説明

欠陥検査装置および方法

【課題】搬送されている検査対象物の異物等の欠陥を精度良く検出することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】搬送経路に沿って所定の搬送方向に搬送されるアルミニウムシート1の欠陥を検査する欠陥検査装置100に、アルミニウムシート1にX線を照射するX線源110と、X線源110により照射されてアルミニウムシート1を透過したX線を検出するX線用TDIカメラ120と、X線用TDIカメラ120により検出されたX線の強度に基づいてアルミニウムシート1の透過画像を生成する画像生成装置130と、を具備し、X線源110から照射されてX線用TDIカメラ120に検出されるX線の照射方向を搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して搬送方向の正または負の方向に所定角度だけ傾斜させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の表面および/または内部に存在する異物等の欠陥を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンおよびモータを駆動源として併用するハイブリッド車、あるいはモータのみを駆動源とする電気自動車の電力供給手段として、リチウムイオン二次電池が用いられている。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池の正極の原材料となるシート電極の製造方法として、アルミニウムからなるシート(以下、「アルミニウムシート」という。)のシート面に所定の活物質を塗布して乾燥することにより活物質層を形成し、活物質層が形成されたアルミニウムシートをローラ等でプレスすることにより活物質層の密度を上昇させる方法が知られている。
【0004】
上記方法は通常、複数の駆動ローラ、従動ローラ等からなる搬送装置によりアルミニウムシートをその長手方向に搬送しつつ、搬送装置の中途部に設けられた活物質塗布装置によりアルミニウムシートのシート面に活物質を塗布し、アルミニウムシートに搬送装置の中途部かつ活物質塗布装置よりも下流側となる位置に設けられたトンネル状の乾燥炉を通過させることにより活物質(層)を乾燥し、アルミニウムシートに一対のプレスローラ間を通過させることにより活物質(層)の密度を上昇させる。
【0005】
リチウムイオン二次電池のシート電極となるアルミニウムシートの搬送速度は現状では20〜30m/min程度であるが、リチウムイオン二次電池の生産性を向上し、ひいては製造コストを削減する観点から、搬送装置によるアルミニウムシートの搬送速度の更なる向上が求められる。
【0006】
一方、アルミニウムシートのシート面または/および内部に異物等の欠陥が存在したままリチウムイオン二次電池を製造した場合にはリチウムイオン二次電池の性能(品質)の低下を招来することから、アルミニウムシートには高い清浄度(異物等がないこと)が求められる。
アルミニウムシートの清浄度を向上させる方策としては、製造現場のクリーン化(クリーンルーム化)を推進することの他、アルミニウムシートのシート面に塗布された活物質の表面および/または当該活物質の内部(以下、「アルミニウムシートのシート面」、または、単に「アルミニウムシート」という。)に異物が存在しているか否かを検査(欠陥検査)し、異物が存在している場合には適宜除去することが挙げられる。
【0007】
このように、アルミニウムシートの搬送速度の向上とアルミニウムシートの清浄度の向上とを両立させるためには搬送中のアルミニウムシートの検査の更なる高速化が要求される。
【0008】
長手方向に搬送されているアルミニウムシートの欠陥検査を行う方法としては、アルミニウムシートにX線を透過させることにより得られる画像(X線透過画像)に基づいて欠陥の有無を判定する方法が知られている。
【0009】
しかし、上記X線を用いたアルミニウムシートの欠陥検査方法は、アルミニウムシートの搬送速度が上昇すると精度の良い検査を行うことが困難である、という問題を有する。
すなわち、X線を用いたアルミニウムシートの欠陥検査方法では欠陥が有る部位と欠陥が無い部位とを精度良く判別するためにX線透過画像のコントラストを大きくする必要があるが、アルミニウムシートの搬送速度が上昇するとアルミニウムシートの単位面積当たりのX線の透過量(露光量)が小さくなるためにX線透過画像が全体として暗くなり、X線透過画像のコントラストが小さくなって欠陥の有無を判別することが困難になる。
【0010】
X線を用いた検査対象物の検査装置あるいは検査方法としては、特許文献1から特許文献5に記載のものが知られている。
【0011】
特許文献1に記載の検査装置は、X線を検査対象物に照射するX線照射装置と、検査対象物を通過したX線を検出するX線検出装置と、X線照射装置およびX線検出装置の間で検査対象物を保持しつつ検査対象物をX線照射軸に対して任意の角度および任意の方向に駆動する揺動装置と、X線照射装置および揺動装置を制御する制御装置と、を具備する。
