説明

機能性有機粒子、およびその製造方法

本発明は、有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子を含む機能性有機粒子であって、機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子の分布が増加することを特徴とする機能性有機粒子、およびこの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性有機粒子、およびその製造方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子を含む機能性有機粒子であり、少ない量の機能性ナノ粒子を用いても優れた機能性を示す機能性有機粒子、および、この製造方法に対するものである。
【0002】
本出願は、2005年6月1日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2005−0046706号の出願日の利益を主張し、その全ての内容は本明細書に含まれている。
【背景技術】
【0003】
機能性有機粒子の一例である伝導性有機粒子は、従来、乳化重合または分散重合によって合成された微細有機粒子の表面に、後処理過程として、白金などの金属を電着させる方法を用いて製造された。このような従来の方法は、微細有機粒子の表面に均一で薄い伝導性膜を形成させることができるという長所がある。しかし、重合または電着可能な原料を選定することが難しく、電着可能な原料の価格が高くて、大量生産が難しいという短所がある。
【0004】
このような短所を克服するために、韓国公開特許公報第2003−0049007号には、ナノサイズの銀コロイド溶液、単量体、乳化剤、開始剤などを混合した後、乳化重合、分散重合、マイクロ乳化重合などの方法によって銀粒子を樹脂組成物としてカプセル化させる方法が記載されている。
【0005】
しかし、前記方法で製造されるカプセルは、高分子樹脂の内部に銀粒子が不規則的に分散しているため、高分子樹脂の内部に深く組み込まれた銀粒子は自身の役割を果たすことができなくなり、十分な効果を得るためには多い量の銀粒子を添加しなければならないという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、少ない量の機能性ナノ粒子を含んでも優れた機能性を示す機能性有機粒子の構造を明らかにした。また、本発明者らは、前記のような構造の機能性有機粒子を均一な形態および狭い粒径分布を有するように製造する方法を明らかにした。ここで、本発明は、前記構造を有する機能性有機粒子、および、この製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、有機高分子マトリックス、および前記有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子を含む機能性有機粒子であり、中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子の分布量が増加する機能性有機粒子を提供する。
【0008】
また、本発明は、有機高分子マトリックス、および前記有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子を含む機能性有機粒子の製造方法として、単量体、分子量調節剤、および機能性ナノ粒子を混合して単量体混合物を製造するステップと、前記単量体混合物に重合開始剤を入れて反応させる第一次反応ステップと、および、前記第一次反応の生成物を分散剤溶液と混合して、前記機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子の分布量を増加させるのに必要な遠心力を加えながら反応させる第2次反応ステップとを含む機能性有機粒子の製造方法を提供する。
【0009】
前記機能性有機粒子の製造方法は、前記第2次反応ステップ以後に、前記第2次反応の生成物に、前記第2次反応ステップにおいて加えられる遠心力より弱い遠心力を加えながら反応させる第3次反応ステップをさらに含むことができる。
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の機能性有機粒子の一例を示す断面図である。ただし、本発明の機能性有機粒子が図1の構成にのみ限定されるものではない。図1を参考にすれば、本発明の機能性有機粒子10は、有機高分子マトリックス11、および前記有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子12を含み、前記機能性有機粒子10の中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子12の分布量が増加することを特徴とする。
【0012】
機能性ナノ粒子の含量が機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に増加する場合に、表面近くに位置する機能性ナノ粒子の分布量が増加して、機能性ナノ粒子の活用度が増加し、これに伴って、少ない量の機能性ナノ粒子のみでも、相対的に優れた機能を示す機能性有機粒子になることができる。
【0013】
前記機能性有機粒子に含まれる有機高分子マトリックスを構成する単量体は特別に限定されないが、一つ以上のビニル基を有する単量体が好ましい。具体的には、i)スチレン、モノクロロスチレン、メチルスチレン、およびジメチルスチレンからなる群から選択される1種以上の芳香族ビニル系単量体;ii)メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される1種以上のアクリレート系単量体;iii)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、および2−エチルヘキシルメタクリレートからなる群から選択される1種以上のメタクリレート系単量体;およびiv)ブタジエン、およびイソプレンからなる群から選択される1種以上のジエン系単量体からなる群から選択される1種以上の単量体を用いることができる。
【0014】
また、有機高分子マトリックスは、単量体に、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサメチレンジアクリレート、アリルメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、およびテトラアリルオキシエタンからなる群から選択される1種以上の架橋剤を付加して重合することが好ましい。架橋剤は機能性有機粒子の機械的強度を向上させられる。
【0015】
