説明

欠陥検査装置及び欠陥検査処理方法

【課題】小型の装置構成で、高精度に、被検体(ワーク)の欠陥検査を行うことを可能にする。
【解決手段】複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイ11と、該レンズアレイの複数のレンズのそれぞれにより略結像される被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子14とを備える撮像装置10を使用する。処理装置20は、該撮像装置10により被写体を撮影して得られる複眼像を処理して被検体の欠陥を判定する。ここで、処理装置20は、撮像装置10により得られる複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ部21、分離された複数の個眼像それぞれを歪み補正する画像補正部22、歪み補正された複数の個眼像に基づいて被検体の欠陥を判定する欠陥判定部23からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体表面の傷、変形、打痕などの欠陥の有無を検査する欠陥検査装置及び欠陥検査処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークなどの被検体を照明して、該被検体からの反射光をカメラで撮影し、その撮影像を画像処理することで、被検体表面の欠陥を判別する検査手法が知られている。さらには欠陥判別精度を高めるために、被検体を複数のカメラで複数の撮影位置から撮影したり、複数の光源を用いて、被検体と撮影位置を固定したまま、被検体を照明する位置を切り替えて撮影することも知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
【0003】
被検体を複数のカメラで複数の撮影位置から撮影することで、被検体と撮影位置の相対位置関係が変わるため、得られる撮影像が異なる。この複数の撮影像について欠陥判別の画像処理を行うことにより、欠陥判別精度を向上させることができる。また、複数の光源を用い、被検体と撮影位置を固定したまま、被検体の照明位置を変更させても、同様の効果が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のカメラで一つの被検体の欠陥検査を行うことは有効であるが、以下のような問題がある。ここでは、二つのカメラ(ステレオカメラ)を用いるとする。
【0005】
被検体の検査対象となる欠陥(キズ、カケ、バリ等)は幅広いサイズのものに限らず、人間の眼で判断できない数μmから数mmのものも存在する。一方、ステレオカメラは、一般にカメラ単体のサイズが大きく、数cm以上にはなる。このため、数mm程度以下の欠陥をステレオカメラで観察しようとすると、二つのカメラを傾ける配置にするか、二つのカメラを平行に設置し、かつ、被検体までの距離を長くとって、望遠カメラのような状態で撮影する必要がある。しかしながら、被検体までの距離を長くすることは、小さい欠陥を接写に近い状態で撮影したいと云う顧客の要望を満たさないため、二つのカメラを傾ける配置を援用することとなる。この場合、図16に示すように、二つのカメラA,Bの光軸は平行にならない。
【0006】
光軸が平行でない二つのカメラで撮影された画像を用いて被検体の欠陥検査を行う場合、該撮影された2枚の画像を光軸が平行な画像に補正する必要がある。このため、光軸が平行でない画像をバッファなどへ一旦保存したり、該画像の平行化に要する処理時間が問題とする。特に欠陥検査ではタクトタイムが最重要課題となっているので、光軸が平行でない画像の平行化に時間を取られることは非常に重要な問題である。
【0007】
また、一般にレンズの特性として近距離領域では被写界深度が狭い。そのため、光軸が平行でない場合、左右のカメラの画像のボケ具合が大きく変化し、ボケ具合いが異なる画像を用いて欠陥検査を行うことになり、精度が低下する。
【0008】
二つのカメラの光軸が平行でない場合、画像のボケ具合が異なる例を図17を用いて説明する。図17は、被検体としてのワーク1aとワーク1bが描画され、欠陥検査の撮影タイミングにズレが起こった時の様子を表しているとする。この時、カメラAからワーク1aとワーク1bまでの距離は、両者とも等距離であるが、カメラBからワーク1aとワーク1bまでの距離は異なる。図17において、aがカメラBからワーク1aまでの距離、bがカメラBからワーク1bまでの距離を示している。この距離の違いにより、カメラBで撮影されるワーク1a、ワーク1bの画像のボケ具合は大きく異なり、欠陥検査の精度に大きく影響を及ぼす。
【0009】
本発明は、叙上の事情に鑑みなされたもので、ステレオカメラなどに比べて、小型の装置構成で、高精度に、被検体の欠陥検査を行うことができる欠陥検査装置及び欠陥検査処理方法を提供することにある。
【0010】
