説明

樹脂適合性ヤーン結合剤およびその使用

【課題】ガラス繊維の磨耗および破断を抑制する:広範な種々のマトリックス材料と適合性である:良好な加水分解安定性を提供する;およびマトリックス材料による良好なウェットアウトおよびウェットスルーを提供すること。
【解決手段】繊維ストランドであって、少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のカチオン性潤滑剤、少なくとも1種のフィルム形成材料、少なくとも1種の有機シランカップリング剤、および少なくとも1種のポリマー粒子分散物から形成される組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、強化複合材のためのコーティングされた繊維ストランドに関し、特定の実施形態において、コーティングされた繊維ストランドが組み込まれるマトリックス材料と適合性であるコーティングされた繊維ストランドに関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化成形操作において、良好な「ウェットスルー(wet−through)」特性(マットまたはファブリックを通るポリマーマトリックス材料の浸透)および「ウェットアウト(wet−out)」特性(このマットまたはファブリック中の個々の繊維の束またはストランドを通るポリマーマトリックス材料の浸透)が望ましい。対照的に、良好な分散特性(すなわち、熱可塑性材料の範囲内の繊維の良好な分布特性)は、典型的な熱可塑性成形操作における主な関心事である。
【0003】
ファブリックへと織られる(編まれる)繊維ストランドから形成される複合材またはラミネートの場合、ストランドの良好なウェットスルー特性およびウェットアウト特性を提供することに加えて、繊維ストランドの表面上のコーティングが、処理の間の磨耗から繊維を保護し、特に、エアジェット織機において良好な製織性(weavability)を提供し、そして繊維ストランドが組み込まれるポリマーマトリックス材料と適合性であることが望ましい。しかし、多くのサイジング成分は、ポリマーマトリックス材料と適合性でなく、そしてガラス繊維とポリマーマトリックス材料との間の接着に不利に影響し得る。例えば、デンプン(これは、織物(textile)繊維に一般的に使用されるサイジング成分である)は、一般的に、ポリマーマトリックス材料とは不適合性である。結果として、これらの不適合性材料は、ポリマーマトリックス材料を用いる含浸の前に、ファブリックから除去しなければならない。
【0004】
このような非樹脂適合性サイジング材料の除去(すなわち、ファブリックの脱脂または脱油)は、種々の技術により達成され得る。これらの非樹脂適合性サイジング材料の除去は、織られた(編まれた)ファブリックを、サイジングを熱分解するために長い期間の間、高温に曝すこと(一般的にヒートクリーニングと呼ばれる)により最も一般的に達成される。従来のヒートクリーニングプロセスは、ファブリックを380℃にて60〜80時間加熱する工程を包含する。しかし、このようなヒートクリーニング工程は、ガラス繊維の強度に対して有害であり、不適合性材料の除去の際に常に完全に成功するわけではなく、そしてさらにファブリックをサイジング分解生成物で汚染し得る。サイジング材料を除去する他の方法が試されてきた(例えば、水洗浄および/または化学的除去)。しかし、このような方法は、一般的に、このような水洗浄および/または化学的除去の操作との適合性のためにサイジング組成物をかなり再配合する必要があり、そして一般的に、全ての不適合性サイジング材料を除去する際にはヒートクリーニングほど有効ではない。
【0005】
さらに、製織プロセスは、繊維ガラスヤーンに対して非常に磨耗性であり得るので、ワープヤーンとして使用されるヤーンは、このワープヤーンを耐磨耗性コーティングでコーティングして(「スラッシングサイズ(slashing size)」と一般的にいわれる)、ガラス繊維の磨耗(abrasive wear)を最少にすることを補助するために、代表的に製織の前に二次コーティング工程(一般的に「スラッシング」といわれる)に供される。このスラッシングサイズは、一般的に、繊維形成操作の間にガラス繊維に先に塗布された一次サイズ上に塗布される。しかし、典型的なスラッシングサイズもまた、一般的にポリマーマトリックス材料と適合性ではないので、これらもまた樹脂への組込みの前に織られた(編まれた)ファブリックから除去されなければならない。
【0006】
さらに、脱脂または脱油されたファブリックとポリマー樹脂との間の接着を改善するために、仕上げ用(finishing)サイズ(代表的には、シランカップリング剤および水)が、さらに別の処理工程(一般的に「仕上げ」と呼ばれる)においてガラス繊維を再コーティングするためにファブリックに塗布される。
【0007】
これらの非付加価値処理工程の各々:スラッシング、脱脂または脱油、および仕上げは、ファブリック製造サイクルの時間および経費を増加させる。さらに、各々が、一般的に、資本設備および労働力におけるかなりの出資を必要とする。さらに、これらの処理工程に付随するファブリックの追加の取り扱いは、ファブリックの損傷を生じ得、そして品質を低下させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの処理工程のいくつかの効率または有効性の改善に向けた努力がなされてきた。それにもかかわらず、以下のうちの1つ以上を達成し得るコーティングに対する必要性が残っている:ガラス繊維の磨耗および破断を抑制する:広範な種々のマトリックス材料と適合性である:良好な加水分解安定性を提供する;およびマトリックス材料による良好なウェットアウトおよびウェットスルーを提供する。さらに、生産性を向上させることは、このコーティングが現在のエアジェット製織機と適合性である場合、特に有利である。さらに、種々の適用に必要とされるファブリックの品質を維持し、かつ良好なラミネート特性を提供しながら、ファブリック形成操作における非付加価値工程を排除することは、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、以下の項目1〜49が提供され、上記目的が達成される。
【0010】
(項目1)
繊維ストランドであって、以下:
a)少なくとも1種のロジン、
b)少なくとも1種のカチオン性潤滑剤、
c)少なくとも1種のフィルム形成材料、
d)少なくとも1種の有機シランカップリング剤、および
e)少なくとも1種のポリマー粒子分散物、
から形成される組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。
【0011】
(項目2)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記組成物が、水性コーティング組成物の残留物である、繊維ストランド。
【0012】
(項目3)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のロジンが、全固体基準で、45〜99重量%の範囲の量で、前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0013】
(項目4)
項目3に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のロジンが、全固体基準で、60〜90重量%の範囲の量で、前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0014】
(項目5)
項目4に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のロジンが、全固体基準で、70〜85重量%の範囲の量で、前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0015】
(項目6)
項目3に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のロジンが、化学的に改変されたロジンから選択される、繊維ストランド。
【0016】
(項目7)
項目6に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のロジンが、少なくとも1種のグリシジルエーテル基および少なくとも1種のポリエチレングリコール基を含む、繊維ストランド。
【0017】
(項目8)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のカチオン性潤滑剤が、全固体基準で、0.1〜15重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0018】
(項目9)
項目8に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のカチオン性潤滑剤が、全固体基準で、1〜10重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0019】
(項目10)
項目9に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のカチオン性潤滑剤が、全固体基準で、2〜8重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0020】
(項目11)
項目8に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のカチオン性潤滑剤が、ポリアミンポリマーから選択される、繊維ストランド。
【0021】
(項目12)
項目11に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のカチオン性潤滑剤が、少なくとも1種のシリル化ポリアミンポリマーを含む、繊維ストランド。
【0022】
(項目13)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のフィルム形成材料が、全固体基準で、0.1〜10重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0023】
(項目14)
項目13に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のフィルム形成材料が、全固体基準で、0.1〜5重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0024】
(項目15)
項目14に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のフィルム形成材料が、全固体基準で、0.5〜2重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0025】
(項目16)
項目13に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のフィルム形成材料が、ポリアルキレンポリオールおよびポリオキシアルキレンポリオールから選択される、繊維ストランド。
【0026】
(項目17)
項目16に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のフィルム形成材料が、少なくとも1種のポリエチレンオキシドを含む、繊維ストランド。
【0027】
(項目18)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の有機シランカップリング剤が、全固体基準で、0.1〜25重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0028】
(項目19)
項目18に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の有機シランカップリング剤が、全固体基準で、1〜20重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0029】
(項目20)
項目19に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の有機シランカップリング剤が、全固体基準で、8〜16重量%の範囲の量で前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0030】
(項目21)
項目18に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の有機シランカップリング剤が、トリアルコキシシランから選択される、繊維ストランド。
【0031】
(項目22)