前記有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子は、これが含まれる有機粒子に目的とする機能を付与するものであれば、その機能や材料の種類は限定されない。本発明においては、前記機能性ナノ粒子は、例えば、伝導性ナノ粒子、カラーナノ粒子、帯電制御剤(charge control agents)ナノ粒子などであり得る。帯電制御剤を高摩擦の帯電特性ナノ粒子として用いる場合、帯電防止機能性の有機粒子を製造することが可能である。
【0016】
伝導性ナノ粒子は、a)銅、銀、金、白金、インジウムスズ酸化物(ITO)、およびアンチモンスズ酸化物(ATO)からなる群から選択される1種以上の機能性金属;b)カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノホーン、カーボンナノリング、およびカーボンナノワイヤからなる群から選択される1種以上のナノカーボン、またはc)これらの中から選択される2種以上を含む混合物からなるものとできる。
【0017】
前記機能性ナノ粒子は、前記機能性有機粒子の全体重量に対して、0.1〜50重量%で含まれることが好ましい。機能性ナノ粒子の含量が0.1重量%未満の場合には、前記機能性有機粒子が十分な機能性を表すことができず、50重量%を超過する場合には、本発明の機能性有機粒子の構造を形成し難い。
【0018】
本発明の機能性有機粒子は、100nm〜1mmの粒径を有することが好ましく、0.5〜100μmの粒径を有することがさらに好ましい。機能性有機粒子の粒径が100nm未満の場合には、取り扱いが容易ではなく、1mmを超過する場合には、機能性ナノ粒子の間の間隙が大きくなって、機能性有機粒子が機能性ナノ粒子によって付与される機能性を十分に表さないこともある。
【0019】
また、前記機能性有機粒子に含まれる機能性ナノ粒子は、10nm〜100μmの粒径を有することが好ましく、10nm〜1μmの粒径を有することがさらに好ましい。機能性ナノ粒子の粒径が10nm未満の場合には、機能性ナノ粒子が特定の分布を成し難く、100μmを超過する場合には、本発明の機能性有機粒子の構造を形成し難い。
【0020】
ただし、前記機能性ナノ粒子が本発明で望む分布を成すためには、前記粒径範囲内で機能性ナノ粒子の粒径が前記機能性有機粒子の粒径の1/4以下であることが好ましい。
【0021】
特に、前記機能性有機粒子は、機能性有機粒子の表面から中心方向に機能性有機粒子半径の50%になる地点までの外郭領域内に機能性ナノ粒子の全体の数の70%〜100%が含まれることが好ましい。外郭領域に含まれる機能性ナノ粒子の数が全体の70%未満の場合には、ナノ粒子の安定化が難しく、機能性有機粒子での機能性向上の効果が微小である。
【0022】
図2は、機能性有機粒子の表面から中心方向に、粒子半径の50%になる地点23までの外郭領域24内に機能性ナノ粒子12の全体の数の70%〜100%を含む機能性有機粒子20の一例を示す断面図である。ただし、本発明の機能性有機粒子が図2の構成にのみ限定されるものではない。
【0023】
また、本発明の機能性有機粒子は、前記外郭領域24範囲の中で機能性ナノ粒子の全体の数の70%〜100%が含まれる機能性ナノ粒子の濃縮層の厚さが10nm以上であることがさらに好ましい。前記機能性ナノ粒子の濃縮層の厚さが10nm未満の場合には、機能性有機粒子を用いる過程で有機粒子の構造が崩れるようになり、前記機能性ナノ粒子が伝導性ナノ粒子の場合には、機能性有機粒子による伝導パスが断絶する恐れがある。
【0024】
図3は、外郭領域24の範囲の中で機能性ナノ粒子12の全体の数の70%〜100%が含まれる領域33の厚さが20nmである機能性有機粒子30の一例を示す断面図である。ただし、本発明の機能性有機粒子が図3の構成にのみ限定されるものではない。
【0025】
本発明の機能性有機粒子は、前記機能性ナノ粒子を機能性有機粒子の表面近くに濃縮させるために添加される機能性ナノ粒子安定化剤をさらに含むことができる。前記機能性ナノ粒子安定化剤は、温度や酸に敏感ではない高分子物質であることが好ましい。具体的には線状エステル系高分子、スチレン系高分子、およびアクリレート系高分子からなる群から選択される1種以上であることがさらに好ましく、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、およびスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体からなる群から選択される1種以上であることが最も好ましい。
【0026】
前記機能性有機粒子に含まれる機能性ナノ粒子が本発明の特定の構造を有するためには、前記機能性有機粒子の製造方法において、懸濁重合過程で遠心力を加えながら製造されることが好ましい。
【0027】
また、前記遠心力付加の効果を示すためには、前記機能性ナノ粒子は有機高分子マトリックスより比重が大きいことが好ましい。機能性ナノ粒子の比重が有機高分子マトリックスの比重より大きくない場合には、遠心力によっては前記のような機能性有機粒子の構造が形成されず、機能性ナノ粒子の分布を熱力学的な方法にのみ依存しなければならないため、機能性ナノ粒子を機能性有機粒子の表面近くに濃縮させ難い。
【0028】
本発明の機能性有機粒子は、単量体、分子量調節剤、および機能性ナノ粒子を混合して単量体混合物を製造するステップと、前記単量体混合物に重合開始剤を入れて反応させる第一次反応ステップと、前記第一次反応の生成物を分散剤溶液と混合して、前記機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子の分布量を増加させるのに必要な遠心力を加えながら反応させる第2次反応ステップとを含む機能性有機粒子の製造方法によって製造される。
【0029】
前記機能性有機粒子の製造方法は、前記第2次反応ステップ以後に、前記第2次反応の生成物に、前記第2次反応ステップにおいて加えられる遠心力より弱い遠心力を加えながら反応させる第3次反応ステップをさらに含むことができる。
【0030】
前記分散剤溶液は、非活性溶媒に分散剤が含まれた溶液を示す。前記非活性溶媒の非制限的の例としては水がある。
【0031】
前記分子量調節剤は、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、四塩化炭素および四臭化炭素からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0032】
前記単量体混合物を製造するステップで、機能性ナノ粒子安定化剤をさらに添加することもできる。また、前記単量体混合物を製造するステップで、架橋剤をさらに添加することもできる。
【0033】
前記機能性有機粒子の製造方法において、単量体、機能性ナノ粒子安定化剤、機能性ナノ粒子、および架橋剤に関する事項は上記事項と同一であるため、以下詳細な説明を省略する。