具体的には、本発明は、数mm程度以下のキズやバリなどの検査に最適な欠陥検査装置及び欠陥検査処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、該レンズアレイの複数のレンズのそれぞれにより略結像される被写体の縮小像(個眼像)の集合である複眼像を撮像する撮像素子とを備える撮像装置を使用する。処理装置は、該撮像装置により被写体を撮影して得られる複眼像を処理して被検体の欠陥を判定する。
【0012】
詳しくは、処理装置は、撮像装置により得られる複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ手段と、前記複数の個眼像に基づいて被検体の欠陥を判定する欠陥判定手段とを有する。該処理装置は、画像キャプチャ手段で分離された複数の個眼像それぞれを歪み補正する画像補正手段を更に有することでもよい。
【0013】
欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて欠陥判定を行う個眼像欠陥判定手段と、個眼像欠陥判定手段での複数の個眼像それぞれの欠陥判定結果をもとに被検体の欠陥を判定する統合判定手段とからなる。個眼像欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて、欠陥あり、欠陥なし、判定不能のいずれかに判定し、統合判定手段は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には判定不能の個眼像をもとに被検体の欠陥を判定する。
【0014】
一実施形態では、個眼像欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて、当該個眼像と正常個眼像との各画素あるいは各小領域ごとの差分値を求めて、前記差分値を評価値とし、各画素あるいは各小領域のすべての評価値が第1の閾値以下の場合には当該個眼像は欠陥なし、一つの評価値でも第2の閾値(ただし、第1の閾値<第2の閾値)以上の場合には当該個眼像は欠陥あり、これら以外の場合には判定不能と判定する。統合判定手段は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には、判定不能の個眼像をもとに、判定不能の個眼像が一つの場合には被検体を欠陥なし、判定不能の個眼像が2以上の場合には、各個眼像を視差補正して、同一位置に欠陥があれば被検体を欠陥あり、同一位置に欠陥がなければ被検体を欠陥なしと判定する。
【0015】
別の実施形態では、個眼像欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて、当該個眼像と正常個眼像との各画素あるいは各小領域ごとの差分値を求め、前記差分値を当該画素あるいは小領域の像高に応じて補正した値を評価値とし、前記評価値を予め定めた0〜Nの複数の段階のいずれかの欠陥度合いに分類し、各画素あるいは各小領域のすべての欠陥度合いが段階0の場合には当該個眼像は欠陥なし、一つの欠陥度合いでも段階Nの場合には当該個眼像は欠陥あり、これら以外の場合には当該個眼像は判定不能と判定する。統合判定手段は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には、判定不能の個眼像をもとに、判定不能の個眼像が一つの場合には被検体を欠陥なし、判定不能の個眼像が2以上の場合には、各個眼像を視差補正して、同一位置に欠陥がある場合、それらの欠陥度合いを加算して、加算結果が段階N以上の場合に被検体を欠陥あり、同一位置に欠陥がないか、欠陥があっても前記加算結果が段階N以下の場合には被検体を欠陥なしと判定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のレンズがアレイ配列されたレンズアレイを備えた撮像手段を利用することで、小型の装置構成で、高精度に、被検体の欠陥検査を行うことが可能になる。具体的には、一つの撮像手段により、複数の撮像手段で撮影した画像を得ることと同等の画像を得ることができる。また、複数の個眼像ごとに別々に欠陥判定を行い、その判定結果を統合して被検体の欠陥を判定することで、より高精度に被検体の欠陥を判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の欠陥検査装置の一実施形態の全体構成図である。
【図2】図1の撮像装置を被写体方向から見た模式図である。
【図3】歪み補正の概念を説明する図である。
【図4】個眼像間の撮像位置のずれ量(視差)の算出法を説明する図である。
【図5】図1の視差データ記憶部の視差テーブルの一例を示す図である。
【図6】図1の欠陥判定部の詳細ブロック図である。
【図7】図6の個眼像欠陥判定部の処理フローチャートである。
【図8】個眼像欠陥判定部での判定結果の具体例を示す図である。
【図9】図6の統合判定部の全体的処理フローチャートである。
【図10】図9の視差考慮判定処理の詳細フローチャートである。
【図11】図6の個眼像欠陥判定部の別の処理フローチャートである。
【図12】像高と評価値の補正係数との関係を示すグラフである。
【図13】個眼像欠陥判定部での判定結果の別の具体例を示す図である。
【図14】図6の統合判定部の別の全体的処理フローチャートである。
