機能性DNAエレメントおよび細胞性タンパク質のゲノムマッピング
本発明は、タンパク質とゲノム上のDNA(例えば全ゲノムまたはその一部であって、1以上の染色体または染色体領域など)との結合を試験する方法を提供する。特に、本発明は、対象のタンパク質が結合するゲノムDNAの調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサー領域)を同定する方法に関する。ある態様では、本発明は、組織に関連した調節に関する。別の態様では、本発明は、発生に関連した調節に関する。さらなる態様では、本発明は、特定の疾病状態または障害における発現の調節に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質およびDNAエレメントのゲノムマッピングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写調節には、多くのタンパク質またはタンパク質複合体が関係しており、これらは所与のプロモーターに特異的に集合してRNA合成を活性化したり抑制したりしている。特定の組織または細胞型では、一連の特異的な認識事象によってプロモーターが駆動される。転写因子はシス作用性調節配列と結合する。その後これらのDNA結合タンパク質はコアクチベーター複合体を動員し、これらのプレ活性化複合体が次いでコア転写機構を動員する。このような連続的な動員メカニズムは酵母の細胞周期中のHO遺伝子プロモーターにおいて実証されている(Cosmaら, 1999)。同様に、遺伝子は、ヒストンを修飾するクロマチンリモデリング因子を巻き込んだリプレッション(抑制)の間に、配列特異的DNA結合タンパク質を介した転写コリプレッサー複合体の動員によって遮断される。長期の分子記憶はDNAメチル化を介した特定のクロマチン領域の後成的修飾によって確立されうる。
【0003】
DNA結合タンパク質の分野の理解を進展させたのは、クロマチン免疫沈降(ChIP)法である。この技法は、in vivoにおいて特定のDNA結合タンパク質との相互作用に関与している機能性DNAエレメントとそれらの結合タンパク質複合体のマッピングを可能にし、多くの個々の事例研究に応用されている。主に、この方法はハイスループット検出法に向いていると考えられ、遺伝子調節ネットワークへのシステムズ-レベル(systems-level)アプローチのための新たな機会を切り開くであろう。
【0004】
研究者らは、ヒトゲノムに埋もれている各種の機能性DNAエレメントを、それらが細胞内での遺伝子発現、DNA複製、または染色体テリトリーの確立に関与していようといまいと、同定しようとしている。この目的を達成するのに理想的に適合する方法は、いわゆるChIP-on-Chip法であり、これはヒトプロモーターのマイクロアレイを含むチップ上でのハイスループット検出と組み合わせたChIP法である。
【0005】
ChIP法は転写因子のin vivo結合部位を局在化する際に広く使用されている。図1Aを参照しながら簡単に説明する。培養細胞をホルムアルデヒドで処理すると、in vivoでDNAと結合タンパク質の間に架橋が生じる。処理した細胞を破壊して、核タンパク質を回収する。次いで音波処理を用いてDNAをランダムにせん断し、約0.5kbの小片とする。架橋によって誘導された共有結合のため、特定のタンパク質は断片化DNAと結合したままである。標的タンパク質に対する特異的抗体を用いてDNA-タンパク質複合体を免疫沈降させる。出発物質と免疫沈降させた物質の両方を、研究対象の所定のDNA領域に特異的なプライマーを使ってPCRにより解析する。免疫沈降が問題のDNA断片の顕著な富化をもたらす場合には、特異的なin vivo相互作用を想定することができる。
【0006】
ChIPアッセイは、転写およびDNA複製因子、クロマチンリモデリング因子、修飾型ヒストン、メチル化DNAなどの特異的標的を検出するのに使用されている。さらに、このアッセイは、RNA結合タンパク質と、RNAを転写することによって架橋されたDNAエレメントとの特異的結合を検出する際にも使用されている。というのは、転写とスプライシングは細胞内で空間的および時間的に連動していることが知られているからである。
【0007】
ChIP-on-Chip法は、所定のDNA標的に関する詳細な作用機構上の問題を解決するために使用されている。しかし、出発物質と免疫沈降物質を1度に1つずつPCRで分析しなければならず、それには入手可能な機能情報に基づいて標的セットを選択する必要がある。簡単に述べると、配列決定されて注釈が付けられた酵母ゲノムからの情報を用いて、個々の遺伝子内配列をPCR増幅し、ガラス上にスポットしてプロモーターのマイクロアレイを作製する。免疫沈降させたDNA断片は両末端でプライマーランディング部位との連結反応によって連結されるが、これによりPCRによるシグナル増幅が可能となる(すなわち、連結反応介在PCRまたはLM-PCR)。最終的に、免疫沈降させPCR増幅させた物質はランダムプライミングによって異なる蛍光色素により標識される。その後、プールしたPCR産物をプロモーターアレイにハイブリダイズさせて、どのプロモーターがクロマチン免疫沈降によって特異的に富化されるかを検出する。
【0008】
図1Bを参照すると、ChIP-on-Chip法では実験ごとに108個の細胞が必要となり、したがって発生、腫瘍形成および幹細胞(出発物質に限りがある)の分析は排除されることになる。さらに、マイクロアレイに基づく方法は特異性の問題にも直面すると考えられる。ChIP-on-Chipの概略図を図1A-1Bに、比較の要約を表1に示す。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、生物のゲノム中のポリヌクレオチド-ポリペプチド相互作用ドメインを検出する方法を提供し、この方法は、a) ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドを免疫沈降させること、b) ポリヌクレオチドとポリペプチドを解離させること、c) 該ポリヌクレオチドとプライマー対とを、該プライマー対が該ポリヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、d) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、e) 連結プローブをユニバーサルプライマーにより増幅させて、標識された増幅産物を生成させること、f) 標識された増幅産物をオリゴヌクレオチドのアレイと接触させてアッセイ複合体を形成させること、g) 該アッセイ複合体を検出すること、を含んでなり、ここにおいて、該アッセイ複合体の存在は免疫沈降させたポリペプチドと結合するDNAを示すものである。
【0010】
本発明はまた、対象のポリペプチドが結合する、生細胞のゲノムの領域を同定する方法を提供し、この方法は、a) 生細胞中のDNA結合タンパク質を生細胞のゲノムDNAに架橋させ、それによりゲノムDNAに架橋されたDNA結合ポリペプチドを含むタンパク質-DNA複合体を生成させること、b) a)のタンパク質-DNA複合体のDNA断片を生成させて、DNA結合タンパク質と結合しているDNA断片を含む混合物を得ること、c) b)で得られた混合物から対象のポリペプチドと結合しているDNA断片を取り出すこと、d) c)で得られたDNA断片を対象のポリペプチドから分離すること、e) 該DNAとプライマー対とを、該プライマー対が該DNAにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、g) f)の連結プローブを増幅させること、h) g)の増幅産物と該細胞のゲノムDNAに相補的な配列を含むDNAとを、増幅産物とゲノムDNAに相補的な配列の領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、i) h)の第2のハイブリダイゼーション複合体を同定すること、を含んでなり、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体は対象のポリペプチドが結合する細胞中のゲノムの領域を含むものである。
【0011】
本発明はさらに、対象のポリペプチドが結合する、生細胞のゲノムの領域を同定する方法を提供し、この方法は、a) 生細胞中のDNA結合ポリペプチドを生細胞のゲノムDNAに架橋させ、それによりゲノムDNAに架橋されたDNA結合ポリペプチドを含むタンパク質-DNA複合体を生成させること、b) 該タンパク質-DNA複合体のDNA断片を生成させ、それによりDNA結合ポリペプチドと結合しているDNA断片を得ること、c) 得られたDNA断片を、対象のポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いて免疫沈降させること、d) c)で同定されたDNA断片を対象のポリペプチドから分離すること、e) 該DNAとプライマー対とを、該プライマー対が該DNAにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、g) f)の連結プローブを、検出可能な標識で標識されたユニバーサルプライマーを用いて増幅させること、h) g)の増幅産物と該細胞のゲノムDNAに相補的な配列を含むDNAとを、増幅産物とゲノムDNAに相補的な配列の領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、i) h)の第2のハイブリダイゼーション複合体を、該標識に特異的な方法を用いて同定すること、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体は対象のポリペプチドが結合する細胞中のゲノムの領域を含むものであること、j) i)で測定した標識の強度/量を、対照のその強度/量と比較すること、を含んでなり、ここにおいて、ゲノムの領域における標識の量/強度が、該領域における対照の標識の量/強度を上回る場合には、該細胞中の該ゲノムの領域が対象のポリペプチドと結合することを示している。
【0012】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細については、添付の図面および以下の詳細な説明に記述する。本発明のその他の目的、構成、効果は、以下の詳細な説明および図面から、さらには特許請求の範囲から明らかであろう。
【0013】
詳細な説明
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる単数形の冠詞は、特にその概念について明確な指示がないかぎり、複数形を含めるものとする。したがって、例えば、単数の「プローブ」という表現には複数のそのようなプローブが含まれ、また、「プライマー」という表現には当業者に知られている1以上のプライマーおよびその均等物が含まれる、といった具合である。
【0014】
特に定義しないかぎり、本明細書で用いる技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解されている意味と同じ意味である。本発明の方法および組成物を実施する際には、本明細書に記載したものと類似したまたは同様の任意の方法および試薬を使用することができるが、典型的な方法および材料を以下に記載することにする。
【0015】
本明細書で挙げた刊行物はすべて、本発明の説明に関連して使用しうるような、刊行物に記載された方法論を記載しかつ開示する目的で、その全体を参照することにより本明細書に援用するものとする。本明細書全体を通して引用される刊行物は、単にそれらが本出願の出願日前に開示されたものであるために提供されるにすぎない。本明細書では、いかなる場合も、本発明者らが、先に開示されたという理由でそのような開示に先行する権利を与えられないことを容認するものと解釈されるべきではない。
【0016】
DNA結合タンパク質が全体的な遺伝子発現、染色体複製、および細胞増殖をいかに制御しているかを理解することは、DNA結合タンパク質がin vivoで機能している染色体位置を同定することで促進されると考えられる。本明細書では、調節されるDNAエレメントおよびタンパク質調節因子についてのゲノムワイドなマッピング方法を記載する。
【0017】
RASL(RNA Annealing Selection and Ligation:RNAアニーリング・セレクション・ライゲーション)と呼ばれる手法が、マイクロアレイ法に一般的に関連した方法の問題に対処するために用いられている。5’選択的スプライシング事象においては、例えば、共通の3’スプライス部位と競合している2つの5’スプライス部位が存在する。図示するように、各スプライス部位接合部の20ヌクレオチドエキソン配列を標的とするために3つのオリゴが用いられる。2つの競合する3’スプライス部位を区別するために、各5’オリゴ(1または2、それぞれ赤色と緑色で記す)に対するユニークな20ヌクレオチドインデックス配列。RASLアッセイには次のプロセスが含まれる:(1)アニーリング、(2)固相での選択、(3)ライゲーション(連結反応)、(4)PCR増幅、および(5)ユニバーサルインデックスアレイ上での検出。
【0018】
本発明は、ChIP-on-Chip法と共にRNAアニーリング・セレクション・ライゲーション(RASL)法を利用するものである。この組合せを本明細書では「ChIP-DASL」と呼ぶことにする。ChIP-DASL法の一実施形態を図2に示す。
【0019】
本発明は、タンパク質とゲノム上のDNA(例えば全ゲノムまたはその一部であって、1以上の染色体または染色体領域など)との結合を試験する方法を提供する。ある態様において、本発明は、対象のタンパク質が結合するゲノムDNAの調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサー領域)を同定する方法を提供する。別の態様では、本発明は、組織に関連した調節に関する。さらに別の態様では、本発明は、発生に関連した調節に関する。さらなる態様では、本発明は、特定の疾病状態または障害における発現の調節に関する。
【0020】
本発明の方法はまた、結合タンパク質が転写因子であるかどうかを調べる技法を提供する。上述したように、結合タンパク質と相互作用するポリヌクレオチド(例えば、DNA)は、ゲノム断片(例えば、チップ上のもの)とハイブリダイズされる。連結されたプローブがチップ上のゲノム断片と結合し、かつチップ上のゲノム断片がその生物のゲノム中の調節領域であることが知られている場合には、その連結プローブに対応するポリヌクレオチドは調節領域であると同定され、対象のタンパク質は転写因子とされる。
【0021】
本発明の方法は、真核生物の全ゲノムにわたってDNA結合タンパク質を試験および/または同定するために使用することができる。DNAと結合する多種多様なDNA結合タンパク質を解析することが可能である。例えば、DNAの複製または転写調節に関与するタンパク質はどれも本発明の方法を使って試験することができる。
【0022】
調節領域を同定して単離するための別の方法では、調節DNAを富化するために、活発に転写された遺伝子のクロマチンはアセチル化ヒストンを含むという知識が利用される。例えば、Wolffeら, Cell 84:817-819, 1996を参照されたい。特に、転写された遺伝子のクロマチンにはアセチル化H3およびH4が豊富に存在し、調節配列を含むクロマチンはアセチル化H3と選択的に結合している。したがって、アセチル化ヒストン(特にアセチル化H3)に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降を用いて、調節DNAが富化された配列の集合体を取得することができる。そのような抗体の例としては、限定するものではないが、Upstate Biotechnology (Lake Placid, N.Y.)から入手可能な抗アセチル化ヒストンH3が挙げられる。
【0023】
上記の方法は、一般に、クロマチンを断片化してから、その断片を、アセチル化ヒストン(特にH3)を特異的に認識してそれと結合する抗体に接触させる必要がある。その後、免疫沈降物のポリヌクレオチドをその免疫沈降物から回収することができる。クロマチンを断片化する前に、場合により、アセチル化ヒストンを隣接DNAと架橋させてもよい。ヒストンとクロマチン内のDNAとの架橋は各種の方法で行なうことができる。ひとつの方法は、クロマチンを紫外線照射に曝露することである(Gilmourら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:4275-4279, 1984)。他の方法では化学架橋剤が利用される。適当な化学架橋剤にはホルムアルデヒドとプソラレンが含まれるが、これらに限定されない(Solomonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6470-6474, 1985; Solomonら, Cell 53:937-947, 1988)。
【0024】
細胞性クロマチンにおいて特定の転写因子の結合部位が同定されると、それは調節配列の存在を示している。これを行なうには、例えば、クロマチン免疫沈降の手法を用いる。この手法では、特異的抗体を用いて、対応する抗原(この場合は、対象の転写因子)を含むクロマチン複合体を免疫沈降させ、この免疫沈降物中に存在するヌクレオチド配列を試験する。抗原と結合した特定のポリヌクレオチドが抗体によって免疫沈降されると、抗原とポリヌクレオチド(例えば、調節ドメイン)との相互作用が存在することを示している(O’Neillら, Methods in Enzymology, Vol. 274, Academic Press, San Diego, 1999, pp.189-197; Kuoら, Method 19:425-433, 1999; Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelら編, Current Protocols, Chapter 21, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.の共同企画, (1998 補遺))。
【0025】
図1を参照すると、ある態様において、この方法では改変されたクロマチン免疫沈降(ChIP)法がDNAマイクロアレイ解析と組み合わされる。ポリヌクレオチド(例えば、DNA)とタンパク質を架橋させ(例えば、細胞をホルムアルデヒドで固定させる)、音波処理により回収し、次いで結合タンパク質つまり対象のタンパク質に架橋されているポリヌクレオチド断片を、例えば、特異的抗体を用いた免疫沈降により富化させる。架橋をはずした後、富化されたポリヌクレオチドとプライマー対とを、プライマー対がポリヌクレオチド断片にハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させる。ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーはポリヌクレオチド断片の上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、プライマー対の一方のプライマーは第1のユニバーサルプライマーランディング部位を含み、他方のプライマーは第2のユニバーサルプライマーランディング部位を含み、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同じものではない。第1のハイブリダイゼーション複合体を、ポリヌクレオチド断片にハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下でリガーゼと接触させて、連結プローブを形成させる。連結プローブをユニバーサルプライマーにより増幅させて、標識された増幅産物を生成させる。例えば、蛍光染料と連結反応介在PCR(LM-PCR)を用いて増幅反応を行なうことができる。別の実施形態では、(例えば免疫沈降により)富化されていないポリヌクレオチドも同様に、異なる発蛍光団の存在下でLM-PCRに供し、富化標識産物のプールと非富化標識産物のプールの両方をDNAマイクロアレイ(本明細書中でさらに説明する)にハイブリダイズさせる。複数の独立した実験から得られた富化/非富化蛍光強度比を加重平均分析と共に使用して、アレイ上に提示された各配列への結合タンパク質(例えば、対象のポリペプチド)の相対的結合を算出する。
【0026】
本発明の方法では、ポリヌクレオチドと結合するタンパク質を当技術分野で公知の架橋法(例えば、紫外線、プソラレン、および/またはホルムアルデヒド)により架橋させる。得られる混合物は、タンパク質に結合したポリヌクレオチドとタンパク質に結合していないポリヌクレオチドの両方を含むだろう。
【0027】
その後、この混合物を処理して混合物中のポリヌクレオチドを分断させる。分断法は当技術分野で公知であり、例えば、より小さいゲノム断片を生じさせる剪断法が含まれる。断片化は、クロマチンを断片化するための確立された方法、例えば、音波処理、剪断および/または制限酵素の使用により行なうことができる。得られる断片は大きさが様々であってよい。ある態様において、音波処理法を用いると、約200〜400ヌクレオチドの断片が得られる。その結果、結合タンパク質に架橋されたポリヌクレオチド断片(例えば、タンパク質-DNA複合体)が生成される。
【0028】
タンパク質-ポリヌクレオチド複合体/断片は沈降法によって混合物から分離することができる。そのような方法として、例えば、混合物中の標的タンパク質に対する抗体を使用する方法がある。例えば、対象の結合タンパク質と(特異的に)結合する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル)またはその抗原結合フラグメントを用いた免疫沈降を使用することができる。さらに、対象のタンパク質を、例えば抗体エピトープ(例えば、ヘマグルチニン(HA))を用いて、標識またはタグ付けしてもよい。その結果得られる、実質的に精製された(すなわち、富化された)架橋タンパク質-ポリヌクレオチド断片を処理して、ポリヌクレオチドから結合タンパク質を分離させる。その後、ポリヌクレオチド断片を、該断片に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブと、該ポリヌクレオチド断片と該オリゴヌクレオチドプライマーとの間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させる。
【0029】
本発明の方法はまた、結合タンパク質が転写因子であるかどうかを調べる技法を提供する。上述したように、結合タンパク質が相互作用するポリヌクレオチドは、DNA断片(例えば、チップ上のもの)とハイブリダイズされる。ポリヌクレオチドがチップ上のDNA断片と結合し、かつチップ上のDNA断片がその生物のゲノム中の調節領域であることが知られている場合には、そのポリヌクレオチドは調節領域であると同定され、対象のタンパク質は転写因子とされる。
【0030】
複数のプローブ(本明細書では「ハイブリダイゼーションプローブ」とも呼ばれる)は少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分が「ユニバーサルプライマーランディング部位」を含む。これら2つの異なるハイブリダイゼーションプローブは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されている。上流のハイブリダイゼーションプローブは第1のユニバーサルプライマーランディング部位を含み、下流のハイブリダイゼーションプローブは第2のユニバーサルプライマーランディング部位を含む。第1および第2のユニバーサルランディング部位は同じものではない。ユニバーサルプライマーランディング部位の例にはT7およびT3ユニバーサルプライマーランディング部位が含まれる。本発明のある態様では、第1のユニバーサルプライマーランディング部位がT7プライマーランディング部位であり、第2のユニバーサルプライマーランディング部位がT3プライマーランディング部位である。
【0031】
