説明

機能あるヒトリポタンパク質(A)を発現するトランスジェニックウサギ

【課題】 機能あるヒトリポタンパク質(A)を発現するトランスジェニックウサギを提供する。
【解決手段】 結合してリポタンパク質(a)を産生できるアポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドをコードする配列を、ゲノムDNAに有するトランスジェニックウサギ、このようなウサギの作出方法、及びLp(a)発現と連関し、Lp(a)発現によって誘導され、及び/又は悪化するヒト疾患の治療に有効な化合物を同定するための上記ウサギの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられた助成金PPG HL18574 の下に、米国エネルギー局とカリフォルニア大学との契約第DE-AC03-76SF00098 号に基づく政府の支持によってなされた。米国政府は、本発明にある種の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、1998年1月8日出願の米国仮出願第60/070,727号に基づき、それからの優先権を主張する。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒト疾患のモデル、及びこれらの疾患の治療に有効な化合物を同定するために、これらのモデルを用いる方法に関する。詳細には、本発明は、ヒトリポタンパク質(a)(La(a))のインビボ分析のための新規な実験的なモデルと、このリポタンパク質の高レベルと関連する健康上のリスクを減少させる治療的戦略の開発に関する。
【背景技術】
【0004】
リポタンパク質異常血症は、血液や末梢流体におけるトリグリセライドなどの脂質を輸送する役目を荷うリポタンパク質の代謝における疾患である。それ故、アテローム性動脈硬化などのリポタンパク質異常血症は、高コレステロール血症、低コレステロール血症、高トリグリセライド血症に関連する生命を脅かす疾患と関連する。
【0005】
アテローム性動脈硬化は、大きな動脈(大動脈、冠動脈、及び頚動脈)の壁に脂質や他の血液誘導体の沈積(脂質又はフィブロ−脂質プラーク)によって、組織学的面上で定められる複雑なポリジェニックな疾患である。疾患の進行に従い多かれ少なかれ石灰化されているプラークは、病巣と関連しえ、動脈において、本質的にコレステロールエステルからなる脂肪沈積の蓄積に関連する。プラークは、平滑筋の肥大を伴う動脈壁の肥厚、泡沫細胞の出現、及び繊維組織の蓄積によって伴われる。プラークは、動脈壁で隆起し、狭窄、即ち、動脈が狭くなること、又はストリクチャ(狭窄)に至る。最悪の患者で、この狭窄は、アテローム、血栓及び塞栓などの血管閉鎖の原因である。それ故、コレステロールの過剰の蓄積(高コレステロール血症)は、心筋梗塞、突然死、心臓代償不全、脳血管疾患などに至りうる。
【0006】
それ故、ある疾患で、血漿コレステロールのレベルを減少させる、又は末梢組織からコレステロールの流出(コレステロールの逆輸送)を刺激し、アテロームプラークの形成においてコレステロールを蓄積した細胞からコレステロールを抜き取る、直ちに利用できる治療をもつことは、特に重要である。コレステロールは、種々のリポタンパク質(低密度リポタンパク質(LDL)や高密度リポタンパク質(HDL)を含む)によって血液中で輸送される。LDLは肝臓で合成され、末梢組織にコレステロールを供給する役目を荷う。対照的に、HDLは、末梢組織でコレステロールを拾い上げ、それを肝臓に輸送する。肝臓で、コレステロールは保存され、及び/又は分解される。
【0007】
多数の研究が、リポタンパク質(a)(Lp(a))の上昇血漿レベルと、心臓血管疾患や脳卒中の発生の増加とを関連づけた(総説として、Utermann,G., Science(1989) 246,904-910;Mah er,V.M.G., and Brown、B.G., Curr.Opin.Lipidol. (1995) 6, 229-235)。リポタンパク質(a)は、脂質部分と2つのジスルフィド結合サブユニット、アポリポタンパク質B−100(apoB−100)とアポリポタンパク質(a)(apo(a))からなる複雑な分子である。apo(a)、即ち、プラスミノーゲンに構造的に関連す
る親水性糖タンパク質の存在は、Lp(a)を、低密度リポタンパク質(LDL)から分け、その特徴的な生物的及び物理的性質を付与する。
【0008】
アポリポタンパク質AI(apo(a))は、243個のアミノ酸からなり、267残基のプレプロタンパク質の形で合成されるタンパク質であり、分子量28,000ダルトンをもつ。ヒトにおいて、それは、肝臓と腸で特異的に合成され、それは、HDL粒子の基本的なタンパク質を構成する(重量でタンパク質の70%)。それは、血漿で豊富である(1.0−1.2g/L)。その活性は、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)の活性化として、生化学の観点から最も良く特徴づけられるが、多数の他の活性、例えば、特に、細胞コレステロールの流出が、それに帰せられる。アポリポタンパク質AIの生理的役割は、アポリポタンパク質AIIによって相殺されるように思われる。というのは、ヒトにおいて、2つの血漿濃度の比(AII/AI)は、冠リスクと非常に密接に関連するからである。アポリポタンパク質AIは、アテローム性動脈硬化に対する抵抗性に主要な役割は果たす。その役割は、コレステロールの逆輸送に恐らく連関する。というのは、トランスジェニックマウスにおけるこのタンパク質だけの発現により、大動脈における脂質沈積の表面が、対照マウスと比較して40倍減少するからである(Rubinら,1993 Science, vol 365 p762)。長さが1863bpであるその遺伝子は、クローニングされ、配列決定された(Sharpeら, Nucleic Acids Res. (1984)12(9):3917)。アポリポタンパク質AI型活性を有する種々のタンパク質産物が同定された。これら
の産物は、表1で示されるように、従来技術で記載された種々の天然の変異体を含む。
【0009】
【表1】

【0010】
アポリポタンパク質B−100(apoB)は、超低密度リポタンパク質(VLDL)、低密度タンパク質(LDL)及びリポタンパク質Lp(a)の主要タンパク質構成分である。このタンパク質は、LDLレセプタの生理的リガンドであり、その血漿濃度は、アテローム性動脈硬化の発症と陽性に関連する(Brunzellら,1984 Arteriosclerosis 4, 79-93)。ApoB-100は、公知の最大のタンパク質の一つであり、分子量は550kDaであ
り、4536個のアミノ酸を含む(Chenら, 1986 J.Biol.Chem, 261, 12919-21)。この
リポタンパク質は肝臓でのみ合成される。その血漿濃度は、1.0-1.2g/Lである。ApoB-100は、肝臓で合成されるコレステロールを血漿を通り、生物の他の細胞に輸送するのに主要な役割を荷う。apoBの別の型、即ち、apoB−48は、キロミクロンに存在する。ヒトにおいて、apoB−48は、腸で合成される。ApoB−48は、260kDaの分子量を有し、2152個のアミノ酸を含み、それは、直線的のapoB−100のN末端の48%に対応する(Powellら, 1987, Cell 50, 831-40 )。apoB−100のC末端部分は、apoB−100がLDLレセプターと結合する領域を含むので、apoB−48は、LDLレセプターとは結合せず、代謝的に異なるように振舞う。
【0011】
リポタンパク質異常血症に関連する疾患状態を研究するために、リポタンパク質異常血症に関連する疾患のリスクと関連するタンパク質又はタンパク質複合体を発現する動物モデルを利用できることには利点がある。このような動物モデルは、これらの疾患を理解するために特に利点があるであろう。より詳細には、これらのタンパク質又はタンパク質複合体が開始する調節機構を理解するために特に利点があるであろう。このことは、該タンパク質の発現と関連する可能性のある活性を検出する目的のために、治療薬又は化合物のかなりの数を、迅速に、インビボで試験することを可能とするだろう。更に、このようなモデルは、遺伝子治療に基づく方法などの、これらの型の疾患を治療する新規で治療的方法を開発することは興味があろう。ヒトにおける独立のアテローム性動脈硬化リスク因子であるLp(a)のインビボ解析は、哺乳動物の間でその制限された分布によって部分的に制限されてきた。Apo(a)は天然では、旧世界サル、ヒト、及び一つの非霊長類種であるヨーロッパハリネズミに独占的に存在する。哺乳動物の間でapo(a)のこのような限られた分布により、そのインビボ研究の限られた研究しかできない。
【0012】
それ故、本発明は、アテローム性動脈硬化を含む、Lp(a)関与の疾患の動物モデルであって、これらの疾患、特にアテローム性動脈硬化の治療のための化合物のスクリーニングと同定を可能とする上記動物モデルに関する。
【0013】
報告された開発
一般的にいえば、マウス、ラット及びモルモットは、最も広範に使用される動物モデルである。それらは、操作しやすく、安価である。不幸にも、これらの小哺乳動物は、必ずしも意図した適用に適合性ではない。というのは、それらは、ヒト、及びヒトの代謝の代表ではない。チンパンジーは、AIDSや癌を含む種々の疾患に対する治療薬やワクチンを試験するために使用される。しかし、モデルシステムとして、チンパンジーを用いて招かれる非常な高価は、その使用に関する主要な、強要的なハンディキャップである。
【0014】
マウスを用いるシステムの欠点にもかかわらず、ヒトapo(a)cDNAを発現するトランスジェニックマウスの開発は、脈管構造に対するLp(a)の影響を説明する仮説を試験する手段を提供する。詳細には、プラスミン生成の阻害、及び関連する結果によって、アテローム発生を促進するapo(a)の能力を試験するために、これらのマウスを用いた(Lawnら, Nature(1992)360,670-672;Graingerら,Nature(1994) 370, 460-462)
。apo(a)トランスジェニックマウスの研究からまた、以下の観察を含むLp(a)アッセンブリィへの洞察が得られた。観察というのは、apo(a)は、マウスapoBを含むLDLと共有結合を形成できなかったということである(Chiesaら, J Biol Chem
(1992) 267, 24369-24374)。マウスが、ヒトLDLを導入されたとき、又はヒトap
oBトランス遺伝子を発現したとき、Lp(a)形成の証拠と合わせて(Lintonら, J Clin Invest (1993) 92, 3029-3037;Callowら, Proc Natl Acad Sci, USA(1994) 91, 2130-2136 )、この結果は、マウスapoBは、Lp(a)アッセンブリィに必要な構造的な要求を欠くことを示唆した。マウスにおいて、apo(a)遺伝子が存在しないこと、及びヒトにおいて、Lp(a)アッセンブリィを仲介すると考えられているapo(a)と
apoBとの間の配列特異的相互作用から、上記のことは、完全に予期しない知見ではなかった。マウスにおいて、ヒトapoBトランス遺伝子の部位特異的な変異誘発を用いる2つの研究は、apo(a)のための結合の部位を提供する、ヒトapoBにおける唯一のシステイン(Cys4326)の位置測定を報告した(Callow ,M.J. and Rubin,E.M.,
J Biol Chem(1995) 270, 23914-23917;McCormicら, (1995) 92, 10147-10151)。
【0015】
最近、apo(a)遺伝子発現の制御が、ヒトapo(a)ゲノムクローンを含むトランスジェニックマウスで研究された(Frazerら, Nat Gen (1995) 9, 424-431 )。このトランス遺伝子は、apo(a)遺伝子、その天然プロモータ、及び5′フランキングDNAの約60kb内と3′フランキングDNAの約80kb内のシス作用要素を含んでいた。トランス遺伝子は、apo(a)cDAN構築物を含むマウスで観察されるよりも効率的に発現され(即ち、作出された全てのapo(a)トランス遺伝子ファウンダーは、完全なトランス遺伝子によって発現されたapo(a)を含んでいた)、apo(a)cDAN構築物を含むマウスで観察されるよりも有意に高い血漿apo(a)レベルが生じた。ヒトapo(a)ゲノムトランス遺伝子を発現するマウスにおける驚くべき知見は、apo(a)発現における、かなりの性ホルモン誘導変化であり、ヒトで観察されるアンドロゲン及びエストロゲン関連変化の大きさをはるかにしのいだ。しかし、これらの変化は、ヒトとトランスジェニックマウスにおいて定性的に同様であった。両方の場合に、これらのホルモンは、apo(a)血漿レベルを下げる。
【0016】
トランスジェニック動物を作出することにおいてゲノムクローンの使用は一般的には、cDNA構築物の使用に対し幾つかの利点を有する。非常に重要なことだが、トランス遺伝子発現は適当な方法で制御され、その組み込み部位とは独立である。しかし、非常に大きなゲノムクローンを操作する技術的な困難性と、他の動物におけるトランス遺伝子のより小さな効力の故に、上記のアプローチは、apo(a)などの大きな遺伝子のためのトランスジェニックマウスの作出に限られた。
【0017】
Lp(a)を含むトランスジェニックマウスが作出されたが、マウスの小さなサイズ、及びマウスとヒトとの間のリポタンパク質プロフィールの差異によって、種々の研究が妨げられた。それ故、ヒトにより近く、霊長類モデルシステムと関連する高価性が避けられる動物モデルシステムを同定することが望ましい。
【0018】
従って、Lp(a)媒介疾患の適切な動物モデルの必要性が当業界にある。ヒトLp(a)を発現するトランスジェニック動物の更なる必要性が当業界にある。更に、真に有用であるために、トランスジェニック動物は、十分に高いレベルで構成的なLp(a)を発現する必要があり、Lp(a)の生理的に適切なレベルを産生するように、構成成分の共有結合を可能とする必要がある。現在まで、このような動物を作出するのに技術的な困難性は、本発明まで克服されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、ヒトLp(a)の生理的なレベルを産生する有用なトランスジェニック動物を提供することによって、従来技術のこれらの欠陥を克服する(このような発明を達成する困難性にもかかわらず)。
【0020】
