説明

機械の通知装置

【課題】機械の省エネルギー化及び低騒音化を図りながら、使用者に機械の動作開始時期を通知することができる通知装置を提供すること。
【解決手段】油圧回路8に設けられ、油圧モータ9に供給される作動油の流通音を検知して電気信号に変換するマイク10と、この電気信号に基づいて、特定の音が発生したか否かを判定する制御部12と、この制御部12により特定の音が発生したと判定された場合に、特定の音が発生したことを乗員に通知するスピーカ11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の油圧アクチュエータ等の作動時に生じる音のうち特定の音を使用者に通知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員の操作に応じて動作する建設機械では、乗員の操作から動作開始までの間に応答時間が生じるため、乗員は、建設機械が動作する際に生じる音のうち特定の音(音の変化を含む)を聞き取ることにより、建設機械の動作開始時期を判断していた。
【0003】
このような事情から、前記建設機械には、乗員が前記特定の音を確実に聞き取ることができるように、前記特定の音の一例としての作動油の流通音を大音量で発生させるように工夫された油圧回路を備えたものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1の油圧回路は、ポンプからの作動油を複数のアクチュエータに分配する合流弁を備え、所定のアクチュエータが作動を開始するときに合流弁の上流側(ポンプ側)の油圧を上昇させ、若しくは、合流弁を通過する作動油の流速を上げることにより、特定の音の音量を大きくするようになっている。
【特許文献1】特開2001−349304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、特定の音の音量を大きくするために油圧回路内に余分な油圧を発生させているので、その分、エネルギー効率が低下するという問題があった。
【0006】
特に、近年では建設機械の省エネルギー化が望まれているが、特許文献1のように余分な油圧を発生させることは、省エネルギー化の促進を図る上での阻害要因となる。
【0007】
さらに、特許文献1の技術では、油圧回路から離れた乗員まで特定の音を通知するために当該特定の音を大音量で発生させる必要があるため、近年の建設機械に望まれる低騒音化を図る上での阻害要因となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、機械の省エネルギー化及び低騒音化を阻害することなく、使用者に機械の動作開始時期を通知することができる通知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、使用者の操作を受ける操作部と、この操作部の入力操作に応じて動作する機械に設けられ、当該機械を構成する機器から発生する音のうち特定の音を使用者に通知する通知装置であって、前記機械の構成機器に設けられ、前記音を検知して電気信号に変換する集音手段と、前記電気信号に基づいて、前記特定の音が発生したか否かを判定する制御手段と、この制御手段により前記特定の音が発生したと判定された場合に、特定の音が発生したことを使用者に通知する通知手段とを備えていることを特徴とする機械の通知装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、機械を構成する機器から発生する音から変換された電気信号に基づいて特定の音が発生したと判定された場合に通知手段によって使用者に通知する構成としているので、機械を構成する機器で発生する特定の音を直接使用者に聞かせる場合と異なり、特定の音が小音量の場合であっても、通知手段によって特定の音の発生を確実に通知することができる。
【0011】
したがって、本発明によれば、従来のように特定の音の音量を大きくするために油圧回路内に余分な油圧等を発生させることなく、使用者に機械の動作開始時期を通知することができるので、余分なエネルギー損失を抑制して省エネルギー化を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明では、機械を構成する機器で発生する特定の音を小音量としながら、通知手段により特定の音の発生を使用者へ通知することができるので、従来のように使用者から離れた位置に配設された油圧回路に大音量の特定の音を発生させてこの特定の音を直接使用者に通知する構成と異なり、通知手段を使用者の近傍位置に配設することにより低騒音化を図ることができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、省エネルギー化及び低騒音化を図りながら、使用者に機械の動作開始時期を通知することができる。
【0014】
なお、本発明において、「機械を構成する機器」とは、油圧ポンプ、バルブ及び油圧配管等を含む油圧系統だけでなく、ロープ巻上げ及び巻下げ用のウィンチや、エンジン等の機器も含む趣旨である。また、「特定の音」とは、機械において荷重、体勢、圧力など機器の状態変化を知覚するための音の発生及び音の変化(周波数の変化等)を含む趣旨であり、使用者が機械の動作開始時期を判断するための音である。
【0015】
例えば、前記機械の構成機器は、前記操作部の入力操作に応じて作動油の流動を生じさせる油圧系統を含み、前記集音手段は、この油圧系統から発生する音を検知する構成とすることができる。
【0016】
この構成によれば、油圧回路において生じる音を集音することにより、使用者に対し油圧アクチュエータ等の作動開始時期を判断させることが可能となる。
【0017】
