶化しない乳酸系ポリマー(A)としてポリ乳酸を用いる場合、その光学純度(OP)は、98%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下が最も好ましい。光学純度(以下OP)は次式で計算される。
OP(%)=100×(|[L]−[D]|)/([L]+[D])
ここで、[L]はポリ乳酸中の構成単位としてのL−乳酸のモル濃度、[D]はポリ乳酸中のD−乳酸のモル濃度を表わす。
【0020】
本発明で用いられる乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)は、結晶性を有する熱可塑性ポリマーが好適に用いられ、示差走査熱量測定(DSC)において速度10℃/minで20℃から250℃まで加熱する際に融解熱量が5J/g以上である結晶性熱可塑性ポリマーを示す。
乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の汎用樹脂の他、ポリブチレンサクシネート、ポリブリレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンテレフタレートアジペート等の生分解性樹脂が挙げられる。これらの中でも特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリブチレンサクシネートを使用することが好ましい。これらは単独で使用しても良いし、二種以上を複合して使用しても良い。
【0021】
本発明では、フィラー(C)を添加することによって、耐熱性及び耐衝撃性を向上させることができる。フィラー(C)は公知公用のものを用いることができる。フィラーの中でも、その形状が繊維状(針状)である繊維状フィラーはアスペクト比(長さ/直径、直径/厚さ)が高く、他の形状のフィラーに比べ、耐熱性及び耐衝撃性を向上させる効果が高いため、本発明において好適に使用される。本発明で示す繊維状フィラーとは、アスペクト比が5以上のフィラーが好ましく、アスペクト比は20以上がより好ましく、50以上が最も好ましい。繊維状フィラーの具体例としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、各種ウィスカー等の無機物を含んでなる繊維状(針状)フィラー、ポリエステル繊維(ポリ乳酸繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等)、ナイロン繊維、アクリル繊維の合成高分子材料を含んでなる繊維状(針状)フィラー、セルロース繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、ケナフ繊維等の天然物を含んでなる繊維状(針状)フィラーが挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維、各種ウィスカー、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ケナフ繊維、セルロース繊維を使用することが好ましい。これらは単独で使用しても良いし、二種以上を複合して使用しても良い。
【0022】
本発明で示す樹脂組成物の組成比としては、乳酸系ポリマー(A)/乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)=80〜20/20〜80重量比が好ましく、さらに好ましくは70〜30/30〜70重量比である(ただし、乳酸系ポリマー(A)、乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)の合計を100とする)。前記範囲内の乳酸系ポリマー(A)/乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)の合計100重量部に対してフィラー(C)の含有量としては0.1〜50重量部が好ましく、0.5〜40重量部がより好ましく、1〜35重量部が最も好ましい。前記範囲内においては、成形性と機械物性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
本発明では、本発明で示す樹脂組成物に樹脂結合剤を含有することで、耐熱性及び耐衝撃性をより高めることができ好ましい。本発明における樹脂結合剤とは、乳酸系ポリマー(A)又は乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)のガラス転移温度よりも高い温度に加熱することによって次の(1)から(4)の効果を有する化合物を示す。
(1)乳酸系ポリマー(A)の分子鎖同士を結合させる化合物
(2)乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)の分子鎖同士を結合させる化合物、
(3)乳酸系ポリマー(A)と乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)の分子鎖を結合させる化合物、
(4)乳酸系ポリマー(A)及び/又は乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)と直接反応する化合物
(5)上記(1)〜(4)を複合した効果を有する化合物
樹脂結合剤の具体例としては、分子内に少なくとも一つの(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を有する化合物(以下、カルボジイミド化合物)、有機過酸化物、イソシアネート化合物等が挙げられ、この中でもカルボジイミド化合物及び有機過酸化物が好適に使用される。これらは単独で使用しても良いし、二種以上を複合して使用しても良い。
【0024】
カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を一つ有するものモノカルボジイミド化合物、カルボジイミド基を単一分子内に複数有するポリカルボジイミド化合物にいずれも好適に用いることができる。これらは単独で使用しても良いし、二種以上を複合して使用しても良い。モノカルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等のモノカルボジイミドが挙げられ、これらの中では、特に工業的に入手が容易であるという面から、ジシクロヘキシルカルボジイミド或いはジイソプロピルカルボジイミドが好適である。
【0025】
また、ポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができる。例えば、従来のポリカルボジイミドの製造方法(米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28, 2069−2075(1963)、Chemical Review l981,Vol.81 No.4、p619−621)により製造したもの、又は市販されているもの等を用いることができる。
【0026】
有機過酸化物としては、ヒドロキシパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシモノカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール等が挙げられる。
【0027】
イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合イソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられる。
【0028】
樹脂結合剤の添加量は、乳酸系ポリマー(A)/乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)の合計100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜5重量部がより好ましく、0.1〜3重量部が最も好ましい。
【0029】
乳酸系ポリマー(A)及び/又は乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)は、樹脂結合剤との反応性を高める為に、エチレン性不飽和結合含有カルボン酸、その無水物または誘導体をグラフトさせても良い。エチレン性不飽和結合含有カルボン酸、その無水物または誘導体(B2)は、1分子内にエチレン性不飽和結合とカルボキシル基および/またはその誘導体基とを合わせ持つ化合物である。エチレン性不飽和結合含有カルボン酸、その無水物または誘導体(B2)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸、商標)、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン-2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸、商標)等の不飽和カルボン酸;これらの不飽和カルボン酸の無水物;不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミドおよび不飽和カルボン酸のエステル等の誘導体などがあげられる。酸無水物および誘導体のより具体的なものとしては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸、塩化マレニル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートおよびメタクリル酸メチルなどをあげることができる。
【0030】
本発明で示す樹脂組成物には、成形性、二次加工性、保存安定性、耐候性、スリップ性、耐摩耗性、柔軟性、機械強度、耐久性、難燃性等のため各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、可塑剤、難燃剤、内部離型剤、外部離形剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、天然物、架橋助剤、その他の樹脂、各種フィラー等を添加することができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物の製造方法については公知の方法を用いることができる。たとえば、乳酸系ポリマー(A)、乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)、フィラー(C)、必要に応じて樹脂結合剤、添加剤等を予めブレンドした後、乳酸系ポリマー(A)の融点と乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)の融点のどちらか高いほうの融点以上において、1軸または2軸押出機を用いて均一に溶融混練する方法をあげることができる。分散性を向上させるために二軸押出機を用いることが好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は公知公用の射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、荷重0.45MPaでの荷重たわみ温度が70℃以上、好ましくは75℃以上であり、アイゾット衝撃強度は、6kJ/m、好ましくは10kJ/mであり、曲げ強度は、100MPa以上、好ましくは120MPa以上であり、曲げ弾性率は、3GPa以上、好ましくは4GPa以上であり、且つ70℃のオーブン中に10時間放置した後の成形品の寸法変化も見られない。さらに本発明による樹脂組成物に樹脂結合剤を含有させた場合、荷重たわみ温度は85℃以上、アイゾット衝撃強度は13kJ/m以上を示す。
なお、本発明で示す荷重たわみ温度はASTM D648に準じ、荷重0.45MPa条件下で測定したものをいい、アイゾット衝撃強度とは、ASTM D256に準じ、23℃、50%RH条件下でのノッチ付き試験片のアイゾット衝撃強度を測定したものいい、曲げ強度、曲げ弾性率は、ASTM D790に準じ、スパン間50mm、試験速度1.5mm/min、23℃、50%RH条件下で測定したものをいい、成形品の形状変化は、前記曲げ試験片の成形品を70℃のオーブン中に10時間放置した後の、成形品の寸法変化の有無を確認したものをいう。
