説明

樹脂補強織物用ポリエステル繊維

【課題】繊維樹脂複合体としてその性能が十分に発揮される樹脂補強織物用ポリエステル繊維を提供すること。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートからなる繊維であって、切断強度が7.0cN/dtex以上、切断伸度が13%以上、0.10cN/dtex荷重下での230℃における熱収縮率が0.1〜5.0%であり、かつ該繊維表面にエポキシ化合物が繊維重量を基準として0.05〜1.0重量%付着していることを特徴とする。さらには、200〜230℃における熱収縮応力のピーク値が0.15cN/dtex以下であることや、単糸繊度が4.5〜6.0dtex、単糸数が190〜250filであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂のようなハロゲン含有ポリビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合系樹脂等の熱可塑性樹脂を補強するための織物として有用なポリエステル繊維に関するものである。さらに詳しくは、本発明は樹脂補強織物用の繊維としての力学的、熱的な寸法安定性に優れると共に、複合体としたときに前記熱可塑性樹脂との優れた接着性を発現する樹脂補強織物用ポリエステル繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル繊維は、優れた物理的、化学的性質を有していることから、工業的に大量生産され、各方面に多用されている極めて有用な繊維である。例えば、その繊維構造体(撚糸コードや布帛)をポリウレタン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合系樹脂等(以下、単に樹脂と略記することがある)と組み合わせることにより、帆布、テント、養生シート、搬送用ベルト等の広範な産業資材分野に使われている。
【0003】
しかしながら、ポリエステル繊維はこれら樹脂との接着性が悪いため、樹脂被覆繊維製品として使用する場合には、繊維・樹脂間に高い接着性を有しない場合は屈曲、捩じりなどの応力が負荷されると繊維・樹脂間に剥離が生じるという問題を有している。
【0004】
このような問題を解消するため、従来、製糸工程で繊維表面に接着向上剤を付与する方法が各種提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には延伸前の第一油剤でエポキシ化合物と平滑剤を含有する処理剤を付与し、次いで延伸後の第二油剤でエチレンイミンやポリアリルアミン化合物を配合した油剤を付与する方法が提案されている。また特許文献3には、高モジュラスの原糸に多価アルコールの1価脂肪酸エステルと芳香族含有ヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加物を含有する油剤を付与することによって接着性を改良する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、実際にはこれら表面処理剤による補強織物用繊維の改良の効果は、使用される場面における複合体内での繊維と樹脂との熱挙動の違いによって大きく左右されるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−59609号公報
【特許文献2】特開平5−125671号公報
【特許文献3】特開2005−2497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような現状に鑑み、繊維樹脂複合体としてその性能が十分に発揮される樹脂補強織物用ポリエステル繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂補強織物用ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートからなる繊維であって、切断強度が7.0cN/dtex以上、切断伸度が13%以上、0.10cN/dtex荷重下での230℃における熱収縮率が0.1〜5.0%であり、かつ該繊維表面にエポキシ化合物が繊維重量を基準として0.05〜1.0重量%付着していることを特徴とする。
【0009】
さらには、200〜230℃における熱収縮応力のピーク値が0.15cN/dtex以下であることや、単糸繊度が4.5〜6.0dtex、単糸数が190〜250filであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維樹脂複合体としてその性能が十分に発揮される樹脂補強織物用ポリエステル繊維が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の樹脂補強織物用ポリエステル繊維は、主としてポリエチレンテレフタレートから構成されるが、該ポリエステルには本発明の目的を阻害しない範囲内、例えば全酸成分を基準として10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲内で第三成分が共重合されたものであってもよい。好ましく用いられる共重合成分としては、例えば、酸成分としてイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができ、また、ジオール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等を挙げることができる。さらに、上記ポリエステル中には少量の他の重合体や酸化防止剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤その他の添加剤が含有されていてもよい。