しかし、特許文献1に記載の検査装置は検査対象物を一定の領域内で保持する(支持する)構成であるため、特許文献1に記載のX線検査装置を上記アルミニウムシートの如く高速で搬送される検査対象物を検査する用途にそのまま適用することは困難である。
【0012】
特許文献2に記載の検査方法は、はんだボールとランドとの間の接続状態を検査する方法であって、はんだボールとランドとの接触面に対してX線発生部の放射面を平行とし、X線を検出するX線検出部の検出面をはんだボールとランドとの接触面に対して所定角度傾ける方法である。
しかし、特許文献2に記載の検査方法は移動しない対象物を前提とするため、特許文献2に記載の検査方法を上記アルミニウムシートの如く高速で搬送される検査対象物を検査する用途にそのまま適用することは困難である。
【0013】
特許文献3に記載の検査装置は、X線を照射するX線源と、X線を検出するX線検出部と、容器に収容された検査対象物がX線を横切るように検査対象物を水平方向に移動させる搬送機構と、を備え、X線検出部により検出された検査対象物を透過したX線の強度に基づいて検査対象物内の異物の有無を判定する装置である。
特許文献3に記載の検査装置のX線源は搬送機構による検査対象物の搬送方向に対して水平な面内かつ検査対象物に対して斜めにX線を照射する。
しかし、特許文献3に記載の検査装置は検査対象物を収容する容器の底部によるX線の過度の吸収に起因する検査精度の低下を解消することを目的としており、高速で移動する(搬送される)検査対象物の検査精度の向上に寄与するものではない。
【0014】
特許文献4に記載の検査装置は被検査物が検査位置を通過したことを検出して位置検出信号を出力する位置検出手段と、X線照射信号の入力により被検査物にX線をパルス照射するX線発生手段と、被検査物にパルス照射されたX線による被検査物のX線画像を検出するカメラ手段と、位置検出手段に同期してX線照射信号を出力することによりX線発生手段にX線をパルス照射させるとともにカメラ手段にX線画像を検出させるカメラコントロールユニットと、を具備する。
しかし、特許文献4に記載の検査装置は被検査物が検査位置を通過するタイミング(撮像視野に入るタイミング)とX線発生手段がX線をパルス照射するタイミングとを同期させるものであり、被検査物の搬送速度の高速化に伴う露光量の低下の問題を解消するものではない。
【0015】
特許文献5に記載の検査装置は、被検査物にX線を照射するX線源と、被検査物をX線が照射される位置に搬送する搬送手段と、被検査物を透過したX線を受け透過画像を可視画像に変換する蛍光板と、蛍光板に写った可視画像を反射する反射手段と、反射手段を被検査物の移動に同期して回転させる駆動手段と、反射手段により反射された可視画像を撮像し電気信号に変換する撮像カメラと、電気信号を受けて異物検出のための画像処理を行う画像処理装置と、を具備する。
特許文献5に記載の検査装置は、搬送手段により搬送される被検査物中の異物に対応する部分が撮像カメラのほぼ同じ画素に写るように被検査物の移動に同期して反射手段を回転させることにより、撮像カメラにより撮像される可視画像の異物に対応する部分とそれ以外の部分との間のコントラストを大きくし、判定精度を向上させるものである。
しかし、特許文献5に記載の検査装置は、被検査物が一個ずつ順番に搬送されてくるような場合には適用可能であるが、被検査物が長手方向に長い連続した形状である場合には適用することができない。
また、被検査物のどの位置に混入するか分からない状況下では、反射手段を被検査物の移動に同期して回転させるのみで被検査物中の異物の位置と撮像カメラにより撮像される可視画像の画素とを一対一で対応させるように撮像することは事実上困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−121633号公報
【特許文献2】特開2001−319951号公報
【特許文献3】特開2004−317184号公報
【特許文献4】特開2007−132833号公報
【特許文献5】特開2000−39407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、搬送されている検査対象物の異物等の欠陥を精度良く検出することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0019】
即ち、請求項1においては、
搬送経路に沿って所定の搬送方向に搬送される検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記搬送経路に沿って搬送される検査対象物に放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源により照射されて前記検査対象物を透過した放射線を検出する検出器と、