項目21に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の有機シランカップリング剤が、アミノプロピルトリアルコキシシランから選択される、繊維ストランド。
【0032】
(項目23)
項目22に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の有機シランカップリング剤が、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびその塩を含む、繊維ストランド。
【0033】
(項目24)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー粒子分散物が、前記コーティング組成物を形成する成分に添加される場合、全固体基準で、0.1〜15重量%の範囲の量で存在する、繊維ストランド。
【0034】
(項目25)
項目24に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー粒子分散物が、前記コーティング組成物を形成する成分に添加される場合、全固体基準で、0.1〜10重量%の範囲の量で存在する、繊維ストランド。
【0035】
(項目26)
項目25に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー粒子分散物が、前記コーティング組成物を形成する成分に添加される場合、全固体基準で、0.1〜5重量%の範囲の量で存在する、繊維ストランド。
【0036】
(項目27)
項目24に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー粒子分散物が、ポリエチレン粒子の分散物、ポリプロピレン粒子の分散物、およびエチレン/プロピレンコポリマー粒子の分散物から選択される、繊維ストランド。
【0037】
(項目28)
項目27に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー粒子分散物が、ポリエチレン粒子の分散物を含む、繊維ストランド。
【0038】
(項目29)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の繊維が、Eガラス、Dガラス、Gガラス、Sガラス、Qガラス、Eガラスの誘導体およびこれらの組合せから選択されるガラス材料を含む少なくとも1種の無機繊維を含む、繊維ストランド。
【0039】
(項目30)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種の繊維が、少なくと1種の非ヒートクリーン繊維を含む、繊維ストランド。
【0040】
(項目31)
項目1に記載の繊維ストランドであって、前記組成物が、さらに、複数の別々の粒子を含む、繊維ストランド。
【0041】
(項目32)
項目31に記載の繊維ストランドであって、前記複数の別々の粒子が、熱硬化性材料、熱可塑性材料、およびこれらの混合物から選択される、繊維ストランド。
【0042】
(項目33)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、ヤーン。
【0043】
(項目34)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、ファブリック。
【0044】
(項目35)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、ラミネート。
【0045】
(項目36)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、プレプレグ。
【0046】
(項目37)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、電子回路基板。
【0047】
(項目38)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、電機子バンディングテープ。
【0048】
(項目39)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、航空宇宙用複合材。
【0049】
(項目40)
項目1に記載の少なくとも1種の繊維ストランドを含む、航空学的複合材。
【0050】
(項目41)
繊維ストランドであって、以下:
a)少なくとも1種のロジン、
b)少なくとも1種のポリマー性潤滑剤、
c)少なくとも1種のフィルム形成材料、
d)少なくとも1種の有機シランカップリング剤、および
e)少なくとも1種のポリマー粒子分散物、
から形成される組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。
【0051】
(項目42)
項目41に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー性潤滑剤が、全固体基準で、0.1〜15重量%の範囲の量で、前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0052】
(項目43)
項目42に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー性潤滑剤が、全固体基準で、1〜10重量%の範囲の量で、前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0053】
(項目44)
項目43に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー性潤滑剤が、全固体基準で、2〜8重量%の範囲の量で、前記組成物中に存在する、繊維ストランド。
【0054】
(項目45)
項目42に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー性潤滑剤が、ポリアミンポリマーから選択される、繊維ストランド。
【0055】
(項目46)
項目45に記載の繊維ストランドであって、前記少なくとも1種のポリマー性潤滑剤が、シリル化ポリアミンポリマーを含む、繊維ストランド。
【0056】
(項目47)
繊維ストランドであって、以下:
a)少なくとも1種のロジン、
b)少なくとも1種のカチオン性潤滑剤、
c)少なくとも1種のフィルム形成材料、および
d)少なくとも1種の有機シランカップリング剤、
を含み、デンプンを含まない組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。
【0057】
(項目48)
繊維ストランドであって、以下:
a)少なくとも1種のロジン、
b)少なくとも1種のポリマー性潤滑剤、
c)少なくとも1種のフィルム形成材料、および
d)少なくとも1種の有機シランカップリング剤、
を含み、デンプンを含まない組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。
【0058】
(項目49)
繊維ストランドであって、以下:
a)少なくとも1種のロジン、
b)少なくとも1種のシリル化ポリアミン、
c)少なくとも1種のフィルム形成材料、および
d)少なくとも1種の有機シランカップリング剤、
を含む組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。
【0059】
本発明の繊維ストランドは、特有のコーティングを有し、このコーティングは、少なくとも以下の特性を達成する:処理の間の繊維の磨耗および破断の抑制;複合材の形成の際の良好なウェットスルー特性、ウェットアウト特性および分散特性;ならびに良好な加水分解安定性(すなわち、繊維/ポリマーマトリックス材料界面に沿った水の移動に対する耐性)。以下に十分に定義されるとおり、「ストランド(strand)」は、複数の個々の繊維(すなわち、少なくとも2つの繊維)を含む。本明細書中で使用される場合、「複合材(composite)」は、本発明のコーティングされた繊維ストランドと、さらなる材料との組合せを意味し、例えば、ポリマーマトリックス材料と合わされたコーティングされた繊維ストランドを組み込んだファブリックの1つ以上の層であってラミネートを形成するものであるが、これに限定されない。良好なラミネート強度、良好な熱安定性、高湿度、反応性の酸およびアルカリの存在下での低い腐食性および反応性、ならびに種々のポリマーマトリックス材料との適合性(これは、コーティングを除去する必要性(特に、積層前の熱水クリーニングまたは加圧水クリーニング)を排除し得る)は、本発明のコーティングされた繊維ストランドにより示され得る他の望ましい特性である。
【0060】
特定の実施形態において、本発明のコーティングされた繊維ストランドは、製織および編成における良好な加工性を提供する。少ない毛羽およびハロー(本明細書中で使用される場合、「ハロー(halos)」は、回転式テンション装置の周りで形成し得る破断したフィラメントの輪である)、少ない破断フィラメント、低いストランド張力、高いよこ糸操作性(fliability)および短い挿入時間は、本発明のコーティングされたガラス繊維ストランドにより個々にまたは組み合わせて提供され得る特徴の例である。これらの特徴は、個々にかまたは組み合わせて、製織および編成を容易にし得、そして一貫してファブリックに表面の欠陥をほとんど与えない。さらに、本発明のコーティングされた繊維ストランドは、エアジェット製織プロセスにおける使用に適切であり得る。本明細書中で使用される場合「エアジェット製織」は、フィル(fill)ヤーン(よこ糸)が、1つ以上のエアジェットノズルからの圧縮空気の送風によりひ口を作ったたて糸に挿入される型のファブリック製織を意味する。
【0061】
特定の実施形態において、本発明のコーティングされた繊維ストランドは、繊維のコーティングされた表面に沿った熱伝導を容易にし得る独特のコーティングを有する。電子回路基板のための連続的な強化材として使用される場合、本発明のこのようにコーティングされたガラス繊維は、強化材にそった熱源(例えば、チップまたは回路)からの熱損失を促進して、電子部品から熱を伝導して逃がし、それにより回路素子、ガラス繊維およびポリマーマトリックス材料の熱分解および/または劣化を抑制する機構を提供し得る。本発明のコーティングされたガラス繊維は、マトリックス材料よりも高い熱伝導性(すなわち、熱損失および熱分布の優先的経路)を提供し、それにより異なる熱膨張および電子回路基板のそりを低減させ、そしてろう付け接合の信頼性を改善する。
【0062】
本発明のコーティングされた繊維ストランドはまた、半径方向の圧縮において必要な強度および電気的な絶縁を、電機子バンディングテープ(発電器の電機子の構成部品を保持するのに有用であり得る)電機子巻線および整流子に提供する。それらの圧縮の非存在は、このような構成要素の回転部材の不均衡をもたらし得るか、または過酷な場合は、その部材自体の破損をもたらし得る。代表的に、このようなバンディングは、樹脂を硬化させる場合、このバンディング内の固定位置にバンディングテープの個々の繊維を固定する際補助する、硬化可能な結合樹脂を含浸させた繊維ストランドから形成される。上記のクリーニング工程を除くことによって、本発明のコーティングしたガラス繊維に、このような方法によって洗浄した繊維を上回る、さらなる強度および電気絶縁性を与えることが可能である。
【0063】
本発明のコーティングした繊維ストランドは、複合材料の構造強化成分として、さらに作用し得る。複合材料は、航空宇宙、航空、および他の適用で用いられる重要な構造材料である。適切な適用としては、稲妻が落ちることに起因する損傷からの航空機の保護、レーダーによる検出に対する航空機の遮蔽、およびロケットエンジンノズルとしてまたはミサイルの弾頭の先端表面としての航空宇宙用複合材料の用途が挙げられる。複合材料は、その複合材中の異なる性質を保持する2つ以上の別々の相を含む。代表的な非金属性航空宇宙用複合材料において、高強度強化材または高剛性強化材(例えば、ガラス繊維)は、強化材よりもずっと弱くそしてより柔軟性のある樹脂材料のマトリックス中に埋め込まれる。このマトリックスは、強化材を一緒に結合し、並べ、そして保護する。
【0064】
複合材料の重要な局面は、設計者が、重量を最小にし、かつ性能を最大にするように、構造の個々の構成部品の要件に合わせて材料の特性を改変し得ることである。この複合材の特性は、強化材およびマトリックス相の個々の特性によって、そして強化材および複合材料中に存在する強化材とマトリックスとの相対的な量によって決定される。複合材料の各バッチの特性は、これらの特性が、特定の適用に対する設計者の要求を満たすことが確かであることが分かっていなければならない。従って、ガラス繊維の強度に対して有害であり得、そしてサイジング生成物をファブリックにさらに混入させ得るヒートクリーニング工程を除くことによって、生じる複合材料の特性をより正確に予測し得る。
