説明

橋脚補強方法

【課題】作業が一層容易な橋脚補強方法を提供する。
【解決手段】水面42上で橋脚補強ユニット10,100を組み合わせた後、組み合わせた橋脚補強ユニット10,100を水面42下に落とし込む。橋脚補強ユニット10,100のループ鉄筋14の突出部15同士が嵌合している部分には、適宜、縦筋24を挿入して固定する。その後、橋脚28と型枠板12との間の空間に充填材を充填して固化させる。このようにして、既存の橋脚28の周囲に、全体的に鉄筋が入った鉄筋コンクリート構造を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の橋脚を補強するための橋脚補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の橋脚を耐震等の目的のために補強する手法として、橋脚の周囲を鉄筋コンクリート製の部材で覆う方法がある。例えば、特許文献1には、鉄筋を内部に有するプレキャスト化されたコンクリートパネルが記載されている。このコンクリートパネルは、分割されたコンクリートパネル同士を横方向に組み合わせることにより、コンクリート柱を取り囲むことができるようになっている。コンクリートパネルを組み合わせてコンクリート柱を取り囲んだ後、コンクリート柱とコンクリートパネルとの間にグラウトを充填して、コンクリート柱を補強する。
【特許文献1】特開平10−96260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記技術においては、プレキャスト化されたコンクリートパネル内に鉄筋が内蔵されているため、コンクリートパネルが重く、作業が困難であるという欠点がある。コンクリートパネルが重い場合、河川部において水面下に没した橋脚や、地中に深く埋まった橋脚を補強する際に作業が困難になるため、特に問題となる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業が一層容易な橋脚補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の橋脚補強ユニット同士を組み合わせて既存の橋脚を囲繞することによって、当該橋脚を補強する橋脚補強方法であって、橋脚から離間して橋脚を囲繞可能な型枠板と、型枠板における橋脚に対向する面に取り付けられ、橋脚と型枠板との間の空間に位置することが可能な鉄筋と、を備えた橋脚補強ユニットを複数用意する第1工程と、橋脚補強ユニット同士を組み合わせて、橋脚から間隔をおきつつ橋脚を囲繞する第2工程と、橋脚と型枠板との間の空間に充填材を充填する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、橋脚補強ユニットが型枠板と鉄筋からなり、軽量であるため、橋脚を補強する作業が一層容易となる。
【0007】
この場合、第1工程において、用意する橋脚補強ユニットは、鉄筋が型枠板の両側端部において側方に突出した突出部を有するものであり、第2工程において、橋脚補強ユニットのそれぞれの鉄筋の突出部同士を接合することが好適である。
【0008】
この構成によれば、鉄筋が型枠板の両側端部の側方に突出した突出部を有し、他の橋脚補強ユニットの鉄筋の突出部と接合させることにより、他の橋脚補強ユニットと組み合わせることが可能であるため、大きさの違う様々な既存の橋脚に対応しやすくなる。
【0009】
一方、この場合、第1工程において、用意する前記橋脚補強ユニットは、鉄筋が、型枠板の一方の側端部において側方に突出した突出部と、型枠板の他方の側端部において側方に突出していない非突出部とを有するものであり、第2工程において、一の橋脚補強ユニットの鉄筋における突出部と、他の橋脚補強ユニットの鉄筋における非突出部とを接合することにより、橋脚補強ユニット同士を組み合わせることも好適である。
【0010】
この構成によれば、一の橋脚補強ユニットの突出部と、他の橋脚補強ユニットの非突出部とを接合させることにより、他の橋脚補強ユニットと組み合わせることが可能であるため、大きさの違う様々な既存の橋脚に対応しやすくなる。また、橋脚補強ユニットはより軽量で小型なものであるため、作業がし易くなる。
【0011】
この場合、第2工程において、鉄筋同士を接合した後、橋脚補強ユニットのそれぞれの型枠板同士の間に設けられる隙間を塞ぐように追加の型枠板を型枠板に接合することが好適である。この構成によれば、大きさの違う様々な既存の橋脚に対応して型枠板同士の隙間を塞ぎ、橋脚を囲繞することができる。
【0012】
