説明

樹脂製品の廃棄処理方法及び樹脂製品の廃棄処理装置

【課題】 樹脂製品の廃棄処理方法及び樹脂製品の廃棄処理装置に関し、使用済みプリント回路基板等の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理における鉛等の有害金属による環境汚染を防止する。
【解決手段】 有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて灰化したのち、灰化工程で生じた灰を溶融炉で加熱して溶融体を生じさせ、次いで、溶融体を冷却して溶融固化物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂製品の廃棄処理方法及び樹脂製品の廃棄処理装置に関し、有害金属を含む樹脂製品、例えば、電子部品搭載基板、特に、使用済みのプリント基板をハンダ等に含まれる鉛の流出等、環境に悪影響を与えることなく廃棄処理するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電気機器製品の廃棄物量は年々増加しているが、その中に部品として含まれるプリント基板は電気機器製品の高機能化等に伴って特に増加しており、このようなプリント基板については、一般的に破砕した後に埋立処理されている。
【0003】
しかし、プリント基板には、鉛等の有害金属を含むハンダや電気部品等が搭載されており、将来的に埋立地において浸水中に含まれて流れ出すことが懸念される。
【0004】
そこで従来、プリント基板の廃棄処理に際しては、プリント基板上のハンダを加熱・振動処理することで、ハンダを落下回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−017948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のプリント基板の処理方法では約60%程度のハンダ回収率しか示されておらず、残りの40%程度はプリント基板に付着したままであった。
したがって、このままプリント基板を埋立地に廃棄した場合、未処理のプリント基板よりは鉛等のリスクは軽減できるものの、残ったハンダからの鉛等の溶出は避けられず、鉛溶出によるリスクを完全に払拭できるものではなかった。
【0006】
なお、近年、このようなハンダによる鉛汚染を防止するために、鉛を使用しないPbフリーハンダが用いられているが、Pbフリーハンダに含まれるBi等の金属の環境に対する影響は明らかではなく、Pbフリーハンダを使用したプリント基板の処理においても耐環境性の配慮が必要になる。
【0007】
また、使用済みプリント基板の廃棄処理においては、プリント基板に実装している半導体集積回路装置やコンデンサ等の電子部品も加熱・振動により落下・取外しを試みているが、全てが外れる訳ではなく、外れなかった電子部品はプリント基板と一緒に廃棄されるため、電子部品の構成材料による環境汚染も問題になる。
【0008】
したがって、使用済みプリント基板等の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理における鉛等の有害金属による環境汚染を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
本発明の一観点によれば、樹脂製品の廃棄処理装置であって、有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて灰化する燃焼炉と、前記燃焼炉で生じた灰を加熱して溶融させる溶融炉とを具備することを要件とする。
【0010】
有害金属を含む樹脂製品、例えば、プリント基板等の電子部品搭載基板はエポキシ樹脂やガラス繊維で構成されているので、電子部品搭載基板を燃焼させて炭素を除去して灰化したのち、さらに高温で溶融したのち冷却することにより無機物の溶融固化物になるので、灰化のための燃焼炉と溶融のための溶融炉を備えることによって、電子部品搭載基板を無機物の溶融固化物として廃棄することが可能になる。
なお、本発明における「有害金属を含む樹脂製品」とは、プリント基板が典型的なものであるが、プリント配線基板に限られるものではなく、インターポーザーやパッケージ基板等或いはICカード等のカード類も含むものであり、また、基板に電子部品が実装されているものも或いは実装されていない基板自身も含むものである。
【0011】