詳細には、本発明は、ヒトアポリポタンパク質(a)(apo(a))遺伝子とヒトアポリポタンパク質B(apoB)遺伝子の両方を発現するトランスジェニック動物に関する。これらの動物は、ヒトリポタンパク質(a)(Lp(a))、即ち、脂質部分と、apo(a)とapoBの2つのジスルフィド結合サブユニットからなる複合体粒子を発現する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本発明によれば、そのゲノムDNAに、アポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドをコードする配列を有するトランスジェニックウサギが提供される。アポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドは、結合してリポタンパク質(a)を産生できる。
【0022】
本発明はまた、リポタンパク質(a)を産生できるトランスジェニックウサギを提供する。ウサギは、コレステロール豊富な食餌を与えられたとき、ヒトに似たアテローム性動脈硬化病巣を発症する。
【0023】
本発明はまた、外来ヒトDNA配列を有するリポタンパク質(a)を産生できるトランスジェニックウサギを提供する。DNA配列は、ゲノムDNAとcDNAから選択されうる。
【0024】
上記のように、本発明のトランスジェニックウサギは、ゲノムDNAに、アポリポタンパク質(a)とアポリポタンパク質Bをコードする配列を有する。本発明は、DNA配列を発現する肝細胞を有する、リポタンパク質(a)を産生できるトランスジェニックウサギ、及びDNA配列を発現する精巣細胞を有する、リポタンパク質(a)を産生できるトランスジェニックウサギを提供する。
【0025】
本発明の更に別の面は、その性的成熟中を通し、アポリポタンパク質(a)ポリペプチドの安定な血漿レベルを有するトランスジェニックウサギである。
本発明はまた、アポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドを発現できるトランスジェニックウサギを作出する方法であって、第1のウサギの生殖ライン細胞を、第2のウサギの生殖ライン細胞と結合させることを含む上記方法も提供する。第1のウサギの生殖ライン細胞は、アポリポタンパク質(a)を発現でき、第2のウサギの生殖ライン細胞は、アポリポタンパク質Bを発現できる。生殖ライン細胞は、例えば、卵子と精子を含む。
【0026】
本発明の更に別の面は、アポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドを発現できるトランスジェニックウサギを作出する方法であって、第1のウサギを、別のウサギと交配させることを含む上記方法も提供する。第1のウサギは、アポリポタンパク質(a)を発現でき、別のウサギは、アポリポタンパク質Bを発現できる。
【0027】
リポタンパク質(a)を発現できるトランスジェニックウサギを作出する好適な方法において、アポリポタンパク質Bタンパク質を発現するウサギは、ヒトアポリポタンパク質B遺伝子を含むファージミドをウサギ胚に注入することによって提供される。
【0028】
リポタンパク質(a)を発現できるトランスジェニックウサギを作出する好適な方法において、アポリポタンパク質(a)を発現するウサギは、ヒトアポリポタンパク質(a)遺伝子を含む酵母人工染色体をウサギ胚に注入することによって提供される。
【0029】
リポタンパク質(a)を発現できるトランスジェニックウサギを作出する更に別の方法において、アポリポタンパク質(a)を発現するウサギは、アポリポタンパク質(a)タンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片をウサギ胚性幹細胞に注入し、胚性幹細胞をウサギ胚盤胞と一緒にし、胚をレシピエントのメスウサギに移すことによって提供される。
【0030】
リポタンパク質(a)を発現できるトランスジェニックウサギを作出する更に別の方法において、アポリポタンパク質Bを発現するウサギは、アポリポタンパク質Bタンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片をウサギ胚性幹細胞に注入し、胚性幹細胞をウサギ胚盤胞と一緒にし、胚をレシピエントのメスウサギに移すことによって提供される。
【0031】
リポタンパク質(a)を発現できるトランスジェニックウサギを作出する更に別の方法において、アポリポタンパク質(a)を荷い、発現するウサギは、アポリポタンパク質(a)タンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片を含むレトロウイルスでウサギ卵割球に感染させ、卵割球をレシピエントのメスウサギに移すことによって提供される。
【0032】
リポタンパク質(a)を発現できるトランスジェニックウサギを作出する更に別の方法において、アポリポタンパク質Bを荷い、発現するウサギは、アポリポタンパク質Bタンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片を含むレトロウイルスでウサギ卵割球に感染させ、卵割球をレシピエントのメスウサギに移すことによって提供される。
【0033】
本発明はまた、リポタンパク質(a)発現又は代謝に関連する疾患を化合物が阻害できるかどうかを決定する方法であって、ヒトリポタンパク質(a)を産生でき、ヒトリポタンパク質(a)に関連する疾患を表し、該化合物で治療された第1のトランスジェニックウサギを、ヒトリポタンパク質(a)を産生でき、ヒトリポタンパク質(a)に関連する疾患を表すが、該化合物で治療されなかった第2のトランスジェニックウサギと比較することを含む上記方法を提供する。本発明はまた、疾患が、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、虚血、脳卒中、再発狭窄症、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、血栓、及び望ましくない脂質プロフィールからなる群から選択される場合に上記の方法を用いることも提供する。
【0034】
本発明はまた、化合物が、リポタンパク質(a)粒子のアッセンブリィを阻害できるかどうかを決定する方法であって、該化合物で治療され、ヒトリポタンパク質(a)を産生できる第1のトランスジェニックウサギにおけるリポタンパク質(a)産生のレベルを、該化合物で治療されず、ヒトリポタンパク質(a)を産生できる第2のトランスジェニックウサギにおけるリポタンパク質(a)産生のレベルと比較することを含む上記方法を提供する。本発明はまた、化合物が、アンチセンス核酸、及び細胞内結合タンパク質からなる群から選択される場合の本方法を用いることも提供する。
【0035】
本発明は、トランスジェニックウサギ、即ち、リポタンパク質(a)媒介疾患の適当な動物モデルを提供する。ウサギは、高レベルで構成的なリポタンパク質(a)タンパク質を発現し、構成成分の共有結合的結合を容易にし、生理的に適切なレベルのリポタンパク質(a)を産生する。このウサギは、部分的には、血管傷害や再発狭窄症の研究を容易にするウサギのより大きなサイズのために、トランスジェニックマウスに対しかなりの利点を提供する。更に、ウサギは、アポリポタンパク質(a)とリポタンパク質(a)を欠く点でマウスと同様であるが、ウサギのリポタンパク質プロフィールは、主要な血漿タンパク質としてLDLをもつヒトのそれとより密接に似ている。更に、ウサギはまた、コレステロール豊富な食餌を与えられたとき、よく特徴づけされたヒト様アテローム性動脈硬化を発症する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】トランスジェニックウサギにおけるヒトapoBとapo(a)のPCR解析;ファウンダー動物と、apo(a)とapoBトランスジェニック動物の交配から得られた子孫から調製したゲノムDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけた。4つの異なるプライマーセットによる増幅で判定されるように、apo(a)トランスジェニックファウンダー(サンプル2)は、完全なapo(a)ゲノムクローンを有した。プラスミノーゲン5′領域(PMG5′)、apo(a)5′、apo(a)3′、及びapo(a)様遺伝子3′(ゲノムクローンの図の下に示された位置)。ApoBトランスジェニックファウンダー(サンプル1)は、ヒト配列のために特異的な単一PCR反応を用いて検出された。apo(a)/apoB交配からの代表的な子孫(サンプル3と4で示される(それぞれapo(a)のみ、及びapo(a)/apoB))の解析により、トランス遺伝子伝達が確認された。各プライマーセットのために、apo(a)又はapoBゲノムクローンDNAは、陽性対照として含まれていた(サンプル5)。
【図2】apo(a)とapoBトランス遺伝子発現の組織分布;apo(a)(パネルA)とヒトapoB(パネルB)の発現が、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)解析によって、対照(c)ウサギとトランスジェニック(tg)ウサギの示した組織で解析された。ヒトapoB特異性とサンプルの質のための対照として、種特異的プライマー(パネルC)を用いて、ウサギapoB mRNAも増幅された。
【図3】トランスジェニックウサギにおけるapo(a)レベルの時間経過;誕生後、3時点、即ち、3月、6月、9月で、オスとメスのapo(a)トランスジェニックウサギから、血漿サンプルを採った。各サンプル1μLを、還元条件下、SDS−PAGEにかけ、apo(a)に対し作出された抗体を用いて免疫ブロッティングを行なった。
【図4】トランスジェニックウサギ血漿の免疫ブロッティング;ヒトapo(a)トランスジェニックウサギ(1)、ヒトapoB/apo(a)トランスジェニックウサギ(2)、及びヒトapoBトランスジェニックウサギ(3)からの等体積の血漿(1μL)を、SDS−PAGEでサイズ分画した。ゲルは、非還元条件(パネルA)と還元条件(パネルB及びC)で電気泳動された。apo(a)に対し作出された抗体(パネルA及びB)及びヒトapoBに対し作出された抗体(パネルC)を用いて、免疫ブロッティングを行なった。ヒト血漿は、対照として含められた。(前染色された泳動した分子量標準品)対(泳動距離)の曲線を用いて、観察されたタンパク質のサイズを評価した。
【図5】トランスジェニックウサギからのリポタンパク質分画の免疫ブロッティング;ヒトapoB/apo(a)トランスジェニックウサギ(A)又はapo(a)トランスジェニックウサギ(B)からの血漿100μLは、Superose 6カラム上でのクロマトグラフィによってサイズ分画された。偶数番の分画(6乃至40)を、非還元条件下SDS−PAGEにかけ、apo(a)に対し作出された抗体を用いて免疫ブロッティングを行なった。分画のコレステロールアッセイで測定されたリポタンパク質サイズ範囲は、パネルAとBの間のバー中に示される。
【図6】ヒトとウサギapoBのタンパク質配列アラインメント;ヒト配列(配列番号8)、ラット(配列番号9)、ブタ(配列番号10)、ニワトリ(配列番号11)の相同領域と整列させたウサギapoB(残基4315-4364 ;配列番号7)のタンパク質配列。配列同一は、大文字で示す。配列上の番号づけは、ヒトapoB配列に対応する。★は、ヒトapoBへのapo(a)結合の部位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
以下に定義の用語は、本明細書を通し使用され、本発明の範囲と実施の理解に役立つはずである。
【0038】
“ポリペプチド”は、共有結合したアミノ酸残基からなる重合化合物である。アミノ酸は以下の一般構造をもつ。
【0039】
【化1】

【0040】
アミノ酸は、側鎖Rを基に7群に分類される。(1)脂肪族側鎖、(2)水酸基(OH)を有する側鎖、(3)硫黄原子を有する側鎖、(4)酸性基又はアミド基を有する側鎖、(5)塩基性基を有する側鎖、(6)芳香族環を有する側鎖、(7)プロリン、即ち、側鎖がアミノ基と融合したイミノ酸。
【0041】
“タンパク質”は、生細胞で構造的な、又は機能的な役割をもつポリペプチドである。本発明の意味内で、“リポタンパク質(a)複合体”という命名は、アポリポタンパク質(a)とB、及びLp(a)とLp(a)活性をもつ他の全てのタンパク質産物をカバーするように理解される。好ましくは、タンパク質産物という用語は、アポリポタンパク質の少なくとも一つの生物学的性質をもつ変異体、断片もしくはペプチド、及びアポリポタンパク質の天然の変異体を示す。本発明のポリペプチド又はタンパク質は、グリコシル化されうるか、又はグリコシル化されえない。
【0042】
ポリペプチド又はタンパク質の“変異体”は、ポリペプチド又はタンパク質由来で、そのポリペプチド又はタンパク質の少なくとも一つの生物学的性質を保持するアナログ、断片、誘導体、突然変異体である。ポリペプチド又はタンパク質の異なる変異体は、天然に存在しうる。これらの変異体は、タンパク質をコードする構造遺伝子のヌクレオチド配列の差によって特徴づけられるアレル変異でありうるし、又は差別的なスプライシングもしくは翻訳後修飾を含みうる。変異体は、実質的に同一の生物活性をもつが、異なる種から得られた関連タンパク質も含む。
【0043】
当業者は、単一又は複数のアミノ酸置換、欠失、付加、又は置換を有する変異体を作出できる。これらの変異体は、とりわけ以下のものを含みうる。(a)1個以上のアミノ酸が保存的又は非保存的アミノ酸で置換された変異体、(b)1個以上のアミノ酸が、ポリペプチド又はタンパク質に付加された変異体、(c)1個以上のアミノ酸が、置換基を含む変異体、及び(d)ポリペプチド又はタンパク質が、血清アルブミンなどの別のポリペプチドと融合した変異体。遺伝学的(サプレッション、欠失、突然変異など)、化学的、及び酵素的技術を含むこれらの変異体を得る技術は、当業者に公知である。
【0044】
オールターナティブmRNAスプライシング形やオールターナティブ翻訳後修飾形を含む、このようなアレル変異体、アナログ、断片、誘導体、突然変異体、及び修飾により、ポリペプチドの生物学的性質のいずれかをもつポリペプチドの誘導体が得られるならば、それらは、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0045】
“核酸”は、共有結合した、ヌクレオチドという名のサブユニットからなる重合化合物である。核酸は、ポリリボ核酸(RNA)とポリデオキシ核酸(DNA)を含むが、その両方とも一重鎖又は二重鎖でありうる。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び半合成DNAを含む。タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、センス配列といわれる。“apo(a)遺伝子”は、アポリポタンパク質(a)タンパク質をコードする遺伝子である。“apoB遺伝子”は、アポリポタンパク質Bタンパク質をコードする
