説明

橋梁の解体方法及び架設方法

【課題】 広範なバックヤードを確保できずとも施工を行うことができ、しかも、作業性に優れた橋梁の解体方法及び架設方法を提供する。
【解決手段】 複数のトラス橋が接続されて構成された橋梁を解体するに当たり、前記支持構造物として、矩形状のパネル体をこれらの縦方向、高さ方向及び幅方向について適宜組み合わせてなる支持構造物を使用する。そして、橋梁に、除去の対象となるトラス橋の全長及び該トラス橋より前記一端側とは逆の他端側における該トラス橋と同長のカウンター区間に渡り支持構造物を配置し、この支持構造物を前記橋梁における前記除去トラス橋の一端、他端及び前記カウンター区間の他端側にて、この橋梁を支持する橋脚に支持せしめて設置する支持構造物設置工程と、除去される前記トラス橋を前記橋梁から分離して前記支持構造物に支持させて、支持されたトラス橋を搬送手段で、この橋梁の前記他端へ搬送して除去する除去工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラス橋を複数連ねて構成された橋梁を解体又は架設する橋梁の解体方法及び架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁には、トラス橋をその軸方向に複数連ねて一つの橋梁として形成されたものがある。
【0003】
かかる橋梁を解体又は架設する手法の一つに、例えば特許文献1に開示のように、架設桁を使用するものが知られている。
【0004】
架設桁を使用する手法は、床版を支持する橋脚に架設桁を架設せしめ、この架設桁に床版等、橋梁を構成する部材を吊り下げて、前記架設桁をその長手方向に移動させて橋脚間にトラス橋を順次架設させるものである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−332425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、架設橋はそれ自体が一体物であり、架設しようとする現場に、架設橋を引き込み入れることが可能な広範なバックヤードが必要となる。さらに、架設橋自体がかなりの重量を有し、この架設橋を移動させることに多大な労力を必要とする。
【0007】
そこで、本発明では、橋梁を解体又は架設するに当たり、例え広範なバックヤードを確保できずとも施工を行うことができ、しかも、作業性に優れた橋梁の解体方法及び架設方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この課題を解決するために、次の解体方法及び架設方法を採用した。
【0009】
第1に解体方法として、複数のトラス橋がそれらの長手方向に接続されて構成された橋梁を解体するに当たり、前記トラス橋をこの橋梁の一端側に位置するものから順次除去して解体する橋梁の解体方法であって、前記橋梁に、除去の対象となるトラス橋の全長及び該トラス橋より前記一端側とは逆の他端側における該トラス橋と同長のカウンター区間に渡り支持構造物を配置し、この支持構造物を前記橋梁における除去の対象となるトラス橋の一端、他端及び前記カウンター区間の他端側にて、この橋梁を支持する橋脚に支持せしめて設置する支持構造物設置工程と、除去される前記トラス橋を前記橋梁から分離して前記支持構造物に支持させて、支持されたトラス橋を搬送手段で、この橋梁の前記他端へ搬送して除去する除去工程と、を備え、これらの工程を繰り返し実行し、しかも、前記支持構造物として、矩形状のパネル体をこれらの縦方向、高さ方向及び幅方向について適宜組み合わせてなる構造体を使用し、さらに、前記パネル体が、矩形状の枠体と、互いに接続されて枠体を構成する部材同士の中間部分をこの枠体の内側から連結する補強斜材とから構成されたものである方法を採用した。
【0010】
かかる解体方法において本発明では、前記支持構造物の前記一端側に位置するパネル体をこの支持構造物から分離して、前記カウンター区間に配された支持構造物の前記他端側へ前記搬送手段で搬送し、次いで、前記支持構造物の前記一端側を自由端として、前記搬送手段で前記支持構造物を支持しつつ、除去されたトラス橋の位置に配された部分を前記カウンター区間に配された部分から切り離し、次いで、切り離された前記支持構造物を前記カウンター区間に配された支持構造物の前記他端側へ前記搬送手段で搬送し、搬送された支持構造物を前記カウンター区間の他端側に再び組み接続させ、これらの工程を繰り返し実行して前記支持構造物を前記一端側から前記他端側に移動させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明における前記除去工程では、前記トラス橋の上弦及び斜材を除去し、その後に下弦を除去すること特徴としている。