【0012】
かかるポリエステルの固有粘度としては、0.60〜0.80の範囲、さらに好ましくは0.65〜0.75の範囲であることが好ましい。固有粘度が低すぎる場合には、切断強度や切断伸度が低下する傾向にあり、本発明の繊維を用いた樹脂補強製品に必要な耐久性が得にくい傾向にある。一方、固有粘度が大きすぎると、繊維の熱収縮特性、特に収縮応力が良好な接着性を達成するに必要な後述の範囲にすることが困難となる傾向にある。
【0013】
上記のようなポリエステルからなる本発明の樹脂補強織物用のポリエステル繊維は、その切断強度が7.0cN/dtex以上、切断伸度が13%以上であることが必要である。切断強度は、製品重量対比の強力の点から7.0cN/dtex以上、好ましくは7.3cN/dtex以上であるが、高くしすぎると製糸性の悪化や切断伸度低下によるタフネスの低下をまねきやすいので、高々8.0cN/dtexとするのが好ましい。
【0014】
次に破断伸度は13%以上、好ましくは15%以上とするのが、最終製品の繊維樹脂複合体に繰返し応力が負荷された場合でも、応力集中による断糸を抑制して耐疲労性を向上させる上で好ましい。
【0015】
さらに、本発明における最大の特徴は0.10cN/dtex荷重負荷時の230℃における熱収縮率を0.1〜5.0%、好ましくは0.1〜3.0%とすることにある。収縮応力が大きいポリエステル繊維を原糸として用いた場合、樹脂と複合する前の織物の熱セット工程において、樹脂補強織物が縦方向に収縮し、繊維フィラメント間の密度及び、緯密度が高まるため、織物構造が全体的に締まった状態となるが、このような状態の織物には接着剤が深く浸透しにくくなり、最終的に樹脂繊維複合体となった時に樹脂と繊維との間に微細な空隙が生じ、接着力が低下する。特に本発明では従来からの単なる低収縮の繊維を原糸に用いるだけではなく、収縮応力を低くすることが肝要である。収縮率が低くても収縮応力が高い場合には、樹脂補強織物の熱セット工程でセット荷重に抗して収縮してしまい織密度が高まってしまうからである。高い接着力の実現のためにはより具体的には0.10cN/dtexの荷重を負荷した条件での230℃における熱収縮率が5.0%を超えないようにする必要がある。この収縮率は低いほど良いが、全く収縮がない場合には最終製品の寸法精度が悪化するため、0.1%以上とすることが好ましい。
【0016】
一般に樹脂補強用織物のポリウレタンまたは塩化ビニル系樹脂による被覆は、例えば、樹脂フィルムを熱圧着させるラミネート法、溶液状のペーストに浸漬する方法、あるいは熱ローラで混練した樹脂を被覆するカレンダー法などが広く用いられている。このとき接着前処理としてイソシアネート化合物などを含有する接着剤をあらかじめ樹脂補強用織物(あるいは帆布)に塗布することが行われるが、樹脂接着力は織物への接着剤の浸透性と強い相関があり、織物への接着剤が浸透しやすいほど接着力は良好となる。従来織物への剤浸透性を決定する大きな因子としては、繊維表面の油剤成分との親和性が考えられてきたが、本発明者らの研究によれば、接着剤の浸透性は織物構造の寄与が極めて大きく、更にその織物構造は原糸の収縮応力に大きく依存することが明らかとなったのである。すなわち一般に樹脂補強織物(帆布)の熱セットは、200〜230℃の温度雰囲気下で帆布に一定荷重を負荷して行うが、この状態での繊維の熱収縮挙動が極めて重要な要素となるのである。
【0017】
従って上記の熱収縮率とともに200〜230℃における熱収縮率のピーク値も重要であり、本発明のポリエステル繊維の収縮応力としては0.15cN/dtex以下、好ましくは0.10cN/dtex以下であることが好ましい。収縮応力は低いほど好ましいが、本発明のように固有粘度が0.65以上の高強力ポリエステル繊維を用いた場合には、0.05cN/dtex程度が限度となろう。このような熱収縮率を得るためには、例えばポリエステル繊維製造工程の熱処理条件、特には熱セット後の弛緩条件を適切に設定することによって得ることが可能である。
【0018】
本発明の樹脂補強織物用のポリエステル繊維としては、その単糸繊度が4.5〜6.0dtex、単糸数としては190〜250フィラメントであることが好ましい。このような範囲とすることにより最終製品の繊維樹脂複合体としたときの、強力や疲労性等の各物性のバランスを最適に保つことが出来る。
【0019】
一方、本発明の樹脂補強織物用ポリエステル繊維でもその繊維表面に付与する油剤の成分は樹脂接着に無視できない影響を与えるため、本発明のポリエステル繊維表面にはエポキシ化合物が繊維重量を基準として0.05〜1.0重量%付着していることが必要である。このように繊維に付着させるためには、繊維製造工程で用いられる処理剤中に、エポキシ化合物が10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%含まれているものを用いれば良い。かかるエポキシ化合物はポリエステル繊維内部に浸透すると共に、エポキシに由来するOH基などの反応性基の存在がウレタンとの水素結合によって強い相互作用を有し、繊維と樹脂を効果的に結合せしめるよう作用する。