これらのハイブリダイゼーションプローブを、サンプルからChIPにより得られた富化ポリヌクレオチドに、前もって増幅することなく、ハイブリダイズさせて第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させる。本発明のプローブおよびプライマーは、標的ポリヌクレオチドに実質的に相補的な部分を少なくとも含むように設計されており、その結果として、標的ポリヌクレオチドと本発明のプローブまたはプライマーの間でハイブリダイゼーションが起こる。以下で説明するように、この相補性は完璧である必要はなく、標的ポリヌクレオチドと本発明の一本鎖ハイブリダイゼーションプローブとのハイブリダイゼーションを妨害しない数の塩基対のミスマッチが存在してもよい。したがって、本明細書において「実質的に相補的」とは、プローブが中程度から高度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするのに十分なほど標的ポリヌクレオチドに対して相補的であることを意味する。
【0032】
こうして、アッセイは、一般的に、標的の存在下で第1のハイブリダイゼーション複合体のみを形成させるストリンジェンシー条件下で実施される。ストリンジェンシーは熱力学的変数であるステップパラメーター(例えば、温度、ホルムアミド濃度、塩濃度、カオトロピック塩濃度、pH、有機溶媒濃度、およびこれらの組合せを含むが、これらに限らない)を変えることによって調整することができる。
【0033】
これらのパラメーターを使用して、米国特許第5,681,697号に概説されているように、非特異的結合を制御することもできる。それゆえ、特定のステップを比較的高いストリンジェンシー条件で行なって、非特異的な結合を減らすことが望ましい。
【0034】
本発明においては、高度、中程度および低度のストリンジェンシー条件を含めて、様々なハイブリダイゼーション条件を使用することができる。例えば、Maniatisら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1989およびShort Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編を参照されたい(これらを参照により本明細書に援用する)。ストリンジェントな条件は配列に左右され、状況ごとに異なるだろう。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションに関する詳細は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology- -Hybridization with Nucleic Acid Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に見いだせる。一般的には、ストリンジェントな条件は、一定のイオン強度とpHでの特定の核酸の融解温度(Tm)より約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%がポリアデニル化mRNA標的配列に平衡状態でハイブリダイズする(一定のイオン強度、pH、および核酸濃度のもとでの)温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有されている)。ストリンジェントな条件は次のような条件である。すなわち、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0Mより低いナトリウムイオン濃度、典型的には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合が少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより大)の場合が少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのようなヘリックス脱安定化剤の添加によっても達成しうる。また、ハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で知られているように、非イオン性の主鎖(すなわち、PNA)を使用する場合にも変化しうる。さらに、標的に結合した後、ハイブリダイゼーション複合体の2本の鎖を架橋させる(すなわち、共有結合させる)ために架橋剤を添加してもよい。
【0035】
富化されたポリヌクレオチド断片(この断片にタンパク質、例えば対象とするタンパク質が結合する)に相補的なポリヌクレオチド(例えば、DNA)は、様々な方法を用いてハイブリダイズさせることができる。例えば、相補的分子をスライドガラス(例えば、Corning Microarray Technology (CMTTM) GAPSTM)上にまたはマイクロチップ上に固定する。ハイブリダイゼーション条件は、一般的には、例えば高度のストリンジェンシー条件および/または中程度のストリンジェンシー条件とする(Current Protocols in Molecular Biologyの特に2.10.8-11および6.3.1-6ページを参照されたい)。プローブの長さ、塩基の組成、ハイブリダイズする配列間のミスマッチ率、温度、イオン強度といった要因がハイブリダイゼーションの安定性に影響を与える。したがって、高度または中程度のストリンジェンシー条件は経験的に決定され、一部にはハイブリダイゼーションについて評価しようとするポリヌクレオチド(DNA、RNA)や他の核酸の特性に左右される。一般的に、ストリンジェントな条件は、一定のイオン強度とpHでの特定の核酸の融解温度(Tm)より約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が標的配列に平衡状態でハイブリダイズする(一定のイオン強度、pH、および核酸濃度のもとでの)温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有されている)。ストリンジェントな条件は次のような条件である。すなわち、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0Mより低いナトリウムイオン濃度、典型的には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度は短いプローブ(例えば、10〜約50ヌクレオチド)の場合が少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、約50ヌクレオチドより大)の場合が少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような脱安定化剤の添加によっても達成しうる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合は、陽性のシグナル(例えば、核酸の同定)がバックグラウンドハイブリダイゼーションの約2倍である。本発明において、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の条件を意味する。すなわち、25mM KPO4 (pH7.4)、5X SSC、5Xデンハート溶液、50μg/mL変性・音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、および1〜15ng/mLプローブを含有するハイブリダイゼーション溶液中約42℃でハイブリダイゼーションを行い、2X SSCおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄溶液を用いて約50℃で洗浄を行なう。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の条件を意味する。すなわち、25mM KPO4 (pH7.4)、5X SSC、5Xデンハート溶液、50μg/mL変性・音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、および1〜15ng/mLプローブを含有するハイブリダイゼーション溶液中約42℃でハイブリダイゼーションを行い、0.2X SSCおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄溶液を用いて約65℃で洗浄を行なう。
【0036】
プライマーおよびプローブのサイズは、当業者に理解されているように、様々であり、一般的に、プローブの各部分およびプローブの全長は5〜500ヌクレオチド長である。各部分は10〜100、例えば15〜50であり、典型的には用途および増幅法に応じて10〜35が用いられる。したがって、例えば、プローブのユニバーサルプライミング部位はそれぞれ約15〜25ヌクレオチド長であり、20が最もよく用いられる。プローブのアダプター配列は5〜25ヌクレオチド長であり、10〜20が最も一般的である。プローブの標的特異的部分は典型的には15〜50ヌクレオチド長であり、20〜40が最も一般的である。
【0037】
したがって、本発明は第1のハイブリダイゼーションプローブのセットを提供する。本明細書において「プローブのセット」とは、特定の多重アッセイ法で用いられる複数のハイブリダイゼーションプローブを意味する。ここで、複数とは少なくとも2を意味するが、アッセイ法、サンプルおよび試験の目的に応じて10より多い数であってもよい。
【0038】
こうして、本発明はユニバーサルプライミング部位を含むハイブリダイゼーションプローブのセットを提供する。本明細書において「ユニバーサルプライミング部位」とは、増幅用のPCRプライマーと結合するプローブの配列を意味する。各プローブのセットは上流のユニバーサルプライミング部位(UUP)と下流のユニバーサルプライミング部位(DUP)を含んでなる。この場合も、「上流」および「下流」は特定の5’-3’方向を意味するものではなく、それぞれの系の配向に応じて決まる。典型的には、1つのプローブセットではただ1つのUUP配列と1つのDUP配列が用いられるが、当業者には理解されるように、種々のアッセイまたは種々の多重アッセイでは複数のユニバーサルプライミング配列を利用しうる。さらに、ユニバーサルプライミング部位は、プライミング配列によって挟まれた配列のみが増幅されるように、典型的にはハイブリダイゼーションプローブセット(または連結プローブ)の5’末端と3’末端に位置づけられる。
【0039】
さらに、ユニバーサルプライミング配列は、一般的には、特定のアッセイおよび宿主ゲノムが与えられたら、そのアッセイの特異性を確実なものとするために、可能なかぎりユニークな配列となるように選択される。通常、ユニバーサルプライミング配列はサイズが約5〜35塩基対の範囲であり、典型的には約15〜20が用いられる。
【0040】
当業者には理解されるように、2つのプライミング部位の方向は相違する。すなわち、一方のPCRプライマーは第1のユニバーサルプライミング部位と直接ハイブリダイズするが、他方のPCRプライマーは第2のユニバーサルプライミング部位の相補体とハイブリダイズするだろう。換言すると、第1のユニバーサルプライミング部位はセンス方向であり、第2のユニバーサルプライミング部位はアンチセンス方向である。
【0041】
ユニバーサルプライミング部位に加えて、プローブセットの各ハイブリダイゼーションプローブは第1の標的特異的配列を少なくとも含んでなる。当業者には理解されるように、標的特異的配列はプローブの用途に応じて様々なフォーマットの形をとることができる。例えば、プライマー選択プログラムにより、特定の40-merオリゴヌクレオチドがヒトゲノム中の所与の領域(例えばプロモーター)を表すべく選択される。このプロセスは、ヒトゲノムデータベースに対するBLAST検索後に、ゲノムの関連配列中に少なくとも4つの一様に分配されたミスマッチを許すことによって、そのユニーク性を証明するだろう。また、選択された配列は小さい反復配列を含まず、特定の範囲(例えば、約55〜65℃)のTmを有し、最小限の二次構造(ΔGにより計算)を含むものである。これに対して、アミノ誘導オリゴを合成して基体(例えば、Motorola 3D codelinkスライド)上にスポットすると、オリゴをベースとしたアレイ(例えば、プロモーターアレイ)が形成される。オリゴマーを本質的に2つに分割する(例えば、オリゴマーが40-merである場合は、それを2つに分割して2つの20-merを得る)ことにより標的特異的配列を取得し、これらをユニバーサルプライマーと組み合わせると、上流および下流のハイブリダイゼーションプローブとなる。
【0042】
2つのハイブリダイゼーションプローブはOLAアッセイ系で使用することができる。基本的なOLA法は少なくとも2つの異なる方法で実施される。第1の実施形態では、標的配列の一方の鎖のみを連結反応の鋳型として用いる。これとは別に、両方の鎖を使用してもよい。後者の方法は一般にライゲーション連鎖反応またはLCRと呼ばれている。一般的には、米国特許第5,185,243号および同第5,573,907号、EP 0 320 308 B1、EP 0336 731 B1、EP 0 439 182 B1、WO 90/01069、WO 89/12696、ならびにWO 89/09835を参照されたい(これら全てを参照することにより本明細書に援用するものとする)。以下の説明はOLAに焦点を当てているが、当業者であれば理解しうるように、これはLCRにも容易に応用することができる。
【0043】
この実施形態では、ハイブリダイゼーションプローブは少なくとも第1のハイブリダイゼーションプローブと第2のハイブリダイゼーションプローブを含んでいる。この方法は、2つのプローブが標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズしかつ2つのプローブ間の接合部に完全な相補性が存在する場合には、2つのプローブを一緒に連結させることができるという事実に基づいているが、これは、完全な相補性が両プローブの全長にわたって存在しなければならない、ということを意味するものではない。
【0044】
ある実施形態においては、2つのハイブリダイゼーションプローブがそれぞれ標的特異的部分を含むように設計される。第1のハイブリダイゼーションプローブは標的ポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチド断片)の第1の標的ドメインに対して実質的に相補的となるように設計され、第2のハイブリダイゼーションプローブは標的ポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチド断片)の第2の標的ドメインに対して実質的に相補的である。一般的に、ハイブリダイゼーションプローブの各標的特異的配列は少なくとも約5ヌクレオチド長であり、約15〜30ヌクレオチドの配列が典型的であり、特に20ヌクレオチドがよく用いられる。ある実施形態では、第1および第2の標的ドメインが直接隣接しており、例えば、それらの間に介在するヌクレオチドがまったく存在しない。この実施形態においては、少なくとも第1のハイブリダイゼーションプローブが第1の標的ドメインにハイブリダイズし、第2のハイブリダイゼーションプローブが第2の標的ドメインにハイブリダイズする。完全な相補性が接合部に存在すると、連結構造体が形成され、その結果2つのプローブが一緒に連結されて連結プローブを形成する。この相補性が存在しないと、連結構造体は形成されず、プローブ同士が認めうる程度に一緒に連結されることはない。連結されたプローブを標的ポリヌクレオチドから変性させて解離させ、それを後続の反応のための鋳型として役立てるために、この方法は熱サイクルを用いて行なってもよい。また、この方法は3つのハイブリダイゼーションプローブまたは1個以上のヌクレオチドで分離されているハイブリダイゼーションプローブを用いて行なうこともできるが、この場合にはdNTPとポリメラーゼを添加する(これは「Genetic Bit」解析とも称される)。
【0045】
この実施形態においては、2つのハイブリダイゼーションプローブが直接隣り合っていない。この実施形態において、それらは1個以上の塩基で分離されている。dNTPとポリメラーゼを添加してギャップを「フィルイン」し、続いて連結反応を行なう。これにより、連結プローブの形成が可能となる。
【0046】
当業者には理解されるように、本発明においては核酸類似体をプライマーおよびプローブとして使用することができる。さらに、天然の核酸と核酸類似体を組み合わせて使用してもよい。あるいはまた、種々の核酸類似体の組合せ、ならびに天然の核酸と核酸類似体の組合せを使用することもできる。例えば、ペプチド核酸類似体を含むペプチド核酸(PNA)を用いてもよい。これらの主鎖は、天然の核酸のホスホジエステル主鎖が高度に荷電されているのに対して、中性条件下で実質的に非イオン性である。その結果2つの利点が生まれる。第一に、PNA主鎖は向上したハイブリダイゼーション動力学を示す。完全にマッチした塩基対に対して、ミスマッチではPNAがより大きい融解温度(Tm)の変化を示す。DNAとRNAは一般的に、内部ミスマッチにおいてTmの2〜4℃低下を示す。非イオン性PNA主鎖の場合には、その低下が7〜9℃ほどである。同様に、それらの非イオン特性ゆえに、主鎖に結合された塩基のハイブリダイゼーションが塩濃度に対して比較的敏感でない。
【0047】
ハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーは、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの任意の組合せ、および塩基(ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む)の任意の組合せを含むことができる。ある実施形態では、プライマーおよびプローブにおいてイソシトシンとイソグアニンを使用する。それは、米国特許第5,681,702号に一般的に記載されているように、非特異的ハイブリダイゼーションを減少させるからである。本明細書中で用いる「ヌクレオシド」なる語句は、ヌクレオシドだけでなくヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、および修飾ヌクレオシド、例えばアミノ修飾ヌクレオシドを含むものである。加えて、「ヌクレオシド」には非天然の類似体構造も含まれる。こうして、例えばペプチド核酸の個々の単位(それぞれが塩基を含む)は本明細書ではヌクレオシドと称される。
【0048】
連結反応後、ハイブリダイズされなかったDNAとハイブリダイゼーションプローブを除去する。ある態様において、これを行なうには、ハイブリッド複合体を含めた全てのビオチン化DNAを特異的に保持するストレプトアビジン基体を使用する。例えば、ある態様では、サンプルのポリヌクレオチドを、ハイブリダイゼーションプローブと接触させる前にビオチン化する。こうして、ハイブリダイゼーションプローブとの接触前、接触中、または接触後に、ビオチン化ポリヌクレオチドはストレプトアビジン基体と接触させることによって固相選択を受ける。
【0049】
例えば、ChIPの前または後でポリヌクレオチドをビオチン化する。ポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体がポリペプチドを含まないポリヌクレオチドから分離されたら、ビオチン化ポリヌクレオチドを、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して固相表面に結合させる。
【0050】
ある態様では、ハイブリダイズされなかったプローブを除去した後で、ハイブリッドを連結反応に供する。次いで、連結されたプローブを、上流および下流のユニバーサルプライミング配列にハイブリダイズするユニバーサルプライマーを用いて、同時に増幅させる。その後、得られるアンプリコン(直接または間接に標識されていてもよい)をアレイ上で検出することができる。これにより、標的ポリヌクレオチドの検出および定量が可能となる。
【0051】
例えば、ハイブリダイズされなかったプローブ(さらには、サンプル由来の、対象ではない他の核酸分子)を取り除いたら、連結プローブを変性し、増幅させてアンプリコンを形成させ、その後そのアンプリコンを検出する。これはいくつかの方法で行なうことができ、例えばPCR増幅、ローリングサークル増幅が挙げられる。さらに、以下で説明するように、様々な方法でアンプリコンに標識を組み込むことができる。
【0052】
本明細書に記載する方法では、ポリヌクレオチドを、例えば連結反応介在ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、増幅することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M.ら編, 1991を参照されたい;この教示内容を参照することにより本明細書に援用するものとする)。
【0053】
免疫沈降物から単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載するように、クローン化してライブラリーを作製したり、かつ/または配列決定したりすることができ、得られた配列をデータベースに登録してもよい。この方法で検出されたものに隣接するポリヌクレオチドも調節領域である可能性がある。これらは単離されたポリヌクレオチドを生物(この生物からクロマチンサンプルが得られた)のゲノムにマッピングすることにより同定することができ、場合により1以上のデータベースに登録してもよい。
【0054】
当業者には理解されるように、ポリヌクレオチドは、実質的にあらゆる生物の体液(例えば、血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門および膣分泌物、汗、精液)を含むがこれらに限らないサンプルから得ることができるが、本発明の方法には哺乳動物サンプルが広く用いられ、ヒトサンプルが一般的である。サンプルは個々の細胞および細胞系を含むことができ、細胞としては、限定するものではないが、初代細胞(細菌を含む)が挙げられ、細胞系としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:あらゆる種類の腫瘍細胞(特に、メラノーマ、骨髄性白血病、肺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、および精巣癌)、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(T細胞およびB細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜細胞、肝細胞、白血球(単核白血球を含む)、幹細胞(例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚、肺、腎臓、肝臓および筋細胞の幹細胞)、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞、肝細胞、腎細胞、ならびに脂肪細胞。適当な細胞には、限定するものではないが、公知の研究用細胞も含まれ、例えば、Jurkat T細胞、NIH3T3細胞、CHO、Cos、923、HeLa、WI-38、Weri-1、MG-63などが挙げられる(ATCC細胞系カタログを参照されたい;参照することにより本明細書に特に援用するものとする)。
【0055】
ポリヌクレオチドは公知の方法を用いてサンプルから調製される。例えば、標的ポリヌクレオチドを含む細胞を溶解するために、公知の溶解バッファー、音波処理法、エレクトロポレーションなどを使ってサンプルを処理することができる。
【0056】
標的ポリヌクレオチドは少なくとも20塩基長のヌクレオチドの高分子形態を含む。単離されたポリヌクレオチドは、その起源となる生物の天然のゲノムにおいてそれが直接隣接しているコード配列(5’末端にあるものおよび3’末端にあるもの)のいずれとも直接隣接していないポリヌクレオチドである。したがって、この用語には、例えば、他の配列とは別個の分子(例えば、cDNA)として存在する、ベクターに、自律複製プラスミドもしくはウイルスに、または原核もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNAが含まれ、また、溶解状態で存在するかまたはマイクロアレイチップ上に存在しうるゲノム断片も含まれる。本発明のヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの修飾形態でありうる。この用語は一本鎖形態と二本鎖形態のDNAを含む。
【0057】
