説明

機能性フィルムおよびその製造方法

【課題】高い透過率が達成できる機能性フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられた、1層または2層以上の導電層と、該導電層の表面に設けられた機能性層とを有し、
導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層の表面抵抗値が107〜1013Ω/cm2であり、
導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層がバインダと導電性針状金属酸化物微粒子を含み、かつ、下記式(I)の数値が0.05以下を満たすことを特徴とする機能性フィルム。
式(I)


(Ndaは樹脂フィルムに隣接する導電層の屈折率を、Ndfは樹脂フィルムの屈折率を、Ndcは機能性層の屈折率をそれぞれ示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能性フィルムおよびその製造方法に関する。特に、塗布ムラの抑制と高い透過率の両立が可能な機能性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の機能性フィルムが検討されている。例えば、特許文献1には、基材上に、熱可塑性樹脂と導電性フィラーを含有する熱可塑性樹脂組成物からなり、表面固有抵抗値が107Ω/cm2未満の導電層と107〜1017Ω/cm2である熱可塑性樹脂からなる層が順次積層され、表面固有抵抗値が1013Ω/cm2以下である導電性積層体が開示されている。しかしながら、特許文献1は、導電性フィラーとしてカーボンブラックを用いているため、所望の表面抵抗を得ようとすると、透過率が低くなってしまう。さらに、干渉縞、虹ムラのような光学的なムラが大きいという問題がある。
一方、特許文献2には、光透過性基材の上に帯電防止層とハードコート層とをこれらの順で備えている光学積層体であって、帯電防止層が樹脂と導電性微粒子を含んでなるものであり、導電性微粒子が耐電防止層内で二次粒子から三次粒子を形成してなる光学積層体が開示されている。しかしながら、特許文献2は、サイズの小さな導電性微粒子を二次または三次凝集させて塗布するものであり、干渉縞などの光学的なムラの低減に効果があるものの、光学的なヘイズが高くなる問題がある。一方、透過率やヘイズを良化させるために、導電性微粒子の塗布量を少なくすると導電性層の表面抵抗が高くなり導電層上層に塗布する機能層に塗布ムラが生じ、機能性層の機能が十分に発揮できないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−53906号公報
【特許文献2】特開2006−95997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、機能性層をムラなく塗布することができ、かつ、高い透過率が達成できる機能性フィルムを提供することを目的とする。さらには、干渉縞などの光学的なムラを生じない機能性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
樹脂フィルムの上に機能性層を塗布により設ける場合、樹脂フィルムと機能性層の密着性を向上させるために、両層の間に易接着層を設けることが行われてきた。具体的には、図1(a)に示すものである。すなわち、樹脂フィルム1は、通常、表面に凸凹を有するため、表面に易接着層2を塗布し、平坦化した後に機能性層3を設けていた。しかしながら、従来の易接着層2のように平坦化した層の上に機能性層を塗布しても機能性層に塗布ムラが生じてしまうことが分かった。この点について、本願発明者がさらに検討を行った結果、易接着層に発生する静電気が塗布ムラを引き起こしていることを見出した。そして、図1(b)に示すように、易接着層として特定の要件を満たす導電性を有する導電層4を採用することにより、機能性層の塗布ムラを効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の手段により、上記課題は達成された。
【0006】
(1)樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられた、1層または2層以上の導電層と、該導電層の表面に設けられた機能性層とを有し、
導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層の表面抵抗値が107〜1013Ω/cm2であり、
導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層がバインダと導電性針状金属酸化物微粒子を含み、かつ、下記式(I)の数値が0.05以下である機能性フィルム。
式(I)
【化1】

(Ndaは樹脂フィルムに隣接する導電層の屈折率を、Ndfは樹脂フィルムの屈折率を、Ndcは機能性層の屈折率をそれぞれ示す。)
(2)導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層の厚みが、[{400/(4×Nda)}/2]nm以上[2×{700/(4×Nda)}]nm以下の範囲であることを特徴とする(1)に記載の機能性フィルム。
(3)前記金属酸化物が、錫および/またはアンチモンを含む酸化物である、(1)または(2)に記載の機能性フィルム。
(4)前記金属酸化物はアンチモンがドープされた酸化錫である、(1)または(2)に記載の機能性フィルム。
(5)樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられた、1層または2層以上の導電層と、該導電層の表面に設けられた機能性層とを有し、導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層が、バインダ100重量部に対し、アンチモンがドープされた酸化錫であって針状の微粒子10〜100重量部を含み、かつ、導電層の5〜50重量%が前記針状の微粒子であることを特徴とする機能性フィルム。
