説明

機能性薄膜の製造方法、機能性薄膜、機能性薄膜積層基材の製造方法及び機能性薄膜積層基材

【課題】基材の制限を受けることなく基材上に積層又は固定化可能であり、良好な機能性及び屈曲強度又は引張り強度に優れる機能性薄膜の製造方法、機能性薄膜、機能性薄膜積層基材の製造方法及び機能性薄膜積層基材を提供する。
【解決手段】微粒子で構成されるネットワーク状構造又は網目状構造を有し、適切な加熱処理及び/又は化学処理を行った良好な機能性を有する機能性薄膜1を予め仮基材上に作成し、次に所望の基材2の積層又は固定化させたい面と機能性薄膜1の面とを接触するように向かい合わせ、次に仮基材と基材2を加圧及び/又は加熱し、基材2上へ機能性薄膜1を積層又は固定化させ、仮基材を取り除く手法を用いることで良好な機能性及び屈曲強度又は引張り強度に優れる機能性薄膜積層基材3を作成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性微粒子で構成された機能性薄膜とその製造方法及び基材へ機能性微粒子で構成された機能性薄膜を積層又は固定化した機能性薄膜積層基材の製造方法及び機能性薄膜積層基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機能性微粒子で構成される薄膜である所謂「機能性薄膜」は、電気・電子分野、光学分野、磁性分野、触媒分野など様々な分野で作成され利用されている。電気・電子分野であれば導電性微粒子(半導体微粒子、絶縁微粒子を含む)を用いた導電性薄膜、光学分野であれ誘電体微粒子や蛍光性微粒子を用いた光学薄膜、磁性分野であれば磁性微粒子を用いた磁性薄膜、触媒分野であれば触媒性微粒子を用いた触媒機能性薄膜などがある。
【0003】
これらの薄膜は気相法と呼ばれる、物理蒸着法、化学蒸着法、スパッタリング法などを用いて所望の基材上に機能性微粒子の連続膜を形成させて作成されている(例えば特許文献1参照)。また、必要に応じ薄膜作成時又は作成後に加熱処理が施されている。
【特許文献1】特開2006−131930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の気相法を用いた機能性薄膜の製造方法において加熱処理が施される場合には、基材の選択肢が限定されてしまう。さらに、前記気相法で作成される従来の機能性薄膜は、微粒子同士が3次元に密に詰まった「連続膜構造」を有している場合が多い。このような機能性薄膜を樹脂基材上に積層した後、該樹脂基材を屈曲した場合や引張り試験を行った場合には、微粒子の粒界から破断が生じ、粒界に沿って膜の割れが進行し、結果、機能性薄膜中にひび割れや、基材上からの剥離が生じてしまう問題があった。従来の気相法により基材上に作成された機能性薄膜は、良好な機能性を有した状態で屈曲強度及び引張り強度を両立するには十分とは言えない構造であった。また、機能性薄膜の作成条件に好ましい基材を使用する必要があり、基材の選択の自由度が狭くなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、基材の制限を受けることなく基材上に積層又は固定化可能であり、良好な機能性及び屈曲強度又は引張り強度に優れる機能性薄膜の製造方法、機能性薄膜、機能性薄膜積層基材の製造方法及び機能性薄膜積層基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、機能性微粒子を含有するインク又はインキを第一基材上にネットワーク状又は網目状に印刷し乾燥させ、機能性微粒子で構成されるネットワーク状又は網目状の構造物からなる機能性薄膜を形成させることを特徴とする機能性薄膜の製造方法である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液を第一基材上に塗布し乾燥させ、機能性微粒子で構成されるネットワーク状又は網目状の構造物からなる機能性薄膜を形成させることを特徴とする機能性薄膜の製造方法である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の機能性薄膜の製造方法において、さらに前記機能性薄膜に加熱処理及び/又は化学処理を施すことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法において、前記機能性微粒子を含有するインク又はインキを第一基材上にネットワーク状又は網目状に印刷、又は自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液を第一基材上に塗布するに先立ち、前記第一基材に表面処理を施すことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法で得られる機能性薄膜であって、ネットワーク状又は網目状の構造物の主たる構造が破壊されることなく第一基材から第二基材へ積層又は固定化可能なことを特徴とする機能性薄膜である。
【0011】
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の機能性薄膜において、前記ネットワーク状又は網目状の構造物の線幅が100μm以下であり、透明な基材上に積層したときの可視光の透過率が60%以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の本発明は、請求項5又は請求項6に記載の機能性薄膜において、前記機能性微粒子は、導電性微粒子、誘電体微粒子、蛍光体微粒子、磁性微粒子及び触媒性微粒子のうち少なくとも一種以上の微粒子を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法により第一基材上に機能性薄膜を形成させ、前記第一基材の機能性薄膜を有する面と第二基材の一面とを対向させ、前記第一基材と前記第二基材とを圧着又は熱圧着させた後、前記第一基材を剥離し、前記機能性薄膜を前記第二基材へ積層又は固定化することを特徴とする機能性薄膜積層基材の製造方法である。