ポリヌクレオチドという用語は、一般的に、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドをさし、非修飾型RNAもしくはDNA、または修飾型RNAもしくはDNAでありうる。こうして、例えば、本明細書中で用いるポリヌクレオチドとは、とりわけ、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域と二本鎖領域が混ざり合ったDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、一本鎖領域と二本鎖領域が混ざり合ったRNA、DNAとRNAを含むハイブリッド分子(一本鎖またはより典型的には二本鎖であり、一本鎖領域と二本鎖領域が混ざり合っていてもよい)をさす。
【0058】
さらに、ポリヌクレオチドはまた、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を含む。このような領域の鎖は同一の分子に由来しても、異なる分子に由来してもよい。前記領域は1または複数の分子の全てを含みうるが、より一般的にはいくつかの分子の1つの領域のみを含む。三重らせん領域の分子の1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。
【0059】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、プローブ、プライマーまたはプライマー対)には、1または複数の修飾塩基を含有する上記のようなDNAまたはRNAが含まれる。こうして、安定性または他の理由のために修飾された主鎖を有するDNAまたはRNAは核酸分子である。さらに、イノシンのような変わった塩基またはトリチル化塩基のような修飾塩基(例として2つだけ挙げる)を含むDNAまたはRNAも、本明細書で言うところのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0060】
DNAおよびRNAに対しては、当業者に知られた多くの有用な目的にかなう様々な修飾が行なわれていることが理解されるであろう。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドには、そのようなポリヌクレオチドの化学的、酵素的または代謝的に改変された形態、ならびにウイルスや細胞(とりわけ単純型および複雑型細胞を含む)に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態が含まれる。
【0061】
標的ポリヌクレオチドはまた、異なる標的ドメインを含むことができ、これらのドメインは隣接していてもよいし(すなわち連続している)、分離されていてもよい。例えば、OLA法では、第1のハイブリダイゼーションプローブが標的ポリヌクレオチド上の第1の標的ドメインにハイブリダイズし、そして第2のハイブリダイゼーションプローブが第2の標的ドメインにハイブリダイズしうる。これらのドメインは直接隣接していてもよいし、あるいは1または複数のヌクレオチドによって分離されていてもよい。「第1」および「第2」という用語は、標的ポリヌクレオチドの5'-3'方向に関して、その配列の方向を付与することを意味するものではない。例えば、標的ポリヌクレオチドの5'-3'方向を考えると、第1の標的ドメインは第2のドメインの5'側、または第2のドメインの3'側に位置づけることができる。さらに、当業者には理解されるように、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのアレイの表面上にあるプローブは、いずれの配向で結合させてもよく、したがってそれらは遊離の3'末端または遊離の5'末端をもつようになる。いくつかの実施形態では、プローブを1または複数の内部位置で、あるいは両末端で表面に結合させてもよい。
【0062】
反応の諸成分は同時にまたは連続して任意の順序で添加することができるが、典型的な実施形態については以下で説明する。さらに、反応はアッセイに含めることができるその他の種々の試薬類を含んでいてもよい。そうした他の試薬として、塩類、バッファー、中性のタンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などが挙げられるが、これらは最適なハイブリダイゼーションおよび検出を容易にし、かつ/または非特異的相互作用またはバックグラウンド相互作用を減らすために使用される。また、アッセイの効率を別のやり方で向上させる試薬類、例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤などを、サンプルの調製方法およびポリヌクレオチドの純度に応じて使用することもできる。
【0063】
さらに、大部分の実施形態においては、二本鎖標的ポリヌクレオチドを変性して、プライマーや他のプローブとのハイブリダイゼーションを可能にするように、それらを一本鎖とする。典型的な実施形態では、一般的に反応温度を約95℃に上げることによって、サーマルステップを利用するが、pH変化や他の技法を使用してもよい。
【0064】
ある実施形態において、増幅技術はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRは広く利用されており、また記載されているが、PCRは標的配列を増幅させるためのサーマルサイクリングと組み合わせたプライマー伸長の使用を含む。米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号、ならびにPCR Essential Data, J. W. Wiley & sons, C. R. Newton編, 1995を参照されたい(これらの全てを参照により援用するものとする)。
【0065】
一般的に、PCRは次のように大まかに説明することができる。二本鎖ハイブリダイゼーション複合体を変性し(通常は温度を上げることによる)、次いで過剰のPCRプライマーの存在下で冷却すると、PCRプライマーがユニバーサルプライミング部位(例えば、T7またはT3プライミング部位)にハイブリダイズする。次にDNAポリメラーゼを作用させてdNTPによりプライマーを伸長させると、ハイブリダイゼーション複合体を形成する新しい鎖が合成される。その後サンプルを再度加熱してハイブリダイゼーション複合体を解離させる。このプロセスを繰り返す。第2のユニバーサルプライミング部位にハイブリダイズする、相補標的鎖のための第2のPCRプライマーを用いることにより、迅速で指数的な増幅が起こる。こうして、PCRステップは変性、アニーリングおよび伸長からなる。PCRの詳細はよく知られており、Taq Iポリメラーゼのような耐熱性ポリメラーゼの使用とサーマルサイクリングを含む。適当なDNAポリメラーゼには、限定するものではないが、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE 1.0およびSEQUENASE 2.0 (U.S. Biochemical)、T5 DNAポリメラーゼ、ならびにPhi29 DNAポリメラーゼが含まれる。ポリメラーゼはどのようなポリメラーゼであってもよいが、典型的には3'エキソヌクレアーゼ活性を示さないものである。適当なポリメラーゼの例としては、限定するものではないが、エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼIラージ(クレノウ)断片、Phi29 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼなどが挙げられる。さらに、いくつかの実施形態では、一本鎖DNAを複製する(すなわち、二本鎖部分を形成するプライマーを必要としない)ポリメラーゼを使用してもよい。
【0066】
反応は、連結プローブを、ユニバーサルプライマー、ポリメラーゼおよびヌクレオチドを含む溶液に導入することにより開始される。ヌクレオチドはデオキシヌクレオシド三リン酸(デオキシヌクレオチド、またはdNTP、例えばdATP、dTTP、dCTPおよびdGTPとも呼ばれる)である。以下で説明するいくつかの実施形態では、1または複数種のヌクレオチドが検出可能な標識を含み、この標識は一次標識または二次標識のいずれであってもよい。さらに、ヌクレオチドはその系の構成に応じてヌクレオチド類似体とすることができる。同様に、プライマーが一次または二次標識を含んでいてもよい。
【0067】
したがって、PCR反応には少なくとも1つの、典型的には2つのPCRプライマー、ポリメラーゼおよびdNTPのセットが必要である。本明細書で説明するように、プライマーが標識を含むか、あるいは1または複数種のdNTPが標識を含む。
【0068】
これらの実施形態は、連結されていないプローブを必ずしも除去する必要がないという利点を有する。なんとなれば、標的が存在しない場合には、めだった増幅反応が起こらないからである。こうした利点はプローブの設計によって最大限に高めることができる。例えば、第1の実施形態において、単一のハイブリダイゼーションプローブが存在する場合には、ユニバーサルプライミング部位をプローブの5'末端の近くに配置する。そうすると、プローブが連結反応の不在下では短いトランケート型の小片を生成するように働くにすぎないからである。
【0069】
アンプリコンはいろいろなやり方で標識することができる。例えば、ポリメラーゼが標識ヌクレオチド(dNTP)を組み込んでもよいし、あるいはまた、ユニバーサルプライマーそれ自体が標識を含んでいてもよい。
【0070】
「標識」または「検出可能な標識」とは、検出を可能にする成分を意味する。それは一次標識であっても二次標識であってもよい。したがって、検出用の標識は一次標識(すなわち、直接的に検出可能)または二次標識(間接的に検出可能)でありうる。
【0071】
ある実施形態では、検出用の標識が一次標識である。一次標識は発蛍光団のような直接検出が可能な標識である。一般的に、標識は3つのクラスに分けられる。すなわち、a)同位体標識、例えば放射性同位体または重同位体、b)磁気的、電気的または熱的標識、およびc)着色染料または発光染料である。また、標識には酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼなど)および磁性粒子も含まれる。よく用いられる標識として発色団または燐光体も含まれるが、蛍光染料が一般的である。本発明で使用するのに適した染料/色素には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:蛍光ランタニド錯体(ユーロピウムおよびテルビウムの錯体を含む)、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、クアンタムドット(quantum dot)(「ナノクリスタル」とも称される)、ピレン、マラカイト・グリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー(Lucifer Yellow)、カスケード・ブルー(Cascade Blue(商標))、テキサス・レッド(Texas Red)、サイ・ダイ(Cy dye)(Cy3、Cy5など)、アレキサ色素(alexa dye)、フィコエリシン(phycoerythin)、bodipy、およびRichard P. HauglandによるMolecular Probes Handbook、第6版(参照することにより本明細書に援用する)に記載された他のもの。
【0072】
二次標識は間接的に検出される標識であり、例えば、二次標識は検出のために一次標識と結合または反応したり、別の生成物に作用して一次標識(例えば、酵素)を生成したり、あるいは二次標識を含む化合物を標識されていない物質から分離することを可能にしたりする、といったことができる。
【0073】
二次標識は一般的に結合パートナーのペアである。例えば、標識はその結合パートナーと結合するハプテンまたは抗原である。例えば、適当な結合パートナーのペアには、限定するものではないが、次のものが含まれる:抗原(例えばペプチドを含むタンパク質)と抗体(FAbなどのそのフラグメントを含む); タンパク質と小分子(ビオチン/ストレプトアビジンを含む); 酵素と基質または阻害剤; その他のタンパク質-タンパク質相互作用性のペア; 受容体-リガンド; ならびに炭水化物とその結合パートナー。核酸-核酸結合タンパク質のペアも有用である。一般的には、ペアの小さいほうがプライマーに組み込むためのヌクレオチドに結合される。典型的な結合パートナーのペアとしては、限定するものではないが、ビオチン(またはイミノビオチン)とストレプトアビジン、ジゴキシゲニンと抗体、およびプロリンクス(Prolinx(商標))試薬が挙げられる。例えば、結合パートナーのペアはビオチンまたはイミノビオチンと蛍光標識ストレプトアビジンからなる。イミノビオチンはpH4.0のバッファー中でストレプトアビジンから解離し、一方ビオチンは苛酷な変性剤(例えば、6MグアニジニウムHCl、pH1.5または90%ホルムアミド、95℃)を必要とする。
【0074】
当業者には理解されるように、標識付けは種々の方法で行なうことができる。一般的には、下記の2つの方法のうちの1つで標識付けされる。すなわち、標識をプライマーに組み込んで、増幅反応によって標識を含むアンプリコンが得られるようにするか、あるいは標識をdNTPに結合させ、それをポリメラーゼによってアンプリコンに組み込ませる。
【0075】
増幅DNAは、蛍光標識されたヌクレオチドをLM-PCR反応に含めることによって、またはユニバーサルプライマーを蛍光標識することによって、蛍光的に標識付けすることができる。
【0076】
標識されたアンプリコンDNAは、全ゲノムまたはそのサブセット(例えば、1以上の染色体)に相当するスポットを含むDNAマイクロアレイにハイブリダイズさせる。非免疫沈降対照と比べたときの、マイクロアレイ上の各スポットの蛍光強度は、そのDNA結合タンパク質(例えば、対象のタンパク質)が特定のスポットに位置づけられたDNA領域と結合するかどうかを実証している。それゆえ、本明細書に記載する方法は全ゲノムにわたるタンパク質-DNA相互作用の検出を可能にする。
【0077】
上述したように、本発明はポリペプチド分子と相互作用するポリヌクレオチドの検出に有用な方法および組成物を提供する。この方法は以下のステップを含んでなる:ポリペプチドと架橋結合するポリヌクレオチドを免疫沈降させて、富化されたポリヌクレオチドを取得すること、該ポリペプチドを該ポリヌクレオチドから解離させること、一対のプローブ(それぞれが例えば20merの標的配列とユニバーサルプライマーを含む)を富化されたポリヌクレオチドにハイブリダイズさせること、該プローブを連結させて連結プローブを形成させること、連結プローブを、標識を含むユニバーサルプライマーを用いて増幅させること、標識された増幅産物をマイクロアレイ(例えば、DNAマイクロアレイ)に接触させること。標識された増幅産物は、その増幅産物の配列に対して実質的に相補的なポリヌクレオチド配列を含むアレイ部位と(ハイブリダイゼーションにより)相互作用する。
【0078】
アレイ構成物は個々の部位を含む表面を有する少なくとも第1の基体を含んでなる。本明細書において「アレイ」または「バイオチップ」とは、アレイ方式での複数のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを意味する。アレイのサイズはそのアレイの構成および最終用途により変化するだろう。核酸アレイは当技術分野で公知であり、いくつかの方法に分類することができる。順序付けられたアレイ(例えば、個別の部位で化学物質を解析することが可能)とランダムなアレイの双方が含まれる。順序付けられたアレイには、限定するものではないが、フォトリソグラフィー法(Affymetrix社製GeneChip(商標))、スポッティング法(Synteniなど)、プリンティング法(Hewlett PackardおよびRosetta)、三次元「ゲルパッド」アレイ、および当技術分野で公知のものが含まれる。さらに、液体アレイも本発明の方法で使用される。
【0079】
一般に、アレイは、基体の大きさやアレイの最終用途に応じて、2から10億またはそれ以上もの異なる配列を含んでなる。こうして、超高密度アレイ、高密度アレイ、中密度アレイ、低密度アレイ、および超低密度アレイが使用される。例えば、超高密度アレイは約10,000,000〜約2,000,000,000の核酸分子を含み、約100,000,000〜約1,000,000,000が一般的である(全ての数はcm2あたりである)。高密度アレイは約100,000〜約10,000,000の核酸分子を含み、約1,000,000〜約5,000,000が一般的である。中密度アレイでは約10,000〜約100,000の範囲が一般的であり、約20,000〜約50,000が最も一般的である。低密度アレイは通常10,000より少ない核酸分子を含み、約1,000〜約5,000が一般的である。超低密度アレイは1,000より少ない核酸分子を含み、約10〜約1000が一般的であり、約100〜約500が最も一般的である。
【0080】
「基体」または「固相支持体」とは、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または他の有機ポリマーの結合または会合に適する個別の部位を含むように改作することができ、かつ少なくとも1つの検出方法に適合しうる材料をさす。使用できる基体としては、限定するものではないが、以下のものが含まれる:ガラスおよび改質または官能基化ガラス、プラスチック(ポリアクリレート、ポリスチレン、スチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロンなどを含む)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまたはシリカ系材料(シリコーンおよび改質シリコーンを含む)、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバー束、ならびに他の種々のポリマー。一般的に、基体は光学的検出を可能にするものであって、それ自体が光学的検出を認めうる程度に妨げてはならない(例えば、それ自体が蛍光を発してはならない)。
【0081】
一般に基体は平ら(平坦)であるが、当業者には理解されるように、その他の基体の形状も使用することができる。例えば、三次元の立体的構成を使用してもよく、例えばプラスチックの多孔質ブロックにビーズを埋め込んで、そのビーズにサンプルが接近できるようにし、共焦点顕微鏡を使って検出する。同様に、サンプルのフロースルー分析のために、ビーズをチューブの内面に配置してもよい。こうすると、サンプル量を最小限にすることができる。
【0082】
一般に、アレイ構成物はいくつかの方法で作製することができる。例えば、複数のアッセイ位置(本明細書では「アッセイウェル」と呼ぶこともある)を含む第1の基体(例えば、マイクロタイタープレート)を、それぞれのアッセイ位置が個々のアレイを含むように構成する。すなわち、アッセイ位置とアレイ位置は同じである。例えば、マイクロタイタープレートのプラスチック材料を、各アッセイウェルの底に複数の「ウェル」を含むように形作ることができる。
【0083】
別の態様では、個々のアレイの数を、用いるマイクロタイタープレートの大きさによって設定する。こうして、96ウェル、384ウェルおよび1536ウェルのマイクロタイタープレートは96、384および1536の個々のアレイを含む複合アレイを利用するが、当業者には理解されるように、各マイクロタイターウェルが個々のアレイを含む必要はない。複合アレイは、同一の、類似の、または異なる個々のアレイを含みうることに留意すべきである。すなわち、いくつかの実施形態では、96の異なるサンプルに対して2,000の同一のアッセイを行なうことが望ましいかもしれない。あるいはまた、同じサンプル(すなわち、96ウェルのそれぞれに含まれる同一のサンプル)に対して192,000の実験を行なうことが望ましいかもしれない。これとは別に、複合アレイの各横列または各縦列は重複性/品質管理について同じでありうる。当業者であれば理解できるように、こうした系を作製するための方法はいろいろ存在する。さらに、アレイのランダムな性質は、同一のビーズ集団を2つの異なる表面に添加すると、実質的に類似しているがおそらく同一ではないアレイが得られることも意味しうる。
【0084】
使用に際しては、標識された増幅産物(例えば、標識アンプリコン)を、ハイブリダイゼーションプローブにおけるような実質的に相補的なポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを含むアレイに接触させる。標識された増幅産物(例えば、標識アンプリコン)とマイクロアレイ中のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは(直接または間接的に)ハイブリダイズすると、結果的に特定のマイクロアレイ位置の光学シグナルが変化する。
【0085】
以上、本発明について説明してきたが、本発明をさらに詳しく説明するために以下に特定の実施形態を示す。以下の具体的な実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0086】
本発明の方法を実施するにあたって、次の手法を行なった。
【0087】
架橋: タンパク質をDNAに架橋させるために、ホルムアルデヒドを培地に直接添加して最終濃度を1%とし、37℃で10分間インキュベートした(例えば、プレート上の培地10mLに270μLの37%ホルムアルデヒドを添加する)。次に培地を吸引して、可能なかぎり多くの培地を取り除いた。細胞を、プロテアーゼ阻害剤(1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、1μg/mLアプロチニンおよび1μg/mLペプスタチンA)を含む氷冷PBSを用いて2回洗浄した。細胞をかきとってコニカルチューブに入れ、2000rpm、4℃で4分間ペレット化した。プロテアーゼ阻害剤(阻害剤:1mM PMSF、1μg/mLアプロチニンおよび1μg/mLペプスタチンA)を含む沈殿SDSに溶解バッファーを加えた。細胞ペレットを200μLのSDS溶解バッファー中に再懸濁させて、氷上で10分間インキュベートした。注意:200μLのSDS溶解バッファーは1×106細胞あたりである;それより多い細胞を用いる場合は、再懸濁させる細胞ペレットを200μLアリコート中に分けて、各200μLアリコートが約1×106個の細胞を含むようにすべきである。
【0088】
再懸濁/溶解させた細胞ペレットは、サンプルを確実に氷冷しておきながら音波処理にかけて、DNAを200〜1000塩基対の長さにせん断した。8μLの5M NaClを添加して65℃で4時間逆架橋させた。DNAをフェノール/クロロホルム抽出で回収した。
【0089】
リン酸化: 6μLの非リン酸化オリゴのプールを、1/10容の5M NaClと2.5容の氷冷エタノールと混合した。この混合物を-20℃で30分間インキュベートした。沈殿したオリゴを30分の遠心分離にかけてペレット化した。このペレットを70〜75%のエタノールで洗浄して、5分間遠心した。ペレットを乾燥させて、十分量のTE (10mM Tris-HCl, 1 mM EDTA, pH8.0)またはH2O中に溶解した。
【0090】
逆架橋DNAのビオチン化: フェノール-クロロホルム抽出したDNAを洗浄してTE(pH8.0)中に溶解する。10μLのDNAに、H2O中の10ngのファージ1 DNAと1μL (1μg/μL)のPHOTOPROBE(登録商標)ビオチン(Vector Laboratories)を添加して最終容量を20μLとした。この混合物にミネラルオイルを重層して95℃で10分間加熱した。この調製物に0.1M Tris (pH9.5)を添加して最終容量を80μLとした。160μLの2-ブタノールを混合物に添加し、激しくボルテックス撹拌し、遠心して層を分離させた。上層のブタノールを除去し、ブタノール抽出を繰り返した。ビオチン化DNAを沈殿させるにあたって、次の成分を添加して混合した: 10μLの10M NH4Ac、2μLの1M MgCl2、1μLのグリコーゲン、150μLの-20℃エタノール。-20℃のエタノールでインキュベートする。混合物を-20℃で15分間インキュベートした。30分の遠心分離でペレット化し、70%エタノールで洗浄して5分間遠心した。ペレットを乾燥させてTE中に再懸濁した。
【0091】