【0034】
前記単量体混合物は、単量体100重量部に対し、分子量調節剤0.001〜8重量部、および機能性ナノ粒子0.1〜50重量部を混合して製造されることが好ましく、さらに入れる機能性ナノ粒子安定化剤は、0.1〜50重量部で含まれることが好ましい。単量体混合物の成分が前記範囲を外れる場合には、本発明の機能性有機粒子の構造を形成し難い。
【0035】
前記単量体混合物の製造方法は特別に限定されないが、常温で500〜3000rpmの回転速度で30分〜5時間の間混合することが好ましく、ビーズミル(bead mill)を用いて混合することがさらに好ましい。
【0036】
前記単量体混合物に添加される重合開始剤としては通常的な重合開始剤を用いることができる。具体的には、付加重合開始剤を使用でき、この例では、アゾ系開始剤、有機パーオキサイド系開始剤、または過硫酸塩などを使用でき、好ましくはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムからなる群から選択される1種以上の重合開始剤を用いることができる。
【0037】
前記重合開始剤の含量は、通常的な重合反応に用いられる含量範囲内で選択的に用いることができるため、特別に限定されない。付加重合の場合、単量体100重量部に対し、0.01〜5重量部で用いられることが好ましく、0.1〜2重量部で用いられることがさらに好ましい。重合開始剤の含量が0.01重量部未満の場合には、反応進行速度が遅く、望む反応収率を得ることができず、5重量部を超過する場合には、機能性ナノ粒子の分散性が落ちて、好ましい機能性有機粒子を製造することができなくなる。
【0038】
前記第一次反応は、30〜95℃で攪拌し、1〜30分の間反応させることが好ましい。第一次反応温度が30℃未満であるか、反応時間が1分未満の場合には、重合開始剤による十分な開始がなされない。また、第一次反応温度が95℃を超過するか、30分を超過する場合には過度な反応で反応物の粘度が上昇して均一な粒子形成が難しくなる。
【0039】
前記第一次反応とは別に、30〜95℃の温度を有する分散剤溶液を用意する。第一次反応の生成物の急激な温度変化を防ぐために、前記分散剤溶液の温度は第一次反応の生成物の温度と同一に維持することがさらに好ましい。
【0040】
前記第2次反応ステップでは、前記分散剤溶液に前記第一次反応の生成物を混合して反応させるが、この時、分散剤は機能性有機粒子の粒径分布を最適化するためのものである。分散剤では、a)シリカ、不溶性カルシウム塩および不溶性マグネシウム塩からなる群から選択される1種以上の無機分散剤;b)脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、およびアルキルリン酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオン性界面活性剤;またはc)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリビニールアルコール、アルキルセルロース、およびポリビニールピロリドンからなる群から選択される1種以上の非イオン性界面活性剤の中から選択される1種以上であることが好ましく、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム塩、水酸化マグネシウム塩、またはポリビニールアルコールであることがさらに好ましい。
【0041】
前記分散剤溶液中の非活性溶媒は水であることが好ましく、この場合に分散剤水溶液に含まれる分散剤の濃度は特別に限定されないが、水100重量部に対し、0.1〜50重量部で含まれることが好ましい。分散剤の含量が0.1重量部未満の場合には、分散剤の効果が微小で、50重量部を超過する場合には、乳化重合による副反応により、機能性ナノ粒子を含まない粒子が生成されて、機能性有機粒子の形成が不均一になる。
【0042】
前記第2次反応ステップは、前記第一次反応の生成物と分散剤溶液との重量比を1:95〜50:50で混合して進めることが好ましい。第一次反応の生成物と分散剤溶液との重量比が1:95未満の場合には、分散効果は優れるが、最終的に得られる機能性有機粒子の生成量が微小で、商業的生産が難しく、50:50を超過する場合には、分散安定性を確保し難くて、重合反応の途中で大きい粒子が形成される。
【0043】
前記第2次反応ステップは、30〜95℃で5〜60分間進めることが好ましい。第2次反応の温度が30℃未満であれば、重合開始剤の十分な開始ができず、反応を進めるのに充分ではない。反応時間が5分未満の場合には、粒子に対する遠心力の作用時間が充分でなくなり、望む粒子構造に不充分であったり、相対的に短い剪断力作用時間のため機能性有機粒子の粒径が均一ではない。第2次反応の温度が95℃を超過するか、60分を超過する場合には、過度な反応で反応物の凝集が発生する恐れがある。
【0044】
また、前記第2次反応ステップでは、反応物に、前記機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子の分布量を増加させるのに必要な遠心力を加えながら進めることが好ましい。第2次反応ステップで加えられる遠心力は、一般的な攪拌器、またはホモジナイザーを用いて加えられ、ホモジナイザーを用いることがさらに好ましい。
【0045】
前記機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子の分布量を増加させるのに必要な前記遠心力は、目標にする機能性有機粒子の粒径および分布により変わり、概略的に50G〜5000G範囲で加えられることが好ましい。前記遠心力が50G未満の場合には、機能性ナノ粒子が機能性有機粒子の外側に分布することができず、5000Gを超過する場合には、過度な遠心力により機能性有機粒子の構造が崩れるようになる。
【0046】
前記第2次反応ステップで加えられる遠心力は、攪拌器、特にホモジナイザーのローターの回転速度によって加えられる遠心力(空転遠心力)と機能性有機粒子に加えられる剪断力によって発生する粒子の回転による粒子内部の遠心力(自転遠心力)に区分される。2種類の遠心力が共に作用させて、機能性ナノ粒子が機能性有機粒子の表面方向に位置するようにする。
【0047】
前記第3次反応ステップは、30〜95℃で5〜30時間の間、好ましくは5〜15時間の間反応を持続させて進めることが好ましい。また、前記第3次反応ステップでは、第2次反応ステップより小さい遠心力を加えることが好ましい。例えば、1G〜1000Gの範囲で第2次反応ステップにおける遠心力よりは小さい遠心力が好ましい。この時も第2次反応ステップと同様に空転遠心力と自転遠心力が機能性有機粒子に作用する。
【0048】