【0014】
請求項9に記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法により第一基材上に機能性薄膜を形成させ、前記第一基材の機能性薄膜を有する面及び/又は第二基材の一面に接着層又は粘着層を形成する薬剤を塗布した後、前記薬剤を介在させ前記第一基材と前記第二基材とを貼り合せた後、前記第一基材を剥離し、前記機能性薄膜を前記第二基材へ積層又は固定化することを特徴とする機能性薄膜積層基材の製造方法である。
【0015】
請求項10に記載の本発明は、請求項8又は請求項9に記載の機能性薄膜積層基材の製造方法により得られる機能性薄膜積層基材である。
【0016】
請求項11に記載の本発明は、請求項10に記載の機能性薄膜積層基材において、前記機能性薄膜は、前記第二基材、前記第二基材及び接着層又は粘着層中に埋没し、前記機能性薄膜の底面と前記第二基材、接着層又は粘着層の表面とが同一平面であること特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る機能性薄膜の製造方法及び機能性薄膜積層基材の製造方法を用いることにより、基材の制限を受けることなく基材上に積層又は固定化可能であり、良好な機能性及び屈曲強度又は引張り強度に優れる機能性薄膜及び機能性薄膜積層基材を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る機能性薄膜積層基材の製造方法は、微粒子で構成されるネットワーク状構造又は網目状構造を有し、良好な機能性を有する機能性薄膜を予め第一基材(仮基材)上に作成する工程と、仮基材上に形成させた機能性薄膜を所望の基材(第二基材)に積層又は固定化させる工程とを主に構成される。
【0019】
最初に機能性微粒子を含有するインク又はインキを仮基材上にネットワーク状又は網目状に印刷し乾燥させ、又は自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液を仮基材上に塗布し乾燥させ、機能性微粒子で構成されるネットワーク状又は網目状の構造物からなる機能性薄膜を仮基材上に形成させる。このとき機能性薄膜の機能性をより高めるために、機能性微粒子を含有するインク又はインキを仮基材上にネットワーク状又は網目状に印刷し乾燥させた後、又は自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液を仮基材上に塗布し乾燥させた後に、加熱処理及び/又は化学処理を行うことが好ましい。本発明に係る機能性薄膜の作成においては、機能性微粒子で調整されるインクやインキ又は機能性微粒子分散溶液を用いているため、前記インクやインキ又は分散溶液中に含まれている、溶剤や分散剤などの不溶な有機物を分解・飛散又は洗浄除去するのに十分な加熱温度及び加熱時間又は化学的処理を行うことが好ましい。
【0020】
さらに前記機能性微粒子を含有するインク又はインキを仮基材上にネットワーク状又は網目状に印刷、又は自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液を仮基材に塗布するに先立ち、仮基材の表面処理を施すことが好ましい。これにより仮基材から機能性薄膜が外れ易くなり、後工程で機能性薄膜を所望の基材に破損させることなく積層又は固定化させることができる。
【0021】
仮基材上に機能性薄膜を形成させた後、所望の基材の積層又は固定化させたい面と機能性薄膜の面とを接触するように向かい合わせ、次に仮基材と基材とを加圧及び/又は加熱し、基材上へ機能性薄膜を積層又は固定化させ、仮基材を取り除く。これにより良好な機能性及び屈曲強度又は引張り強度に優れる機能性薄膜積層基材を作成できる。
【0022】
所望の基材に機能性薄膜を積層又は固定化するに際し、所望の基材と機能性薄膜との間に接着層又は粘着層を介在させてもよい。これにより、より強度の強い機能性薄膜積層基材を作成することができる。所望の基材の表面及び/又は機能性薄膜を有する仮基材の表面に、接着層又は粘着層に相当する樹脂又はカップリング材、又は粘着性のある有機物ゲルなどを付与し、所望の基材と機能性薄膜とを張り合わせ、加熱処理及び/又は加圧処理を行い、又は紫外線硬化型の接着層では紫外線照射する方法により仮基材から機能性薄膜を所望の基材上に転写する。その後、仮基材を剥離することで、接着層又は粘着層を介し基材上に積層又は固定化した、良好な機能性及び屈曲強度又は引張り強度に優れる機能性薄膜積層基材を得ることが出来る。仮基材と機能性薄膜と基材とを併せて加圧及び/又は加熱する手段としては、ロールラミネーターや熱プレス機などを用いることが出来る。
【0023】
粘着剤を用いることで最初の基材上に機能性微粒子で構成される機能性薄膜を粘着させた後に、次に別の基材上に接着剤又は粘着剤を付与しておき、機能性薄膜と接着層又は粘着層とが対向した状態で、加圧及び/又は加熱し、機能性微粒子で構成された機能性薄膜を別基材上へ移動させることも出来る。
【0024】
図1は、本発明に係る機能性薄膜積層基材の機能性薄膜と基材との関係を示す断面図である。前記機能性薄膜積層基材は、図1(a)に示すように機能性薄膜1を基材2中に完全に埋め込んだ機能性薄膜積層基材3、図1(b)に示すように接着層又は粘着層4及び基材2中に機能性薄膜1を埋め込んだ機能性薄膜積層基材5、図1(c)に示すように接着層又は粘着層4に機能性薄膜1を埋め込んだ機能性薄膜積層基材6とすることができる。いずれの機能性薄膜積層基材3、5、6も、機能性薄膜1は基材2又は接着層又は粘着層4に完全に埋め込まれており、機能性薄膜1の底面7と基材2の表面8、又は機能性薄膜1の底面7と接着層又は粘着層4の表面9とが同一平面となっているので、機能性薄膜1の微細なランダムネットワークの強度が保たれ、耐久性に優れ好ましい。