この場合、橋脚は、水面上の水面上部と、水面下の水面下部とを有し、第2工程において、水面上で橋脚補強ユニット同士を組み合わせて橋脚の水面上部を囲繞した後、当該組み合わせた橋脚補強ユニットを水面下に沈降させて橋脚の水面下部を囲繞することが好適である。
【0013】
この構成によれば、水面上で橋脚補強ユニット同士を組み合わせて橋脚の水面上部を囲繞するため、橋脚補強ユニット同士を組み合わせることが容易となる。また、組み合わせた橋脚補強ユニットを水面下に沈降させて橋脚の水面下部を囲繞するため、組み合わせた橋脚補強ユニットの型枠板が橋脚周りの水を区画する。そのため、従来、水面下に没した橋脚の補強をおこなう際に必要であった仮締め切り作業が不要となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の橋脚補強方法によれば、橋脚を補強する作業が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る橋脚補強方法について添付図面を参照して説明する。なお、同一の構成要素は同一の符号で示し、重複する説明は省略する。
【0016】
本実施形態の橋脚補強ユニットは、複数の橋脚補強ユニット10を組み合わせることにより既存の橋脚を囲繞し、橋脚と橋脚補強ユニットとの間の空間にコンクリート等の充填材を充填して鉄筋コンクリート構造を形成することによって、橋脚を補強することができるように構成されている。図1は本発明の第1実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図であり、図2はその平面図であり、図3はその背面図であり、図4はその平面図であり、図5はその側面図である。
【0017】
図1〜5に示すように、本実施形態の橋脚補強ユニット10は、複数のユニットを連結することで橋脚を囲繞する型枠板12と、橋脚と型枠板12との間の空間に位置する複数のループ鉄筋14とを備える。型枠板12は、例えば、幅が1〜5m、高さが1〜5m、厚さ3〜10mm程度の薄い鉄板であり、様々な大きさや形状のものとすることができる。型枠板12は、それ自体で橋脚を補強するだけの強度を有さなくとも良い。ただし、型枠板12を厚さ16〜19mmあるいはそれ以上の厚さの鉄板とすることにより、型枠板12に一層強度を持たせ、それ自体で橋脚を補強する作用を持たせることができる。型枠板12としては、鉄板の他、コンクリート板や、FRP等の合成樹脂製の成型板を用いても良く、この場合、型枠板12の防食性を高めることができる。図3に示すように、型枠板12の背面(橋脚と対向する面と反対側の面)には、型枠板12と橋脚との距離を保つためのセパレータ34(図12参照)の固定用のハンドホール18が複数個設けられている。また図3〜5に示すように、型枠板12の背面には、橋脚の補強作業中に橋脚補給ユニット10をクレーン等で吊り上げるための吊りピース20が設けられている。
【0018】
ループ鉄筋14は長円状をなし、その各々が直径10〜30mm程度の鋼棒からなり、水平方向に配筋され、複数のループ鉄筋14が上下に配列されている。各ループ鉄筋14の上下の間隔は、隣接するループ鉄筋14の間に同じ直径のループ鉄筋が挿入できる程度の間隔となっている。図1,2,4および5に示すように、上下に配列されたループ鉄筋14の各々は、垂直に伸びる複数本の組立筋16に溶接等により固定されており、別個に分離しないように一体化されている。図4および5に示すように、組立筋16により一体化された複数のループ鉄筋14は、組立筋16と型枠板12とに溶接等によって固定された連結材22によって、型枠板12から離間して取り付けられている。図2,4および5に示すように、連結材22は、アングル鋼材をL字型に折り曲げて形成されたブラケットであり、補強のため筋かいが取り付けられている。連結材22により、ループ鉄筋14は、橋脚と型枠板12との間の空間に位置する。また、図1〜4に示すように、型枠板12の両側端部において、ループ鉄筋14は側方に突出した突出部15を有している。これにより、2つの橋脚補強ユニット10におけるループ鉄筋14の突出部15同士を互い違いに嵌合させることにより、2つの橋脚補強ユニット10同士を組み合わせることができる。
【0019】
図6は、本発明の第1実施形態における曲部で用いる橋脚補強ユニットを示す斜視図である。図6に示すように、本実施形態の曲がった部分で用いる橋脚補強ユニット100は、型枠板12とループ鉄筋14とが水平面において弓状に湾曲している以外は、上述の図1〜5に示した直線状の橋脚補強ユニット10と同様の構成を有する。上述の図1〜5に示した直線状の橋脚補強ユニット10と図6に示す湾曲した橋脚補強100とを適宜組み合わせることにより、様々な形状を有する橋脚に対応することができる。
