説明

樹脂製中空容器および樹脂製中空容器の製造方法

【課題】インサート部品との接合強度が高く、貯留物の貯留安定性に優れた樹脂製中空容器とその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】樹脂製の中空容器本体とインサート部品とを備え、インサート部品は芯部材を中空容器本体とは異なる樹脂材料からなる樹脂部材に埋め込んだものであり、かつ、樹脂部材に接着層を設けて中空容器本体にインサートしてあることを特徴とする樹脂製中空容器とした。
樹脂製中空容器をガソリン等の燃料タンクに適用するには、中空容器本体には燃料ガスの透過防止性に優れるナイロン樹脂を用い、インサート部品の樹脂部材には吸湿で剛性低下しないポリオレフィン樹脂を用い、この中空容器本体とインサート部品の樹脂部材部分とを変性ポリエチレンシートよりなる接着層で接合するのが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製中空容器とその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車、自動二輪車等の燃料タンクにおいて、特開平5−116548号公報に開示するように燃料タンクを樹脂製の中空容器で形成する技術は公知であり、貯留燃料の透過を防止するためにナイロン樹脂を単層又は積層して用いることも知られている。
しかし、ナイロン樹脂には吸湿により剛性が低下する傾向があり、取付金具をインサート成型すると、取付金具とナイロン樹脂との接合部が吸湿により弱くなり取付金具の接合強度(引抜強度)が低下し、樹脂製の中空容器を安定して固定できない技術的課題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平5−116548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術的課題に鑑みて、インサート部品との接合強度が高く、貯留物の貯留安定性に優れた樹脂製中空容器とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的要旨は、樹脂製の中空容器本体とインサート部品とを備え、インサート部品は芯部材を中空容器本体とは異なる樹脂材料からなる樹脂部材に埋め込んだものであり、かつ、樹脂部材に接着層を設けて中空容器本体にインサートしてあることを特徴とする樹脂製中空容器とした点である。
【0006】
ここで、インサート部品が芯部材を中空容器本体とは異なる樹脂材料からなる樹脂部材に埋め込んだものにしたことにより中空容器本体の樹脂材料は貯留又は充填する内容物の種類に最適な樹脂材料を選定しつつインサート部品は芯部材との接合強度を考慮して芯部材の埋め込み材料を選定することができる。
このインサート部品の形成方法は限定されず、射出成型を用いた芯部材をインサート成形で形成しても、樹脂部材に機械的に芯部材を埋め込むもの等でも良い。
例えば樹脂製中空容器をガソリン等の燃料タンクに適用するには、中空容器本体には燃料ガスの透過防止性に優れる樹脂を選定するのがよく、例えばナイロン樹脂を用い、インサート部品の樹脂部材には吸湿による剛性低下がほとんどないポリオレフィン樹脂を用い、この中空容器本体とインサート部品の樹脂部材部分とを樹脂材に適した熱接着性樹脂例えばナイロン樹脂とポリオレフィン樹脂の場合には変性ポリエチレンシートからなる接着層で接着するのが良い。
なお、ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン樹脂が好ましい。
中空容器本体とインサート部品の樹脂部材との樹脂材料が異なる場合に、インサート部品を直接インサートすると、この樹脂材料間の接合強度が十分に得られない場合があるが、変性ポリエチレン樹脂のような接着性樹脂を介在させることで、ブロー成型による一体成形ができる。
【0007】
樹脂製中空容器の製造方法としては、インサート部品として中空容器本体と異なる樹脂材料からなる樹脂部材に芯部材を埋め込んだインサート部品を用いて、金型内にインサート部品を配置し、インサート部品をインサートするようにブロー成型して中空容器本体とインサート部品とを一体に成形する方法が考えられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る樹脂製中空容器は、中空容器本体を形成する樹脂材料と、インサート部品の芯部材を埋め込んだ樹脂部材の樹脂材料とを異ならせて、それらを接着層で接合してあるために、中空容器本体は貯留する対象物の貯留性に優れ、芯部材は環境負荷に依らず高剛性に支持された樹脂製中空容器とすることが出来る。