【0012】
第2に架設方法として、橋梁を架設するに当たり、架設される区間の一端側から他端側に向けて複数のトラス橋の長手方向両端を橋脚で支持させて、前記トラス橋をその長手方向に順次接続して架設する橋梁の架設方法であって、前記トラス橋を設置せしめる設置対象区間及びこの設置対象区間より前記一端側における前記設置対象区間と同長のカウンター区間に渡り支持構造物を配置し、この支持構造物を前記設置対象区間の一端、他端及び前記カウンター区間の他端側にて、前記橋脚に支持せしめて設置する支持構造物設置工程と、設置せしめる前記トラス橋を搬送手段で前記カウンター区間側から前記設置対象区間へ搬送し、このトラス橋の両端を前記橋脚に支持せしめるトラス橋設置工程と、を備え、これらの工程を繰り返し実行し、しかも、前記支持構造物として、矩形状のパネル体をこれらの縦方向、高さ方向及び幅方向について適宜組み合わせてなる構造体を使用し、さらに、前記パネル体が、矩形状の枠体と、互いに接続されて枠体を構成する部材同士の中間部分をこの枠体の内側から連結する補強斜材とから構成されたものである方法を採用している。
【0013】
本発明では、かかる架設方法において、前記カウンター区間における前記一端側に位置するパネル体をこの支持構造物から分離して、前記設置対象区間よりさらに前記他端側に位置する設置対象区間へ前記搬送手段で搬送し、次いで、前記カウンター区間における前記他端側を自由端とし、前記搬送手段でこの支持構造物を支持しつつ、前記カウンター区間に位置する部分を前記設置対象区間の部分から切り離し、次いで、切り離された前記支持構造物を前記設置対象区間よりさらに前記他端側に位置する設置対象区間へ前記搬送手段で搬送し、搬送された支持構造物を元の前記設置対象区間に残された支持構造物の他端側に再び接続させ、これらの工程を繰り返し実行して前記支持構造物を前記一端側から前記他端側に移動させることを特徴としている。
【0014】
また、本発明における前記トラス橋設置工程では、前記設置対象区間へ前記トラス橋の下弦を搬送して設置し、次いで、斜材を搬送して設置し、その後に上弦を搬送して設置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1に、使用される支持構造物が、複数のパネル体の組み合わせであるため、従来の長大な架設桁を使用する場合と異なり、架設桁を組み立てたり、引き込むための広大なバックヤードが不要となる。このため、都心部等の建物が密集する地域でも当該発明にかかる方法を使用することができる。
【0016】
第2に、使用される支持構造物が、複数のパネル体により構成されるために、支持構造物を極めて容易に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につい図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明が適用される橋梁1の一例を示すものであり、橋梁1は、トラス橋2をこれらの長手方向に複数連ねて構成されており、河川Aなどの両側を連絡する。この橋梁1を構成する各トラス橋2は、その長手方向の両端が橋脚3により支持されており、各トラス橋2は、この橋脚3の位置で相互に接続されている。なお、この図1に示された各トラス橋2は、直線上に延びてトラス橋2の下縁をなす下弦4aと、トラス橋2の上縁をなす円弧状の上弦7と、下弦4aに対して上弦7を支持する複数の腹材5,6とから構成されている。なお、この実施形態にかかるトラス橋2は、腹材5,6のうち、斜材5の向きが鉛直材6を軸に対象となるように交互に配されたワーレントラスである。
【0019】
なお、以下では、便宜のため、橋脚の設けられた地点について、図面の左側(橋梁の一端側)から順にP1,P2,P3,P4,P5とする。そして、解体及び架設の対象となるのは、P1〜P4の区間である。以下の図において、P4〜P5の区間についてもトラス橋2が設置されているが、これは、解体の対象外とする。同様に、各図において、P1の地点より陸地側(各図の左側)及びP5の地点よりもさらに陸地側にはポニートラス橋9がそれぞれ設置されているが、これらも対象外とする。
【0020】
本発明は、このような橋梁1を解体又は架設する方法である。
【0021】