【図15】図14の視差考慮判定処理の詳細フローチャートである。
【図16】従来の二つのカメラで被検体を撮影する例を示す図である。
【図17】従来の二つのカメラの光軸が平行でない場合に画像のボケ具合が異なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
図1、図2に本発明の欠陥検査装置の一実施形態(実施例1)の全体構成図を示す。図1は、矢印方向に被検体があるものとし、被検体を撮像する撮像装置の断面模式図及び撮像装置により撮像された画像から被検体の欠陥を判定処理する処理装置の全体ブロック図を示したものである。図2は、図1の撮像装置を被検体方向から見たときの平面模式図であり、図1と共通する部分には共通の符号が付されている。図1及び図2において、10が撮像装置、20が処理装置、30が出力装置である。また、1は欠陥検査対象の被検体(ワーク)、2は該被検体1を載せる載置台、3は被検体1を照明するための照明具(光源)である。照明具3で被検体1を照明することで、より被検体表面の傷や変形、打痕位置を目立たせることができる。
【0020】
まず、撮像装置10について説明する。撮像装置10は、レンズアレイ11、遮光壁12、開口アレイ13、撮像素子14、基板15、筐体16などからなる。
【0021】
レンズアレイ11は、被検体側の面と像側の面の二面からなり、面内に複数のレンズがアレイ状に配列されている。図1では、被写体側、像側の両方の面にレンズが設けられた両面レンズアレイが示されている。ここでは、11aが被写体側の面に設けられたレンズで、11bが像側の面に設けられたレンズであり、11aと11bがセット(以下、レンズセット)になって被写体の像を像面上で結像させる。本実施形態では、図2に示すように、レンズアレイ11は6組のレンズセット111,112,113,114,115,116から構成されている。各レンズセットは等間隔に配列され、光軸は平行で、焦点距離は等しい。
【0022】
このレンズアレイ11の像側と撮像素子14の間に、遮光壁12が設けられている。該遮光壁12は、レンズアレイ11の隣接するレンズセット間での光線のクロストーク(混線)を防止するための遮光用の隔壁で、金属や樹脂等の撮像光に対して不透明な材料からなり、図2に示すように、レンズアレイ11の各レンズセット111〜116に対応して矩形の穴が明けられており、穴と穴の間の壁が混線防止のための隔壁として作用する。該遮光壁12の一端は、レンズアレイ11の像側の面に固着されている。なお、本実施例では、該遮光壁12がレンズアレイ11の熱膨張に応じて可動するように、各辺に切断されている(図2の12a〜12q)。
【0023】
一方、レンズアレイ11の被写体側には、開口アレイ13が設けられている。該開口アレイ13は、板状部材に、レンズアレイ11の各レンズセット111〜116に対応した円形の穴(開口部)が設けられた構成をとり、レンズの絞りとして作用する。該開口アレイ14は、レンズアレイ11の被写体側の面の平面部の4隅に設けられた各突起部11cを介してレンズアレイ11に固着されている。
【0024】
撮像素子14は、例えばCMOSセンサからなり、レンズアレイ11の各レンズセット111〜116を通った光を受光し、それぞれ被写体(ワーク)の光学像を電気信号の画像データに変換して出力する。該撮像素子14は、基板15上に実装される。基板15上には、撮像素子14の制御部(コントローラ)なども実装されているが、図1では省略してある。なお、後述の処理装置20の一部又は全部の機能も基板15上に実装することでもよい。
【0025】
筐体16は、レンズアレイ11の被写体側の面の端部を固着して、レンズアレイ11、遮光壁12、開口アレイ13を一体に保持している。該筐体16に、基板15が、撮像素子14の受光面がレンズアレイ11と対向するように固着される。図1では、エイリアジング防止のための光学的ローパスフィルタやセンサ保護用のカバーガラスを設けていないが、必要に応じて設けてもよい。
【0026】
以上、撮像装置10の構成例を説明したが、レンズアレイ11は、単一のレンズが複数配列される構成でもよく、勿論、レンズセットやレンズは6個である必要はない。さらに、複数のレンズアレイを重畳して設けて、より高い光学性能を有する撮像装置も考えられる。
【0027】
次に、処理装置20について説明する。処理装置20は、画像キャプチャ部21、画像補正部22、欠陥判定部23、正常データ記憶部24、視差データ記憶部25などからなる。ここで、画像キャプチャ部21と画像補正部22と欠陥判定部23の実体はCPUであり、また、正常データ記憶部24と視差データ記憶部25は不揮発性メモリ(ROM等)で構成される。処理装置20は、他に処理途中等の画像データを保持するメモリ(RAM等)を有するが、図1では省略してある。
【0028】