遺伝子である。好適なapo(a)遺伝子とapoB遺伝子は、ヒトapo(a)タンパク質とヒトapoBタンパク質をコードする。
【0046】
本明細書で使用される“相同的”という用語は、スーパーファミリィからのタンパク質(例えば、免疫グロブリンスーパーファミリィ)や異なる種からの相同タンパク質(例えば、ミオシン軽鎖など)を含む、“共通の進化的起源”を有するタンパク質間の関係を指す(Reeck ら, 1987, Cell 50:667)。このようなタンパク質(及びそれらをコードする
遺伝子)は、高程度の配列類似性によって反映される配列相同性を有する。
【0047】
それ故、“配列類似性”という用語は、共通の進化的起源をもちうる、又はもちえない核酸又はタンパク質のアミノ酸配列の間の同一性又は対応性の程度を指す(Reeckら、上
記参照)。しかし、共通の使用法及び本明細書において、“高度な”のような修飾語で修飾されたとき、“相同的”という用語は、配列類似性を指すが、共通の進化的起源を指さない。
【0048】
特別の実施形態では、ヌクレオチドの少なくとも約50%(好ましくは、少なくとも約75%、最適には、少なくとも約90%又は95%)が、DNA 配列の定められた長さにわたって一致するとき、2つのDNA 配列は“実質的に相同”又は“実質的に類似”である。実質的に相同である配列は、配列データバンクで利用できる標準的なソフトウエアを用いて配列を比較することによって、又は、例えば、特別の系のために定められたストリンジェント条件下、サザンハイブリダイゼーションで、同定されることができる。適当なハイブリダイゼーション条件の決定は、当業界の技術内である。例えば、Maniatisら, 上記;DNA C loning, Vols. I and II,上記;Nucleic Acid Hybridization, 上記;参照。
【0049】
同様に、特定の実施形態では、アミノ酸の約30%超が同一であるとき、又は約60%超が類似であるとき(機能的には同一)、2つのアミノ酸配列は、“実質的に相同”又は“実質的に類似”である。好ましくは、類似又は相同の配列は、例えば、GCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wisconsin)pileup プログラムを用いて、アラインメントによって同定される。
【0050】
“対応する”という用語は、正確な位置が、分子に対し類似性又は相同性が測定されるその分子と同一であろうと、異なろうと、類似又は相同の配列を指すために使用される。核酸又はアミノ酸配列アラインメントは、スペースを含みうる。即ち、“対応する”という用語は、配列類似性を指し、アミノ酸残基又はヌクレオチド塩基の番号付けを指さない。
【0051】
本発明は、アポリポタンパク質のアナログ及び誘導体をコードする遺伝子を含むトランスジェニック動物、即ち、ウサギに関する。アポリポタンパク質のアナログ及び誘導体は、アポリポタンパク質、及び他の種からのその相同体と同一の、又は相同の機能的活性を有する。アポリポタンパク質に関する誘導体及びアナログの製造と使用は、本発明の範囲内にある。特別の実施形態では、誘導体又はアナログは、機能的に活性である。即ち、本発明の完全長で、野生型のアポリポタンパク質と関連する1つ以上の機能的活性を発揮できる。特に、本発明のアポリポタンパク質誘導体は、機能あるヒトLp(a)粒子を形成できる。
【0052】
アポリポタンパク質誘導体は、機能的に等価な分子を提供する置換、付加、又は欠失によって、コーディング核酸配列を変化させることによって、作出されることができる。好ましくは、天然アポリポタンパク質、即ちapo(a)及びapoBに対し増大した機能的活性を有する誘導体が作出される。本明細書で使用する“アポリポタンパク質”は、apo(a)又はapoBを指す。
【0053】
ヌクレオチドをコードする配列の縮重のために、アポリポタンパク質遺伝子と実質的に同一のアミノ酸配列をコードする他のDNA配列も本発明の実施で使用できる。これらは、アレル遺伝子、他の種からの相同な遺伝子、及び配列内で同一のアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって変化する、即ちサイレント変化を生み出すアポリポタンパク質遺伝子の全て又は一部を含むヌクレオチド配列を含むが、これらに限定されない。同様に、本発明のアポリポタンパク質誘導体は、一次アミノ酸配列として、変化した配列を含むアポリポタンパク質のアミノ酸の全部又は一部を含むものを含むが、それらに限定されない。ここでは、変化した配列では、機能的に等価なアミノ酸残基が、配列内の残基の代わって置換され、保存的アミノ酸置換が得られる。例えば、配列内の1個以上のアミノ酸残基が、類似の極性の別のアミノ酸によって置換されうる。類似の極性の別のアミノ酸は、機能的等価物として働き、サイレント変化が起る。配列内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されうる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含む。芳香族環構造を含むアミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンである。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンを含む。陽性荷電(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、及びヒスチジンを含む。陰性荷電(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸やグルタミン酸を含む。このような変化は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は等電点によって測定される見かけの分子量に影響しないと予期される。特に好適な置換は、以下のようである。即ち、−Argの代わりにLys、及びその逆。陽性荷電が維持できる。−Aspの代わりにGlu、及びその逆。陰性荷電が維持できる。−Thrの代わりにSer。遊離の−OHが維持できる。−Asnの代わりにGln。遊離のCONH2が維持できる。
【0054】
特別に好適な性質をもつアミノ酸に置換するために、アミノ酸置換はまた導入されうる。例えば、Cysは、別のCysとのジスルフィドブリッジの可能性ある部位に導入されることができる。Hisは、特別な“触媒”部位として導入されることができる(即ち、Hisは、酸又は塩基として作用でき、生化学的触媒の最も普通のアミノ酸である)。Proは、その特別の平面構造の故に導入されることができる。Proは、タンパク質構造にβ−ターンを誘導する。
【0055】
本発明のアポリポタンパク質誘導体とアナログをコードする遺伝子は、当業界公知の種々の方法で製造できる。それらを製造できる操作は、遺伝子又はタンパク質レベルで行ないうる。例えば、クローニングされたアポリポタンパク質遺伝子配列は、当業界公知の多数の戦略のいずれかによって修飾できる(Sambrookら,1989, 上記)。配列は、制限エンドヌクレアーゼによって適当な部位で切断されえ、続いて、所望ならば、更なる酵素的修飾を行ない、単離し、インビトロで連結されることができる。アポリポタンパク質の誘導体又はアナログをコードする遺伝子の製造において、所望の活性がコードされている遺伝子領域で、翻訳終始信号によって妨害されず、天然のアポリポタンパク質遺伝子と同じ翻訳読み枠内に、修飾遺伝子が留まるように、注意を払うべきである。
【0056】
更に、アポリポタンパク質をコードする核酸配列は、インビトロ又はインビボで変異誘発され、翻訳配列、開始配列、及び/又は終止配列を作出/破壊でき、又はコード領域での変異を作出でき、及び/又は新規制限エンドヌクレアーゼ部位を作出でき、又は既に存在している制限エンドヌクレアーゼ部位を破壊でき、インビトロ修飾を更に容易にできる。好ましくは、このような変異は、変異アポリポタンパク質遺伝子産物の機能的活性を増大させる。当業界公知の変異誘発の技術を使用できる。該技術は、インビトロ部位特異的変異誘発(Hutchinson,C. ら,1978, J.Biol.Chem. 253:6551 ;Zoller and Smith, 1984, DNA 3:479-488 ;Oliphantら,1986, Gene 44:1 77 ;Hutchinson,C. ら,1986, Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:710)、TABリンカー(Pharmacia )の使用などがある
が、これらに限定されない。PCR技術は、部位特異的変異誘発のために好適である(Higuchi, 1989, “Using PCR to Engineer DNA ”in PCR Technology :Principles and Applications for DNA Amplicatoin, H.Erlich, ed., Stockton Press, Chapter 6,pp・61-70)。
【0057】
一般的にいえば、本発明の核酸は、1個以上の調節領域と連結される。適当な調節領域の選別は、当業者のレベル内のルーチンな事項である。“調節領域”は、第2の核酸配列の発現を制御する核酸配列を意味する。調節領域は、特別の核酸(相同領域)を発現するのに天然で責を負う配列を含みうるし、又は異なる起源の配列(異なるタンパク質又は合成タンパク質でさえ、発現するのに責を負う)を含みうる。特に、配列は、特異的方法又は非特異的方法で、及び誘導様式又は非誘導様式で、遺伝子の転写を刺激又は抑制する真核細胞の遺伝子又はウイルス遺伝子の配列あるいはそれらから由来する配列でありうる。調節領域は、複製起点、RNAスプライス部位、エンハンサー、転写終止配列、ポリペプチドを標的細胞の分泌パスウエイに向わせるシグナル配列、及びプロモーターを含む。
【0058】
調節領域は、apo(a)とapoB発現が望まれる内皮細胞、肝、精巣、脳又は他の細胞型における機能的転写のためのプロモータ領域、及び問題の遺伝子の3′に位置し、転写の終止のための信号及びポリアデニル化部位を指定する領域を含みうる。全てのこれらの要素は、発現カセットを構成する。
【0059】
本発明で使用できる“プロモータ”は、構成型プロモータと制御される(誘導型)の両方を含む。プロモータは、天然で、核酸の発現の役割を荷いうる。それはまた、ヘテロローガスな源からでありうる。特に、それは、真核細胞遺伝子又はウイルス遺伝子のプロモータ配列でありうる。例えば、それは、感染するのが望まれる細胞のゲノム由来のプロモータ配列でありうる。同様に、それは、使用されるアデノウイルスを含むウイルスのゲノム由来のプロモータ配列でありうる。この点で、例えば、E1A、MLP、CMV、RSV遺伝子などのプロモータを挙げることができる。好ましく使用される非ウイルスプロモータ配列は、ApoAIプロモータ、又はApoEの肝エンハンサ、又はapoCIIIの腸エンハンサである。当然、これらの発現配列は、活性化配列、調節配列などを付加することによって、更に修飾できる。ゲノムDNAはまた、P1ベクターなどの大容量発現ベクター、YAC、コスミッド又はプラスミドベクターに含ませることができる。
【0060】
更に、プロモータは、活性化配列又は調節配列又は組織特異的もしくは主要発現を可能とする配列(エノラーゼプロモータ及びGFAPプロモータなど)の付加によって修飾されることができる。更に、核酸がプロモータ配列を含まないとき、それは、このような配列の下流のウイルスゲノム中へのように、挿入されることができる。
【0061】
本発明の実施に有用な幾つかのプロモータは、遍在プロモータ(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、中間フィラメントプロモータ(例えば、デスミン、ニューロフィラメント、ケラチン、GFAP)、治療遺伝子プロモータ(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異的プロモータ(例えば、平滑筋細胞のアクチンプロモータ)、分裂細胞で優先的に活性化されるプロモータ、刺激物質に応答するプロモータ(例えば、ステロイドホルモンレセプタ、レチノイン酸レセプタ)、テトラサイクリンで調節される転写モジュレータ、サイトメガロウイルス中間−初期プロモータ、レトロウイルスLTRプロモータ、メタロチオネインプロモータ、SV−40プロモータ、E1aプロモータ、及びMLPプロモータである。テトラサイクリンで調節される転写モジュレータとCMVプロモータは、WO96/01313、米国特許第5,168,062号及び第5,385,839号に記載されている。それらの内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。
【0062】
“ヘテロローガス源”からの調節領域は、天然では、発現される核酸と組み合わされていない調節領域である。ヘテロローガス調節領域には、異なる種からの調節領域、異なる遺伝子からの調節領域、ハイブリッド調節配列、及び天然では存在しない調節配列が含まれるが、それらは、当業者によって設計される。
【0063】
“ベクター”は、本発明の核酸の宿主細胞への移転のための手段である。“ベクター”という用語は、核酸を細胞にインビトロ、エクスビボ、又はインビトロで導入するためのウイルス手段及び非ウイルス手段の両方を含む。非ウイルスベクターは、プラスミド、ファージミド、BAC、PAC、YAC、P1、リポソーム、電気荷電脂質(サイトフェクチン)、DNA−タンパク質複合体、及びバイオポリマーを含む。本発明の核酸を含むベクターは、プラスミド、ファージミド、P1、BAC、PAC、YAC又はコスミドベクターを含む。本発明に特に関心のあるベクターは、大きなDNA配列を収容できるものを含むが(即ち、ファージミド、プラスミド、P1、BAC、PAC、YAC、又はコスミドベクター)、特に、本発明に関するゲノムDNAの場合には、そうである。本発明の核酸に加えて、ベクターはまた、1個以上の調節領域、及び/又は核酸移転結果(どの組織への移転、発現の持続など)を選別し、測定し、モニターするのに有用な選択可能なマーカーを含みうる。
【0064】
“脂質プロフィール”は、ヒト又は他の動物の体内でのコレステロール、トリグリセライド、リポタンパク質コレステロール、及び他の脂質の濃度のセットを意味する。