橋梁1を解体又は架設するに当たり、本発明の方法では、図2に示すパネル体10が使用される。このパネル体10は、その外形が長方形に形成された枠体11を有し、長手方向の中心が上下に延びる中心部材12で仕切られて2つの正方形の構成部が形成されている。そして、枠体11を構成する部材における構成部の中心部、及び中心部材12の軸方向の中心部には、連結部13がそれぞれ設けられている。そして、補強部材14はこれら連結部13同士を斜めに連結し、補強部材14が各構成部の内側で菱形を形成している。さらに、パネル体10を構成している枠体11の上辺11a及び下辺11bはその厚み方向の両側から別の部材15で挟み込まれるようにして構成されている。
【0022】
このように形成された長方形状のパネル体10の四隅には、ピン孔16がそれぞれ形成されている。このピン孔16は、パネル体10を相互に接続する際に使用される部位である。図2(a)の手前側に位置する上下の2隅においては、枠体11の幅方向における中間部材にピン孔16が形成されている一方で、図2(a)の奥側に位置する上下の2隅においては、厚み方向の両側に位置する部材にピン孔16が形成されている。
【0023】
このよう構成されたパネル体10は、図2(b)に示すように、その縦方向である長手方向に接続させたり、図2(c)に示すように、厚み方向に接続させることで、長さ及び厚みを変化させることができる。さらに、パネル体10を上下に接続させて、高さを所望の高さとすることも可能である。
【0024】
かかるパネル体10を使用して、以下に説明するように、橋梁1を解体及び架設する。
【0025】
先ず、図1に示した橋梁1を解体する手順について説明する。
【0026】
図3及び図4は、橋梁1の解体方法を実施するために必要な準備工程の様子を示している。
【0027】
図3に示す工程では、解体の対象となる橋梁1の一端側であるP1の位置に大型のトラッククレーン20を用意し、このトラッククレーン20で、解体に必要な機材、小型のラフテレーンクレーン21等の重機並びに複数の台車22等を橋梁1の下弦4aをなす床版4に搭載している。
【0028】
また、この図3に示す工程では、床版4に打設されているコンクリート等をコンクリートカッターを用いてブロック状に切断し、クレーン20,21等を用いてこの橋梁1から予め除去しておく。なお、除去されたブロック状のコンクリートは、処理施設で2次破砕され、さらに細かく分解される。
【0029】
床版4の撤去完了後、図4に示すように、橋梁1に搬送手段としてのケーブルクレーン30が橋梁1の全長に渡り設置される。ケーブルクレーン30は、解体される区間の両端位置P1,P4に立設される門型鉄塔31と、これら門型鉄塔31同士を連絡するように張り渡されるケーブル32と、を備えている。また、張り渡されたケーブル32には、このケーブル32に沿って移動し、吊り下げのためのフック等の設けられたキャリヤ33が設けられる(図5以降参照)。なお、設置されるケーブルクレーン30の数に特に限定は無いが、2〜4系統のケーブルクレーン30を設置しておくと、資材の搬送を円滑に行うことができる。
【0030】
以上の準備工程が終了した後、図5及び図6に示すように、橋梁1に設置されたケーブルクレーン30を使用して、複数のパネル体10から構成された支持構造物40がP1側から橋梁1上に搬送される。なお、この実施形態では、支持構造物40を構成するパネル体は橋梁の幅方向における両側に配置される。また、パネル体10は、その厚み方向において、3枚重ねとされている。このように、複数のパネル体10を接続して対向せしめて支持構造物40は、構成されている。
【0031】
このパネル体10から構成された支持構造物40は、これから解体しようとするトラス橋2と、このトラス橋2より図の右側に位置するトラス橋2とに渡って設置される。即ち、P2〜P4の区間に渡り設置される。P3〜P4の区間に配置される支持構造物40は、解体しようとするトラス橋2を実際に支持する部分であり、P2〜P3の区間に配される部分は、バランスを取るために配されるカウンター区間41である。そして、P2〜P4の各地点で支持構造物40が橋脚3に固定される。なお、この実施形態では、実際に支持する部分の長さとカウンター区間41の長さは各トラス橋2の長さと一致されており、容易に橋脚3に固定させることが可能になっている。
【0032】
支持構造物40の設置工程が終了した後、図7及び図8に示すように、P3〜P4の区間のトラス橋2を当該橋梁1から除去する。除去の工程は次の手順で行われる。
【0033】