前記検出器により検出された放射線の強度に基づいて前記検査対象物の透過画像を生成する画像生成装置と、
を具備し、
前記放射線源から照射されて前記検出器に検出される放射線の照射方向は、
前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して前記搬送方向の正の方向または負の方向に所定角度傾斜しているものである。
【0020】
請求項2においては、
前記検出器は、
前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対する前記放射線の照射方向の成す角度の余弦を前記検査対象物の搬送方向における速度に乗じた速度に同期して前記検査対象物を透過した放射線を検出するものである。
【0021】
請求項3においては、
搬送経路に沿って所定の搬送方向に搬送される検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
放射線源により搬送経路に沿って搬送される検査対象物に照射された放射線が前記検査対象物を透過し、検出器により検出される照射・検出工程と、
前記検出器により検出された放射線の強度に基づいて前記検査対象物の透過画像を生成する画像生成工程と、
を具備し、
前記放射線源から照射されて前記検出器に検出される放射線の照射方向は、
前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して前記搬送方向の正の方向または負の方向に所定角度傾斜しているものである。
【0022】
請求項4においては、
前記照射・検出工程において、
前記検出器は前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対する前記放射線の照射方向の成す角度の余弦を前記検査対象物の搬送方向における速度に乗じた速度に同期して前記検査対象物を透過した放射線を検出するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、搬送されている検査対象物の異物等の欠陥を精度良く検出することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る欠陥検査装置の実施の一形態を示す図。
【図2】異物の形状と透過長さとの関係を示す図。
【図3】本発明に係る欠陥検査方法の実施の一形態を示すフロー図。
【図4】本発明に係る欠陥検査装置の別実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図1および図2を用いて本発明に係る欠陥検査装置の実施の一形態である欠陥検査装置100について説明する。
【0026】
欠陥検査装置100は図示せぬ搬送装置により搬送経路に沿って所定の搬送方向(本実施形態では、図1中の白い矢印の方向)に搬送されるアルミニウムシート1の欠陥を検査する装置である。
【0027】
アルミニウムシート1は本発明に係る検査対象物の実施の一形態であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるシート状の物品である。アルミニウムシート1はリチウムイオン二次電池の正極のシート電極の原材料となる。
なお、本発明に係る検査対象物は本実施形態の如きアルミニウムシート1に限定されず、放射線を透過可能な材料からなる物品を広く含む。本発明に係る検査対象物の他の例としては、リチウムイオン二次電池の負極のシート電極の原材料となる銅合金からなるシート等が挙げられる。
【0028】
本実施形態における欠陥はアルミニウムシート1に塗布された図示せぬ活物質の表面または/および内部に存在する金属または非金属の塵埃からなる異物である。
なお、本発明に係る「欠陥」には、検査対象物の表面または/および内部に存在する異物だけでなく検査対象物のシワ、ムラ(厚さの不均一に起因する)、空洞(気泡)等も含まれる。
【0029】
「搬送経路」は検査対象物が搬送される経路を指す。本実施形態では複数のローラ間にアルミニウムシート1が張られた状態で搬送されることから、当該複数のローラを結ぶ線が搬送経路に相当する。
なお、本実施形態ではアルミニウムシート1は複数のローラ間に張られた状態で搬送されるが、本発明における検査対象物の搬送方法はこれに限定されない。
例えば、図4に示す如く、ベルトコンベア50に検査対象物61・61・・・を並べて載置した状態でベルトコンベア50が回転駆動することにより検査対象物61・61・・・が搬送される構成であっても良い。
【0030】
図1に示す如く、欠陥検査装置100はX線源110、X線用TDIカメラ120、および画像生成装置130を具備する。
【0031】
X線源110は本発明に係る放射線源の実施の一形態であり、搬送経路に沿って搬送されるアルミニウムシート1にX線を照射するものである。
図1に示す如く、本実施形態では、X線源110は搬送されるアルミニウムシート1の上側のシート面に対向する位置に配置される。