【0065】
特定の実施形態において、本発明のコーティングした繊維ストランドはまた、マトリックス樹脂中の熱伝導性材料の組み込みの必要性を減少させるか、または排除し得、このことはラミネート製造操作を改良し、マトリックス材料供給タンクのパージおよび維持のコストを低減する。
【0066】
本発明のコーティングした繊維ストランドは、高ストランド解放性を有し得る。本明細書中で用いる場合、用語「高ストランド解放性」は、ストランドが、増大した断面積を有し、そしてストランドのフィラメントが、互いに密接に結合していないことを意味する。この高ストランド解放性は、ストランドの束へのマトリックス材料の浸透またはストランドの束を浸すことによって促進し得る。
【0067】
本発明の繊維ストランドから作製される本発明の複合材、および特にラミネートは、以下の特徴の少なくとも1つ有し得る:低い熱膨張係数;良好な屈曲強度;良好な層間(interlaminar)結合強度;および良好な加水分解的安定性(すなわち、繊維/マトリックスインターフェースに沿った、水の移動に対する耐性)。さらには、本発明の繊維ストランドから作製した本発明の電子支持体およびプリント回路基板は、以下の特性の少なくとも1つを有し得:良好な穿孔性;および金属マイグレーション(また、カソード−アノードフィラメント形成またはCAFともいう)に対する耐性。Tummala(編)ら,Microelectronics Packaging Handbook,(1989)の896頁−897頁、およびIPC−TR−476B,「Electrochemical Migration:Electrochemically Induced Failures in Printed Wiring Boards and Assemblies」,(1997)(参考として本明細書中に詳細に援用される)を参照のこと。本発明に従う、良好な穿孔性を有する繊維ストランドは、穿孔の間の工具の低い摩耗および穿孔穴の良好な位置精度の少なくとも1つを有する。
【0068】
上記のように、代表的なファブリック形成操作は、繊維ガラスヤーンおよび繊維ガラスヤーンから作製されるファブリックをいくつかの非付加価値処理工程(例えば、スラッシング、ヒートクリーニングおよび仕上)に供することをを含む。本発明は、ファブリック、ラミネート、電子支持体、プリント回路基板、電機子バンディングテープ、および航空宇宙用複合材料を形成する方法を提供し得、この方法は、ファブリック形成処理から非付加価値処理工程を低減させるか、または排除する一方、多様な開示した適用における使用に適切な品質を有するファブリックを提供する。本発明の特定の実施形態の他の利点としては、減少した製造サイクル時間、資本設備の削減、減少したファブリック操作および労働コスト、良好なファブリックの品質および良好な最終生成物の特性が挙げられる。
【0069】
本発明の1つの実施形態において、繊維ストランドは、少なくとも1種類のロジン、少なくとも1種類のカチオン性潤滑剤、少なくとも1種類のフィルム形成材料、少なくとも1種類の有機シランカップリング剤、および少なくとも1種類のポリマー性粒子分散物から形成される組成物を用いて少なくとも部分的にコーティングした、少なくとも1種類の繊維を含む。
【0070】
本発明の別の実施形態において、繊維ストランドは、少なくとも1種類のロージン、少なくとも1種類のポリマー潤滑剤、少なくとも1種類のフィルム形成材料、少なくとも1種類の有機シランカップリング剤、および少なくとも1つのポリマー性粒子分散物から形成される組成物を用いて少なくとも部分的にコーティングした、少なくとも1種類の繊維を含む。
【0071】
本発明のなお別の実施形態において、繊維ストランドは、少なくとも1種類のロジン、少なくとも1種類のカチオン性潤滑剤、少なくとも1種類のフィルム形成材料、および少なくとも1種類の有機シランカップリング剤を含む、デンプンを含まない組成物を用いて少なくとも部分的にコーティングした、少なくとも1種類の繊維を含む。
【0072】
本発明のさらに別の実施形態において、繊維ストランドは、少なくとも1種類のロジン、少なくとも1種類のポリマー潤滑剤、少なくとも1種類のフィルム形成材料、および少なくとも1種類の有機シランカップリング剤を含むデンプンを含まない組成物を用いて少なくとも部分的にコーティングした、少なくとも1種類の繊維を含む。
【0073】
本発明の別の実施形態において、繊維ストランドは、少なくとも1種類のロジン、少なくとも1種類のシリル化(silyated)ポリアミン、少なくとも1種類のフィルム形成材料、および少なくとも1種類の有機シランカップリング剤を含む組成物を用いて少なくとも部分的にコーティングした、少なくとも1種類の繊維を含む。
【0074】
上述の個々の実施形態の各々において、本発明のコーティング組成物を含む成分は、異なる。
【0075】
この本明細書の目的のために、実施例、または別に示される場合以外は、明細書中および特許請求の範囲中で使用される成分、反応条件、などを表す全ての数は、用語「約」によって、全ての場合において修飾されていると理解されるべきである。従って、他に示さない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において示される数値パラメータは、本発明によって得られると考えられる所望の特性に依存して変化し得る概算である。特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも、各数値パラメータは、少なくとも報告されている有効数字の数を考慮して、そして通常の丸め技術を適用することにより解釈されるべきである。
【0076】
本発明のコートされた繊維ストランドは、複数の繊維を含む。本明細書中で使用される場合、「ストランド」とは、複数の個々の繊維(すなわち、少なくとも2本の繊維)を意味し、そしてそのストランドは、繊維に分解可能な異なる材料から作製された繊維を含み得る。(繊維の束はまた、「ヤーン(yarn)」とも呼ばれ得る)。用語「繊維」とは、個々の単繊維(filament)を意味する。本発明を限定するものではないが、その繊維は、3μm〜35μmの範囲の平均名目上繊維直径を有し得る。特定の実施形態において、本発明の平均名目上繊維直径は、例えば、5μm以上であり得る。「微細ヤーン(fine yarn)」適用のために、この平均名目上繊維直径は、5μm〜7μmの範囲であり得る。
【0077】
この繊維は、当業者に公知である任意の型の繊維に分解可能な材料(繊維に分解可能な無機材料、繊維に分解可能な有機材料、および上記のいずれかの混合物が挙げられる)から形成され得る。この無機材料および有機材料は、人工材料または天然に存在する材料のいずれかでもあり得る。この繊維に分解可能な無機材料および繊維に分解可能な有機材料はまたポリマー材料でもあり得ることを、当業者は認識する。本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー材料」とは、一緒に連結された長い原子鎖から構成された高分子から形成されており、そして溶液状態または固体状態でからまった状態になり得る、材料(James Markら、Inorganic Polymers,Prentice Hall Polymer Science and Engineering Series(1992)第1頁(これは、本明細書により参考として援用される))を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「繊維に分解可能な(fiberizable)」とは、ほぼ連続する単繊維(filament)、ほぼ連続する繊維(fiber)、ほぼ連続するストランド(strand)、またはほぼ連続するヤーン(yarn)へと形成可能な材料を意味する。
【0078】
特定の実施形態において、この繊維は、繊維に分解可能な無機ガラス材料から形成され得る。本発明において有用な繊維に分解可能なガラス材料としては、繊維に分解可能なガラス組成物から調製された材料(例えば、「Eガラス」、「Aガラス」、「Cガラス」、「Dガラス」、「Gガラス」、「Rガラス」、「Sガラス」、およびEガラス誘導体)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、「Eガラス誘導体」とは、少量のフッ素および/もしくはホウ素しか含まないガラス組成物を意味し、最も好ましくは、フッ素を含まず、かつ/またはホウ素を含まない、ガラス組成物を意味する。さらに、本明細書中で使用される場合、「少量のフッ素」とは、0.5重量%未満のフッ素(例えば、0.1重量%未満のフッ素)を意味し、「少量のホウ素」とは、5重量%未満のホウ素(例えば、2重量%未満のホウ素)を意味する。玄武岩および鉱滓綿が、本発明において有用な繊維に分解可能な他のガラス材料の例である。特定の実施形態において、ガラス繊維は、EガラスまたはEガラス誘導体から選択される。他の実施形態において、ガラス繊維は、Gガラスから選択される。
【0079】
本発明のガラス繊維は、当該分野で公知である適切な任意の方法で形成され得る。例えば、ガラス繊維は、直接融解繊維形成操作または間接的(もしくはガラス玉(marble)融解)繊維形成操作で形成され得る。直接融解繊維形成操作において、原材料が合わせられ、融解され、そしてガラス融解炉において均質化される。融解ガラスは、この炉から前炉へと移動して繊維形成装置中へと移動する。この繊維形成装置において、この融解ガラスは、細くされて、連続するガラス繊維にされる。ガラス玉(marble)融解ガラス形成操作において、望ましい最終ガラス組成を有するガラス片またはガラス玉(marble)が予め形成され、そしてブッシング(bushing)へと供給され、ブッシング(bushing)において、それらのガラス片またはガラス玉(marble)が融解され細くされて、連続するガラス繊維にされる。プレ溶融室が使用される場合、まず、ガラス玉(marble)がプレ溶融室へと供給され、融解され、その後、融解ガラスが繊維形成装置中へと供給される。この繊維形成装置において、ガラスが細くされて、連続する繊維を形成する。本発明において、ガラス繊維は、好ましくは、直接融解繊維形成操作により形成される。ガラス組成物およびガラス繊維形成方法に関連するさらなる情報について、K.Loewenstein,The Manufacturing Technology of Continuous Glass Fibres(第3版,1993)第30頁〜44頁,47頁〜103頁および115頁〜165頁;米国特許第4,542,106号および同第5,789,329号;ならびにIPC−EG−140「Specification for Finished Fabric Woven from ’E’ Glass for Printed Boards」第1頁,The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits(June 1997)刊行を参照のこと。
【0080】
繊維に分解可能な適切な非ガラス無機材料の非限定的例としては、セラミック材料(例えば、炭化ケイ素、炭素、グラファイト、ムライト、酸化アルミニウム、および圧電セラミック材料)が挙げられる。繊維に分解可能な適切な有機材料の非限定的な例としては、綿、セルロース、天然ゴム、亜麻、カラムシ、麻、サイザル、およびウールが挙げられる。繊維に分解可能な適切な有機ポリマー材料の非限定的例としては、ポリアミドから形成された材料(例えば、ナイロンおよびアラミド(aramid))、熱可塑性ポリエステルから形成された材料(例えば、ポリエチレンテレフタラートおよびポリブチレンテレフタラート)、アクリルから形成された材料(例えば、ポリアクリロニトリル)、ポリオレフィンから形成された材料、ポリウレタンから形成された材料、およびビニルポリマーから形成された材料(例えば、ポリビニルアルコール)が挙げられる。本発明およびそのような繊維の調製方法および処理方法において有用な、繊維に分解可能な非ガラス材料が、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.6(1967),第505頁〜712頁にて詳細に考察されている。
【0081】
上記の材料のうちのいずれかのブレンドまたはコポリマー、および上記の材料のうちのいずれかから形成された繊維の組み合わせが、望ましい場合には、本発明において使用され得ることが、理解される。さらに、用語「繊維ストランド」は、繊維に分解可能な種々の材料から作製された少なくとも2種の異なる繊維を包含する。特定の実施形態において、本発明の繊維ストランドは、少なくとも1種のガラス繊維を含むが、その繊維ストランドは、他の型の繊維を含み得る。
【0082】