【0020】
図7は、本発明の第1実施形態における2つの橋脚補強ユニットを組み合わせた様子を示す斜視図である。図7に示すように、橋脚補強ユニット10同士を組み合わせるときは、各々の型枠板12の側方から突出したループ鉄筋14の突出部15同士を互い違いに嵌合させる。さらに、各々の突出部15同士が嵌合した部分に、上下方向に縦筋24を挿入して溶接等により固定することにより、橋脚補強ユニット10同士を組み合わせることができ、2つの橋脚補強ユニットを組み合わせた部分の強度を強化することができる。なお、突出部15同士が嵌合した部分以外にも、縦筋24を、ループ鉄筋14の内側に上下方向に挿入して固定することができ、強度を増加させることができる。
【0021】
図8は、複数の橋脚補強ユニットを、橋脚を囲繞するように組み合わせた様子を示す斜視図である。図8の例では、直線状の橋脚補強ユニット10を対向して2つ使い、湾曲した橋脚補強ユニット100を互いに連結した物同士を対向して2つ使い、都合6つ使うことにより、橋脚を囲繞する状態としている。各々の型枠板12同士の隙間は、追加型枠板26により塞がれる。
【0022】
図9は組み合わせた本実施形態の橋脚補強ユニットの型枠板の隙間を追加の型枠板を用いて塞ぐ様子を示す斜視図であり、図10は塞いだ様子を示す斜視図である。図9および10に示すように、橋脚補強ユニット10同士を組み合わせる際には、各々の型枠板12の間に隙間が生じる場合がある。この場合、追加型枠板26を当該隙間に進入または当接させ、溶接、リベット接合等により接合することにより、型枠板12の隙間を塞ぐことができる。この場合、各々の型枠板12に厳密な寸法精度は要求されず、様々な形状の橋脚に対応できる。
【0023】
図11は、橋脚を囲繞するように組み合わせた橋脚補強ユニットを、2段に積み重ねた様子を示す斜視図である。図11に示すように、互いに横方向に組み合わせた橋脚補強ユニット10同士を、縦方向に積み重ねることにより、様々な高さを持つ橋脚に対応することができる。橋脚補強ユニット10同士を多段に積み重ねる際には、各々の組立筋16および縦筋24同士を熱間押抜圧接等により接合する。あるいは、場合によっては組立筋16および縦筋24同士を接合しなくとも良い。その後、上下に隣接する型枠板12同士を溶接、リベット接合等により接合することにより、橋脚補強ユニット10同士を多段に積み重ねることができる。上述の追加型枠板26は、各段ごとに接合することができる。あるいは、追加型枠板26を接合せずに全ての段の橋脚補強ユニット10を組み合わせた後、追加型枠板26を接合しても良い。この場合、全ての段にわたって延びる上下に長い追加型枠板26を接合するようにしても良い。
【0024】
図12は、セパレータを用いて型枠板と橋脚との間隔をとる様子を示す図である。橋脚補強ユニット10,100を用いて既存の橋脚を囲繞する際には、橋脚28と型枠板12との間を所定の距離に保つ必要がある。特に、充填材を橋脚28と型枠板12との間の空間に充填した際には、型枠板12が充填材の圧力によって外側に押し出されないように抵抗する必要がある。本実施形態においては、橋脚28に設けた橋脚アンカー削孔30にスリーブ32を介して、所定の長さのセパレータ34を打ち込む。セパレータ34は、ループ鉄筋14、組立筋16および縦筋24の間を通り、図3に示す型枠板12に設けたハンドホール18の中を通る。セパレータ34のハンドホール18から突出した部分は、固定用鋼材36により型枠板12に固定される。このようにして、セパレータ34を用いて型枠板と橋脚との間を所定の距離に保つことができる。
【0025】
以下、本実施形態の橋脚補強ユニットを用いた橋脚補強方法について説明する。図13に示すように、フーチング40と橋脚28の一部が水面42の下にある場合を想定する。この場合、まず、フーチング40上を浚渫して、フーチング40上に堆積した土砂44を除去する。本実施形態においては、橋脚補強ユニット10,100の組み合わせ作業は容易であり、型枠板12が充填材を充填する範囲を区画して水を締め切る作用を果たすため、浚渫する範囲は1〜3m程度の狭い範囲で良い。その後、図12に示したような橋脚アンカー削孔30を橋脚28に穿設する作業を行う。橋脚アンカー削孔30は、橋脚28内部の鉄筋の位置を探査した後、当該鉄筋がない位置に穿設する。橋脚アンカー削孔30を穿設した後、セパレータ34を取り付けるためのスリーブ32を橋脚アンカー削孔30に打ち込む。
【0026】
