説明

橋梁の架設方法及び装置

【課題】架設設備が軽量・簡単で、既設の橋桁への位置合わせが精確で、組立作業の効率化と安全性に優れた橋梁の架設方法及び装置を提供すること。
【解決手段】連結用橋桁を載せた台車を橋桁の上で移送し、橋桁と連結用橋桁との先端をヒンジで連結して連結用橋桁を回転し橋桁と連結用橋桁とを連結するようにした橋梁の架設方法において、台車の台車フレーム兼支柱をヒンジに連結し、橋桁の先端まで移送する工程と、ヒンジで橋桁と連結用橋桁を連結する工程と、ヒンジを支点として連結用橋桁を押し上げる工程と、連結用橋桁を押し上げた後、前記台車フレーム兼支柱で支柱を形成する工程と、この支柱からワイヤロープで惜しみを取りつつヒンジを支点として連結用橋桁を回転下降して橋桁に連結する工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁を構成する長尺で重量のある橋桁を効率よく、かつ、安全に架設するための橋梁の架設方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁を架設するときに、架設箇所の下側空間が河川、峡谷などの地形条件のため、また、交通遮断に制限のある車道・鉄道などのために架設機材を設置できないか、設置時間に制限がある場合などは、橋桁を送り出し架設方法や片持ち架設方法によって順次連結施工することが多い。
【0003】
図8は、従来の送り出し架設方法の一例を示すもので、河岸などに設けた製作ヤード14にて複数の連結用橋桁13a、13b、…を予め組み立てて連結して橋桁13を構築し、この橋桁13の先端部に、軽量の手延べ機10を連結する。そして、予め組み立てた橋桁13を台車15に載せ製作ヤード14の上を移送し、手延べ機10の先端部を橋脚16の上の無端帯移送装置17に載せ、橋桁13を移送する。所定距離だけ移送したら、製作ヤード14にて次の連結用橋桁13cを組み立てて連結し、前記同様にして連結した橋桁13を台車15に載せ製作ヤード14の上を移送し、手延べ機10と橋桁13をさらに先の橋脚16の上に設置した無端帯移送装置17に載せて順次移送する。
【0004】
図9及び図10は、従来の片持ち架設方法の異なる例を示すものである。
このうち、図9は、予め組み立てられた橋桁13の先端部に次の連結用橋桁13aを連結する場合、クレーン11を橋桁13の上の移動装置26で先端部まで移送させて固定し、次に、点線で示すようにクレーン11の後側まで搬送した次の連結用橋桁13aをクレーン11で吊り上げ、このクレーン11を旋回して橋桁13の先端まで運び、この連結用橋桁13aを降下して橋桁13の先端部と連結用橋桁13aの基端部との位置合わせをしてボルト、溶接などで接合する方法である。
【0005】
図10は、予め組み立てられた橋桁13の上にレールを敷設し、このレールに架設機12が下端部の移動装置26によって移動可能に組み立てられて載せられ、また、この架設機12の上端に、吊り下げ台車18が移動自在に設けられ、橋桁13の上で組み立てられた次の連結用橋桁13aを吊り下げ台車18のワイヤ19で吊り上げ、基端部側の張り出し桁20の反力ワイヤ21にて反力を取りながら、吊り下げ台車18で連結用橋桁13aを吊り下げて架設機12の先端部側の張り出し桁20まで搬送し、搬送された連結用橋桁13aを降下して既設の橋桁13の先端部と連結用橋桁13aの基端部との位置合わせをしてボルト、溶接などで接合する方法である(特許文献1)。
【特許文献1】特開平2001−20225号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す橋桁の送り出し架設方法では、架設工事に先立ち手延べ機10を橋桁13の先端部へ取り付けたり、架設工事後に取り外したりする煩雑な工事を必要とすること、手延べ機10は軽量のものを用いるとしても後続する橋桁13を支えるための強度を必要とし、それだけ重量もあり、先端部が垂れ下がるので、橋桁13を少し上向きに送り出したり、無端帯移送装置17の上で高さ調整をしたりしなければならないこと、橋桁13は製作ヤード14で組み立てるので、製作ヤード14が十分広いところでなければ採用できないこと、などの問題点を有する。
【0007】