【0020】
本発明で用いられるエポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましく、例えばグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用しても良い。またこれらエポキシ化合物は、通常水性溶液または水性分散液として繊維上に付与されるが、エポキシ基の硬化触媒を併用するのが好ましい。好ましく用いられるエポキシ基の硬化触媒としては、アミン化合物、酸無水物等を挙げることができるが、とりわけアミン類、例えば脂肪族アミン、変性脂肪族アミン、芳香族ポリアミン、変性脂環式ポリアミン、ポリアミドアミン、変性ポリアミドアミン、3級アミン等が好ましい。
【0021】
このようなエポキシ化合物やエポキシ硬化触媒の付与は、繊維の製造工程において紡糸した後、両者を混合して同時に延伸前の未延伸糸または延伸後の延伸糸に付与しても、別々、例えば延伸前の未延伸糸にエポキシ硬化触媒を付与し、延伸後にエポキシ化合物を付与する等のいずれの方法を採用することもできる。ただし処理液の安定性の面から、エポキシ化合物とエポキシ硬化触媒を別々に付与する方法がより好ましい。この処理液中には、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、上記成分以外の平滑剤、乳化調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐光安定剤等を適宜必要に応じて併用しても構わない。なお、アミン化合物は、適量使用で接着性向上効果が期待できるものの、熱処理による黄変を引き起こす作用を有するため、過剰に使用しないよう留意する必要がある。
【0022】
延伸工程の前後でエポキシ化合物が付与された繊維は、エポキシの硬化を促進するため、40〜70℃の温度雰囲気下で、2〜10日程度熱処理することが好ましい。このような強制的な硬化処理によって、繊維上の接着皮膜強度を高め、樹脂との剥離接着力をより向上させることができる。逆にこのような硬化工程を省略した場合、硬化前のエポキシは粘性が高く、撚糸、製織、熱セット工程などの織物にするための後加工工程において繊維表面から脱落しやすく、設備の汚れや織物上へのスカム付着などの問題を引き起こす傾向にある。エポキシが繊維上で適度に硬化した場合、製織などの工程で擦過を受けても発生するスカムが粉状であり、トラブルの原因となりにくいのである。また硬化することにより摩擦抵抗が低くなるため、繊維の工程途中での単糸切れなども効果的に抑制される。また十分に硬化処理された繊維は経時による変色がなく、白度の高い樹脂の補強用途として特に好適に使用することができる。
【0023】
かかる油剤の給油方法については、ローラータッチ、計量オイリングノズル、油剤液中ディップやスプレーなどいずれの方法も採用できる。油剤の付着量は、繊維重量を基準として0.05〜1.0重量%、好ましくは0.10〜0.50重量%付着していることが必要である。0.05重量%未満の場合には、接着助剤としての作用が小さくなるので好ましくなく、一方、1.0重量%を超える場合には、加工工程でのスカムや帆布が固くなるなどの弊害が発生するため好ましくない。
【0024】
このような本発明の樹脂補強織物用ポリエステル繊維は特定の収縮応力を有するため熱セット後の織物構造が適度となり、接着剤が浸透しやすくなること、及び樹脂との相互作用の強い表面処理剤を有するため、良好な接着性を有する。また樹脂加工するまでの各種工程における工程通過性にも優れており、品位に優れた繊維補強樹脂製品を生産性よく提供することができる。またその接着性と物性のバランスの良さから、その繊維を用いた織物をポリウレタン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合系樹脂等の各種樹脂と組み合わせて、樹脂繊維複合体とするのに最適であり、帆布、テント、養生シート、搬送用ベルト等の広範な産業資材分野に用いることができる。特に本発明のポリエステル繊維は繊維としての強力とその寸法安定性からベルト用の基布として最適に用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例により限定されるものではない。なお、本発明の評価に用いた測定法は以下の通りである。
【0026】
(1)固有粘度
ポリマー又は繊維をフェノール/テトラクロロエタン=1/1(容量比)混合溶媒に溶解し、30℃において測定した。
【0027】
(2)繊度、切断強度、荷重伸度
JIS−L1013に準拠して測定した。
【0028】
(3)荷重下における熱収縮率
繊維を50cm以上の長さに切り取り、一端を固定して他端に0.10cN/dtexとなるように重りを吊り下げる。固定端から50cmの部分に印をつけ、230℃に維持された恒温槽の中で試料を30分間収縮させ、収縮後の長さから収縮率を算出する。
【0029】
(4)接着力
得られた織物をピンテンターを用いてセット荷重9kg、200℃で90秒熱セットした。この熱セット反にイソシアネート系接着剤(大日本インキ(株)製)を塗布(厚み約0.05mm)し、24時間風乾した。このセット反にウレタン樹脂シートを貼り合わせた後、3kg/cmの荷重下190℃3分間の熱処理を行った。24時間放置後、塩ビと織物間の180°剥離力を引張試験機で測定した。接着力はN/2.5cmの値で示した。
【0030】
(5)工程通過性