“望ましくない脂質プロフィール”は、コレステロール、トリグリセライド、又はリポタンパク質コレステロールの濃度が、年齢と性で調整したレファレンス範囲の外にある状態である。一般的には、総コレステロールの濃度200mg/dL超、血漿トリグリセライドの濃度200mg/dL超、LDLコレステロールの濃度130mg/dL超、HDLコレステロールの濃度39mg/dL未満、又は総コレステロールとHDLコレステロールの比4.0超は、望ましくない脂質プロフィールと考えられている。望ましくない脂質プロフィールは、高脂血症、糖尿病、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、及び冠動脈疾患の他の型を含む種々の生理的条件と関連する。
【0065】
アンチセンス核酸を用いる遺伝子発現のダウンレギュレーションは、翻訳レベル又は転写レベルで達成できる。好ましくは、本発明のアンチセンス核酸は、アポリポタンパク質(a)もしくはBをコードする核酸又は対応するメッセンジャーRNAと特異的にハイブリダイズできる核酸断片である。これらのアンチセンス核酸は、合成オリゴヌクレオチドでありうる。それらの安定性と選択性を改良するために、場合によっては修飾された合成オリゴヌクレオチドでありうる。それらはまた、DNA配列の細胞における発現が、アポリポタンパク質(a)又はBをコードするmRNAの全部又は一部に相補的なRNAを産生するそのDNA配列でもありうる。アンチセンス核酸は、欧州特許第140308号に記載のように、反対方向で、アポリポタンパク質(a)又はBをコードする核酸の全部又は一部の発現によって製造されることができる。アンチセンス核酸が、アポリポタンパク質(a)又はBの発現をダウンレギュレーションすることができる、又はブロックすることができる限り、アンチセンス配列のいずれの長さも本発明の実施のために適切である。好ましくは、アンチセンス配列は、長さで最低20ヌクレオチドである。アンチセンス核酸、アンチセンスRNAをコードするDNAの製造と使用、及びオリゴと遺伝子的なアンチセンスの使用は、WO92/15680に開示されている。その内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。
【0066】
“医薬として許容可能な担体”は、投与方法のために医薬として許容可能であり、滅菌してあり、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて処方された水性又は油性の懸濁液でありうる希釈剤及び充填剤を含む。特定の医薬として許容可能な担体及び活性化合物と
担体の比は、組成物の溶解性と化学的性質、投与の特定の型、及び標準的医薬実務によって決定される。
【0067】
“生理的レベル”という用語は、ヒトのリポタンパク質プロフィールに非常に似ているリポタンパク質プロフィールを有するトランスジェニック動物が得られる、タンパク質発現、即ちLp(a)産生のレベルを指すために、本明細書では使用される。特に、トランスジェニック動物が、コレステロール豊富な食餌を与えられたとき、良く特徴づけされたヒト様アテローム性動脈硬化病巣を発症できる。特別の実施形態では、トランスジェニック動物におけるLp(a)のレベルは、ヒトで見出された範囲内にある。
【0068】
“トランスジェニック動物”及び“動物”は、ヒトを除いて全ての脊椎動物を含むように、本明細書では使用される。それはまた、胚段階及び胎仔段階を含む発生の全ての段階での個々の動物を含む。ミクロインジェクション又は組換えウイルスによる感染のように、細胞下レベルで計画的な遺伝子操作によって、直接的又は間接的に、受取った遺伝子情報をもつ1個以上の細胞を含む動物である。この導入されたDNA分子は染色体に組込まれうるし、又は染色体外で複製するDNAでありうる。“生殖細胞ライントランスジェニック動物”は、遺伝子情報が生殖ライン細胞に導入され、子孫へその情報を伝達する能力をもつトランスジェニック動物を指す。実際にこのような子孫が、その情報の一部又は全部をもつならば、その子孫はまた、トランスジェニック動物である。
【0069】
発明の詳細な説明
上記のように、Lp(a)媒介疾患の適切な動物モデルの必要性が当業界にある。特に、ヒトリポタンパク質(a)のインビボ解析のための実験モデルを提供することは重要である。本出願人は、リポタンパク質(a)を提供できるトランスジェニックウサギを、当業界では初めて得た。
【0070】
トランスジェニックウサギは、アポリポタンパク質の研究への益々増大して使用されるアプローチを示し、リポタンパク質代謝とアテローム発生に対するインパクトを示す(Fan ら,Arterioscler Thromb Vasc Biol(1995) 15, 1889-1899 ;Duvergerら,Arterioscler Thro mb Vasc Biol(1996) 16, 1424-1429 )。マウスと比較して、この動物の利点は
、一部には、比較的大きなサイズに関連し、血管傷害と再発狭窄症の容易な研究を可能とする。更に、ウサギは、apo(a)とLp(a)を欠く点でマウスと同様であるが、ウサギのリポタンパク質プロフィールは、主要な血漿リポタンパク質としてLDLをもつ点で、ヒトのそれにより密接に似ている(Chapman,M.J., in Methods in Enzymology, vol.128 :Plasama Lipoprote ins, Part A, Preparation, Structure, and Molecular Biology, Segrest,J.P., and Albers,J.J., Eds. (Academic Press, Inc., New York, 1986), vol.128, pp.70-143 )。ウサギはまた、コレステロール豊富な食餌を
与えられたとき、良く特徴づけられたヒト様アテローム性動脈硬化病巣を発症する。
【0071】
本発明の範囲内で、ウサギは、適切な動物モデルであった。ウサギの代謝と、リポタンパク質に関連するこの動物の疾患の広範な知識が存在する。ウサギは、“LDL哺乳動物”として分類される動物であり、即ち、ラットやマウスとは反対に、ヒトにおけるように、LDLは、血漿コレステロールの主要な輸送体である。ラットやマウスは、“HDL哺乳動物”として分類される動物である。更に、多数の遺伝的変異体が、ウサギ系列内で、リポタンパク質に存在する。例えば、LDLレセプターが不足しているWHHLウサギ(Watanabe 遺伝性高脂血症ウサギ)又はLDLを過剰生産する“St Thomas Hosp ital”
ウサギ(Rosenfeld ら, 1990, Arteriosclerosis 10, 680-687;Sedon ら, 1987, Arteriosclerosis 7, 113-124 )。
【0072】
本発明は、apo(a)又はapoBのためのヒトゲノムトランス遺伝子を両方含むウ
サギの形態で、Lp(a)の生物学的性質を研究するための新規で、比較的大きい動物モデルを提供する。該ウサギは、両方のヒトトランス遺伝子の効率的な組織特異的発現と、Lp(a)粒子のアッセンブリィを示す。更に、apo(a)は、インビボでウサギapoBと共有結合的に相互作用し、トランスジェニックウサギモデルは、この新規な相互作用を特徴づける手段であることを示す。本出願人は、アポリポタンパク質(a)タンパク質とアポリポタンパク質Bタンパク質をコードする外来ゲノムDNA配列が挿入されたゲノムをもつトランスジェニックウサギを作出した。アポリポタンパク質(a)タンパク質とアポリポタンパク質Bタンパク質は、リポタンパク質(a)複合体を形成する。
【0073】
Lp(a)アッセンブリィとapo(a)発現への独特の洞察を与えることに加えて、本発明によって与えられたLp(a)トランスジェニックウサギの幾つかの特徴は、Lp(a)を研究するために現在利用できる動物モデルに対し、改良を示す。これらの動物は、ヒトのリポタンパク質プロフィールに非常に似たリポタンパク質プロフィールをもち、コレステロール豊富な食餌を与えられたとき、良く特徴づけられたヒト様アテローム性動脈硬化病巣を発症する。また、比較的に大きなサイズのために、該ウサギを血管傷害や再発狭窄症研究に使用して成功した。従って、これらのトランスジェニックウサギは、Lp(a)レベルに影響を与える因子と、アテローム性動脈硬化と血管疾患の進行に対するLp(a)の影響を研究するための価値ある手段を提供する。
【0074】
いずれのウサギを用いても、本発明のトランスジェニック動物を作出できる。好ましくは、ウサギは、ホモジーニアスな実験室系であり、それらは、Charles
River 又はJackson Laboratories(Bar Harbor, Maine)などの動物源から得ることができる。特定の実施形態では(下記)、ウサギはニュージーランドホワイトウサギである。あるいは、本発明のWatan abe 高脂血症トランスジェニックウ
サギを作出できる。
【0075】
好適な実施形態では、本発明は、トランスジェニックウサギの作出方法であって、ウサギ胚に、リポタンパク質(a)複合体を形成するapo(a)タンパク質又はapoBタンパク質をコードする外来ゲノムDNA配列を注入し、その胚をレシピエントウサギに移し、誕生後、新生仔ウサギのゲノム中に上記ゲノムDNA配列の存在を検討する上記方法を提供する。次いで、apo(a)トランスジェニックウサギとapoBトランスジェニックウサギを交配して、Lp(a)を発現するapo(a)−apoBトランスジェニックウサギを作出する。
【0076】
トランスジェニックウサギを作出する方法は、下記の実施例2により詳細に記載されている。このような方法の実行は、ミクロインジェクションの技術、及び胚の取出しや移殖、並びに動物飼育に精通している当業者には何の困難もない。
【0077】
本発明は特に、ヒトapo(a)とヒトapoBの両方のトランス遺伝子を発現するトランスジェニックウサギを作出するために、ヒトapo(a)遺伝子を有する270kbの酵母人工染色体(YAC)クローンと、ヒトapoB遺伝子を有する90kbのP1ファージミドクローンの使用に関する。本発明のトランスジェニックウサギは、肝臓で優勢に局在化されている両方のトランス遺伝子の組織特異的発現を示す。apo(a)トランスジェニックマウスでの観察とは対照的に、本発明では、ウサギの性的成熟中、安定であるapo(a)血漿レベルが観察される。更に、apo(a)は、内因性ウサギapoBと共有結合を形成できる。ヒトapoBとの結合よりも効率は低いけれども。このLp(a)トランスジェニックウサギモデルの発明は、Lp(a)アッセンブリィのための構造的な必要性と、apo(a)発現の調節への新規な洞察を提供する。更に、これらのトランスジェニックウサギは、Lp(a)のインビボ解析と、このリポタンパク質の高レベルと関連したアテローム性動脈硬化リスクを減少させる治療的戦略の開発のための新規な実
験モデルを示す。
【0078】
従って、本発明は、apo(a)遺伝子とapoB遺伝子の両方、又はそれらの変異体を有するトランスジェニックウサギを提供する。該ウサギは、これらの遺伝子を発現でき、リポタンパク質(a)が形成される。
【0079】
トランスジェニックウサギに存在する遺伝情報は、レシピエントが属する動物の種には外来でありうるし(即ち、外因性)、特定の個々のレシピエントにのみ外来でありうるし(即ち、外因性)、又はレシピエントによって既に所有された遺伝情報でありうる。最後の場合に、導入された遺伝子は、天然の内因性遺伝子と比較して異なるように発現されうる。
【0080】
遺伝子は、ゲノム源から遺伝子を単離することによって、単離されたRNA鋳型からcDNAを調製することによって、合成によって、又はそれらの組合せによって得ることができる。本発明の好適な実施形態では、ヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子は、ゲノムDNAからクローニングされ、トランス遺伝子発現は、適当な方法で制御され、トランスジェニック動物の染色体DNAへの組み込みの部位とは独立である。
【0081】
本発明のトランスジェニックウサギは、ゲノムDNA配列を、その細胞の全て、又はある割合の細胞にのみ組込むことができる。後者の場合には、モザイクと命名される。一般的に、ゲノムDNA配列は、細胞全ての中に組込まれる。本発明の挿入されたゲノムDNA配列は、リポタンパク質(a)複合体形成及び/又は代謝に含まれるタンパク質の全て又は活性部分をコードする。これらのゲノムDNA配列はまた、必要があれば、クラスター形態で組織化されている幾つかの遺伝子を含みうる。
【0082】
より詳細に引用されることができる、本発明の意味内の挿入されたDNA配列は、アポリポタンパク質(a)、B、又はこれらのアポリポタンパク質の変異体もしくは誘導体の全て又は活性部分をコードし、Lp(a)複合体を形成する遺伝子である。
【0083】
発現されるように、遺伝子は、調節領域と機能可能に連結されるべきである。プロモータなどの調節領域を用いて、遺伝子の発現を増加させ、減少させ、調節し、又は遺伝子の発現を、ある組織もしくは発生のある段階に指定することができる。プロモータは天然に存在するプロモータである必要はない。本発明の“トランスジェニック非ヒト動物”は、非ヒト動物の生殖細胞ライン中に“トランス遺伝子”を導入することによって作出される。細胞中にDNAの導入を可能とする方法は一般的に利用でき、当業界周知である。トランス遺伝子を導入する異なる方法が利用できる。一般的に、接合子は、ミクロインジェクションのための好適な標的である。遺伝子導入のための標的として接合子の使用は、主要な利点を有する。大部分の場合に、注入されたDNAは、第1の切断前に、宿主遺伝子に組込まれる(Brinsterら,(1985) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 82, 4438-4442)。それ故、トランスジェニック非ヒト動物のほとんど全ての細胞は、組込まれたトランス遺伝子をもつであろう。一般的に、これによりまた、ファウンダーの子孫へのトランス遺伝子の効率的な伝達が起る。というのは、生殖細胞の50%がトランス遺伝子をもつであろうからである。接合子のミクロインジェクションは、本発明を実施することにおいてトランス遺伝子を組込むための好適な方法である。
【0084】
レトロウイルス感染はまた、非ヒト動物にトランス遺伝子を導入するために使用されることができる。発生している非ヒト胚は、胚盤胞段階までインビトロで培養されることができる。この時間の間に、卵割球は、レトロウイルス感染の標的でありうる(Jaenich,R.