【0034】
本発明による樹脂組成物は、成型加工性に優れ、成形後の高温及び常温での寸法安定性、耐熱性、耐衝撃性、強度に優れるため、幅広い用途での使用が可能である。たとえば電気・電子部品、建築土木部材、自動車部品、包装容器、日用品など各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、本発明において各種物性は下記の方法で測定し評価した。
【0036】
(1)融解熱量(ΔHm)
DSC6200(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、速度10℃/minで20℃から250℃まで加熱融解する際の融解熱量(ΔHm)を測定した。
(2)荷重たわみ温度
ASTM D648に準じて実施した。荷重0.45MPa条件下で測定した。
(3)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準じて実施した。23℃、50%RH条件下でのノッチ付き試験片のアイゾット衝撃強度を測定した。
(4)曲げ特性
ASTM D790に準じて実施した。スパン間50mm、試験速度1.5mm/min、23℃、50%RH条件下での曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
(5)成形品の形状変化
曲げ試験片の成形品を70℃のオーブン中に10時間放置した後の、成形品の寸法変化の有無を確認した。
【0037】
(実施例1)
実質的に結晶化しない乳酸系ポリマーとしてポリ乳酸(A−1)(H−280、三井化学(株)販売、重量平均分子量22万、OP=78%、ΔHm=0J/g)、乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマーとしてポリブチレンサクシネート(PBS)(B−1)(ビオノーレ1020、昭和高分子(株)製、ΔHm=52J/g)、フィラーとしてガラス繊維(CS3PE、日東紡績(株))製を重量比50:50:30でブレンドし、TEM35BS二軸押出機(東芝機械(株)製)でペレット化し、樹脂組成物を得た。次にTi−80G2射出成形機(東洋機械金属(株)製)で、シリンダー設定温度170〜200℃、金型温度30℃、冷却時間30秒の条件にて射出成形し、3.2mm厚のASTM試験片を得た。得られた機械物性結果を表1に示す。得られた曲げ試験片を70℃に設定したオーブン中に10時間放置したが、形状の変化はなかった。
【0038】
(実施例2〜3)
実施例2〜3では、表1に示す組成物を実施例1と同様に成形し評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
結晶性のポリ乳酸(A−2)(H−100、三井化学(株)販売、重量平均分子量17万、OP=97.6%、ΔHm=38J/g)を用いた他は実施例2と同様に成形し評価を行った。結果を表1に示す。得られた曲げ試験片を70℃に設定したオーブン中に10時間放置した結果、形状変化が確認された。
【0040】
(比較例2〜3)
比較例2〜3では、表1に示す組成物を実施例1と同様に成形し評価を行った。結果を表1に示す。いずれの場合も、得られた曲げ試験片を70℃に設定したオーブン中に10時間放置した結果、形状変化が確認された。
【0041】
(比較例4)
ポリ乳酸(A−2)(H−100)と炭酸カルシウムウィスカー(ウィスカルAS−3、丸尾カルシスム(株)製)を重量比100:60でブレンドし、TEM35BS二軸押出機(東芝機械(株)製)でペレット化し、樹脂組成物を得た。次にTi−80G2射出成形機(東洋機械金属(株)製)で、シリンダー設定温度170〜200℃、金型温度100℃、冷却時間30秒の条件にて射出成形し、3.2mm厚のASTM試験片を得ようとしたが、金型内で成形品が十分に固化しておらず、変形の無い試験片を得ることが出来なかった。また、冷却時間45秒でも同様に成形品が十分に固化せず、変形の無い試験片を得ることが出来なかった。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、短い成形サイクルで成形が可能で、高温での寸法安定性に優れ、耐熱性、耐衝撃性に優れた樹脂組成物の提供が可能となる。
さらに家電製品筐体や自動車部品に使用されている汎用樹脂を、植物を原料とし、生分解性を有する乳酸系ポリマー組成物で代替することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に結晶化しない乳酸系ポリマー(A)、乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)及びフィラー(C)を含んでなる樹脂組成物。
【請求項2】
乳酸系ポリマー以外の結晶性熱可塑性ポリマー(B)が、示差走査熱量測定(DSC)において速度10℃/minで測定した融解熱量が5J/g以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
フィラー(C)の形状が繊維状であることを特徴とする請求項1〜2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂結合剤を含有することを特徴とする請求項1〜3記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−28333(P2006−28333A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208946(P2004−208946)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】