アニーリング: PCRチューブの中で次の成分を混ぜ合わせた:各オリゴの最終濃度を200fmol/反応とするのに十分な量のオリゴプール、ビオチン化したサンプルDNA、20μLの2×結合バッファー(40mM Tris-HCl, pH7.6, 1M NaCl, 2mM EDA, 0.1% Tween-80)、全容量40μL。この混合物を95℃で10分間加熱し、次いで45℃に冷却する。サンプルを10分間そのままに保持してから、5μLのストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Seradyne)を加える。その後サンプルを45℃で2時間インキュベートした。
【0092】
選別: ビーズを150μLの洗浄バッファー(20mM Tris-HCl, pH7.6, 0.1M NaCl, 1mM EDTA, 0.1% Tween-80)で2回洗浄する。このビーズを1×NEB Taq DNAリガーゼバッファーで洗浄した。
【0093】
連結: 39μLの1×NEB Taqリガーゼバッファーおよび1μL(40U)のNEB Taqリガーゼを添加し、45℃で1時間インキュベートした。ビーズを洗浄バッファーで2回洗い、40μLのH2Oを加えて95℃で5分間加熱することにより、連結されたオリゴヌクレオチドのペアを溶出した。
【0094】
増幅: 各反応につき、2.5μLの10x AmpliTaqバッファー、1.5μLの25mM MgCl2、0.5μLのdNTP、15pmoleの各PCRプライマー、2〜4μLのサンプル、および0.4μLのAmpliTaq Gold (5U/μL)を混合して全量25μLとした。PCRサイクル条件は94℃で10分、その後94℃で30秒、54℃で2分、72℃で2分を30サイクル行なった。
【0095】
本発明の方法の特異性を試験するために、次の実験を実施した:
プラスミドスパイキング(plasmid spiking): 架橋選択および逆架橋を上記のように、また当技術分野で知られているように行なった。オリゴを上記のようにリン酸化した。
【0096】
オリゴヌクレオチド:
ゲノムDNA検出用の20の異なるオリゴヌクレオチド対
スパイキングプラスミドDNA検出用の16の異なるオリゴヌクレオチド対
【0097】
ビオチン化: 上記と同じ。ただし、(i)ファージλDNAを使用せず、(ii)10μLのPHOTOPROBE(登録商標)ビオチンを使用し、(iii)30分間加熱した。
【0098】
293T細胞由来のゲノムDNAおよび4つの異なるプラスミドDNAの混合物を別々にビオチン化した。
【0099】
3) アニーリング: 上記と同じ。ただし、(i)各オリゴの最終濃度を400fmol/反応とし、(ii)ストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Seradyne)の代わりにストレプトアビジンコーティングチューブ(Boeringer-Manheim)を使用した。
【0100】
以下の反応を行なった:
【0101】
選別: 上記と同じ。
【0102】
連結: 上記と同じ。ただし、1時間のアニーリングと2時間の連結反応を行なった。
【0103】
増幅: 上記と同じ。
【0104】
調製物をアガロースゲル電気泳動で分析した。データを図3Aに示す。
【0105】
異なる倍率スパイキングによるPCR断片スパイキング実験。オリゴのリン酸化を上記のように実施した。オリゴヌクレオチド: スパイクされないゲノムDNA検出用の15の異なるオリゴヌクレオチド対、ならびにスパイキングおよびゲノムDNA検出用の7つの異なるオリゴヌクレオチド対。
【0106】
ビオチン化: 上記と同じ。ただし、(i)ファージλDNAを使用せず、(ii)10μLのPHOTOPROBE(登録商標)ビオチンを使用し、(iii)30分間加熱した。
【0107】
以下の反応を行なった: 293T細胞由来のゲノムDNAおよび7つの異なるPCR DNA断片の混合物を一緒にビオチン化した。
【0108】
【0109】
アニーリング: 上記と同じ。ただし、(i)各オリゴの最終濃度を400fmol/反応とし、(ii)ストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Seradyne)の代わりにストレプトアビジンコーティングチューブ(Boeringer-Manheim)を使用した。
【0110】
選別: 上記と同じ。
【0111】
連結: 上記と同じ。ただし、1時間のアニーリングと2時間の連結反応を行なった。
【0112】
増幅: 上記と同じ。
【0113】
データを図3Bに示す。
【0114】
本発明の方法をアンドロゲン受容体(AR)応答性プロモーターおよび対照に対して実施した。表Aは、この実験で用いたプロモーターおよび対照を示す。
【0115】
【0116】
ヒト前立腺癌細胞株であるLNCaP細胞を、最初にアンドロゲンアゴニストであるジヒドロテストステロン(DHT)で処理した。偽処理細胞とDHT処理細胞を標準的なChIPに供して抗アンドロゲン受容体(AR)富化DNAを得た。ChIP DNAを個別にビオチン化してから、DASL解析にかけた。偽処理細胞由来の免疫沈降DNAをT3およびAlexa標識T7により増幅し、DHT処理細胞由来の免疫沈降DNAをT3およびCy3標識T7により増幅した。次いで増幅産物をプールして、個々のプロモーターからの標的配列に相補的なプローブを含むオリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズさせた。非アンドロゲン応答性プロモーターは抗AR抗体によって免疫沈降されないので、シグナルは偽処理細胞とDHT処理細胞のいずれにおいても低くなり、これらのシグナルからCy3/Alexa比を算出することはできない。より高いCy3/Alexa比は、アンドロゲン受容体と、DHT処理により誘導されたLNCaP細胞のプロモーターIとの正の相互作用を示している。興味深いことに、5つのプロモーター (SC、FGF8、LCP1、NKX3A、およびF9) は、他の細胞型においてアンドロゲン応答性であることが文献で報告されたが、それらは図4および6に示したデータではLNCaP細胞においてアンドロゲン応答性であるようには見えなかった。
【0117】
図4は、LNCaP細胞におけるアンドロゲン応答性プロモーターを用いた本発明の方法の結果を示しており、同時にSAM解析も示す。それぞれのゲルは、アンドロゲンの存在下および不在下(IN+およびIN-)での、ならびにアンドロゲンの存在下および不在下で富化された(EN+およびEN-)投入DNAのペアを含む。
【0118】
図6は、本発明の方法を用いたエストロゲン受容体標的遺伝子の同定を示している。エストロゲンアゴニストの存在下および不在下で実施した方法が示される。また、チップデータのSAM解析も示される。
【0119】
従来のゲノムタイリング(genomic tiling)では、チップ上に連続的な重複ゲノム配列を配置する必要がある。このストラテジーはゲノムにおけるRNA転写産物の不偏的な局在化を可能にするだろう。実際、全細胞質ポリ(A) RNAをそのようなタイリングアレイにハイブリダイズさせることによって、研究者らは、全RNAが21番および22番染色体の多数の領域にハイブリダイズしうることを明らかにしており、その多くは既知の転写単位に一致すらしない。
【0120】
タイリングと本発明の方法との併用を検討するために、染色体11p15のβグロビン領域を使用した。プライマー選択プログラム1000を用いて、βグロビン遺伝子座の1Mb領域全体をカバーするように40-merを設計した。合成したオリゴヌクレオチドをMotorola 3D CodeLinkスライド上にスポットしてマイクロアレイを作製した。各標的に対応するオリゴヌクレオチド対を製造してプールした。この実験から得られたデータを図7および8に示す。
【0121】
前述のことに基づいて、本発明の方法に特徴的な利点を以下の表1にまとめてある。
【0122】
【0123】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、さまざまな改変が本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされうることが理解されよう。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1A】ChIP-on-Chip法を示す。(A) 架橋、断片化、クロマチン免疫沈降、リンカー連結、増幅、およびChip解析の方法を示す。
【図1B】ChIP-on-Chip法を示す。(B) 普通に存在する反復配列のハイブリダイゼーションによる偽陽性の発生、および普通に存在する反復配列の交差ハイブリダイゼーションによる偽陰性の発生を含む、ChIP-on-Chip法に関するいくつかの難点を示す。
【図2】本発明の一般的な方法を示す。架橋、断片化、免疫沈降、ビオチン化、プライマーアニーリング、固相選別、連結、増幅およびチップ解析を示す。
【図3A】本発明の方法の特異性および感度を証明するアッセイ結果を示す。
【図3B】スパイキング対照を用いることによるChIP-DASL法の特徴付けを示す。
【図4】LNCaP細胞におけるアンドロゲン応答性プロモーターを用いたChIP-DASLの結果を示し、同時にSAM解析も示す。それぞれのゲルは、アンドロゲンの存在下および不在下(IN+およびIN-)での、ならびにアンドロゲンの存在下および不在下で富化された(EN+およびEN-)投入DNAのペアを含む。
【図5】本発明のChIP-DASLアッセイを用いた2000のヒトプロモーターの5倍スパイキングからの結果を示す。
【図6】本発明の方法を用いたエストロゲン受容体標的遺伝子の同定を示す。エストロゲンアゴニストの存在下および不在下で実施した方法が示される。また、チップデータのSAM解析も示される。
【図7】βグロビン遺伝子座に対するタイリングアッセイを用いた転写単位のマッピングを示す。
【図8】βグロビン遺伝子座に対するタイリングによる転写単位のマッピングを示す。ChIP-Chip法と比較したChIP-DASL法の感度が示される。
【図9】比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、DNA複製、およびDNアーゼI高感受性において本発明の方法を使用することを示した概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質およびDNAエレメントのゲノムマッピングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写調節には、多くのタンパク質またはタンパク質複合体が関係しており、これらは所与のプロモーターに特異的に集合してRNA合成を活性化したり抑制したりしている。特定の組織または細胞型では、一連の特異的な認識事象によってプロモーターが駆動される。転写因子はシス作用性調節配列と結合する。その後これらのDNA結合タンパク質はコアクチベーター複合体を動員し、これらのプレ活性化複合体が次いでコア転写機構を動員する。このような連続的な動員メカニズムは酵母の細胞周期中のHO遺伝子プロモーターにおいて実証されている(Cosmaら, 1999)。同様に、遺伝子は、ヒストンを修飾するクロマチンリモデリング因子を巻き込んだリプレッション(抑制)の間に、配列特異的DNA結合タンパク質を介した転写コリプレッサー複合体の動員によって遮断される。長期の分子記憶はDNAメチル化を介した特定のクロマチン領域の後成的修飾によって確立されうる。
【0003】
DNA結合タンパク質の分野の理解を進展させたのは、クロマチン免疫沈降(ChIP)法である。この技法は、in vivoにおいて特定のDNA結合タンパク質との相互作用に関与している機能性DNAエレメントとそれらの結合タンパク質複合体のマッピングを可能にし、多くの個々の事例研究に応用されている。主に、この方法はハイスループット検出法に向いていると考えられ、遺伝子調節ネットワークへのシステムズ-レベル(systems-level)アプローチのための新たな機会を切り開くであろう。
【0004】
研究者らは、ヒトゲノムに埋もれている各種の機能性DNAエレメントを、それらが細胞内での遺伝子発現、DNA複製、または染色体テリトリーの確立に関与していようといまいと、同定しようとしている。この目的を達成するのに理想的に適合する方法は、いわゆるChIP-on-Chip法であり、これはヒトプロモーターのマイクロアレイを含むチップ上でのハイスループット検出と組み合わせたChIP法である。
【0005】
ChIP法は転写因子のin vivo結合部位を局在化する際に広く使用されている。図1Aを参照しながら簡単に説明する。培養細胞をホルムアルデヒドで処理すると、in vivoでDNAと結合タンパク質の間に架橋が生じる。処理した細胞を破壊して、核タンパク質を回収する。次いで音波処理を用いてDNAをランダムにせん断し、約0.5kbの小片とする。架橋によって誘導された共有結合のため、特定のタンパク質は断片化DNAと結合したままである。標的タンパク質に対する特異的抗体を用いてDNA-タンパク質複合体を免疫沈降させる。出発物質と免疫沈降させた物質の両方を、研究対象の所定のDNA領域に特異的なプライマーを使ってPCRにより解析する。免疫沈降が問題のDNA断片の顕著な富化をもたらす場合には、特異的なin vivo相互作用を想定することができる。
【0006】
ChIPアッセイは、転写およびDNA複製因子、クロマチンリモデリング因子、修飾型ヒストン、メチル化DNAなどの特異的標的を検出するのに使用されている。さらに、このアッセイは、RNA結合タンパク質と、RNAを転写することによって架橋されたDNAエレメントとの特異的結合を検出する際にも使用されている。というのは、転写とスプライシングは細胞内で空間的および時間的に連動していることが知られているからである。
【0007】
ChIP-on-Chip法は、所定のDNA標的に関する詳細な作用機構上の問題を解決するために使用されている。しかし、出発物質と免疫沈降物質を1度に1つずつPCRで分析しなければならず、それには入手可能な機能情報に基づいて標的セットを選択する必要がある。簡単に述べると、配列決定されて注釈が付けられた酵母ゲノムからの情報を用いて、個々の遺伝子内配列をPCR増幅し、ガラス上にスポットしてプロモーターのマイクロアレイを作製する。免疫沈降させたDNA断片は両末端でプライマーランディング部位との連結反応によって連結されるが、これによりPCRによるシグナル増幅が可能となる(すなわち、連結反応介在PCRまたはLM-PCR)。最終的に、免疫沈降させPCR増幅させた物質はランダムプライミングによって異なる蛍光色素により標識される。その後、プールしたPCR産物をプロモーターアレイにハイブリダイズさせて、どのプロモーターがクロマチン免疫沈降によって特異的に富化されるかを検出する。
【0008】
図1Bを参照すると、ChIP-on-Chip法では実験ごとに108個の細胞が必要となり、したがって発生、腫瘍形成および幹細胞(出発物質に限りがある)の分析は排除されることになる。さらに、マイクロアレイに基づく方法は特異性の問題にも直面すると考えられる。ChIP-on-Chipの概略図を図1A-1Bに、比較の要約を表1に示す。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、生物のゲノム中のポリヌクレオチド-ポリペプチド相互作用ドメインを検出する方法を提供し、この方法は、a) ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドを免疫沈降させること、b) ポリヌクレオチドとポリペプチドを解離させること、c) 該ポリヌクレオチドとプライマー対とを、該プライマー対が該ポリヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、d) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、e) 連結プローブをユニバーサルプライマーにより増幅させて、標識された増幅産物を生成させること、f) 標識された増幅産物をオリゴヌクレオチドのアレイと接触させてアッセイ複合体を形成させること、g) 該アッセイ複合体を検出すること、を含んでなり、ここにおいて、該アッセイ複合体の存在は免疫沈降させたポリペプチドと結合するDNAを示すものである。
【0010】
本発明はまた、対象のポリペプチドが結合する、生細胞のゲノムの領域を同定する方法を提供し、この方法は、a) 生細胞中のDNA結合タンパク質を生細胞のゲノムDNAに架橋させ、それによりゲノムDNAに架橋されたDNA結合ポリペプチドを含むタンパク質-DNA複合体を生成させること、b) a)のタンパク質-DNA複合体のDNA断片を生成させて、DNA結合タンパク質と結合しているDNA断片を含む混合物を得ること、c) b)で得られた混合物から対象のポリペプチドと結合しているDNA断片を取り出すこと、d) c)で得られたDNA断片を対象のポリペプチドから分離すること、e) 該DNAとプライマー対とを、該プライマー対が該DNAにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、g) f)の連結プローブを増幅させること、h) g)の増幅産物と該細胞のゲノムDNAに相補的な配列を含むDNAとを、増幅産物とゲノムDNAに相補的な配列の領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、i) h)の第2のハイブリダイゼーション複合体を同定すること、を含んでなり、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体は対象のポリペプチドが結合する細胞中のゲノムの領域を含むものである。
【0011】
本発明はさらに、対象のポリペプチドが結合する、生細胞のゲノムの領域を同定する方法を提供し、この方法は、a) 生細胞中のDNA結合ポリペプチドを生細胞のゲノムDNAに架橋させ、それによりゲノムDNAに架橋されたDNA結合ポリペプチドを含むタンパク質-DNA複合体を生成させること、b) 該タンパク質-DNA複合体のDNA断片を生成させ、それによりDNA結合ポリペプチドと結合しているDNA断片を得ること、c) 得られたDNA断片を、対象のポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いて免疫沈降させること、d) c)で同定されたDNA断片を対象のポリペプチドから分離すること、e) 該DNAとプライマー対とを、該プライマー対が該DNAにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、g) f)の連結プローブを、検出可能な標識で標識されたユニバーサルプライマーを用いて増幅させること、h) g)の増幅産物と該細胞のゲノムDNAに相補的な配列を含むDNAとを、増幅産物とゲノムDNAに相補的な配列の領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、i) h)の第2のハイブリダイゼーション複合体を、該標識に特異的な方法を用いて同定すること、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体は対象のポリペプチドが結合する細胞中のゲノムの領域を含むものであること、j) i)で測定した標識の強度/量を、対照のその強度/量と比較すること、を含んでなり、ここにおいて、ゲノムの領域における標識の量/強度が、該領域における対照の標識の量/強度を上回る場合には、該細胞中の該ゲノムの領域が対象のポリペプチドと結合することを示している。
【0012】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細については、添付の図面および以下の詳細な説明に記述する。本発明のその他の目的、構成、効果は、以下の詳細な説明および図面から、さらには特許請求の範囲から明らかであろう。
【0013】
詳細な説明
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる単数形の冠詞は、特にその概念について明確な指示がないかぎり、複数形を含めるものとする。したがって、例えば、単数の「プローブ」という表現には複数のそのようなプローブが含まれ、また、「プライマー」という表現には当業者に知られている1以上のプライマーおよびその均等物が含まれる、といった具合である。
【0014】
特に定義しないかぎり、本明細書で用いる技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解されている意味と同じ意味である。本発明の方法および組成物を実施する際には、本明細書に記載したものと類似したまたは同様の任意の方法および試薬を使用することができるが、典型的な方法および材料を以下に記載することにする。
【0015】
本明細書で挙げた刊行物はすべて、本発明の説明に関連して使用しうるような、刊行物に記載された方法論を記載しかつ開示する目的で、その全体を参照することにより本明細書に援用するものとする。本明細書全体を通して引用される刊行物は、単にそれらが本出願の出願日前に開示されたものであるために提供されるにすぎない。本明細書では、いかなる場合も、本発明者らが、先に開示されたという理由でそのような開示に先行する権利を与えられないことを容認するものと解釈されるべきではない。
【0016】
DNA結合タンパク質が全体的な遺伝子発現、染色体複製、および細胞増殖をいかに制御しているかを理解することは、DNA結合タンパク質がin vivoで機能している染色体位置を同定することで促進されると考えられる。本明細書では、調節されるDNAエレメントおよびタンパク質調節因子についてのゲノムワイドなマッピング方法を記載する。
【0017】
RASL(RNA Annealing Selection and Ligation:RNAアニーリング・セレクション・ライゲーション)と呼ばれる手法が、マイクロアレイ法に一般的に関連した方法の問題に対処するために用いられている。5’選択的スプライシング事象においては、例えば、共通の3’スプライス部位と競合している2つの5’スプライス部位が存在する。図示するように、各スプライス部位接合部の20ヌクレオチドエキソン配列を標的とするために3つのオリゴが用いられる。2つの競合する3’スプライス部位を区別するために、各5’オリゴ(1または2、それぞれ赤色と緑色で記す)に対するユニークな20ヌクレオチドインデックス配列。RASLアッセイには次のプロセスが含まれる:(1)アニーリング、(2)固相での選択、(3)ライゲーション(連結反応)、(4)PCR増幅、および(5)ユニバーサルインデックスアレイ上での検出。
【0018】
本発明は、ChIP-on-Chip法と共にRNAアニーリング・セレクション・ライゲーション(RASL)法を利用するものである。この組合せを本明細書では「ChIP-DASL」と呼ぶことにする。ChIP-DASL法の一実施形態を図2に示す。
【0019】
本発明は、タンパク質とゲノム上のDNA(例えば全ゲノムまたはその一部であって、1以上の染色体または染色体領域など)との結合を試験する方法を提供する。ある態様において、本発明は、対象のタンパク質が結合するゲノムDNAの調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサー領域)を同定する方法を提供する。別の態様では、本発明は、組織に関連した調節に関する。さらに別の態様では、本発明は、発生に関連した調節に関する。さらなる態様では、本発明は、特定の疾病状態または障害における発現の調節に関する。
【0020】
本発明の方法はまた、結合タンパク質が転写因子であるかどうかを調べる技法を提供する。上述したように、結合タンパク質と相互作用するポリヌクレオチド(例えば、DNA)は、ゲノム断片(例えば、チップ上のもの)とハイブリダイズされる。連結されたプローブがチップ上のゲノム断片と結合し、かつチップ上のゲノム断片がその生物のゲノム中の調節領域であることが知られている場合には、その連結プローブに対応するポリヌクレオチドは調節領域であると同定され、対象のタンパク質は転写因子とされる。
【0021】
本発明の方法は、真核生物の全ゲノムにわたってDNA結合タンパク質を試験および/または同定するために使用することができる。DNAと結合する多種多様なDNA結合タンパク質を解析することが可能である。例えば、DNAの複製または転写調節に関与するタンパク質はどれも本発明の方法を使って試験することができる。