(1976) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 73, 1260-1264 )。卵割球の効率的な感染は、透明帯を除去するために酵素的処理によって得られる(Hogan ら, (1986) in Manipulating the
Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)。トランス遺伝子を導入するために使用されるウイルスベクターシステムは典型的には、トランス遺伝子をもつ複製欠陥のレトロウイルスである(Jahnerら, (1985) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 82,6927-6931 ;Van der Putte nら, (1985)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 82,6148-6152)。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上で卵割球を培養するこ
とによって容易に、効率的に行なえる(Van der Puttenら, (1985)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 82,6148-6152;Stewart ら,(1987) EMBO J. 6:383-388)。あるいは、感染はより後の段階で行なえる。ウイルス又はウイルス産生細胞は、分割腔中に注入できる(Jahnerら,(1982 ) Nature 298:623-628)。ファウン
ダー動物の大部分は、トランス遺伝子に関しモザイクであろう。というのは、組み込みは、トランスジェニック非ヒト動物を形成した細胞のサブセットのみで起るからである。更に、ファウンダー動物は、ゲノムの種々の位置で、トランス遺伝子のレトロウイルス挿入を有しうる。これらは一般的には、子孫では分離する。更に、生殖細胞ライン中にトランス遺伝子を導入することも可能である。もっとも、それは、妊娠中期の胚の子宮内レトロウイルス感染によって低い効率である(Jahnerら,(198 2) Nature 298: 623-628)。
【0085】
トランス遺伝子導入のための第3の型の標的細胞は、胚性幹細胞(ES)である。ES細胞は、インビトロで培養された移殖前胚から得られる(Evans,M.J.ら, (1981)Nature 292, 154-156 ;Bradley,A.ら, (1984) Nature 309, 255-258;Gossler ら,(1986) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83,9065-9060;Robertson ら,(1986) Nature 322,445-448 )。トランス遺伝子は、DNAトランスフェクション又はレトロウイルス媒介形質導入によって、ES細胞に効率的に導入されることができる。その後、得られた形質転換ES細胞は、非ヒト動物からの胚盤胞と一緒にできる。ES細胞は、胚に導入され、得られるキメラ動物の生殖細胞ラインに貢献する(総説として、Jaenisch,R. (1988) Science 240, 1468-1474 )。
【0086】
導入されたDNAの存在を評価し、その発現を評価する方法は、容易に利用でき、当業界周知である。このような方法は、外来DNAを検出するために、DNA(サザン)ハイブリダイゼーション、DNA、RNA、及びタンパク質を検出するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットを含むが、これらに限定されない。
【0087】
生殖細胞ラインDNAを含むゲノムDNAにヒトアポリポタンパク質(a)をコードする配列をもつウサギは、生殖細胞ラインDNAを含むゲノムDNAにヒトアポリポタンパク質Bをもつウサギと交配される。特定の実施形態では、WO95/25793及び認可された米国特許出願第08/704,582号、現在では米国特許第5,792,902号(1998年8 月11日発行)(その明細書の全部が引用により本明細書に含まれるものとする)に記載されているように、apoBを発現するトランスジェニックウサギは、apo(a)の生理的レベルを発現するトランスジェニックウサギと交配することができる。次いで、得られた子孫は、リポタンパク質(a)が産生されるように、アポリポタンパク質(a)とアポリポタンパク質Bを発現するウサギを同定するためにスクリーニングされる。
【0088】
本明細書で使用する“トランス遺伝子”は、以下の実施例の方法によるなどのヒトの介入によって非ヒト動物の生殖細胞ライン中に導入されたDNA配列である。
核酸
本発明のトランスジェニック動物は、apo(a)とapoB又はそれらの変異体をコードする遺伝子を含む核酸配列を有し、これらの遺伝子を発現でき、リポタンパク質(a)複合体を形成できる。核酸は、天然起源又は人工起源でありうる。核酸は、ゲノムDNA(gDNA)、相補DNA(cDNA)、ハイブリッド配列、又は合成もしくは半合成
配列でありうる。核酸は、ヒト、動物、植物、細菌、又はウイルスなどの起源でありうる。核酸は、当業者に公知の技術によって得られうる。特に、ライブラリィをスクリーニングすることにより、化学合成により、又はライブラリィをスクリーニングすることにより得られた配列の化学的もしくは酵素的修飾を含む混合方法により得られうる。
【0089】
apo(a)遺伝子は長さが1863bpであり、クローニングされ、配列決定された(Sharpeら,Nucleic Acids Res. (1984)12(9):3917 )。更に、ヒトapo(a)遺伝子を有するYACクローン(CEPHライブラリィでクローン366H2)が以前に記載された(Frazer,K.A., Narla,G., Zhang,J.L., and Rubin,E.M., Nat Gen (1995) 9, 424-431)。ヒトapo(a)遺伝子を単離するために、パルスフィールド電気泳動によって、酵母染色体からYACは分離されることができる。次いで、YACを含むバンドが、SeaPlaque GTG アガロース(FMC, Rockland,MD)から切り出され、ベータ−アガロース(NEB,
Beverly, MA)で処理され、0.1M NaCl、10mM Tris、0.1mM EDTAに対し透析された(Couto,L.B., Spangler,E.A. and Rubin,E.M., Nuc Acid Res (1989) 17(19), 8010)。
【0090】
ヒトapoB遺伝子を含む90kb P1ファージミドが以前に記載された(Callowら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA (1994) 91, 2130-2136)。あるいは、それ自身のプロモータの制御下にヒトapo(a)又はapoBをコードする核酸配列を含むDNA断片は、ヒトゲノム又はcDNA発現ライブラリィをスクリーニングすることにより、得ることができる。これを行なうために、ヒトアポリポタンパク質(a)又はapoBに相補的であったDNAプローブによるハイブリダイゼーションによってスクリーニングされる。次いで、このスクリーニングで単離されたapo(a)又はapoB DNA含有クローンは、AI/CII/AIVゲノムコンプレックスのための報告された制限地図と比較して(S.K.Karathanasisら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA(1983)80, 6147-6151;S.K.Karathanasisら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA(1985) 82, 6374-6378 )、又はそれぞれの報告された配列と比較して(Sharpeら, Nucleic Acids Res. (1984) 12(9):3917;Frazer,K.A., Narla,G.,
Zhang,J.L. and Rubin,E.M., Nat Gen (1995) 9,424-431;Callowら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA(1994) 91, 2130-2136 )解析される。
【0091】
調節領域
一般的に、apo(a)とapoB又はそれらの変異体をコードする遺伝子は、1つ以上の調節領域に連結される。適切な調節領域の選別は、当業者のレベル内であるルーチンな仕事である。
【0092】
調節領域は、機能ある転写のためのプロモータ領域と、問題の遺伝子の3′に位置する領域を含みうる。3′に位置する領域は、転写の終止のための信号とポリアデニル化部位を定める。全てのこれらの要素は、発現カセットを構成する。
【0093】
本発明で使用されることができるプロモータは、構成型プロモータと調節された(誘導型)プロモータの両方を含む。勿論、プロモータは、核酸の発現の役割を荷いうる。プロモータはまた、ヘテロローガスな源からでありうるし、真核細胞の遺伝子又はウイルス遺伝子のプロモータ配列でありうる。例えば、プロモータは、感染するのが望ましい細胞のゲノム由来のプロモータ配列でありうる。同様に、プロモータは、アデノウイルスを含むウイルスのゲノム由来のプロモータ配列でありうる。この点に関し、例えば、E1A、MLP、HCMV及びRSV遺伝子などのプロモータを挙げることができる。更に、プロモータは、活性化配列又は調節配列、又は組織特異的もしくは優勢な発現を可能とする配列の添加によって修飾されることができる。組織特異的プロモータは、種々の疾患のモデリングのための手段を提供する。核酸がプロモータ配列を含まないとき、プロモータ配列は挿入されることができる。
【0094】
本発明の実施に有用な更なるプロモータは、遍在プロモータであるHPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン、中間フィラメント、デスミン、ニューロフィラメント、ケラチン、及びGFAPプロモータ;分割細胞で優先的に活性化される治療遺伝子プロモータMDR、CFTR、及びVIII因子プロモータ;ステロイドホルモンレセプターやレチノイン酸レセプタープロモータなどの刺激物質に応答するプロモータ;テトラサイクリンで調節される転写モジュレータ;サイトメガロウイルス中間−初期;レトロウイルスLTR、メタロチオネイン;SV40、E1a及びMLPプロモータである。テトラサイクリンで調節される転写モジュレータとCMVプロモータは、WO96/01313、米国特許第5,168,062号と第5,385,839号に記載されている。それらの内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。
【0095】
本発明のある実施形態では、ヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子又はそれらの変異体は、強力なプロモータ、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に機能可能に連結され、トランス遺伝子発現の高レベルが達成される。このような構築物を含むトランスジェニック動物は、ヒトリポタンパク質(a)発現のモデルを提供し、それ故、アテローム性動脈硬化、脳卒中、虚血、再発狭窄症、心臓血管系疾患、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、望ましくない脂質プロフィール、及び血栓のモデルを提供するだろう。
【0096】
本発明の別の実施形態では、ヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子は、組織特異的プロモータに機能可能に連結され、特定の細胞にトランス遺伝子の過剰発現を局在化する。好適な組織特異的プロモータは、バスキュレーション(vasculation )細胞と内皮細胞を含む。
【0097】
ヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子と融合されたグルココルチコイド又はエステロゲンレセプターからの突然変異したリガンド結合ドメインをコードする配列に機能可能に連結された該遺伝子を過剰発現させることも可能である。この実施形態では、該遺伝子の発現は、グルココルチコイド又はタモキシフェンによって調節される。
【0098】
ベクター
上記のように、“ベクター”は、宿主細胞に核酸を導入する手段である。好適なベクターは、プラスミド及びウイルスベクター、例えばレトロウイルスである。
【0099】
ウイルスベクターを用いて、本発明のトランスジェニック動物を作出できる。好ましくは、ウイルスベクターは複製欠陥である。即ち、ウイルスベクターは、標的細胞で自律的に複製できない。一般的に、本発明の範囲内で使用される複製欠陥ウイルスベクターのゲノムは、感染細胞でウイルスの複製に必要な少なくとも一つの領域を欠く。これらの領域は、当業者に公知の技術によって、除去されることができ(全体又は部分)、又は機能がないようにされることができる。これらの技術は、全部の除去、置換(他の配列によって、特に挿入された核酸によって)、部分的欠失、又は必須(複製のために)領域への1個以上の塩基の添加を含む。このような技術は、遺伝子操作の技術を用いて、又は変異誘発剤による処理によって、インビトロ(単離DNAに対して)又はin situ で行なうことができる。
【0100】
好ましくは、複製欠陥ウイルスは、ウイルス粒子をカプシドで包むのに必要なゲノムの配列を保持する。
レトロウイルスは、分割細胞に感染するインテグレーティングウイルスである。レトロウイルスゲノムは、2個のLTR、カプシド化配列、及び3つのコーディング領域(gag、pol、env)を含む。組換えレトロウイルスベクターの構築は、記載されている
。特に、欧州特許第453242号、欧州特許178220号、Bernstein ら,Genet. Eng. (1985) 7:235;McCormick, BioTechnology (1985) 3:689 などを参照。組換えレトロウイルスベクターにおいて、一般的に、gag、pol、env遺伝子は、全体又は部分が欠失され、問題の異種の核酸配列で置換えられる。これらのベクターは、異なる型のレトロウイルス、例えば、HIV、MoMuLV(“Moloney murine leukemia virus ”)、MSV (“murine Mol oney sarcoma virus”)、HaSV(“Harvey sarcoma virus”
)、SNN(“splenn necrosis virus ”)、RSV(“Rous sarcoma virus”)及びフレンドウイルスから構築されることができる。欠陥レトロウイルスベクターはWO95/02697に開示されている。
【0101】
一般的に、核酸配列を含む組換えレトロウイルスを構築するために、LTR、カプシド化配列、コーディング配列を含むプラスミドが構築される。この構築物を用いて、パッキング細胞ラインにトランスフェクトする。パッキング細胞ラインは、該プラスミド上で欠陥のレトロウイルス機能をトランスで供給できる。一般的に、パッキング細胞ラインは、gag、pol、env遺伝子を発現できる。このようなパッキング細胞ラインは、従来技術で記載されている。特に、細胞ラインPA317(米国特許第4,861,719号)、PsiCRIP細胞ライン(WO90/02806)、GP+EnvAm−12細胞ライン(WO89/07150)が記載されている。更に、組換えレトロウイルスベクターは、転写活性を抑制するためにLTR内に修飾を含むことができ、gag遺伝子の一部を含みうる広範なカプシド化配列を含むことができる(Benderら,J.Virol. (1987) 61:1639 )。組換えレトロウイルスは、当業者公知の標準的な技術によって精製される。
【0102】
薬剤スクリーニングアッセイ
ヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子又はそれらの変異体を過剰発現するトランスジェニック動物は、薬剤スクリーニングアッセイに有用である。これらのアッセイは、アテローム性動脈硬化、脳卒中、虚血、再発狭窄症、心臓血管系疾患、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、望ましくない脂質プロフィール、及び血栓などの疾患の治療に有効な化合物を同定するのに有用である。