【0025】
本発明における機能性薄膜の最適な構造をネットワーク状構造又は網目状構造にする理由は以下のとおりである。一般的にネットワーク状構造体又は網目状構造体は、連続した構造体に比べ屈曲時や引張り時に生じる歪を多方向に分散でき、結果、構造体の破壊を防ぐことが可能であるためである。さらに、ネットワーク状構造又は網目状構造は、仮基材上に形成した機能性薄膜を仮基材から所望の基材へ積層又は固定化させる時においても効果的な構造である。すなわち仮基材と微粒子を含む構造体との接触面積が連続膜構造に比べて小さくなるため、仮基材から機能性薄膜を剥離させやすくなり、さらに剥離させる時にかかる局所的な歪を分散させる効果があり、また、仮に機能性薄膜内の一部で機能性薄膜の破断が生じたとしても、連続膜構造と異なり破断が伝播し難い構造を有しており、結果、機能性薄膜の破壊を防止することが出来る。
【0026】
ところで、従来、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布し、溶液の乾燥過程において自己組織化的に金属微粒子が網目状構造を形成することを利用して透明導電性膜を作成する方法が、例えば特開2007−232299号公報、特表2005−530005号公報に開示されている。また金属微粒子分散溶液をインキとして調製し、基材上に印刷して網目状構造を有する透明導電性膜を作成する方法が、例えば特開2007−227906号公報に開示されている。
【0027】
しかし、特開2007−232299号公報、特表2005−530005号公報には、基材上に金属微粒子分散溶液を塗布して得られた透明導電性膜、又は基材を被覆して得られた透明導電性被覆層と記載されているが、開示されている内容をより詳細に解釈すると、前記金属微粒子分散溶液の塗布・乾燥工程に十分に耐え、良好な機能を得るために行われる加熱処理や化学的処理に耐えうる基材上で得られる透明導電性膜又は透明導電性被覆層であって、前記金属微粒子分散溶液の塗布・乾燥工程に対し耐久性が乏しく溶解、変質などする、さらに良好な機能を得るために行われる加熱処理や化学的処理に対して耐久性が乏しく溶解、変質などする基材上では良好な特性を得ることが困難な透明導電性膜又は透明導電性被覆層であることを示している。換言すれば積層させたい基材によって特性が悪化する場合のある不十分な透明導電性膜又は透明導電性被覆層と言える。
【0028】
さらに、特開2007−227906号公報に記載の網目状構造の透明導電性膜は、金属微粒子の集合体が、基材に対して凸構造を有している。このような凸構造を有する薄膜の上に、気相法により別の機能性薄膜又は機能性微粒子を基材に対して平行に積層させる必要がある場合、凸部分を埋めるのに十分な厚みの薄膜又は微粒子を事前に積層させる必要があったり、予め凸部分を平坦化させるために別の部材を凹部に注入し平坦化させる処理が必要になる。このように、前記開示されている網目状構造の透明導電性膜では表面の凸凹などについて一切言及されていない。
【0029】
網目状構造を有する機能性薄膜の一例として透明導電性膜についての例を挙げたが、前記課題は、導電性微粒子を他の機能性微粒子に置き換えた場合の作成時にも当てはまる。これらに対して本発明に係る機能性薄膜積層基材は、良好な機能を有するように処理を行ったネットワーク状構造あるいは網目状構造を有する機能性薄膜を予め仮基材上に作成しておき、次に所望の基材の積層又は固定化させたい面と機能性薄膜の面とを接触するように向かい合わせ、次に仮基材と基材を加圧及び/又は加熱し、基材上へ機能性薄膜を積層又は固定化させ、最後に仮基材を取り除く方法で得られるので、前記特許文献と異なり基材選択の自由度が高い。さらに、本発明に係る機能性薄膜積層基材の製造方法により機能性薄膜を基材に積層又は固定化させた場合、積層後の機能性薄膜の上面の表面粗さは仮基材表面の表面粗さを反映しており、平坦な仮基材を用いれば必然的に凸構造ではなく平坦になる。そのため、特に平坦化処理を行わずとも該上面に別の機能性薄膜や機能性微粒子を基材に平行に積層させることがでる。
【0030】
本発明に係る機能性薄膜の形成には、仮基材上にネットワーク状構造又は網目状構造を印刷する時に用いるインクやインキとして使用できる機能性微粒子、又は仮基材上に塗布・乾燥した後にネットワーク状構造又は網目状構造を形成しうる微粒子分散溶液として使用できる機能性微粒子を用いる。前記のような使用できる機能性微粒子の特性としては、適切な粒子成分、粒子径、粒子径分布、粒子形状、粒子表面性などがそれぞれ最適化されている機能性微粒子であり、形成したい機能性薄膜又は機能性微粒子によってそれぞれの適切な値が異なるため、適時最適化して用いることが出来る。
【0031】
本発明で機能性薄膜を構成する機能性微粒子は、導電性微粒子、誘電体微粒子、蛍光体微粒子、磁性微粒子、触媒性微粒子などを1種類以上用いることが出来る。微粒子の材質も無機物であっても有機物であってもさらに無機物と有機物の混合物であっても特に制限されない。
【0032】
導電性微粒子(絶縁性又は半導体性微粒子を含む)であれば、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Zn、Al、Sn、Pd、Ti、Ta、W、Mo、In、Pt、Ruなどの金属微粒子又は金属合金微粒子又は金属酸化物微粒子又は金属硫化物微粒子、又は炭素を含む炭素微粒子又はカーボンナノチューブやフラーレン、カーボンナノホーンなどの所謂ナノカーボン材料、又は珪素を含む珪素微粒子又は珪素と他金属との珪素合金微粒子、珪素酸化物微粒子又は珪素炭化物微粒子、珪素窒化物微粒子を用いることが出来る。
【0033】