この場合、前記集音手段を複数個有した構成とすることにより、油圧系統における複数個所で音を集音することができるので、前記特定の音の発生箇所が限定できない場合にも、有効に油圧アクチュエータ等の作動開始時期を通知することが可能となる。
【0018】
前記制御手段は、前記特定の音が発生する前と後で検知された2つの音からそれぞれ変換された前記電気信号同士の実測変化率を算出する算出手段と、前記特定の音が発生した時の前後で検知された音からそれぞれ変換された前記電気信号同士の基準変化率に基づいて前記特定の音が発生したときの必要最低限の値として予め規定されたしきい値を記憶する記憶手段と、前記実測変化率としきい値とに基づいて前記特定の音が発生したか否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記特定の音が発生したと判定された場合に前記通知手段による通知を実行させる出力手段とを備えた構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、特定の音が発生する前と後に検知された2つの音から変換された電気信号同士の変化率に基づいて、これら2つの音が検知された時期の間に特定の音が発生したか否かを判定することができるので、電気信号同士の変化量(電気信号同士の差)に基づいて特定の音の発生を判定する場合よりも判定精度を向上することができる。
【0020】
すなわち、電気信号の変化量に基づいて特定の音を判定する場合には、電気信号に含まれる誤差がそのまま変化量に反映されるのに対し、前記構成のように、電気信号同士を除算した変化率に基づいて特定の音を判定する場合には、電気信号に含まれる誤差が除数又は被除数として反映されるため当該誤差の影響を小さくすることにより特定の音の判定精度の向上を図ることができる。
【0021】
ここで、前記算出手段は、前記操作部の入力操作の前と後で検知された2つの音に基づいて前記実測変化率を算出することができる。
【0022】
また、前記算出手段は、前記実測変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数について積算した実測積算量を算出する一方、前記記憶手段は、前記基準変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数について積算した積算量に基づいて前記特定の音が発生したときの必要最低限の積算量として予め規定された基準積算量を前記しきい値として記憶しており、前記判定手段は、前記実測積算量と基準積算量とを比較することにより前記特定の音が発生したか否かを判定するように構成することができる。
【0023】
この構成によれば、実測積算量及び基準積算量を比較することにより特定の音の発生を判定することができるので、スペクトル成分の変化率を周波数ごとに比較して特定の音の発生を判定する場合よりも処理の内容を簡素化することができる。
【0024】
前記実測変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数の全範囲について積算するようにしてもよいが、前記算出手段は、実測変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を特定の周波数範囲ごとに積算することにより、前記周波数範囲ごとにそれぞれ前記実測積算量を算出するとともに、前記記憶手段には、前記基準変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を前記周波数範囲ごとに積算した積算量のそれぞれに基づいて予め規定された前記基準積算量が記憶され、前記判定手段は、前記実測積算量が各周波数範囲のすべてについて基準積算量以上である場合に、特定の音が発生したと判定することが特に好ましい。
【0025】
この構成によれば、実測積算量と基準積算量との比較を周波数範囲ごとに細分化して行なうので、特定の音の発生の判定精度をより向上することができる。
【0026】
すなわち、周波数の全範囲を一律に積算した積算量に基づいて特定の音の判定を行う場合、当該特定の音の発生時に本来であればスペクトル成分値が大幅に増大する周波数についてほとんど変化がなく、その分、この周波数以外の周波数について大幅なスペクトル成分の増加が生じていると、実測積算量自体をみると基準積算量以上となって特定の音が発生したものとして判定されてしまう場合があるが、前記構成のように、実測積算量と基準積算量との比較を周波数範囲ごとに細分化して行うことにより、このような事態を抑制することができる。
【0027】
特に、スペクトル成分のピークの現れる周波数は、作動油の流速や圧力等に応じてシフトする傾向にある一方、これら流速や圧力等は特定の音の発生の一条件であるため、当該流速や圧力等の状況によっては本来特定の音として認められない段階にあるスペクトル成分のピークが実測変化率中に現れる場合があり、このような経時変化に対応する上で前記の構成を採ることが好ましい。
【0028】
前記基準積算量と実測積算量とをそのまま比較して特定の音の有無を判定してもよいが、前記記憶手段には、前記基準変化率と、前記スペクトル成分の変化率を変数として当該スペクトル成分の変化率が大きいほど1に近似する重み係数を出力する一方、前記スペクトル成分の変化率が小さいほど0に近似する重み係数を出力する重み関数とが記憶され、前記算出手段は、前記重み関数に基づいて前記基準変化率の重み係数を周波数ごとに算出するとともに、これら重み係数を前記実測変化率に周波数ごとに乗算し、前記判定手段は、前記重み係数が乗算された実測変化率に基づいて算出された前記実測積算量と、前記基準積算量とを比較して特定の音が発生したか否かを判定することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、重み係数と実測変化率とを周波数ごとに乗算することにより、基準変化率に含まれるスペクトル成分のうち、スペクトル成分の変化率が大きい周波数、すなわち、特定の音の発生前後においてスペクトル成分が大きく変化する周波数ほどスペクトル成分の変化率を実測値に近似する値に維持させる一方、スペクトル成分の変化率が小さい周波数、すなわち、特定の音の発生前後でスペクトル成分がほとんど変化しない周波数ほどスペクトル成分の変化率を0に近似させるように、実測変化率のスペクトル成分の変化率について重み付けを行うことができる。
