説明

橋梁用支保工の設置工法

【課題】鋼材の使用を抑制し温度変化の影響を受けにくい橋梁用支保工の設置工法を提供する。
【解決手段】橋梁用支保工の設置工法は、杭を地盤に設置する杭設置工程と、杭にパイルキャップを設置するパイルキャップ設置工程と、プレキャストコンクリートブロックをパイルキャップ上に設置する基礎ブロック設置工程と、基礎ブロックに対して、ブロックをドライジョイント工法により積み重ねる積み重ね工程と、下位のブロックから突出した鋼棒に対して別の鋼棒を継ぎ足す鋼棒継ぎ足し工程と、積み重ね工程及び鋼棒継ぎ足し工程を繰り返し一対の支柱を設置する支柱設置工程と、前記ブロックが所定数積み重なる毎にプレストレスを付与するプレストレス付与工程と、一対の支柱間に掛け渡されるようにトラス型のブレース材を設置するブレース材設置工程と、支柱の最上位に、コンクリート躯体を支持するための鋼製ブロックを設置する鋼製ブロック設置工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁用支保工の設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁建設においては、鋼材製の支保工を構築することが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−225407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の支保工のように全体が鋼材から形成されていると、荷重により支保工自体がひずんでしまうおそれがある。さらには、近年の鋼材の高騰により、鋼材自体の使用量を抑える要望も高い。
本発明の課題は、鋼材の使用を抑制し、荷重による影響を受けにくい橋梁用支保工の設置工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明に係る橋梁用支保工の設置工法は、
一対のコンクリート杭を橋梁建設予定地の幅方向に間隔を空けて地盤に設置する杭設置工程と、
前記一対のコンクリート杭のそれぞれの上端にパイルキャップを設置し、当該パイルキャップに複数の鋼棒を埋め込むパイルキャップ設置工程と、
鉛直方向に貫通した貫通孔を複数有するプレキャストコンクリートブロックを基礎ブロックとして、前記貫通孔内に前記鋼棒が挿通されるように、一対の前記パイルキャップ上にそれぞれ設置する基礎ブロック設置工程と、
一対の前記基礎ブロックのそれぞれに対して、前記プレキャストコンクリートブロックをドライジョイント工法により鉛直方向に積み重ねる積み重ね工程と、
下位の前記プレキャストコンクリートブロックから突出した前記鋼棒に対して、別の鋼棒を継ぎ足し、上位の前記プレキャストコンクリートブロックの前記貫通孔から突出させる鋼棒継ぎ足し工程と、
前記積み重ね工程及び前記鋼棒継ぎ足し工程を繰り返し、前記プレキャストコンクリートブロックからなる一対の支柱を設置する支柱設置工程と、
前記支柱設置工程の途中で、前記プレキャストコンクリートブロックが所定数積み重なる毎に、前記鋼棒に緊張力を付与して、重ねられた前記プレキャストコンクリートブロックにプレストレスを付与するプレストレス付与工程と、
前記支柱設置工程の途中で、前記プレキャストコンクリートブロックが所定数積み重なる毎に、前記一対の支柱間に掛け渡されるようにトラス型のブレース材を設置するブレース材設置工程と、
前記支柱の最上位の前記プレキャストコンクリートブロック上に、前記橋梁をなすコンクリート躯体を支持するための鋼製ブロックを設置する鋼製ブロック設置工程とを有することを特徴としている。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の橋梁用支保工の設置工法において、
前記鋼製ブロックにおける前記コンクリート躯体を支持する部分に、ゴム支承を設置することを特徴としている。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の橋梁用支保工の設置工法において、
前記鋼製ブロックにおける前記コンクリート躯体を支持する部分に、砂ジャッキを設置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支保工の支柱がプレキャストコンクリートブロックで構成されているので、支保工全体が鋼材で形成されている場合よりも鋼材の使用を抑制することができる。また、プレキャストコンクリートブロックであると、鋼材からなる支保工よりも水平方向の断面積を大きくすることができ、荷重の影響を受けにくい支保工を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本実施形態に係る橋梁用支保工の設置工法について説明する。図1は、橋梁建設時における支保工を示す側面図である。この図1に示すように支保工1は、陸上における、橋梁100の主塔101及び橋脚102間及び各橋脚102間に設置されて橋桁103を支える仮設構造物である。
【0009】
支保工1の設置工法について図2〜図11を参照して説明する。なお、図2〜図11において(a)は側面図、(b)は正面図である。
【0010】
まず、杭設置工程では、図2に示すように、橋梁建設予定地に対して、一対のコンクリート杭2を橋梁100の幅方向に所定の間隔を空けて地盤Gに設置する。さらに、橋梁100の長さ方向に対して複数対のコンクリート杭2が配列されるように、杭設置工程を繰り返す。この杭設置工程では、各コンクリート杭2は、オールケーシング工法によって支持岩盤に岩着するまで打ち込まれる。
【0011】