(6)前記導電層が、架橋剤および/または界面活性剤を含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
(7)前記機能性層が、透明導電層、耐傷層、耐候層、反射防止層、耐指紋性層および防汚層から選択される、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
(8)前記樹脂フィルムの表面に、バインダと導電性針状金属酸化物微粒子を含む組成物を塗布することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の機能性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、機能性層をムラなく塗布することができ、高い透過率が達成できる機能性フィルムを提供可能になった。さらには、干渉縞などの光学的なムラを生じない機能性フィルムを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来および本発明の機能性フィルムの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の機能性フィルムは、樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられた、1層または2層以上の導電層と、該導電層の表面に設けられた機能性層とを有し、導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層の表面抵抗値が107〜1013Ω/cm2であり、導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層がバインダと導電性針状金属酸化物微粒子を含み、かつ、下記式(I)の数値が0.05以下であることを特徴とする。
式(I)
【化2】

(Ndaは樹脂フィルムに隣接する導電層の屈折率を、Ndfは樹脂フィルムの屈折率を、Ndcは機能性層の屈折率をそれぞれ示す。)
このような構成とすることにより、機能性層をムラなく塗布することができ、かつ、高い透過率が達成できる機能性フィルムを提供可能になる。以下、該フィルムの詳細について説明する。
【0011】
導電層
本発明で用いる導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層の表面抵抗値は107〜1013Ω/cm2である。導電層の表面抵抗値が、107Ω/cm2未満であると、透過率が低下したり、ヘイズが増大してしまう。一方、導電層の表面抵抗値が、1013Ω/cm2を超えると機能性層の塗布ムラが発生する。樹脂フィルムに隣接する導電層の表面抵抗値は好ましくは、好ましくは、108〜1012Ω/cm2である。
また、樹脂フィルムは、下記式(I)の数値が0.05以下であり、好ましくは、0.03以下である。
式(I)
【化3】

(Ndaは樹脂フィルムに隣接する導電層の屈折率を、Ndfは樹脂フィルムの屈折率を、Ndcは機能性層の屈折率をそれぞれ示す。)
一方、上記特許文献1では、式(I)の数値が0.1以下となってしまう。
さらに、本発明では、樹脂フィルムに隣接する導電層がバインダと導電性針状金属酸化物微粒子を含む。針状の導電性金属酸化物微粒子を採用することにより、透過率およびヘイズという光学的特性と導電性の両立を達成できる。
本発明で用いる導電性針状金属酸化物微粒子における、針状とは、その形状が、短軸平均粒径が5〜500nmであり、長軸平均粒径が50〜5000nmであって、アスペクト比が3以上のものを意味する。短軸平均粒径は、好ましくは、5〜300nmである。長軸平均粒径は、好ましくは、100〜300nmである。アスペクト比は、好ましくは、5〜300nmである。
本発明で用いる導電性針状金属酸化物微粒子は、錫および/またはアンチモンを含む酸化物であることが好ましく、アンチモンがドープされた酸化錫であることがより好ましい。アンチモンがドープされた酸化錫の場合、アンチモン含有率が0〜10モル%であることが好ましく、1〜5モル%であることがより好ましい。
本発明で用いる導電性針状金属酸化物微粒子は、バインダ100重量部に対し、10〜100重量部含まれることが好ましく、20〜90重量部含まれることがより好ましい。
また、本発明で用いる導電性針状金属酸化物微粒子は、導電層に対し、5〜50重量%の割合で含まれることが好ましく、10〜45重量%の割合で含まれることがさらに好ましい。
本発明における導電層は、樹脂フィルムの片面に設けられていても良いし、両面に設けられていても良い。
【0012】
バインダ
本発明における樹脂フィルムに隣接する導電層に含まれるバインダは、導電性針状金属酸化物を分散させるバインダとしての役割を果たす。よって、かかる役割を果たす限り、その種類等は特に限定されるものではない。バインダとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、水溶性ナイロン、水溶性エポキシ樹脂、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びこれらの誘導体等の水溶性バインダ;水分散アクリル樹脂、水分散ポリエステル等の水分散型樹脂;アクリル樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、SBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)エマルジョン等のエマルジョン;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の有機溶剤可溶型樹脂を挙げることができる。水溶性バインダ、水分散型樹脂及びエマルジョンが好ましく、水溶性バインダがさらに好ましい。