本実施形態では放射線としてX線を用いているが、本発明に係る放射線はこれに限定されず、検査対象物を透過可能であれば他の種類の放射線(例えば、ガンマ線)でも良い。
【0032】
X線用TDIカメラ120は本発明に係る検出器の実施の一形態であり、X線源110により照射されてアルミニウムシート1を透過したX線を検出する(本実施形態では、より詳細にはX線の強度の面分布を示す画像情報を生成する)ものである。
図1に示す如く、本実施形態では、X線用TDIカメラ120は搬送されるアルミニウムシート1の下側のシート面に対向する位置に配置される。
【0033】
図1に示す如く、X線源110から照射されてX線用TDIカメラ120に検出されるX線の照射方向(図1中のX線経路10の長手方向)は、搬送経路の搬送面に垂直な方向(本実施形態では、図1中の鉛直線20の長手方向)に対して搬送方向の負の方向に角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜している。
【0034】
「搬送面」は検査対象物が搬送される面である。搬送面は実体を有していても良く、実体を有さなくても良い。例えば、搬送装置がベルトコンベアである場合には、検査対象物が載置されるコンベアベルトの外周面が実体を有する搬送面となる。また、本実施形態の如く、検査対象物たるアルミニウムシート1がローラ間に張られた状態で搬送される場合には、アルミニウムシート1の上下一対のシート面に平行となる仮想的な面として実体を有さない搬送面が定義される。
【0035】
「放射線の照射方向が搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して搬送方向の「負の方向」に角度θだけ傾斜する」とは、放射線の照射方向が、「搬送経路の搬送面に垂直な方向」および「搬送方向」を含む平面(本実施形態では、図1の紙面に平行な面)内で、「搬送経路の搬送面に垂直な方向」に対して放射線源が検出器よりも搬送方向において「上流側」に配置されるように回転した状態を指す。
「放射線の照射方向が搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して搬送方向の「正の方向」に角度θだけ傾斜する」とは、放射線の照射方向が、「搬送経路の搬送面に垂直な方向」および「搬送方向」を含む平面内で、「搬送経路の搬送面に垂直な方向」に対して放射線源が検出器よりも搬送方向において「下流側」に配置されるように回転した状態を指す。
【0036】
このように、X線の照射方向(X線経路10の長手方向)が、搬送経路の搬送面に垂直な方向(本実施形態では、図1中の鉛直線20)に対して搬送方向の負の方向に角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜することにより、アルミニウムシート1の「見かけの搬送速度Va(θ)」、すなわちアルミニウムシート1の長手方向の搬送速度VにおけるX線の照射方向に垂直な方向の成分は搬送速度Vにcosθを乗じたものとなる(Va(θ)=V×cosθ)。
また、0°<θ<90°の場合には0<cosθ<1となるため、0°<θ<90°の場合における見かけの搬送速度Va(θ)は、θ=0°の場合(すなわち、X線の照射方向が搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して平行となる場合)における見かけの搬送速度Va(0°)(=V)よりも小さくなる。
従って、X線源110およびX線用TDIカメラ120からの「見かけの搬送速度Va」を実際のアルミニウムシート1の長手方向の搬送速度Vよりも小さくすることが可能であり、ひいては(アルミニウムシート1のシート面への入射方向を考慮しない場合における)アルミニウムシート1のシート面の単位面積当たりに照射されるX線の量(照射量)をθ=0°の場合よりも大きくする((1/cosθ)倍とする)ことが可能である。
【0037】
X線用TDI(Time Delay Integration)カメラ120は、X線用TDIカメラ120の視野内をX線の入射方向(X線経路10の長手方向)に垂直な方向に移動するアルミニウムシート1の移動速度および移動方向と、TDIカメラ120の検出素子たるCCD(Charge Coupled Device)の電荷の転送方向および転送速度とを同期させることにより、検査対象物の同一部位を同じ撮像位置から複数回繰り返して撮像した画像の同一画素における輝度を重ね合わせた場合と同様の画像情報を取得することが可能である。
【0038】
本実施形態では、X線源110から照射されてX線用TDIカメラ120に検出されるX線の照射方向が搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して搬送方向の負の方向に角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜しているので、X線用TDIカメラ120における電荷の転送方向は「搬送経路の搬送面に垂直な方向(本実施形態では、図1中の鉛直線20の長手方向)」および「搬送方向」を含む平面に平行な方向に設定され、電荷の転送速度は見かけの搬送速度Vaと同じ速度(すなわち、アルミニウムシート1の長手方向の搬送速度Vのcosθ倍)に設定される。