前記遠心力による機能性ナノ粒子の機能性有機粒子の表面への集中現象は、重合反応初期に主に生じ、重合反応がある程度進行されれば、有機高分子マトリックスの粘度が増加し、機能性ナノ粒子の表面集中速度が急激に低下する。
【0049】
したがって、効果的な機能性有機粒子を製造するためには、機能性ナノ粒子安定化剤の設計、攪拌器を用いた遠心力および反応速度の制御が適切に組み合わせなければならない。
【0050】
前記第3次反応ステップが終結した後には、必要により反応過程で添加された前記分散剤と反応ステップで生成された凝集物とを除去する後処理段階を実施する。
【0051】
前記後処理ステップ中で分散剤を除去する方法は特別に限定されないが、コロイダルシリカの場合、第3次反応ステップが終結した機能性有機粒子懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウムの濃度が0.05〜0.2Nになるように合わせる方法が用いられる。
【0052】
また、前記反応ステップで生成された凝集物はふるい(mesh)を用いて濾すことができる。ふるいの大きさは目標とする機能性有機粒子の大きさによって任意に選択することができる。
【0053】
前記分散剤と凝集物が除去された第3次反応の生成物は、再び遠心分離−デカンテーション−再分散過程に供し、この過程で残っている分散剤と反応副産物が除去される。
【0054】
前記分散剤と反応副産物が除去された第3次反応の生成物を再びフィルタリングして水分を除去し、乾燥して最終的な機能性有機粒子を製造することができる。表面に機能性ナノ粒子が分布した機能性有機粒子の断面を撮ったTEM写真が図4に例示されている。
【0055】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
(機能性有機粒子粉末製造)
内容積500mlの反応器に、分散剤としてコロイダルシリカ10gを蒸溜水400gに溶かして、反応温度の70℃に温度を高めて、分散剤溶液を用意した。
【0057】
これと別途に、スチレン160g、ブチルアクリレート40g、架橋剤としてアリルメタクリレート4g、および分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン0.02gを入れて混合した後、機能性ナノ粒子安定化剤としてスチレン含量が30重量%であり、重量平均分子量が70,000g/moleのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体3.5gを前記混合物に十分に溶かして、平均粒径50nmのインジウムスズ酸化物(ITO)10gを添加した後、ビーズミルによって2000rpmで2時間の間攪拌した後、ビーズを除去して単量体混合物105gを得た。
【0058】
前記単量体混合物を70℃の湯煎に入れて温度を高めた後、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル2gを添加して5分の間攪拌させながら、第一次反応に供した。
【0059】
前記第一次反応の生成物を予め用意した分散剤溶液と混合して、ホモジナイザーを用いて70℃で2000Gの遠心力で20分間攪拌しながら、第2次反応を実施した。
【0060】
一般的な攪拌器を用いて、前記第2次反応の生成物を70℃で15Gの遠心力で15時間の間第3次反応に供して、機能性有機粒子を製造した。
【0061】
(後処理)
前記製造された機能性有機粒子は、懸濁液の状態として存在し、前記懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、水酸化ナトリウムの濃度を0.1Nの濃度に合わせることによって、分散剤のシリカを機能性有機粒子の表面で除去した。
【0062】
前記過程の後で、No.150メッシュのふるいで濾して凝集物を除去した後、乾燥した。
【0063】
前記乾燥後に残った第3次反応の生成物を遠心分離−デカンテーション−再分散する過程を繰り返して、分散剤と反応副産物を除去した。また、残った生成物をフィルタリングして水分を除去し、残った機能性有機粒子ケーキを48時間の間常温で真空乾燥して機能性有機粒子粉末を製造した。
【0064】
<実施例2>
(機能性有機粒子粉末製造)
内容積500mlの反応器に、分散剤としてコロイダルシリカ10gを蒸溜水400gに溶かして、反応温度の70℃に温度を高めて分散剤溶液を用意した。
【0065】
これと別途に、スチレン160g、ブチルアクリレート40g、架橋剤としてアリルメタクリレート4g、および分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン0.02gを入れ、機能性ナノ粒子安定化剤としてスチレン含量が30重量%で、重量平均分子量が70,000g/moleであるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体3.5gを十分に溶かして、平均粒径13nmのカーボンブラックFW200(Degussa)2gを添加した後、ビーズミルによって2000rpmで2時間の間攪拌した後、ビーズを除去して単量体混合物105gを得た。
【0066】
前記単量体混合物を70℃の湯煎に入れて温度を高めた後、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル2gを添加して5分の間攪拌させながら、第一次反応に供した。
【0067】
前記第一次反応の生成物を予め用意した分散剤水溶液と混合して、ホモジナイザーを用いて70℃で2000Gの遠心力で20分間攪拌しながら、第2次反応を実施した。
【0068】
一般的な攪拌器を用いて、前記第2次反応の生成物を70℃で15Gの遠心力で15時間の間第3次反応に供して、機能性有機粒子を製造した。
【0069】
(後処理)
前記製造された機能性有機粒子は、懸濁液の状態として存在し、前記懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、水酸化ナトリウムの濃度を0.1Nの濃度で合わせることによって、分散剤のシリカを機能性有機粒子の表面で除去した。
【0070】
前記過程後で、No.150メッシュのふるいで濾して凝集物を除去した後、乾燥した。
【0071】
前記乾燥後で残った生成物を遠心分離−デカンテーション−再分散する過程を繰り返して、分散剤と反応副産物を除去した。その後、残った生成物をフィルタリングして水分を除去し、残った機能性有機粒子ケーキを48時間の間常温で真空乾燥して機能性有機粒子粉末を製造した。
【0072】
<実施例3>
(機能性有機粒子粉末製造)
内容積500mlの反応器に、分散剤としてコロイダルシリカ10gを蒸溜水400gに溶かして、反応温度の70℃に温度を高めて、分散剤溶液を用意した。
【0073】