この場合、溶融炉を電気炉とし、燃焼炉で生じた熱エネルギーを用いて発電するとともに、発電した電力を前記電気炉に供給する発電機をさらに具備することが望ましく、それによって、燃焼に伴う排熱を有効に利用することによってエネルギー消費量の低減を図ることができる。
また、溶融炉で生じた熱エネルギーを用いて発電する発電機をさらに設けても良い。
さらに、各発電機で発電した電力を貯える蓄電池をさらに具備しても良い。
【0012】
また、本発明の別の観点からは、樹脂製品の廃棄処理方法としては、有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて灰化する灰化工程と、前記灰化工程で生じた灰を溶融炉で加熱して溶融体を生じさせる溶融工程と、前記溶融体を冷却して溶融固化物とする冷却工程とを有することを要件とする。
【0013】
このように、有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて炭素を除去して灰化したのち、さらに高温で溶融したのち冷却することにより無機物の溶融固化物とすることができ、この溶融固化物内に鉛等の有害金属が封じ込められるので、埋立地に投棄した場合でも、浸水中の鉛溶出量を極めて少なくすることができる。
【0014】
この場合の冷却工程としては、溶融体を溶融炉から大気雰囲気へ取り出して冷却する急冷工程が望ましく、それによって、無機物の溶融固化物が形成される。
【0015】
また、灰化工程において、燃焼熱を利用して発電を行い、生じた電力を上記溶融工程における溶融炉の加熱に利用しても良く、それによって、廃棄処理に伴うエネルギー消費量を低減することができる。
【0016】
また、溶融工程の前に、上記灰にガラス、特に、ガラスカレット(廃ガラス)を添加するガラス添加工程を設けることが望ましく、それによって、溶融工程における温度を低下することができるので、廃棄処理に伴うエネルギー消費量をさらに低減することができる。
【0017】
なお、灰化工程の燃焼温度としては、700〜900℃が望ましく、且つ、上記溶融工程における溶融温度としては、1100〜1600℃が望ましい。
【0018】
本発明における処理対象となる有害金属を含む樹脂製品としては、使用済みのプリント基板等の使用済み電子部品搭載基板が典型的なものであるが、使用済み電子部品搭載基板に限られるものではなく、工場における生産過程における不良品や、使用されなかった旧型番の電子部品搭載基板等も対象になるものである。
さらには、電子部品等とは関係がない、金属と樹脂とからなる機械的部材も対象になるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プリント基板等の電子部品搭載基板を燃焼による灰化処理の後、溶融処理により溶融固溶体として廃棄しているので、ハンダに含まれる鉛等の有害金属の流出を効果的に低減することができ、溶融固化物を埋め立てた場合にも、将来的な土壌の安定化にも貢献することが期待される。
【0020】
また、燃焼熱を利用して発電することと及びガラスカレットを混入することで、電子部品搭載基板のエネルギー消費量の削減が可能になり、この点からも耐環境性に優れた処理方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、図2を参照して、本発明の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理装置を説明する。
図2は、本発明の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理装置の概念的構成図であり、ハンダ除去工程を経て破砕したプリント基板等の電子部品搭載基板を燃焼して灰とする燃焼炉11、燃焼炉においてプリント基板を仮焼却した際に発生する熱を回収し、そのエネルギーで発電する発電機12、燃焼炉11において生じた灰を溶融処理する溶融炉13からなる。
【0022】
また、この燃焼炉11と溶融炉3の2つの炉を併設することによって、プリント基板の脱炭素プロセスにおいて炉内が還元雰囲気になり、炉材等の腐食を抑制することも兼ねられる。
【0023】
この場合、溶融炉13を電気炉で構成した場合には、発電機12で発生した電気を補助的に利用して電気炉を運転し、一方、溶融炉13が電気炉でない場合には、発電機12で発生した電気は別途工場内の電源として使用する。
【0024】