すなわち、X線用TDIカメラ120は、cosθをアルミニウムシート1の長手方向の搬送速度Vに乗じた速度に同期してアルミニウムシート1の透過画像の取り込み(X線の検出)を行っている。
また、X線用TDIカメラ120における電荷の転送速度はアルミニウムシート1の長手方向の搬送速度Vのcosθ倍となる(V×cosθ<V)ため、画像情報を生成する周期および生成された画像情報を画像生成装置130に送信する周期をいずれもθ=0°の場合の(1/cosθ)倍とすることが可能であり、アルミニウムシート1の長手方向の搬送速度Vの高速化への対応が容易となる。
【0039】
図2の(a)に示す如く、X線が球状の異物30を透過する場合、0°<θ<90°のときのX線経路10の透過長さL1およびθ=0°のときの透過長さL2はいずれも異物30の直径Rに等しい(L1=L2=R)。
一方、図2の(b)に示す如く、X線が直方体形状の異物40を透過する場合、0°<θ<90°のときのX線経路10の透過長さL1はθ=0°のときの透過長さL2の(1/cosθ)倍となり、透過長さL2は異物40の厚さTと等しくなり、L1はL2よりも長くなる(L1=L2/cosθ=T/cosθ、L1>L2=T)。
このように、X線源110から照射されてX線用TDIカメラ120に検出されるX線の照射方向が搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して搬送方向の正または負の方向に角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜していることにより、アルミニウムシート1のシート面の異物の形状によってはX線が異物を透過する長さが長くなる。
その結果、X線用TDIカメラ120により生成される画像情報において異物に対応する部分とそれ以外の部分(異物が無い部分)との間のコントラストが大きくなり、異物の検出精度が向上する。
【0040】
画像生成装置130は本発明に係る画像生成装置の実施の一形態であり、X線用TDIカメラ120により検出されたX線の強度に基づいて「アルミニウムシート1の透過画像」を生成するものである。
画像生成装置130は画像生成部131、入力部132および表示部133を具備する。
【0041】
画像生成部131は種々のプログラム等を格納し、これらのプログラム等を展開し、これらのプログラム等に従って所定の演算を行い、当該演算結果等を記憶することができる。
【0042】
画像生成部131は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
本実施例の画像生成部131は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等を格納したもので達成することも可能である。
【0043】
画像生成部131はX線用TDIカメラ120に接続され、X線用TDIカメラ120が生成した画像情報を電気信号の形で取得(受信)することが可能である。
【0044】
画像生成部131は画像生成部131において行われる種々の演算等に用いられる情報、演算結果等を記憶することが可能である。
【0045】
画像生成部131はX線用TDIカメラ120から取得(受信)した画像情報に基づいて「アルミニウムシート1の透過画像」を生成する。
生成された透過画像はアルミニウムシート1の長手方向(搬送方向に平行な方向)に(1/cosθ)倍に引き延ばされた形状を成しているためアルミニウムシート1の長手方向の空間分解能がθ=0°の場合に比べて低下する((1/cosθ)倍となる)が、アルミニウムシート1の幅方向(アルミニウムシート1の一対のシート面に平行かつ長手方向に垂直な方向)の空間分解能はθ=0°の場合と同じである。
画像生成部131は生成された「アルミニウムシート1の透過画像」をアルミニウムシート1の長手方向についてcosθ倍に縮小する画像処理を施すことにより「アルミニウムシート1の補正透過画像」を生成する。
「アルミニウムシート1の補正透過画像」の縦横の比率はアルミニウムシート1の実物の長手方向および幅方向の比率に等しくなるため、異物の位置の特定が容易となる。
画像生成部131は「アルミニウムシート1の透過画像」および「アルミニウムシート1の補正透過画像」を適宜記憶する。
【0046】
入力部132は画像生成部131に接続され、欠陥検査装置100の欠陥検査に係る種々の情報・指示等を画像生成部131に入力するものである。
本実施形態の画像生成部131は専用品であるが、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0047】