次に、図14に示すように、水面42上で橋脚補強ユニット10,100を組み合わせた後、組み合わせた橋脚補強ユニット10,100を水面42下に落とし込む。そして、図7,図15に示すように、橋脚補強ユニット10,100のループ鉄筋14の突出部15同士が嵌合している部分には、適宜、縦筋24を挿入して固定する。より強度を向上させるため、ループ鉄筋14の内側における突出部15以外の部分に、縦方向の鉄筋を挿入しても良い。次に、図12に示すようにセパレータ34をハンドホール18から挿入して、ループ鉄筋14、組立筋16および縦筋24の間を通した後、スリーブ32と固定用鋼材36で固定する。このようにして、組み合わせた橋脚補強ユニット10,100によって、橋脚28を囲繞することができる。この際に、橋脚28と型枠板12との間の空間に水中コンクリート等の充填材を充填して固化させ、1段目の鉄筋コンクリート構造を形成しても良い。本実施形態では、型枠板12がコンクリートを充填する範囲を区画して締め切る作用を果たし、比重が水に比べ大きい水中コンクリートによって、橋脚28と型枠板12との間の空間にある水が置換されるため、別途、橋脚28の付近を区画して排水する等の締め切り作業が不要となる。この場合、水面42下の水深が浅い場合は、通常のコンクリートを充填材として用いることもできる。
【0027】
同様にして、図16に示すように、水面42上で2段目の橋脚補強ユニット10,100を組み合わせた後、組み合わせた橋脚補強ユニット10,100を水面42下に落とし込む。その後、縦筋24の設置、セパレータの設置等を1段目と同様にして行う。この工程を繰り返すことにより、様々な高さの橋脚28に橋脚補強ユニット10,100を設置することができる。この場合、予め水面42上で1段目と2段目あるいはそれ以上の段の橋脚補強ユニット10,100を一体に組み合わせ、一体化した橋脚補強ユニット10,100を一度に水面42下に落とし込んで設置しても良い。
【0028】
その後、図17の図中矢印に示すように、橋脚28と型枠板12との間の空間に充填材を充填して固化させる。この充填材としては、当初は流動体状で、時間の経過によって硬化する自硬性を有する材料が用いられ、例えばセメントコンクリート、繊維補強コンクリート(FRC)、コンクリート・ポリマー複合体等のコンクリート系材料や、例えばセメントモルタル、繊維補強モルタル(FRM)、モルタル・ポリマー複合体等のモルタル系材料や、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料等を用いることが可能である。このようにして、既存の橋脚28の周囲に、全体的に鉄筋が入った鉄筋コンクリート構造を形成することができる。
【0029】
本発明によれば、橋脚補強ユニットが型枠板と鉄筋とからなるため、従来の鉄筋が内蔵されたコンクリートパネルに比べて軽量とすることができる。また、本発明の橋脚補強ユニットは、簡便な構造であるため、生産が容易で安価である。また、本実施形態の橋脚補強ユニット10,100は、橋脚補強工事の現場への輸送および運搬が容易であり、現場での作業も効率良く行うことができる。さらに、本発明の橋脚補強ユニットにより形成された橋脚補強構造は、コンクリート内に全体的に鉄筋が入った構造となるため、補強された橋脚の強度を高めることができる。さらに、本実施形態の橋脚補強ユニット10,100は、型枠板12がコンクリートを充填する区域を区画する作用を奏するため、河川の水を締め切る作業や、大規模の浚渫作業が不要となる。そのため、河川部の橋脚や、土壌に埋まった部分の大きい橋脚を補強する場合に特に適している。
【0030】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図18は、本発明の第2実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。本実施形態の橋脚補強ユニット200は、水平方向の鉄筋としてシングル鉄筋46を備えている点が上述の第1実施形態と異なっている。本実施形態の橋脚補強ユニット200同士を組み合わせる際には、図19に示すように、各々の橋脚補強ユニット200のシングル鉄筋46同士をスリーブ48により接合する。この場合、シングル鉄筋46同士を、スリーブ48を用いずに、フレア溶接等の溶接、あるいは熱間押抜圧接等の圧接により接合しても良い。その他は、上述の第1実施形態の橋脚補強ユニット10,100を用いる場合と同様に行う。本実施形態においては、シングル鉄筋46はループ鉄筋よりも軽量であるため、全体として橋脚補強ユニット200は、第1実施形態の橋脚補強ユニット10,100よりも軽量とすることができ、輸送、運搬および現場での作業を容易にすることができる。