図9に示すクレーン11を用いた片持ち架設方法では、橋桁13の先端部のクレーン11で旋回して連結用橋桁13aを移動させるとき、クレーン11には、連結用橋桁13aの鉛直方向の全重量Wだけでなく、クレーン11の作業半径Lによるモーメント(M=W×L)がかかる。そのため、クレーン11は、吊り荷重Wの2倍以上の重量が必要となり、橋桁13をクレーン11の重量も加味して支持するか、場合によっては、この橋桁13の補強をしなければならない。また、旋回機能を有するクレーン11は、装置自体が複雑で高価になる。このため、橋梁架設工事費が高くなる、などの問題があった。
【0008】
図10に示す架設機12を用いた片持ち架設方法では、橋桁13の先端部の架設機12で吊り上げ移動するので、橋桁13は、架設機12と連結用橋桁13aとを支える必要があり、全体の重量が大きくなるばかりか、橋桁13の補強をしなければならない。また、架設機12は、連結用橋桁13aの形状、重さ、長さなどに応じて専用の装置となり、装置自体が複雑で高価になる。このため、橋梁架設工事費が高くなる、などの問題があった。
【0009】
本発明は、ユニット化した連結用橋桁を既設の橋桁の先端部に順次継ぎ足しながら橋桁を架設する工法において、架設設備が軽量・簡単で、既設の橋桁の先端部への位置合わせが精確で、組立作業の効率化と安全性に優れた橋梁の架設方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、連結用橋桁を載せた台車を既設の橋桁の上で移送し、橋桁と連結用橋桁との先端をヒンジで連結して連結用橋桁を回転し橋桁と連結用橋桁とを連結するようにした橋梁の架設方法及び装置において、台車の台車フレーム兼支柱をヒンジに連結し、橋桁の先端まで移送する工程と、ヒンジで橋桁と連結用橋桁を連結する工程と、ヒンジを支点として連結用橋桁を押し上げる工程と、連結用橋桁を押し上げた後、前記台車フレーム兼支柱で支柱を形成する工程と、この支柱からワイヤロープで惜しみを取りつつヒンジを支点として連結用橋桁を回転下降して橋桁に連結する工程とからなることを特徴とする橋梁の架設方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、既設の橋桁と連結用橋桁とを連結するようにした橋梁の架設方法において、台車の台車フレーム兼支柱をヒンジに連結し、橋桁の上を移送する工程と、ヒンジで橋桁と連結用橋桁を連結する工程と、ヒンジを支点として連結用橋桁を押し上げる工程と、連結用橋桁を押し上げた後、前記台車フレーム兼支柱で支柱を形成する工程と、この支柱からワイヤロープで惜しみを取りつつヒンジを支点として連結用橋桁を回転下降して橋桁に連結する工程としたので、従来の送り出し架設方法における手延べ機の取り付け、取り外したりする煩雑な工事や、手延べ機の先端部の高さ調整をしたりする必要がなく、橋梁を安価に構築できる。また、製作ヤードは狭くても構築することができる。
従来のクレーンを用いた片持ち架設方法に比較し、橋梁を低能力の安価なジャッキでより安全に構築することができる。
架設機を用いた片持ち架設方法に比較して装置の小型化が可能で、かつ、形状、重さ、長さなどの異なる連結用橋桁に利用できる。
ヒンジを支点として連結用橋桁を回転下降するので、既設の橋桁との接合位置が精確で従来のような位置合わせをする必要がない。
このように、本発明によれば、架設設備が軽量・簡単で、既設の橋桁の先端部への位置合わせが精確で、組立作業の効率化と安全性に優れた橋梁の架設方法を提供するができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、連結用橋桁を押し上げる工程は、必要に応じて補助ジャッキで連結用橋桁を所定角度まで押し上げた後、クレビス主ジャッキで連結用橋桁が略直立するまで押し上げるようにしたので、台車は、可能な限り機高を低く構成でき、より安全に連結用橋桁を搬送することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、支柱を形成する工程は、ヒンジに連結された台車の台車フレーム兼支柱と、台車に搭載され、一端を橋桁に連結し、他端を台車フレーム兼支柱に連結したクレビス主ジャッキと、ヒンジとクレビス主ジャッキの連結された橋桁とで3角形の支柱を形成したので、惜しみを取るための支柱がよりしっかりとした構成となり、また、支柱を形成するための特別な機構を必要としない。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、連結用橋桁の下降時の惜しみは、台車に搭載したトラニオンジャッキによりワイヤロープを徐々に伸長させて行うようにしたので、連結用橋桁の下降時の荷重が既設の橋桁にても負担し、より小型のトラニオンジャッキで済む。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、連結用橋桁を回転して既設の橋桁に連結するようにした橋梁の架設装置において、
