説明

橋梁用伸縮継手の施工型枠

【課題】 橋桁間、又は橋桁・橋台間の遊間の大きさが異なる場合にも、型枠コンパネのみの交換で対応可能な伸縮継手施工用の施工型枠を得る。
【解決手段】 型枠本体11に取付部材13を用いて遊間の幅に適合した型枠コンパネ12と端部補強板14とを取り付ける。型枠コンパネ12の幅に合わせて取付部材13の位置を調整し、端部補強板14の位置を調整する。型枠コンパネ12を型枠本体11から取り外し、施工型枠本体11を床版端部に設けられた箱抜き部に位置決めする。型枠本体11と端部補強板14を床版に埋設された埋め込み鉄筋アンカーに固定する。型枠コンパネ12を再び型枠本体11に取り付ける。型枠本体11、型枠コンパネ12、端部補強板14、床版によって囲まれる領域に後打ちコンクリートを流し込む。後打ちコンクリート養生後、型枠本体11と型枠コンパネ12を取り除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁同士、又は橋桁と橋台の間に伸縮装置を設置するための施工に関し、特に本発明は、道路橋伸縮継手の施工に用いられる施工型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
橋桁同士、又は橋桁と橋台の端部間の遊間に伸縮継手が設けられる場合、遊間を隔てて向かい合う橋桁の床版端部や橋台のパラペット端部は予め箱抜きされており、この箱抜き部に対して伸縮継手を設置するための施工が施される。このような施工では、施工型枠が用いられる(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭49−51734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
橋桁の床版端部や橋台のパラペット端部において、鋼板などからなる端部補強板を箱抜き部端部に設ける場合、施工型枠は、端部補強板の位置決めにも用いられることとなるので、遊間の大きさが異なる毎に、新たな施工型枠を用意する必要がある。
【0004】
本発明は、橋桁間、又は橋桁・橋台間の遊間の大きさが異なる場合にも、コンパネのみの交換で対応可能な伸縮継手施工用の施工型枠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の施工型枠は、橋梁の伸縮継手設置に施工に用いられる施工型枠であって、型枠本体と、型枠本体に着脱自在な取付部材と、取付部材に着脱自在な型枠コンパネ部と、取付部材に着脱自在な端部補強板とを備え、取付部材の型枠本体への取付位置を調整することにより、端部補強板の型枠本体に対する位置が、型枠コンパネ部の大きさに合わせて調整可能であることを特徴としている。
【0006】
型枠本体の底面に、開口が形成されていることが好ましく、施工型枠は開口を塞ぐ蓋部を備える。取付部材は、例えばL字形部材からなり、L字形部材の一方の柄に型枠本体が取り付けられ、他方の柄に端部補強板が取り付けられる。
【0007】
また、本発明の施工方法は、施工型枠を用いて橋梁の伸縮継手を設置するための施工方法であって、型枠本体に遊間の幅に適合した型枠コンパネを取り付け、型枠コンパネの幅に合わせて端部補強板を取り付けるステップと、型枠コンパネを型枠本体から取り外すとともに、端部補強板が取り付けられた型枠本体を床版端部に設けられた箱抜き部に位置決めするステップと、型枠本体と端部補強板とを床版に埋設された埋め込み鉄筋アンカーに固定するステップと、型枠コンパネを再び型枠本体に取り付けるステップと、型枠本体と、型枠コンパネと、端部補強板と、床版とによって囲まれる領域に後打ちコンクリートを流し込むステップと、後打ちコンクリート養生後、型枠本体と型枠コンパネとを取り除くステップとを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、橋桁間、又は橋桁・橋台間の遊間の大きさが異なる場合にも、コンパネのみの交換で対応可能な伸縮継手施工用の施工型枠を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、橋桁端部に橋梁伸縮継手の取り付け部を設ける施工において用いられる本発明の一実施形態である施工型枠の斜視図である。図2〜図4は、図1に示された施工型枠の平面図、正面図、および側段面図である。
【0010】