次いで、パイルキャップ設置工程では、図3に示すように、各対のコンクリート杭2のそれぞれの上端にパイルキャップ3を設置し、当該パイルキャップ3に複数の鋼棒4を埋め込む。複数の鋼棒4は鉛直方向に沿って配設されており、その上端部が上方に向けて露出している。この鋼棒4の上端部には接合カップラー(図示省略)が取り付けられている。この接合カップラーに対して別の鋼棒4を連結し、鋼棒4の長さを延長する。
また、各パイルキャップ3の間には、鉄筋コンクリートにより地中梁5が形成される。
【0012】
基礎ブロック設置工程では、図4に示すように、プレキャストコンクリートブロック(以下、コンクリートブロック6)を基礎ブロック6aとして、各対のパイルキャップ3上にそれぞれ設置する。ここで、コンクリートブロック6には、鉛直方向に貫通した貫通孔が、鋼棒4の設置個数に対応して複数形成されている。このコンクリートブロック6の貫通孔に鋼棒4が貫通するように、コンクリートブロック6をパイルキャップ3に設置する。この際、コンクリートブロック6とパイルキャップ3との間には、設置前に図示しない鉄製シムシート、鉄製クサビ等の仮サポートが配置されていて、この仮サポートによりコンクリートブロック6の高さ及び傾きを調整する。
【0013】
第一積み重ね工程では、図5に示すように、各対の基礎ブロック6aのそれぞれに対して、コンクリートブロック6をドライジョイント工法により鉛直方向に所定数だけ積み重ね、一対の支柱11,12の下段部を形成する。この第一積み重ね工程では、各コンクリートブロック6の接合面を事前に清掃し、砂粒やゴミを取り除いた後に積み重ねを行っている。ドライジョイント工法では、ゴムや接着剤を用いず、積み重なる一対のコンクリートブロック6の両者の接合面にそれぞれせん断キーを形成し、積み重ねる際にはせん断キー同士が係合するように位置合わせを行う。また、この場合においても、上位となるコンクリートブロック6の貫通孔に鋼棒4が貫通するように、上位のコンクリートブロック6を下位のコンクリートブロック6に積み重ねる。
【0014】
コンクリートブロック6を所定数(例えば3段)積み重ねた後には、コンクリートブロック6と、パイルキャップ3との間に、例えば無収縮セメントからなるグラウト材を流し込み、仮サポートを取り外す。その後、グラウト材の養生を行い、下段部が形成されるまで再度コンクリートブロック6を積み重ねる
【0015】
ここで、第一積み重ね工程の途中には、鋼棒継ぎ足し工程が実行されている。鋼棒継ぎ足し工程では、下位のコンクリートブロック6から突出した鋼棒4に対して、接合カップラーを介して別の鋼棒4を継ぎ足し、上位のコンクリートブロックの貫通孔から突出させる。
【0016】
第一プレストレス付与工程では、各対の支柱11,12の下段部となるコンクリートブロック6の鋼棒4に対して、油圧ジャッキで緊張力を付与し、重ねられた当該コンクリートブロック6にプレストレスを付与する。
【0017】
第一ブレース材設置工程では、図6に示すように、一対の支柱11,12の下段部間にトラス型のブレース材7を掛け渡す。具体的には、下段部の最上位及び最下位となるコンクリートブロック6のそれぞれにブレース材7の端部を、鋼棒を介して連結する。ブレース材7の端部と、コンクリートブロック6との間には、前記グラウト材が注入されていて、隙間が埋められる。グラウト材の養生後には、コンクリートブロック6とブレース材7とを連結する鋼棒に対して、油圧ジャッキにより緊張力を付与し、プレストレスを付与する。
【0018】
第二積み重ね工程では、図7に示すように、各対の支柱11,12の下段部をなすコンクリートブロック6のそれぞれに対して、コンクリートブロック6を鉛直方向に所定数だけ積み重ね、一対の支柱11,12の中段部を形成する。具体的な手法は第一積み重ね工程と同様であり、その途中に鋼棒継ぎ足し工程も実行されている。
【0019】
第二プレストレス付与工程では、各対の支柱11,12の中段部となるコンクリートブロック6の鋼棒4に対して、油圧ジャッキで緊張力を付与し、重ねられた当該コンクリートブロック6にプレストレスを付与する。
【0020】
第二ブレース材設置工程では、図8に示すように、一対の支柱11,12の中段部間にトラス型のブレース材7を掛け渡す。具体的な手法は第一ブレース工程と同様である。
【0021】
第三積み重ね工程では、図9に示すように、各対の支柱11,12の中段部をなすコンクリートブロック6のそれぞれに対して、コンクリートブロック6を鉛直方向に所定数だけ積み重ね、一対の支柱11,12の上段部を形成する。具体的な手法は第一積み重ね工程と同様であり、その途中に鋼棒継ぎ足し工程も実行されている。
【0022】
第三プレストレス付与工程では、各対の支柱11,12の上段部となるコンクリートブロック6の鋼棒4に対して、油圧ジャッキで緊張力を付与し、重ねられた当該コンクリートブロック6にプレストレスを付与する。
【0023】
第三ブレース材設置工程では、図10に示すように、一対の支柱11,12の上段部間にトラス型のブレース材7を掛け渡す。具体的な手法は第一ブレース工程と同様である。
【0024】
このように、積み重ね工程(第一積み重ね工程、第二積み重ね工程、第三積み重ね工程)及び鋼棒継ぎ足し工程を繰り返えすことで、一対の支柱11,12が設置される。この工程を支柱設置工程とする。
【0025】
鋼製ブロック設置工程では、図11に示すように、支柱11,12の最上位のコンクリートブロック6上に、橋梁100の橋桁103をなすコンクリート躯体を支持するための鋼製ブロック8を設置する。この際、鋼製ブロック8におけるコンクリート躯体を支持する部分には、図示しない砂ジャッキ及びゴム支承が設置されている。そして、鋼製ブロック8とコンクリートブロック6との間には上記のグラウト材を注入し、隙間を埋め、養生する。その後、各コンクリートブロック6から露出した鋼棒4を鋼製ブロック8の上面で緊張し、鋼製ブロック8を安定化する。