【0022】
調節領域を同定して単離するための別の方法では、調節DNAを富化するために、活発に転写された遺伝子のクロマチンはアセチル化ヒストンを含むという知識が利用される。例えば、Wolffeら, Cell 84:817-819, 1996を参照されたい。特に、転写された遺伝子のクロマチンにはアセチル化H3およびH4が豊富に存在し、調節配列を含むクロマチンはアセチル化H3と選択的に結合している。したがって、アセチル化ヒストン(特にアセチル化H3)に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降を用いて、調節DNAが富化された配列の集合体を取得することができる。そのような抗体の例としては、限定するものではないが、Upstate Biotechnology (Lake Placid, N.Y.)から入手可能な抗アセチル化ヒストンH3が挙げられる。
【0023】
上記の方法は、一般に、クロマチンを断片化してから、その断片を、アセチル化ヒストン(特にH3)を特異的に認識してそれと結合する抗体に接触させる必要がある。その後、免疫沈降物のポリヌクレオチドをその免疫沈降物から回収することができる。クロマチンを断片化する前に、場合により、アセチル化ヒストンを隣接DNAと架橋させてもよい。ヒストンとクロマチン内のDNAとの架橋は各種の方法で行なうことができる。ひとつの方法は、クロマチンを紫外線照射に曝露することである(Gilmourら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:4275-4279, 1984)。他の方法では化学架橋剤が利用される。適当な化学架橋剤にはホルムアルデヒドとプソラレンが含まれるが、これらに限定されない(Solomonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6470-6474, 1985; Solomonら, Cell 53:937-947, 1988)。
【0024】
細胞性クロマチンにおいて特定の転写因子の結合部位が同定されると、それは調節配列の存在を示している。これを行なうには、例えば、クロマチン免疫沈降の手法を用いる。この手法では、特異的抗体を用いて、対応する抗原(この場合は、対象の転写因子)を含むクロマチン複合体を免疫沈降させ、この免疫沈降物中に存在するヌクレオチド配列を試験する。抗原と結合した特定のポリヌクレオチドが抗体によって免疫沈降されると、抗原とポリヌクレオチド(例えば、調節ドメイン)との相互作用が存在することを示している(O’Neillら, Methods in Enzymology, Vol. 274, Academic Press, San Diego, 1999, pp.189-197; Kuoら, Method 19:425-433, 1999; Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelら編, Current Protocols, Chapter 21, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.の共同企画, (1998 補遺))。
【0025】
図1を参照すると、ある態様において、この方法では改変されたクロマチン免疫沈降(ChIP)法がDNAマイクロアレイ解析と組み合わされる。ポリヌクレオチド(例えば、DNA)とタンパク質を架橋させ(例えば、細胞をホルムアルデヒドで固定させる)、音波処理により回収し、次いで結合タンパク質つまり対象のタンパク質に架橋されているポリヌクレオチド断片を、例えば、特異的抗体を用いた免疫沈降により富化させる。架橋をはずした後、富化されたポリヌクレオチドとプライマー対とを、プライマー対がポリヌクレオチド断片にハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させる。ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーはポリヌクレオチド断片の上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、プライマー対の一方のプライマーは第1のユニバーサルプライマーランディング部位を含み、他方のプライマーは第2のユニバーサルプライマーランディング部位を含み、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同じものではない。第1のハイブリダイゼーション複合体を、ポリヌクレオチド断片にハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下でリガーゼと接触させて、連結プローブを形成させる。連結プローブをユニバーサルプライマーにより増幅させて、標識された増幅産物を生成させる。例えば、蛍光染料と連結反応介在PCR(LM-PCR)を用いて増幅反応を行なうことができる。別の実施形態では、(例えば免疫沈降により)富化されていないポリヌクレオチドも同様に、異なる発蛍光団の存在下でLM-PCRに供し、富化標識産物のプールと非富化標識産物のプールの両方をDNAマイクロアレイ(本明細書中でさらに説明する)にハイブリダイズさせる。複数の独立した実験から得られた富化/非富化蛍光強度比を加重平均分析と共に使用して、アレイ上に提示された各配列への結合タンパク質(例えば、対象のポリペプチド)の相対的結合を算出する。
【0026】
本発明の方法では、ポリヌクレオチドと結合するタンパク質を当技術分野で公知の架橋法(例えば、紫外線、プソラレン、および/またはホルムアルデヒド)により架橋させる。得られる混合物は、タンパク質に結合したポリヌクレオチドとタンパク質に結合していないポリヌクレオチドの両方を含むだろう。
【0027】
その後、この混合物を処理して混合物中のポリヌクレオチドを分断させる。分断法は当技術分野で公知であり、例えば、より小さいゲノム断片を生じさせる剪断法が含まれる。断片化は、クロマチンを断片化するための確立された方法、例えば、音波処理、剪断および/または制限酵素の使用により行なうことができる。得られる断片は大きさが様々であってよい。ある態様において、音波処理法を用いると、約200〜400ヌクレオチドの断片が得られる。その結果、結合タンパク質に架橋されたポリヌクレオチド断片(例えば、タンパク質-DNA複合体)が生成される。
【0028】
タンパク質-ポリヌクレオチド複合体/断片は沈降法によって混合物から分離することができる。そのような方法として、例えば、混合物中の標的タンパク質に対する抗体を使用する方法がある。例えば、対象の結合タンパク質と(特異的に)結合する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル)またはその抗原結合フラグメントを用いた免疫沈降を使用することができる。さらに、対象のタンパク質を、例えば抗体エピトープ(例えば、ヘマグルチニン(HA))を用いて、標識またはタグ付けしてもよい。その結果得られる、実質的に精製された(すなわち、富化された)架橋タンパク質-ポリヌクレオチド断片を処理して、ポリヌクレオチドから結合タンパク質を分離させる。その後、ポリヌクレオチド断片を、該断片に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブと、該ポリヌクレオチド断片と該オリゴヌクレオチドプライマーとの間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させる。
【0029】
本発明の方法はまた、結合タンパク質が転写因子であるかどうかを調べる技法を提供する。上述したように、結合タンパク質が相互作用するポリヌクレオチドは、DNA断片(例えば、チップ上のもの)とハイブリダイズされる。ポリヌクレオチドがチップ上のDNA断片と結合し、かつチップ上のDNA断片がその生物のゲノム中の調節領域であることが知られている場合には、そのポリヌクレオチドは調節領域であると同定され、対象のタンパク質は転写因子とされる。
【0030】
複数のプローブ(本明細書では「ハイブリダイゼーションプローブ」とも呼ばれる)は少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分が「ユニバーサルプライマーランディング部位」を含む。これら2つの異なるハイブリダイゼーションプローブは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されている。上流のハイブリダイゼーションプローブは第1のユニバーサルプライマーランディング部位を含み、下流のハイブリダイゼーションプローブは第2のユニバーサルプライマーランディング部位を含む。第1および第2のユニバーサルランディング部位は同じものではない。ユニバーサルプライマーランディング部位の例にはT7およびT3ユニバーサルプライマーランディング部位が含まれる。本発明のある態様では、第1のユニバーサルプライマーランディング部位がT7プライマーランディング部位であり、第2のユニバーサルプライマーランディング部位がT3プライマーランディング部位である。
【0031】
これらのハイブリダイゼーションプローブを、サンプルからChIPにより得られた富化ポリヌクレオチドに、前もって増幅することなく、ハイブリダイズさせて第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させる。本発明のプローブおよびプライマーは、標的ポリヌクレオチドに実質的に相補的な部分を少なくとも含むように設計されており、その結果として、標的ポリヌクレオチドと本発明のプローブまたはプライマーの間でハイブリダイゼーションが起こる。以下で説明するように、この相補性は完璧である必要はなく、標的ポリヌクレオチドと本発明の一本鎖ハイブリダイゼーションプローブとのハイブリダイゼーションを妨害しない数の塩基対のミスマッチが存在してもよい。したがって、本明細書において「実質的に相補的」とは、プローブが中程度から高度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするのに十分なほど標的ポリヌクレオチドに対して相補的であることを意味する。
【0032】
こうして、アッセイは、一般的に、標的の存在下で第1のハイブリダイゼーション複合体のみを形成させるストリンジェンシー条件下で実施される。ストリンジェンシーは熱力学的変数であるステップパラメーター(例えば、温度、ホルムアミド濃度、塩濃度、カオトロピック塩濃度、pH、有機溶媒濃度、およびこれらの組合せを含むが、これらに限らない)を変えることによって調整することができる。
【0033】
これらのパラメーターを使用して、米国特許第5,681,697号に概説されているように、非特異的結合を制御することもできる。それゆえ、特定のステップを比較的高いストリンジェンシー条件で行なって、非特異的な結合を減らすことが望ましい。
【0034】
本発明においては、高度、中程度および低度のストリンジェンシー条件を含めて、様々なハイブリダイゼーション条件を使用することができる。例えば、Maniatisら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1989およびShort Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編を参照されたい(これらを参照により本明細書に援用する)。ストリンジェントな条件は配列に左右され、状況ごとに異なるだろう。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションに関する詳細は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology- -Hybridization with Nucleic Acid Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に見いだせる。一般的には、ストリンジェントな条件は、一定のイオン強度とpHでの特定の核酸の融解温度(Tm)より約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%がポリアデニル化mRNA標的配列に平衡状態でハイブリダイズする(一定のイオン強度、pH、および核酸濃度のもとでの)温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有されている)。ストリンジェントな条件は次のような条件である。すなわち、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0Mより低いナトリウムイオン濃度、典型的には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合が少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより大)の場合が少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのようなヘリックス脱安定化剤の添加によっても達成しうる。また、ハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で知られているように、非イオン性の主鎖(すなわち、PNA)を使用する場合にも変化しうる。さらに、標的に結合した後、ハイブリダイゼーション複合体の2本の鎖を架橋させる(すなわち、共有結合させる)ために架橋剤を添加してもよい。
【0035】
富化されたポリヌクレオチド断片(この断片にタンパク質、例えば対象とするタンパク質が結合する)に相補的なポリヌクレオチド(例えば、DNA)は、様々な方法を用いてハイブリダイズさせることができる。例えば、相補的分子をスライドガラス(例えば、Corning Microarray Technology (CMTTM) GAPSTM)上にまたはマイクロチップ上に固定する。ハイブリダイゼーション条件は、一般的には、例えば高度のストリンジェンシー条件および/または中程度のストリンジェンシー条件とする(Current Protocols in Molecular Biologyの特に2.10.8-11および6.3.1-6ページを参照されたい)。プローブの長さ、塩基の組成、ハイブリダイズする配列間のミスマッチ率、温度、イオン強度といった要因がハイブリダイゼーションの安定性に影響を与える。したがって、高度または中程度のストリンジェンシー条件は経験的に決定され、一部にはハイブリダイゼーションについて評価しようとするポリヌクレオチド(DNA、RNA)や他の核酸の特性に左右される。一般的に、ストリンジェントな条件は、一定のイオン強度とpHでの特定の核酸の融解温度(Tm)より約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が標的配列に平衡状態でハイブリダイズする(一定のイオン強度、pH、および核酸濃度のもとでの)温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有されている)。ストリンジェントな条件は次のような条件である。すなわち、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0Mより低いナトリウムイオン濃度、典型的には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度は短いプローブ(例えば、10〜約50ヌクレオチド)の場合が少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、約50ヌクレオチドより大)の場合が少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような脱安定化剤の添加によっても達成しうる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合は、陽性のシグナル(例えば、核酸の同定)がバックグラウンドハイブリダイゼーションの約2倍である。本発明において、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の条件を意味する。すなわち、25mM KPO4 (pH7.4)、5X SSC、5Xデンハート溶液、50μg/mL変性・音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、および1〜15ng/mLプローブを含有するハイブリダイゼーション溶液中約42℃でハイブリダイゼーションを行い、2X SSCおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄溶液を用いて約50℃で洗浄を行なう。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の条件を意味する。すなわち、25mM KPO4 (pH7.4)、5X SSC、5Xデンハート溶液、50μg/mL変性・音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、および1〜15ng/mLプローブを含有するハイブリダイゼーション溶液中約42℃でハイブリダイゼーションを行い、0.2X SSCおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄溶液を用いて約65℃で洗浄を行なう。
【0036】
プライマーおよびプローブのサイズは、当業者に理解されているように、様々であり、一般的に、プローブの各部分およびプローブの全長は5〜500ヌクレオチド長である。各部分は10〜100、例えば15〜50であり、典型的には用途および増幅法に応じて10〜35が用いられる。したがって、例えば、プローブのユニバーサルプライミング部位はそれぞれ約15〜25ヌクレオチド長であり、20が最もよく用いられる。プローブのアダプター配列は5〜25ヌクレオチド長であり、10〜20が最も一般的である。プローブの標的特異的部分は典型的には15〜50ヌクレオチド長であり、20〜40が最も一般的である。
【0037】
したがって、本発明は第1のハイブリダイゼーションプローブのセットを提供する。本明細書において「プローブのセット」とは、特定の多重アッセイ法で用いられる複数のハイブリダイゼーションプローブを意味する。ここで、複数とは少なくとも2を意味するが、アッセイ法、サンプルおよび試験の目的に応じて10より多い数であってもよい。
【0038】
こうして、本発明はユニバーサルプライミング部位を含むハイブリダイゼーションプローブのセットを提供する。本明細書において「ユニバーサルプライミング部位」とは、増幅用のPCRプライマーと結合するプローブの配列を意味する。各プローブのセットは上流のユニバーサルプライミング部位(UUP)と下流のユニバーサルプライミング部位(DUP)を含んでなる。この場合も、「上流」および「下流」は特定の5’-3’方向を意味するものではなく、それぞれの系の配向に応じて決まる。典型的には、1つのプローブセットではただ1つのUUP配列と1つのDUP配列が用いられるが、当業者には理解されるように、種々のアッセイまたは種々の多重アッセイでは複数のユニバーサルプライミング配列を利用しうる。さらに、ユニバーサルプライミング部位は、プライミング配列によって挟まれた配列のみが増幅されるように、典型的にはハイブリダイゼーションプローブセット(または連結プローブ)の5’末端と3’末端に位置づけられる。
【0039】
さらに、ユニバーサルプライミング配列は、一般的には、特定のアッセイおよび宿主ゲノムが与えられたら、そのアッセイの特異性を確実なものとするために、可能なかぎりユニークな配列となるように選択される。通常、ユニバーサルプライミング配列はサイズが約5〜35塩基対の範囲であり、典型的には約15〜20が用いられる。
【0040】
当業者には理解されるように、2つのプライミング部位の方向は相違する。すなわち、一方のPCRプライマーは第1のユニバーサルプライミング部位と直接ハイブリダイズするが、他方のPCRプライマーは第2のユニバーサルプライミング部位の相補体とハイブリダイズするだろう。換言すると、第1のユニバーサルプライミング部位はセンス方向であり、第2のユニバーサルプライミング部位はアンチセンス方向である。
【0041】
ユニバーサルプライミング部位に加えて、プローブセットの各ハイブリダイゼーションプローブは第1の標的特異的配列を少なくとも含んでなる。当業者には理解されるように、標的特異的配列はプローブの用途に応じて様々なフォーマットの形をとることができる。例えば、プライマー選択プログラムにより、特定の40-merオリゴヌクレオチドがヒトゲノム中の所与の領域(例えばプロモーター)を表すべく選択される。このプロセスは、ヒトゲノムデータベースに対するBLAST検索後に、ゲノムの関連配列中に少なくとも4つの一様に分配されたミスマッチを許すことによって、そのユニーク性を証明するだろう。また、選択された配列は小さい反復配列を含まず、特定の範囲(例えば、約55〜65℃)のTmを有し、最小限の二次構造(ΔGにより計算)を含むものである。これに対して、アミノ誘導オリゴを合成して基体(例えば、Motorola 3D codelinkスライド)上にスポットすると、オリゴをベースとしたアレイ(例えば、プロモーターアレイ)が形成される。オリゴマーを本質的に2つに分割する(例えば、オリゴマーが40-merである場合は、それを2つに分割して2つの20-merを得る)ことにより標的特異的配列を取得し、これらをユニバーサルプライマーと組み合わせると、上流および下流のハイブリダイゼーションプローブとなる。
【0042】
2つのハイブリダイゼーションプローブはOLAアッセイ系で使用することができる。基本的なOLA法は少なくとも2つの異なる方法で実施される。第1の実施形態では、標的配列の一方の鎖のみを連結反応の鋳型として用いる。これとは別に、両方の鎖を使用してもよい。後者の方法は一般にライゲーション連鎖反応またはLCRと呼ばれている。一般的には、米国特許第5,185,243号および同第5,573,907号、EP 0 320 308 B1、EP 0336 731 B1、EP 0 439 182 B1、WO 90/01069、WO 89/12696、ならびにWO 89/09835を参照されたい(これら全てを参照することにより本明細書に援用するものとする)。以下の説明はOLAに焦点を当てているが、当業者であれば理解しうるように、これはLCRにも容易に応用することができる。
【0043】
この実施形態では、ハイブリダイゼーションプローブは少なくとも第1のハイブリダイゼーションプローブと第2のハイブリダイゼーションプローブを含んでいる。この方法は、2つのプローブが標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズしかつ2つのプローブ間の接合部に完全な相補性が存在する場合には、2つのプローブを一緒に連結させることができるという事実に基づいているが、これは、完全な相補性が両プローブの全長にわたって存在しなければならない、ということを意味するものではない。
【0044】
ある実施形態においては、2つのハイブリダイゼーションプローブがそれぞれ標的特異的部分を含むように設計される。第1のハイブリダイゼーションプローブは標的ポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチド断片)の第1の標的ドメインに対して実質的に相補的となるように設計され、第2のハイブリダイゼーションプローブは標的ポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチド断片)の第2の標的ドメインに対して実質的に相補的である。一般的に、ハイブリダイゼーションプローブの各標的特異的配列は少なくとも約5ヌクレオチド長であり、約15〜30ヌクレオチドの配列が典型的であり、特に20ヌクレオチドがよく用いられる。ある実施形態では、第1および第2の標的ドメインが直接隣接しており、例えば、それらの間に介在するヌクレオチドがまったく存在しない。この実施形態においては、少なくとも第1のハイブリダイゼーションプローブが第1の標的ドメインにハイブリダイズし、第2のハイブリダイゼーションプローブが第2の標的ドメインにハイブリダイズする。完全な相補性が接合部に存在すると、連結構造体が形成され、その結果2つのプローブが一緒に連結されて連結プローブを形成する。この相補性が存在しないと、連結構造体は形成されず、プローブ同士が認めうる程度に一緒に連結されることはない。連結されたプローブを標的ポリヌクレオチドから変性させて解離させ、それを後続の反応のための鋳型として役立てるために、この方法は熱サイクルを用いて行なってもよい。また、この方法は3つのハイブリダイゼーションプローブまたは1個以上のヌクレオチドで分離されているハイブリダイゼーションプローブを用いて行なうこともできるが、この場合にはdNTPとポリメラーゼを添加する(これは「Genetic Bit」解析とも称される)。