本実施形態の施工型枠10は、型枠本体11と型枠コンパネ12と、型枠コンパネ12を型枠本体11に取り付けるための取付部材13から概ねなる。型枠本体11は、施工型枠10のうち使いまわされる部分であり、一定の強度を持つ例えば鋼製の型枠として構成される。一方、型枠コンパネ12は、遊間の幅に合わせて交換される部分であり、例えば木板、合板、プラスチック材など、この用途の型枠として利用されうるものであれば、いかなるものであってもよい。
【0011】
取付部材13は、型枠コンパネ12や、遊間の箱抜き部に固定される端部補強板14を型枠本体11に取り付けるための部材であり、例えば細長い金属板をL字形に屈曲させた金具からなる。また、取付部材13は、型枠コンパネ12の幅に合わせて端部補強板14の位置を調整するのに用いられる。
【0012】
すなわち、L字形の取付部材13の長い方の柄には、位置調整用のスロット13Sが設けられており、取付部材13はそれぞれ、スロット13Sを通したボルトネジ13B等の取付具により、型枠本体11の底面に固定される。したがって、取付部材13の位置は、スロット13Sの範囲で調整可能である。これにより、型枠本体11と取付部材13の短い方の柄に取り付けられた端部補強板14との間の距離を、型枠コンパネ12の幅に合わせて調整でき、端部補強板14の位置合せを行なうことができる。図1では、取付部材13により型枠本体11に型枠コンパネ12および端部補強板14が取り付けられ、端部補強板14の位置が調整された状態が示される。また図2〜4には、図1の状態から型枠コンパネ12が取り外された状態が示されている。
【0013】
なおこのとき、L字形の取付部材13の短い方の柄は下向きとされ、端部補強板14は、柄の内側(柄の侠角を形成する面)に取り付けられる。また、端部補強板14には、複数のネジシャフト14Bが長手方向に沿って所定の間隔で設けられており、取付部材13の柄は、このネジシャフト13Bに例えばナットにより取り付けられる。また、型枠コンパネ12も同様にネジやボルトなどにより取付部材13に取り付けられる。
【0014】
型枠本体11の底面には、例えば矩形の窓が形成されるが、図1、図2では、蓋11Pにより塞がれ示される。蓋11Pは、ボルトなどにより型枠本体11の底面に取付可能であり、蓋11Pは施工型枠10の設置作業において取り外され、この矩形窓を通して、溶接作業などが行われる。また、型枠本体11の底面には、アンカーボルトへの取り付けに用いられるアンカー取付開口11Aが形成されている。一方端部補強板14には、図2〜図4に示されるように、取付用鉄筋14Aが取り付けられている。
【0015】
次に、図5〜図8を参照して、本実施形態の施工型枠10を用いた、施工手順について説明する。
【0016】
まず、図1を参照して説明したように、型枠コンパネ12と取付部材13を用いて型枠本体11に対する端部補強板14の位置決めが行なわれ、その後、取付部材13からは型枠コンパネ12が取り外され図2〜図4の状態とされる。
【0017】
図2〜図4の状態の施工型枠10は、図5に示されるように床版20の端部に設けられた箱抜き部21に装置され、レベル合せアングル22によりその水平が保たれる。また、端部補強板14の位置が、遊間の両側面23に一致するように位置決めされ、遊間の各側面23にはコンパネ24が取り付けられる。また、遊間には発泡スチロール25が詰められる。
【0018】
床版20には、埋め込み鉄筋アンカー26が埋め込まれており、埋め込み鉄筋アンカー26にはアンカー鉄筋27が溶接される。アンカー鉄筋27の一端は、型枠本体11のアンカー取付開口11Aに通され、型枠本体11はアンカー取付開口11Aを通されたアンカー鉄筋27にボルトによりに固定される。また、端部補強板14の取付用鉄筋14Aも埋め込み鉄筋アンカー26に溶接される。なお、このときの、溶接作業は、型枠本体11の矩形窓および型枠コンパネ12を外した空間を利用して行われる。
【0019】
図6は、施工型枠10および端部補強板14の固定が終了した段階を示している。端部補強板14は、取付部材13から取り外され、取付部材13は型枠本体11から一旦取り外される。図6に示されるように、取付部材13には、再び型枠コンパネ12が取り付けられるが、このとき型枠コンパネ12は、前回型枠コンパネ12が取り付けられた側とは反対側に取り付けられる。また、L字形の取付部材13は、逆さまに型枠本体11に取り付けられる。すなわち、型枠コンパネ12の取り付け位置は、図1のときと同位置となる。
【0020】