まず、図7に示すように、トラス橋2を構成している上弦7と腹材5,6とを解体する。これによりトラス橋2自体の重量を軽量化する。解体された上弦7及び腹材5,6は、ケーブルクレーン30により橋梁1の一端側であるP1の地点まで搬送される。
【0034】
その後に、P3〜P4の区間に残された床版4を他の区間から切り離して除去する。切り離す際には、床版4を支持構造物40のP3〜P4の区間に配された部分42に支持させて行う。
【0035】
この支持構造物40を構成するパネル体10の上には、吊り用の梁材50が横たえられ、梁材50がパネル体10の上端に固定される。吊り用の梁材50は、その両端が各パネル体10から側方に張り出すようにして固定される。張り出された両端部には、トラス橋2の床版4を吊り下げて支持するためのチェーンブロック51が取り付けられる。床版4は、これらのチェーンブロック51、吊り用の梁材50を介して支持構造物40に支持される。
【0036】
この支持された床版4をケーブルクレーン30で吊り下げてP1の地点まで搬送して除去する。
【0037】
かかる除去の工程が終了した後、支持構造物40が移動される。支持構造物40の移動は、2ステップに分けて行われる。
【0038】
まず、図9に示すように、P3〜P4の区間に位置する支持構造物42について、上端側に配されたパネル体10の内、P4側に位置する数枚のパネル体10が支持構造物40から分離される。分離されたパネル体10は、ケーブルクレーン30で搬送されてカウンター区間41の端部であるP2の位置まで搬送される。搬送されたパネル体10は、このP2の位置でカウンター区間41に位置する支持構造物40の端部に接続される。これにより、支持構造物40の全体について、P3を支点とて、P3よりP2側のモーメントがP3〜P4の区間のモーメントよりも大きくなる。
【0039】
その後、図10に示すように、P4の位置にて橋脚3に固定された支持構造物40の先端が、橋脚3から切り離され、P4の位置が自由端となる。この場合において、P3〜P4の区間におけるモーメントが小さいため、P3〜P4の区間に残された部分42は、P3よりもP2側のカウンター区間41により支持されて落下することはない。
【0040】
P4の位置が自由端となされた後、支持構造物40は、P3〜P4の区間の部分42がケーブルクレーン30に吊り下げられる。そして吊り下げられた状態で、P3の位置にて、支持構造物40は、3〜P4の区間の部分42が、カウンター区間41であるP2〜P3の区間の部分から分離される。分離された部分42は、この図10に示すように、ケーブルクレーン30で吊り下げられて、カウンター区間41であったP2〜P3の区間より橋梁1の一端側であるP1〜P2の区間のまで搬送される。
【0041】
搬送後、分離された支持構造物40は、P2〜P3の区間に配された支持構造物40に接続される。そして、P1〜P2の区間で再び支持構造物40として再度組み直される。以上の工程を経て、P3〜P4の区間に設置されたトラス橋2がこの橋梁1から除去されると共に、P2〜P4の区間に渡って設置されていた支持構造物40がP1〜P3の区間へ移動される。
【0042】
この解体方法ではかかる作業が繰り返し行われる。
【0043】
図11及び図12は、P2〜P3の区間について、P3〜P4の区間と同様に、トラス橋2を解体し、その後にP2〜P3区間に位置する支持構造物42を移動する工程を示している。
【0044】
図11は、トラス橋2の上弦7及び腹材5,6を解体し、橋梁1から除去する様子を示している。解体された上弦7及び腹材5,6は、橋梁1に設置されているケーブルクレーン30で吊り下げられて、このP2〜P3の区間からP1の位置まで順次搬送される。次いで、下弦4aを構成している床版4が、これを支持する橋脚3から切り離され支持構造物42に支持される。その後、床版4がケーブルクレーン30でP2〜P3の区間からP1の位置まで搬送されて、橋梁1から除去される。なお、搬送された上弦7、腹材5,6及び床版4は、P1の位置に待機しているトラック等に、クレーン車で積み込まれ、2次解体場等へ搬送される。
【0045】
トラス橋2の除去工程が終了した後、図12に示すように、支持構造物40のうちP2〜P3の区間に設置された部分42が橋梁1の一端側であるP1の地点より陸地側へ移動される。
【0046】
この場合も、まず、支持構造物40を構成する2段重ねにされたパネル体10において、上段のパネル体10の中のP3側の数枚が支持構造物40から分離され、ケーブルクレーン30でP1の位置に搬送される。P1の位置に搬送されたパネル体10は、カウンター区間41を構成しているP1〜P2の区間に配されている支持構造物40の末端、即ち、P1の位置にて再びに接続される。