撮像装置10で被検体1を撮影することにより、撮像素子14において、レンズアレイ11の各レンズセット111〜116で結像された該被検体1の6つの光学像(個眼像)の集合である複眼像の画像データが取得される。画像キャプチャ部21は、撮像素子14からの複眼像データを入力してキャプチャし、6つの個眼像データ(以下、単に個眼像と云う)I〜Iに分離する。ここで、個眼像I〜Iは、レンズアレイ11の各レンズセット111〜116でそれぞれ結像された被検体の光学像に対応している。撮像素子14で取得された各個眼像の周辺は、遮光壁12で黒くなっているため、それ境に個眼像を容易に分離することができる。
【0029】
画像補正部22は、画像キャプチャ部22で分離された個眼像それぞれに対して、レンズの工作精度、組み付け精度によるカメラ固有の内部パラメータ、外部パラメータなど、あらかじめ算出しておいた歪み補正処理パラメータを用いて歪み補正を行う。歪み補正には、例えば、Zhangの手法(“A flexible new technique for camera calibration”.IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,22(11):1330-1334,2000)を用いることができる。
【0030】
図3は歪み補正の概念図を示したものである。ここで、図3の(a)は、図1、図2に示した撮像装置10であり、(c)は該撮像装置10で撮影された歪みあり画像、(d)は歪み補正処理された歪みなし画像とする。画像に歪み補正を施すことは、撮影画像をピンホールカメラで得られるような、物体からの入射角をθ、焦点距離をFとしたときの撮像位置がF*tan(θ)となるような画像に変換することである。すなわち、図1、図2の撮像装置で撮影された画像(図3の(c))を歪み補正して得られる画像(図3の(d))は、撮像装置10を6つのピンホールカメラのアレイからなる撮像装置(仮想撮像装置)を想定して、撮影された画像と考えることができる。図3の(b)と(d)は、これを示したものである。
【0031】
欠陥判定部23は、画像補正部22で歪み補正された個眼像I〜Iを入力して被検体(ワーク)1の欠陥を判定する。以後、歪み補正された個眼像I〜Iは、図3の(b)と(d)のように、実際の撮像装置10の代わりにピンホールカメラのアレイからなる仮想撮像装置10’で撮影された画像とする。
【0032】
ここでは、仮想撮像装置10’の6つのピンホールカメラは、説明の簡略化のために、すべて焦点距離がF、6本の光軸は平行、画像中心はそれぞれ(x,y),(x+dx,y),(x+2dx,y),(x,y+dy),(x+dx,y+dy),(x+2dx,y+dy)で表現できるものとする(図3の(d))。
【0033】
欠陥判定部23の説明の前に、個眼像間のずれ量(視差)について説明する。仮想撮像装置から距離Dの位置にある物体を撮影したときの物体の撮像位置のずれ量は、図4により、次のように算出される。図4において、カメラ1とカメラ2は焦点距離Fのピンホールカメラで、撮像面を同一平面とする。また、焦点間の距離(画像中心間の距離)はdxとし、焦点から距離Dにある物体を撮影したときの、カメラ1とカメラ2での撮像位置をそれぞれV1とV2とする。このとき、カメラ1の焦点位置と、物体から撮像面に垂直に下ろした線との交点Oまでの距離をPとすると、
OV1=(F+D)*P/D
OV2=(F+D)*(P+dx)/D
となる。よって、カメラ1とカメラ2で距離Dの物体を撮影したときの撮像位置のずれ量(視差)は、
OV2−OV1=F/D*dx+dx
となる。ゆえに、カメラ1とカメラ2で物体を撮影したときの個眼領域での画素ずれ量は、F/D*dxとなる。
【0034】
以上により、図3(d)に示したように、個眼像Iの画像中心を(x,y)、個眼像Iの画像中心を(x+dx,y)とした場合、撮像装置から距離Dにある物体は、個画像I,Iの間で(F/D*dx,0)ずれた位置に撮像することが分かる。また、個眼像Iの画像中心を(x,y)、個眼像Iの画像中心を(x+dx,y+dy)とすると、個眼像I,Iの間で(F/D*dx,F/D*dy)ずれた位置に撮像することになる。つまり、撮像装置10から距離Dの平面形状の載置台2に平面状の被検体1を置くと、個眼像Iを基準とした場合、各個眼像I〜Iには、図5の1行に表わされるようなずれ量(視差)が生じる(ただし、個画像は歪みなし、ワークの厚さに無視でると仮定)。同様に、個眼像I〜Iをそれぞれ基準とした場合、各個眼像I〜Iには、図5の2行から6行に表わされるようなずれ量が生じる。
【0035】
以下、欠陥判定部23について詳述する。図6は欠陥判定部23の構成例を示すブロック図である。欠陥判定部23は個眼像欠陥判定部231と統合判定部232からなる。個眼像欠陥判定部231は、画像補正部22で歪み補正された6個の個眼像I〜Iそれぞれに対して、正常データ記憶部24の正常個眼像I01〜I06と比較して、欠陥有、欠陥無、判定不能の3種類を判定する。正常データ記憶部24には、正常な対象物(正常ワーク)を撮像装置10であらかじめ撮影して、そのときに取得された6個の個眼像をそれぞれ歪み補正したものが、正常個眼像I01〜I06として記憶されている。統合判定部232は、個眼像欠陥判定部231での6個の個眼像I〜Iそれぞれの判定結果をもとに、総合的に被検体の欠陥判定を行う。その際、判定不能と判定された場合、視差データ記憶部25のテーブルを参照し、個眼像間の視差を考慮して被検体の最終的な欠陥有無を判定する。視差データ記憶部25には、撮像装置と被検体との距離に基づき、あらかじめ算出しておいた各個眼像での被検体の撮像位置のずれ量がテーブル化して記憶されている。ここでは、図5に示した表(視差テーブル)が記憶されているとする。