【0030】
つまり、特定の音の発生と因果関係の少ない周波数についてスペクトル成分を極力省略するとともに、それ以外のスペクトル成分を注目成分として誇張した実測積算量に基づいて特定の音の判定を行うことができるので、判定精度を向上することができる。
【0031】
そして、前記記憶手段には、相互に加算して1となる第一係数及び第二係数が記憶され、前記算出手段は、前記判定手段により特定の音が発生したと判定された場合に、この判定時の前記基準変化率に含まれるスペクトル成分の変化率と前記第一係数とを周波数ごとに乗じたものと、当該判定時の実測変化率に含まれるスペクトル成分の変化率と前記第二係数とを周波数ごとに乗じたものとを周波数ごとに加算して加算変化率を算出するとともに、この加算変化率を新たな基準変化率として前記記憶手段に記憶させる構成とすることができる。
【0032】
この構成によれば、今回の判定結果をフィードバックすることにより、以後の判定精度をより向上させることができる。
【0033】
つまり、今回の判定に用いられた実測変化率に第一係数を乗じたものと、既に記憶されている基準変化率に第二係数を乗じたものとを加算することにより、特定の音の発生と因果関係のあるスペクトル成分の変化率であって実測変化率及び基準変化率がそれぞれ有するものを反映した加算変化率を得ることができるので、この加算変化率に基づいて新たな重み係数を算出して、この重み係数を以後の判定に利用することにより前記注目成分がより誇張された実測積算量を得ることができ、特定の音の判定の精度をさらに向上することができる。
【0034】
また、前記通知手段は、特定の音が発生したと判定された場合に、通知音を発生する構成とすることができる。
【0035】
この構成によれば、通知音によって特定の音の発生を使用者に通知することができる。
【0036】
さらに、前記機械に設けられた複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対応して設けられた複数の集音手段を備えているとともに、これら集音手段ごとに異なる出力情報が記憶された出力情報記憶手段を備え、前記通知手段は、前記特定の音が発生したと判定された場合に、当該判定時に音を検知した集音手段に対応する前記出力情報に基づく通知音を発生する構成とすることができる。
【0037】
この構成によれば、油圧アクチュエータごとに異なる通知音を発生させることができるので、例えば、これら通知音を油圧アクチュエータの種類に対応する特定の音に近似する音に設定することにより、従前の機械に慣れた使用者に対し、作動を開始する油圧アクチュエータを確実に特定させることができる。
【0038】
また、前記出力手段は、前記2つの音のうち後に検知された音から変換された電気信号に含まれるスペクトル成分値と前記重み係数とを周波数ごとに乗じて得られたスペクトル成分値を逆変換した通知音を前記通知手段に発生させる構成とすることができる。
【0039】
この構成によれば、特定の音の発生時に顕著に変化する周波数のスペクトル成分値が誇張された通知音を使用者に通知することができるので、従前の機械の特定の音に慣れた使用者に対し、特定の音の発生をより確実に認識させることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、機械の省エネルギー化及び低騒音化を阻害することなく、使用者に機械の動作開始時期を通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0042】
図1は、本発明の実施形態に係るクレーンを概略的に示す側面図である。
【0043】
図1を参照して、機械の一例としての建設機械であるクレーン1は、キャブ2内の乗員(使用者)Hの操作に応じて図外の油圧シリンダを伸縮させることによりブーム5を起伏させることが可能とされているとともに、ウィンチ3によるワイヤ4の巻上げ又は巻下げを行うことにより、当該ブームの先端部のフック(図示せず)に懸架された吊り荷を昇降することが可能とされている。
【0044】
具体的に、クレーン1は、乗員Hによる入力操作を受ける操作レバー(操作部)6と、この操作レバー6の操作に応じて開閉するバルブ7を含む油圧回路8と、この油圧回路8を介して作動油が供給されることにより回転駆動する油圧モータ(油圧アクチュエータ)9と、前記油圧回路8に設けられたマイク(集音手段)10と、前記キャブ2内に設けられたスピーカ(出力手段)11と、前記操作レバー6、マイク10及びスピーカ11に電気的に接続された制御部(制御手段)12とを備えている。なお、前記クレーン1には、ブーム5起伏用の油圧シリンダ、バルブ7及び油圧モータ9がそれぞれ複数個設けられているが、油圧シリンダについては図示を省略し、バルブ7及び油圧モータ9については図1でそれぞれ1つずつ示している。
【0045】
油圧回路8は、図略の油圧ポンプから油圧モータ9へ作動油を供給するとともに油圧モータ9から排出された作動油を図略のタンクに回収する油圧系統を構成し、そのバルブ7の開閉操作によって油圧モータ9の作動油の給排又は停止を切換えることが可能とされている。
【0046】
油圧モータ9は、前記ウィンチ3を回転駆動させるためのものであるが、このウィンチ3の他に設けられた複数のウィンチのそれぞれに対応して複数個設けられている(図1では、ウィンチ3の駆動用の油圧モータ9を1個示している)。
【0047】