【0045】
この実施形態においては、2つのハイブリダイゼーションプローブが直接隣り合っていない。この実施形態において、それらは1個以上の塩基で分離されている。dNTPとポリメラーゼを添加してギャップを「フィルイン」し、続いて連結反応を行なう。これにより、連結プローブの形成が可能となる。
【0046】
当業者には理解されるように、本発明においては核酸類似体をプライマーおよびプローブとして使用することができる。さらに、天然の核酸と核酸類似体を組み合わせて使用してもよい。あるいはまた、種々の核酸類似体の組合せ、ならびに天然の核酸と核酸類似体の組合せを使用することもできる。例えば、ペプチド核酸類似体を含むペプチド核酸(PNA)を用いてもよい。これらの主鎖は、天然の核酸のホスホジエステル主鎖が高度に荷電されているのに対して、中性条件下で実質的に非イオン性である。その結果2つの利点が生まれる。第一に、PNA主鎖は向上したハイブリダイゼーション動力学を示す。完全にマッチした塩基対に対して、ミスマッチではPNAがより大きい融解温度(Tm)の変化を示す。DNAとRNAは一般的に、内部ミスマッチにおいてTmの2〜4℃低下を示す。非イオン性PNA主鎖の場合には、その低下が7〜9℃ほどである。同様に、それらの非イオン特性ゆえに、主鎖に結合された塩基のハイブリダイゼーションが塩濃度に対して比較的敏感でない。
【0047】
ハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーは、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの任意の組合せ、および塩基(ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む)の任意の組合せを含むことができる。ある実施形態では、プライマーおよびプローブにおいてイソシトシンとイソグアニンを使用する。それは、米国特許第5,681,702号に一般的に記載されているように、非特異的ハイブリダイゼーションを減少させるからである。本明細書中で用いる「ヌクレオシド」なる語句は、ヌクレオシドだけでなくヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、および修飾ヌクレオシド、例えばアミノ修飾ヌクレオシドを含むものである。加えて、「ヌクレオシド」には非天然の類似体構造も含まれる。こうして、例えばペプチド核酸の個々の単位(それぞれが塩基を含む)は本明細書ではヌクレオシドと称される。
【0048】
連結反応後、ハイブリダイズされなかったDNAとハイブリダイゼーションプローブを除去する。ある態様において、これを行なうには、ハイブリッド複合体を含めた全てのビオチン化DNAを特異的に保持するストレプトアビジン基体を使用する。例えば、ある態様では、サンプルのポリヌクレオチドを、ハイブリダイゼーションプローブと接触させる前にビオチン化する。こうして、ハイブリダイゼーションプローブとの接触前、接触中、または接触後に、ビオチン化ポリヌクレオチドはストレプトアビジン基体と接触させることによって固相選択を受ける。
【0049】
例えば、ChIPの前または後でポリヌクレオチドをビオチン化する。ポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体がポリペプチドを含まないポリヌクレオチドから分離されたら、ビオチン化ポリヌクレオチドを、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して固相表面に結合させる。
【0050】
ある態様では、ハイブリダイズされなかったプローブを除去した後で、ハイブリッドを連結反応に供する。次いで、連結されたプローブを、上流および下流のユニバーサルプライミング配列にハイブリダイズするユニバーサルプライマーを用いて、同時に増幅させる。その後、得られるアンプリコン(直接または間接に標識されていてもよい)をアレイ上で検出することができる。これにより、標的ポリヌクレオチドの検出および定量が可能となる。
【0051】
例えば、ハイブリダイズされなかったプローブ(さらには、サンプル由来の、対象ではない他の核酸分子)を取り除いたら、連結プローブを変性し、増幅させてアンプリコンを形成させ、その後そのアンプリコンを検出する。これはいくつかの方法で行なうことができ、例えばPCR増幅、ローリングサークル増幅が挙げられる。さらに、以下で説明するように、様々な方法でアンプリコンに標識を組み込むことができる。
【0052】
本明細書に記載する方法では、ポリヌクレオチドを、例えば連結反応介在ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、増幅することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M.ら編, 1991を参照されたい;この教示内容を参照することにより本明細書に援用するものとする)。
【0053】
免疫沈降物から単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載するように、クローン化してライブラリーを作製したり、かつ/または配列決定したりすることができ、得られた配列をデータベースに登録してもよい。この方法で検出されたものに隣接するポリヌクレオチドも調節領域である可能性がある。これらは単離されたポリヌクレオチドを生物(この生物からクロマチンサンプルが得られた)のゲノムにマッピングすることにより同定することができ、場合により1以上のデータベースに登録してもよい。
【0054】
当業者には理解されるように、ポリヌクレオチドは、実質的にあらゆる生物の体液(例えば、血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門および膣分泌物、汗、精液)を含むがこれらに限らないサンプルから得ることができるが、本発明の方法には哺乳動物サンプルが広く用いられ、ヒトサンプルが一般的である。サンプルは個々の細胞および細胞系を含むことができ、細胞としては、限定するものではないが、初代細胞(細菌を含む)が挙げられ、細胞系としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:あらゆる種類の腫瘍細胞(特に、メラノーマ、骨髄性白血病、肺癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、および精巣癌)、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(T細胞およびB細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜細胞、肝細胞、白血球(単核白血球を含む)、幹細胞(例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚、肺、腎臓、肝臓および筋細胞の幹細胞)、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞、肝細胞、腎細胞、ならびに脂肪細胞。適当な細胞には、限定するものではないが、公知の研究用細胞も含まれ、例えば、Jurkat T細胞、NIH3T3細胞、CHO、Cos、923、HeLa、WI-38、Weri-1、MG-63などが挙げられる(ATCC細胞系カタログを参照されたい;参照することにより本明細書に特に援用するものとする)。
【0055】
ポリヌクレオチドは公知の方法を用いてサンプルから調製される。例えば、標的ポリヌクレオチドを含む細胞を溶解するために、公知の溶解バッファー、音波処理法、エレクトロポレーションなどを使ってサンプルを処理することができる。
【0056】
標的ポリヌクレオチドは少なくとも20塩基長のヌクレオチドの高分子形態を含む。単離されたポリヌクレオチドは、その起源となる生物の天然のゲノムにおいてそれが直接隣接しているコード配列(5’末端にあるものおよび3’末端にあるもの)のいずれとも直接隣接していないポリヌクレオチドである。したがって、この用語には、例えば、他の配列とは別個の分子(例えば、cDNA)として存在する、ベクターに、自律複製プラスミドもしくはウイルスに、または原核もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNAが含まれ、また、溶解状態で存在するかまたはマイクロアレイチップ上に存在しうるゲノム断片も含まれる。本発明のヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの修飾形態でありうる。この用語は一本鎖形態と二本鎖形態のDNAを含む。
【0057】
ポリヌクレオチドという用語は、一般的に、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドをさし、非修飾型RNAもしくはDNA、または修飾型RNAもしくはDNAでありうる。こうして、例えば、本明細書中で用いるポリヌクレオチドとは、とりわけ、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域と二本鎖領域が混ざり合ったDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、一本鎖領域と二本鎖領域が混ざり合ったRNA、DNAとRNAを含むハイブリッド分子(一本鎖またはより典型的には二本鎖であり、一本鎖領域と二本鎖領域が混ざり合っていてもよい)をさす。
【0058】
さらに、ポリヌクレオチドはまた、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を含む。このような領域の鎖は同一の分子に由来しても、異なる分子に由来してもよい。前記領域は1または複数の分子の全てを含みうるが、より一般的にはいくつかの分子の1つの領域のみを含む。三重らせん領域の分子の1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。
【0059】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、プローブ、プライマーまたはプライマー対)には、1または複数の修飾塩基を含有する上記のようなDNAまたはRNAが含まれる。こうして、安定性または他の理由のために修飾された主鎖を有するDNAまたはRNAは核酸分子である。さらに、イノシンのような変わった塩基またはトリチル化塩基のような修飾塩基(例として2つだけ挙げる)を含むDNAまたはRNAも、本明細書で言うところのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0060】
DNAおよびRNAに対しては、当業者に知られた多くの有用な目的にかなう様々な修飾が行なわれていることが理解されるであろう。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドには、そのようなポリヌクレオチドの化学的、酵素的または代謝的に改変された形態、ならびにウイルスや細胞(とりわけ単純型および複雑型細胞を含む)に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態が含まれる。
【0061】
標的ポリヌクレオチドはまた、異なる標的ドメインを含むことができ、これらのドメインは隣接していてもよいし(すなわち連続している)、分離されていてもよい。例えば、OLA法では、第1のハイブリダイゼーションプローブが標的ポリヌクレオチド上の第1の標的ドメインにハイブリダイズし、そして第2のハイブリダイゼーションプローブが第2の標的ドメインにハイブリダイズしうる。これらのドメインは直接隣接していてもよいし、あるいは1または複数のヌクレオチドによって分離されていてもよい。「第1」および「第2」という用語は、標的ポリヌクレオチドの5'-3'方向に関して、その配列の方向を付与することを意味するものではない。例えば、標的ポリヌクレオチドの5'-3'方向を考えると、第1の標的ドメインは第2のドメインの5'側、または第2のドメインの3'側に位置づけることができる。さらに、当業者には理解されるように、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのアレイの表面上にあるプローブは、いずれの配向で結合させてもよく、したがってそれらは遊離の3'末端または遊離の5'末端をもつようになる。いくつかの実施形態では、プローブを1または複数の内部位置で、あるいは両末端で表面に結合させてもよい。
【0062】
反応の諸成分は同時にまたは連続して任意の順序で添加することができるが、典型的な実施形態については以下で説明する。さらに、反応はアッセイに含めることができるその他の種々の試薬類を含んでいてもよい。そうした他の試薬として、塩類、バッファー、中性のタンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などが挙げられるが、これらは最適なハイブリダイゼーションおよび検出を容易にし、かつ/または非特異的相互作用またはバックグラウンド相互作用を減らすために使用される。また、アッセイの効率を別のやり方で向上させる試薬類、例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤などを、サンプルの調製方法およびポリヌクレオチドの純度に応じて使用することもできる。
【0063】
さらに、大部分の実施形態においては、二本鎖標的ポリヌクレオチドを変性して、プライマーや他のプローブとのハイブリダイゼーションを可能にするように、それらを一本鎖とする。典型的な実施形態では、一般的に反応温度を約95℃に上げることによって、サーマルステップを利用するが、pH変化や他の技法を使用してもよい。
【0064】
ある実施形態において、増幅技術はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRは広く利用されており、また記載されているが、PCRは標的配列を増幅させるためのサーマルサイクリングと組み合わせたプライマー伸長の使用を含む。米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号、ならびにPCR Essential Data, J. W. Wiley & sons, C. R. Newton編, 1995を参照されたい(これらの全てを参照により援用するものとする)。
【0065】
一般的に、PCRは次のように大まかに説明することができる。二本鎖ハイブリダイゼーション複合体を変性し(通常は温度を上げることによる)、次いで過剰のPCRプライマーの存在下で冷却すると、PCRプライマーがユニバーサルプライミング部位(例えば、T7またはT3プライミング部位)にハイブリダイズする。次にDNAポリメラーゼを作用させてdNTPによりプライマーを伸長させると、ハイブリダイゼーション複合体を形成する新しい鎖が合成される。その後サンプルを再度加熱してハイブリダイゼーション複合体を解離させる。このプロセスを繰り返す。第2のユニバーサルプライミング部位にハイブリダイズする、相補標的鎖のための第2のPCRプライマーを用いることにより、迅速で指数的な増幅が起こる。こうして、PCRステップは変性、アニーリングおよび伸長からなる。PCRの詳細はよく知られており、Taq Iポリメラーゼのような耐熱性ポリメラーゼの使用とサーマルサイクリングを含む。適当なDNAポリメラーゼには、限定するものではないが、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE 1.0およびSEQUENASE 2.0 (U.S. Biochemical)、T5 DNAポリメラーゼ、ならびにPhi29 DNAポリメラーゼが含まれる。ポリメラーゼはどのようなポリメラーゼであってもよいが、典型的には3'エキソヌクレアーゼ活性を示さないものである。適当なポリメラーゼの例としては、限定するものではないが、エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼIラージ(クレノウ)断片、Phi29 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼなどが挙げられる。さらに、いくつかの実施形態では、一本鎖DNAを複製する(すなわち、二本鎖部分を形成するプライマーを必要としない)ポリメラーゼを使用してもよい。
【0066】
反応は、連結プローブを、ユニバーサルプライマー、ポリメラーゼおよびヌクレオチドを含む溶液に導入することにより開始される。ヌクレオチドはデオキシヌクレオシド三リン酸(デオキシヌクレオチド、またはdNTP、例えばdATP、dTTP、dCTPおよびdGTPとも呼ばれる)である。以下で説明するいくつかの実施形態では、1または複数種のヌクレオチドが検出可能な標識を含み、この標識は一次標識または二次標識のいずれであってもよい。さらに、ヌクレオチドはその系の構成に応じてヌクレオチド類似体とすることができる。同様に、プライマーが一次または二次標識を含んでいてもよい。
【0067】
したがって、PCR反応には少なくとも1つの、典型的には2つのPCRプライマー、ポリメラーゼおよびdNTPのセットが必要である。本明細書で説明するように、プライマーが標識を含むか、あるいは1または複数種のdNTPが標識を含む。
【0068】
これらの実施形態は、連結されていないプローブを必ずしも除去する必要がないという利点を有する。なんとなれば、標的が存在しない場合には、めだった増幅反応が起こらないからである。こうした利点はプローブの設計によって最大限に高めることができる。例えば、第1の実施形態において、単一のハイブリダイゼーションプローブが存在する場合には、ユニバーサルプライミング部位をプローブの5'末端の近くに配置する。そうすると、プローブが連結反応の不在下では短いトランケート型の小片を生成するように働くにすぎないからである。
【0069】
アンプリコンはいろいろなやり方で標識することができる。例えば、ポリメラーゼが標識ヌクレオチド(dNTP)を組み込んでもよいし、あるいはまた、ユニバーサルプライマーそれ自体が標識を含んでいてもよい。
【0070】
「標識」または「検出可能な標識」とは、検出を可能にする成分を意味する。それは一次標識であっても二次標識であってもよい。したがって、検出用の標識は一次標識(すなわち、直接的に検出可能)または二次標識(間接的に検出可能)でありうる。
【0071】
ある実施形態では、検出用の標識が一次標識である。一次標識は発蛍光団のような直接検出が可能な標識である。一般的に、標識は3つのクラスに分けられる。すなわち、a)同位体標識、例えば放射性同位体または重同位体、b)磁気的、電気的または熱的標識、およびc)着色染料または発光染料である。また、標識には酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼなど)および磁性粒子も含まれる。よく用いられる標識として発色団または燐光体も含まれるが、蛍光染料が一般的である。本発明で使用するのに適した染料/色素には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:蛍光ランタニド錯体(ユーロピウムおよびテルビウムの錯体を含む)、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、クアンタムドット(quantum dot)(「ナノクリスタル」とも称される)、ピレン、マラカイト・グリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー(Lucifer Yellow)、カスケード・ブルー(Cascade Blue(商標))、テキサス・レッド(Texas Red)、サイ・ダイ(Cy dye)(Cy3、Cy5など)、アレキサ色素(alexa dye)、フィコエリシン(phycoerythin)、bodipy、およびRichard P. HauglandによるMolecular Probes Handbook、第6版(参照することにより本明細書に援用する)に記載された他のもの。
【0072】
二次標識は間接的に検出される標識であり、例えば、二次標識は検出のために一次標識と結合または反応したり、別の生成物に作用して一次標識(例えば、酵素)を生成したり、あるいは二次標識を含む化合物を標識されていない物質から分離することを可能にしたりする、といったことができる。
【0073】
二次標識は一般的に結合パートナーのペアである。例えば、標識はその結合パートナーと結合するハプテンまたは抗原である。例えば、適当な結合パートナーのペアには、限定するものではないが、次のものが含まれる:抗原(例えばペプチドを含むタンパク質)と抗体(FAbなどのそのフラグメントを含む); タンパク質と小分子(ビオチン/ストレプトアビジンを含む); 酵素と基質または阻害剤; その他のタンパク質-タンパク質相互作用性のペア; 受容体-リガンド; ならびに炭水化物とその結合パートナー。核酸-核酸結合タンパク質のペアも有用である。一般的には、ペアの小さいほうがプライマーに組み込むためのヌクレオチドに結合される。典型的な結合パートナーのペアとしては、限定するものではないが、ビオチン(またはイミノビオチン)とストレプトアビジン、ジゴキシゲニンと抗体、およびプロリンクス(Prolinx(商標))試薬が挙げられる。例えば、結合パートナーのペアはビオチンまたはイミノビオチンと蛍光標識ストレプトアビジンからなる。イミノビオチンはpH4.0のバッファー中でストレプトアビジンから解離し、一方ビオチンは苛酷な変性剤(例えば、6MグアニジニウムHCl、pH1.5または90%ホルムアミド、95℃)を必要とする。
【0074】
当業者には理解されるように、標識付けは種々の方法で行なうことができる。一般的には、下記の2つの方法のうちの1つで標識付けされる。すなわち、標識をプライマーに組み込んで、増幅反応によって標識を含むアンプリコンが得られるようにするか、あるいは標識をdNTPに結合させ、それをポリメラーゼによってアンプリコンに組み込ませる。
【0075】
増幅DNAは、蛍光標識されたヌクレオチドをLM-PCR反応に含めることによって、またはユニバーサルプライマーを蛍光標識することによって、蛍光的に標識付けすることができる。
【0076】
標識されたアンプリコンDNAは、全ゲノムまたはそのサブセット(例えば、1以上の染色体)に相当するスポットを含むDNAマイクロアレイにハイブリダイズさせる。非免疫沈降対照と比べたときの、マイクロアレイ上の各スポットの蛍光強度は、そのDNA結合タンパク質(例えば、対象のタンパク質)が特定のスポットに位置づけられたDNA領域と結合するかどうかを実証している。それゆえ、本明細書に記載する方法は全ゲノムにわたるタンパク質-DNA相互作用の検出を可能にする。
【0077】
上述したように、本発明はポリペプチド分子と相互作用するポリヌクレオチドの検出に有用な方法および組成物を提供する。この方法は以下のステップを含んでなる:ポリペプチドと架橋結合するポリヌクレオチドを免疫沈降させて、富化されたポリヌクレオチドを取得すること、該ポリペプチドを該ポリヌクレオチドから解離させること、一対のプローブ(それぞれが例えば20merの標的配列とユニバーサルプライマーを含む)を富化されたポリヌクレオチドにハイブリダイズさせること、該プローブを連結させて連結プローブを形成させること、連結プローブを、標識を含むユニバーサルプライマーを用いて増幅させること、標識された増幅産物をマイクロアレイ(例えば、DNAマイクロアレイ)に接触させること。標識された増幅産物は、その増幅産物の配列に対して実質的に相補的なポリヌクレオチド配列を含むアレイ部位と(ハイブリダイゼーションにより)相互作用する。