【0036】
欠陥判定部23の判定結果は、出力装置30に送出される。出力装置30は、音声出力装置、表示装置、プリンタ等の一つあるいは複数の総称である。出力装置30が音声出力装置の場合には、欠陥判定部23の判定結果が欠陥有の場合、例えばビープ音などを鳴らすようにする。
【0037】
はじめに、本実施例における個眼像欠陥判別部231の処理について詳述する。図7は個眼像欠陥判定部231の本実施例の処理フローチャートを示したものである。ここで、iは個眼像I〜Iの番号を表わす。
【0038】
まず、i=1として(ステップ1001)、6個の個眼像のうち、1番目の個眼像Iを選択し(ステップ1002)、該個眼像Iについて次のようにして欠陥なし、欠陥あり、判定不能を判定する。即ち、正常データ記憶部24から個眼像Iに対応する正常個眼像I01を読み込み、個眼像Iと正常個眼像I01とのテンプレートマッチングを行って評価値を求める(ステップ1003)。テンプレートの大きさは適宜選択する。例えば、画素サイズのテンプレートを用意してもよいし、それより大きめのm×mの画素サイズ(小領域)のテンプレートを用意してもよい。画素サイズのテンプレートの場合、個眼像Iと正常個眼像I01の各画素値の差分の絶対値を評価値とする。また、m×m画素サイズのテンプレートの場合、個画像Iと正常個眼像I01の各小領域内の画素値の差分の総和や2乗和などを評価値とする。個眼像Iと正常個眼像I01の各画素あるいは各小領域ごとのテンプレートマッチングを行って、すべての評価値が閾値TH1以下ならば、個眼像Iを欠陥なしと設定する(ステップ1004,1005)。一つの評価値でも閾値TH1以上のものがあった場合、それらの評価値が一つでも閾値TH2以上か判定する(ステップ1006)。ここで、TH1,TH2はTH1<TH2とする。そして、一つでも評価値が閾値TH2以上だったならば、個眼像Iを欠陥ありと設定する(ステップ1007)。また、それ以外の場合には、個眼像Iを判定不能と設定し、該当するすべての評価値の座標値を記憶する(ステップ1008)。座標値は、画素サイズのテンプレートの場合には、当該画素の座標とし、m×m画素サイズのテンプレートの場合には、例えば、当該小領域の4隅の座標とする。
【0039】
つまり、個眼像Iと正常個眼像I01を各画素あるいは小領域ごとに比較して評価値を求め、閾値としてTH1とそれより大きいTH2を用いて、すべての評価値がTH1以下ならば、個眼像Iは欠陥なしとし、一つでも評価値がTH2以上ならば、個眼像Iは欠陥ありとし、それ以外ならば(少なくとも一つ以上の評価値がTH1以上で、それらがすべてTH2以下)、個眼像Iは判定不能とする。そして、判定不能の場合、その評価値の座標値を記憶する。以後、個眼像中の判定不能と判定された画素あるいは小領域の部分を仮欠陥位置と称す。
【0040】
その後、iが6になったか判定し(ステップ1009)、6までこない場合、iをプラス1して(ステップ1010)、ステップ1002に戻り、以下、i=6になるまで、ステップ1002〜1008の処理を繰り返す。すなわち、上記個眼像Iと同様に、個眼像I〜Iについて、それぞれ欠陥なし、欠陥あり、判定不能を判定する。そして、個眼像I〜Iの判定結果を統合判定部232に送る(ステップ1011)。
【0041】
図8に、個眼像欠陥判定部231における判定結果の一例を示す。図8(a)は、個眼像I〜Iについて、これら個眼像I〜Iのすべてが欠陥なしと判定された被検体(ワーク1)の例である。図8(b)は、個眼像I,Iが欠陥ありと判定され、残りの個眼像I,I,I,Iが欠陥なしと判定された被検体(ワーク2)の例である。また、図8(c)は、欠陥ありと判定された個眼像は一つもなく、個眼像I,I,I,Iが欠陥なしと判定され、個眼像I,Iが判定不能と判定された被検体(ワーク3)の例である。図8(c)で、個眼像Iは座標(100,150),(101,150)で判定不能と判定され、個眼像Iは座標(110,160)で判定不能と判定されたことを表している。すなわち、個眼像Iは座標(100,150),(101,150)が仮欠陥位置を表し、個眼像Iは座標(110,160)が仮欠陥位置を表している。これは、画素サイズのテンプレートを用いた場合であるが、m×m画素サイズでのテンプレートを用いた場合には、例えば、判定不能と判定された小領域の四隅の座標が記憶される。すなわち、この小領域が仮欠陥位置を表わす。
【0042】
なお、図8において、欠陥あり及び欠陥なしは、その個眼像の番号の代りに、個数(欠陥ありの個数、欠陥なしの個数)を設定することでもよい。例えば、図8(b)の場合、欠陥なしは4個、欠陥ありは2個と設定する。
【0043】