例えば樹脂製中空容器を樹脂製燃料タンクに適用するには、中空容器本体を燃料ガスの透過防止性に優れるナイロン樹脂で形成し、燃料タンクの取付金具を支持する樹脂部材を耐湿性に優れるポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂で形成し、接着層を変性ポリエチレンで形成することで、ガスバリア性に優れながら取付金具の引抜強度の低下を抑えた樹脂製燃料タンクが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る樹脂製の中空容器を燃料タンクに適用した実施例について図を用いて説明する。
図1は樹脂製中空容器(燃料タンク)10の縦断面図を示す。
樹脂製中空容器10はガソリン等の燃料透過防止性に優れるナイロン樹脂製の中空容器本体20と、インサート部品30とを備えていて、中空容器本体20とインサート部品30とは、接着層33を設けて互いに接着してある。
インサート部品30は、取付金具である金属製の芯部材31を樹脂部材32に埋め込んである。
図2(a)に芯部材31の断面図を示し、インサート部品30の断面図を図2(b)に示す。
芯部材31には、シート固定部材(図示省略)をネジ止めするための雌ねじ31aが設けてある。
このインサート部品30は、芯部材31を雌ねじ31aが開口する側面を除いてポリエチレン樹脂よりなる樹脂部材32で埋め込み、かつ、そして樹脂部材32のこの雌ねじ31aが開口して露出する側を除いた外周に接着層33を形成するように射出成型して、これらを一体成型してある。
なお、芯部材31を樹脂部材32で埋め込む方法は本実施例で示した射出成型によるインサート成形でも圧入等の機械的埋め込みでもよく、金具の接合強度(引抜強度)が確保できれば成形方法は限定されない。
また接着層33はインサート部品側でも中空容器本体側でもよい。
【0010】
インサート部品30と中空容器本体20とをブロー成型装置1で一体成形する方法を図3の模式図で説明する。
成型装置1は説明のために簡略化して描いてある。
図3(a)に示すように成型装置1は対向して開閉する成型金型2、3と、両金型の間のキャビティ4へ向けた押出機5を有している。
図3(a)は、溶融ナイロン樹脂を押出機5のダイス6からチューブ形に押し出した、中空容器本体に成型するためのパリソン20aをキャビティ内に示してある。
インサートするインサート部品30は、図2(b)に示す雌ねじ31aが開口した側面30aを金型2のキャビティ壁面4aに密着させて、接着層33がキャビティ4の内方側となるようにキャビティ壁面4aに予熱した上で取り付けてある。
成型装置1は押出機5からの押し出しによりパリソン20aが所定長さとなった後に、金型2、3を閉じて、ダイス6に設けられている吹込口6aから空気を吹き込む。
これによりパリソン20aをキャビティ壁面とインサート部品30の接着層33に密着するように膨らませて、図3(b)に示すように中空容器本体20がインサート部品30と接着層で接着して一体化するようにブロー成型する。
インサート部品30と中空容器本体20とが一体化した樹脂製中空容器10は、冷却後に金型2、3を開いて取出して、給油口10a、送出口(図示省略)を穿孔し、バリ等の不要部位を取り除く。
ナイロン樹脂よりなる中空容器本体20の肉厚は、2〜6mm、好ましくは2〜4mmにするのがガソリン等の燃料の透過を防止するのによい。
ここで、インサート部品30を金型キャビティ内に配置してブロー成型することで、インサート部品を鋳込んだ容器内側にはナイロン樹脂層が形成されているので、燃料バリア層はインサート部においても連続的に形成されていることになる。
なお、樹脂製中空容器の製造方法は、インサート部品を中空容器本体のブロー成型の際にインサートして、接着層でインサート部品と中空容器本体とを互いに接着して一体成形するものであれば上記方法に限定されず、例えばパリソンは予め別工程で成形されたものを使用しても良い。
【0011】
この樹脂製中空容器の実施例に取り付けた芯部材の引抜強度試験を行った。