本発明で用いるバインダは、ガラス転移温度が90℃以上であることが好ましい。このようなバインダを採用することにより、支持体からのオリゴマーの析出を抑止することができる。バインダのガラス転移温度(Tg)が90℃以上という観点で好ましいものとしては、ポリエステル、ポリウレタンが挙げられる。
【0013】
本発明では、これらのバインダに、さらに界面活性剤を添加してもよく、また架橋剤等を添加しても良い。
界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンイミダゾールスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、カルボン酸スルホンエステル、リン酸エステル、ヘテロ環アミン類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類及びベタイン系両性塩類を挙げることができる。界面活性剤は、バインダ100重量部に対し、0.1〜20重量部含まれることが好ましく、1〜10重量部含まれることがより好ましい。
架橋剤として好ましい化合物は、エポキシ系化合物、アルデヒド系化合物、活性ハロゲン系化合物、活性ビニル系化合物、N−カルバモイルピリジニウム塩化合物、N−メチロール系化合物(ジメチロールウレア、メチロールジメチルヒダントイン等)、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、高分子硬膜剤(特開昭62−234157号公報などに記載の化合物)、ホウ酸及びその塩、ホウ砂、アルミみょうばん等を挙げることができる。架橋剤は、バインダの種類に応じて適宜定めることができる。水溶性バインダを用いる場合、カルボジイミド化合物が好ましい。架橋剤は、バインダ100重量部に対し、2〜80重量部含まれることが好ましく、5〜50重量部含まれることがより好ましい。
【0014】
上記導電層の形成は、例えば、上記導電性針状金属酸化物粒子及びバインダ等を水、あるいは有機溶剤に分散又は溶解させ、得られた塗布液を樹脂フィルム表面に塗布、加熱乾燥することにより実施することができる。塗布は、例えばエアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法で行なうことができる。
導電層の塗布量は、固形分で0.01〜10g/m2が好ましく、0.1〜5g/m2がより好ましい。該塗布量が0.01g/m2以上の場合は、導電性の観点で好ましい。
【0015】
本発明における樹脂フィルムに隣接する導電層の厚さは、[{400/(4×Nda)}/2]nm以上[2×{700/(4×Nda)}]nm以下の範囲であることが好ましく、[{400/(4×Nda)}/1.5]nm以上[1.5×{700/(4×Nda)}]nm以下であることがより好ましい。具体的に導電層の厚さは、50〜1000nm、さらには、80〜300nmとすることができる。特に、本発明では、塗布により、導電層を設けることにより、フィルム同士を貼り合わせたり、共押出で各層を設ける場合に比べて、著しく薄い導電層とすることができる。このため、コストダウンを図ることができる。また、共押出に比べて、層間の密着性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0016】
本発明の樹脂フィルムに隣接する導電層の表面抵抗値および樹脂フィルムに隣接する導電層の屈折率と樹脂フィルムの屈折率と機能性層の屈折率の関係については、導電性針状金属酸化物微粒子の種類および配合量、樹脂フィルムの材質、機能性層の材質等を、適宜、定めることによって調整することができる。例えば、導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層が、バインダ100重量部とアンチモンがドープされた酸化錫であって針状の微粒子10〜100重量部を含み、かつ、導電層の5〜50重量%が前記針状の微粒子とすることにより、形成することができる。
【0017】
本発明では、樹脂フィルムと機能性層の間に、上記導電層以外に、1層以上の導電層が含まれていてもよい。この場合の導電層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の導電層を採用することができる。これらの導電層も、上記樹脂フィルムに隣接する導電層と同義の導電層であることが好ましい。これらの導電層は2層以下が好ましく、含まれていないことがより好ましい。尚、機能性層が導電層である場合、樹脂フィルム/導電層/機能性層としての導電層等の構成も本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0018】
樹脂フィルム
本発明で用いる樹脂フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、ABS等のスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエステルエーテル、ポリアミドイミド等が挙げられる。これらの樹脂には各種添加剤、改質剤、無機フィラー等が配合されていても良い。さらに、コスト面から考えると、熱可塑性樹脂のリサイクル材、スクラップ材、廃材等が成形性を損なわない程度に配合されていてもよい。
樹脂フィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、30〜300μmであることがさらに好ましい。
また、樹脂フィルムの表面は、表面処理してもよい。例えば、コロナ処理、UV照射処理が挙げられる。このような処理を行った後に、導電層を設けることにより、密着性をより向上させることができる。
【0019】
機能性層