誘電体微粒子としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニリデンシアナイドなどの樹脂微粒子を用いることが出来る。又はチタン酸バリウム系微粒子(BaTiO、SrTiOなどを主成分とし、必要に応じてTiの一部をSn、Znで置換されている化合物、又はSrTiOを主成分とし、CuO、MnO、Biなどを含有する微粒子)、酸化チタン系微粒子(TiOを主成分とし、Mg、Ca、Ba、Sr、Cdなどの酸化物を含む微粒子)、Al、Ta、Nbの酸化物微粒子を用いることが出来る。
【0034】
蛍光体微粒子としては、Y:Eu、GdS:Tb、ZnS:Mn、ZnS:Tbなどの他、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類を含む希土類酸化物、希土類硫化物、又は(Y,Gd)BO:Eu、ZnSiO:Mn、BaMgAl1017:Eu2+などの他、ナノメートルサイズの蛍光体微粒子であるGaAs、ZnS、ZnSe、CdSe、CdTeなどを用いることも出来る。
【0035】
磁性微粒子としては、Co、Fe、Niなどの磁性金属微粒子又はCo、Fe、Niなどの磁性金属を含みSm、Ndなどの希土類金属を含んだ磁性合金微粒子又はフェライトを代表とするFeを主成分とした金属酸化物微粒子、又は金属窒化物微粒子などを用いることが出来る。
【0036】
触媒性微粒子としては、Pt、Pd、Ruなどの貴金属微粒子又は貴金属微粒子合金、又はTi、Zn、Ceなどの酸化物微粒子などを用いることが出来る。又はAl、SiO、SnO、TiOなどの触媒担持体微粒子に触媒微粒子を内部又は表面に担持させた複合微粒子を用いることも出来る。
【0037】
機能性微粒子の粒子径は、インクやインキ又は分散溶液が安定に作成される粒子径であれば特に制限されないが、インクやインキ又は分散溶液の作成しやすさや分散安定性を考慮すると、平均粒子径は10μm以下が好ましい。より好ましくは5μm以下である。
【0038】
機能性微粒子の粒子径形状は、各機能性微粒子によって異なるが、球状であっても柱状であっても多角形構造であっても特に限定されない。インクやインキ又は分散溶液の作成しやすさや分散安定性を考慮して選択することが好ましい。
【0039】
機能性微粒子の粒子の表面性は、インクやインキ又は分散溶液の作成しやすさや分散安定性を考慮して選択することが好ましい。
【0040】
さらに機能性微粒子は、良好な機能性を発現するために行われる機能性薄膜の加熱処理や化学的処理に耐え得る微粒子を用いることがより好ましい。
【0041】
仮基材は、機能性薄膜を作成する台としての役割と、機能性薄膜を自由に移動させるための支持台としての役割と、所望の基材上へ機能性薄膜を移動させる時の押し板的な役割を有するものであり、従来の機能性薄膜の積層又は固定化を目的とした基材とは役割をまったく異にしている。セラミック、樹脂又は金属であっても、また前記材質の複合体であっても良い。セラミックではガラス基材などが好ましい。樹脂基材であればエポキシ樹脂基材、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性、耐薬品性の樹脂基材が上げられる。又はステンレスなどの耐熱性や耐薬品性のある金属基材又は金属基材の上に前記樹脂基材を複合化した基材でも用いることも出来る。機能性薄膜を形成させ、さらに機能性を向上させるための加熱処理や化学的処理を行う場合には、これら処理に十分耐え得る材質を選択する必要がある。
【0042】
仮基材の表面は、形成された機能性薄膜が加圧及び/又は加熱後に所望の基材上に積層又は固定化させる時に、仮基材から容易に外れ易くするために、表面を荒らしたり、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などで表面を修飾することが好ましい。
【0043】
前記剥離が容易になるように、仮基材と共に用いる機能性微粒子のインク又はインキ又は分散溶液の内容物又は内容物の量を最適化することがさらに好ましい。
【0044】
機能性薄膜を積層又は固定化する基材としては、金属、セラミック、樹脂、ゲル、紙などであり、本発明において仮基材から機能性薄膜を積層又は固定化する手法の条件に耐え得る基材であれば特に限定されない。さらに、基材同士を組み合わせも良い。Al基板、Cu基板、ステンレス基板、Si基板などの金属基板、又はガラス基板、フェライト基板、フェライトシート基板、多孔質酸化チタン基板などのセラミック基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の他、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル樹脂などの樹脂基板を用いることが出来る。
【0045】
また、本発明において仮基材から機能性薄膜を積層又は固定化する際に、接着層又は粘着層を機能性薄膜と基材との間に介在させることも出来る。接着層又は粘着層は、機能性薄膜の材質及び基材の材質、仮基材から機能性薄膜を積層又は固定化する際の圧力条件又は加熱条件に合わせて最適なものを選択するのが好ましい。
【0046】
接着層としては例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ系樹脂、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテンなどのジエン系樹脂、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、t−ブチルアクリレートなどからなるポリアクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン系樹脂など、カップリング剤として珪素系カップリング材やチタン系カップリング材などを用いることができ、機能性微粒子で構成される機能性薄膜と基材とを接着できる組成であれば単独又は組み合わせて用いることが出来る。
【0047】