【0103】
本発明は、細胞でapo(a)、apoB、及びリポタンパク質(a)の機能を調節する化合物の能力を決定する方法を提供する。好適な方法は、発現され、ヒトリポタンパク質(a)複合体を形成するヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子又はそれらの変異体を有するトランスジェニック非ヒト動物に化合物を投与し、対照動物に対しトランスジェニック動物における化合物の可能性のある治療効果を比較することを含む。Lp(a)発現と関連し、Lp(a)発現によって誘導される、及び/又は悪化する疾患、例えば、アテローム性動脈硬化、再発狭窄症、脳卒中、虚血、再発狭窄症、心臓血管系疾患、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、望ましくない脂質プロフィール、及び血栓などを予防し、及び/又は治療する可能性のある治療化合物が決定できる。
【0104】
本発明はまた、治療剤/化合物の活性を検出するためのクレームしたトランスジェニックウサギの使用、又は、Lp(a)発現に関連した疾患を予防及び/又は治療することの観点をもった治療方法、並びにこのウサギを用いて新規化合物を検出する方法、及び特徴づけられる化合物に関する。このトランスジェニックウサギは動物モデルシステムは、Lp(a)発現及び/又は代謝と関連する疾患の疾患の治療及び/又は予防のための特定の治療剤/化合物を検出するのに特に有利である。特に、アテローム性動脈硬化、心臓血管系疾患、冠動脈疾患、脳卒中、虚血、末梢閉塞性動脈疾患、再発狭窄症、血栓、心筋梗塞、狭心症、突然死、望ましくない脂質プロフィール、心臓代償不全などの心臓血管系疾患、又は脳血管系疾患の分野で特にそうである。
【0105】
本発明はまた、アテローム性動脈硬化、再発狭窄症、脳卒中、虚血、再発狭窄症、心臓
血管系疾患、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、望ましくない脂質プロフィール、及び血栓などのLp(a)発現と関連し、Lp(a)発現によって誘導され、及び/又は悪化する疾患の治療のために有効な化合物を同定する方法を提供する。このような方法は、ヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子又はそれらの変異体を有するトランスジェニック非ヒト動物(トランス遺伝子は発現され、ヒトリポタンパク質(a)複合体を形成する)に化合物を投与し、対照トランスジェニック動物に対しトランスジェニック動物において化合物の可能性ある治療効果を比較することを含む。
【0106】
本発明はまた、ヒトapo(a)遺伝子とヒトapoB遺伝子又はそれらの変異体を有するトランスジェニック非ヒト動物(トランス遺伝子は発現され、ヒトリポタンパク質(a)複合体を形成する)に化合物を投与し、対照トランスジェニック動物に対し、治療されたトランスジェニック動物においてヒトLp(a)レベル及び/又は生物活性をモニターすることによって、細胞内でヒトLp(a)アッセンブリィを調節できる化合物を同定する方法を提供する。本発明の好適な面では、細胞は、Lp(a)発現と関連し、Lp(a)発現によって誘導され、及び/又は悪化する疾患を患う動物の細胞であり、方法は、該疾患を予防し、及び/又は治療するために、Lp(a)機能を調節できる化合物を動物の細胞に投与することを含む。このような疾患は、アテローム性動脈硬化、再発狭窄症、脳卒中、虚血、再発狭窄症、心臓血管系疾患、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、望ましくない脂質プロフィール、及び血栓などを含む。
【0107】
本発明の薬剤スクリーニングアッセイは、大規模でも小規模でも行なえる。大規模スクリーニングは、apo(a)とapoBトランス遺伝子を発現する脈管構造又は他の組織の眼で見る観察、及び対照動物との比較を含む。例えば、トランスジェニック動物体内のヒトLp(a)産生により、血管におけるアテローム性動脈硬化プラークが生じるならば、観察者は、非治療動物に対し、このプラークの形成を減少させる能力に基づき候補薬剤を評価する。
【0108】
あるいは、ヒトLp(a)又はその変異体を発現し、発現がLp(a)又はその変異体によって変化する、プロモータに機能可能に連結されたリポーター遺伝子をも含む本発明のトランスジェニック動物が作出できる。例えば、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)に機能可能に連結されたこのようなプロモータは、LP(a)発現のために矯正的な治療の存在又は非存在に依存して、それぞれ非誘導であるか、又は誘導されるであろう。
【0109】
本発明の薬剤スクリーニングアッセイは、小規模でも行なえる。小規模アッセイは、生検、並びに組織学的解析及び/又は免疫組織化学的解析を含む。これらの特徴は、実務者によって組織学的に評価することができる。免疫組織化学的解析は、アテローム性動脈硬化、脳卒中、虚血、再発狭窄症、心臓血管系疾患、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、望ましくない脂質プロフィール、及び血栓などのマーカーを用いて行なえる。
【0110】
Lp(a)機能を調節できる化合物は、apo(a)遺伝子とapoB遺伝子のどちらか又は両方の発現を阻害できる、又はダウンレギュレーションできる化合物、細胞内で、Lp(a)複合体の形成もしくはLp(a)の生物活性を阻害できる化合物、又はリポタンパク質(a)の血漿レベルを減少させることができる化合物を含む。このような化合物は、トランスジェニック動物や本明細書記載のアッセイを用いて同定された抗体や天然又は合成の化合物を含む、アンチセンス核酸、細胞内結合タンパク質を含む。
【0111】
アンチセンスポリヌクレオチド、アンチセンスRNA分子をコードするDNAの製造と使用、及びオリゴヌクレオチドと遺伝子的アンチセンスの使用は、WO92/15680に開示されている。その内容全部は引用により本明細書に含まれるものとする。好ましくは、本発明の使用のための核酸は、apo(a)遺伝子及び/又はapoB遺伝子、又は
対応するメッセンジャーRNAの全部又は一部と特異的にハイブリダイズできるRNAである。アンチセンス配列は、細胞内の発現が、apo(a)遺伝子及び/又はapoB遺伝子の全部又は一部と相補的なRNAを産生するDNA配列から得られうる。これらのアンチセンス配列は、反対方向に、apo(a)及び/又はapoBをコードする配列の全部又は一部の発現させることによって作出されることができる。アンチセンス配列の任意の長さが、apo(a)遺伝子及び/又はapoB遺伝子の発現をダウンレギュレーションできるか、又はブロックできる限り、アンチセンス配列の任意の長さが、本発明の実務のために適切である。好ましくは、アンチセンス配列は、長さが少なくとも20ヌクレオチドである。
【0112】
一面では、核酸は、アンチセンスRNA分子をコードする。この実施形態では、核酸は、核酸配列の発現を可能とする適切な調節領域(上記)に機能可能に連結され、ベクターが細胞に導入されたとき、アンチセンス核酸を発現する、好ましくは組換えベクター構築物を用いる細胞中に導入される。適切なベクターの例は、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(WO91/18088;WO93/09239;米国特許第4,797,368号、米国特許第第5,139,941号、欧州特許第488528号参照)、レトロウイルス(上記参照)、及びヘルペスウイルスである。治療遺伝子の送達のために、好ましくはベクターはアデノウイルスである。
【0113】
アデノウイルスは、種々の細胞型に本発明の核酸を効率的に送達するために修飾できる真核細胞のDNAウイルスである。
アデノウイルスの種々の血清型が存在する。これらの血清型のうち、好ましくは、本発明の範囲内で、2型もしくは5型ヒトアデノウイルス(Ad2又はAd5)又は動物起源のアデノウイルスを用いる。本発明の範囲内で使用できる動物起源のアデノウイルスは、イヌ、ウシ、マウス、ヒツジ、ブタ、トリ及びサル(例:SAV)起源である。好ましくは、動物起源のアデノウイルスは、イヌアデノウイルス、より好ましくはCAV2アデノウイルスである(例えば、Manhattan 又はA26/61株(ATCC VR−800))。
【0114】
好ましくは、本発明で使用されるための複製欠陥アデノウイルスベクターは、ITRs、カプシド化配列及び問題の核酸を含む。更により好ましくは、アデノウイルスベクターの少なくともE1領域は機能をもたない。好ましくは、E1領域の欠失は、Ad5アデノウイルスの配列でヌクレオチド455乃至3329(PvuII−BglII断片)又は382乃至3446(HinfII−Sau3A断片)である。他の領域も修飾できる。特にE3領域(WO95/02697)、E2領域(WO94/28938)、E4領域(WO94/28152、WO94/12649、WO95/02697)、又は後期遺伝子L1−L5のいずれかがそうである。
【0115】
好適な実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1領域に欠失をもつ(Ad1.0)。E1欠失アデノウイルスの例は、欧州特許第185,573号に開示されている。その内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。別の好適実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1及びE4領域に欠失を有する(Ad3.0)。E1/E4欠失アデノウイルスベクターは、WO95/02697とWO96/22378に開示されている。その内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。更に別の好適実施形態では、アデノウイルスベクターはE1領域に欠失を有し、その中にE4領域と核酸配列が挿入されている(仏国特許94 13355参照、その内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。)
複製欠陥組換えアデノウイルスは、当業者公知の技術により作出できる(Levrero ら,(1991)Gene 101,195;欧州特許第185573号;Graham, (1984)EMBO J. 3, 2917 )。特に、それらは、アデノウイルスと、とりわけ問題のDNA配列を有するプラスミド
との間の相同組換えによって作出できる。相同組換えは、適当な細胞ライン中に、上記アデノウイルスとプラスミドの共トランスフェクション後、生じる。好ましくは、使用される細胞ラインは、(i)該要素によって形質転換できるべきであり、(ii)組換えの危険を避けるために、好ましくは組込まれた形態で、複製欠陥アデノウイルスのゲノムの一部を補完できる配列を含むべきである。使用できる細胞ラインの例は、ヒト胚腎細胞ライン293(Grahamら,(1977) J.Gen.Viol. 36, 59 )(それは、そのゲノムに組込まれたAd5アデノウイルスのゲノムの左手部分(12%)を有する)と、E1とE4機能を補完できる細胞ラインである(WO94/26914とWO95/02697に記載されている)。当業者周知の標準的分子生物学技術を用いて、組換えアデノウイルスは、回収され、精製される。
【0116】
特異的にLp(a)活性を特異的に阻害する本発明の方法の別の実施形態は、トランスフェクトされた細胞内でapo(a)、apoB、及び/又はLp(a)複合体と選択的に相互作用できる細胞内結合タンパク質をコードする核酸配列の発現によってLp(a)機能を阻害することを含む。WO94/29446とWO94/02610(それらの全部の内容が引用により本明細書に含まれるものとする)は、細胞内結合タンパク質をコードする遺伝子による細胞トランスフェクションを開示する。細胞内結合タンパク質は、それが発現される細胞内で、ヒトapo(a)、apoB及び/又はLp(a)を含む、apo(a)、apoB及び/又はLp(a)複合体と選択的に相互作用できる又は結合でき、結合apo(a)、apoB及び/又はLp(a)の機能を中和できるタンパク質を含む。好ましくは、細胞内結合タンパク質は、抗体又は抗体の断片である。好ましくは、細胞内結合タンパク質は、一本鎖抗体である。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルでありうる。
【0117】
WO94/02610は、抗体の製造と、特定の抗体をコードする核酸の同定を開示する。apo(a)、apoB又はLp(a)複合体タンパク質又はそれらの断片を用い、apo(a)、apoB又はLp(a)に特異的なモノクローナル抗体は、当業者公知の技術に従い、作出される。次いで、細胞内結合タンパク質又はその一部をコードし、宿主細胞で発現できる核酸を含むベクターは、本発明の方法で使用されるために作出される。apo(a)、apoB及び/又はLp(a)を含む細胞に、細胞内結合タンパク質をコードする核酸を送達する適切なベクターと方法は、アンチセンス核酸の送達のための上記のものを含む。
【0118】
この実施形態の好適な面では、apo(a)、apoB及び/又はLp(a)細胞内結合タンパク質をコードする核酸配列は更に、1)細胞内結合タンパク質とその標的分子との相互作用を可能とするために、その細胞内結合タンパク質を適当な細胞内局在を目標とするための局在化信号、及び/又は2)形質膜でその細胞内結合タンパク質の挿入を可能とする配列、をコードする配列を含む。局在化信号又は挿入配列は、apo(a)、apoB及び/又はLp(a)と結合する細胞内結合タンパク質の能力を妨害しないかぎり、細胞内結合タンパク質のどこにでも局在化信号又は挿入配列は位置することができる。局在化信号の例は、WO94/02610に開示されている。
【0119】
医薬組成物
Lp(a)機能を調節できる化合物は、本明細書記載のトランスジェニック動物とアッセイを用いて同定されたアンチセンス核酸、細胞内結合タンパク質、及び化合物である。
【0120】
apo(a)とapoBトランス遺伝子の発現をダウンレギュレーション又はブロックできるアンチセンス核酸構築物は、病気の細胞に送達されることができる。ベクター又は裸のDNAの形態で、核酸は、注入可能組成物のために1つ以上の医薬として許容可能な担体と一緒にできる。核酸は、特に、等張、滅菌、生理食塩水(リン酸一ナトリウム又は
リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)中にありうるし、又は乾燥、特に凍結乾燥組成物中にありうる。凍結乾燥組成物では、場合によっては、滅菌水又は生理食塩水の添加によって、注入溶液の構成が可能となる。
【0121】
好適な滅菌、注入可能な組成物は、非毒性で、非経口的に許容できる溶媒又は希釈剤中の溶液又は懸濁液でありうる。医薬として許容可能な担体の例は、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、等張化生理食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、リンゲル溶液、ブドウ糖、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組合せである。1,3−ブタンジオールや滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒質として便利にも使用される。合成モノ−又はジグリセライドを含むマイルドな固定油を使用することができる。オレイン酸などの脂肪酸も、注入可能な組成物中で使用できる。
【0122】
ウイルスとして投与されるならば、投与量は、種々の変数の関数として適合できる。特に、考えられる投与部位、注入数、発現される遺伝子、又は治療の望まれる持続時間の関数として適合できる。一般的には、組換えアデノウイルスは、104乃至1014pfu、
好ましくは106乃至1011pfuの投与量の形態で処方され、投与される。pfu(プ
ラーク形成単位)という用語は、ウイルス溶液の感染性に対応し、適当な細胞培養液に感染させ、一般的に15日後、感染細胞のプラークの数を測定することによって決定される。ウイルス溶液のpfu力価を決定する技術は、文献に良く記載されている。
【0123】