次に、本実施例における統合判定部232の処理について詳述する。図9は統合判定部232の本実施例の全体的処理フローチャートを示したものである。まず、個眼像欠陥判定部231の判定結果について、個眼像I〜Iのすべてが欠陥なしか判定し(ステップ2001)、個眼像I〜Iのすべてが欠陥なしならば、当該被検体1は欠陥なしと判断して(ステップ2002)、処理を終了とする、図8の(a)はこのケースである。個眼像I〜Iがすべて欠陥なしと判定されなかった場合には、個眼像I〜Iのうち、1個でも欠陥ありの個眼像があるか判定し(ステップ2003)、あれば、当該被検体は欠陥ありと判断して(ステップ2004)、処理を終了とする。図8の(b)は、このケースである。
【0044】
一方、ステップ2003で、欠陥ありの個眼像が1個も存在しないと判定されたならば、視差考慮判定処理へ進む(ステップ2005)。すなわち、欠陥なしの個画像が5以下で、しかも、欠陥ありの個眼像が0の場合、欠陥なしの個眼像以外は全て判定不能の個眼像である。視差考慮判定処理では、この判定不能の個眼像に着目し最終的にワークの欠陥有無を判断する。図8の(c)は、このケースである。本実施例では、判定不能の個眼像の仮欠陥位置(判定不能と判定された座標あるいは小領域)について、視差データ記憶部25の視差テーブルを参照して視差補正を行った後、判定不能の個眼像間の仮欠陥位置を比較し、仮欠陥位置が一致すれば、当該被検体は欠陥ありとし、一致しなければ欠陥なしとする。これを判定不能の個眼像のすべての組み合わせについて実施し、途中で欠陥ありが見つかったなら、その時点で処理を終了とする。なお、判定不能の個眼像が1個だけの場合は欠陥なしとする。
【0045】
図10に、本実施例における視差考慮判定処理の詳細フローチャートを示す。ここでは、画素サイズのテンプレートマッチングを想定する。すなわち、図8(c)に示すように、判定不能の個眼像の仮欠陥位置はそれぞれ一つの座標値で表わされるとする。また、視差データ記憶部25の視差テーブルは図5とする。
【0046】
まず、判定不能の個眼像が2個以上あるか判定する(ステップ3001)、判定不能の個眼像が1個のみだったなら、当該被検体は欠陥なしと判断して(ステップ3014)、処理を終了とする。すなわち、当該個眼像中の仮欠陥位置はノイズとみなす。
【0047】
判定不能の個眼像が2個以上(N個とする)の場合、これらの判定不能の個眼像を番号順に昇順にソートする(ステップ3002)。そして、L=1,M=L+1(=2)と初期設定する(ステップ3003,3004)。ここで、L及びMはソート番号(1〜N)を表す。次に、ソートしたN個の判定不能の個眼像の中から、L番目の個眼像Iiと、M番目の個眼像Ijを選択する(ステップ3005,3006)。ここで、i,jは判定不能の個眼像の実際の番号(1〜6)を表す。具体的には、iは図5の縦方向の個眼像番号を表し、jは図5の横方向の個眼像番号を表す。
【0048】
次に、視差データ記憶部25の視差テーブル(図5)を参照して、M番目の個眼像Ijにおける各仮欠陥位置の座標について、L番目の個眼像Iiの座標とのずれ量(視差分)を補正する(ステップ3007)。すなわち、個眼像Iiの視点に個眼像Ijの視点を合わせる(視差補正)。例えば、個眼像IiがI、個眼像IjがIの場合、図5より、個眼像Ijの仮欠陥位置の座標(Xj,Yj)を、Xj’=Xj−F/D*dx,Yj’=Yjと補正する。これを個眼像Ijの全ての仮欠陥位置の座標について実施する。
【0049】
次に、L番目の個眼像Iiの全ての仮欠陥位置の座標とM番目の個眼像Ijのすべての仮欠陥位置の視差補正後の座標とを比較して、仮欠陥位置が同一のものがあるか判定する(ステップ3008)。そして、該個眼像IiとIjの間で仮欠陥位置が同一のものがあれば、当該被検体は欠陥ありと判断して(ステップ3012)、処理を終了とする。
【0050】
例えば、図8(c)の例の場合、ステップ3005,ステップ3006で個眼像I,Iが選択される。そして、ステップ3007にて、個眼像Iの仮欠陥位置の座標(110,160)を視差補正した結果、(100,150)になったとする。ステップ3008で、個眼像Iの仮欠陥位置の座標(100,150),(101,150)と、個眼像Iの仮欠陥位置の視差補正後の座標(100,150)とを比較すると、座標(100,150)が同一であるため、当該被検体(ワーク3)は最終的に欠陥ありと判断される。
【0051】
図10に戻り、L番目の個眼像IiとM番目の個眼像Ijとの間で仮欠陥位置が同一のものがなかった場合には、MがNまで来たか判定し(ステップ3010)、まだ来ない場合には、M=M+1として(ステップ3011)、ステップ3006に戻る。そして、MがNまで来たなら、LがN−1まで来たか判定し(ステップ3012)、まだ来ない場合には、次にL=L+1として(ステップ3013)、ステップ3004に戻る。その後、処理を繰り返して、LがN−1まで来たなら、当該被検体には欠陥なしと判断する(ステップ3014)。すなわち、N個の判定不能の個眼像の間で、仮欠陥位置が同一のものがなかった場合、該仮欠陥位置はノイズとみなして、当該被検体は欠陥なしとする。
【0052】