試験に使用する樹脂製中空容器の実施例と比較例の構成内容を図4(a)に示す。
実施例は、ナイロン樹脂製の中空容器本体に、ポリエチレン樹脂製の樹脂部材を有して変性ポリエチレンの接着層を有するインサート部品をインサートして形成してある。
このインサート部品の接着層は、変性ポリエチレンの接着シートをインサート部品の成型時にインサートして形成した。
また、接着シートは、変性ポリエチレン接着剤(アドテックス、FT61AR3、日本ポリエチレン株式会社製)を熱プレス機で厚み0.4mmにプレス成型して作製した。
比較例1は、ナイロン樹脂製の中空容器本体に、ナイロン樹脂製の樹脂部材を有して変性ポリエチレンの接着層を有するインサート部品をインサートして形成した。
比較例2は、ナイロン樹脂製の中空容器本体に、芯部材を樹脂部材と接着シートを用いないで直接インサートして形成した。
比較例3は、ナイロン樹脂製の中空容器本体に、ナイロン樹脂製の樹脂部材を有して接着層を有しないインサート部品をインサートして形成した。
引抜強度試験は、実施例と各比較例の樹脂製中空容器を、それぞれ成型後24時間放置してそのまま測定したものと、成型後24時間放置した後に50℃温水中に1週間浸漬させて吸水させたものの芯部材の引抜強度(N)を、引抜速度30mm/minで測定した。
試験結果を図4(b)に示す。
本発明に係る樹脂製中空容器の実施例は、比較例に比較して温水浸漬後の引抜強度が最も高い値を示し、吸湿による低下も小さい。
【0012】
本発明の実施例を燃料タンクの成形例にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の趣旨は、中空容器本体に取付金具、配管部品、口金等の部品を直接的にインサート成形すると取付金具等のインサート部品と樹脂との接合部に要求される、例えば耐湿性が要求される引抜強度等が充分に得られない場合にインサート部品を中空容器本体とは異なる樹脂に埋め込み(鋳込み)、この樹脂に埋め込んだ(鋳込んだ)インサート部品と中空容器本体とを接着層を介在させて一体成形することで複合的な総合品質を確保できるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る樹脂製中空容器を燃料タンクに適用した実施例を示す。
【図2】(a)は芯部材の断面図を示し、(b)はインサート部品の断面図を示す。
【図3】樹脂製中空容器の成型方法の説明図を示す。
【図4】樹脂製中空容器の芯部材の引抜強度試験の内容を示す。
【符号の説明】
【0014】
1 ブロー成型装置
2、3 成型金型
4 キャビティ
4a キャビティ壁面
5 押出機
6 ダイス
6a 吹出口
10 樹脂製中空容器(燃料タンク)
10a 給油口
20 中空容器本体
20a パリソン
30 インサート部品
30a 雌ねじ開口側面
31 芯部材(取付金具)
31a 雌ねじ
32 樹脂部材
33 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の中空容器本体とインサート部品とを備え、
インサート部品は芯部材を中空容器本体とは異なる樹脂材料からなる樹脂部材に埋め込んだものであり、かつ、樹脂部材に接着層を設けて中空容器本体にインサートしてあることを特徴とする樹脂製中空容器。
【請求項2】
中空容器本体はナイロン樹脂よりなり、芯部材を埋め込んだ樹脂部材はポリオレフィン樹脂よりなることを特徴とする請求項1記載の樹脂製中空容器。
【請求項3】
接着層は変性ポリエチレン樹脂よりなることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂製中空容器。
【請求項4】
インサート部品は中空容器本体と異なる樹脂材料からなる樹脂部材に芯部材を埋め込んであり、
金型内にインサート部品を配置し、
インサート部品をインサートするようにブロー成型することを特徴とする樹脂製中空容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−253403(P2007−253403A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79231(P2006−79231)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】