粘着層としては、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル樹脂系、シリコーン系などを含むエマルジョン系粘着剤又は溶剤系粘着剤、固型粘着剤などを用いることが出来る。また、紫外線硬化型の接着層を用いることも出来る。仮基材から機能性薄膜を積層又は固定化する際に紫外線を照射しても良いし、機能性薄膜を基材に積層又は弱く固定化した後に、紫外線照射により、より強固に固定化しても良い。紫外線硬化型の接着層としてはアクリル系樹脂系を代表する広く市販品の接着剤を用いることが出来る。
【0048】
本発明に係る機能性薄膜の製造において行なう機能性微粒子を含有するインク又はインキの仮基材上へのネットワーク状又は網目状の印刷は、一般的な印刷方法を用いることが出来る。スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、などインクやインキの特性に合わせて印刷方法を選ぶことが好ましい。
【0049】
また本発明に係る機能性薄膜の製造において行なう自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液の仮基材上への塗布方法は、通常のコーティング法を用いることが出来る。ダイコーター、ディップコーター、バーコーター、マイクロコーターなどを用いることが出来る。機能性微粒子分散溶液の特性に合わせて塗布方法を選ぶことが好ましい。
【0050】
本発明のネットワーク状又は網目状構造を有する機能性薄膜は、ネットワーク状又は網目状構造物の線幅と透過率より規定される。すなわち、線幅は100μm以下が望ましい。また、本発明の機能性薄膜を透明な基材上に積層させた後、可視光における透過率を測定し、該透過率が60%以上、望ましくは70%以上、さらに望ましくは80%以上である機能性薄膜が望ましい。線幅が100μmより大きく、透過率が60%より低い場合は、仮基材から所望の基材に移動させる場合に膜が破壊され易い結果になり望ましくなかった。これは、線幅あるいは被覆面積が広くなることで、機能性薄膜と仮基材との接触面積が広がり、仮基材との密着性が必要以上に強くなったためと考えられる。
【実施例】
【0051】
以下、数種類の機能性微粒子について実施例を説明するが、これは機能性微粒子を制限するものではない。
【0052】
<機能性微粒子分散溶液の調製法>
基材の上に塗布・乾燥させることでネットワーク状又は網目状構造を有する機能性薄膜を形成する機能性微粒子分散溶液は、特表2005−530005号公報で開示されている手法を参考に調製した。但し、用いる機能性微粒子によって、粒子の表面性や溶液への分散安定性に違いが見られるため、必要に応じて添加剤や内容量などを最適化した。最初に、機能性微粒子4g、トルエンなどの溶媒30g、BYK−410(BYKケミー社製)等の結合剤0.2gを混合し、出力180Wの超音波分散機で1.5分間分散化処理を行い、純水15gを添加し、得られた乳濁液を出力180Wの超音波分散機で30秒間分散処理を行い、機能性微粒子分散溶液を調製した。
【0053】
<マグネタイト微粒子分散溶液の調製>
まずマグネタイト微粒子を特開平5−222327号公報に記載の方法によって調製した。すなわち、温度80℃に加熱した3.24mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液13.8Lに、14mol/Lの硫酸第一鉄水溶液3.1Lと28mol/Lの硫酸第二鉄水溶液3.1Lとの混合液6.2Lを撹拌しながら5分間で滴下した。次に温度80℃に維持しながら30分間撹拌し、マグネタイト微粒子を得た。得られたマグネタイト微粒子及びマグネタイト微粒子に対して25重量%のオレイン酸ナトリウムを純水中に投入した後、3N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH11.8に調整し、温度80℃で30分間撹拌した。続いて3Nの硫酸を添加してpH5.5とした。続いて、室温まで冷却した後、純水を加えデカンテーションにより十分に洗浄した。続いてメタノールを加えて後、真空乾燥させ、マグネタイト微粒子を得た。得られたマグネタイト微粒子の平均1次粒子径は9.8nmであった。次に上記機能性微粒子分散溶液の調製法に記載の方法でマグネタイト微粒子分散溶液を調製した。
【0054】
<銀微粒子分散溶液の調製>
まず導電性微粒子として銀微粒子を特開2008―133527号に開示されている方法を用いて作成した。すなわち、硝酸銀とブチルアミンを混合したメタノール溶液を、アスコルビン酸を溶かしたメタノール/純水溶液中に撹拌しながら滴下し、得られた沈降物を取り出し、純水で洗浄して調整した。得られた粒子径は50〜100nm程度であった。次にオレイン酸とアセトン/メタノールを混合した中に前記銀微粒子を加え、1時間混合した後に、アセトン/メタノールを減圧留去し、銀微粒子の表面をオレイン酸で被覆した。次に上記機能性微粒子分散溶液の調製法に記載の方法で銀微粒子分散溶液を作成した。
【0055】
<(Y、Gd)BO:Eu微粒子分散溶液の調製>
まず蛍光体微粒子として(Y、Gd)BO:Eu微粒子を特開2008−101225号公報に開示されている方法を参考に調製した。すなわち、純水1Lにアンモニアを添加して、pH8に調整した溶液Aを調製した。純水0.5Lにイットリウムイオンのイオン濃度が0.4659mol/L、ガドリニウムイオンのイオン濃度が0.2716mol/L、ユウロピウムイオン濃度が0.0388mol/Lになるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し、溶液Bを調製した。純水0.5Lにホウ酸を溶かし、ホウ素のイオン濃度が0.7763mol/Lになるよう溶液Cを調製した。5Lの反応容器に溶液Aを加え、良く撹拌しながらこれに溶液Bと溶液Cを滴下した。滴下時には混合溶液のpHが8になるように、適時アンモニアを加えていった。滴下終了後、アンモニアを加えてpH11に調製し、そのまま1時間静置した。得られた沈降物を取り出し、水洗した後、100℃で1時間乾燥させた。次に、1400℃で2時間焼成した後、通常のボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径0.5μmの(Y、Gd)BO:Eu微粒子を調製した。次にオレイン酸とアセトン/メタノールを混合した中に前記(Y、Gd)BO:Eu微粒子を加え、1時間混合した後に、アセトン/メタノールを減圧留去し、(Y、Gd)BO:Eu微粒子の表面をオレイン酸で被覆した。次に上記機能性微粒子分散溶液の調製法に記載の方法で(Y、Gd)BO:Eu微粒子分散溶液を調製した。