マイク10は、クレーン1を構成する機器から発生する音を集音するためのものである。本実施形態におけるマイク10は、「クレーン1を構成する機器から発生する音」の一例としての油圧回路8の油圧配管14内を流通する作動油の流通音を検知可能となるように、前記バルブ7の近傍位置で油圧配管14の外側面に固定されている。また、マイク10は、前記流通音を電気信号に変換した上でこの電気信号を前記制御部12に出力する。
【0048】
そして、マイク10は、クレーン1に設けられた複数の油圧モータ9のそれぞれに対応して複数個設けられている(図1では、油圧モータ9に対応した1個のマイク10を示している)。なお、本実施形態では、油圧モータ9に対応してマイク10が配設された構成について説明するが、他の構成(例えば、前記ブーム5起伏用の油圧シリンダやバルブ7等)に対応してマイク10が配設された構成としても後述する効果を得ることができる。
【0049】
スピーカ11は、前記油圧モータ9が駆動する際に変化する作動油の流通音のうち特定の音が発生したことを乗員Hに通知可能とされている。
【0050】
すなわち、前記クレーン1では、操作レバー6の操作から油圧モータ9の作動開始までの間に若干の応答時間が生じるため、油圧モータ9の実際の作動開始時期を乗員Hに通知すべく、スピーカ11は、前記特定の音が発生したことを通知する。
【0051】
図2は、図1の制御部の電気的構成を示すブロック図である。
【0052】
図2を参照して、制御部12は、各種演算処理を実行するCPU、初期設定等を記憶するROM、及び所定の情報を書き換え可能に記憶するRAM等からなる周知の制御手段である。
【0053】
この制御部12は、前記マイク10から出力された電気信号に基づいて前記特定の音が発生しているか否かを判定し、特定の音が発生したと判定した場合には、前記スピーカ11によってその旨を通知するようになっている。
【0054】
具体的に、制御部12は、記憶手段15と、算出手段16と、判定手段17と、出力手段18とを備えている。
【0055】
記憶手段15には、基準変化率19(図7の(a)参照)と、この基準変化率19に基づいて予め規定された基準積算量(しきい値)と、所定の重み係数を出力する重み関数と、第一係数及び第二係数と、出力信号テーブルT1(図6参照)とが予め記憶されている。
【0056】
基準変化率19は、前記特定の音が発生した時の前後で検知された2つの流通音からそれぞれ変換された電気信号に基づいて算出されたものである。すなわち、基準変化率19は、図7の(a)に示すように、前記2つの電気信号を周波数ごとのスペクトル成分に変換した上で、これらの電気信号同士で周波数ごとにスペクトル成分を除することにより得られた周波数ごとのスペクトル成分の変化率である。
【0057】
基準積算量は、前記基準変化率19に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数について積算した積算量20に基づいて、特定の音が発生したときの必要最低限の積算量として予め規定されたものである。この基準積算量は、試験的に採取された多数の基準変化率19に基づいて算出されたものである。
【0058】
y=1/(1+e(−x))・・・・・・・式(1)
重み関数は、上記式(1)に示すように、スペクトル成分の変化率を変数xとする関数であって、当該スペクトル成分の変化率が大きいほど1に近似する重み係数yを出力する一方、スペクトル成分の変化率が小さいほど0に近似する重み係数yを出力するものである。
【0059】
第一係数と第二係数とは、相互に加算して1となる定数であり、本実施形態では、第一係数が0.4、第二係数が0.6の値に設定されている。
【0060】
出力信号テーブルT1は、図6の(a)に示すように、複数のマイク10のそれぞれについて出力信号(出力情報)が設定されたテーブルである。この出力信号は、前記スピーカ11に発生させる通知音を規定するものである。すなわち、本実施形態では、記憶手段15が出力情報記憶手段としても機能している。
【0061】
各出力信号は、複数のマイク10のそれぞれに対応するアクチュエータ(油圧モータ9)ごとに、通知パターンが異なるように設定されている。すなわち、通知パターンは、キャブ2と油圧モータ9との間の距離や方向に基づいて音像定位技術を用いて規定されている。したがって、この出力信号に基づきスピーカ11から出力される通知音は、乗員Hにとって、あたかも油圧モータ9から聞こえてくる音として聞こえるものとなる。
【0062】
さらに、前記通知パターンに含まれる音量、周波数、抑揚等は、予め油圧モータ9ごとに検知された流通音に近似するものとなるように規定されている。したがって、この出力信号に基づきスピーカ11から出力される通知音により、乗員Hは、直接聞いたことのある特定の音に近似する前記通知音に基づいて、当該通知音に対応する油圧モータ9を特定することが可能となる。
【0063】
算出手段16は、前記操作レバー6の入力操作の後にマイク10から出力された電気信号同士の実測変化率23(図8の(b)参照)を算出する。
【0064】
具体的に、算出手段16は、図7の(b)及び図8の(a)に示すように、マイク10から出力された電気信号にFFT(高速フーリエ変換)を施し、今回FFTを施したものと前回FFTを施したものの2つの電気信号についてそれぞれ周波数ごとのスペクトル成分値21、22を特定し、これらスペクトル成分値21、22同士を周波数ごとに除することにより、図8の(b)に示すように、周波数ごとのスペクトル成分の変化率(実測変化率)23を算出する。
【0065】
また、算出手段16は、図9の(b)に示すように、前記実測変化率23に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数について積算した実測積算量24を算出する。