アンチセンス又は細胞内結合タンパク質をコードする核酸のような核酸はまた、裸のDNAとして投与されることができる。裸のDNAを処方して、哺乳動物筋肉組織に投与する方法は、米国特許第5,580,859号と第5,589,466号に開示されている。それらの内容は引用により本明細書に含まれるものとする。
【0124】
実施例
例示であり、非限定と考えるべきである以下の実施例によって、より詳細に本発明を説明する。
【0125】
一般的な分子生物学
本発明では、通常の分子生物学、微生物学、当業界の技術内にある組換えDNA技術を用いることができる。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sec ond Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, New York (
本明細書では、“Sambrookら, 1989”);DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes
Iand II(D.N.Glover ed. 1985 );Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait ed. 1984 );Nucleic Acid Hybridizat ion(B.D.Hames and S.J.Ehiggins eds. (1985));Transcription And Translation ( B.D.Hames and S.J.Higgins, eds. (1984) );Animal Cell Culture(R.I.Freshney ed.(1986)) ;Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press (1986));B.Eperbal, A Practical Guide To Molecular Clo ning(1984) ;F.M.Ausubel ら(eds.),Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.(1994) 参照。
【0126】
実施例1 ヒトapo(a)とapoBのDNA調製と特徴づけ
ヒトapo(a)遺伝子を含むYACクローン(CEPHライブラリィ中でクローン366H2)は、以前に記載された(Frazer,K.A., Narla,G., Zhang,J.L., and Rubin,E.M., Nat Gen (1995) 9, 424-431;WO95/25793;認可された米国特許出願第08/704,582号)。パルスフィールド電気泳動によって、YACは、酵母染色体から分
離された。YACを含むバンドは、SeaPlaque GTG アガロース(FMC ,Rockland, MD)から切り出され、ベータ−アガロース(NEB,Beverly, MA )で処理し、次いで、0.1M NaCl、10mM Tris, 0.1mM EDTAに対し透析された(Couto,L.B., Spangler,E.A. and Rubin,E.M., Nuc Acid Res (1989) 17(19), 8010)。ヒトapoB遺伝子を含む90kb P1ファージミドは、以前に記載された(Callowら,Proc Natl Acad Sci, USA (1994) 91, 2130-2136)。
【0127】
実施例2 トランスジェニックウサギの作出とスクリーニング
トランスジェニックウサギの作出は、(Duvergerら,Arterioscler Thromb Vasc Biol (1996) 16,1424-1429 )によって以前に記載された方法を用いた。要約する。ニュージーランドホワイト成獣メスウサギを過剰排卵させ、同じ日に交配し、黄体化ホルモンを注射した。胚を17時間後に集めた。胚注入、偽妊娠メスへの導入、及び動物飼育は、以前に報告された通りであった(Fan ら,Arterioscler Thromb Vasc Biol(1995) 15,1889-1899;Duvergerら,Arteriosc ler Thromb Vasc Biol(1996)16,1424-1429 )。ヒトapo(
a)YAC又はヒトapo
B P1ファージミドを含む1ng/mLのDNA溶液約2pLをオス前核に注入した。
【0128】
apo(a)トランスジェニックウサギを作出するために、280個のミクロインジェクトされた胚を偽妊娠メスに導入し、17匹の生きて産まれたウサギを得た。耳の生検から抽出したウサギDNAを、以前に記載された方法とプライマー(Frazerら,Nat Gen(1995)9,424-431)を用いて、PCRによってヒトapo(a)の存在をスクリーニングした。2匹のメスウサギがトランスジェニックであった。最高のapo(a)血漿レベルの動物を次の研究に用いた。PCRスクリーニングを用いて、トランス遺伝子を含むウサギを同定し、apo(a)遺伝子とそのフランキング領域の完全な組み込みを確認した(図1)。クローンの全長をスキャンする4つの異なるPCR反応によって決定されたように、apo(a)ファウンダーウサギは、完全なYACゲノムクローンの完全なコピーを有した。apoBトランスジェニック動物を作出するために、780個のミクロインジェクトされた胚を偽妊娠メスに導入した。20匹の生きて産まれたウサギのうち、2匹のapoBトランスジェニック動物を、耳生検DNA、PCR、及びヒトapoB特異的プライマーを用いて同定された。ヒトapoB特異的プライマーは、該遺伝子のプロモータ領域からであった。5′−AGAAGGTTCCAGATGTCTATGAGG(配列番号1)と5′−TCCAAGTATCTGTCTTCAAGAAACC (配列番号2)。最高のapoB遺伝子血漿レベルの動物を次の研究に用いた。ヒトapoB遺伝子は、プロモータ領域でヒト配列に特異的な単一PCR反応によって検出された。apo(a)とapoBのファウンダー動物の子孫は、適当なマーカーについて陽性であり、2つのトランス遺伝子の伝達のメンデリアン・パターンを示した。apo(a)とapoBトランスジェニックファウンダーの間の交配は、本発明の主題である予測されたゲノタイプのウサギを産生した。
【0129】
実施例3 RT−PCRによるトランスジェニックapo(a)とapo(b)組織分布の解析
RNAstat−60(Tel-Test B,Frienswood,TX)を用いて、対照とトランスジェニックウサギ組織から全RNAを抽出し、DNAse処理にかけ、次いで逆転写を行なった(5μgRNAが、12μLの体積で、65℃、10分間、10ng apo(a)RTプライマー:5′−GATGACCAAGCTTGGCAGGTTCTTCC−3′(配列番号3)、又はapoB M46プライマー:5′−CCACATTTTGAATCCAGGATGCAGTACTACT −3′(配列番号4)とインキュベートされ、次いでSuperscript II/緩衝液を補充した(GibcoBRL,Bethesda,MD))。次いで、第1鎖cDNA をRNAseで処理し、フェノール/クロロホルムで抽出した。RT産物5μLを、Taqポリメラーゼ(Boehringer Manheim, Indianapolis, IN)のための標準的条件下、PCRにかけた。各プライマーは50pmole を用い、次のような温度サイクルを用いた(94℃30秒、62℃30秒、次いで72℃90秒−25サイクル
)。apo(a)cDNAは、プライマー(a)Kr1F:5′−ACCTGAGCAAAGCCATGTG −3′(配列番号5)と(a)Kr1R:5′−AG TACTCCCACCTGACACCG−3′(配列番
号6)を用いて検出された。apoB cDNAは、
ヒト及びウサギ特異的PCRプライマーを用いて検出された(M49/M50ヒト又はM49/M50ウサギ、Hughes,S.D. ら、Hum.Gene Ther., 7,39-49(1996) )。PCR産物は、1.5%アガロースゲルで分析された。ゲノムDNAの汚染の無いことを示すために、RNA調製物は直接、同じPCR条件にかけた。産物は増幅されなかった。
【0130】
apo(a)とapoBトランス遺伝子発現の分布を測定するために、幾つかの組織(肝、精巣、小腸、腎、脳、肺)からのRNR調製物を、トランス遺伝子発現の定性的測定としてRT−PCRにかけた(図2)。apo(a)RNAは、肝と精巣で検出され、より感度の高い条件下(PCRサイクル数を25から30に増加)では、脳でも観察された。肝と精巣はまた、ヒトapoBトランス遺伝子の発現の主要部位でもあった。比較的弱い信号(肝の信号の5%未満)が小腸で検出された。apoB mRNAアッセイの種特異性、及びRNAの質のための対照として、RT−PCRを用いて、ウサギapoBを特異的に検出した。予期されたように、ウサギapoB mRNAは、試験した全ての組織で検出された。トランスジェニックマウスでの研究と一致して、ヒトapo(a)とapoBトランス遺伝子の両方は、同定されたファウンダーウサギの全てで、有意のレベルで、及び適切な組織で発現され、cDNAトランス遺伝子と比較して、これらのゲノムトランス遺伝子の高効率及び組織特異的発現が示された(Chiesaら,J Biol Chem (1992)267,24369-24374 ;Chiesaら,J Biol Chem (1993)268,23747-23750 )。
【0131】
ヒトapoB発現の組織分布は、トランスジェニックマウスで観察されたものとはやや違った。トランスジェニックウサギでの低レベルのヒトapoB腸発現は、ヒトapoBプロモータからの基礎レベルの転写がウサギ腸で起るが、発現は、腸の内因性apoBの発現よりずっと低いことを示し、この組織での発現に必要な制御要素が、apoBゲノム構成物には存在しなかったことを示唆した。この後者の点は、同一のapoBトランス遺伝子を含むマウスの2つの独立の報告の結論と矛盾しない(Callowら, Proc Natl Acad Sci,USA(1994)91,2130-2136;Purcell-Huynh ら,J Clin Invest(1995)95,2246-2257 )。更に、トランスジェニックウサギの血漿でヒトapoB−48を検出しなかった。この結果は、(Fan ら,Arterioscler Thromb Vasc Biol(1995)15,1889-1899 )の知見と一致し、ヒトapoBタンパク質産生は、トランスジェニックウサギの腸で殆ど、又は全く起らないことを示唆する。
【0132】
apo(a)ゲノムトランス遺伝子を含むマウスで以前に記載された性成熟と関連したapo(a)血漿レベルでのかなりの減少のために、トランスジェニックウサギのapo(a)血漿レベルに対する性成熟の影響を試験した。齢が3月、6月、9月でのウサギ(ウサギは齢6月で性成熟する)から集められた血漿サンプルが、免疫ブロッティングによって、apo(a)レベルの変化について評価された(図3)。この解析によると、トランスジェニックウサギでは、性成熟の過程でapo(a)レベルの有意な変化はなかった。
【0133】
apo(a)ゲノムトランス遺伝子の組織特異性はウサギとマウスで同様であったが、発現の発生制御は、これらの2つの生物の間で有意に異なった。トランスジェニックマウスにおけるapo(a)血漿レベルに対する性成熟の顕著な影響とは異なって、ウサギにおけるapo(a)レベルは、性成熟によって変化しなかった。apo(a)の血漿レベルは、主に合成速度によって決定されるので、apo(a)トランス遺伝子を含むウサギの性成熟に伴うapo(a)血漿レベルの減少の欠如は、性ホルモンは、これらの動物におけるトランス遺伝子発現に強力な効果をもたないことを示唆する。ウサギにおけるapo(a)転写に対するこれらのホルモンの影響は、ヒトにおいて記載されたようにわずか
でありうる。
【0134】
実施例4 アポリポタンパク質とリポタンパク質解析
以前に記載された密度勾配超遠心法(Callowら,Proc Natl Acad Sci, USA(1994) 91,2130-2136)によって、ウサギ血漿サンプルから全リポタンパク質分画(r:1.21g/mL未満)を調製した。Lp(a)とヒトapoB濃度は、サンドイッチELISAアッセイによって、ウサギ血漿及びリポタンパク質分画において測定した。Lp(a)については、ヒトアポリポタンパク質(a)に対するヤギポリクローナル抗血清から調製された精製IgG(International Immunology Corp.,Murrieta,CA)を、捕捉抗体としてミクロタイタープレートウエルに結合させた。該抗体の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体を用い、クロモジェニックな基質O−フェニレンジアミンの添加後、apo(a)を検出した。方法の標準化は、市販の標準化Lp(a)ELISAキット(Straregic Diagnostics,
Newark,DE)を用い独立に測定されたインハウス ヒトリポタンパク質カリブレーターに基づいた。ヒトapoB(B48+B100)のアッセイは、マウス抗ヒトapoB抗体(Genzyme, Cambridge,MA )を用いた。標準曲線は、Logit-Log データ変換を用い、適切なブランクと対照によって計算された。全ての報告された濃度は、3重分析から計算した。
【0135】
apo(a)とapoB相互作用を評価するために、トランスジェニックウサギから分離された血漿を、(Laemmli,E.K., Nature(1970)227,680-685 )に従い、4%ポリアクリルアミドゲル上でのSDS-PAGEによって分離し、(Towbinら,Proc Natl Acad Sci, USA(1979)6,4350-4354)に従い、免疫ブロッティングによってミリポアニトロセルロース膜に移した。サンプルは、2−2.5%メルカプトエタノールを含む変性サンプル緩衝液の添加によって還元し、100℃で5分間インキュベートした。apo(a)はヤギ抗apo(a)(Valb iotech, Paris )、続いてHPR 結合ウサギ抗ヤギ(BioRad,Hercules,CA)によって検出した。ヒトapoBは、HRP結合ポリクローナルウサギ抗ヒトapoB(C.Fievetから贈られる)を用い検出した。タンパク質バンドは、増大ケミルミネセンスキット(Amersham,Arlington Heights,IL )によって示され、Hoefer GS トランスミッタンス
スキャニング デンシトメーターを用いスキャンした。主要ピークの面積を用いて、遊離及びapoBと結合しているapo(a)の相対的割合を評価した(Gabel ら,Arterio. Thromb. Vasc. Biol.(1996)16,1559-1567 )。見かけの分子量は、前染色された標準品(BioRad)の使用によって測定された。対照ヒト血清は、ヒトタンパク質の発現のために陽性対照として用いた。
【0136】
非還元条件下、apo(a)トランスジェニックウサギと、ヒトapoB/apo(a)トランスジェニックウサギからの血漿は、2本のバンドを示した(図4A)。即ち、apoB/apo(a)複合体に対応する高分子量バンドと、遊離apo(a)に対応する低分子量バンド。高分子量apo(a)バンドの存在は、apoB/apo(a)トランスジェニックウサギにおけるLp(a)のアッセンブリィを示し、apo(a)のみのトランスジェニックウサギにおけるapo(a)とウサギapoBの間のある程度の共有相互作用を示した。この結果は、免疫ブロッティング還元血漿サンプルによって確認された(図4B)。その実験では、同じヒトapo(a)抗血清を用いて、apo(a)を示す唯一のバンドが、トランスジェニックウサギの両方の型で検出された。トランスジェニックウサギにおけるapo(a)の見かけの分子量は約200kDであった。これは、約9つのクリングル4様リピートを含むapo(a)タンパク質に対応する、この同じapo(a)ゲノム構築物を含むトランスジェニックマウスで観察されたapo(a)サイズと同様である。ヒト特異的apoB抗血清でブロットされたサンプル(図4C)は、ヒトapoBのためにPCRによって陽性に試験されたウサギの血漿で独占的に、ヒトapoB−100を示す550kDの唯一のバンドを示した。トランスジェニックウサギにおいてapo(a)とapoBの濃度はELISAによって評価された。トランスジェニックウ
サギにおけるヒトapoBの平均濃度は17.6mg/dLであった。血漿における平均全apo(a)濃度は2.5mg/dLであった。apo(a)のみとヒトapoB/apo(a)トランスジェニックウサギとの間に有意な差は無かった。