【0056】
<BaTiO微粒子分散溶液の調製>
誘電体微粒子としてBaTiO(戸田工業(株)製 TB0−030R)を用いた。平均粒子径は30nmであった。オレイン酸とアセトン/メタノールを混合した中に前記BaTiO微粒子を加え、1時間混合した後に、アセトン/メタノールを減圧留去し、BaTiO微粒子の表面をオレイン酸で被覆した。次に上記機能性微粒子分散溶液の調製法に記載の方法でBaTiO微粒子分散溶液を作成した。
【0057】
<Pt微粒子担持シリカ微粒子分散溶液の調製>
触媒機能性微粒子としてPt微粒子担持シリカ微粒子を調製した。芯材料のシリカ微粒子は疎水性処理された平均粒子径0.3μmを用いた。Pt微粒子は、トルエン中、塩化白金酸とオレイルアミンの存在下、水素化ホウ素ナトリウムにより還元してPt微粒子分散溶液を作成した。Pt微粒子の平均粒子径は2nmであった。前記シリカ微粒子と前記Pt分散溶液を混合した後、250℃で1時間加熱し、Pt微粒子担持シリカ微粒子を調製した。次にオレイン酸とアセトン/メタノールを混合した中に前記Pt微粒子担持シリカ微粒子を加え、1時間混合した後に、アセトン/メタノールを減圧留去し、Pt微粒子担持シリカ微粒子の表面をオレイン酸で被覆した。次に上記機能性微粒子分散溶液の調製法に記載の方法でPt微粒子担持シリカ微粒子分散溶液を作成した。
【0058】
実施例1
上記マグネタイト微粒子分散溶液をガラス基板上にバーコーターで塗布し、乾燥させた。乾燥後、ガラス基板上にマグネタイト微粒子で構成されたネットワーク状の薄膜が形成された。別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られたマグネタイト微粒子薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、熱プレス機により加熱・加圧した後、ガラス基板とPC基板とを剥がすことで、マグネタイト微粒子薄膜がPC基板上に積層した磁性薄膜基板を得ることが出来た。次に、得られた磁性薄膜基板を、30回折り曲げを繰り返して、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基材からの剥離も確認されなかった。
【0059】
実施例2
上記マグネタイト微粒子分散溶液をPET基板上にバーコーターで塗布し、乾燥させた。乾燥後、PET基板上にマグネタイト微粒子で構成されたネットワーク状の薄膜が形成された。別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られたマグネタイト微粒子薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、ロールラミネーターにより加熱・加圧した後、PET基板とPC基板とを剥がすことで、マグネタイト微粒子薄膜がPC基板上に積層した磁性薄膜基板を得ることが出来た。次に、得られた磁性薄膜基板を、30回折り曲げを繰り返して、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基板からの剥離も確認されなかった。
【0060】
実施例3
上記マグネタイト微粒子分散溶液をガラス基板上にバーコーターで塗布し、乾燥させた。乾燥後、ガラス基板上にマグネタイト微粒子で構成されたネットワーク状の薄膜が形成された。別に、市販の紙片の上に酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤(木工用ボンド:商標)を塗布した基材を作成した。続いて、先に得られたマグネタイト微粒子薄膜の面と接着剤を塗布した面を対向させ、接着剤が硬化するまで加圧し、硬化後ガラス基板と紙片とを剥がすことで、マグネタイト微粒子薄膜が紙片に積層した磁性薄膜基板を得ることが出来た。次に、得られた磁性薄膜基板を、30回折り曲げを繰り返して、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基板からの剥離も確認されなかった。
【0061】
実施例4
市販のPET基板上に導電性ペースト(藤倉化成(株)製XA−9053、銀微粒子を含むインキ)を用いてネットワーク状にスクリーン印刷した後、180℃で1分間加熱した。続いて、1Nの塩酸の中に3分間基材を浸漬させた後、150℃で分間乾燥させた。得られた導電性薄膜の表面抵抗値は10Ω/□であった。次に別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られた導電性薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、ロールラミネーターを用いて加熱・加圧した後、PET基板とPC基板とを剥がすことで、導電性薄膜がPC基板上に積層した導電性薄膜基板を得ることが出来た。得られた導電性薄膜の表面抵抗値は10Ω/□であり、PET基板上と変化はなかった。次に、得られた導電性薄膜基板を30回折り曲げて、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基板からの剥離も確認されなかった。さらに表面抵抗値も10Ω/□で変化はなかった。