これと別途に、スチレン160g、ブチルアクリレート40g、架橋剤としてアリルメタクリレート4g、および分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン0.02gを入れて、機能性ナノ粒子安定化剤としてスチレン含量が30重量%で、重量平均分子量が70,000g/moleのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体3.5gを十分に溶かして、平均粒径50nmのインジウムスズ酸化物(ITO)20gを添加した後、ビーズミルによって2000rpmで2時間の間攪拌した後、ビーズを除去して単量体混合物105gを得た。
【0074】
前記単量体混合物を70℃の湯煎に入れて温度を高めた後、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル2gを添加して5分の間攪拌させながら、第一次反応に供した。
【0075】
前記第一次反応の生成物を予め用意した分散剤水溶液と混合して、一般的な攪拌器を用いて70℃で50Gの遠心力で20分間攪拌しながら、第2次反応を実施した。
【0076】
一般的な攪拌器を用いて、前記第2次反応の生成物を70℃で40Gの遠心力で15時間の間第3次反応して、機能性有機粒子を製造した。
【0077】
(後処理)
前記製造された機能性有機粒子は、懸濁液の状態として存在し、前記懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、水酸化ナトリウムの濃度を0.1Nの濃度で合わせることによって、分散剤のシリカを機能性有機粒子の表面で除去した。
【0078】
前記過程後で、No.150メッシュのふるいで濾して凝集物を除去した後、乾燥した。
【0079】
前記乾燥後で残った生成物を遠心分離−デカンテーション−再分散する過程を繰り返して、分散剤と反応副産物を除去した。その後、残った生成物をフィルタリングして水分を除去し、残った機能性有機粒子ケーキを48時間の間常温で真空乾燥して機能性有機粒子粉末を製造した。
【0080】
<実施例4>
機能性ナノ粒子安定化剤としてスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS:styrene−ethylene−butylene−styrene)3.5gと、機能性ナノ粒子としてカーボンナノチューブ10gを用いたのを除いては、実施例1と同一の方法で機能性有機粒子粉末を製造した。
【0081】
<比較例1>
(機能性有機粒子粉末製造)
内容積500mlの反応器に、分散剤としてコロイダルシリカ10gを蒸溜水400gに溶かして、反応温度の70℃に温度を高めて、分散剤溶液を用意した。
【0082】
これと別途に、スチレン160g、ブチルアクリレート40g、架橋剤としてアリルメタクリレート4g、および分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン0.02gを入れて、機能性ナノ粒子安定化剤としてスチレン含量が30重量%で、重量平均分子量が70,000g/moleのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体3.5gを十分に溶かして、平均粒径12nmのカーボンブラック0.1gを添加した後、ビーズミルによって2000rpmで2時間の間攪拌した後、ビーズを除去して単量体混合物105gを得た。
【0083】
前記単量体混合物を70℃の湯煎に入れて温度を高めた後、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル2gを添加して5分の間攪拌させながら、第一次反応に供した。
【0084】
前記第一次反応の生成物を予め用意した分散剤水溶液と混合して、ホモジナイザーを用いて70℃で4000Gの遠心力で20分間攪拌しながら、第2次反応を実施した。
【0085】
一般的な攪拌器を用いて、前記第2次反応の生成物を70℃で15Gの遠心力で15時間の間第3次反応して、機能性有機粒子を製造した。
【0086】
(後処理)
前記製造された機能性有機粒子は、懸濁液の状態として存在し、前記懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、水酸化ナトリウムの濃度を0.1Nの濃度で合わせることによって、分散剤のシリカを機能性有機粒子の表面で除去した。
【0087】
前記過程後で、No.150メッシュのふるいで濾して凝集物を除去した後、乾燥した。
【0088】
前記乾燥後で残った生成物を遠心分離−デカンテーション−再分散する過程を繰り返して、分散剤と反応副産物を除去した。その後、残った生成物をフィルタリングして水分を除去し、残った機能性有機粒子ケーキを48時間の間常温で真空乾燥して機能性有機粒子粉末を製造した。
【0089】
<比較例2>
(機能性有機粒子粉末製造)
内容積500mlの反応器に、分散剤としてコロイダルシリカ10gを蒸溜水400gに溶かして、反応温度の70℃に温度を高めて用意した。
【0090】
これと別途に、スチレン160g、ブチルアクリレート40g、架橋剤としてアリルメタクリレート4g、および分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン0.02gを入れて、機能性ナノ粒子安定化剤としてスチレン含量が30重量%で、重量平均分子量が70,000g/moleのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体3.5gを十分に溶かして、平均粒径50nmのインジウムスズ酸化物(ITO)100gを添加した後、ビーズミルによって2000rpmで2時間の間攪拌した後、ビーズを除去して単量体混合物105gを得た。
【0091】
前記単量体混合物を70℃の湯煎に入れて温度を高めた後、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル2gを添加して5分の間攪拌させながら、第一次反応に供した。
【0092】
前記第一次反応の生成物を予め用意した分散剤水溶液と混合して、一般的な攪拌器を用いて70℃で10Gの遠心力で20分間攪拌しながら、第2次反応を実施した。
【0093】
一般的な攪拌器を用いて、前記第2次反応の生成物を70℃で1Gの遠心力で15時間の間第3次反応に供して、機能性有機粒子を製造した。
【0094】
(後処理)
前記製造された機能性有機粒子は、懸濁液の状態として存在し、前記懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、水酸化ナトリウムの濃度を0.1Nの濃度で合わせることによって、分散剤のシリカを機能性有機粒子の表面で除去した。
【0095】
前記過程後で、No.150メッシュのふるいで濾して凝集物を除去した後、乾燥した。