【0031】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。図20は、本発明の第3実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。図20に示すように、本実施形態の橋脚補強ユニット300は、型枠板12の一方の側端部において側方に突出した突出部15を有し、型枠板12の他方の側端部において側方に突出していない非突出部17を有する点が、型枠板12の両側端部において突出部15を有する第1実施形態の橋脚補強ユニット10と異なっている。本実施形態の橋脚補強ユニット300同士を組み合わせる際には、図21に示すように、一方の橋脚補強ユニット300の突出部15と、他方の橋脚補強ユニット300の非突出部17とを嵌合させ、型枠板12同士を当接させる。この場合、追加型枠板26は使用しなくとも良い。その他は、上述の第1実施形態の橋脚補強ユニット10,100を用いる場合と同様に行う。本実施形態においても、橋脚補強ユニット300の小型化および軽量化を図ることができる。さらに、型枠板12同士を当接させた場合は、追加型枠板を接合する必要がなくなる。
【0032】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図22は、本発明の第4実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。図22に示すように、本実施形態の橋脚補強ユニット400は、ループ鉄筋14とシングル鉄筋46とが、上下に交互に取り付けられている点が、ループ鉄筋14のみが取り付けられている第1実施形態の橋脚補強ユニット10と異なっている。本実施形態の橋脚補強ユニット400同士を組み合わせる際には、図7および19に示すように、ループ鉄筋14同士を嵌合させ、シングル鉄筋46同士を接合させる。本実施形態においては、シングル鉄筋46を一部用いたことにより、橋脚補強ユニットを軽量化することができる。
【0033】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。図23は本発明の第5実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図であり、図24はその正面図であり、図25はその平面図であり、図26はその側面図である。図23〜26に示すように、本実施形態の橋脚補強ユニット500では、ループ鉄筋14が、型枠板12に設置された鉄筋枠54によって取り付けられている点が、ループ鉄筋14が連結材22によって取り付けられている第1実施形態の橋脚補強ユニット10と異なっている。
【0034】
図23〜26に示すように、鉄筋枠54は、水平方向に伸びる棒材である横枠56と、垂直方向に伸びる棒材である縦枠58とが直方体の各辺をなすように組み立てられて成る。鉄筋枠54は、型枠板12に固定されている。また、鉄筋枠54の上部には、橋脚の補強作業中に橋脚補給ユニット500をクレーン等で吊り上げるための吊りピース62が設けられている。
【0035】
型枠板12の一方の側端部に配置された2本の縦枠58同士の間には、水平方向に伸びる桟60が上下に複数本配置されている。型枠板12の他方の側端部にも同様に桟60が配置されている。型枠板12の両側端部にそれぞれ配置された桟60上にループ鉄筋14が載置されている。ループ鉄筋14は、複数本配置された桟60ごとに、上下に複数配列される。長円状をなすループ鉄筋14の内側には、垂直方向をなす組立筋16が溶接等により取り付けられている。鉄筋枠54によって、ループ鉄筋14は、橋脚と型枠板12との間の空間に位置する。また、図23〜25に示すように、型枠板12の両側端部において、ループ鉄筋14は側方に突出した突出部15を有している。
【0036】
本実施形態の橋脚補強ユニット500は、鉄筋枠54によってループ鉄筋14が型枠板12に取り付けられているため、当該強度を一層強い物とすることができる。
【0037】
以下、本発明の第6実施形態について説明する。図27は本発明の第6実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図であり、図28はその正面図であり、図29はその平面図であり、図30はその側面図である。図27〜30に示すように、本実施形態の橋脚補強ユニット600では、ループ鉄筋14が、型枠板12に取り付けられたH鋼64のフック70により配置されている点が、ループ鉄筋14が連結材22によって取り付けられている第1実施形態の橋脚補強ユニット10と異なっている。
【0038】