【0062】
実施例5
市販のPET基板上に上記銀微粒子分散溶液をバーコーターで塗布・乾燥させ、150℃で30分間加熱した。続いて、該導電性薄膜基板をアセトン溶液に各々1分間浸漬した後、1Nの塩酸の中に3分間基材を浸漬させた。次に150℃で1分間乾燥させることで、銀微粒子で構成されたネットワーク状の薄膜が形成された導電性基板を得た。得られた導電性薄膜の表面抵抗値は14Ω/□であった。次に別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られた導電性薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、ロールラミネーターを用いて加熱・加圧した後、PET基板とPC基板を剥がすことで、導電性薄膜がPC基板上に積層した導電性薄膜基板を得ることが出来た。得られた導電性薄膜の表面抵抗値は14Ω/□であり、PET基板上と変化はなかった。次に、得られた導電性薄膜基板を30回折り曲げて、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基板からの剥離も確認されなかった。さらに表面抵抗値も14Ω/□で変化はなかった。
【0063】
実施例6
上記(Y、Gd)BO:Eu微粒子分散溶液をガラス基板上にバーコーターで塗布し、250℃で1時間加熱した。乾燥後、ガラス基板上に(Y、Gd)BO:Eu微粒子で構成されたネットワーク状の薄膜が形成された。別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られた(Y、Gd)BO:Eu微粒子薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、熱プレス機により加熱・加圧した後、ガラス基板とPC基板を剥がすことで、(Y、Gd)BO:Eu微粒子薄膜がPC基板上に積層した蛍光体薄膜基板を得ることが出来た。PC基板上に形成された(Y、Gd)BO:Eu微粒子薄膜は、ガラス基板上に得られた(Y、Gd)BO:Eu微粒子薄膜の構造を比較したが、構造の破断や変化は見られなかった。次に、得られた磁性薄膜基板を、30回折り曲げを繰り返して、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基材からの剥離も確認されなかった。
【0064】
実施例7
市販のガラス基板上に上記BaTiO微粒子分散溶液をバーコーターで塗布・乾燥させ、250℃で30分間加熱し、BaTiO微粒子で構成されたネットワーク状の薄膜が形成された誘電体薄膜基板を得た。別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られたBaTiO微粒子薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、熱プレス機により加熱・加圧した後、ガラス基板とPC基板を剥がすことで、BaTiO微粒子薄膜がPC基板上に積層した誘電体薄膜基板を得ることが出来た。PC基板上に形成されたBaTiO微粒子薄膜は、ガラス基板上に得られたBaTiO微粒子薄膜の構造を比較したが、構造の破断や変化は見られなかった。次に、得られた磁性薄膜基板を、30回折り曲げを繰り返して、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基材からの剥離も確認されなかった。
【0065】
実施例8
市販のPET基板上に上記Pt微粒子担持シリカ微粒子分散溶液をバーコーターで塗布・乾燥させ、250℃で30分間加熱し、Pt微粒子担持シリカ微粒子で構成されたネットワーク状の薄膜が形成された触媒機能性微粒子薄膜基板を得た。別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られたPt微粒子担持シリカ微粒子薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、熱プレス機により加熱・加圧した後、ガラス基板とPC基板を剥がすことで、Pt微粒子担持シリカ微粒子薄膜がPC基板上に積層した触媒機能性薄膜基板を得ることが出来た。PC基板上に形成されたPt微粒子担持シリカ微粒子薄膜は、ガラス基板上に得られたPt微粒子担持シリカ微粒子薄膜の構造を比較したが、構造の破断や変化は見られなかった。次に、得られた触媒機能性薄膜基板を、30回折り曲げを繰り返して、その後の薄膜の破断の有無を確認したが、膜内の破断や薄膜の基材からの剥離も確認されなかった。
【0066】
比較例1
PET基板上にアルゴンガス95%と酸素ガス5%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム95重量%、酸化スズ5重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ25nmのITO薄膜を形成した。さらに、150℃で1時間加熱処理を行った。得られた透明導電性膜を30回折り曲げて、その後の薄膜の破断の有無を確認したところ、膜内に明らかな破断が見られた。
別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られたITO薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、ロールラミネーターにより加熱・加圧した後、PET基板とPC基板を剥がしたところ、ITO薄膜をPC基板上に積層させることが出来なかった。
【0067】
比較例2
200℃に加熱したポリイミド基板上にアルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる1.3Paの雰囲気中で、鉄ターゲットを用いた反応性スパッタリング法により厚さ100nmのマグネタイト薄膜を形成した。得られたマグネタイト薄膜内の微粒子の平均粒子径は25nmであった。得られた磁性薄膜を30回折り曲げて、その後の薄膜の破断の有無を確認したところ、膜内に明らかな破断が見られ、一部の膜が剥離した。