【0096】
前記乾燥後で残った生成物を遠心分離−デカンテーション−再分散する過程を繰り返して、分散剤と反応副産物を除去した。また、残った生成物をフィルタリングして水分を除去し、残った機能性有機粒子ケーキを48時間の間常温で真空乾燥して機能性有機粒子粉末を製造した。
【0097】
<比較例3>
(機能性有機粒子粉末製造)
内容積500mlの反応器に、分散剤としてコロイダルシリカ10gを蒸溜水400gに溶かして、反応温度の70℃に温度を高めて用意した。
【0098】
これと別途に、スチレン160g、ブチルアクリレート40g、架橋剤としてアリルメタクリレート4g、および分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン0.02gを入れて、機能性ナノ粒子安定化剤としてスチレン含量が30重量%で、重量平均分子量が70,000g/moleのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体3.5gを十分に溶かして、平均粒径12nmのカーボンブラック5gを添加した後、ビーズミルによって2000rpmで2時間の間攪拌した後、ビーズを除去して単量体混合物105gを得た。
【0099】
前記単量体混合物を70℃の湯煎に入れて温度を高めた後、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル2gを添加して5分の間攪拌させながら、第一次反応に供した。
【0100】
前記第一次反応の生成物を予め用意した分散剤水溶液と混合して、一般的な攪拌器を用いて70℃で10Gの遠心力で20分間攪拌しながら、第2次反応を実施した。
【0101】
一般的な攪拌器を用いて前記第2次反応の生成物を70℃で1Gの遠心力で15時間の間第3次反応して、機能性有機粒子を製造した。
【0102】
(後処理)
前記製造された機能性有機粒子は、懸濁液の状態として存在し、前記懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、水酸化ナトリウムの濃度を0.1Nの濃度で合わせることによって、分散剤のシリカを機能性有機粒子の表面で除去した。
【0103】
前記過程後で、No.150メッシュのふるいで濾して凝集物を除去した後、乾燥した。
【0104】
前記乾燥後で残った生成物を遠心分離−デカンテーション−再分散する過程を繰り返して、分散剤と反応副産物を除去した。その後、残った生成物をフィルタリングして水分を除去し、残った機能性有機粒子ケーキを48時間の間常温で真空乾燥して機能性有機粒子粉末を製造した。
【0105】
<比較例4>
(有機粒子粉末製造)
内容積500mlの反応器に、分散剤としてコロイダルシリカ10gを蒸溜水400gに溶かして、反応温度の70℃で温度を高めて用意した。
【0106】
これと別途に、スチレン160g、ブチルアクリレート40g、架橋剤としてアリルメタクリレート4g、および分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン0.02gを入れて、スチレン含量が30重量%で、重量平均分子量が70,000g/moleのスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体3.5gを十分に溶かして、ビーズミルによって2000rpmで2時間の間攪拌した後、ビーズを除去して単量体混合物105gを取って用意した。
【0107】
前記単量体混合物を70℃の湯煎に入れて温度を高めた後、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル2gを添加して5分の間攪拌させながら、第一次反応に供した。
【0108】
前記第一次反応の生成物を予め用意した分散剤水溶液と混合して、ホモジナイザーを用いて70℃で2000Gの遠心力で20分間攪拌しながら、第2次反応を実施した。
【0109】
一般的な攪拌器を用いて、前記第2次反応の生成物を70℃で15Gの遠心力で15時間の間第3次反応に供して、有機粒子を製造した。
【0110】
(後処理)
前記製造された有機粒子は、懸濁液の状態として存在し、前記懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、水酸化ナトリウムの濃度を0.1Nの濃度で合わせることによって、分散剤のシリカを有機粒子の表面で除去した。
【0111】
前記過程後で、No.150メッシュのふるいで濾して凝集物を除去した後、乾燥した。
【0112】
前記乾燥後で残った生成物を遠心分離−デカンテーション−再分散する過程を繰り返して、分散剤と反応副産物を除去した。その後、残った生成物をフィルタリングして水分を除去し、残った有機粒子ケーキを48時間の間常温で真空乾燥して有機粒子を製造した。この有機粒子の表面に白金を電着させて白金層が0.1μmになるように用意した。
【0113】
前記実施例1〜4および比較例1〜4により製造された機能性有機粒子に対して、以下の方法で、様々な物性を測定し、その結果を以下の表1に整理した。
・平均粒径および粒径分布
マルチサイザ粒度測定器(multisizer coulter counter)を用いて、体積平均粒径を測定し、SEMを用いて、粒径の大きさおよび粒径分布を測定した。下記表1で粒径分布は粒径の標準偏差を意味する。
・機能性ナノ粒子の分布
TEMを用いて、機能性ナノ粒子の分布を測定した。
・電気伝導度
粉体抵抗測定装置を用いて、体積抵抗を測定することによって、機能性有機粒子の電気伝導度を測定した。
【0114】
【表1】

【0115】
前記表1で見るように、本発明の機能性有機粒子は粒径分布が均一で、優れた電気伝導度を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の機能性有機粒子は、少ない量の機能性ナノ粒子を用いる場合にも相対的に優れた機能を示すことができる。本発明で機能性ナノ粒子として伝導性ナノ粒子を用いる場合には、電磁波遮蔽用プラスチック、または電磁波遮蔽用コーティング組成物の有効成分として電磁波遮蔽機能を容易に向上させることができ、トナーの代わりに高解像度のパターン製造が可能なレーザープリンタ用現像剤としても用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、本発明の機能性有機粒子の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、機能性有機粒子の表面から中心方向に機能性有機粒子半径の50%になる地点までの外郭領域内に、機能性ナノ粒子の全体の数の70%〜100%を含む機能性有機粒子の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、外郭領域の範囲に機能性ナノ粒子の全体の数の70%〜100%が含まれる領域の厚さが20nmの機能性有機粒子の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、表面に機能性ナノ粒子が分布した機能性有機粒子の断面写真である。