なお、実際には、視差補正を行っても、カメラの組み付け状態などによって、個眼像間の座標を画素レベルで一致される構成を実現することは困難である。このため、判定不能の個眼像間での仮欠陥位置が同一かどうかは、適宜設定した許容範囲内で一致すれば、仮欠陥位置は、同一であるとすることが望ましい。また、m×m画素サイズのテンプレートマッングの場合には、判定不能の個眼像間での仮欠陥位置が同一かどうかの判定は、小領域同士の比較となる。この場合も、適宜設定した許容範囲内で小領域が一致すれば、仮欠陥位置(領域)は同一であるとすればよい。
【実施例2】
【0053】
図1に示したように、撮像装置には、被検体側と像側の両方あるいは片方に複数のレンズが配列された簡単な構成のレンズアレイを使用している。このような撮像装置で被検体(ワーク)を撮像した場合、各個眼像は、画像中心に比べて画像周辺に行くほど画像のボケ具合が大きくなる。これは、正常ワークを撮像した場合も同様である。このため、個眼像と正常個眼像を各画素あるいは小領域ごとに比較し、その差分の絶対値を評価値とした場合、欠陥が画像中心近くにある場合には、評価値は大きな値を示すため、確実に欠陥ありと判定されるが、欠陥が画像周辺にある場合には、評価値は小さな値を示し(ボケた画像同士を比較するため)、欠陥ありと判定されないケースがでてくる。
【0054】
本実施例2は、上述のように、複数のレンズがアレイ配列されてなる簡単な構成のレンズアレイを使用した撮像装置では、画像中心に比べ画像周辺に行くほど画像のボケ具合が大きくなり、画像周辺に行くにしたがって判定精度が低下することに鑑み、該画像周辺での判定精度の向上を図るようにしたものである。
【0055】
本実施例の欠陥検査装置の全体構成は、図1及び図2と同じである。また、処理装置20内の欠陥判定部23も、図6に示したように個眼像欠陥判定部231と総合判定部232からなるが、その処理が先の実施例1と多少相違する。以下、本実施例における個眼像欠陥判定部231と総合判定部232の処理について説明する。
【0056】
はじめに、本実施例における個眼像欠陥判別部231の処理について詳述する。図11は個眼像欠陥判定部231の本実施例の処理フローチャートを示したものである。ここでも、iは個眼像I〜Iの番号を表わす。
【0057】
まず、i=1として(ステップ4001)、6個の個眼像のうち、1番目の個眼像Iを選択する(ステップ4002)。そして、正常データ記憶部24から個眼像Iに対応する正常個眼像I01を読み込み、個眼像Iと正常個眼像I01とのテンプレートマッチングを行って両者の差分値を求める(ステップ4003)。本実施例でも、テンプレートの大きさは適宜選択する。例えば、画素サイズのテンプレートを用意してもよいし、それより大きめのm×mの画素サイズ(小領域)のテンプレートを用意してもよい。画素サイズのテンプレートの場合、個眼像Iと正常個眼像I01の各画素値の差分の絶対値を求める。また、m×m画素サイズのテンプレートの場合、個画像Iと正常個眼像I01の各小領域内の画素値の差分の総和や2乗和などを求める。このようにして、個眼像Iと正常個眼像I01の各画素あるいは各領域ごとの差分値を求める。
【0058】
次に、差分値を当該画素あるいは小領域の像高に応じて補正した値を評価値とする(ステップ4004)。これは次のようにして行う。画像(個眼像)の像高位置に応じて図12に示すような係数を定めておき、個眼像Iの各画素あるいは各小領域ごとの差分値について、当該差分値の像高位置に応じた係数を乗じた値を評価値とする。すなわち、画像中心に比べて画像周辺に行くほど、見掛上、差分値を高くする。これにより、画像中心に比べて画像周辺に行くほど画像のボケ具合が大きくなることに起因して、キズ等の存在が画像周辺で実際よりも小さく評価されることが補正される。
【0059】
なお、図12では、簡単に像高と係数が正比例するとしたが、実際にはレンズ設計時の画像ボケ量に応じて係数を設定すればよい。また、像高に対応する係数は、テーブル(LUT)などとして予め不揮発性メモリに保持しておけばよい。
【0060】
次に、評価値について欠陥度合いを分類する(ステップ4005)。ここでは、0〜100の101段階に欠陥度合いを設定するとする。ここで、段階0は欠陥なし、段階1〜99は判定不能、段階100は欠陥ありを表わす。個眼像Iの各画素あるいは各小領域ごとの評価値(差分値に係数を乗じた値)について、その値に応じて、欠陥度合いを0〜100のいずれかの段階(レベル)に分類する。欠陥度合いの各段階に対応する評価値の範囲は、テーブル(LUT)などとしてあらかじめ不揮発性メモリに保持しておく。
【0061】
その後、個眼像Iについて、欠陥度合いを基に欠陥なし、欠陥あり、判定不能を判定する。すなわち、個眼像Iの各画素あるいは各小領域ごとの欠陥度合いについて、その全ての欠陥度合いが段階0ならば、個眼像Iを欠陥なしと設定する(ステップ4006,4007)。段階100の欠陥度合いのものがあった場合、個眼像Iを欠陥ありと設定する(ステップ4008,4009)。また、それ以外の場合(段階0以外のものは、すべて段階1〜99のいずれか)には、個眼像Iを判定不能と設定し、段階1〜99内のすべての評価値の欠陥度合いの座標値と該欠陥度合いを記憶する(ステップ1010)。座標値は、画素サイズのテンプレートの場合には、当該画素の座標とし、m×m画素サイズのテンプレートの場合には、例えば、当該小領域の4隅の座標とする。以後、この判定不能と判定された場合の、当該個眼像中の欠陥度合いが1〜99段階を示す画素あるいは小領域の部分を仮欠陥位置と称す。