連結用橋桁を移送する台車と、
台車フレーム兼支柱と、橋桁と、連結用橋桁とを連結するヒンジと、
連結用橋桁を押し上げるクレビス主ジャッキと、
連結用橋桁の下降時の惜しみを取るためのトラニオンジャッキと
を具備したので、架設設備が軽量・簡単で、既設の橋桁の先端部への位置合わせが精確で、組立作業の効率化と安全性に優れた橋梁の架設装置を提供することができる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、連結用橋桁を初期押し上げするための補助ジャッキを付加したので、連結用橋桁を押し上げるクレビス主ジャッキをより低能力のものを採用でき、装置全体の価格をより安価に構成して提供することができる。
【0017】
請求項7記載の発明によれば、台車の台車フレーム兼支柱は、縦枠と横枠で細長四角の枠組みをし、この枠の中空部に、トラニオンジャッキの両端部を第1固定軸、第2固定軸によりそれぞれ第1固定シーブ、第2固定シーブと共に取り付け、このトラニオンジャッキのピストンの先端部に移動軸を移動シーブと共に取り付け、前記台車フレーム兼支柱の下面基端部に、クレビス主ジャッキをその一端を結合して搭載し、前記台車フレーム兼支柱を、車輪を取り付けた車輪フレームに載置し、前記トラニオンジャッキにより伸縮するワイヤロープを、前記第1固定シーブ、第2固定シーブ、移動シーブに掛け渡し、その一端を連結用橋桁の基端部に固定し、他端を前記台車フレーム兼支柱に固定してなるので、
装置全体がよりコンパクトになり、橋梁を構築する現場への搬送、組み立て、作業後の解体が容易になり、構築コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、既設の橋桁と連結用橋桁とを連結するようにした橋梁の架設方法において、台車の台車フレーム兼支柱をヒンジに連結し、橋桁の先端まで移送する工程と、ヒンジで橋桁と連結用橋桁を連結する工程と、ヒンジを支点として連結用橋桁を押し上げる工程と、連結用橋桁を押し上げた後、前記台車フレーム兼支柱で支柱を形成する工程と、この支柱からワイヤロープで惜しみを取りつつヒンジを支点として連結用橋桁を回転下降して橋桁に連結する工程とからなることを特徴とする橋梁の架設方法である。
【0019】
前記連結用橋桁を押し上げる工程は、クレビス主ジャッキによる押し上げ可能な角度まで補助ジャッキで押し上げた後、クレビス主ジャッキで連結用橋桁が略直角になるまで押し上げるようにする。
【0020】
支柱を形成する工程は、ヒンジに連結された台車の台車フレーム兼支柱と、台車に搭載され、一端を橋桁に連結し、他端を台車フレーム兼支柱に連結したクレビス主ジャッキと、ヒンジとクレビス主ジャッキの連結された橋桁とで3角形を形成することが望ましい。
【0021】
連結用橋桁の下降時の惜しみは、台車に搭載したトラニオンジャッキによりワイヤロープを徐々に伸長させて行う。
【0022】
上記本発明の方法を実現するための装置は、連結用橋桁を載せて橋桁の上を移送する台車と、この台車の台車フレーム兼支柱と、橋桁と、連結用橋桁とをそれぞれの先端部で連結するヒンジと、一端を台車フレーム兼支柱の基端部に連結し、他端を橋桁に連結するクレビス主ジャッキと、台車に搭載され、一端を連結用橋桁の基端部に連結され、連結用橋桁を吊り下げたワイヤロープで惜しみを取るためのトラニオンジャッキとを具備している。
【0023】
前記クレビス主ジャッキの他に、連結用橋桁の初期押し上げするための補助ジャッキを付加することがより望ましい。
【0024】