【0047】
なお、この実施形態ではケーブルクレーン30が有効に移動できる区間は、門型鉄塔31が設置されたP1よりも河川A側の区間である。このため、この区間における再度の接続は、陸地に用意されているクレーン車21により吊り下げられて行われる。
【0048】
P2〜P3の区間における一部のパネル体10の搬送が行われた後、支持構造物40は、下段に配されたパネル体10がP3の位置にて橋脚3から切り離されて、P3側が自由端とされる。この状態で、支持構造物42がP2〜P3の区間にてケーブルクレーン30で吊り下げられる。そして、支持構造物40は、P2の位置で分離され、P2〜P3の区間に配されている支持構造物42は、P1の位置までケーブルクレーン30で搬送される。この支持構造物42についても、陸地に用意されたクレーン車21により再びカウンター区間41に残された支持構造物40に再度接続される。
【0049】
以上のようにして、P2〜P3の区間について、設置されていたトラス橋2が除去されると共に、支持構造物42が移動される。
【0050】
その後、図13に示すように、最後のP1〜P2の区間についても、同様の手順によりトラス橋2が除去される。さらに、トラス橋2を除去した後、P1〜P2の区間に配された支持構造物42が取り除かれる。除去の手順は、他の区間のものと同様に、まず、上段におけるP2側の数枚のパネル体10が分離され、次いで、残された支持構造物42がP2の位置で橋脚3から切り離される。その後、P1〜P2の区間において支持構造物42がケーブルクレーン30で吊り下げられ、この状態で支持構造物40は、P1の地点で分割される。そして、吊り下げられた部分42がP1の位置まで搬送されて、クレーン車21で撤去される。最後に残されたP1の位置よりも陸地側に配された支持構造物41についても、陸地に用意されたクレーン車21により撤去される。
【0051】
以上の工程を経て、橋梁1の解体作業自体は終了する。
【0052】
これらの作業が終了した後、図14に示すように、P1〜P4の区間における各橋脚3同士を連絡しているワイヤーケーブルを取り除くと共に、設置されたケーブルクレーン30の撤去作業が行われる。これら後処理の工程を経て、橋梁1の撤去作業が完全に終了した状態が図15に示す状態である。
【0053】
次に、このパネル体10からなる支持構造物40を使用して、橋梁1を架設する方法について説明する。橋梁1を架設する場合には、これまでに説明した工程を逆の手順で行うことになる。
【0054】
まず、図16に示すように、これら橋梁1を架設しようとする区間の両端位置にケーブルクレーン30の門型鉄塔31を設置する。門型鉄塔31は、橋梁1架設区間の両端位置であるP1及びP4の位置に用意されたクレーン車20,21で吊り下げ、位置合わせを行いつつ設置される。
【0055】
その後、設置された門型鉄塔31間に、ケーブル32が張り渡される。このケーブル32には、ケーブル32に沿って移動するキャリヤ33が設けられる。なお、この場合にも、作業効率のことを考慮して、2〜4系統設けると良い。
【0056】
段取りの工程が終了した後、P1〜P2、P2〜P3、P3〜P4の区間に順次トラス橋2が設置される。
【0057】
図17〜図19は、P1〜P2の区間にトラス橋2を設置する工程を示している。まず、図17に示すように、P1の位置より陸地側(図17の左側)に複数のパネル体10を接続させて支持構造物40を設置する。この場合にも、前述の解体の場合と同様に、パネル体10を3枚重ねて一体的に構成し、この3枚重ねのものを高さ方向について2段構成とする。そして、縦方向に連ね、その長さを橋脚3間の距離(P1〜P2等)と一致させ、支持構造物40の両端を橋脚3に固着させる。この支持構造物40は、カウンター区間41として機能する。
【0058】
次いで、P1〜P2の区間にパネル体10を接続させて、支持構造物42を設置する。この工程では、P1から途中までの位置については、上下2段構造とする。一方、この途中の位置よりP2側の部位については下段のみを設け、上段を空けておく。このように支持構造物42を形成しておくことで、P1回りのモーメントを抑え、過負荷が発生することを防止できる。
【0059】
次いで、図18に示すように、パネル体10をP1の位置からケーブルクレーン30で搬送し、支持構造物42の先端と、P2の位置に設けられている橋脚3との間の位置にパネル体10をはめ込んで、支持構造物42の先端をP2の位置に設けられた橋脚3に固定する。その後、上段におけるパネル体10が空けられていた部分にパネル体10を接続させ、支持構造物40をP1〜P2の区間にて完全な形態とする。