本発明は、ここで、一般的にはガラス繊維ストランドの文脈において考察されるが、このストランドは、上記に考察された当該分野で公知である繊維に分解可能な任意の材料から形成された繊維を含み得ることを、当業者は理解する。従って、ガラス繊維に関する以下の考察は、上記で考察された他の繊維に一般的に適用される。
【0083】
特定の実施形態において、本発明の繊維ストランドの繊維のうちの少なくとも1つ、おそらくはすべてが、コーティング組成物(例えば、コーティング組成物の残留物)を、それらの繊維の少なくとも一表面の少なくとも一部に有する。このコーティングは、繊維表面が処理の間に磨耗するのを防ぐように役立ち得、そして繊維の切断を阻害するように役立ち得る。
【0084】
表Aは、いくつかの代表的なガラス繊維ヤーン製品についての1つのヤーンにおける繊維の直径および数を列挙する。
【0085】
【化1】

【0086】
本発明のコーティング組成物は、水性コーティング組成物であり得、特定の実施形態においては、水性樹脂適合性コーティング組成物であり得る。このコーティング組成物は、揮発性有機溶媒(例えば、アルコールまたはアセトン)を必要に応じて含み得るが、特定の実施形態においては、このような溶媒を含まない。さらに、本発明のコーティング組成物は、第1サイジング組成物および/または第2サイジング組成物もしくは第2コーティング組成物として使用され得る。
【0087】
本明細書中で使用される場合、用語「サイズ(size)」、「サイジングされた(sized)」、または「サイジング(sizing)」とは、繊維に適用された任意のコーティング組成物を指す。用語「第1サイズ」または「第1サイジング」とは、繊維の形成直後の繊維に適用されたコーティング組成物を指す。用語「第2サイズ」、「第2サイジング」または「第2コーティング」とは、第1サイズの適用後の繊維に適用されたコーティング組成物を意味する。用語「第3サイズ」、「第3サイジング」または「第3コーティング」とは、第2サイズの適用後の繊維に適用されたコーティング組成物を意味する。これらのコーティングは、繊維がファブリック(fabric)中に組込まれる前に繊維に適用され得るか、または繊維がファブリック中に組み込まれた後に、例えば、そのファブリックをコーティングすることによって、繊維に適用され得る。用語「サイズ」、「サイジングされた」および「サイジング」とは、従来の非樹脂適合性サイジング組成物のうちの少なくとも一部(おそらくすべて)が、熱処理または化学処理により除去された後に繊維に適用されたコーティング組成物(「仕上げサイズ(finishing size)」としても公知)をさらに指す(すなわち、仕上げサイズは、ファブリック形態へと組み込まれた裸のガラス繊維に適用される)。
【0088】
本明細書中で使用される場合、用語「樹脂適合性」とは、ガラス繊維に塗布されるコーティング組成物が、そのガラス繊維が組み込まれるマトリックス材料と適合性であり、その結果、このコーティング組成物(または選択されたコーティング成分)が、以下の特性のうち少なくとも1つを達成することを意味する:マトリックス材料への組み込みの前に(例えば、脱脂または脱油により)除去する必要がない;従来の処理の間のマトリックス材料の良好なウェットアウトおよびウエットスルーを促進する;および所望の物理的特性および加水分解安定性を有する最終複合生成物を生じる。
【0089】
本発明の繊維ストランドの繊維のうちの少なくとも1つおよびおそらく全ては、これらの繊維の表面の少なくとも一部にコーティング組成物(例えば、コーティング組成物の残留物)を有する。
【0090】
1つの実施形態において、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種のロジン;少なくとも1種のカチオン性潤滑剤;少なくとも1種のフィルム形成材料;少なくとも1種のカップリング剤;および少なくとも1種のポリマー粒子分散物を含む。
【0091】
別の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種のロジン;少なくとも1種のポリマー性潤滑剤;少なくとも1種のフィルム形成材料;少なくとも1種のカップリング剤;および少なくとも1種のポリマー粒子分散物を含む。
【0092】
なお別の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種のロジン;少なくとも1種のカチオン性潤滑剤;少なくとも1種のフィルム形成材料;少なくとも1種のカップリング剤;少なくとも1種のポリマー粒子分散物を含み;そしてデンプンを含まない組成物である。
【0093】
別の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種のロジン;少なくとも1種のポリマー性潤滑剤;少なくとも1種のフィルム形成材料;少なくとも1種のカップリング剤;少なくとも1種のポリマー粒子分散物を含み;そしてデンプンを含まない組成物である。
【0094】
なお別の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種のロジン;少なくとも1種のシリル化ポリアミン;少なくとも1種のフィルム形成材料;および少なくとも1種のカップリング剤を含む。
【0095】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種のロジンを含み得る。本発明の1つの非限定的実施形態において、この少なくとも1種のロジンは、天然のロジン、化学的に改変されたロジンおよびこれらの組み合わせより選択される。
【0096】
有用な天然のロジンとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切なガムロジンの非限定的例としては、生きている木から液を得たオレオレジン由来のテレピン油の蒸留後に得られる残渣が挙げられる。有用なウッドレジンは、松の切り株をナフサで抽出し、そして揮発性画分を蒸留して取り除くことによって得られる残渣を含む。適切なトール油ロジンの非限定的例は、トール油の画分の副産物である。
【0097】
有用な化学的に改変されたロジンとしては、もはや天然のロジンの独特の特徴を示さないように化学的に変化したロジンが挙げられる。1つの非限定的実施形態において、化学的に改変されたロジンは、少なくとも1種の二量体および少なくとも1種の脱カルボキシル化樹脂酸を含む。有用な化学的に改変されたロジンの非限定的例としては、Eka Chemicals AB、Swedenから購入したDYNAKOLL SI 100が挙げられ、これは、ウッドロジンが無水マレイン酸、ポリエチレングリコール、およびフェニルグリシジルエーテルと反応するときに形成される複数の反応生成物の混合物であると考えられる。従って、DYNAKOLL SI 100は、例えば、少なくとも1種のグリシジルエーテル基(例えば、2つのグリシジルエーテル基)および少なくとも1種のポリエチレングリコール基を含むと考えられる。
【0098】
このロジンは、全固体基準で、45重量%〜99重量%の範囲の量で、本発明のコーティング組成物中に存在し得る。1つの非限定的実施形態において、上記少なくとも1種のロジンは、全固体基準で、60重量%〜90重量%の範囲の量で、コーティング組成物中に存在し得る。別の非限定的実施形態において、上記少なくとも1種のロジンは、全固体基準で、70重量%〜85重量%の範囲の量で、コーティング組成物中に存在し得る。
【0099】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種の潤滑剤をさらに含み得る。特定の実施形態において、このコーティング組成物は、1種以上のカチオン性潤滑剤を含み得る。そのようなカチオン性潤滑剤の非限定的例としては、脂肪酸のアミン塩(これは、例えば、12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸部分および/または窒素原子に結合された1〜22個の原子のアルキル基を有する三級アミンを含み得る)、アルキルイミダゾリン誘導体(例えば、脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの反応により形成され得る)、酸可溶化脂肪酸アミド(例えば、4〜24個の炭素原子の酸性基を有する飽和脂肪酸アミドまたは不飽和脂肪酸アミド(例えば、ステアリン酸アミド))、酸可溶化ポリ不飽和脂肪酸アミド、脂肪酸とポリエチレンイミンとアミド置換ポリエチレンイミンとの縮合物(例えば、Cincinnati、OhioのCognis Corporationから市販されている部分的にアミド化されたポリエチレンイミンである、EMERY 6717、およびParsippany、New JerseyのBASF Corp.から入手可能であるALUBRASPIN 226)が挙げられる。
【0100】
有用なアルキルイミダゾリン誘導体の非限定的例は、Princeton、New JerseyのRhone Poulenc/Rhodiaから市販されているCATION X、およびParsippany、New JerseyのBASF Corp.から購入したALUBRASPIN 261である。
【0101】
本発明の1つの実施形態において、上記少なくとも1種のカチオン性潤滑剤は、1種以上のシリル化ポリアミンポリマーを含む。そのようなシリル化ポリアミン潤滑剤の1つの非限定的例としては、Parsippany、New JerseyのBASF Corp.から購入したALUBRASPIN 227が挙げられ、これは、例えば、米国特許第5,354,829号に開示されている。
【0102】
本発明の特定の実施形態において、この潤滑剤は、1種以上のポリマー性潤滑剤を含み得る。ポリマー性潤滑剤の非限定的例としては、ポリアミンポリマー類より選択される潤滑剤が挙げられる。本発明の1つの実施形態において、この少なくとも1種のポリマー性潤滑剤は、1種以上のシリル化ポリアミンポリマーを含む。そのようなシリル化ポリアミン潤滑剤の1つの非限定的例としては、Parsippany、New JerseyのBASF Corp.から購入したALUBRASPIN 227が挙げられ、これは、例えば、米国特許第5,354,829号に開示されている。
【0103】
本発明の特定の実施形態において、少なくとも1種のカチオン性潤滑剤の量は、全固体基準で、コーティング組成物の15重量%以下であり得る。1つの非限定的実施形態において、上記少なくとも1種のカチオン性潤滑剤の量は、全固体基準で、コーティング組成物の0.1重量%〜15重量%の範囲(例えば、全固体基準で、コーティング組成物の1重量%〜10重量%、および2重量%〜8重量%)であり得る。
【0104】
本発明の特定の実施形態において、少なくとも1種のポリマー性潤滑剤の量は、全固体基準で、コーティング組成物の15重量%以下であり得る。1つの非制限的な実施形態において、少なくとも1種のポリマー性潤滑剤の量は、全固体基準で、コーティング組成物の0.1〜15重量%の範囲、例えば、全固体基準で、コーティング組成物の1〜10重量%、および2〜8重量%の範囲であり得る。
【0105】
コーティング組成物はまた、少なくとも1種のフィルム形成材料を含み得る。1つの実施形態において、少なくとも1種のフィルム形成材料は、水溶性ポリマー材料を含み得る。有用な材料の非制限的な例としては、ポリアルキレンポリオールおよびポリオキシアルキレンポリオール(例えば、MACOL E−300)(これは、New Jersey、ParsippanyのBASF Corporationから市販される)およびCARBOWAX 300およびCARBOWAX 400(Dow Chemicalsから市販される)が挙げられる。有用なフィルム形成材料の別の非制限的な例は、POLYOX WSR 301であり、これは、Dow Chemicalsから市販されるポリ(エチレンオキシド)である。
【0106】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在する少なくとも1種のフィルム形成材料の量は、全固体基準で、水性サイジング組成物の0.1〜10重量%の範囲であり得る。1つの非制限的な実施形態において、サイジング組成物中に存在するフィルム形成材料の量は、全固体基準で、水性サイジング組成物の0.1〜5重量%、例えば、全固体基準でコーティング組成物の0.5〜2重量%の範囲であり得る。
【0107】
コーティング組成物は、少なくとも1種の表面改変剤またはカップリング剤をさらに含み得る。適切なカップリング剤は、官能性有機シランカップリング剤から選択され得る。このようなカップリング剤は、2重の機能を有すると考えられる。各金属またはケイ素原子は、その1つ以上の加水分解可能基に結合し、この基は、ガラス表面と反応し得、ヒドロキシル基、およびコーティング組成物中の他の成分と適合性であり得るかまたは反応し得ると考えられる1つ以上の基を除去する。