より具体的には、台車の台車フレーム兼支柱は、縦枠と横枠で細長四角の枠組みをし、この枠の中空部に、トラニオンジャッキの両端部を第1固定軸、第2固定軸によりそれぞれ第1固定シーブ、第2固定シーブと共に取り付け、このトラニオンジャッキのピストンの先端部に移動軸を移動シーブと共に取り付け、前記台車フレーム兼支柱の下面基端部に、クレビス主ジャッキをその一端を結合して搭載し、前記台車フレーム兼支柱を、車輪を取り付けた車輪フレームに載置し、前記トラニオンジャッキにより伸縮するワイヤロープを、前記第1固定シーブ、第2固定シーブ、移動シーブに掛け渡し、その一端を連結用橋桁の基端部に固定し、他端を前記台車フレーム兼支柱に固定してなる構成とする。
【実施例1】
【0025】
まず、本発明による橋梁の架設方法の原理を図7に基づき説明する。
図7(a)において、13は、ユニット化した連結用橋桁13aを順次連結した既架設の橋桁である。この橋桁13の上にレール23を敷設し、このレール23に台車15を載せ、この台車15の上にこれから連結しようとする連結用橋桁13aを裏返しにして載せる。この連結用橋桁13aには台車15側に予めレール23を敷設したものでもよいし、橋桁13の先端部に連結してから敷設してもよい。
【0026】
図7(b)において、裏返した状態の連結用橋桁13aを台車15によって橋桁13の先端部又は連結箇所まで搬送する。搬送したら、橋桁13の上面の先端にヒンジ22の下側の第1連結片24aを連結し、連結用橋桁13aの下面の先端にヒンジ22の上側の第2連結片24bを連結する。このとき、ヒンジ22の軸25は、橋桁13と連結用橋桁13aの端面の鉛直線と一致している。
なお、ヒンジ22は、予め橋桁13の先端部に取り付けておくか、連結用橋桁13aの先端部に取り付けてもよい。また、ヒンジ22は、橋桁13の先端部に連結用橋桁13aを搬送して位置合わせをしてから取り付けてもよい。
【0027】
図7(c)において、連結用橋桁13aを油圧ジャッキなどでヒンジ22の軸25を支点として押し上げる。連結用橋桁13aの重心がヒンジ22の軸25の略真上状態まで押し上げた後は、ワイヤにて惜しみをとりながら降下させ、180度回転する。すると、橋桁13と連結用橋桁13aは、レール23側を上面として水平状態になる。橋桁13の先端部と連結用橋桁13aの基端部とは、位置合わせをしなくてもヒンジ22により精確に一致している。この状態で、接合面を互いにボルト、溶接などで接合する。
【0028】
以上の本発明による橋梁の架設方法の原理を具体化にした実施例を図1ないし図6に基づき説明する。
まず、図1、図2及び図3に基づき構成を説明する。
連結用橋桁13aは、工字形をした単位長さの2本の鋼材を平行に配置し、それらの間を橋桁連結部材27で連結したもので、橋桁13は、これらの連結用橋桁13aを順次ボルト、溶接などでつないで構成したものである。この橋桁13の上面には、連結しようとする連結用橋桁13aを搬送するための台車30が移動するレール23がそれぞれ敷設される。
【0029】
前記台車30は、台車フレーム兼支柱31、車輪49、トラニオンジャッキ38、クレビス主ジャッキ50などを主体として構成されている。
前記台車フレーム兼支柱31は、2本の縦枠34と2本の横枠35にて内側に中空部36を有するように細長四角の枠を形成し、この左右の枠の上側を連結フレーム32で前記左右の橋桁13の間隔に合せて連結してなるものである。この台車フレーム兼支柱31の図中右端には、それぞれ支柱連結片37が固定的に取り付けられ、この支柱連結片37の先端部にヒンジ22が軸25をもって回転可能に取り付けられる。このヒンジ22の軸25には、また、第1連結片24aと第2連結片24bが回転可能に取り付けられる。
【0030】
前記台車フレーム兼支柱31の中空部36には、一端部に第1固定軸40によりトラニオンジャッキ38の一端が固定的に取り付けられると共に、第1固定シーブ43が回転自在に取り付けられている。前記中空部36の略中間部に第2固定軸41により前記トラニオンジャッキ38の他端が固定的に取り付けられると共に、第2固定シーブ44が回転自在に取り付けられている。前記トラニオンジャッキ38のピストン39には、その先端に移動軸42が移動自在に取り付けられ、この移動軸42に移動シーブ45が設けられている。