【0066】
さらに、算出手段16は、実測変化率23を用いて前記基準変化率19を正規化する。すなわち、算出手段16は、実測変化率23に含まれるスペクトル成分の変化率と第一係数とを周波数ごとに乗算した値と、基準変化率19に含まれるスペクトル成分の変化率と第二係数とを周波数ごとに乗算した値とを加算することにより、前記基準変化率19を正規化する。
【0067】
判定手段17は、前記実測積算量24と基準積算量とを比較することにより、特定の音が発生したか否かを判定する。具体的に、判定手段17は、前記実測積算量24が基準積算量以上であると判定された場合に、特定の音が発生したと判定する。
【0068】
出力手段18は、前記判定手段17により特定の音が発生したと判定された場合に、当該判定時に集音したマイク10に対応する出力信号を前記出力信号テーブルT1から特定して、この出力信号に基づく通知音を前記スピーカ11に発生させる。
【0069】
以下、前記制御部12により実行される処理について、図3及び図4を参照して説明する。
【0070】
図3は、図2の制御部12により実行される処理の前半部分を示すフローチャートである。図4は、図2の制御部12により実行される処理の後半部分を示すフローチャートである。
【0071】
図3及び図4を参照して、制御部12の処理が実行され、操作レバー6の入力操作がされると(ステップS1でYES)、一定時間、流通音を検知するとともにこの流通音を電気信号に変換し(ステップS2)、図7の(b)に示すように、この電気信号を周波数ごとのスペクトル成分値22に変換する(ステップS3)。
【0072】
このステップS3が実行されると、図8の(a)に示すように、今回検知されたスペクトル成分値22を、前回実行されたステップS3で検知されたスペクトル成分値21で周波数ごとに除することにより、図8の(b)に示す実測変化率23を導出する(ステップS4)。
【0073】
つまり、ステップS4では、前記特定の音の発生の契機である操作レバー6の入力操作の前と後に検知された2つの音(今回検知された電気信号と前回検知された電気信号)に基づいて、これらの音の間に変化したスペクトル成分値の割合を周波数ごとに算出しており、その結果、変化したスペクトル成分値が大きいほど高いピークとして現れた図8の(b)のようなチャートが得られる。
【0074】
次いで、前記記憶手段15に記憶された重み関数及び基準変化率19に基づいて、当該基準変化率19についての重み係数を周波数ごとに算出する(ステップS5)。
【0075】
つまり、ステップS5では、上述した式(1)の重み関数の変数xに、基準変化率19に含まれるスペクトル成分の変化率を代入して得られた重み係数yを、周波数ごとに求めることにより、図9の(a)に示すようなチャートが得られる。
【0076】
このチャートから明らかなように、基準変化率19(図7の(a)参照)に含まれるスペクトル成分の変化率のうち、特に大きな変化率を示すものの周波数については、重み係数がより高いピークとされている一方、ほとんど変化のないものの周波数については、重み係数がより低いピークとされている。
【0077】
つまり、ステップS5の処理を行うことにより、基準変化率19において注目すべき変化を示す周波数ほど大きな重み係数が得られる一方、注目する必要性の低い周波数ほど小さな重み係数が得られる。そして、これらの重み係数は、0〜1の間の値として算出される。
【0078】
次いで、前記実測変化率23に含まれるスペクトル成分の変化率に重み係数を周波数ごとに乗じることにより、図9の(b)に示す判定用データ25を算出する(ステップS6)。
【0079】
つまり、ステップS6では、重み係数に基づいて、実測変化率23に含まれる周波数のうち、注目すべき周波数ほどスペクトル成分の変化率を実測値に近い値に維持させる一方、注目度の低い周波数ほどスペクトル成分の変化率を小さい値とする。これにより、注目すべき周波数について大きなピークが現れた判定用データ25が得られる。
【0080】
次いで、この判定用データ25に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数について積算することにより、実測積算量24を算出する(ステップS7)。
【0081】
具体的に、ステップS7では、判定用データ25に含まれる周波数の全範囲E1について、スペクトル成分の変化率を積算することにより実測積算量24を算出する。
【0082】
そして、この実測積算量24が前記基準積算量以上であるか否かを判定し(ステップS8)、基準積算量未満であると判定されると前記ステップS2からの処理を繰り返し実行する。
【0083】
一方、実測積算量24が基準積算量以上であると判定される、つまり、特定の音が発生したと判定されると、通知音発生処理Uを実行する。
【0084】
図5は、図4の通知音発生処理Uを示すフローチャートである。
【0085】
図5の(a)を参照して、通知音発生処理Uが実行されると、まず、複数の油圧モータ9のそれぞれに設けられたマイク10のうち、今回の処理で流通音を検知したマイク10を特定する(ステップU1)。
【0086】
次いで、ステップU1で特定されたマイク10に対応する出力信号を、前記出力信号テーブルT1(図6参照)から読み出し(ステップU2)、この出力信号に基づく通知音を前記スピーカ11により発生させる(ステップU3)。これにより、特定の音が発生したことが乗員Hに通知される。
【0087】
再び図4を参照して、前記通知音発生処理Uが終了すると、今回の判定時に算出された実測変化率23に基づいて前記基準変化率19を正規化する処理を実行する。
【0088】
具体的には、まず、実測変化率23に含まれるスペクトル成分の変化率と第一係数(0.4)とを周波数ごとに乗じる一方(ステップS9)、基準変化率19に含まれるスペクトル成分の変化率と第二係数(0.6)とを周波数ごとに乗じ(ステップS10)、これらの値を周波数ごとに加算する(ステップS11)。