【0108】
有用な官能性有機シランカップリング剤の非制限的な例としては、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシラン、ビニル−トリアルコキシシラン、グリシドオキシプロピルトリアルコキシシランおよびウレイドプロピルトリアルコキシシランが挙げられる。有用な官能性有機シランカップリング剤の非制限的な例としては、A−187 γ−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、A−174
γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、A−1100 γ−アミノプロピルトリエトキシシランのシランカップリング剤、A−1108アミノシランカップリング剤およびA−1160γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(これらの各々が、CT、GreenwichのCrompton Corporationから市販される)が挙げられる。有機シランカップリング剤の別の非制限的な例としては、Z−6032、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Michigan、MidlandのDow Corningによって製造され、例えば、米国特許第4,798,889号に開示される)が挙げられる。
【0109】
有機シランカップリング剤は、繊維への塗布の前に、例えば、1:1の化学量論量の比で水で少なくとも部分的に加水分解され得るか、または所望の場合、非水和形態で適用され得る。水のpHは、当該分野で周知なように、カップリング剤の加水分解を開始または加速するために、酸または塩基の添加によって改変され得る。有用なシランカップリング剤の他の例は、K.Loewenstein,The Manufacturing Technology of Continuous Glass Fibresの253頁(第3版、New York 1983)に記載され、これは、本明細書によって参考として援用される。
【0110】
少なくとも1種の有機シランカップリング剤の量は、全固体基準で、コーティング組成物の0.1〜25重量%の範囲であり得る。1つの非制限的な実施形態において、少なくとも1種の有機シランカップリング剤の量は、全固体基準で、サイジング組成物の1〜20重量%、例えば、8〜16重量%の範囲である。
【0111】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種の粒子のポリマー分散物をさらに含み得る。適切な粒子分散物の非制限的な例としては、ポリエチレン粒子の分散物、ポリプロピレン粒子の分散物、エチレン/プロピレンコポリマー粒子の分散物、およびこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレン粒子の分散物の非制限的な例は、PROTOLUBE HD(PA、PittsburghのBayer Corporationから市販される)である。
【0112】
少なくとも1種の粒子のポリマー分散物は、コーティング組成物を形成する成分に添加される場合、全固体基準で、0.1〜15重量%の範囲であり得る。1つの非制限的な実施形態において、少なくとも1種のポリマー粒子分散物は、コーティング組成物を形成する成分に添加される場合、全固体基準で、0.1〜10重量%、例えば、0.1〜5重量%の範囲である。
【0113】
本発明のコーティング組成物はさらに、pHが2〜10の範囲であるコーティング組成物を提供するのに十分な量の1つ以上の有機酸を含有し得る。本発明の1つの非限定的な実施形態において、コーティング組成物は、pHが3〜9(例えば、4〜8)の範囲であるコーティング組成物を提供するのに十分な量の1つ以上の有機酸を含有し得る。本発明の使用のために適切な有機酸の非限定的な例としては、一価カルボン酸および多価カルボン酸ならびに/またはこれらの無水物(例えば、酢酸、クエン酸、蟻酸、プロピオン酸、カプロン酸、乳酸、安息香酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの混合物)が挙げられる。
【0114】
水は、本発明のコーティング組成物のための優れた溶媒である。このように、水は、ガラス繊維上のコーティングの塗布を容易にするのに十分な量で存在し得る。このようなコーティング組成物の固体の重量パーセントは、0.5〜20重量%の範囲であり得る。本発明の1つの非限定的な実施形態において、固体の重量%は、1〜10重量%の範囲である。本発明の別の非限定的な実施形態において、固体の重量%は、2〜8重量%の範囲である。
【0115】
1つの実施形態において、本発明のコーティング組成物は、デンプン材料を含まなくてもよい。本明細書中で使用される場合、本発明の記載において、「デンプン材料を含まない」または「デンプンフリー」は、コーティング組成物が、一定の大きさにつくられた組成物の全重量に基づいてデンプン材料の5重量%未満(例えば、一定の大きさにつくられた組成物の全重量に基づいて1重量%未満、および一定の大きさにつくられた組成物の全重量に基づいて0.1重量%未満)であることを意味する。
【0116】
本発明のコーティング組成物は、1つの非限定的な実施形態において、複数の別個の粒子をさらに含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「別個」は、粒子が従来のプロセシング条件下で連続的なフィルムを形成するように合体または結合する傾向がないが、代わりに実質的に、これらの個々の個別性を維持し、そしてほぼこれらの個々の形状または形態を維持することを意味する。本発明の別個の粒子は、従来の繊維プロセシングの間に剪断(すなわち、粒子中の原子の層またはシートの除去)、ネッキング(すなわち、少なくとも2つの粒子の間での二次相転位)、および部分的合体を受け得、なお「別個の」粒子としてみなされ得る。
【0117】
複数の別個の粒子を含むコーティング組成物を有する繊維ストランドが、ファブリックに組み立てられ得、そして本発明に従う電子支持体、電子回路板、アパーチャ結合テープ、およびエアロスペース複合材料(以下に記載されるような)が作製され得ることを当業者はさらに認識する。
【0118】
粒子は、所望される任意の形状または形態を有し得る。本発明において限定するわけではないが、適切な粒子の形状の例としては、球状(例えば、ビーズ、マイクロビーズまたは中空の球)、立方体、板状または針状(細長または繊維状)が挙げられる。さらに、粒子は、中空、多孔性または空隙のない、あるいはこれらの組み合わせ(例えば、多孔性の中空中心または中実の壁)である内部構造を有し得る。適切な粒子特性についてのさらなる情報については、H.Katzら編、Handbook of Fillers and Plastics(1987)9頁〜10頁(本明細書中に参考として特に援用される)を参照のこと。
【0119】
粒子は、ポリマー性無機材料、非ポリマー性無機材料、ポリマー性有機材料、非ポリマー性有機材料、複合材料、および前述の任意の混合物から選択される材料から形成され得る。本明細書中に使用される場合、用語「ポリマー性無機材料」は、炭素以外の元素に基づく骨格反復単位を有するポリマー性材料を意味する。さらなる情報については、J.E.Markら、5頁を参照のこと(本明細書中に参考として特に援用される)。本明細書中に使用される場合、用語「ポリマー性有機材料」は、合成ポリマー性材料、半合成ポリマー性材料および炭素に基づく骨格反復単位を有する天然のポリマー材料を意味する。
【0120】
「有機材料」は、本明細書中で使用される場合、炭素含有化合物を意味し、ここで炭素は、代表的に炭素自体と水素とに結合され、そしてしばしば、さらに他の元素に結合され、二成分化合物(例えば、二酸化炭素、カーバイド、二硫化炭素など);金属シアニド、金属カルボニル、ホスゲン、カルボニルスルフィドなどのような三成分化合物および炭素含有イオン化合物(例えば、金属カーボナート(例えば、炭酸カルシウムおよび炭酸ナトリウム))を除外する。本明細書中に使用される場合、用語「無機材料」は、有機材料でない任意の材料を意味する。R.Lewis,Sr.,Hawley’s Condensed Chemical Dictionary,(第12版、1993)761〜762頁、およびM.Silberberg,Chemistry The Molecular Nature of Matter and Change(1996)586頁(本明細書中に参考として特に援用される)を参照のこと。
【0121】
本明細書中で使用される場合、用語「複合材料」は、2つ以上の異なる材料の組み合わせを意味する。複合材料から形成される粒子は、一般的に、その表面下の粒子の内部の硬度と異なる表面の硬度を有する。より具体的には、粒子の表面は、当該分野で周知の任意の様式で改変され得、これらとしては、当該分野で公知の技術を使用してその表面特性を化学的にまたは物理的に変更することが挙げられるがこれらに限定されず、その結果、粒子の表面堅さは、ガラス繊維の硬度以下であり、その一方で、表面下の粒子の硬度は、ガラス繊維の硬度より高い。例えば、粒子は、1つ以上の二次材料でコーティングされるか、それをまとわせるかまたはカプセル化される一次材料から形成され得、よりやわらかい表面を有する複合粒子を形成し得る。さらに別の代替的な実施形態において、複合材料から形成される粒子は、一次材料の異なる形態でコーティングされるか、それをまとわせるかまたはカプセル化される一次材料から形成され得る。本発明において有用な粒子に対するさらなる情報については、G.Wypych,Handbook of Fillers,第2版(1999)15〜202頁(本明細書中に参考として特に援用される)を参照のこと。
【0122】
本発明の粒子の形成において有用な代表的な非ポリマー性無機材料としては、黒鉛、金属、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩および水酸化物から選択される無機材料が挙げられるがこれらに限定されない。粒子が形成される適切な無機窒化物の非限定的な例は、窒化ホウ素である。粒子の1つの非限定的な実施形態において、窒化ホウ素粒子は、六方晶系結晶構造を有する。本発明の使用のために適切な窒化ホウ素から形成される粒子の非限定的な例は、POLARTHERM(登録商標)100シリーズ(PT120,PT140、PT160およびPT180);300シリーズ(PT350)および600シリーズ(PT620、PT630、PT640およびPT670)の窒化ホウ素粉末粒子(Advanced Ceramics Corporation of Lakewood,Ohioから市販される)、「PolarTherm(登録商標)Thermally Conductive Fillers for
Polymeric Materials」Advanced Ceramics Corporation of Lakewood,Ohio(1996)の技術公報(本明細書中に参考として特に援用される)である。
【0123】
有用な無機酸化物の非限定的な例は、酸化亜鉛である。適切な無機硫化物としては、二硫化モリブデン、二硫化タンタル、二硫化タングステン、および硫化亜鉛が挙げられるがこれらに限定されない。有用な無機ケイ酸塩としては、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウム(例えば、バーミキュライト)が挙げられるがこれらに限定されない。適切な金属としては、モリブデン、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、銅、金、鉄、銀、合金、および前述の任意の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0124】
本発明の別の非限定的な例において、粒子は、非ポリマー性有機材料から形成され得る。本発明において有用な非ポリマー性有機材料の例としては、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸アルミニウム)、黒鉛およびステアルアミドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0125】