次に、図3を参照して、本発明の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理方法を説明する。
図3は、本発明の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理フロー図であり、
A.まず、処理対象となるプリント基板を従来のプリント基板のハンダ除去方法と同様の 加熱・振とう処理によってハンダを回収するとともに、プリント基板に実装されてい る電子部品を振るい落としたのち、破砕する。
この時、プリント基板のスルーホールに残った電子部品の端子や振るい落とされな かった電子部品も一緒に破砕される。
【0025】
B.次いで、燃焼炉11に破砕物を投入して、800℃〜900℃において1時間程度の 仮焼成により脱炭素を行って破砕物を灰化する。
この場合の灰化物は、石綿状の物質となり、投入した破砕物に対して約10%程度 の重量になる。
【0026】
C.次いで、溶融炉13に灰化物を投入して、1400℃〜1600℃において1時間程 度の溶融処理を行って灰化物を溶融物とする。
【0027】
この時、
C′.溶融炉13に灰化物とともに、ガラスカレット(廃ガラス)を同時に投入すること によって、1200℃〜1400℃において1時間程度の溶融処理を行って灰化物 を溶融物とする。
なお、ガラスカレットの投入量は、灰化物の元の破砕物の重量に対して30〜1 00重量%投入するものであり、ガラスカレットの混入により、溶融温度を200 ℃程度降下させることができる。
【0028】
D.溶融後に、溶融炉13の炉外へ取り出して室温において急冷することで、溶融物を溶 融固化物とする。
電子部品搭載基板の処理工程はここまでであるが、以降は、
E.埋立地に溶融固化物を廃棄することになる。
【実施例1】
【0029】
以上を前提として、次に、図4及び図5を参照して、本発明の実施例1のプリント基板の処理方法を説明する。
図4に示すように、まず、回収した使用済みのコンピュータに使用されていたプリント基板から大型電子部品を取り除いたのち、プリント基板31をハンダ除去装置21の搬送装置22のフックに吊設して、予備加熱装置23内において100〜150℃、例えば、120℃で2分間程度加熱する。
【0030】
次いで、本加熱装置24内において、使用しているハンダの溶融温度以上の温度で2分間程度加熱してハンダ33を溶融するとともに、例えば、50Hzで振動する振動装置25により吊設したプリント基板31を振動させてハンダ33を振り落とすとともに、小型の電子部品32も振り落とすことにより除去する。
【0031】
この時の加熱温度は使用しているハンダの溶融温度に依存するものであり、例えば、固相線温度が183℃の63Sn−Pbの場合には、例えば、190℃に加熱し、また、固相線温度が268℃の10Sn−Pbの場合には、例えば、280℃に加熱する。
なお、ハンダの回収率は65%程度である。
【0032】
次いで、ハンダ除去が終了したプリント基板を破砕処理して破砕物とする。
この場合の破砕物のサイズは任意であるが、例えば、プリント基板の厚さはそのままとして、面積としては1cm×1cm程度のサイズに粉砕する。
【0033】
次いで、図5に示すように、破砕物34を燃焼炉11に投入して、例えば、800℃において1時間燃焼させて灰化することによって灰化物35とする。
この灰化物35は燃焼によって炭素が失われているので石綿状の無機物となる。
【0034】
次いで、灰化物35を溶融炉13に投入して、例えば、1600℃で1時間溶融することによって、溶融物36とする。
【0035】
次いで、溶融物36を溶融炉13から取り出して大気中で室温まで冷却することによって、溶融固化物37が得られる。
なお、最終的には、この溶融固化物37をそのまま埋立地に投棄する。
【0036】
次に、本発明の実施例1による鉛溶出の削減効果を確認するために、溶出実験を実施したので、図6を参照して説明する。
溶出実験方法としては、「廃棄物処理法関係法令(金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令)」を参考にして行った。
ここでの溶出検定方法は、試料〔g〕と溶媒〔ml〕を重量体積比10%の割合で混合し、常温(約20℃)、常圧(約1atm)で振とう機を用いて、毎分約200回、振とう幅4〜5cmで6 時間連続振とうするとしている。
【0037】
ここで、比較資料とし、
比較例1:未処理のプリント基板