前記1個の第1固定シーブ43、1個の第2固定シーブ44、2個の移動シーブ45には、ワイヤロープ46が図1(b)に示すように掛け渡され、このワイヤロープ46の一方端は、連結用橋桁13aの図中左端近くに固定具47によって固着され、ワイヤロープ46の他方端は、第2固定軸41又はその近くに固定具48によって固着されている。そして、トラニオンジャッキ38のピストン39の伸縮距離に対して、固定具47側がその4倍の距離だけ伸縮する。
【0031】
前記台車フレーム兼支柱31は、四角に枠組み構成された車輪フレーム33に載せられ、この車輪フレーム33の下面の4組の車輪49によって、前記橋桁13のレール23を移動可能に載せられている。また、前記台車フレーム兼支柱31の下面には、図中左端近くに軸受け部52が固着され、この軸受け部52にクレビス主ジャッキ50のピストン51が連結固定され、前記軸受け部52の基端部には、台車30を所定位置に移動した後で橋桁13に固定するための軸受け部53が設けられている。
【0032】
前記連結用橋桁13aの図中左端には、軸受け部56が取り付けられている。この軸受け部56には、図1(c)に示すように、補助ジャッキ54のピストン55に取り付けた係合片59の係合切り欠き60に、軸受け部56側の軸58が係脱可能に嵌合している。又、補助ジャッキ54の基端部は、台車30を所定位置に移動した後で橋桁13に固定するための軸受け部57が設けられ、台車30のいずれかの位置に仮に取り付けられている。
【0033】
以上のように構成された台車30を用いて連結用橋桁13aを架設する方法を説明する。
図1に示すように、既設の橋桁13に敷設されたレール23に、台車30の車輪49を移動自在に載せ、さらに、台車フレーム兼支柱31の上に連結用橋桁13aをその連結端が図中右端になるようにして載せる。このとき、台車フレーム兼支柱31の先端の支柱連結片37に、予めヒンジ22を取り付ける。すなわち、ヒンジ22の軸25と連結用橋桁13aの連結端とが垂直線上で一致するように連結用橋桁13aを台車30に載せる。載せた後、作業の安全性、移動中の位置ずれ防止などのために、第2連結片24bの水平部28bを連結用橋桁13aの先端部にボルトにて固定しておくことが望ましい。しかし、この固定は、後述するSTEP−1での移動後であっても良い。
【0034】
STEP−1(補助ジャッキ54による補助押し上げ:図5)
連結用橋桁13aを載せた台車30は、自走式、レール23をクランプ装置でクランプしながらジャッキで押出す方式などの図示しない公知の移送装置にて移送され、ヒンジ22の軸25と橋桁13の連結端とが垂直線上で一致させる。一致したら、第1連結片24aの水平部28aを橋桁13の先端部にボルトにて固定する。第2連結片24bが連結用橋桁13aに固定されていないときは、この位置で固定する。又、クレビス主ジャッキ50の軸受け部53を橋桁13の上面に固定すると共に、補助ジャッキ54の軸受け部57を橋桁13の上面に固定する。
【0035】
この状態で、補助ジャッキ54に圧油を加えてヒンジ22の軸25を支点として連結用橋桁13aの端部の補助押し上げをする。このとき、クレビス主ジャッキ50は、無負荷とする。
この補助ジャッキ54による押し上げ能力は、次式の通りである。
ここで、補助ジャッキ54のジャッキ能力を20ton×1,000mm、
W、L、a、b、R、Pを図示の通りとすると、
w=W/L=20ton/10m=2.0ton/m
R=w(a+b)/2a=2.0×(9.65+0.35)/2×9.65
=10.4ton
P=R/sinθ=10.4/sin43.2°=15.2ton
従って補助ジャッキ54のジャッキ必要能力=(P/2主桁)×S
=(15.2/2)×1.5=12ton以上となる。
なお、連結用橋桁13aが押し上げられると、連結用橋桁13aと台車30は、ヒンジ22により一体に連結されており、共に押し上げられるが、台車フレーム兼支柱31に結合していない車輪フレーム33と車輪49は、分離してレール23の上に残る。
【0036】
STEP−2(クレビス主ジャッキ50による主押し上げ:図6(a))
補助ジャッキ54により連結用橋桁13aの補助押し上げをした図6(a)の状態からヒンジ22の軸25を支点としてクレビス主ジャッキ50により連結用橋桁13aの主押し上げをする。このクレビス主ジャッキ50による主押し上げ能力は、次式の通りである。
ここで、クレビス主ジャッキ50のジャッキ能力を40ton×3,500mm、
W、L、a、b、R、Pを図示の通りとすると、
w=W/L=20ton/10m=2.0ton/m