本発明における機能性層は特に定めるものではなく、用途や目的に応じて所望の機能性層を選択することができる。特に、本発明では、透明性の機能性層に用いた場合に、有益である。機能性層としては、例えば、機能性層としての透明導電層(例えば、(103Ω/□以下)のもの、ITO膜等)、耐傷層、耐候層、反射防止層、耐指紋性層、防汚層などが例示される。機能性層の厚さは、用途にもよるが、0.3〜30μmが好ましく、0.5〜10μmがさらに好ましい。機能性層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。機能性層は、塗布によって設けることが好ましい。塗布によって設けることにより、フィルム同士を貼り合わせたり、共押出で各層を設ける場合に比べて、著しく薄い層とすることができる。このため、コストダウンを図ることができる。また、共押出に比べて、層間の密着性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0020】
他の構成層
本発明では、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、機能性層の表面および樹脂フィルムの表面であって、導電性層が設けられていない側に他の構成層が設けられていても良い。また、機能性層の上に、さらに、機能性層が設けられていても良い。
【0021】
本発明の機能性フィルムは、例えば、窓貼り用フィルム、太陽電池用保護フィルム、ハードコートフィルム、防汚フィルム、耐指紋性フィルム、反射防止フィルム、タッチパネル等に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
2軸延伸により製造した厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率:1.65)の一方の表面に対して、コロナ放電処理を施した後、下記の塗布液のいずれかを乾燥膜厚で約120nmとなるようにして連続塗布を行い、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に導電層を積層した。この際の乾燥温度は155℃であった。
【0024】
<塗布液A−1>
水溶性ポリエステル樹脂(バインダ成分)(互応化学(株)製、プラスコートZ−687)、14 重量部
カルボジイミド構造を複数個有する化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2)、5重量部
界面活性剤A(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90)、0.2重量部
界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95液)、0.3重量部
二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物(石原産業(株)製、FS−10D、長軸長/短軸長で求める比=25、酸化アンチモン含有率3.5%)、1.5重量部
蒸留水、全体が1000重量部になるように添加
<塗布液A−2>
二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物を9.7重量部とした以外は塗布液A−1と同様に作製した。
<塗布液A−3>
二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物を14.6重量部とした以外は塗布液A−1と同様に作製した。
<塗布液A−4>
二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物を19.4重量部とした以外は塗布液A−1と同様に作製した。
【0025】
<塗布液B>
アクリル酸アルキル共重合体エマルション(バインダ成分)(東亜合成化学(株)製、ジュリマーET-410)、14重量部
カルボジイミド構造を複数個有する化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2)、5重量部
界面活性剤A(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90)、0.2重量部
界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95)、0.3重量部
二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物(石原産業(株)製、FS−10D、長軸長/短軸長で求める比=25、酸化アンチモン含有率3.5%)、9.7重量部
蒸留水、全体が1000重量部になるように添加
【0026】
<塗布液C>
水溶性ポリエステル樹脂(バインダ成分)(互応化学(株)製、プラスコートZ−687)、14 重量部
カルボジイミド構造を複数個有する化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2)、5重量部
界面活性剤A(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90)、0.2重量部
界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95)、0.3重量部
カーボンブラック(ライオン製、ライオンペーストW356A)、20重量部
蒸留水、全体が1000重量部になるように添加
【0027】
<塗布液D>
水溶性ポリエステル樹脂(バインダ成分)(互応化学(株)製、プラスコートZ−687)、14 重量部
カルボジイミド構造を複数個有する化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2)、5重量部
界面活性剤A(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90)、0.2重量部
界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95)、0.3重量部
二酸化錫−アンチモン複合金属酸化物(アスペクト比:1.5)、9.7重量部
蒸留水、全体が1000重量部になるように添加
【0028】
<塗布液E>
水溶性ポリエステル樹脂(バインダ成分)(互応化学(株)製、プラスコートZ−687)、14 重量部