表示部133は入力部132から画像生成部131への入力内容、画像生成部131により生成される「アルミニウムシート1の透過画像」および「アルミニウムシート1の補正透過画像」等を表示するものである。
本実施形態の表示部133は専用品であるが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0048】
以上の如く、欠陥検査装置100は、
搬送経路に沿って所定の搬送方向に搬送されるアルミニウムシート1の欠陥を検査する装置であって、
搬送経路に沿って搬送されるアルミニウムシート1にX線を照射するX線源110と、
X線源110により照射されてアルミニウムシート1を透過したX線を検出するX線用TDIカメラ120と、
X線用TDIカメラ120により検出されたX線の強度に基づいて「アルミニウムシート1の透過画像」を生成する画像生成装置130と、
を具備し、
X線源110から照射されてX線用TDIカメラ120に検出されるX線の照射方向(図1中のX線経路10の長手方向)は、搬送経路の搬送面に垂直な方向(本実施形態では、図1中の鉛直線20の長手方向)に対して搬送方向の負の方向に角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜している。
このように構成することにより、θ=0°のときよりもアルミニウムシート1のシート面の単位面積当たりに照射されるX線の量(照射量)を大きくすることが可能であり、搬送されているアルミニウムシート1の欠陥(異物等)を精度良く検出することが可能である。
また、アルミニウムシート1の搬送速度が上昇した場合でも異物に対応する部分とそれ以外の部分との間でコントラストが大きい「アルミニウムシート1の透過画像」を生成することが可能であり、欠陥の検出精度を確保しつつアルミニウムシート1の搬送速度を上昇させることが可能である。
【0049】
また、欠陥検査装置100のX線用TDIカメラ120は、
搬送経路の搬送面に垂直な方向に対するX線の照射方向の成す角度の余弦(本実施形態では、cosθ)をアルミニウムシート1の搬送方向における速度に乗じた速度(V×cosθ)に同期してアルミニウムシート1を透過したX線を検出する。
このように構成することにより、搬送経路の搬送面に垂直な方向に対してX線の照射方向を傾斜させても単位面積当たりのX線照射量が大きくなった場合と同様のアルミニウムシート1の透過画像を生成することが可能であり、検査精度が向上するとともにアルミニウムシート1の搬送速度の高速化に寄与する。
【0050】
本実施形態ではアルミニウムシート1のシート面に活物質を塗布する前に当該シート面に付着する異物を検出する用途について説明したが、アルミニウムシート1のシート面に活物質を塗布した後に当該シート面に活物質が適正に塗布されているか否か(より詳細には、活物質が塗布されるべき位置に所定の厚さで塗布されているか否か)を判定する用途にも適用可能である。この場合、「所定の厚さで活物質が塗布されていない部分」が欠陥に該当することとなる。
【0051】
本実施形態では照射範囲が狭いX線源110をX線用TDIカメラ120と対向して配置する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば特許文献1および特許文献2に開示された照射範囲が広い開放管型X線発生器を用いる構成としても良い。
【0052】
また、本実施形態のX線源110およびX線用TDIカメラ120は図示せぬ取り付け治具等により所定の位置に固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、X線源110およびX線用TDIカメラ120が固定された部材を回動可能なアームに固定し、当該アームを回動させるエアシリンダ等のアクチュエータを設けることによりX線の照射方向(角度)を変更することが可能な構成としても良い。このような構成とした場合には、検査対象物たるアルミニウムシート1の搬送速度に応じてX線の照射方向(角度)を変更することが可能であり、ひいては検査精度の高い検査条件を容易に達成することが可能である。
【0053】
以下では、図3を用いて本発明に係る欠陥検査方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る欠陥検査方法の実施の一形態は欠陥検査装置100を用いてアルミニウムシート1の欠陥を検査する方法であり、図3に示す如く、照射・検出工程S1100および透過画像生成工程S1200を具備する。
【0054】
照射・検出工程S1100はX線源110により搬送経路に沿って搬送されるアルミニウムシート1に照射されたX線がアルミニウムシート1を透過し、X線用TDIカメラ120により検出される工程である。
【0055】
透過画像生成工程S1200はX線用TDIカメラ120により検出されたX線の強度に基づいて「アルミニウムシート1の透過画像」を生成する工程である。