【0026】
完成した支保工1を基に橋梁100の施工が行われると、図1に示したように支保工1の鋼製ブロック8上に橋桁103が載置されることになる。これにより、橋梁100の橋桁103が支保工1により支持される。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、支保工1の支柱11,12がプレキャストコンクリートブロック(コンクリートブロック6)で構成されているので、支保工1全体が鋼材で形成されている場合よりも、鋼材の使用を抑制することができる。また、プレキャストコンクリートブロックであると、鋼材からなる支保工よりも水平方向の断面積を大きくすることができ、荷重の影響を受けにくい支保工1を提供することが可能となる。
【0028】
また、鋼製ブロック8におけるコンクリート躯体を支持する部分にゴム支承が設置されているので、コンクリート躯体の施工中及び施工後に生ずる水平方向の変位にゴム支承が追従することになり、確実に支持することが可能となる。
【0029】
また、鋼製ブロック8におけるコンクリート躯体を支持する部分に砂ジャッキが設置されているので、支保工1の解体時に、コンクリート躯体と鋼製ブロック8とを容易に離脱させることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】橋梁建設時における本実施形態の支保工を示す側面図である。
【図2】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図4】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図6】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図7】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図8】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図9】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図10】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】図1の支保工の設置工法における一工程を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 支保工
2 コンクリート杭
3 パイルキャップ
4 鋼棒
5 地中梁
6 コンクリートブロック(プレキャストコンクリートブロック)
6a 基礎ブロック
7 ブレース材
8 鋼製ブロック
11 支柱
12 支柱
100 橋梁
101 主塔
102 橋脚
103 橋桁
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコンクリート杭を橋梁建設予定地の幅方向に間隔を空けて地盤に設置する杭設置工程と、
前記一対のコンクリート杭のそれぞれの上端にパイルキャップを設置し、当該パイルキャップに複数の鋼棒を埋め込むパイルキャップ設置工程と、
鉛直方向に貫通した貫通孔を複数有するプレキャストコンクリートブロックを基礎ブロックとして、前記貫通孔内に前記鋼棒が挿通されるように、一対の前記パイルキャップ上にそれぞれ設置する基礎ブロック設置工程と、
一対の前記基礎ブロックのそれぞれに対して、前記プレキャストコンクリートブロックをドライジョイント工法により鉛直方向に積み重ねる積み重ね工程と、
下位の前記プレキャストコンクリートブロックから突出した前記鋼棒に対して、別の鋼棒を継ぎ足し、上位の前記プレキャストコンクリートブロックの前記貫通孔から突出させる鋼棒継ぎ足し工程と、
前記積み重ね工程及び前記鋼棒継ぎ足し工程を繰り返し、前記プレキャストコンクリートブロックからなる一対の支柱を設置する支柱設置工程と、
前記支柱設置工程の途中で、前記プレキャストコンクリートブロックが所定数積み重なる毎に、前記鋼棒に緊張力を付与して、重ねられた前記プレキャストコンクリートブロックにプレストレスを付与するプレストレス付与工程と、
前記支柱設置工程の途中で、前記プレキャストコンクリートブロックが所定数積み重なる毎に、前記一対の支柱間に掛け渡されるようにトラス型のブレース材を設置するブレース材設置工程と、
前記支柱の最上位の前記プレキャストコンクリートブロック上に、前記橋梁をなすコンクリート躯体を支持するための鋼製ブロックを設置する鋼製ブロック設置工程とを有することを特徴とする橋梁用支保工の設置工法。
【請求項2】
請求項1記載の橋梁用支保工の設置工法において、
前記鋼製ブロックにおける前記コンクリート躯体を支持する部分に、ゴム支承を設置することを特徴とする橋梁用支保工の設置工法。
【請求項3】
請求項1記載の橋梁用支保工の設置工法において、
前記鋼製ブロックにおける前記コンクリート躯体を支持する部分に、砂ジャッキを設置することを特徴とする橋梁用支保工の設置工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−138617(P2010−138617A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316558(P2008−316558)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月13日 社団法人土木学会発行の「JAPAN SOCIETY OF CIVIL ENGINEERS 第63回年次学術講演会講演概要集(CD−ROM)」に発表
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】