本発明のさらに別の非限定的な例において、粒子は、無機ポリマー性材料から形成され得る。有用な無機ポリマー性材料の非限定的な例としては、ポリフォスファーゼン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリゲレマン(polygeremane)、ポリマー性硫黄、ポリマー性セレン、シリコーン、および前述の任意の混合物が挙げられる。本発明における使用に適切な無機ポリマー性材料から形成される粒子の特定の非限定的な例は、TOSPEARLであり、これは、架橋されたシロキサンから形成される粒子であり、そしてToshiba Silicones Company,Ltd.of Japanから市販される。
【0126】
本発明のなお別の非限定的な実施形態において、粒子は、合成有機ポリマー性材料から形成され得る。適切な有機ポリマー性材料としては、熱硬化性材料および熱可塑性材料が挙げられるがこれらに限定されない。適切な熱硬化性材料としては、熱硬化性ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ材料、フェノール類、アミノプラスト(aminoplast)、熱硬化性ポリウレタン、および前述の任意の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。エポキシ材料から形成される合成ポリマー性粒子の非限定的な例は、エポキシミクロゲル粒子である。
【0127】
適切な熱可塑性材料としては、熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル性ポリマー、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマー、および前述の任意の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。適切な熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが挙げられるがこれらに限定されない。適切なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブテンが挙げられるがこれらに限定されない。適切なアクリル性ポリマーとしては、スチレンとアクリル性モノマーとのコポリマーおよびメタクリレートを含むポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。アクリル性コポリマーから形成される合成ポリマー性粒子の非限定的な例は、RHOPLEX(登録商標)B−85(これは、不透明の非架橋性固体アクリル性粒子エマルジョンである)、ROPAQUE(登録商標)HP−1055(これは、1.0μmの粒子サイズ、26.5重量%の固体含量および55%の空隙体積を有する、不透明のフィルム形成しないスチレンアクリル性ポリマー性合成顔料である)、ROPAQUE(登録商標)OP−96およびROPAQUE(登録商標)HP−543(これらは、同一であり、各々が、0.55μmの粒子サイズおよび30.5重量%の固体含量を有する、不透明のフィルム形成しないスチレンアクリル性ポリマー性合成顔料分散物である)、ならびにROPAQUE(登録商標)OP−62 LO(これもまた、0.40μmの粒子サイズおよび36.5重量%の固体含量を有する、不透明のフィルム形成しないスチレンアクリル性ポリマー性合成顔料分散物である)である。これらの粒子の各々は、Rohm and Haas Company of Philadelphia,Pennsylvaniaから市販される。
R.J.Perry「Applications for Cross−Linked Siloxane Particles」Chemtech,1993年2月 39〜44頁を参照のこと。
Rohm and Haas Company,Philadelphia,Pennsylvaniaから利用可能な、「Chemicals for the Textile Industry」1987年9月を参照のこと。
Rohm and Haas Company,Philadelphia,Pennsylvaniaから利用可能な「ROPAQUE(登録商標)HP−1055、Hollow Sphere Pigment for Paper and Paperboard Coatings」1994年10月と題される製品特徴シート1頁(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
Rohm and Haas Company,Philadelphia,Pennsylvaniaから利用可能な「Architectural Coatings−ROPAQUE(登録商標)OP−96、The All Purpose Pigment」1997年4月と題される製品技術公報1頁(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
ROPAQUE(登録商標)HP−543PおよびROPAQUE(登録商標)OP−96は、同じ材料である;この材料は、塗装工業においてROPAQUE(登録商標)HP−543Pとして同定され、そして被覆工業においてROPAQUE(登録商標)OP−96として同定される。
Rohm and Haas Company、Philadelphia、Pennsylvaniaから入手可能な、1997年4月の製品技術会報(表題「Architectural Coatings−ROPAQUE(登録商標)OP−96,The All Purpose Pigment」の第1頁)(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0128】
本発明に従う粒子はまた、半合成の有機ポリマー物質および天然のポリマー物質から形成され得る。本明細書中で使用する場合、「半合成物質」とは、化学的に改変された天然に存在する物質である。粒子が形成され得る適切な半合成の有機ポリマー物質としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:セルロース系物質(例えば、メチルセルロースおよび酢酸セルロース);および改変デンプン(例えば、酢酸デンプンおよびヒドロキシエチルエーテルデンプン)。粒子が形成され得る適切な天然のポリマー物質としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリサッカリド(例えば、デンプン);ポリペプチド(例えば、カゼイン);および天然の炭化水素(例えば、天然ゴムおよびグッタペルカ)。
【0129】
本発明の1つの非限定的な実施形態において、ポリマー粒子は、コーティングされたストランドによる湿気吸収を低減または制限するために、疎水性ポリマー物質から形成される。このような疎水性ポリマー物質の非限定的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。ポリスチレンコポリマーの非限定的な例としては、ROPAQUE(登録商標)HP−1055、ROPAQUE(登録商標)OP−96、ROPAQUE(登録商標)HP−543PおよびROPAQUE(登録商標)OP−62 LO色素(各々、上記で考察された)が挙げられる。
【0130】
本発明の別の非限定的な実施形態において、この粒子は、ポリマー無機物質および非ポリマー無機物質、ポリマー有機物質および非ポリマー有機物質、複合材料、および上記のいずれかの混合物から選択される物質から形成された中空粒子であり得る。中空粒子が形成され得る適切な物質の非限定的な例は、上記のものである。本発明において有用な中空ポリマー粒子の非限定的な例は、ROPAQUE(登録商標)HP−1055、ROPAQUE(登録商標)OP−96、ROPAQUE(登録商標)HP−543PおよびROPAQUE(登録商標)OP−62 LO色素(各々、上記で考察された)である。本発明において有用であり得る中空粒子の他の非限定的な例については、H.Katzら(編)(1987)の第437〜452頁(これは、本明細書中で参考として具体的に援用される)を参照のこと。
【0131】
本発明の形成サイズ組成物において有用な粒子は、水中の分散物、懸濁物またはエマルジョン物で存在し得る。他の溶媒(例えば、鉱油またはアルコール(好ましくは5重量%未満)が、所望の場合、この分散物、懸濁物またはエマルジョン中に含まれ得る。無機物質から形成される粒子の分散物の非限定的な例は、ORPAC BORON NITRIDE RELEASECOAT−CONC(これは、水中の、25重量%の窒化ホウ素粒子の分散物であり、そしてOak Ridge、TennesseeのZYP Coatings,Inc.から市販されている)である。ZYP Coatings,Inc.の技術会報「ORPAC BORON NITRIDE RELEASECOAT−CONC」(これは、本明細書中で参考として具体的に援用される)を参照のこと。
【0132】
ZYP Coatingsから市販される他の有用な製品としては、BORON NITRIDE LUBRICOAT(登録商標)塗料、ならびにBRAZE STOP製品およびWELD RELEASE製品が挙げられる。アクリルポリマーおよびコポリマーから形成される合成ポリマー粒子のエマルジョンおよび分散物の、特定の非限定的な例としては、以下:RHOPLEX(登録商標)B−85アクリルエマルジョン(上記)、RHOPLEX(登録商標)GL−623(Rohm and Haas Company、Philadelphia、Pennsylvaniaから入手可能な、1997年3月の製品特性シート(表題「Rhoplex(登録商標)GL−623、Self−Crosslinking Acrylic Binder of Industrial Nonwovens」)(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)(これは、45重量%の固体含量および98℃のガラス遷移温度を有する、全てのアクリルフィルムポリマーエマルジョンである);EMULSION E−2321(Rohm
and Haas Company、Philadelphia、Pennsylvaniaから入手可能な、1990年の製品特性シート(表題「Building Products Industrial Coating−Emulsion E−2321」)(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)(これは、45重量%の固体含量および105℃のガラス遷移温度を有する、硬質メタクリレートポリマーエマルジョンである);ROPAQUE(登録商標)OP−96およびROPAQUE(登録商標)HP−543P(上記)(これらは、0.55マイクロメートルの粒子サイズおよび30.5重量%の固体含量を有する分散物として提供される);ROPAQUE(登録商標)OP−62 LO(上記)(これは、0.40マイクロメートルの粒子サイズおよび36.5重量%の固体含量を有する分散物として提供される);およびROPAQUE(登録商標)HP−1055(上記)(これは、26.5重量%の固体含量を有する分散物として提供される)、が挙げられ、これらは全て、Rohm and Haas Company、Philadelphia、Pennsylvaniaから市販される。
【0133】
本発明の特定の非限定的な実施形態において、エアジェット織機で加工されるべき繊維に適用されるコーティング組成物中に取り込まれる粒子の平均サイズは、この織機を横切る繊維ストランドのエアジェット輸送を可能にするのに十分な、少なくとも2つの隣接繊維間の間隔を提供するように、選択され得る。本明細書中で使用する場合「エアジェット織機」とは、横糸(ウェフト)が、当業者に周知の様式で、1つ以上のエアジェットノズルからの圧縮空気のブラストによって杼口が形成された縦糸へと挿入される、織機の型を意味する。
【0134】
別の非限定的な実施形態において、ポリマーマトリックス物質で含浸されるべき繊維に適用される形成サイズ組成物中に取り込まれる粒子の平均サイズは、繊維ストランドの良好なウェットアウト(wet−out)およびウェットスルー(wet−through)を可能にするのに十分な、少なくとも2つの隣接繊維間の間隔を提供する様に選択される。本明細書中で使用する場合、用語「ウェットアウト」は、物質(例えば、スラッシング溶液またはポリマーマトリックス物質)が、繊維の個々の束またはストランドを通って浸透する能力を意味し、そして用語「ウェットスルー」は、物質(例えば、ポリマーマトリックス物質)がファブリックを通って浸透する能力を意味する。
【0135】
本発明を限定しないが、1つの実施形態において、これらの粒子は、レーザー散乱技術を使用して測定して、1000マイクロメートル以下の平均サイズを有する。別の非限定的な実施形態において、これらの粒子は、レーザー散乱技術を使用して測定して、0.001〜100マイクロメートルの範囲の平均サイズを有する。別の非限定的な実施形態において、これらの粒子は、レーザー散乱技術を使用して測定して、0.1〜25マイクロメートルの範囲の平均サイズを有する。