比較例2:上述の特許文献1の方法を採用して、加熱振動処理(200℃−50Hz, 1010分間)を行ったプリント基板
を用いて併せて溶出実験方法を行った。
なお、各試料ともに、0.5〜5.0mmに裁断・破砕したのち溶媒と混合する。
【0038】
溶媒については、pHを調整した塩酸を使用するのが一般的であるが、ここ数年pH4〜5の酸性雨が観測されていることから、強い酸性雨による暴露を想定してpH3の硝酸水溶液を使用した。
以上の溶出実験用試料を、振とう回数:170回/分、振とう幅:4cm、振とう温度:25℃、振とう時間:6時間で処理し:ICP(Inductively Coupled Plasma analysis:誘導結合プラズマ発光分析)を用いて鉛の溶出量を測定した。
【0039】
図6は、各種溶液について3回測定を行い、その平均値を結果として示したものである。
図から明らかなように、未処理のプリント基板の比較例1からの鉛溶出量と比較した場合、本発明の実施例1の溶出量は約90%の鉛溶出量を削減できることが示された。 また、加熱振動処理後のプリント基板の比較例2と比較しても、約80%の鉛溶出量を削減できることが確認された。
【0040】
このように、本発明の実施例1においては、単にハンダ除去だけではなく、灰化−溶融処理により溶融固化物とすることによって、鉛溶出量を削減でき、また、実際の投棄に際しては、溶融固化物をそのまま投棄するので重量に対する表面積の割合が溶出実験より遙に小さくなるので、実際の溶出量はさらに少なくなる。
【0041】
また、本発明の実施例1においてはガラスカレットを混入していないので、最初のプリント基板の重量に対して投棄する溶融固化物の重量は大幅に少なくなるので、産業廃棄物としての投棄量を大幅に減少することができる。
【実施例2】
【0042】
次に、図7を参照して、本発明の実施例2のプリント基板の処理方法を説明する。
図7に示すように、まず、上述の実施例1と全く同様に、回収した使用済みのコンピュータに使用されていたプリント基板に対してハンダ除去処理を行ったのち、裁断・破砕して破砕物34とする。
【0043】
次いで、破砕物34を燃焼炉11に投入して、例えば、800℃において1時間燃焼させて灰化することによって灰化物35とする。
この灰化物35は燃焼によって炭素が失われているので石綿状の無機物となる。
【0044】
次いで、灰化物35を溶融炉13に投入するとともに、灰化物35の元になる破砕物34の重量に対して30重量%のガラスレット38を投入して、例えば、1400℃で1時間溶融することによって、溶融物39とする。
【0045】
次いで、溶融物39を溶融炉13から取り出して大気中で室温まで冷却することによって、溶融固化物40が得られる。
なお、最終的には、この溶融固化物40をそのまま埋立地に投棄する。
【0046】
このように、本発明の実施例2においてはガラスカレットを混入しているので、実施例1と比較して200℃程度温度を下げることができ、それによって、エネルギー消費量の削減が可能になる。
【実施例3】
【0047】
次に、図8及び図9を参照して、本発明の実施例3のICカードの処理工程を説明する。
図8は、本発明の実施例3のICカードの処理工程に用いる廃棄処理装置の概念的構成図であり、上記の図2に示した有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理装置と同様に、使用済み或いは未使用で廃棄されたICカードの破砕物51を燃焼して灰とする燃焼炉41、燃焼炉においてICカードの破砕物51を仮焼却した際に発生する熱を回収し、そのエネルギーで発電するための水蒸気発生機構431 、タービン441 、及び、発電機451 からなる第1の発電機構421 、発電機451 で発電した電力を蓄積する鉛蓄電池等の蓄電池46、燃焼炉41において生じた灰化物52を溶融処理する電気炉で構成した溶融炉47、溶融処理後の潜熱を回収し、そのエネルギーで発電するための水蒸気発生機構432 、タービン442 、及び、発電機452 からなる第2の発電機構422 からなる。
なお、発電機451 ,452 、蓄電池46、燃焼炉41、及び、溶融炉47の間は送電線で接続される。
【0048】
図9は、本発明の実施例3のICカードの処理工程のフローチャートであり、全体的な流れとしては、
a.処理対象となるICカードを燃焼炉41に入れて、例えば、800℃で、30分間加 熱して脱炭素を行う。これにより、燃焼炉41内は、主に、酸化物および金属等の無 機物質からなる灰化物52になる。