図27〜30に示すように、3本のH鋼64は、当該長手方向を垂直にして型枠板12に取り付けられている。各々のH鋼64には、それぞれ数本のアングル鋼66が溶接等によって取り付けられ、アングル鋼66には間隔保持材68が溶接等によって取り付けられている。間隔保持材68の端部は型枠板12に取り付けられており、間隔保持材68により、H鋼64は型枠板12から離間して配置される。型枠板12の側端部に位置するH鋼64の上部には、橋脚の補強作業中に橋脚補給ユニット600をクレーン等で吊り上げるための吊りピース72が設けられている。
【0039】
それぞれのH鋼64には、フック70が上下に複数取り付けられている。H鋼64のそれぞれに取り付けられたフック70上に、ループ鉄筋14が載置される。ループ鉄筋14は、複数取り付けられたフック70ごとに上下に複数配列される。長円状をなすループ鉄筋14の内側には、垂直方向をなす組立筋16が溶接等により取り付けられている。フック70を有するH鋼64によって、ループ鉄筋14は、橋脚と型枠板12との間の空間に位置する。また、図27〜30に示すように、型枠板12の両側端部において、ループ鉄筋14は側方に突出した突出部15を有している。
【0040】
本実施形態の橋脚補強ユニット600は、フック70を有するH鋼64によってループ鉄筋14が型枠板12に取り付けられているため、当該強度を一層強い物とすることができる。
【0041】
以下、本発明の第7実施形態について説明する。図31は組み合わせた本実施形態の橋脚補強ユニットの型枠板の隙間を追加の型枠板を用いて塞ぐ様子を示す斜視図であり、図32は塞いだ様子を示す斜視図である。本実施形態においては、型枠板12に裏当て板74が取り付けられており、当該裏当て板74に追加型枠板26を当接させて型枠板12同士の隙間を塞ぐ点が、第1実施形態の橋脚補強ユニット10と異なっている。
【0042】
図31に示すように、裏当て板74は、型枠板12のループ鉄筋がある側の板面に、型枠板12の両側端部から突出しつつ、溶接等により取り付けられている。図32に示すように、追加型枠板26を当該裏当て板74に当接させ、溶接、リベット接合等により接合することにより、型枠板12の隙間を塞ぐことができる。この場合、裏当て板74は型枠板12の側端部から突出しているため、当該裏当て板74に当接させる追加型枠板26に厳密な寸法精度は要求されず、様々な形状の橋脚に対応できる。加えて、裏当て板74は、型枠板12のループ鉄筋がある側の板面に取り付けられているため、裏当て板74に当接させた追加型枠板26と型枠板12との段差が少なくなり、構造物の凹凸を少なくすることができる。
【0043】
以下、本発明の第8実施形態について説明する。図33は、本発明の第8実施形態においてセパレータを用いて型枠板と橋脚との間隔を保つ様子を示す図である。上述した第1実施形態においてはセパレータを取り付けるため橋脚アンカー削孔を設けていたのに対し、本実施形態は、橋脚アンカー削孔を設けず、より簡易な方法を用いる点が異なっている。
【0044】
図33に示すように、本実施形態では、セパレータ50は当該両端にそれぞれ橋脚28と型枠板12とに当接するセパレータ端部52を有する。セパレータ50は、ループ鉄筋14および組立筋16の間を通して配置され、特に固定はされない。この場合、橋脚補強ユニットを橋脚に設置する前にセパレータ50を配置しても良いし、橋脚補強ユニットを橋脚に設置した後にセパレータ50を配置しても良い。セパレータ50を配置した後に、図33に示すように、浚渫した土砂44を型枠板12の外周にかかるように埋め戻したり、型枠板12の外周に土嚢を積むことで、型枠板12の外周から圧力を加える。この圧力は、セパレータ50によって支えられる。橋脚28と型枠板12との間の空間に充填材を充填した際にかかる圧力は、土砂44による型枠板12の外周からの圧力により相殺される。
【0045】
このようにして本実施形態では、型枠板12と橋脚28との間を所定の距離に保つことができる。本実施形態においては、セパレータ50を配置するのに、橋脚アンカー削孔を設けないため、橋脚補強作業が容易になる。加えて、型枠板12の外側には、ハンドホール18や固定用鋼材36を設ける必要がないため、構造物の凹凸を少なくすることができるという利点も有する。
【0046】
以下、本発明の第9実施形態について説明する。図34は、本発明の第9実施形態においてバタ材を用いて型枠板と橋脚との間隔をとる様子を示す図である。上述した第1実施形態および第8実施形態においては、橋脚と型枠板との間隔を保つためにセパレータを用いていたのに対し、本実施形態では型枠板の外側をバタ材76で固定することによって、橋脚と型枠板との間隔を保つ点が異なっている。