【0089】
すなわち、これらステップS9〜S11では、実測変化率23に含まれるスペクトル成分の40%を、基準変化率19に含まれるスペクトル成分の60%に合算することにより、基準変化率19における注目成分を踏襲しながら今回算出された実測変化率23の注目成分を反映した新たな変化率(加算変化率)を得ることができる。
【0090】
そして、この正規化により得られた加算変化率を新たな基準変化率19として前記記憶手段15に記憶する(ステップS15)。これにより、以後の判定時には、加算変化率が特定の音の発生の判定の基礎として用いられることになり、当該判定精度をより向上することができる。
【0091】
以上説明したように、クレーン1によれば、流通音から変換された電気信号に基づいて特定の音が発生したと判定された場合にスピーカ11によって通知する構成としているので、油圧回路8で発生する特定の音を直接乗員Hに聞かせる場合と異なり、特定の音が小音量の場合であっても、スピーカ11によって特定の音の発生を確実に通知することができる。
【0092】
したがって、クレーン1によれば、従来のように特定の音の音量を大きくするために油圧回路8内に余分な油圧等を発生させることなく、乗員Hに油圧モータ9の作動開始時期を通知することができるので、余分なエネルギー損失を抑制して省エネルギー化を図ることができる。
【0093】
さらに、クレーン1では、油圧回路8で発生する特定の音を小音量としながら、キャブ2内に設けられたスピーカ11により特定の音の発生を乗員Hへ通知することができるので、従来のように乗員Hから離れた位置に配設された油圧回路8に大音量の特定の音を発生させてこの特定の音を直接乗員Hに通知する構成と異なり、スピーカ11を乗員Hの近傍位置に配設することにより低騒音化を図ることができる。
【0094】
したがって、クレーン1によれば、省エネルギー化及び低騒音化を図りながら、乗員Hに油圧モータ9の作動開始時期を通知することができる。
【0095】
前記クレーン1のように、複数のマイク10を備えた構成とすれば、油圧回路8における複数個所で音を集音することができるので、前記特定の音の発生箇所が限定できない場合にも、有効に油圧モータ9の作動開始時期を通知することが可能となる。
【0096】
また、前記クレーン1では、操作レバー6の操作の前と後に検知された2つの音(前記実施形態では油圧配管14内を流通する作動油の流通音)からそれぞれ変換された電気信号同士の実測変化率23に基づいて、当該2つの流通音が検知された時期の間に特定の音が発生したか否かを判定することができるので、電気信号同士の変化量(各電気信号同士の差)に基づいて特定の音の発生を判定する場合よりも判定精度を向上することができる。
【0097】
すなわち、電気信号の変化量に基づいて特定の音を判定する場合には、電気信号に含まれる誤差がそのまま変化量に反映されるのに対し、前記クレーン1のように、電気信号同士を除算した変化率に基づいて特定の音を判定する場合には、電気信号に含まれる誤差が除数又は被除数として反映されるため当該誤差の影響を小さくすることにより特定の音の判定精度の向上を図ることができる。
【0098】
さらに、前記クレーン1では、実測積算量24及び基準積算量を比較することにより特定の音の発生を判定することができるので、スペクトル成分の変化率を周波数ごとに比較して特定の音の発生を判定する場合よりも処理の内容を簡素化することができる。
【0099】
また、重み係数が乗算された実測変化率23に基づいて算出された実測積算量24と、基準積算量とを比較して特定の音が発生したか否かを判定する前記クレーン1によれば、重み係数と実測変化率23とを周波数ごとに乗算することにより、基準変化率19に含まれるスペクトル成分のうち、スペクトル成分の変化率が大きい周波数、すなわち、特定の音の発生前後においてスペクトル成分が大きく変化する周波数ほどスペクトル成分の変化率を実測値に近似する値に維持させる一方、スペクトル成分の変化率が小さい周波数、すなわち、特定の音の発生前後でのスペクトル成分がほとんど変化しない周波数ほどスペクトル成分の変化率を0に近似させるように、実測変化率23のスペクトル成分の変化率について重み付けを行うことができる。
【0100】
つまり、特定の音の発生と因果関係の少ない周波数についてスペクトル成分を極力省略するとともに、それ以外のスペクトル成分を注目成分として誇張した実測積算量24に基づいて特定の音の判定を行うことができるので、判定精度を向上することができる。
【0101】
前記判定手段17により特定の音が発生したと判定された場合に、基準変化率19の正規化を行うようにした前記クレーン1によれば、今回の判定結果をフィードバックすることにより、以後の判定精度をより向上させることができる。
【0102】
つまり、今回の判定に用いられた実測変化率23に第一係数(0.4)を乗じたものと、既に記憶されている基準変化率19に第二係数(0.6)を乗じたものとを加算することにより、特定の音の発生と因果関係のあるスペクトル成分の変化率であって実測変化率23及び基準変化率がそれぞれ有するものを反映した加算変化率を得ることができるので、この加算変化率に基づいて新たな重み係数を算出して、この重み係数を以後の判定に利用することにより前記注目成分がより誇張された実測積算量24を得ることができ、特定の音の判定の精度をさらに向上することができる。
【0103】
なお、前記実施形態では、図3のステップS7において、判定用データ25に含まれる周波数の全範囲E1について実測積算量24を算出する構成について説明したが、前記ステップS11では、図9の(b)に示すように、前記全範囲E1を周波数ごとに区分した周波数範囲E2、周波数範囲E3、及び周波数範囲E4ごとに実測積算量26、実測積算量27、及び実測積算量28を算出する構成とすることもできる。