撚糸工程における糸切れ回数が1回/100km未満、または製織時の糸切れが1回/100km未満、または除去困難な粘着性のスカムが発生した、のうちいずれにもあてはまらない場合を○、いずれかの不具合が見られた場合には×とした。
【0031】
(6)製品品位
目視で均整性、変色、毛羽、スカム汚れを確認し何れも問題ない場合○、1つでも問題あれば×とした。
【0032】
[実施例1〜2]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレートチップを65Paの真空度下、100℃で2時間予備結晶化した後、同真空下230℃で固相重合を行い、重合時間を調整することにより表1に示す固有粘度のポリエチレンテレフタレートチップを得た。このチップを溶融押し出し機で溶融し、延伸後の繊度が1100dtexとなるように吐出量を調整しながら孔径0.4mm、孔数192個の紡糸口金より紡糸した。紡出糸を300℃に加熱した口金下の加熱雰囲気中を通過させ、25℃の冷却風で冷却固化し、オイリングローラーで紡糸油剤を付着量が0.30%となるように付着せしめた後、それぞれの紡糸速度で引取った。
【0033】
引取った未延伸糸を、一旦巻取ることなく連続して、表面温度が100℃とした予熱ローラと130℃とした延伸ローラとの間で1段目の延伸を行い、次いで該延伸ローラと第2延伸ローラとの間で2段延伸を行った。その際表1記載の熱セット温度に加熱した第2延伸ローラで熱セットを施した。次いで、該熱セットローラと弛緩ローラ間で弛緩しつつ、エポキシ化合物(デナコールEX−313、ナガセケムテックス製)をオイリングローラーにより付着率が0.15%となるように付与した後、3500m/分速度で巻取って本発明の樹脂補強織物用ポリエステル繊維を得た。
【0034】
次いで得られた本発明のポリエステル繊維を撚り数15T/10cmとなるよう撚糸し、経糸60本/5cm、緯糸60本/5cmとなる密度で織物を作り、樹脂補強織物とした。
繊維の製造条件と物性、及び樹脂補強織物の性能を表1に示す。
【0035】
[比較例1]
実施例1において、紡糸油剤の付着率を0.45%になるように調整し、延伸工程にてエポキシを付着させなかった以外は実施例1と同様にしてポリエステル繊維及び樹脂補強織物を得た。得られた繊維の製造条件と物性、及び樹脂補強織物の性能を表1に併せて示す。
【0036】
[比較例2]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレートチップを65Paの真空度下、100℃で2時間予備結晶化した後、同真空下240℃で固相重合を行い、固有粘度1.01のポリエチレンテレフタレートチップを得た。このチップを溶融押し出し機で溶融し、延伸後の繊度が1100dtexとなるように吐出量を調整しながら孔径1.0mm、孔数249個の紡糸口金より紡糸した。紡出糸を250℃に加熱した口金下の加熱雰囲気中を通過させ、25℃の冷却風で冷却固化し、オイリングローラーで紡糸油剤を付着量が0.30%となるように付着せしめた後、紡糸速度2100m/分で引取った。
【0037】
引取った未延伸糸を、一旦巻取ることなく連続して、表面温度が70℃とした予熱ローラと80℃とした延伸ローラとの間で1段目の延伸を行い、次いで該延伸ローラと第2延伸ローラとの間で2段延伸を行った。その際表1記載の熱セット温度に加熱した第2延伸ローラで熱セットを施した。次いで、該熱セットローラと弛緩ローラ間で3%の弛緩率で弛緩しつつ、エポキシ化合物(デナコールEX−313、ナガセケムテックス製)をオイリングローラーにより付着率が0.15%となるように付与した後、5000m/分の速度で巻取って高収縮応力のポリエステル繊維(延伸糸)及び樹脂補強織物を得た。得られた繊維の製造条件と物性、及び樹脂補強織物の性能を表1に併せて示す。
【0038】
[比較例3]
比較例2において、紡糸油剤の付着率を0.45%になるように調整し、延伸工程にてエポキシを付着させなかった以外は比較例2と同様にしてポリエステル繊維及び樹脂補強織物を得た。得られた繊維の製造条件と物性、及び樹脂補強織物の性能を表1に併せて示す。
【0039】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートからなる繊維であって、切断強度が7.0cN/dtex以上、切断伸度が13%以上、0.10cN/dtex荷重下での230℃における熱収縮率が0.1〜5.0%であり、かつ該繊維表面にエポキシ化合物が繊維重量を基準として0.05〜1.0重量%付着していることを特徴とする樹脂補強織物用ポリエステル繊維。
【請求項2】
200〜230℃における熱収縮応力のピーク値が0.15cN/dtex以下である請求項1記載の樹脂補強織物用ポリエステル繊維。
【請求項3】
単糸繊度が4.5〜6.0dtex、単糸数が190〜250filである請求項1または2に記載の樹脂補強織物用ポリエステル繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂補強織物用ポリエステル繊維を用いたベルト用基布。

【公開番号】特開2007−224451(P2007−224451A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46786(P2006−46786)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】