R=w(a+b)/2a=2.0×(7.35+2.65)/2×7.35
=13.6ton
P=R/sinθ=13.6/sin16.0°=49.4ton
従ってクレビス主ジャッキ50のジャッキ必要能力=(P/2主桁)×S
=(49.4/2)×1.5=38ton以上となる。
なお、クレビス主ジャッキ50により連結用橋桁13aが押し上げられると、図1(c)のように軸58が係合切り欠き60に着脱自在に係合しているので、補助ジャッキ54は、無負荷の状態でそのまま橋桁13側に残る。
【0037】
STEP−3(クレビス主ジャッキ50による主押し上げ:図6(b))
図6(a)の状態にから軸25を支点としてクレビス主ジャッキ50のピストン51を伸長して連結用橋桁13aが略垂直状態までの主押し上げをする。このとき、連結用橋桁13aの重心がヒンジ22の軸25と垂直線上で一致した状態となり、クレビス主ジャッキ50による押し上げ力は、略0になる。
【0038】
STEP−4(クレビス主ジャッキ50と台車フレーム兼支柱31で支柱を形成する:図6(c))
図6(b)の状態から軸25を支点としてクレビス主ジャッキ50のピストン51をさらに伸長してクレビス主ジャッキ50の長さを台車フレーム兼支柱31と略同じ長さで固定することにより、クレビス主ジャッキ50と台車フレーム兼支柱31と橋桁13の先端部との固定した結合点により、3角形の支柱を形成する。このとき、連結用橋桁13aの重心がヒンジ22の軸25を越えているので、固定具47にワイヤロープ46を介して連結されたトラニオンジャッキ38には、次式の引っ張り力Hが作用する。
H=W×L1/L2=20×1.332/6.983=3.8ton
【0039】
STEP−5(トラニオンジャッキ38による引っ張り:図6(d))
図6(c)の状態から連結用橋桁13aによるHに抗してトラニオンジャッキ38のピストン39を徐々に引込む。図6(d)のように連結用橋桁13aが垂直状態になったとき、ワイヤロープ46を介して連結されたトラニオンジャッキ38には、次式の引っ張り力Hがかかり、連結用橋桁13aの傾きにより次第に増大する。
H=W×L1/L2=20×2.190/7.000=6.3ton
【0040】
STEP−6(トラニオンジャッキ38による引っ張り:図6(e))
図6(d)の状態から連結用橋桁13aによるHに抗してトラニオンジャッキ38のピストン39をさらに徐々に引込む。図6(e)のように連結用橋桁13aが45度の状態になったとき、ワイヤロープ46を介して連結されたトラニオンジャッキ38には、次式の引っ張り力Hがさらに増大してかかる。
H=W×L1/L2=20×5.084/4.610=22.1ton
【0041】
STEP−7(連結用橋桁13aの水平状態:図6(f))
図6(e)の状態から連結用橋桁13aによるHに抗してトラニオンジャッキ38のピストン39をさらに徐々に引込む。すると、図6(f)のように連結用橋桁13aが水平状態になって橋桁13の端面と連結用橋桁13aの端面とが接触するが、この直前の力関係は次式の通りとなる。
w=W/L=20ton/10m=2.0ton/m
V=w(a+b)/2a=2.0×(7.0+3.0)/2×7.0
=14.2ton
T=V/sinθ=14.2/sin45.1°=21.1ton
H=T×cosθ=20.1×cos45.1°=14.2ton
P=H/cosθ=14.2/cos(180−101.5)=71.3ton
従ってクレビス主ジャッキ50の必要能力(引)=(P/2主桁)×S=(71.3/2)×1.5
=54ton以上
従ってトラニオンジャッキ38の必要能力=(T×4本掛/2主桁)×S
=(20.1×4/2)×1.5=61ton以上
従ってワイヤロープ46の必要耐力={T/(2主桁×2本)}×S’
={20.1/(2×2)}×2.5=13ton以上となる。
【0042】
橋桁13の端部に連結用橋桁13aが水平に接触した状態で両者をボルト、溶接などで結合する。結合後に連結用橋桁13aから固定具47を外し、トラニオンジャッキ38のピストン39を伸長してワイヤロープ46を元に戻す。また、クレビス主ジャッキ50のピストン51を元に戻して台車フレーム兼支柱31を車輪フレーム33の上に載せて台車30を元の状態に戻し、軸受け部53と軸受け部57を橋桁13から外す。さらに、ヒンジ22の水平部28aと水平部28bを橋桁13と連結用橋桁13aから外す。