カルボジイミド構造を複数個有する化合物(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2)、 5重量部
界面活性剤A(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90)、0.2重量部
界面活性剤B(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95)、0.3重量部
二酸化錫−アンチモン複合金属酸化物(アスペクト比:1.5を凝集させたもの)、9.7重量部
蒸留水、全体が1000重量部になるように添加
【0029】
上記で作成したポリエチレンテレフタレートフィルム上に導電層を積層したサンプルの上に、それぞれ、下記組成の透明ハードコート層塗布液を乾燥膜厚で約5μmになるようにして連続塗布を行い、ハードコート層を積層した(サンプルH101〜I108)。
【0030】
<透明ハードコート塗布液>
電離放射線硬化型有機無機ハイブリッドハードコート剤(JSR製、デソライト7501)、100重量部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア651)、40重量部
メチルエチルケトン、50重量部
トルエン、20重量部
【0031】
実施例2
実施例1で得たそれぞれのサンプルの透明ハードコート層の上に透明導電層としてのITO(Indium tin oxide)膜を形成し、サンプルI101〜I108を得た。ITO形成手段としては、DCスパッタリングを用いた。また、ターゲットとしては、インジウム:錫=90:10のターゲットを使用した。スパッタリング手段の真空室内の圧力を予め10-3Paとし、この真空室にアルゴン(Ar)と酸素(O2)との混合ガスを導入しながら、5×10-1Paの圧力下でスパッタリングを実施した。得られた導電層の屈折率は2.05、厚みは、100nmであった。
【0032】
実施例3
実施例1の透明ハードコート層の替わりにフッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)、100重量部にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、TINUVIN328、20重量部を添加した塗布液を連続塗布して、サンプルF101〜F108を得た。
【0033】
実施例4
実施例1の透明ハードコート層の替わりにアルコキシシリコーンオリゴマー(信越化学工業株式会社製、X−40−925 0)100重量部、チタン系硬化触媒(信越化学工業株式会社製、D−20)5重量部、ブタノール100重量部を混合して調整したシロキサン系塗布液を連続塗布して、サンプルS101〜108を得た。
【0034】
上記で得られたサンプルについて、以下の評価を行った。
【0035】
<導電性層の表面抵抗の測定方法>
導電性層の表面抵抗は、ハイレスタUP(三菱化学アナリテック製)にて測定した。
【0036】
<塗布層の屈折率の測定方法>
市販のシリコンウエハ上に、乾燥後の厚みが3〜4μmとなるように塗布液を塗布して塗布層を設けた。この塗布層を105℃で10分間加熱して乾燥させ、屈折率測定用のサンプルを作製した。次に、このサンプルを屈折率測定機(SPA−4000(Sairon Technology,Inc.社製))にセットして、プリズムカプラ法により波長660nmと850nmとで塗布層の屈折率を測定した。次に、660nmと850nmとの各波長と、各波長における屈折率の測定値とを下記式(1)で表されるセルメイヤーの式にそれぞれ代入し、定数A及びBを算出した後、この定数A及びBから波長を550nmとしたときの屈折率を算出した。ただし、式(1)中のλは、測定波長(nm)であり、Nは測定波長での屈折率である。これにより求めた波長550nmにおける屈折率は1.65であった。
N−1=A・λ/(λ−B)・・・(1)
上記方法によって屈折率を測定し、下記式(I)の数値を算出した。
式(I)
【化4】

(Ndaは樹脂フィルムに隣接する導電層の屈折率を、Ndfは樹脂フィルムの屈折率を、Ndcは機能性層の屈折率をそれぞれ示す。)
【0037】
<透明性の評価>
透明性は、全光線透過率とヘイズの加熱処理前後での変化量とを測定し、この測定結果により評価した。全光線透過率とヘイズとは、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株))を用いて、JIS−K−7105に準じて測定した。以下の区分によって、評価した。
<透過率>
○:90%以上
△:85%以上90%未満
×:85%未満
<ヘイズ>
○:1.0未満
△:1.0以上3.0未満
×:3.0以上
【0038】
<虹ムラの有無>
虹ムラの有無は以下のように評価した。まず、作製したサンプルの観察する面とは反対面であるポリエチレンテレフタレートフィルムの表面をサンドペーパーで適量擦った。その後、この削った面に対して、マジックインキ(artline油性マーカー、補充インキはKR-20クロ、Shachihata(株)製)を塗工し、塗工したインキを乾燥させた。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面での反射を防止するために、波長が500nmの光の透過率が1%以下となるように調整した。次に、このサンプルのポリエチレンテレフタレートフィルム面が下になるように、すなわち導電層を上に向けて、サンプルを机の上に置き、サンプルの上方30cmの位置から3波長蛍光灯(商品名:ナショナルパルック蛍光灯、FL20S・EX−D/18)を用いて、サンプルを照らした。そして、光を照らすことにより発生する干渉斑を、目視により観察した。この観察で見られた干渉斑を虹ムラとして、虹ムラの発生の有無及び程度を、下記の評価基準により3段階で評価した。なお、下記の評価においてレベル△以上、すなわち○と△とが、製品上問題がないレベルである。