【0047】
図34に示すように、本実施形態においては、板状のバタ材76を組み合わせて型枠板12を囲繞し、型枠板12を固定する。図34の例では、組み合わせた橋脚補強ユニット10の型枠板12の四方にそれぞれ4本のバタ材76を当接させ、さらに4つの角部にもそれぞれ4本のバタ材76を当接させることによって、型枠板12を固定している。本実施形態においては、橋脚28と型枠板12との間の空間に充填材を充填した際にかかる圧力は、バタ材76によって支えられる。充填材が固化した後は、当該バタ材76を除去する。
【0048】
本実施形態においては、橋脚と型枠板との間隔を保つためにセパレータを用いないため、橋脚補強作業が一層容易になる。加えて、型枠板12の外側には、ハンドホール18や固定用鋼材36を設ける必要がないため、構造物の凹凸を少なくすることができるという利点も有する。
【0049】
尚、本発明の橋脚補強方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、橋脚補強ユニットにおいて、ループ鉄筋やシングル鉄筋を上記実施形態に示したものより多く設け、水平方向にも多数のループ鉄筋やシングル鉄筋を配列したものを用いた方法も本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における橋脚補強ユニットを示す正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における橋脚補強ユニットを示す背面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における橋脚補強ユニットを示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における橋脚補強ユニットを示す側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における曲部で用いる橋脚補強ユニットを示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態における2つの橋脚補強ユニットを組み合わせた様子を示す斜視図である。
【図8】複数の橋脚補強ユニットを、橋脚を囲繞するように組み合わせた様子を示す斜視図である。
【図9】組み合わせた本発明の第1実施形態の橋脚補強ユニットの型枠板の隙間を追加の型枠板を用いて塞ぐ様子を示す斜視図である。
【図10】組み合わせた本発明の第1実施形態の橋脚補強ユニットの型枠板の隙間を追加の型枠板を用いて塞いだ様子を示す斜視図である。
【図11】橋脚を囲繞するように組み合わせた橋脚補強ユニットを、2段に積み重ねた様子を示す斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態においてセパレータを用いて型枠板と橋脚との間隔をとる様子を示す図である。
【図13】橋脚のフーチング上を浚渫した様子を示す斜視図である。
【図14】橋脚を囲繞するように組み合わせた1段目の橋脚補強ユニットを、橋脚のフーチング上に配置した様子を示す斜視図である。
【図15】本発明の第1実施形態における橋脚のフーチング上に配置した橋脚補強ユニットに縦筋を配筋した様子を示す斜視図である。
【図16】縦筋を配筋した1段目の橋脚補強ユニット上に、2段目の橋脚補強ユニットを配置した様子を示す斜視図である。
【図17】橋脚と型枠板との間の空間にコンクリートを注入する様子を示す斜視図である。
【図18】本発明の第2実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。
【図19】本発明の第2実施形態における2つの橋脚補強ユニットを組み合わせた様子を示す斜視図である。
【図20】本発明の第3実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。
【図21】本発明の第3実施形態における2つの橋脚補強ユニットを組み合わせた様子を示す斜視図である。
【図22】本発明の第4実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。
【図23】本発明の第5実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。
【図24】本発明の第5実施形態における橋脚補強ユニットを示す正面図である。
【図25】本発明の第5実施形態における橋脚補強ユニットを示す平面図である。