【0136】
本発明の別の非限定的な実施形態において、レーザー散乱技術を使用して測定した平均粒子サイズは、少なくとも0.1マイクロメートルであり、1つの非限定的な実施形態においては、0.1マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲であり、別の非限定的な実施形態においては、0.1マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲である。別の非限定的な実施形態において、レーザー散乱技術を使用して測定した粒子の平均粒子サイズは、少なくとも0.5マイクロメートルであり、そして0.5マイクロメートル〜2マイクロメートルの範囲である。本発明の別の非限定的な実施形態において、これらの粒子は、サイジング組成物が適用される繊維の平均直径よりも一般に小さい平均粒子サイズを有する。上記の平均粒子サイズを有する粒子を含む形成サイズ組成物の残渣の層を有する繊維ストランドから形成されるねじれたヤーンは、繊維ストランドの完全性を維持し、そしてポリマーマトリックス物質に含浸される場合に受容可能なウェットスルー特徴およびウェットアウト特徴を提供しながら、エアジェット製織性(weavability)(すなわち、織機を横切るエアジェット輸送)を可能にするのに十分な、隣接繊維間の間隔を有利に提供し得る。
【0137】
本発明の別の限定的でない実施形態において、レーザー散乱技術を使用して測定される平均粒子径は、少なくとも3μmであり、そして3〜1000μmの範囲である。別の限定的でない実施形態において、レーザー散乱技術を使用して測定される平均粒子径は、少なくとも5μmであり、そして5〜1000μmの範囲である。なお別の限定的でない実施形態において、レーザー散乱技術を使用して測定される粒子径は、10〜25μmの範囲である。別の限定的でない実施形態において、平均粒子径は、一般的に、ガラス繊維の平均公称直径に相当する。上記で考察されたサイズ内に入る粒子でコーティングされたストランドで作製されたファブリックは、ポリマーマトリクス材料で含浸された場合、良好なウェットスルー(wet−through)特徴およびウェットアウト(wet−out)特徴を示すことが観察されている。
【0138】
当業者は、異なる平均粒子径を有する1以上の粒子の混合物が、繊維ストランドおよびそれから続いて作製される製品についての所望の特性および加工特徴を与えるように、本発明によるサイジング組成物に組み込まれ得ることを認識する。より詳細には、異なるサイズの粒子が、例えば、良好なエアジェット輸送特性を有するストランドを提供し、同様に、例えば、良好なウェットスルー特徴およびウェットアウト特徴を示すファブリックを提供するに適切な量で組み合され得る。
【0139】
本発明のコーティング組成物は、当業者に周知の任意の適切な方法によって調製され得る。
【0140】
本発明によるコーティング組成物は、多くの様式において、例えば、フィラメントをローラーアプリケーターまたはベルトアプリケーターに接触させること、スプレーあるいは他の手段によって、適用され得る。コーティングされた繊維は、室温または上昇温度で乾燥され得る。乾燥機は、過剰の水分を繊維から除去し、そして存在する場合、任意の硬化可能なサイジング組成物の成分を硬化させる。ガラス繊維の乾燥についての温度および時間は、コーティング組成物中の固形分(%)、コーティング組成物の成分および繊維の型のような変量に依存する。
【0141】
本明細書中で組成物に関連して使用される場合、用語「硬化する」(例えば、「硬化された組成物」)は、組成物の任意の架橋可能な成分が、少なくとも部分的に架橋されることを意味する。本発明の特定の実施形態において、架橋可能な成分の架橋密度(すなわち、架橋の程度)は、完全な架橋の5%〜100%の範囲である。他の実施形態において、架橋密度は、完全な架橋の35%〜85%の範囲である。他の実施形態において、架橋密度は、完全な架橋の50%〜85%の範囲である。当業者は、架橋の存在および程度(すなわち、架橋密度)が、種々の方法(例えば、窒素下で行われるPolymer Laboratories MK III DMTA分析器を使用する動的機械熱分析(DMTA))で決定され得ることを理解する。この方法は、コーティング、またはポリマーの遊離フィルムのガラス転移温度および架橋密度を決定する。硬化された材料のこれらの物理的特性は、架橋化ネットワークの構造に関連する。
【0142】
本発明に従って、分析されるべきサンプルの長さ、幅および厚さが、まず測定され、このサンプルが、Polymer Laboratories MK III装置に強固に取り付けられ、そして寸法測定値が、この装置中に入力される。熱走査が、3℃/分の加熱速度、1Hzの周波数、120%のひずみ(strain)、および0.01Nの静止力(static force)で実施され、そしてサンプル測定が、2秒毎に起こる。サンプルの変形(deformation)様式、ガラス転移温度、および架橋密度が、本方法に従って決定され得る。より高い架橋密度値(valve)は、コーティング中の架橋のより高い程度を示す。
【0143】
特定の実施形態において、繊維ストランド上に存在するコーティング組成物の量は、強熱減量(loss on ignition:LOI)により測定されるように、30重量%未満であり得る。1つの限定的でない実施形態において、繊維ストランド上に存在するコーティング組成物の量は、10重量%未満(例えば、0.1〜5重量%の間)であり得る。繊維ストランド上に存在するコーティング組成物は、水溶性コーティング組成物または粉末化コーティング組成物の残渣であり得る。本発明の1つの実施形態において、LOIは、1重量%未満である。本明細書中で使用される場合、用語「強熱減量」は、以下の式(I):
LOI=100×[(Wdry−Wbare)/Wdry] (I)
によって決定される、繊維ストランドの表面に存在する乾燥コーティング組成物の重量%を意味し、ここで、Wdryは、オーブンにおける220°F(約104℃)で60分間の乾燥後の、繊維ストランドの重量+コーティング組成物の重量であり、そしてWbareは、オーブンにおける1150°F(約621℃)で20分間の繊維ストランドの加熱およびデシケーターにおける室温への冷却後の、剥き出しの繊維ストランドの重量である。
【0144】
特定の実施形態において、初期サイズ(すなわち、繊維形成後に適用される最初のサイズ)が、繊維に適用される。初期サイズの適用後、この繊維は、1ストランドあたり2〜15,000繊維(例えば、1ストランドあたり100〜1600繊維)を有するストランドに集結される。
【0145】
2次コーティング組成物が、例えば、コーティングされたストランドを、2次コーティング組成物を含む浴槽に浸漬することによってか、コーティングされたストランド上に2次コーティング組成物をスプレーすることによってか、またはコーティングされたストランドを上記で考察したようなアプリケーターと接触させることによって、ストランドの部分をコーティングまたは含浸させるに有効な量で、初期サイズに適用され得る。コーティングされたストランドは、そのストランドから過剰なコーティング組成物を除去するために型(die)に通され得るか、そして/または上記で考察したように、2次コーティング組成物を少なくとも部分的に乾燥または硬化させるに十分な時間、乾燥され得る。ストランドに2次コーティング組成物を適用するための方法および装置は、ストランド材料の構成によって幾分決定される。このストランドは、2次コーティング組成物の適用後に、当該分野で周知の様式において乾燥され得る。
【0146】
適切な2次コーティング組成物は、1つ以上のフィルム形成材料、潤滑剤および上記で考察したような他の添加剤を含み得る。2次コーティングは、一次サイジング組成物と異なり得る。すなわち、2次コーティングは、(1)サイジング組成物の成分と化学的に異なる少なくとも1つの成分を含むか;または(2)サイジング組成物中に含まれる同じ成分の量と異なる量で、少なくとも1つの成分を含む。
【0147】
ガラス繊維ストランドは、上記で考察したように、ヤーンへの撚り込み、切り刻み、束または粗紡糸を形成するための平行な組合せ、布地への機織り、あるいは切り刻まれたストランドマットまたは連続的なストランドマットへの形成によってさらに加工され得る。ガラス繊維ストランドは、当業者に公知の任意の従来の撚り込み技術によって(例えば、撚り込みフレームの使用によって)撚り込まれ得る。一般的に、撚り込みは、ストランドが、ボビンに供給される速度より速い速度で、ストランドをボビンに巻きつけるのを可能にする速度で回転するボビンに、ストランドを送り込むことによって、ストランドに与えられる。一般的に、ストランドは、ストランドに撚り込み(代表的には、1インチあたり約0.5〜3回転)を与えるためにボビンの長さを越える輪に配置される目を通される。
【0148】
ねじれたストランドおよびねじれていないストランド(時々、ゼロねじれストランドと呼ばれる)を使用して、織物ファブリック製品もしくは不織物ファブリック製品、ニット製品もしくは編組(braided)製品、または補強品(reinforcement)を調製し得る。コーティングされた繊維ストランドは、繊維の縦糸方向および/または横糸(fill)方向に使用され得る。適切な織物補強ファブリックは、当業者に周知の従来型の任意の織機(例えば、シャトル織機またはラピアー(rapier)織機)を使用することによって形成され得るが、好ましくは、エアジェット織機を使用して形成される。エアジェット織機は、例えば、日本のTsudakomaからモデル番号103として、およびZurich,SwitzerlandのSulzer Brothers Ltd.からモデル番号L−5000またはL−5100として、市販されている。Sulzer Ruti Ltd.,SwitzerlandのSulzer Ruti L5000 and L5100 Product Bulletins(これらは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。本明細書中で使用される場合、「エアジェット織物」は、エアジェット織機を使用したファブリック織物の型を意味し、ここで、横糸(fill)ヤーン(横糸(welf))は、当業者に周知の様式で、1個以上のエアジェットノズルから圧縮空気を噴射することによって縦糸ヤーンにより形成される縦糸開口(shed)に挿入される。この横糸ヤーンは、この圧縮空気によって、ファブリックの幅、代表的には、10〜60インチ(0.254〜1.524m)で交差して推進される。
【0149】
エアジェット織物加工で異なるヤーンの適合性および空気力学特性は、以下の方法によって決定され得、この方法は、一般に、「Air Jet Transport Drag Force」Test Methodとして、本明細書中で参照される。このAir
Jet Transport Drag Force Testを使用して、ヤーンがエアジェットの力によってエアジェットノズルに引っ張られた際に、このヤーンに与えられる引力または引張力(pulling force)(「抵抗力」)を測定する。この方法において、各ヤーンサンプルは、Sulzer Rutiニードルエアジェットノズルユニットモデル番号044 455 001を通して、約274m(約300ヤード)/分の速度で供給される。このSulzer Rutiニードルエアジェットノズルユニットモデル番号044 455 001は、所望の空気圧(代表的には、約172と約379kPaとの間(約25〜約55ポンド/平方インチ)のゲージ)にて、2mmの直径を有する内部エアジェットチャンバ、および20cmの長さを有するノズル出口チューブを有する(Spartanburg,North CarolinaのSulzer Rutiから市販されている)。張力計は、ヤーンがエアジェットノズルに進入する前の位置で、このヤーンと接触して位置付けられる。この張力計は、ヤーンがエアジェットノズルに引っ張られた際に、エアジェットによってこのヤーンに与えられる張力の測定値を提供する。
【0150】
ファブリックの加水分解耐性は、ヤーンのサンプルへの水分吸着を評価するために利用され得る。この加水分解耐性は、積層についての蝋(solder)浸漬試験を用いて測定され得る。このような浸漬試験は、プレプレグを最初に作製し、次いでそれらを、1〜8plyの範囲の積層に形成することによって行われ得る。この積層は、続いて、10秒〜3分間の範囲の期間にわたって、500°F〜560°Fの範囲の成形蝋に浸漬される。この蝋からの抽出の際に、この積層は、積層内に捕捉された水分の漏出によって引き起こされる、膨れまたは斑点の形成(離層としても知られている)について試験される。斑点は、顕微鏡試験により、積層のわずかな破砕として表れ、代表的には、6万分の1インチ直径である。