【0104】
この場合、前記基準変化率19に含まれるスペクトル成分の変化率を前記周波数範囲E2〜E4ごとに積算した積算量を、それぞれ前記基準積算量(しきい値)として前記記憶手段16に記憶させるとともに、前記判定手段17によって、実測積算量26〜28と各基準積算量とを周波数範囲E2〜E4ごとに比較することにより、当該周波数範囲E2〜E4ごとに特定の音が発生しているか否かを判定することができる。
【0105】
この判定時、すなわち、前記ステップS12(図4参照)においては、周波数範囲E2〜E4のすべての範囲について基準積算量以上であると判定された場合に、通知音発生処理Uを実行するようにすることができる。
【0106】
このように構成することにより、実測積算量24と基準積算量との比較を周波数範囲E2〜E4ごとに細分化して行うことができるので、特定の音の発生の判定精度をより向上することができる。
【0107】
すなわち、周波数の全範囲E1を一律に積算した積算量に基づいて特定の音の判定を行う場合、特定の音の発生時にスペクトル成分値が大幅に増大する周波数についてほとんど変化がなく、その分、この周波数以外の周波数について大幅なスペクトル成分の増加が生じていると、実測積算量24自体をみると基準積算量以上となって特定の音が発生したものとして判定されてしまう場合があるが、実測積算量24と基準積算量との比較を周波数範囲E2〜E4ごとに細分化して行うことにより、このような事態を抑制することができる。
【0108】
特に、スペクトル成分のピークの現れる周波数は、作動油の流速や圧力等に応じてシフトする傾向にある一方、これら流速や圧力等は特定の音の発生の一条件であるため、当該流速や圧力等の状況によっては本来特定の音として認められない段階にあるスペクトル成分のピークが実測変化率23中に現れる場合があり、このような経時変化に対応する上で前記の構成を採ることが好ましい。
【0109】
また、各周波数範囲E2〜E4ごとに特定の音の発生を判定する場合には、図6の(b)に示すように、周波数範囲E2〜E4ごとに出力信号が設定された出力信号テーブルT2を前記記憶手段15に記憶させておくことにより、周波数範囲E2〜E4ごとに異なる出力音を発生させることができる。
【0110】
さらに、前記各実施形態では、記憶手段15に記憶された出力信号テーブルT1、T2に規定された出力信号に基づいて出力音を発生させるようにしているが、マイク10から出力された電気信号(図8の(a)参照)に基づいた出力音を発生させることもできる。
【0111】
具体的には、図5の(b)に示すように、前記通知音発生処理Uにおいて、電気信号に含まれるスペクトル成分値22の変化率と前記重み係数とを周波数ごとに乗じて出力信号を算出する(ステップU4)。
【0112】
すなわち、図8の(a)に示す電気信号に含まれるスペクトル成分値22のうち注目成分に対応する周波数のスペクトル成分値を実測値に近似する値に維持する一方、注目成分以外の周波数のスペクトル成分値を0に近づけた値とするように、重み付けを行う。
【0113】
次いで、算出されたスペクトル成分値を逆変換した通知音を出力する(ステップU5)。
【0114】
このように構成することにより、特定の音の発生時に顕著に変化する周波数のスペクトル成分値が誇張された通知音を乗員に通知することができるので、従前の建設機械の特定の音に慣れた乗員Hに対し、特定の音の発生をより確実に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施形態に係るクレーンを概略的に示す側面図である。
【図2】図1の制御部の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図2の制御部により実行される処理の前半部分を示すフローチャートである。
【図4】図2の制御部により実行される処理の後半部分を示すフローチャートである。
【図5】図4の通知音発生処理Uを示すフローチャートであり、(a)は一の実施形態、(b)は他の実施形態をそれぞれ示している。
【図6】図2の記憶手段に記憶された出力信号テーブルを示す外略図であり、(a)は一の実施形態、(b)は他の実施形態をそれぞれ示している。
【図7】(a)は基準変化率を示すチャートであり、(b)は通知音(1回目)を示すチャートである。
【図8】(a)は通知音(2回目)を示すチャートであり、(b)は実測変化率を示すチャートである。
【図9】(a)は重み係数を示すチャートであり、(b)は判定用データを示すチャートである。
【符号の説明】
【0116】
1 クレーン(機械の一例)
6 操作レバー(操作部の一例)
8 油圧回路
9 油圧モータ(油圧アクチュエータの一例)
10 マイク(集音手段の一例)
11 スピーカ(通知手段の一例)
12 制御部(制御部)
15 記憶手段(出力情報記憶手段の一例も構成)
16 算出手段
17 判定手段
18 出力手段
19 基準変化率
21、22 スペクトル成分値
23 実測変化率
24 実測積算量
25 判定用データ
26〜28 実測積算量
E1〜E4 周波数範囲
H 乗員
y 重み係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の操作を受ける操作部と、この操作部の入力操作に応じて動作する機械に設けられ、当該機械を構成する機器から発生する音のうち特定の音を使用者に通知する通知装置であって、
前記機械の構成機器に設けられ、前記音を検知して電気信号に変換する集音手段と、
前記電気信号に基づいて、前記特定の音が発生したか否かを判定する制御手段と、
この制御手段により前記特定の音が発生したと判定された場合に、特定の音が発生したことを使用者に通知する通知手段とを備えていることを特徴とする機械の通知装置。