【0078】
アレイ構成物は個々の部位を含む表面を有する少なくとも第1の基体を含んでなる。本明細書において「アレイ」または「バイオチップ」とは、アレイ方式での複数のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを意味する。アレイのサイズはそのアレイの構成および最終用途により変化するだろう。核酸アレイは当技術分野で公知であり、いくつかの方法に分類することができる。順序付けられたアレイ(例えば、個別の部位で化学物質を解析することが可能)とランダムなアレイの双方が含まれる。順序付けられたアレイには、限定するものではないが、フォトリソグラフィー法(Affymetrix社製GeneChip(商標))、スポッティング法(Synteniなど)、プリンティング法(Hewlett PackardおよびRosetta)、三次元「ゲルパッド」アレイ、および当技術分野で公知のものが含まれる。さらに、液体アレイも本発明の方法で使用される。
【0079】
一般に、アレイは、基体の大きさやアレイの最終用途に応じて、2から10億またはそれ以上もの異なる配列を含んでなる。こうして、超高密度アレイ、高密度アレイ、中密度アレイ、低密度アレイ、および超低密度アレイが使用される。例えば、超高密度アレイは約10,000,000〜約2,000,000,000の核酸分子を含み、約100,000,000〜約1,000,000,000が一般的である(全ての数はcm2あたりである)。高密度アレイは約100,000〜約10,000,000の核酸分子を含み、約1,000,000〜約5,000,000が一般的である。中密度アレイでは約10,000〜約100,000の範囲が一般的であり、約20,000〜約50,000が最も一般的である。低密度アレイは通常10,000より少ない核酸分子を含み、約1,000〜約5,000が一般的である。超低密度アレイは1,000より少ない核酸分子を含み、約10〜約1000が一般的であり、約100〜約500が最も一般的である。
【0080】
「基体」または「固相支持体」とは、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または他の有機ポリマーの結合または会合に適する個別の部位を含むように改作することができ、かつ少なくとも1つの検出方法に適合しうる材料をさす。使用できる基体としては、限定するものではないが、以下のものが含まれる:ガラスおよび改質または官能基化ガラス、プラスチック(ポリアクリレート、ポリスチレン、スチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロンなどを含む)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまたはシリカ系材料(シリコーンおよび改質シリコーンを含む)、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバー束、ならびに他の種々のポリマー。一般的に、基体は光学的検出を可能にするものであって、それ自体が光学的検出を認めうる程度に妨げてはならない(例えば、それ自体が蛍光を発してはならない)。
【0081】
一般に基体は平ら(平坦)であるが、当業者には理解されるように、その他の基体の形状も使用することができる。例えば、三次元の立体的構成を使用してもよく、例えばプラスチックの多孔質ブロックにビーズを埋め込んで、そのビーズにサンプルが接近できるようにし、共焦点顕微鏡を使って検出する。同様に、サンプルのフロースルー分析のために、ビーズをチューブの内面に配置してもよい。こうすると、サンプル量を最小限にすることができる。
【0082】
一般に、アレイ構成物はいくつかの方法で作製することができる。例えば、複数のアッセイ位置(本明細書では「アッセイウェル」と呼ぶこともある)を含む第1の基体(例えば、マイクロタイタープレート)を、それぞれのアッセイ位置が個々のアレイを含むように構成する。すなわち、アッセイ位置とアレイ位置は同じである。例えば、マイクロタイタープレートのプラスチック材料を、各アッセイウェルの底に複数の「ウェル」を含むように形作ることができる。
【0083】
別の態様では、個々のアレイの数を、用いるマイクロタイタープレートの大きさによって設定する。こうして、96ウェル、384ウェルおよび1536ウェルのマイクロタイタープレートは96、384および1536の個々のアレイを含む複合アレイを利用するが、当業者には理解されるように、各マイクロタイターウェルが個々のアレイを含む必要はない。複合アレイは、同一の、類似の、または異なる個々のアレイを含みうることに留意すべきである。すなわち、いくつかの実施形態では、96の異なるサンプルに対して2,000の同一のアッセイを行なうことが望ましいかもしれない。あるいはまた、同じサンプル(すなわち、96ウェルのそれぞれに含まれる同一のサンプル)に対して192,000の実験を行なうことが望ましいかもしれない。これとは別に、複合アレイの各横列または各縦列は重複性/品質管理について同じでありうる。当業者であれば理解できるように、こうした系を作製するための方法はいろいろ存在する。さらに、アレイのランダムな性質は、同一のビーズ集団を2つの異なる表面に添加すると、実質的に類似しているがおそらく同一ではないアレイが得られることも意味しうる。
【0084】
使用に際しては、標識された増幅産物(例えば、標識アンプリコン)を、ハイブリダイゼーションプローブにおけるような実質的に相補的なポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを含むアレイに接触させる。標識された増幅産物(例えば、標識アンプリコン)とマイクロアレイ中のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは(直接または間接的に)ハイブリダイズすると、結果的に特定のマイクロアレイ位置の光学シグナルが変化する。
【0085】
以上、本発明について説明してきたが、本発明をさらに詳しく説明するために以下に特定の実施形態を示す。以下の具体的な実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0086】
本発明の方法を実施するにあたって、次の手法を行なった。
【0087】
架橋: タンパク質をDNAに架橋させるために、ホルムアルデヒドを培地に直接添加して最終濃度を1%とし、37℃で10分間インキュベートした(例えば、プレート上の培地10mLに270μLの37%ホルムアルデヒドを添加する)。次に培地を吸引して、可能なかぎり多くの培地を取り除いた。細胞を、プロテアーゼ阻害剤(1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、1μg/mLアプロチニンおよび1μg/mLペプスタチンA)を含む氷冷PBSを用いて2回洗浄した。細胞をかきとってコニカルチューブに入れ、2000rpm、4℃で4分間ペレット化した。プロテアーゼ阻害剤(阻害剤:1mM PMSF、1μg/mLアプロチニンおよび1μg/mLペプスタチンA)を含む沈殿SDSに溶解バッファーを加えた。細胞ペレットを200μLのSDS溶解バッファー中に再懸濁させて、氷上で10分間インキュベートした。注意:200μLのSDS溶解バッファーは1×106細胞あたりである;それより多い細胞を用いる場合は、再懸濁させる細胞ペレットを200μLアリコート中に分けて、各200μLアリコートが約1×106個の細胞を含むようにすべきである。
【0088】
再懸濁/溶解させた細胞ペレットは、サンプルを確実に氷冷しておきながら音波処理にかけて、DNAを200〜1000塩基対の長さにせん断した。8μLの5M NaClを添加して65℃で4時間逆架橋させた。DNAをフェノール/クロロホルム抽出で回収した。
【0089】
リン酸化: 6μLの非リン酸化オリゴのプールを、1/10容の5M NaClと2.5容の氷冷エタノールと混合した。この混合物を-20℃で30分間インキュベートした。沈殿したオリゴを30分の遠心分離にかけてペレット化した。このペレットを70〜75%のエタノールで洗浄して、5分間遠心した。ペレットを乾燥させて、十分量のTE (10mM Tris-HCl, 1 mM EDTA, pH8.0)またはH2O中に溶解した。
【0090】
逆架橋DNAのビオチン化: フェノール-クロロホルム抽出したDNAを洗浄してTE(pH8.0)中に溶解する。10μLのDNAに、H2O中の10ngのファージ1 DNAと1μL (1μg/μL)のPHOTOPROBE(登録商標)ビオチン(Vector Laboratories)を添加して最終容量を20μLとした。この混合物にミネラルオイルを重層して95℃で10分間加熱した。この調製物に0.1M Tris (pH9.5)を添加して最終容量を80μLとした。160μLの2-ブタノールを混合物に添加し、激しくボルテックス撹拌し、遠心して層を分離させた。上層のブタノールを除去し、ブタノール抽出を繰り返した。ビオチン化DNAを沈殿させるにあたって、次の成分を添加して混合した: 10μLの10M NH4Ac、2μLの1M MgCl2、1μLのグリコーゲン、150μLの-20℃エタノール。-20℃のエタノールでインキュベートする。混合物を-20℃で15分間インキュベートした。30分の遠心分離でペレット化し、70%エタノールで洗浄して5分間遠心した。ペレットを乾燥させてTE中に再懸濁した。
【0091】
アニーリング: PCRチューブの中で次の成分を混ぜ合わせた:各オリゴの最終濃度を200fmol/反応とするのに十分な量のオリゴプール、ビオチン化したサンプルDNA、20μLの2×結合バッファー(40mM Tris-HCl, pH7.6, 1M NaCl, 2mM EDA, 0.1% Tween-80)、全容量40μL。この混合物を95℃で10分間加熱し、次いで45℃に冷却する。サンプルを10分間そのままに保持してから、5μLのストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Seradyne)を加える。その後サンプルを45℃で2時間インキュベートした。
【0092】
選別: ビーズを150μLの洗浄バッファー(20mM Tris-HCl, pH7.6, 0.1M NaCl, 1mM EDTA, 0.1% Tween-80)で2回洗浄する。このビーズを1×NEB Taq DNAリガーゼバッファーで洗浄した。
【0093】
連結: 39μLの1×NEB Taqリガーゼバッファーおよび1μL(40U)のNEB Taqリガーゼを添加し、45℃で1時間インキュベートした。ビーズを洗浄バッファーで2回洗い、40μLのH2Oを加えて95℃で5分間加熱することにより、連結されたオリゴヌクレオチドのペアを溶出した。
【0094】
増幅: 各反応につき、2.5μLの10x AmpliTaqバッファー、1.5μLの25mM MgCl2、0.5μLのdNTP、15pmoleの各PCRプライマー、2〜4μLのサンプル、および0.4μLのAmpliTaq Gold (5U/μL)を混合して全量25μLとした。PCRサイクル条件は94℃で10分、その後94℃で30秒、54℃で2分、72℃で2分を30サイクル行なった。
【0095】
本発明の方法の特異性を試験するために、次の実験を実施した:
プラスミドスパイキング(plasmid spiking): 架橋選択および逆架橋を上記のように、また当技術分野で知られているように行なった。オリゴを上記のようにリン酸化した。
【0096】
オリゴヌクレオチド:
ゲノムDNA検出用の20の異なるオリゴヌクレオチド対
スパイキングプラスミドDNA検出用の16の異なるオリゴヌクレオチド対
【0097】
ビオチン化: 上記と同じ。ただし、(i)ファージλDNAを使用せず、(ii)10μLのPHOTOPROBE(登録商標)ビオチンを使用し、(iii)30分間加熱した。
【0098】
293T細胞由来のゲノムDNAおよび4つの異なるプラスミドDNAの混合物を別々にビオチン化した。
【0099】
3) アニーリング: 上記と同じ。ただし、(i)各オリゴの最終濃度を400fmol/反応とし、(ii)ストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Seradyne)の代わりにストレプトアビジンコーティングチューブ(Boeringer-Manheim)を使用した。
【0100】
以下の反応を行なった:
【0101】
選別: 上記と同じ。
【0102】
連結: 上記と同じ。ただし、1時間のアニーリングと2時間の連結反応を行なった。
【0103】
増幅: 上記と同じ。
【0104】
調製物をアガロースゲル電気泳動で分析した。データを図3Aに示す。
【0105】
異なる倍率スパイキングによるPCR断片スパイキング実験。オリゴのリン酸化を上記のように実施した。オリゴヌクレオチド: スパイクされないゲノムDNA検出用の15の異なるオリゴヌクレオチド対、ならびにスパイキングおよびゲノムDNA検出用の7つの異なるオリゴヌクレオチド対。
【0106】
ビオチン化: 上記と同じ。ただし、(i)ファージλDNAを使用せず、(ii)10μLのPHOTOPROBE(登録商標)ビオチンを使用し、(iii)30分間加熱した。
【0107】
以下の反応を行なった: 293T細胞由来のゲノムDNAおよび7つの異なるPCR DNA断片の混合物を一緒にビオチン化した。
【0108】
【0109】
アニーリング: 上記と同じ。ただし、(i)各オリゴの最終濃度を400fmol/反応とし、(ii)ストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Seradyne)の代わりにストレプトアビジンコーティングチューブ(Boeringer-Manheim)を使用した。
【0110】
選別: 上記と同じ。
【0111】
連結: 上記と同じ。ただし、1時間のアニーリングと2時間の連結反応を行なった。
【0112】
増幅: 上記と同じ。
【0113】
データを図3Bに示す。
【0114】
本発明の方法をアンドロゲン受容体(AR)応答性プロモーターおよび対照に対して実施した。表Aは、この実験で用いたプロモーターおよび対照を示す。
【0115】
【0116】
ヒト前立腺癌細胞株であるLNCaP細胞を、最初にアンドロゲンアゴニストであるジヒドロテストステロン(DHT)で処理した。偽処理細胞とDHT処理細胞を標準的なChIPに供して抗アンドロゲン受容体(AR)富化DNAを得た。ChIP DNAを個別にビオチン化してから、DASL解析にかけた。偽処理細胞由来の免疫沈降DNAをT3およびAlexa標識T7により増幅し、DHT処理細胞由来の免疫沈降DNAをT3およびCy3標識T7により増幅した。次いで増幅産物をプールして、個々のプロモーターからの標的配列に相補的なプローブを含むオリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズさせた。非アンドロゲン応答性プロモーターは抗AR抗体によって免疫沈降されないので、シグナルは偽処理細胞とDHT処理細胞のいずれにおいても低くなり、これらのシグナルからCy3/Alexa比を算出することはできない。より高いCy3/Alexa比は、アンドロゲン受容体と、DHT処理により誘導されたLNCaP細胞のプロモーターIとの正の相互作用を示している。興味深いことに、5つのプロモーター (SC、FGF8、LCP1、NKX3A、およびF9) は、他の細胞型においてアンドロゲン応答性であることが文献で報告されたが、それらは図4および6に示したデータではLNCaP細胞においてアンドロゲン応答性であるようには見えなかった。
【0117】
図4は、LNCaP細胞におけるアンドロゲン応答性プロモーターを用いた本発明の方法の結果を示しており、同時にSAM解析も示す。それぞれのゲルは、アンドロゲンの存在下および不在下(IN+およびIN-)での、ならびにアンドロゲンの存在下および不在下で富化された(EN+およびEN-)投入DNAのペアを含む。
【0118】
図6は、本発明の方法を用いたエストロゲン受容体標的遺伝子の同定を示している。エストロゲンアゴニストの存在下および不在下で実施した方法が示される。また、チップデータのSAM解析も示される。
【0119】
従来のゲノムタイリング(genomic tiling)では、チップ上に連続的な重複ゲノム配列を配置する必要がある。このストラテジーはゲノムにおけるRNA転写産物の不偏的な局在化を可能にするだろう。実際、全細胞質ポリ(A) RNAをそのようなタイリングアレイにハイブリダイズさせることによって、研究者らは、全RNAが21番および22番染色体の多数の領域にハイブリダイズしうることを明らかにしており、その多くは既知の転写単位に一致すらしない。
【0120】
タイリングと本発明の方法との併用を検討するために、染色体11p15のβグロビン領域を使用した。プライマー選択プログラム1000を用いて、βグロビン遺伝子座の1Mb領域全体をカバーするように40-merを設計した。合成したオリゴヌクレオチドをMotorola 3D CodeLinkスライド上にスポットしてマイクロアレイを作製した。各標的に対応するオリゴヌクレオチド対を製造してプールした。この実験から得られたデータを図7および8に示す。
【0121】
前述のことに基づいて、本発明の方法に特徴的な利点を以下の表1にまとめてある。
【0122】
【0123】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、さまざまな改変が本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされうることが理解されよう。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1A】ChIP-on-Chip法を示す。(A) 架橋、断片化、クロマチン免疫沈降、リンカー連結、増幅、およびChip解析の方法を示す。
【図1B】ChIP-on-Chip法を示す。(B) 普通に存在する反復配列のハイブリダイゼーションによる偽陽性の発生、および普通に存在する反復配列の交差ハイブリダイゼーションによる偽陰性の発生を含む、ChIP-on-Chip法に関するいくつかの難点を示す。
【図2】本発明の一般的な方法を示す。架橋、断片化、免疫沈降、ビオチン化、プライマーアニーリング、固相選別、連結、増幅およびチップ解析を示す。
【図3A】本発明の方法の特異性および感度を証明するアッセイ結果を示す。
【図3B】スパイキング対照を用いることによるChIP-DASL法の特徴付けを示す。
【図4】LNCaP細胞におけるアンドロゲン応答性プロモーターを用いたChIP-DASLの結果を示し、同時にSAM解析も示す。それぞれのゲルは、アンドロゲンの存在下および不在下(IN+およびIN-)での、ならびにアンドロゲンの存在下および不在下で富化された(EN+およびEN-)投入DNAのペアを含む。
【図5】本発明のChIP-DASLアッセイを用いた2000のヒトプロモーターの5倍スパイキングからの結果を示す。
【図6】本発明の方法を用いたエストロゲン受容体標的遺伝子の同定を示す。エストロゲンアゴニストの存在下および不在下で実施した方法が示される。また、チップデータのSAM解析も示される。
【図7】βグロビン遺伝子座に対するタイリングアッセイを用いた転写単位のマッピングを示す。
【図8】βグロビン遺伝子座に対するタイリングによる転写単位のマッピングを示す。ChIP-Chip法と比較したChIP-DASL法の感度が示される。
【図9】比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、DNA複製、およびDNアーゼI高感受性において本発明の方法を使用することを示した概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物のゲノム中のポリヌクレオチド-ポリペプチド相互作用ドメインを検出する方法であって、
a) ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドを免疫沈降させて、富化されたポリヌクレオチド調製物を得ること、
b) 富化調製物中のポリヌクレオチドとポリペプチドを解離させること、
c) 該ポリヌクレオチドとプライマー対とを、該プライマー対が該ポリヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が富化調製物中の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であり、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、
d) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、
e) 連結プローブをユニバーサルプライマーにより増幅させて、標識された増幅産物を生成させること、
f) 標識された増幅産物とオリゴヌクレオチドのアレイとを、連結プローブがアレイ中の相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で接触させて、アッセイ複合体を形成させること、
g) 該アッセイ複合体を検出すること、ここにおいて、該複合体の存在が免疫沈降させたポリペプチドと結合するDNAを示すものであること、
を含んでなる上記方法。
【請求項2】
ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドが架橋されたポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリヌクレオチドとポリペプチドの架橋がUV光線、ホルムアルデヒド、プソラレン、またはこれらの任意の組合せにより行なわれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ユニバーサルランディング部位がT3およびT7プライミング部位から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ユニバーサルプライマーが検出可能な標識を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
検出可能な標識が、同位体標識;磁気的、電気的または熱的標識;酵素標識;および蛍光または発光標識からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
同位体標識が放射性同位体または重同位体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
蛍光または発光標識が、蛍光ランタニド錯体、ユーロピウム、テルビウム、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、量子ドット、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー、カスケードブルーTM、テキサスレッド、Cy染料、alexa染料、フィコエリシン、およびbodipyからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
生物のゲノム中のポリヌクレオチド-ポリペプチド相互作用ドメインを検出する方法であって、
a) DNA結合タンパク質を生物のゲノムDNAに架橋させ、それによりDNA-タンパク質複合体を生成させること、
b) 該DNA-タンパク質複合体を断片化して、DNA断片-タンパク質複合体を含む混合物を得ること、
c) b)で得られた混合物からDNA断片-タンパク質複合体を取り出すこと、
d) c)で得られたDNA断片をDNA結合タンパク質から分離すること、
e) 該DNAとプライマー対とを、該プライマー対が該DNA断片にハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が該DNA断片にハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは該DNA断片の上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、
f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該DNA断片にハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、
