説明

欠陥検査方法

【課題】被検査面の二値化画像のみに基づいて被検査面のエッジライン上の欠陥を検出可能な欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】被検査面11を撮像することにより初期画像20を得て、初期画像20を二値化して、初期画像20を第一閾値で二値化した第一の二値化画像30a、及び初期画像20を第二閾値で二値化した第二の二値化画像30b、をそれぞれ生成して、第一の二値化画像30aと第二の二値化画像30bとに基づいて検査画像40を生成して、検査画像40に基づいて被検査面11のエッジライン11a上の欠陥12aを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査面上に存在する欠陥を検出する欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査面のエッジライン上の欠陥を検査する技術は公知であり、例えば特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の技術は、被検査面を撮像して得られた画像に二値化処理を施して被検査面の二値化画像を生成し、欠陥のない面を撮像して得られた画像に二値化処理を施して欠陥のない面の二値化画像(基準画像)を生成し、被検査面の二値化画像と基準画像とを重ね合わせて排他的論理和を演算し、相違部分を抽出することによって、被検査面のエッジライン上の欠陥を検出する。
しかし、予め上記基準画像を用意しておく必要があり、また、当該基準画像は、製品の形状ばらつき等に影響されるため、被検査面のエッジライン上の欠陥を簡単に検出することができない。
【0003】
以上のように、基準画像を予め準備し、その基準画像との比較によって検査する手法では被検査面のエッジライン上の欠陥を容易に検出することは不可能であった。
そこで、上記基準画像を用いずに、被検査面110を撮像して得られた画像200の二値化画像300のみに基づいて被検査面110の欠陥を検出する手法について考察する。なお、ここでは、図6(a)に示すように、被検査面110のエッジライン111上に欠陥101があり、被検査面110上に欠陥102があることとする。
【0004】
図6(b)に示すように、画像200中において、被検査面110に対応する領域を被検査面領域210とし、被検査面領域210以外の領域であって、被検査面領域210の周囲を取り囲む領域を背景領域220とする。
また、画像200中において、被検査面110中の欠陥101・102が存在している部分に対応する領域を欠陥領域201・202とし、被検査面110中の欠陥101・102が存在している部分以外の部分(被検査面110の状態が良好な部分)103に対応する領域を良好領域203とする。
また、画像200中において、被検査面110のエッジライン111に対応するラインを画像エッジライン211とする。
【0005】
図6(c)に示すように、画像200を所定の閾値で二値化して生成した二値化画像300においては、欠陥領域201・202を構成する各画素、及び背景領域220を構成する各画素が黒表示され、これに対し、良好領域203を構成する各画素が白表示される。
これによると、欠陥領域202と良好領域203との境界を特定でき、欠陥領域202を特定できる。
しかし、欠陥領域201と背景領域220との境界(画像エッジライン211)の特定が困難となり、また欠陥領域201を背景領域220の一部と誤認する場合も生じうる。これにより、二値化画像300においては、欠陥領域201の特定が困難となる。
従って、二値化画像300のみに基づいて、被検査面110のエッジライン111上の欠陥101を検出することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−264723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基準画像が不要であり、被検査面の二値化画像のみに基づいて被検査面のエッジライン上の欠陥を検出可能な欠陥検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の欠陥検査方法は、被検査面を撮像することにより初期画像を得て、前記初期画像を第一閾値、及び前記第一閾値とは異なる第二閾値でそれぞれ二値化し、前記初期画像を前記第一閾値で二値化した第一の二値化画像、及び前記初期画像を前記第二閾値で二値化した第二の二値化画像、をそれぞれ生成して、前記第一の二値化画像と前記第二の二値化画像とに基づいて検査画