【0043】
以上のSTEP−1からSTEP−7までの工程を繰り返して橋桁13に連結用橋桁13aを次々と連結する。
【実施例2】
【0044】
前記実施例では、補助ジャッキ54を台車30とは分離して取り付けたが、台車30に予め組み込んでおくこともできる。
その例を図4(a)(b)により説明すると、台車30の連結フレーム32と車輪フレーム33をやや外側に突出して設け、車輪フレーム33に垂直な挿入孔63を設け、この挿入孔63に補助ジャッキ54を揺動自在に差し込んで回転ピン62で支持し、この補助ジャッキ54のピストン55の上端部を連結フレーム32の下面の軸受け部56に軸58にて連結する。この場合、軸58は、図1(c)と同様、係合片59の係合切り欠き60により係脱自在に形成することが必要である。
【実施例3】
【0045】
前記実施例では、既設の橋桁と連結用橋桁との先端をヒンジで連結して連結用橋桁を180度回転し既設の橋桁の先端に連結用橋桁を連結するようにした例を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、既設の橋桁の途中に90度に起立するように連結したり、既設の橋桁の端部が垂直以外の箇所に連結用橋桁を120度、180度、210度など任意の角度に回転して連結するようにしてもよい。さらに連結箇所が先端部に限らず、途中でも、側面であっても本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)は、本発明による橋梁の架設方法及び装置の一実施例を示す一部切り欠いた正面図である。 (b)は、ワイヤロープ46のシーブへの掛け渡しの説明図である。 (c)は、補助ジャッキ54における軸受け部56の係脱の説明図である。
【図2】図1における橋梁の架設方法及び装置の平面図である。
【図3】(a)は、図3のa−a線側面図である。 (b)は、図3のb−b線側面図である。 (c)は、図3のc−c線側面図である。
【図4】(a)は、本発明による補助ジャッキ54の実施例2の一部切り欠いた正面図である。 (b)は、同上補助ジャッキ54の実施例2の一部切り欠いた側面図である。
【図5】本発明による橋梁の架設方法及び装置のSTEP−1(作業開始直前)の正面図である。
【図6(a)】本発明による橋梁の架設方法及び装置のSTEP−2の説明図である。
【図6(b)】本発明による橋梁の架設方法及び装置のSTEP−3の説明図である。
【図6(c)】本発明による橋梁の架設方法及び装置のSTEP−4の説明図である。
【図6(d)】本発明による橋梁の架設方法及び装置のSTEP−5の説明図である。
【図6(e)】本発明による橋梁の架設方法及び装置のSTEP−6の説明図である。
【図6(f)】本発明による橋梁の架設方法及び装置のSTEP−7の説明図である。
【図7】本発明による橋梁の架設方法及び装置の原理の説明図で、(a)は、連結用橋桁13aの搬送時、(b)は、ヒンジ22の連結時、(c)は、連結用橋桁13aの回転時の説明図である。
【図8】従来の送り出し架設方法の説明図である。
【図9】従来の片持ち架設方法の説明図である。
【図10】従来の片持ち架設方法の他の例の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10…手延べ機、11…クレーン、12…架設機、13…橋桁、14…製作ヤード、15…台車、16…橋脚、17…無端帯移送装置、18…吊り下げ台車、19…ワイヤ、20…張り出し桁、21…反力ワイヤ、22…ヒンジ、23…レール、24…連結片、25…軸、26…移動装置、27…橋桁連結部材、30…台車、31…台車フレーム兼支柱、32…連結フレーム、33…車輪フレーム、34…縦枠、35…横枠、36…中空部、37…支柱連結片、38…トラニオンジャッキ、39…ピストン、40…第1固定軸、41…第2固定軸、42…移動軸、43…第1固定シーブ、44…第2固定シーブ、45…移動シーブ、46…ワイヤロープ、47…固定具、48…固定具、49…車輪、50…クレビス主ジャッキ、51…ピストン、52…軸受け部、53…軸受け部、54…補助ジャッキ、55…ピストン、56…軸受け部、57…軸受け部、58…軸、59…係合片、60…係合切り欠き、61…車輪カバー、62…回転ピン、63…挿入孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結用橋桁を載せた台車を既設の橋桁の上で移送し、前記橋桁と連結用橋桁とをヒンジで連結して連結用橋桁を回転し橋桁に連結するようにした橋梁の架設方法において、