図6の状態で、箱抜き部21に舗装28のレベルまで後打ちコンクリートが流し込まれ、打設完了後、養生される。図7に養生が終了し、施工型枠10が取り外された状態が示される。また、図8には、後打ちコンクリート29の上に、伸縮継手30が装置された状態が示される。なお、図7の段階で遊間に設けられた発泡スチロール25は取り除かれ、この位置には、遊間からの水漏れなどを防止するために、ウレタンフォーム31が端部補強板14に取り付けられる。
【0021】
以上のように、本実施形態の施工型枠によれば、型枠コンパネ部分のみを取り替えるだけで、遊間の大きさが異なる場合にも施工型枠を使い回すことができ廃棄物の削減、施工型枠の製作期間の短縮等が図られる。また、本実施形態では、型枠本体に窓を設けたことにより、溶接作業がより容易に行なうことができ、より効率的に施工作業を行なうことができる。
【0022】
なお、図9に、本実施形態の施工型枠の変形例を示す。図1に示されるように,本実施形態の施工型枠では、型枠本体11は、遊間側の側壁が取り除かれた箱型形状とされたが、変形例の施工型枠100では、図1の型枠本体11に、遊間側の側壁111が設けられたものが使用される。また、実施形態では、型枠本体11の底面に、矩形の窓が形成され、蓋11Pにより塞がれた。しかし変形例の型枠本体110には矩形窓や蓋は用いられない。
【0023】
変形例の型枠本体110では、型枠本体のコストを下げることができるとともに、強度を高めることができる。例えば脱型時にコンクリートとの密着を解消するため型枠を強く叩くなどの行為を行なうこともでき、使い回しの際の耐久性も向上される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態である施工型枠の斜視図である。
【図2】図1に示された施工型枠の平面図である。
【図3】図1に示された施工型枠の正面図である。
【図4】図1に示された施工型枠の側断面図である。
【図5】レベル合せアングルを用いて施工型枠を設置する状態を示す図である。
【図6】施工型枠および端部補強板の固定が終了し、後打ちコンクリートを流し込む段階の状態を示す図である。
【図7】後打ちコンクリートの養生が終了し、施工型枠が取り外された状態を示す図である。
【図8】施工部に伸縮継手が取り付けられた状態を示す図である。
【図9】変形例の施工型枠の斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
10 施工型枠
11 型枠本体
12 型枠コンパネ
13 取付部材
14 端部補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の伸縮継手設置に施工に用いられる施工型枠であって、
型枠本体と、
前記型枠本体に着脱自在な取付部材と、
前記取付部材に着脱自在な型枠コンパネ部と、
前記取付部材に着脱自在な端部補強板とを備え、
前記取付部材の前記型枠本体への取付位置を調整することにより、前記端部補強板の前記型枠本体に対する位置が、前記型枠コンパネ部の大きさに合わせて調整可能である
ことを特徴とする施工型枠。
【請求項2】
前記型枠本体の底面に、開口が形成され、前記開口を塞ぐ蓋部を備えることを特徴とする請求項1に記載の施工型枠。
【請求項3】
前記取付部材が、L字形部材からなり、前記L字形部材の一方の柄に前記型枠本体が取り付けられ、他方の柄に前記端部補強板が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の施工型枠。
【請求項4】
施工型枠を用いて橋梁の伸縮継手を設置するための施工方法であって、
型枠本体に遊間の幅に適合した型枠コンパネを取り付け、前記型枠コンパネの幅に合わせて端部補強板を取り付けるステップと、
前記型枠コンパネを前記型枠本体から取り外すとともに、前記端部補強板が取り付けられた前記型枠本体を床版端部に設けられた箱抜き部に位置決めするステップと、
前記型枠本体と前記端部補強板とを前記床版に埋設された埋め込み鉄筋アンカーに固定するステップと、
前記型枠コンパネを再び前記型枠本体に取り付けるステップと、
前記型枠本体と、前記型枠コンパネと、前記端部補強板と、前記床版とによって囲まれる領域に後打ちコンクリートを流し込むステップと、
前記後打ちコンクリート養生後、前記型枠本体と前記型枠コンパネとを取り除くステップと
を備えることを特徴とする橋梁の伸縮継手を設置するための施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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