【請求項2】
前記機械の構成機器は、前記操作部の入力操作に応じて作動油の流動を生じさせる油圧系統を含み、前記集音手段は、この油圧系統から発生する音を検知することを特徴とする請求項1に記載の機械の通知装置。
【請求項3】
前記集音手段を複数個有していることを特徴とする請求項2に記載の機械の通知装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記特定の音が発生する前と後で検知された2つの音からそれぞれ変換された前記電気信号同士の実測変化率を算出する算出手段と、前記特定の音が発生した時の前後で検知された音からそれぞれ変換された前記電気信号同士の基準変化率に基づいて前記特定の音が発生したときの必要最低限の値として予め規定されたしきい値を記憶する記憶手段と、前記実測変化率としきい値とに基づいて前記特定の音が発生したか否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記特定の音が発生したと判定された場合に前記通知手段による通知を実行させる出力手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の機械の通知装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記操作部の入力操作の前と後で検知された2つの音に基づいて前記実測変化率を算出することを特徴とする請求項4に記載の機械の通知装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記実測変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数について積算した実測積算量を算出する一方、前記記憶手段は、前記基準変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を周波数について積算した積算量に基づいて前記特定の音が発生したときの必要最低限の積算量として予め規定された基準積算量を前記しきい値として記憶しており、前記判定手段は、前記実測積算量と基準積算量とを比較することにより前記特定の音が発生したか否かを判定することを特徴とする請求項4又は5に記載の機械の通知装置。
【請求項7】
前記算出手段は、実測変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を特定の周波数範囲ごとに積算することにより、前記周波数範囲ごとにそれぞれ前記実測積算量を算出するとともに、前記記憶手段には、前記基準変化率に含まれるスペクトル成分の変化率を前記周波数範囲ごとに積算した積算量のそれぞれに基づいて予め規定された前記基準積算量が記憶され、前記判定手段は、前記実測積算量が各周波数範囲のすべてについて基準積算量以上である場合に、特定の音が発生したと判定することを特徴とする請求項6に記載の機械の通知装置。
【請求項8】
前記記憶手段には、前記基準変化率と、前記スペクトル成分の変化率を変数として当該スペクトル成分の変化率が大きいほど1に近似する重み係数を出力する一方、前記スペクトル成分の変化率が小さいほど0に近似する重み係数を出力する重み関数とが記憶され、前記算出手段は、前記重み関数に基づいて前記基準変化率の重み係数を周波数ごとに算出するとともに、これら重み係数を前記実測変化率に周波数ごとに乗算し、前記判定手段は、前記重み係数が乗算された実測変化率に基づいて算出された前記実測積算量と、前記基準積算量とを比較して特定の音が発生したか否かを判定することを特徴とする請求項6又は7に記載の機械の通知装置。
【請求項9】
前記記憶手段には、相互に加算して1となる第一係数及び第二係数が記憶され、前記算出手段は、前記判定手段により特定の音が発生したと判定された場合に、この判定時の前記基準変化率に含まれるスペクトル成分の変化率と前記第一係数とを周波数ごとに乗じたものと、当該判定時の実測変化率に含まれるスペクトル成分の変化率と前記第二係数とを周波数ごとに乗じたものとを周波数ごとに加算して加算変化率を算出するとともに、この加算変化率を新たな基準変化率として前記記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項8に記載の機械の通知装置。
【請求項10】
前記通知手段は、特定の音が発生したと判定された場合に、通知音を発生することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の機械の通知装置。
【請求項11】
前記機械に設けられた複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対応して設けられた複数の集音手段を備えているとともに、これら集音手段ごとに異なる出力情報が記憶された出力情報記憶手段を備え、前記通知手段は、前記特定の音が発生したと判定された場合に、当該判定時に音を検知した集音手段に対応する前記出力情報に基づく通知音を発生することを特徴とする請求項10に記載の機械の通知装置。
【請求項12】
前記出力手段は、前記2つの音のうち後に検知された音から変換された電気信号に含まれるスペクトル成分値と前記重み係数とを周波数ごとに乗じて得られたスペクトル成分値を逆変換した通知音を前記通知手段に発生させることを特徴とする請求項8又は9に記載の機械の通知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−52701(P2009−52701A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221610(P2007−221610)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】