【符号の説明】
【0118】
10 機能性有機粒子
11 有機高分子マトリックス
12 機能性ナノ粒子
20 機能性有機粒子
23 機能性有機粒子の表面から中心方向に、粒子半径の50%になる地点
24 機能性有機粒子の表面から中心方向に、粒子半径の50%になる地点までの外郭領域
30 機能性有機粒子
33 外郭良識の範囲の中で機能性ナノ粒子の全体の数の70〜100%が含まれる領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子マトリックス、および前記有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子を含む機能性有機粒子であって、前記機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に前記機能性ナノ粒子の分布量が増加することを特徴とする機能性有機粒子。
【請求項2】
前記機能性有機粒子は100nm〜1mmの粒径を有し、前記機能性ナノ粒子は10nm〜100μmの粒径を有し、前記機能性ナノ粒子の粒径が前記機能性有機粒子の粒径の1/4以下である請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項3】
前記機能性ナノ粒子の含量が機能性有機粒子の重量に対し、0.1〜50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項4】
前記機能性有機粒子の表面から中心方向に、機能性有機粒子の半径の50%になる地点までの外郭領域内に、機能性ナノ粒子の全体の数の70〜100%が含まれることを特徴とする請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項5】
前記機能性ナノ粒子数の70〜100%を含む領域の厚さが前記機能性有機粒子の表面から10nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項6】
前記機能性ナノ粒子は、有機高分子マトリックスより比重が大きいことを特徴とする請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項7】
前記機能性ナノ粒子は、伝導性ナノ粒子、カラーナノ粒子、または帯電制御剤ナノ粒子である請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項8】
前記伝導性ナノ粒子は、
a)銅、銀、金、白金、インジウムスズ酸化物(ITO)、およびアンチモンスズ酸化物(ATO)からなる群から選択される1種以上の機能性金属、
b)カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノホーン、カーボンナノリング、およびカーボンナノワイヤからなる群から選択される1種以上のナノカーボン、または
c)これらの中から選択される2種以上を含む混合物、
からなる請求項7に記載の機能性有機粒子。
【請求項9】
前記有機高分子マトリックスは、
i)スチレン、モノクロロスチレン、メチルスチレン、およびジメチルスチレンからなる群から選択される1種以上の芳香族ビニル系単量体、
ii)メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される1種以上のアクリレート系単量体、
iii)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、および2−エチルヘキシルメタクリレートからなる群から選択される1種以上のメタクリレート系単量体、ならびに
iv)ブタジエン、およびイソプレンからなる群から選択される1種以上のジエン系単量体、
からなる群から選択される1種以上の単量体から重合された有機高分子マトリックスであることを特徴とする請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項10】
前記有機高分子マトリックスが、単量体に、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサメチレンジアクリレート、アリルメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、およびテトラアリルオキシエタンからなる群から選択される1種以上の架橋剤を付加して重合されたことを特徴とする請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項11】
前記機能性有機粒子は、機能性ナノ粒子安定化剤をさらに含む請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項12】
前記機能性ナノ粒子安定化剤は、線状エステル系高分子、スチレン系高分子、およびアクリレート系高分子からなる群から選択される1種以上である請求項11に記載の機能性有機粒子。
【請求項13】
懸濁重合ステップにおいて遠心力を加えて製造された機能性有機粒子である請求項1に記載の機能性有機粒子。
【請求項14】
有機高分子マトリックス、および前記有機高分子マトリックスに分散した機能性ナノ粒子を含む機能性有機粒子の製造方法であって、
a)単量体、分子量調節剤、および機能性ナノ粒子を混合して単量体混合物を製造するステップ、
b)前記単量体混合物に重合開始剤を入れて反応させる第一次反応ステップ、および
c)前記第一次反応の生成物を分散剤溶液と混合して、前記機能性有機粒子の中心から粒径が増加する方向に、機能性ナノ粒子の分布量を増加させるのに必要な遠心力を加えながら反応させる第2次反応ステップ、
を含む機能性有機粒子の製造方法。
【請求項15】
前記c)ステップの後に、
d)前記第2次反応の生成物に、前記第2次反応ステップで加えられる遠心力より弱い遠心力を加えながら反応させる第3次反応ステップ、
をさらに含む請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項16】
前記a)ステップの単量体が
i)スチレン、モノクロロスチレン、メチルスチレン、およびジメチルスチレンからなる群から選択される1種以上の芳香族ビニル系単量体、
ii)メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される1種以上のアクリレート系単量体、