【0137】
超遠心を用いて、apo(a)のリポタンパク質分画との会合を試験した。apo(a)とヒトapoBとの間のジスルフィド結合は、リポタンパク質を単離するために使用される超遠心の条件に耐えることが示され、非共有結合で会合したapo(a)は、より密度の大きい血漿タンパク質と共に分画される(Utermann,G., and Weber,W., FEBS Let (1983) 154,357-361)。apo(a)トランスジェニックウサギとapoB/apo(a)トランスジェニックウサギから分離されたリポタンパク質分画が、ELISAによってapo(a)の存在について試験された。トランスジェニックウサギの両方の型のリポタンパク質分画でapo(a)が検出され、apo(a)は、ヒトとウサギの両方のapoBとの間でジスルフィド結合を形成したことを示す。しかし、血漿におけるLp(a)とapo(a)の相対的な割合は、ウサギapoB−apo(a)複合体は、ヒトapoBで観察されるよりも比較的小さい効率でインビボで形成されたことを示唆する。apo(a)トランスジェニックウサギとapoB/apo(a)トランスジェニックウサギとの間のapo(a)のパターンを比較すると(図4A)、ウサギapoBだけが存在するとき、非共有結合で結合したapo(a)のより大きい割合が示された。トランスジェニックウサギにおけるapo(a)の異なる分子形態の相対的な比は、ケミルミネセントフィルムのデンシトメーターによるスキャンによって免疫ブロットから推定された。apoB/apo(a)トランスジェニックウサギにおいて、apo(a)の約20%が遊離apo(a)と一致して移動し(n=3)、残りの80%は、ヒト又はウサギapoBと共有結合した。apo(a)トランスジェニックウサギにおいて、逆の分布が観察された(遊離タンパク質80%及びウサギapoBと結合したもの20%;n=3)。これらの比は厳格に定量的ではないけれど、同じapo(a)トランス遺伝子及び同様の全apo(a)レベルを含むトランスジェニックウサギの2群の間の一致した差は、apo(a)は、ウサギapoBよりもヒトapoBとより効率的にジスルフィド結合を形成することを示唆する。
【0138】
ウサギapoBの、apo(a)と共有結合を形成する能力は、幾つかの哺乳動物からのapoBとのヒトapo(a)相互作用を試験するインビトロ研究によって初めて示唆された。その研究は、ある条件下、ウサギapoBは、ヒトapo(a)と共有相互作用を形成できることを示した(Trieu,V., and McConathy,W.J., Biochem.J. (199 5)309,899-904)。apo(a)トランス遺伝子のみ
を発現するウサギにおいて、Lp(a)アッセンブリィの証明は、インビボ条件下この相互作用を実証する。比較して、ヒトapoBとapo(a)トランス遺伝子の両方を含むウサギは、Lp(a)形態でapo(a)のずっと大きな割合を含んでいた。しかし、apoB/apo(a)トランスジェニックウサギにおける十分なレベルのヒトapoBにもかかわらず、apo(a)の約20%は、非共有結合の結合状態に留まった。これは、ヒトにおける状態とは対照的である。ヒトでは、apo(a)の全てがapoBと共有結合している。遊離apo(a)の存在は、無β−リポタンパク質血症のまれな場合のみ観察された(Menzelら,J Bio Che m(1990) 265,981-986)。
【0139】
実施例5 血漿リポタンパク質の分画及びコレステロール測定
新たに分離された血漿を、Superose 6 カラム(Pharmacia )を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィによって分画した。血漿100μLをカラムに注入し、GF2緩衝液(20mM Tris pH8.0, 0.27mM EDTA、150mM NaCl)中流速40μL/分でアイソクラティックな条件下行なった。流出液を280nmの吸光度でモニターし、50μL分画をラン中、集め、次いで、市販のコレステロールアッセイキット(Boehringer-Mannheim )を用い、コレステロールをアッセイした。コレステロー
ル含有分画の20μLアリコートを用い、上記のように電気泳動と免疫ブロッティングを用い、apo(a)とLp(a)の存在を検出した。
【0140】
トランスジェニックウサギにおいて、apo(a)とリポタンパク質の結合を更に特徴づけるために、ゲル濾過クロマトグラフィによってリポタンパク質をサイズ分画した。密度勾配遠心法とは対照的に、クロマトグラフィ法では、弱い非共有結合相互作用によって結合したタンパク質を含むリポタンパク質複合体を単離できる。この方法で分画された血漿の免疫ブロッティングは、apo(a)は、ヒトapoB/apo(a)トランスジェニックウサギ(図5A)とapo(a)トランスジェニックウサギ(図5B)の両方で、LDL分画に主に存在することを示した。ヒトapoB/apo(a)トランスジェニックウサギのLDL分画は、ヒトapoB/apo(a)複合体とウサギapoB/apo(a)複合体に対応する2つの異なる高分子量バンドを含んでいた。ヒトapoB/apo(a)複合体とウサギapoB/apo(a)複合体は、ウサギapoB−100(320kD)のより小さい分子量を基に分けられる。全血漿の免疫ブロットでは存在したけれども、非共有結合で結合したapo(a)は、ヒトapoB/apo(a)トランスジェニックウサギのLDL分画では検出されなかった。apo(a)トランスジェニックウサギのLDL分画は、電気泳動条件下、LDLから解離した比較的多量のapo(a)(遊離apo(a)と定められた)によって伴われたウサギapoB/apo(a)複合体を示すブロードバンドを含んでいた(図5B)。この分析により、ヒトとウサギのapoBの両方を含むリポタンパク質とのapo(a)の結合が確認された。もっとも、ウサギapoBの場合、粒子のずっと小さな割合で、apo(a)は、ジスルフィド結合により結合した。
【0141】
本研究において、apo(a)は、apoB含有リポタンパク質との特異的な非共有結合相互作用を示した。これは、apo(a)とapoBとの間の高度に保存されたアフィニティを示唆する。このことは、幾つかの他の種のapoBとのapo(a)相互作用の以前の研究の結果と同様である(Chiesaら,J Biol Chem (1993) 268,23747-23750;Trieu,V., and McConathy,W.J., Biochem.J.(1995)309,899-904 )。このことは、apo(a)トランスジェニックウサギのLDL分画における非共有結合で結合したapo(a)の観察によって支持される。apo(a)とapoBとの間のこのような非共有結合相互作用は、システイン残基を、ジスルフィド結合形成の位置にもってくることによって、Lp(a)アッセンブリィを容易にすることが提案された(Trieu,V., and McConathy,W.J., J. Biol. Chem.(1995) 270,15471-15474)。apoB/apo(a)トランスジェニックウサギの血漿中で、apo(a)は、この非共有結合で結合した形態に留まりうる。というのは、最初の結合段階でapo(a)を有効に捕捉するウサギapoBの能力が存在するからである。一方、この中間体からのジスルフィド結合はずっと小さい効率で進行する。というのは、共有結合は、非共有結合相互作用により最良には位置しないシステイン残基の間で起らなければならないからである。
【0142】
実施例6 ヒトとウサギapoBにおける推定上のapo(a)結合部位の配列比較
マウスapoBとは異なり、ウサギapoBはヒトapo(a)と共有結合を形成できるというウサギapoBの驚くべき能力の故に、ヒトapoBにおけるapo(a)結合の部位と相同な領域内のウサギapoBのアミノ酸配列の比較を行なった。ウサギapoBの関連部分は報告されていないので、ウサギapoB cDNAクローンのカルボキシ末端領域の配列決定を行なった。ウサギapoBの得られたタンパク質配列を図6に示す。それは、ヒトを含む4つの他の報告されたapoB配列(配列番号7乃至11)と有意に相同な領域内に整列してある。げっ歯類とブタにおけるように、apoBが示された2つの哺乳動物は、インビトロでヒトapo(a)と共有結合を形成できなく、ウサギapoBはまた、ヒトapoBにおけるapo(a)結合部位(cys4326)と相同な位置にシステインを欠く。この位置のシステイン残基は、apo(a)との共有結合相互作
用に必要であるということを示唆する2つの以前の報告(Callow,M.J. and Rubin,E.M., J
Biol Chem(1995)270,23914-23917;McCormick,S.P.A.,Ng,J.K., Taylor,S., Flynn,L.M., Hammer,R.E., and Young, S.G. (1995)92,10147-10151)とは対照的に、上記の結果は
、ウサギapoB分子中の他のシステインが、apo(a)と共有結合相互作用できることを示す。
【0143】
本明細書で挙げた引用文献の全ては引用により本明細書に含まれるものとする。
本発明は、上記目的を行なうのに、及び記載され、本発明に固有の結果と利点を得るのに十分に適していることを、当業者は容易に理解しよう。本明細書記載のトランスジェニック動物、方法、手順及び技術は、好適な実施形態の代表として記載され、例であるものとし、本発明の範囲に対する限定とするものではない。本発明の思想内に包含され、特許請求の範囲によって定められる変更や他の使用を、当業者は考えるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合してリポタンパク質(a)を産生できるアポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドをコードする配列を、ゲノムDNAに有するトランスジェニックウサギ。
【請求項2】
コレステロール豊富な食餌を与えられたとき、上記ウサギは、ヒト様アテローム性動脈硬化病巣を発症することを特徴とする請求項1に記載のウサギ。
【請求項3】
外来ヒトDNA配列を有することを特徴とする請求項1に記載のウサギ。
【請求項4】
外来ヒトDNA配列を有することを特徴とする請求項2に記載のウサギ。
【請求項5】
ゲノムDNA及びcDNAからなる群から選択される外来DNA配列を有することを特徴とする請求項1に記載のウサギ。
【請求項6】
ゲノムDNA及びcDNAからなる群から選択される外来DNA配列を有することを特徴とする請求項2に記載のウサギ。
【請求項7】
上記配列を発現する肝細胞を有することを特徴とする請求項1に記載のウサギ。
【請求項8】
上記配列を発現する肝細胞を有することを特徴とする請求項2に記載のウサギ。
【請求項9】
上記配列を発現する精巣細胞を有することを特徴とする請求項1に記載のウサギ。
【請求項10】
上記配列を発現する精巣細胞を有することを特徴とする請求項2に記載のウサギ。
【請求項11】
性的成熟中、安定な血漿レベルのアポリポタンパク質(a)ポリペプチドを有することを特徴とする請求項1に記載のウサギ。
【請求項12】
アポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドを発現できるトランスジェニックウサギの作出方法であって、
アポリポタンパク質(a)を発現できる第1のウサギの生殖ライン細胞を、アポリポタンパク質Bを発現できる第2のウサギの生殖ライン細胞と結合させることを特徴とする上記方法。
【請求項13】
アポリポタンパク質(a)ポリペプチドとアポリポタンパク質Bポリペプチドを発現できるトランスジェニックウサギの作出方法であって、
アポリポタンパク質(a)を発現できる第1のウサギを、アポリポタンパク質Bを発現できる別のウサギと交配することを特徴とする上記方法。
【請求項14】
アポリポタンパク質Bタンパク質を発現できるウサギは、ヒトアポリポタンパク質B遺伝子を有するファージミドを、ウサギ胚に注入することによって提供されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アポリポタンパク質(a)を発現できるウサギは、ヒトアポリポタンパク質(a)遺伝子を有する酵母人工染色体を、ウサギ胚に注入することによって提供されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
アポリポタンパク質(a)を発現できるウサギは、ウサギ胚性幹細胞に、アポリポタンパ
ク質(a)タンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片を導入し、上記幹細胞とウサギ胚盤胞を一緒にし、胚をレシピエントメスウサギに移すことによって提供されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
アポリポタンパク質Bを発現できるウサギは、ウサギ胚性幹細胞に、アポリポタンパク質Bタンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片を導入し、上記幹細胞とウサギ胚盤胞を一緒にし、胚をレシピエントメスウサギに移すことによって提供されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
アポリポタンパク質(a)を発現するウサギは、ウサギ卵割球に、アポリポタンパク質(a)タンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片を有するレトロウイルスを感染させ、上記卵割球をレシピエントメスウサギに移すことによって提供されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
アポリポタンパク質Bを発現するウサギは、ウサギ卵割球に、アポリポタンパク質Bタンパク質をコードする少なくとも一つのヒトDNA断片を有するレトロウイルスを感染させ、上記卵割球をレシピエントメスウサギに移すことによって提供されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
化合物が、リポタンパク質(a)発現又は代謝に関連する疾患を阻害できるかどうかを決定する方法であって、
ヒトリポタンパク質(a)を産生でき、ヒトリポタンパク質(a)と関連する疾患を発症し、上記化合物で治療された第1のトランスジェニックウサギを、ヒトリポタンパク質(a)を産生でき、ヒトリポタンパク質(a)と関連する疾患を発症し、上記化合物で治療されなかった第2のトランスジェニックウサギと比較することを特徴とする上記方法。
【請求項21】
上記疾患は、アテローム性動脈硬化、心臓血管疾患、虚血、脳卒中、再発狭窄症、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、心筋梗塞、血栓、及び望ましくない脂質プロフィールからなる群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
化合物が、リポタンパク質(a)粒子のアッセンブリィを阻害できるかどうかを決定する方法であって、
上記化合物で治療され、ヒトリポタンパク質(a)を産生できる第1のトランスジェニックウサギにおけるリポタンパク質(a)産生のレベルを、上記化合物で治療されず、ヒトリポタンパク質(a)を産生できる第2のトランスジェニックウサギにおけるリポタンパク質(a)産生のレベルと比較することを特徴とする上記方法。
【請求項23】
上記化合物は、アンチセンス核酸及び細胞内結合タンパク質からなる群から選択されることを特徴とする請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−90(P2010−90A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223202(P2009−223202)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願2000−527627(P2000−527627)の分割
【原出願日】平成11年1月8日(1999.1.8)
【出願人】(500321520)アベンティス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】