b.燃焼により得られた熱エネルギーからタービン441 を稼動させて電気エネルギーを 生成し、その電気を蓄電池46に送り、電気を一時的に貯める。
c.蓄電池46に貯められた電気エネルギーを用いて、電気炉で構成される溶融炉47を 、例えば、1200℃に加熱する。
d.加熱した溶融炉47内にNa2 O−CaO−SiO2 系ガラスからなるガラスカレッ ト53を入れて、例えば、30分間溶融し、そこに燃焼炉41で生成された灰化物5 2をベルトコンベア式に搬入する。
e.灰化物52およびガラスカレット53を、例えば、1200℃で30分間加熱した後 、溶融炉47の外へ放出して急冷(炉温度→気温)し、溶融固化物54を生成する。
f.溶融炉47の潜熱からタービン442 を稼動させて電気エネルギーを生成し、その電 気を蓄電池46に送り、電気エネルギーを一時的に貯めて、再度溶融炉47および燃 焼炉41のエネルギーとして利用する。
g.最終的に生成した溶融固化物54については、埋立地に廃棄する。
【0049】
ここで、PET(ポリエチレンテレフタレート)製ICカード(約5g/枚,燃焼エネルギー:5,500kcal/kg)の廃棄処理を想定する。
通常、ガラスカレット54の溶融エネルギーは、1,000kcal/kg−ガラスであるから、回収電気エネルギーとして1,000kcal(1.16kWh)必要になる。
【0050】
したがって、燃焼エネルギー10,000kcalで電力変換効率を10%とすると、PET製ICカードを365枚処理することにより、外部からのエネルギーを利用せずにPET製ICカードを処理することが実現できる。
【0051】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載された構成・条件等に限られるものではなく各種の変更が可能であり、例えば、上記各実施例においては溶融炉として電気炉を用い、燃焼炉で発生した熱を利用して発電機で発電した電力を溶融炉で使用することを前提としているが、溶融炉で電気炉である必要はなく、ガスバーナー等を利用した溶融炉でも良い。
【0052】
また、発電機で発電した電力は別途他の用途に使用しても良いものであり、さらには、発電機は必須ではなく、燃焼炉で発生した熱で温水を作り、温水を工場内の給湯所や洗面所で使用するようにしても良い。
【0053】
また、樹脂を含んだ廃棄物を専用に処理する工場においては、燃焼炉からの回収電力は、溶融炉で必要な電力以上になるので、電力会社に売却するようにしても良い。
特に、溶融炉において、溶融処理後の溶融炉の潜熱によっても発電を行う場合には、さらに余剰電力が発生するので蓄電池に貯めることなく電力会社に売却すれば良い。
【0054】
また、上記の実施例2においては、ガラスカレット(廃ガラス)を用いているが、必ずしも、ガラスカレット(廃ガラス)である必要はなく、ガラスであれば鉛ガラスを除いていかなる形態のガラスを用いても良いものである。
【0055】
また、上記の実施例3においては、エネルギー計算が容易なようにICカードの処理工程として説明しているが、ICカードに限られるものではなく、上記の実施例1或いは実施例2のように、プリント基板等の他の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理にも使用されるものである。
【0056】
以上の実施例1乃至実施例3を含む実施の形態に関し、さらに、下記の付記を開示する。
(付記1) 有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて灰化する燃焼炉と、前記燃焼炉で生じた灰を加熱して溶融させる溶融炉とを具備する樹脂製品の廃棄処理装置。
(付記2) 前記溶融炉が電気炉であり、前記燃焼炉で生じた熱エネルギーを用いて発電するとともに、発電した電力を前記電気炉に供給する発電機をさらに具備する付記1記載の樹脂製品の廃棄処理装置。
(付記3) 前記溶融炉で生じた溶融処理後の熱エネルギーを用いて発電する発電機をさらに具備する付記1または2に記載の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理装置。
(付記4) 前記各発電機で発電した電力を貯える蓄電池をさらに具備する付記1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂製品の廃棄処理装置。