【0151】
マイクロワーピング(microwarping)が、ストランドの破損を分析するために利用され得る。この分析は、当該分野で周知であり、綿毛の蓄積を定量して綿毛玉を計数するように、改変を用いた正常なワーピング操作をシミュレートする。
【0152】
コーティングされた繊維ストランドは、広範な種々の用途(例えば、ファブリック、積層、印刷回路基板、電機子バンドテープ、航空機用複合材料および航空宇宙用複合材料)において使用され得る。これらの種々の用途において、本発明において有用なマトリクス材料としては、以下が挙げられる:熱硬化性材料(例えば、熱硬化性ポリエステル)、ビニルエステル、エポキシド(分子内に、少なくとも1種のエポキシ基またはオキシラン基を含有する(例えば、多価アルコールまたはチオールのポリグリシジルエーテル))、フェノール類、アミノプラスト、熱硬化性ポリウレタン、前出のもののいずれかの誘導体、および前出のもののいずれかの混合物。印刷回路基板用の積層を形成するために適切なマトリクス材料としては、FR−4エポキシ樹脂が挙げられ、これは、二官能性臭素化エポキシ樹脂、ポリイミドおよび液晶ポリマーのような、多官能性エポキシ樹脂であり、これらの組成は、当業者に周知である。このような組成に関するさらなる情報が必要であれば、Electronic Materials HandbookTM,ASM International(1989)534〜537頁(これは、詳細に、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0153】
適切なポリマー熱可塑性マトリクス材料の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ポリオレフィン、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタンおよび熱可塑性ポリエステル、ビニルポリマー、ならびに前出のもののいずれかの混合物。有用な熱可塑性材料のさらなる例としては、以下が挙げられる:ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、およびポリカーボネート。
【0154】
例示的なマトリクス材料処方物は、以下からなる:EPON 1120−A80エポキシ樹脂(Houston,TexasのShell Chemical Companyから市販されている)、ジシアンジアミド、2−メチルイミダゾールおよびDOWANOL PMグリコールエーテル(Midland,MichiganのThe Dow Chemical Co.から市販されている)。
【0155】
本発明に従う複合体中で、ポリマーマトリクス材料および補強材料とともに含有され得る他の構成成分としては、以下が挙げられる:着色剤またはピグメント、潤滑剤または加工補助剤(processing aid)、紫外線(UV)安定化剤、抗酸化剤、他の充填剤およびエクステンダー。
【0156】
本発明は、ここで、以下の特定の非制限的な実施例によって説明される。
【実施例】
【0157】
表1に記載される量(全固体に対する重量%)の成分のそれぞれを混合して、本発明において有用な水性サイジング組成物を形成した。
【0158】
【表1】

【0159】
10POLYOX WSR 301 水溶性ポリ(エチレンオキシド)潤滑剤(Union Carbide Corporationから市販される)。
11DYNAKOLL SI 100 化学改変ロジン(Eka Chemicals AB、Sweedenから購入した)。
12ALUBRASPIN 227 シリル化ポリアミンポリマー潤滑剤(New Jersey、ParsippanyのBASF Corp.から購入した)。
13Z−6032 N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Midland MichiganのDow Corningから市販される)。
14PROTOLUBE HD−A ポリエチレン粒子分散物(PA,PittsburghのBayer Corporationから市販される)。
【0160】
サンプル1〜6を以下のように調製した:
1.POLYOX WSR 301を、攪拌条件下で、150°F〜160°Fの範囲の水に添加し、次いで、引き続く処理のためにメイン混合タンクに移した。
【0161】
2.DYNAKOLL SI 100を、Eppenbach高剪断混合を備える別の容器に添加した。Eppenbachを実行し、150°F〜160°Fの範囲の水を、DYNAKOLL SI 100を含む容器にゆっくり添加した。次いで、この混合物に、5分間、Eppenbachを行った。次いで、溶液を、引き続く処理のために、メイン混合タンクに移した。
【0162】
3.ALUBRASPIN 227を、攪拌条件下で、別の容器中の150°F〜160°Fの範囲の水に添加した。酢酸をこの溶液に添加して、溶液のpHを5.0±0.5のpHに調整した。次いで、この溶液を、引き続く処理のために、メイン混合タンクに移した。
【0163】
4.次いで、室温の水を、攪拌子を有する別の容器内へと秤量した。
【0164】
5.攪拌を行いながら、酢酸を水に添加した。
【0165】
6.Z−6032を、攪拌を行いながら、酢酸/水溶液に添加した;この溶液を1時間攪拌した;次いで、この1時間攪拌した溶液を、別の容器中の水に非常にゆっくり添加して、Z−6032/酢酸溶液を希釈した;次いで、希釈されたZ−6032/酢酸混合物を、メイン混合タンクに添加した。
【0166】
7.酢酸をこのメイン混合タンクに添加して、最終混合物のpHを4.0に調整した。
【0167】
8.次いで、必要に応じて、水を添加して、必要な容量に希釈した。
【0168】
サンプル7は、以下のように調製した:
1.POLYOX WSR 301を、攪拌条件下で、150°F〜160°Fの範囲の水に添加し、次いで、引き続く処理のためにメイン混合タンクに移した。
【0169】
2.DYNAKOLL SI 100を、Eppenbach高剪断混合を備える別の容器に添加した。Eppenbachを実行し、150°F〜160°Fの範囲の水を、DYNAKOLL SI 100を含む容器にゆっくり添加した。次いで、この混合物に、5分間、Eppenbachを行った。次いで、溶液を、引き続く処理のために、メイン混合タンクに移した。
【0170】
3.ALUBRASPIN 227を、攪拌条件下で、別の容器中の150°F〜160°Fの範囲の水に添加した。酢酸をこの溶液に添加して、溶液のpHを5.0±0.5のpHに調整した。次いで、この溶液を、引き続く処理のために、メイン混合タンクに移した。
【0171】
4.次いで、室温の水を、攪拌子を有する別の容器内へと秤量した。
【0172】
5.攪拌を行いながら、酢酸を水に添加した。
【0173】
6.Z−6032を、攪拌を行いながら、酢酸/水溶液に添加した;この溶液を1時間攪拌した;次いで、この1時間攪拌した溶液を、別の容器中の水に非常にゆっくり添加して、Z−6032/酢酸溶液を希釈した;次いで、希釈されたZ−6032/酢酸混合物を、メイン混合タンクに添加した。
【0174】
7.次いで、PROTOLUBE HDAを、メイン混合タンクに添加した。
【0175】
8.酢酸をこのメイン混合タンクに添加して、最終混合物のpHを4.0に調整した。
【0176】
9.次いで、必要に応じて、水を添加して、必要な容量に希釈した。
【0177】
サンプル6および7をガラス繊維ストランドに塗布し、これを次いで、1.0回転/インチでの2ドフ(doff)としてオーブン乾燥することなく、ねじり、そして標準ミルクボトルボビンを作製した。
【0178】
(試験1)
各ヤーンサンプルを、一対の従来の電子張力計を介して262メートル(287ヤード)/分の速度で、ヤーンサンプルがシリンダーの周りに1つの完全な包みを形成するように張力計間に整列された4.445センチメートル(1.75インチ)直径を有する固定ステンレス鋼シリンダの周りで引っ張ることによって、サンプル6および7のヤーンを、摩擦力について評価した。以下の表2に記載されるような張力計間の張力(g)の違いは、金属表面に対する摩擦の尺度であり、ヤーンが織編操作の間に供され得る摩擦力に類似することが意図される。
【0179】
各サンプルの各試行についての平均強熱減量(全重量のガラスおよび乾燥形成サイズ組成物によって形成サイズ組成物の固形分を割った重量%)を、同様に表2に記載する。
【0180】
【表2】

【0181】
(試験2)
エアジェット織編プロセスとサンプルヤーンの適合性を、上記の詳細に考察された「エアジェット輸送抵抗力」試験方法を使用して決定した。
【0182】
各ヤーンサンプルを、25〜55ポンド/平方インチ(172〜379310キロパスカル)ゲージで変化する空気圧で、2mmの直径を有する内部エアジェットチャンバおよび20cmの長さを有するノズル出口チューブを有するSulzer Rutiニードルエアジェットノズルユニットモデル番号044455001(North Carolina、SpartanburgのSulzer Rutiから市販される)を通して、274m(300ヤード)/分の速度で供給した。エアジェットノズルに入るヤーンの前の位置に、ヤーンと接触させて、張力計を配置した。張力計は、それぞれのヤーンサンプルがエアジェットノズル内に引き込まれたときにエアジェットによって各ヤーンサンプルに及ぼされる張力(g)の測定値を提供した。これらの値は、以下の表3に記載される。
【0183】
【表3】

【0184】
幅広い本発明の概念から逸脱することなく、上記実施形態に対して変更がなされ得ることが当業者によって理解される。従って、本発明が、開示される特定の実施形態に制限されないが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲内にある改変を網羅することが意図されることが理解される。
【0185】
繊維ストランドであって、少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のカチオン性潤滑剤、少なくとも1種のフィルム形成材料、少なくとも1種の有機シランカップリング剤、および少なくとも1種のポリマー粒子分散物から形成される組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。繊維ストランドであって、少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のポリマー性潤滑剤、少なくとも1種のフィルム形成材料、少なくとも1種の有機シランカップリング剤、および少なくとも1種のポリマー粒子分散物を含む成分から形成される組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。繊維ストランドであって、少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のカチオン性潤滑剤、少なくとも1種のフィルム形成材料、および少なくとも1種の有機シランカップリング剤を含み、デンプンを含まない組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。繊維ストランドであって、少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のポリマー性潤滑剤、少なくとも1種のフィルム形成材料、および少なくとも1種の有機シランカップリング剤を含み、デンプンを含まない組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。繊維ストランドであって、少なくとも1種のロジン、少なくとも1種のシリル化ポリアミン、少なくとも1種のフィルム形成材料、および少なくとも1種の有機シランカップリング剤を含む組成物で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1種の繊維を含む、繊維ストランド。これらの繊維ストランドのうちの少なくとも1種を含むファブリックおよび複合材料も提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の繊維ストランド。

【公開番号】特開2010−13789(P2010−13789A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179927(P2009−179927)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【分割の表示】特願2004−66441(P2004−66441)の分割
【原出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】