像を生成して、前記検査画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、前記初期画像は、当該初期画像を構成する各画素の値の大小で白黒濃淡を表現するグレースケール画像として撮像され、前記第一閾値は、前記初期画像中において、前記被検査面に対応する被検査面領域と、前記被検査面領域以外の領域とを、画素値の大きさで区分するときの、前記被検査面領域を構成する各画素の値として許容される限界値として設定され、かつ、前記第二閾値は、前記初期画像中において、前記被検査面中の前記欠陥が発生している部分に対応する欠陥領域と、前記被検査面中の前記欠陥が発生している部分以外の部分に対応する良好領域とを、画素値の大きさで区分するときの、前記良好領域を構成する各画素の値として許容される限界値として設定される。
【0009】
請求項2に記載の欠陥検査方法においては、前記検査画像は、前記第一の二値化画像の反転画像と、前記第二の二値化画像とにおいて、位置が対応する画素の値の論理和を求めることによって生成される。
【0010】
請求項3に記載の欠陥検査方法においては、前記検査画像は、前記第一の二値化画像と、前記第二の二値化画像とにおいて、位置が対応する画素の値の排他的論理和を求めることによって生成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検査面の二値化画像のみに基づいて被検査面のエッジライン上の欠陥を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】欠陥検査工程を示すフロー図である。
【図2】(a)被検査面、(b)初期画像、を示す図である。
【図3】欠陥検査工程を示す図である。
【図4】欠陥検査工程の別実施形態を示すフロー図である。
【図5】欠陥検査工程の別実施形態の検査画像を示す図である。
【図6】従来の欠陥検査技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る欠陥検査方法の実施の一形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態における欠陥検査方法は、被検査物の被検査面11に、欠陥(キズ、汚れ、欠け、バリ等)があるか否かを検査する方法であり、特に、被検査面11のエッジライン11a上に存在する欠陥12aを確実に検出する方法である。
被検査面11は、凹凸がなくなるように平面(曲面でもよい)状に加工された面である。
エッジライン11aは、平面(又は曲面)状に形成される被検査面11の端部を構成する境界線である。
【0014】
本実施形態における欠陥検査方法は、図示せぬ表面検査装置を用いて実施される。
前記表面検査装置は、前記被検査物を所定位置に保持するテーブル、被検査面11の初期画像20を撮像するカメラ、及び前記カメラで撮像された初期画像20に所定の処理を行う制御装置を備える。
【0015】
被検査面11を前記カメラで撮像することにより得られた画像である初期画像20は、グレースケール画像であり、例えば0〜255の画素値により256階調の白黒濃淡が表現されるグレースケール画像である。
【0016】
前記制御装置は、制御部、及び表示部を備える。
前記制御部は前記カメラに接続されており、前記カメラで撮像された初期画像20に係る情報は前記制御部に送信される。
前記制御部は、前記カメラから受信した初期画像20に係る情報に後述する所定の画像処理を行うことによって、後述する検査画像40を生成する。
前記表示部は前記制御部に接続されており、前記制御部による初期画像20の処理状況(検査画像40等)を表示する。
【0017】
以下では、前記表面検査装置を用いて被検査面11の欠陥12a・12bを検査するときの手順について、(1)〜(5)の順に説明する(図1参照)。
なお、図2(a)に示すように、被検査面11においては、エッジライン11a上に欠陥12aがあり、エッジライン11aの内側に欠陥12bがあることとする。
また、被検査面11中の欠陥12a・12bが発生している部分以外の部分(被検査面11の状態が良好な部分)を良好部分13とする。
【0018】
(1)前記被検査物が上記テーブルによって保持された状態で、前記カメラで被検査面11の初期画像20が撮像される(撮像工程S11)。つまり、被検査面11を撮像することにより初期画像20を得る。
【0019】
図2(b)に示すように、初期画像20中において、被検査面11に対応する領域を被検査面領域21とする。