iii)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、および2−エチルヘキシルメタクリレートからなる群から選択される1種以上のメタクリレート系単量体、ならびに
iv)ブタジエン、およびイソプレンからなる群から選択される1種以上のジエン系単量体、
からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項17】
前記a)ステップにおいて、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサメチレンジアクリレート、アリルメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、およびテトラアリルオキシエタンからなる群から選択される1種以上の架橋剤をさらに添加して重合することを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項18】
前記a)ステップの分子量調節剤は、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクティルメルカプタン、四塩化炭素および四臭化炭素からなる群から選択される1種以上である請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項19】
前記a)ステップにおいて、機能性ナノ粒子安定化剤をさらに添加する請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項20】
前記a)ステップの単量体混合物は、単量体100重量部に対し、分子量調節剤0.001〜8重量部、および機能性ナノ粒子0.1〜50重量部を混合して製造され、前記b)ステップの重合開始剤は、単量体100重量部に対し、0.01〜5重量部で用いられることを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項21】
前記c)ステップの分散剤溶液は、
i)シリカ、不溶性カルシウム塩、および不溶性マグネシウム塩からなる群から選択される1種以上の無機分散剤、
ii)脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩からなる群から選択される1種以上のアニオン性界面活性剤、または
iii)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリビニールアルコール、アルキルセルロース、ポリビニールピロリドンからなる群から選択される1種以上の非イオン性界面活性剤、
から選択される1種以上の分散剤を含むことを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項22】
前記c)ステップにおいて分散剤溶液の非活性溶媒は水であり、水100重量部に対し、分散剤を0.1〜50重量部で含むことを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項23】
前記c)ステップにおいて前記第一次反応の生成物と分散剤溶液との重量比が1:95〜50:50であることを特徴とする請求項22に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項24】
前記c)ステップに加えられる遠心力は50〜5000Gであることを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項25】
前記d)ステップに加えられる遠心力は1〜1000Gであることを特徴とする請求項15に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項26】
前記b)ステップにおいては30〜95℃で1〜30分間攪拌し、c)ステップにおいては30〜95℃で50〜5000Gの遠心力を加えて5〜60分間攪拌する請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項27】
d)ステップにおいては30〜95℃で1G〜1000Gの遠心力を加えて5〜30時間の間攪拌する請求項15に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項28】
前記機能性有機粒子が100nm〜1mmの粒径を有し、前記機能性ナノ粒子は10nm〜100μmの粒径を有し、前記機能性ナノ粒子の粒径が前記機能性有機粒子の粒径の1/4以下であることを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項29】
前記機能性有機粒子内において、機能性ナノ粒子が前記機能性有機粒子の全体重量に対し、0.1〜50重量%の量で用いられることを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項30】
前記機能性ナノ粒子は、有機高分子マトリックスより比重が大きいことを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項31】
前記機能性ナノ粒子は、伝導性ナノ粒子、カラーナノ粒子、または帯電制御剤ナノ粒子である請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項32】
前記c)ステップの後に、分散剤、反応凝集物、および反応副産物を除去するステップをさらに実施することを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項33】
前記d)ステップの後に、分散剤、反応凝集物、および反応副産物を除去するステップをさらに実施することを特徴とする請求項15に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項34】
前記c)ステップの後に、フィルタリングによる水分除去と乾燥のステップをさらに実施することを特徴とする請求項14に記載の機能性有機粒子の製造方法。
【請求項35】
前記d)ステップの後に、フィルタリングによる水分除去と乾燥のステップをさらに実施することを特徴とする請求項15に記載の機能性有機粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−525611(P2008−525611A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549285(P2007−549285)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002098
【国際公開番号】WO2006/129969
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】