別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られたマグネタイト薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、ロールラミネーターにより加熱・加圧した後、ポリイミド基板とPC基板を剥がしたところ、マグネタイト薄膜の一部が破断し、PC基板上に積層させるのみであった。
【0068】
比較例3
ポリイミド基板上にRFスパッタリング法を用いて、アルゴンガス100%とからなる1.5Paの雰囲気中で、二酸化珪素焼結体を用いたスパッタリングにより、厚さ50nmの二酸化ケイ素膜を形成した。続いて、白金ペレットを用いて、二酸化ケイ素上に白金の微粒子を蒸着させた。得られた白金微粒子担持二酸化ケイ素薄膜を30回折り曲げて、その後の薄膜の破断の有無を確認したところ、膜内に明らかな破断が見られ、一部の膜が剥離した。
別に市販のPC基板(ポリカーボネート樹脂)の表面に、市販の光学フィルム用粘着剤(SKダイン:綜研化学(株))を塗布した。続いて、先に得られた二酸化ケイ素薄膜の面と粘着剤の面を対向させ、ロールラミネーターにより加熱・加圧した後、ポリイミド基板とPC基板を剥がしたところ、二酸化ケイ素薄膜をPC基板に積層させることは出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る機能性薄膜積層基材の機能性薄膜と基材との関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 機能性薄膜
2 基材
3 機能性薄膜積層基材
4 接着層又は粘着層
5 機能性薄膜積層基材
6 機能性薄膜積層基材
7 機能性薄膜の底面
8 基材の表面
9 接着層又は粘着層の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性微粒子を含有するインク又はインキを第一基材上にネットワーク状又は網目状に印刷し乾燥させ、機能性微粒子で構成されるネットワーク状又は網目状の構造物からなる機能性薄膜を形成させることを特徴とする機能性薄膜の製造方法。
【請求項2】
自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液を第一基材上に塗布し乾燥させ、機能性微粒子で構成されるネットワーク状又は網目状の構造物からなる機能性薄膜を形成させることを特徴とする機能性薄膜の製造方法。
【請求項3】
さらに前記機能性薄膜に加熱処理及び/又は化学処理を施すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機能性薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記機能性微粒子を含有するインク又はインキを第一基材上にネットワーク状又は網目状に印刷、又は自己組織化膜を形成可能な機能性微粒子を含有する金属微粒子分散溶液を第一基材上に塗布するに先立ち、前記第一基材に表面処理を施すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法で得られる機能性薄膜であって、ネットワーク状又は網目状の構造物の主たる構造が破壊されることなく第一基材から第二基材へ積層又は固定化可能なことを特徴とする機能性薄膜。
【請求項6】
前記ネットワーク状又は網目状の構造物の線幅が100μm以下であり、透明な基材上に積層したときの可視光の透過率が60%以上であることを特徴とする請求項5に記載の機能性薄膜。
【請求項7】
前記機能性微粒子は、導電性微粒子、誘電体微粒子、蛍光体微粒子、磁性微粒子及び触媒性微粒子のうち少なくとも一種以上の微粒子を含むことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の機能性薄膜。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法により第一基材上に機能性薄膜を形成させ、前記第一基材の機能性薄膜を有する面と第二基材の一面とを対向させ、前記第一基材と前記第二基材とを圧着又は熱圧着させた後、前記第一基材を剥離し、前記機能性薄膜を前記第二基材へ積層又は固定化することを特徴とする機能性薄膜積層基材の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機能性薄膜の製造方法により第一基材上に機能性薄膜を形成させ、前記第一基材の機能性薄膜を有する面及び/又は第二基材の一面に接着層又は粘着層を形成する薬剤を塗布した後、前記薬剤を介在させ前記第一基材と前記第二基材とを貼り合せた後、前記第一基材を剥離し、前記機能性薄膜を前記第二基材へ積層又は固定化することを特徴とする機能性薄膜積層基材の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の機能性薄膜積層基材の製造方法により得られる機能性薄膜積層基材。
【請求項11】
前記機能性薄膜は、前記第二基材、前記第二基材及び接着層又は粘着層中に埋没し、前記機能性薄膜の底面と前記第二基材、接着層又は粘着層の表面とが同一平面であること特徴とする請求項10に記載の機能性薄膜積層基材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−12714(P2010−12714A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175559(P2008−175559)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】