【0060】
その後、図19に示すように、P1〜P2の区間にトラス橋2を設置する。トラス橋2の設置は、先ず、床版4をケーブルクレーン30でP1の位置からP1〜P2の区間へ搬送する。次いで、床版4を、支持構造物40に支持させる。この支持構造物40についても、図8に示した場合と同様に、パネル体10の上には、吊り用の梁材50が横たえられ、梁材50がパネル体10の上端に固定される。吊り用の梁材50は、その両端が各パネル材から側方に張り出すようにして固定される。張り出された両端部には、トラス橋2の床版4を吊り下げて支持するためのチェーンブロック51が取り付けられる。床版4は、これらのチェーンブロック51、吊り用の梁材50を介して支持構造物40に支持される。
【0061】
支持構造物40に支持された床版4は、支持構造物40に設けられたチェーンブロック51で橋脚3に降ろされ、その両端が橋脚3に固定される。その後、P1の地点から、ケーブルクレーン30によりトラス橋2を構成する腹材5,6及び上弦7が搬送され、腹材5,6が床版4に取り付けられると共に、これら腹材5,6間の上端を相互に連絡するようにして上弦7が取り付けられる。これにより、P1〜P2の区間にトラス橋2が設置される。
【0062】
この作業をP2〜P3の区間及びP3〜P4の区間についても順次実施して、P1〜P4のすべての区間についてトラス橋2を設置する。トラス橋2が全区間について設置された後、ケーブルクレーン30を撤去する(図20参照)。なお、全区間にトラス橋2が設定された後は、例えば、床版4にコンクリートを打設する等して橋梁1を完成させる。
【0063】
以上、支持構造物40を構成する場合、パネル体10を3枚重ねとして構成したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、対象となるトラス橋2の重量等に応じて、単層或いは2枚重ねとすることもできる。また、4枚以上重ね合わせることを妨げるものでもない。また、高さ方向についても、一段のみで使用することを妨げるものではなく、対象となるトラス橋2に応じて適宜選択することができる。
【0064】
さらに、橋梁1の解体及び架設に必要な資材を搬送する手段としてケーブルクレーン30を使用した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、設置されているトラス橋2の床版4にレールを敷設し、このレールに台車を設けて、台車で搬送するように構成してもよい。また、床版4上にラフテレーンクレーン21等のクレーン車を適宜配置し、これらクレーン車で資材を中継するようにして搬送しても構わない。なお、架設の中間部分が陸地である場合には、クレーン車を、橋梁1の側方に、当該橋梁1の長手方向に沿って適宜クレーン車を配置し、これらのクレーン車で資材を中継して搬送してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】解体の対象となる橋梁の一実施形態を示す図。
【図2】支持構造物を構成するパネル体の説明図。
【図3】必要な資材を橋梁上に搬送する段取り工程を示す図。
【図4】ケーブルクレーンを設置する工程を示す図。
【図5】橋梁上に支持構造物を設置する工程を示す図。
【図6】設置された支持構造物の横断面図。
【図7】トラス橋の解体工程を示す図。
【図8】床版の支持状態を示す図。
【図9】支持構造物の移動工程を示す図。
【図10】支持構造物の次の移動工程を示す図。
【図11】トラス橋の解体工程を示す図。
【図12】支持構造物の移動工程を示す図。
【図13】支持構造物の移動工程を示す図。
【図14】ケーブルクレーンを解体する工程を示す図。
【図15】橋梁が解体された後の状態を示す図。
【図16】橋梁を架設するに当たり、ケーブルクレーンを設置する工程を示す図。
【図17】支持構造物を設置する工程を示す図。
【図18】支持構造物を設置する工程を示す図。
【図19】トラス橋を設置する工程を示す図。
【図20】架設された橋梁を示す図。
【符号の説明】
【0066】
1・・・・・・橋梁
2・・・・・・トラス橋
10・・・・・パネル体
30・・・・・ケーブルクレーン
40・・・・・支持構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトラス橋がそれらの長手方向に接続されて構成された橋梁を解体するに当たり、前記トラス橋をこの橋梁の一端側に位置するものから順次除去して解体する橋梁の解体方法であって、