【0056】
以上の如く、本発明に係る欠陥検査方法の実施の一形態は、
搬送経路に沿って所定の搬送方向に搬送されるアルミニウムシート1の欠陥を検査する方法であって、
照射・検出工程S1100と、
透過画像生成工程S1200と、
を具備し、
X線源110から照射されてX線用TDIカメラ120に検出されるX線の照射方向(図1中のX線経路10の長手方向)は、搬送経路の搬送面に垂直な方向(本実施形態では、図1中の鉛直線20の長手方向)に対して搬送方向の負の方向に角度θ(0°<θ<90°)だけ傾斜している。
このように構成することにより、θ=0°のときよりもアルミニウムシート1のシート面の単位面積当たりに照射されるX線の量(照射量)を大きくすることが可能であり、搬送されているアルミニウムシート1の欠陥(異物等)を精度良く検出することが可能である。
また、アルミニウムシート1の搬送速度が上昇した場合でも異物に対応する部分とそれ以外の部分との間でコントラストが大きい「アルミニウムシート1の透過画像」を生成することが可能であり、欠陥の検出精度を確保しつつアルミニウムシート1の搬送速度を上昇させることが可能である。
【0057】
また、本発明に係る欠陥検査方法の実施の一形態は、
照射・検出工程S1100において、
X線用TDIカメラ120は搬送経路の搬送面に垂直な方向に対するX線の照射方向の成す角度の余弦(本実施形態では、cosθ)をアルミニウムシート1の搬送方向における速度に乗じた速度(V×cosθ)に同期してアルミニウムシート1を透過したX線を検出する。
このように構成することにより、搬送経路の搬送面に垂直な方向に対してX線の照射方向を傾斜させても単位面積当たりのX線照射量が大きくなった場合と同様のアルミニウムシート1の透過画像を生成することが可能であり、検査精度が向上するとともにアルミニウムシート1の搬送速度の高速化に寄与する。
【符号の説明】
【0058】
1 アルミニウムシート(検査対象物)
100 欠陥検査装置
110 X線源(放射線源)
120 X線用TDIカメラ(検出器)
130 画像生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って所定の搬送方向に搬送される検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記搬送経路に沿って搬送される検査対象物に放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源により照射されて前記検査対象物を透過した放射線を検出する検出器と、
前記検出器により検出された放射線の強度に基づいて前記検査対象物の透過画像を生成する画像生成装置と、
を具備し、
前記放射線源から照射されて前記検出器に検出される放射線の照射方向は、
前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して前記搬送方向の正の方向または負の方向に所定角度傾斜している欠陥検査装置。
【請求項2】
前記検出器は、
前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対する前記放射線の照射方向の成す角度の余弦を前記検査対象物の搬送方向における速度に乗じた速度に同期して前記検査対象物を透過した放射線を検出する請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
搬送経路に沿って所定の搬送方向に搬送される検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
放射線源により搬送経路に沿って搬送される検査対象物に照射された放射線が前記検査対象物を透過し、検出器により検出される照射・検出工程と、
前記検出器により検出された放射線の強度に基づいて前記検査対象物の透過画像を生成する画像生成工程と、
を具備し、
前記放射線源から照射されて前記検出器に検出される放射線の照射方向は、
前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対して前記搬送方向の正の方向または負の方向に所定角度傾斜している欠陥検査方法。
【請求項4】
前記照射・検出工程において、
前記検出器は前記搬送経路の搬送面に垂直な方向に対する前記放射線の照射方向の成す角度の余弦を前記検査対象物の搬送方向における速度に乗じた速度に同期して前記検査対象物を透過した放射線を検出する請求項3に記載の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230572(P2010−230572A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80092(P2009−80092)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】