前記台車の台車フレーム兼支柱を前記ヒンジに連結し、前記橋桁の上を移送する工程と、
前記ヒンジで橋桁と連結用橋桁を連結する工程と、
前記ヒンジを支点として連結用橋桁を押し上げる工程と、
前記連結用橋桁を押し上げた後、前記台車フレーム兼支柱で支柱を形成する工程と、
この支柱からワイヤロープで惜しみを取りつつヒンジを支点として連結用橋桁を回転下降して橋桁に連結する工程と
からなることを特徴とする橋梁の架設方法。
【請求項2】
連結用橋桁を押し上げる工程は、必要に応じて補助ジャッキで連結用橋桁を所定角度まで押し上げた後、クレビス主ジャッキで連結用橋桁が略直立まで押し上げるようにしたことを特徴とする請求項1記載の橋梁の架設方法。
【請求項3】
支柱を形成する工程は、ヒンジに連結された台車の台車フレーム兼支柱と、台車に搭載され、一端を橋桁に連結し、他端を台車フレーム兼支柱に連結したクレビス主ジャッキと、ヒンジとクレビス主ジャッキの連結された橋桁とで3角形の支柱を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の橋梁の架設方法。
【請求項4】
連結用橋桁の下降時の惜しみは、台車に搭載したトラニオンジャッキによりワイヤロープを徐々に伸長させて行うようにした請求項1、2又は3記載の橋梁の架設方法。
【請求項5】
既設の橋桁と連結用橋桁とをヒンジで連結して連結用橋桁を回転して橋桁に連結するようにした橋梁の架設装置において、
前記連結用橋桁を載せて橋桁の上を移送する台車と、
この台車の台車フレーム兼支柱と、橋桁と、連結用橋桁とをそれぞれ連結するヒンジと、
一端を台車フレーム兼支柱の基端部に連結し、他端を橋桁に連結するクレビス主ジャッキと、
台車に搭載され、一端を連結用橋桁の基端部に連結され、連結用橋桁を吊り下げたワイヤロープで惜しみを取るためのトラニオンジャッキと
を具備したことを特徴とする橋梁の架設装置。
【請求項6】
連結用橋桁を初期押し上げするための補助ジャッキを付加したことを特徴とする請求項5記載の橋梁の架設装置。
【請求項7】
台車の台車フレーム兼支柱は、縦枠と横枠で細長四角の枠組みをし、この枠の中空部に、トラニオンジャッキの両端部を第1固定軸、第2固定軸によりそれぞれ第1固定シーブ、第2固定シーブと共に取り付け、このトラニオンジャッキのピストンの先端部に移動軸を移動シーブと共に取り付け、前記台車フレーム兼支柱の下面基端部に、クレビス主ジャッキをその一端を結合して搭載し、前記台車フレーム兼支柱を、車輪を取り付けた車輪フレームに載置し、前記トラニオンジャッキにより伸縮するワイヤロープを、前記第1固定シーブ、第2固定シーブ、移動シーブに掛け渡し、その一端を連結用橋桁の基端部に固定し、他端を前記台車フレーム兼支柱に固定してなることを特徴とする請求項5又は6記載の橋梁の架設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図6(d)】
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【図6(e)】
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【図6(f)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−205014(P2007−205014A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24439(P2006−24439)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000140384)株式会社横河ブリッジ (29)
【出願人】(592173135)横河工事株式会社 (20)
【出願人】(592182573)オックスジャッキ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】