g) 連結プローブをユニバーサルプライマーと接触させること、
h) g)の連結プローブを増幅させて増幅産物を得ること、
i) h)の増幅産物と生物由来の相補的ポリヌクレオチドとを、増幅産物と相補的ポリヌクレオチドの領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、
j) i)の第2のハイブリダイゼーション複合体を同定すること、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体はDNA結合タンパク質が相互作用するゲノムの領域を含むものであること、
を含んでなる上記方法。
【請求項10】
前記生物が真核細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物が原核細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
DNA結合タンパク質が転写因子である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞のDNA結合タンパク質が、ホルムアルデヒド、プソラレンおよび/またはUV光線を用いて生物のゲノムDNAに架橋される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記DNAが制限酵素および/または音波処理を用いて断片化される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記DNA断片-タンパク質複合体が該タンパク質に結合する抗体を用いて取り出される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
h)の連結プローブが連結反応介在ポリメラーゼ連鎖反応により増幅される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
第2のハイブリダイゼーション複合体がDNAマイクロアレイ上に形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
ユニバーサルランディング部位がT3およびT7プライミング部位から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
ユニバーサルプライマーが検出可能な標識を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
検出可能な標識が、同位体標識;磁気的、電気的または熱的標識;酵素標識;および蛍光または発光標識からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
同位体標識が放射性同位体または重同位体を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
蛍光または発光標識が、蛍光ランタニド錯体、ユーロピウム、テルビウム、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、量子ドット、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー、カスケードブルーTM、テキサスレッド、Cy染料、alexa染料、フィコエリシン、およびbodipyからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
対象のポリペプチドが結合する、生細胞のゲノムの領域を同定する方法であって、
a) 生細胞中のDNA結合ポリペプチドを生細胞のゲノムDNAに架橋させ、それによりゲノムDNAに架橋されたDNA結合ポリペプチドを生成させること、
b) DNA結合ポリペプチドに架橋されたゲノムDNAのDNA断片を生成させて、DNA結合ポリペプチドと結合しているDNA断片を得ること、
c) 対象のポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いてDNA断片を免疫沈降させること、
d) c)で得られたDNA断片を対象のポリペプチドから分離すること、
e) 該DNA断片とプライマー対とを、該プライマー対が該DNA断片にハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が該DNA断片にハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは該DNA断片の上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、
f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該DNA断片にハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、
g) f)の連結プローブを、検出可能な標識で標識されたユニバーサルプライマーにより増幅させて、増幅産物を得ること、
h) g)の増幅産物と該細胞由来の相補的ポリヌクレオチドとを、増幅産物と相補的ポリヌクレオチドの領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、
i) h)の第2のハイブリダイゼーション複合体を、該標識に特異的な方法により同定すること、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体は対象のポリペプチドが結合する細胞中のゲノムの領域を含むものであること、
を含んでなる上記方法。
【請求項24】
i)で測定された標識の強度/量を、対照のその強度/量と比較することをさらに含み、ゲノムの領域における標識の量/強度が、該領域における対照の標識の量/強度より大きい場合には、該細胞中の該ゲノムの領域が対象のポリペプチドと結合することを示すものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が真核細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が原核細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
DNA結合ポリペプチドが転写因子である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
DNA結合ポリペプチドが、ホルムアルデヒド、プソラレンおよび/またはUV光線を用いて細胞のゲノムDNAに架橋される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記DNAが制限酵素および/または音波処理を用いて断片化される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
f)の連結プローブが連結反応介在ポリメラーゼ連鎖反応により増幅される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
第2のハイブリダイゼーション複合体がDNAマイクロアレイ上に形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
ユニバーサルプライマーランディング部位がT3およびT7プライミング部位から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
ユニバーサルプライマーが検出可能な標識を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
検出可能な標識が、同位体標識;磁気的、電気的または熱的標識;酵素標識;および蛍光または発光標識からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
同位体標識が放射性同位体または重同位体を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
蛍光または発光標識が、蛍光ランタニド錯体、ユーロピウム、テルビウム、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、量子ドット、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー、カスケードブルーTM、テキサスレッド、Cy染料、alexa染料、フィコエリシン、およびbodipyからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドを免疫沈降させて、富化されたポリヌクレオチド調製物を得るための手段、
プライマー対、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が富化調製物中の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であり、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位が同一のものではないもの、
リガーゼ、
ユニバーサルプライマー、および
オリゴヌクレオチドのアレイ、
を含んでなるキット。
【請求項1】
生物のゲノム中のポリヌクレオチド-ポリペプチド相互作用ドメインを検出する方法であって、
a) ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドを免疫沈降させて、富化されたポリヌクレオチド調製物を得ること、
b) 富化調製物中のポリヌクレオチドとポリペプチドを解離させること、
c) 該ポリヌクレオチドとプライマー対とを、該プライマー対が該ポリヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が富化調製物中の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であり、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、
d) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該ポリヌクレオチドにハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、
e) 連結プローブをユニバーサルプライマーにより増幅させて、標識された増幅産物を生成させること、
f) 標識された増幅産物とオリゴヌクレオチドのアレイとを、連結プローブがアレイ中の相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で接触させて、アッセイ複合体を形成させること、
g) 該アッセイ複合体を検出すること、ここにおいて、該複合体の存在が免疫沈降させたポリペプチドと結合するDNAを示すものであること、
を含んでなる上記方法。
【請求項2】
ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドが架橋されたポリヌクレオチド-ポリペプチド複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリヌクレオチドとポリペプチドの架橋がUV光線、ホルムアルデヒド、プソラレン、またはこれらの任意の組合せにより行なわれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ユニバーサルランディング部位がT3およびT7プライミング部位から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ユニバーサルプライマーが検出可能な標識を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
検出可能な標識が、同位体標識;磁気的、電気的または熱的標識;酵素標識;および蛍光または発光標識からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
同位体標識が放射性同位体または重同位体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
蛍光または発光標識が、蛍光ランタニド錯体、ユーロピウム、テルビウム、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、量子ドット、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー、カスケードブルーTM、テキサスレッド、Cy染料、alexa染料、フィコエリシン、およびbodipyからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
生物のゲノム中のポリヌクレオチド-ポリペプチド相互作用ドメインを検出する方法であって、
a) DNA結合タンパク質を生物のゲノムDNAに架橋させ、それによりDNA-タンパク質複合体を生成させること、
b) 該DNA-タンパク質複合体を断片化して、DNA断片-タンパク質複合体を含む混合物を得ること、
c) b)で得られた混合物からDNA断片-タンパク質複合体を取り出すこと、
d) c)で得られたDNA断片をDNA結合タンパク質から分離すること、
e) 該DNAとプライマー対とを、該プライマー対が該DNA断片にハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が該DNA断片にハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは該DNA断片の上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、
f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該DNA断片にハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、
g) 連結プローブをユニバーサルプライマーと接触させること、
h) g)の連結プローブを増幅させて増幅産物を得ること、
i) h)の増幅産物と生物由来の相補的ポリヌクレオチドとを、増幅産物と相補的ポリヌクレオチドの領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、
j) i)の第2のハイブリダイゼーション複合体を同定すること、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体はDNA結合タンパク質が相互作用するゲノムの領域を含むものであること、
を含んでなる上記方法。
【請求項10】
前記生物が真核細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物が原核細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
DNA結合タンパク質が転写因子である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞のDNA結合タンパク質が、ホルムアルデヒド、プソラレンおよび/またはUV光線を用いて生物のゲノムDNAに架橋される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記DNAが制限酵素および/または音波処理を用いて断片化される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記DNA断片-タンパク質複合体が該タンパク質に結合する抗体を用いて取り出される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
h)の連結プローブが連結反応介在ポリメラーゼ連鎖反応により増幅される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
第2のハイブリダイゼーション複合体がDNAマイクロアレイ上に形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
ユニバーサルランディング部位がT3およびT7プライミング部位から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
ユニバーサルプライマーが検出可能な標識を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
検出可能な標識が、同位体標識;磁気的、電気的または熱的標識;酵素標識;および蛍光または発光標識からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
同位体標識が放射性同位体または重同位体を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
蛍光または発光標識が、蛍光ランタニド錯体、ユーロピウム、テルビウム、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、量子ドット、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー、カスケードブルーTM、テキサスレッド、Cy染料、alexa染料、フィコエリシン、およびbodipyからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
対象のポリペプチドが結合する、生細胞のゲノムの領域を同定する方法であって、
a) 生細胞中のDNA結合ポリペプチドを生細胞のゲノムDNAに架橋させ、それによりゲノムDNAに架橋されたDNA結合ポリペプチドを生成させること、
b) DNA結合ポリペプチドに架橋されたゲノムDNAのDNA断片を生成させて、DNA結合ポリペプチドと結合しているDNA断片を得ること、
c) 対象のポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いてDNA断片を免疫沈降させること、
d) c)で得られたDNA断片を対象のポリペプチドから分離すること、
e) 該DNA断片とプライマー対とを、該プライマー対が該DNA断片にハイブリダイズする条件下で接触させて、第1のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が該DNA断片にハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは該DNA断片の上流および下流のセグメントに特異的であるように設計されており、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位は同一のものではないこと、
f) 第1のハイブリダイゼーション複合体とリガーゼとを、該DNA断片にハイブリダイズしたプライマー対を連結させる条件下で接触させて、連結プローブを形成させること、
g) f)の連結プローブを、検出可能な標識で標識されたユニバーサルプライマーにより増幅させて、増幅産物を得ること、
h) g)の増幅産物と該細胞由来の相補的ポリヌクレオチドとを、増幅産物と相補的ポリヌクレオチドの領域との間でハイブリダイゼーションが起こる条件下で接触させて、第2のハイブリダイゼーション複合体を形成させること、
i) h)の第2のハイブリダイゼーション複合体を、該標識に特異的な方法により同定すること、ここにおいて、該第2のハイブリダイゼーション複合体は対象のポリペプチドが結合する細胞中のゲノムの領域を含むものであること、
を含んでなる上記方法。
【請求項24】
i)で測定された標識の強度/量を、対照のその強度/量と比較することをさらに含み、ゲノムの領域における標識の量/強度が、該領域における対照の標識の量/強度より大きい場合には、該細胞中の該ゲノムの領域が対象のポリペプチドと結合することを示すものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が真核細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が原核細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
DNA結合ポリペプチドが転写因子である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
DNA結合ポリペプチドが、ホルムアルデヒド、プソラレンおよび/またはUV光線を用いて細胞のゲノムDNAに架橋される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記DNAが制限酵素および/または音波処理を用いて断片化される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
f)の連結プローブが連結反応介在ポリメラーゼ連鎖反応により増幅される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
第2のハイブリダイゼーション複合体がDNAマイクロアレイ上に形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
ユニバーサルプライマーランディング部位がT3およびT7プライミング部位から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
ユニバーサルプライマーが検出可能な標識を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
検出可能な標識が、同位体標識;磁気的、電気的または熱的標識;酵素標識;および蛍光または発光標識からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
同位体標識が放射性同位体または重同位体を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
蛍光または発光標識が、蛍光ランタニド錯体、ユーロピウム、テルビウム、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、量子ドット、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファー・イエロー、カスケードブルーTM、テキサスレッド、Cy染料、alexa染料、フィコエリシン、およびbodipyからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ポリペプチドと結合したポリヌクレオチドを免疫沈降させて、富化されたポリヌクレオチド調製物を得るための手段、
プライマー対、ただし、各プライマーは少なくとも2つの部分を含んでなり、第1の部分が富化調製物中の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズ可能な標的特異的オリゴヌクレオチドを含み、第2の部分がユニバーサルプライマーランディング部位を含み、これら2つのプライマーは標的ポリヌクレオチドの上流および下流のセグメントに特異的であり、ここにおいて、該ユニバーサルランディング部位が同一のものではないもの、
リガーゼ、
ユニバーサルプライマー、および
オリゴヌクレオチドのアレイ、
を含んでなるキット。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−524399(P2007−524399A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517848(P2006−517848)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/021450
【国際公開番号】WO2005/007814
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/021450
【国際公開番号】WO2005/007814
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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