また、初期画像20中において、被検査面11中の欠陥12a・12bが発生している部分に対応する領域を欠陥領域22a・22bとし、良好部分13に対応する領域を良好領域23とする。
また、初期画像20中において、被検査面領域21以外の領域であって、被検査面領域21の周囲を取り囲む領域を背景領域24とする。
また、初期画像20中において、被検査面11のエッジライン11aに対応するラインを画像エッジライン21aとする。
【0020】
また、本実施形態の白黒の濃淡画像で表現される初期画像20においては、(1)被検査面領域21(欠陥領域22a・22b及び良好領域23を含む)を構成する各画素の値の方が、背景領域24を構成する各画素の値よりも大きく(白く表現され)、(2)良好領域23を構成する各画素の値の方が、欠陥領域22a・22bを構成する各画素の値よりも大きい(白く表現される)こととする。
撮像された初期画像20に係る情報(位置情報、画素値情報等)は、前記制御部に送信される。
【0021】
(2)前記制御部は、初期画像20に二つの異なる閾値(第一閾値(α)・第二閾値(β))でそれぞれ二値化処理を施し、初期画像20から二つの異なる二値化画像(第一の二値化画像30a・第二の二値化画像30b)をそれぞれ生成する(二値化工程S12)。
【0022】
二値化処理は、画像を構成する各画素の値を所定の閾値と比較し、画素値が所定の閾値以上である場合には「1」、つまり白とし、画素値が所定の閾値未満である場合には「0」、つまり黒とする画像処理を指す。
【0023】
この二つの異なる閾値は、予め前記制御部に設定され、かつ、経験的に設定される値であり、比較的小さい第一閾値(α)と、比較的大きい第二閾値(β)である。
【0024】
第一閾値(α)は、初期画像20中において、被検査面領域21(良好領域23及び欠陥領域22a・22b)と、背景領域24とを、画素値の大きさで区分するときの、被検査面領域21を構成する各画素の値として許容される限界値(最小値)である。
【0025】
第二閾値(β)は、初期画像20中において、欠陥領域22a・22bと、良好領域23とを、画素値の大きさで区分するときの、良好領域23を構成する各画素の値として許容される限界値(最小値)である。
【0026】
本実施形態において、第一閾値(α)は、被検査面領域21を構成する各画素の値より小さく、かつ、背景領域24を構成する各画素の値より大きくなるように設定されていることとする。
また、第二閾値(β)は、良好領域23を構成する各画素の値より小さく、かつ、欠陥領域22a・22bを構成する各画素の値より大きくなるように設定されていることとする。
【0027】
図3に示すように、前記制御部が初期画像20を第一閾値(α)で二値化して生成した第一の二値化画像30aにおいては、被検査面領域21を構成する各画素の値が「1」(白)となるのに対し、背景領域24を構成する各画素の値が「0」(黒)となり、被検査面領域21と背景領域24とを区別でき、被検査面領域21と背景領域24との境界(画像エッジライン21a)を特定できる。
【0028】
前記制御部が初期画像20を第二閾値(β)で二値化して生成した第二の二値化画像30bにおいては、良好領域23を構成する各画素の値が「1」(白)となるのに対し、欠陥領域22a・22bを構成する各画素の値が「0」(黒)となり、良好領域23と欠陥領域22a・22bとを区別でき、良好領域23と欠陥領域22a・22bとの境界を特定できる。
【0029】
(3)前記制御部は、第一の二値化画像30aの反転画像31aを生成する(反転工程S13)。
図3に示すように、反転画像31aは、第一の二値化画像30aを構成する各画素において、画素値「0」(黒)のものを「1」(白)に、画素値「1」(白)のものを「0」(黒)に、それぞれ変換した画像である。
【0030】
(4)前記制御部は、反転画像31aと第二の二値化画像30bとを重ね合わせる、つまり反転画像31aと第二の二値化画像30bとにおいて位置が対応する画素の値の論理和を求めることによって、検査画像40を生成する(検査画像生成工程S14)。
詳細には、前記制御部は、反転画像31aと第二の二値化画像30bとにおける位置が対応する画素同士において、共に画素値が「0」(黒)の場合には「0」(黒)とし、共に画素値が「1」(白)の場合及び両者の画素値が異なる場合には「1」(白)とすることによって、検査画像40を生成する。
これにより、検査画像40においては、欠陥領域22a・22bを構成する各画素の値が「0」(黒)になり、良好領域23及び背景領域24を構成する各画素の値が「1」(白)になる(図3参照)。
【0031】
このように生成された検査画像40は前記表示部に表示される。