【図26】本発明の第5実施形態における橋脚補強ユニットを示す側面図である。
【図27】本発明の第6実施形態における橋脚補強ユニットを示す斜視図である。
【図28】本発明の第6実施形態における橋脚補強ユニットを示す正面図である。
【図29】本発明の第6実施形態における橋脚補強ユニットを示す平面図である。
【図30】本発明の第6実施形態における橋脚補強ユニットを示す側面図である。
【図31】組み合わせた本発明の第7実施形態の橋脚補強ユニットの型枠板の隙間を追加の型枠板を用いて塞ぐ様子を示す斜視図である。
【図32】組み合わせた本発明の第7実施形態の橋脚補強ユニットの型枠板の隙間を追加の型枠板を用いて塞いだ様子を示す斜視図である。
【図33】本発明の第8実施形態においてセパレータを用いて型枠板と橋脚との間隔を保つ様子を示す図である。
【図34】本発明の第9実施形態においてバタ材を用いて型枠板と橋脚との間隔を保つ様子を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10,100,200,300,400,500,600…橋脚補強ユニット、12…型枠板、14…ループ鉄筋、15…突出部、16…組立筋、17…非突出部、18…ハンドホール、20…吊りピース、22…連結材、24…縦筋、26…追加型枠板、28…橋脚、30…橋脚アンカー削孔、32…スリーブ、34…セパレータ、36…固定用鋼材、40…フーチング、42…水面、44…土砂、46…シングル鉄筋、48…スリーブ、50…セパレータ、52…セパレータ端部、54…鉄筋枠、56…横枠、58…縦枠、60…桟、62…吊りピース、64…H鋼、66…アングル鋼、68…間隔保持材、70…フック、72…吊りピース、74…裏当て板、76…バタ材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の橋脚補強ユニット同士を組み合わせて既存の橋脚を囲繞することによって、当該橋脚を補強する橋脚補強方法であって、
前記橋脚から離間して前記橋脚を囲繞可能な型枠板と、前記型枠板における前記橋脚に対向する面に取り付けられ、前記橋脚と前記型枠板との間の空間に位置することが可能な鉄筋と、を備えた橋脚補強ユニットを複数用意する第1工程と、
前記橋脚補強ユニット同士を組み合わせて、前記橋脚から間隔をおきつつ前記橋脚を囲繞する第2工程と、
前記橋脚と前記型枠板との間の空間に充填材を充填する第3工程と、
を含む橋脚補強方法。
【請求項2】
前記第1工程において、用意する前記橋脚補強ユニットは、前記鉄筋が前記型枠板の両側端部において側方に突出した突出部を有するものであり、
前記第2工程において、前記橋脚補強ユニットのそれぞれの鉄筋の前記突出部同士を接合することにより、前記橋脚補強ユニット同士を組み合わせる、
請求項1に記載の橋脚補強方法。
【請求項3】
前記第1工程において、用意する前記橋脚補強ユニットは、前記鉄筋が、前記型枠板の一方の側端部において側方に突出した突出部と、前記型枠板の他方の側端部において側方に突出していない非突出部とを有するものであり、
前記第2工程において、一の前記橋脚補強ユニットの鉄筋における前記突出部と、他の前記橋脚補強ユニットの鉄筋における前記非突出部とを接合することにより、前記橋脚補強ユニット同士を組み合わせる、
請求項1に記載の橋脚補強方法。
【請求項4】
前記第2工程において、前記鉄筋同士を接合した後、前記橋脚補強ユニットのそれぞれの前記型枠板同士の間に設けられる隙間を塞ぐように追加の型枠板を前記型枠板に接合する、
請求項2または3に記載の橋脚補強方法。
【請求項5】
前記橋脚は、水面上の水面上部と、水面下の水面下部とを有し、
前記第2工程において、水面上で前記橋脚補強ユニット同士を組み合わせて前記橋脚の水面上部を囲繞した後、当該組み合わせた橋脚補強ユニットを水面下に沈降させて前記橋脚の水面下部を囲繞する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の橋脚補強方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate


【公開番号】特開2007−177492(P2007−177492A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376443(P2005−376443)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(591075641)東鉄工業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】