(付記5) 有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて灰化する灰化工程と、前記灰化工程で生じた灰を溶融炉で加熱して溶融体を生じさせる溶融工程と、前記溶融体を冷却して溶融固化物とする冷却工程とを有する樹脂製品の廃棄処理方法。
(付記6) 前記冷却工程が、前記溶融体を前記溶融炉から大気雰囲気へ取り出して冷却する工程である付記5記載の樹脂製品の廃棄処理方法。
(付記7) 前記灰化工程において、燃焼熱を利用して発電を行い、生じた電力を前記溶融工程における溶融炉の加熱に利用する付記5または6に記載の樹脂製品の廃棄処理方法。
(付記8) 前記溶融工程の前に、前記灰にガラスを添加するガラス添加工程をさらに有する付記5乃至7のいずれか1に記載の樹脂製品の廃棄処理方法。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の活用例としては、コンピュータや家庭電化製品或いはパチンコ台等の遊戯機器に搭載されたプリント基板の廃棄処理のための処理が典型的なものであるが、使用済みのプリント基板に限られるものではなく、工場で発生した不良プリント基板の廃棄や、倉庫で備蓄していた旧型の未使用プリント基板の廃棄処理にも適用されるものであり、さらには、プリント基板に限られるものではなく、インターポーザやパッケージ基板等の他の電子部品搭載基板の廃棄処理にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の原理的構成を示すフローチャートである。
【図2】本発明の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理装置の概念的構成図である。
【図3】本発明の有害金属を含む樹脂製品の廃棄処理フロー図である。
【図4】本発明の実施例1のプリント基板のハンダ除去工程の説明図である。
【図5】本発明の実施例1のプリント基板の処理工程の説明図である。
【図6】本発明の実施例1による鉛溶出の削減効果の説明図である。
【図7】本発明の実施例2のプリント基板の処理工程の説明図である。
【図8】本発明の実施例3のICカードの処理工程に用いる廃棄処理装置の概念的構成図である。
【図9】本発明の実施例3のICカードの処理工程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
11 燃焼炉
12 発電機
13 溶融炉
21 ハンダ除去装置
22 搬送装置
23 予備加熱装置
24 本加熱装置
25 振動装置
31 プリント基板
32 電子部品
33 ハンダ
34 破砕物
35 灰化物
36 溶融物
37 溶融固化物
38 ガラスカレット
39 溶融物
40 溶融固化物
41 燃焼炉
421 第1の発電機構
422 第2の発電機構
431 ,432 水蒸気発生機構
441 ,442 タービン
451 ,452 発電機
46 蓄電池
47 溶融炉
51 破砕物
52 灰化物
53 ガラスカレット
54 溶融固化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて灰化する燃焼炉と、前記燃焼炉で生じた灰を加熱して溶融させる溶融炉とを具備する樹脂製品の廃棄処理装置。
【請求項2】
前記溶融炉が電気炉であり、前記燃焼炉で生じた熱エネルギーを用いて発電する発電機をさらに具備する請求項1記載の樹脂製品の廃棄処理装置。
【請求項3】
有害金属を含む樹脂製品を燃焼させて灰化する灰化工程と、前記灰化工程で生じた灰を溶融炉で加熱して溶融体を生じさせる溶融工程と、前記溶融体を溶融炉から室温雰囲気へ取り出して溶融固化物とする冷却工程とを有する樹脂製品の廃棄処理方法。
【請求項4】
前記灰化工程において、燃焼熱を利用して発電を行い、生じた電力を前記溶融工程における溶融炉の加熱に利用する請求項3記載の樹脂製品の廃棄処理方法。
【請求項5】
前記溶融工程の前に、前記灰にガラスを添加するガラス添加工程をさらに有する請求項4または5に記載の樹脂製品の廃棄処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−2638(P2009−2638A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70707(P2008−70707)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】