【0032】
(5)検査画像40に基づいて被検査面11の欠陥検査がなされる(検査工程S15)。
検査画像40においては、欠陥領域22a・22bを構成する各画素の画素値が「0」(黒)になり、良好領域23及び背景領域24を構成する各画素の画素値が「1」(白)になるので、欠陥領域22a・22bを特定できる(図3参照)。
従って、検査画像40に基づいて、つまり検査画像40の生成に用いた被検査面11の二値化画像(第1・2二値化画像30a・30b)のみに基づいて、被検査面11のエッジライン11a上の欠陥12a、及び内側の欠陥12bを検出できる。
【0033】
また、上記特許文献1に記載されている基準画像に相当する画像が不要であり、製品の形状ばらつきに影響されず、被検査面11のエッジライン11a上の欠陥12aを簡単に検出することができる。従って、被検査面11を有する被検査物に対するロバスト性を向上できる。
【0034】
なお、図4に示すように、(1)撮像工程S11→(2)二値化工程S12、の後、上記(3)の手順を行わずに、第一の二値化画像30aの各画素と第二の二値化画像30bの各画素とにおける位置が対応する画素同士の画素値の排他的論理和を演算することによって、検査画像41(図5参照)を生成する構成としてもよい(検査画像生成工程S23)。
詳細には、前記制御部は、第一の二値化画像30aと第二の二値化画像30bとにおける位置が対応する画素同士において、共に画素値が「1」(白)の場合及び共に画素値が「0」(黒)の場合には「0」(黒)とし、両者の画素値が異なる場合には「1」(白)とすることによって、検査画像41を生成する。
そして、検査画像41に基づいて前記被検査面の欠陥検査がなされる(検査工程S24)。
検査画像41においては、欠陥領域22a・22bを構成する各画素の画素値が「1」(白)になり、良好領域23及び背景領域24を構成する各画素の画素値が「0」(黒)になるので、欠陥領域22a・22bを特定できる。
【符号の説明】
【0035】
11 被検査面
11a エッジライン
12a・12b 欠陥
13 良好部分
20 初期画像
21 被検査面領域
22a・22b 欠陥領域
23 良好領域
24 背景領域
30a 第一の二値化画像
30b 第二の二値化画像
40・41 検査画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査面を撮像することにより初期画像を得て、
前記初期画像を第一閾値、及び前記第一閾値とは異なる第二閾値でそれぞれ二値化し、前記初期画像を前記第一閾値で二値化した第一の二値化画像、及び前記初期画像を前記第二閾値で二値化した第二の二値化画像、をそれぞれ生成して、
前記第一の二値化画像と前記第二の二値化画像とに基づいて検査画像を生成して、
前記検査画像に基づいて前記被検査面の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
前記初期画像は、当該初期画像を構成する各画素の値の大小で白黒濃淡を表現するグレースケール画像として撮像され、
前記第一閾値は、前記初期画像中において、前記被検査面に対応する被検査面領域と、前記被検査面領域以外の領域とを、画素値の大きさで区分するときの、前記被検査面領域を構成する各画素の値として許容される限界値として設定され、かつ、
前記第二閾値は、前記初期画像中において、前記被検査面中の前記欠陥が発生している部分に対応する欠陥領域と、前記被検査面中の前記欠陥が発生している部分以外の部分に対応する良好領域とを、画素値の大きさで区分するときの、前記良好領域を構成する各画素の値として許容される限界値として設定される、
欠陥検査方法。
【請求項2】
前記検査画像は、前記第一の二値化画像の反転画像と、前記第二の二値化画像とにおいて、位置が対応する画素の値の論理和を求めることによって生成される、
請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記検査画像は、前記第一の二値化画像と、前記第二の二値化画像とにおいて、位置が対応する画素の値の排他的論理和を求めることによって生成される、
請求項1に記載の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112573(P2011−112573A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270764(P2009−270764)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】