前記橋梁に、除去の対象となるトラス橋の全長及び該トラス橋より前記一端側とは逆の他端側における該トラス橋と同長のカウンター区間に渡り支持構造物を配置し、この支持構造物を前記橋梁における除去の対象となるトラス橋の一端、他端及び前記カウンター区間の他端側にて、この橋梁を支持する橋脚に支持せしめて設置する支持構造物設置工程と、
除去される前記トラス橋を前記橋梁から分離して前記支持構造物に支持させて、支持されたトラス橋を搬送手段で、この橋梁の前記他端へ搬送して除去する除去工程と、を備え、
これらの工程を繰り返し実行し、
しかも、前記支持構造物として、矩形状のパネル体をこれらの縦方向、高さ方向及び幅方向について適宜組み合わせてなる構造体を使用し、さらに、前記パネル体が、矩形状の枠体と、互いに接続されて枠体を構成する部材同士の中間部分をこの枠体の内側から連結する補強斜材とから構成されたものであることを特徴とする橋梁の解体方法。
【請求項2】
前記支持構造物の前記一端側に位置するパネル体をこの支持構造物から分離して、前記カウンター区間に配された支持構造物の前記他端側へ前記搬送手段で搬送し、
次いで、前記支持構造物の前記一端側を自由端として、前記搬送手段で前記支持構造物を支持しつつ、除去されたトラス橋の位置に配された部分を前記カウンター区間に配された部分から切り離し、
次いで、切り離された前記支持構造物を前記カウンター区間に配された支持構造物の前記他端側へ前記搬送手段で搬送し、
搬送された支持構造物を前記カウンター区間の他端側に再び組み接続させ、
これらの工程を繰り返し実行して前記支持構造物を前記一端側から前記他端側に移動させることを特徴とする請求項1に記載の橋梁の解体方法。
【請求項3】
前記除去工程では、前記トラス橋の上弦及び斜材を除去し、その後に下弦を除去することを特徴とする請求項1に記載の橋梁の解体方法。
【請求項4】
橋梁を架設するに当たり、架設される区間の一端側から他端側に向けて複数のトラス橋の長手方向両端を橋脚で支持させて、前記トラス橋をその長手方向に順次接続して架設する橋梁の架設方法であって、
前記トラス橋を設置せしめる設置対象区間及びこの設置対象区間より前記一端側における前記設置対象区間と同長のカウンター区間に渡り支持構造物を配置し、この支持構造物を前記設置対象区間の一端、他端及び前記カウンター区間の他端側にて、前記橋脚に支持せしめて設置する支持構造物設置工程と、
設置せしめる前記トラス橋を搬送手段で前記カウンター区間側から前記設置対象区間へ搬送し、このトラス橋の両端を前記橋脚に支持せしめるトラス橋設置工程と、を備え、
これらの工程を繰り返し実行し、
しかも、前記支持構造物として、矩形状のパネル体をこれらの縦方向、高さ方向及び幅方向について適宜組み合わせてなる構造体を使用し、さらに、前記パネル体が、矩形状の枠体と、互いに接続されて枠体を構成する部材同士の中間部分をこの枠体の内側から連結する補強斜材とから構成されたものであることを特徴とする橋梁の架設方法。
【請求項5】
前記カウンター区間における前記一端側に位置するパネル体をこの支持構造物から分離して、前記設置対象区間よりさらに前記他端側に位置する設置対象区間へ前記搬送手段で搬送し、
次いで、前記カウンター区間における前記他端側を自由端とし、前記搬送手段でこの支持構造物を支持しつつ、前記カウンター区間に位置する部分を前記設置対象区間の部分から切り離し、
次いで、切り離された前記支持構造物を前記設置対象区間よりさらに前記他端側に位置する設置対象区間へ前記搬送手段で搬送し、
搬送された支持構造物を元の前記設置対象区間に残された支持構造物の他端側に再び接続させ、
これらの工程を繰り返し実行して前記支持構造物を前記一端側から前記他端側に移動させることを特徴とする請求項4に記載の橋梁の架設方法。
【請求項6】
前記トラス橋設置工程では、前記設置対象区間へ前記トラス橋の下弦を搬送して設置し、次いで、斜材を搬送して設置し、その後に上弦を搬送して設置することを特徴とする請求項4に記載の橋梁の架設方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−214113(P2006−214113A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26050(P2005−26050)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】