【0039】
○:正面を含むいずれの角度からサンプルを観察しても虹ムラが見えない場合
△:正面からは虹ムラが見えず、正面以外の角度からサンプルを観察すると虹ムラがわずかに見える程度である場合
×:正面から観察しても虹ムラが見える場合
【0040】
<耐傷性評価>
スチールウール(#0000)を1kg/inch2荷重で10往復させた後のサンプル傷数で下記のように判断した。
○:無傷
△:100未満
×:100以上
【0041】
<表面抵抗>
ITO膜の表面抵抗は以下の手順に従って評価した。
表面抵抗は、ロレスターGP(三菱化学アナリテック製)にて4端子法にて測定した。サンプルの測定面を30cm角の範囲で任意に25点測定したときの表面抵抗値の変動係数を求めた。
変動係数は、平均/標準偏差 ×100 [%] で定義する。
○: 15%未満
△: 15%以上30%未満
×: 30%以上
【0042】
<耐候性評価方法>
メタリングバーチカルウェザーメーター(スガ試験機製、MV3000)を用いて0.53kW/m2(波長:300〜400nm)、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%で2000時間、試験用サンプルに対して紫外線暴露試験を実施した。紫外線照射前後のサンプルのUV−visを日立製の分光光度計(U-3200)で測定し、330nmの波長での吸収を測定し、照射前後の吸収の比をT(abs.)とした。得られた結果は、以下のように評価し、結果を下記表に示した。
T(Abs.)=紫外線照射後の吸収(330nm)/紫外線照射前の吸収(330nm)
(評価)
◎ : 6 > T(Abs.)
○ : 13 > T(Abs.) ≧ 6
△ : 25 ≧ T(Abs.) ≧ 13
× : T(Abs.) > 25
【0043】
上記の結果を下記表に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0044】
上記表から明らかなとおり、本発明の機能性フィルムは、塗布ムラがないため、虹ムラが発生しなかった。さらに、透明性にも優れたフィルムが得られていることが分かった。これに対し、導電層の表面抵抗が本発明の範囲外である場合や、屈折率が所定の関係式を満たさない場合、虹ムラの発生が起こったり、透明性が劣る等の問題があることが分かった。さらに本発明の機能性フィルムは、機能性層が本来有する機能(耐傷性、表面抵抗、耐光性等)を発揮していることが確認された。
【0045】
本発明では、導電性金属酸化物微粒子に針状酸化物微粒子を用いたことで、導電性と透過性の両立が達成でき、さらに干渉縞などの光学的なムラを生じず、かつその上層に塗布する機能性層の塗布ムラを抑制できる。特に、これらの性能を両立させることは難しかったが、この点を達成できた点に意義がある。
【符号の説明】
【0046】
1 樹脂フィルム
2 易接着層
3 機能性層
4 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられた、1層または2層以上の導電層と、該導電層の表面に設けられた機能性層とを有し、
導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層の表面抵抗値が107〜1013Ω/cm2であり、
導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層がバインダと導電性針状金属酸化物微粒子を含み、かつ、下記式(I)の数値が0.05以下を満たすことを特徴とする機能性フィルム。
式(I)
【化1】

(Ndaは樹脂フィルムに隣接する導電層の屈折率を、Ndfは樹脂フィルムの屈折率を、Ndcは機能性層の屈折率をそれぞれ示す。)
【請求項2】
導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層の厚みが、[{400/(4×Nda)}/2]nm以上[2×{700/(4×Nda)}]nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の機能性フィルム。
【請求項3】
前記金属酸化物が、錫および/またはアンチモンを含む酸化物である、請求項1または2に記載の機能性フィルム。
【請求項4】
前記金属酸化物はアンチモンがドープされた酸化錫である、請求項1または2に記載の機能性フィルム。
【請求項5】
樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられた、1層または2層以上の導電層と、該導電層の表面に設けられた機能性層とを有し、導電層のうち、樹脂フィルムに隣接する導電層が、バインダ100重量部に対し、アンチモンがドープされた酸化錫であって針状の微粒子10〜100重量部を含み、かつ、導電層の5〜50重量%が前記針状の微粒子であることを特徴とする機能性フィルム。
【請求項6】
前記導電層が、架橋剤および/または界面活性剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項7】
前記機能性層が、透明導電層、耐傷層、耐候層、反射防止層、耐指紋性層および防汚層から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項8】
前記樹脂フィルムの表面に、バインダと導電性針状金属酸化物微粒子を含む組成物を塗布することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の機能性フィルムの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−166544(P2012−166544A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1945(P2012−1945)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】