【0062】
その後、iが6になったか判定し(ステップ4011)、6までこない場合、iをプラス1して(ステップ4012)、ステップ4002に戻り、以下、i=6になるまで、ステップ4002〜4012の処理を繰り返す。すなわち、上記個眼像Iと同様に、個眼像I〜Iについて、それぞれ欠陥なし、欠陥あり、判定不能を判定する。そして、個眼像I〜Iの判定結果を統合判定部232に送る(ステップ4013)。
【0063】
なお、評価値(差分値に係数を乗じた値)を用いて、先の実施例1と同様に個眼像の欠陥あり、欠陥なし、判定不能を判定することも可能であるが、欠陥度合いを導入して、上述のように、例えば、段階0は欠陥なし、段階100は欠陥あり、その間の段階1〜99は判定不能と設定したのは、曖昧な部分は出来るだけ判定不能とするためである。また、判定不能の場合、対応する座標値と一緒に欠陥度合いを保持するようにしたのは、後の統合判定部232での視差考慮判定処理に該欠陥度合いを利用するためである。
【0064】
図13に、本実施例の個眼像欠陥判定部231における判定結果の一例を示す。図13(a)は、個眼像I〜Iについて、これら個眼像I〜Iのすべてが欠陥なしと判定された被検体(ワーク1)の例である。図13(b)は、個眼像I,Iが欠陥ありと判定され、残りの個眼像I,I,I,Iが欠陥なしと判定された被検体(ワーク2)の例である。また、図13(c)は、欠陥ありと判定された個眼像は一つもなく、個眼像I,I,I,Iが欠陥なしと判定され、個眼像I,Iが判定不能と判定された被検体(ワーク3)の例である。図13(c)で、個眼像Iは座標(100,150),(101,150)で判定不能と判定されて、欠陥度合いはそれぞれ段階30,40であることを表し、また、個眼像Iは座標(110,160)で判定不能と判定されて、欠陥度合いは段階50であることを表している。すなわち、個眼像Iは座標(100,150),(101,150)が仮欠陥位置を表し、個眼像Iは座標(110,160)が仮欠陥位置を表している。これは、画素サイズのテンプレートを用いた場合であるが、m×m画素サイズでのテンプレートを用いた場合には、例えば、判定不能と判定された小領域の四隅の座標と欠陥度合いが記憶される。この場合、この小領域が仮欠陥位置となる。
【0065】
本実施例でも、図13において、欠陥あり及び欠陥なしは、その個眼像の番号の代りに、個数(欠陥ありの個数、欠陥なしの個数)を設定することでもよい。例えば、図13(b)の場合、欠陥なしは4個、欠陥ありは2個と設定する。
【0066】
次に、本実施例における統合判定部232の処理について詳述する。図14は統合判定部232の全体的処理フローチャートを示したものである。これは、先の図9と同じである。すなわち、個眼像欠陥判定部231の判定結果について、個眼像I〜Iのすべてが欠陥なしか判定し(ステップ5001)、個眼像I〜Iのすべてが欠陥なしならば、当該被検体1は欠陥なしと判断して(ステップ5002)、処理を終了とする、図13の(a)はこのケースである。個眼像I〜Iがすべて欠陥なしと判定されなかった場合には、個眼像I〜Iのうち、1個でも欠陥ありの個眼像があるか判定し(ステップ5003)、あれば、当該被検体は欠陥ありと判断して(ステップ5004)、処理を終了とする。図13の(b)は、このケースである。
【0067】
一方、ステップ5003で、欠陥ありの個眼像が1個も存在しないと判定されたならば、視差考慮判定処理へ進む(ステップ5005)。すなわち、欠陥なしの個画像が5以下で、しかも、欠陥ありの個眼像が0の場合、欠陥なしの個眼像以外は全て判定不能の個眼像である。視差考慮判定処理では、この判定不能の個眼像に着目し最終的にワークの欠陥有無を判断する。図13の(c)は、このケースである。具体的には、判定不能の個眼像の仮欠陥位置(判定不能と判定された座標あるいは小領域)について、視差データ記憶部25の視差テーブルを参照して視差補正を行った後、判定不能の個眼像間の仮欠陥位置を比較し、仮欠陥位置が一致すれば、両者の欠陥度合いが所定の条件を満たすか判定して、満たす場合に当該被検体は欠陥ありとし、満たさない場合には欠陥なしとする。また、仮欠陥位置が一致しなければ、同様に欠陥なしとする。これを判定不能の個眼像のすべての組み合わせについて実施し、途中で欠陥ありが見つかったなら、その時点で処理を終了とする。なお、判定不能の個眼像が1個だけの場合は欠陥なしとする。
【0068】
図15に、本実施例における視差考慮判定処理の詳細フローチャートを示す。ここでも、画素サイズのテンプレートマッチングを想定する。すなわち、図13(c)に示すように、判定不能の個眼像の仮欠陥位置はそれぞれ一つの座標値で表わされるとする。また、視差データ記憶部25の視差テーブルは図5とする。
【0069】
図15において、ステップ6009とステップ6010の部分が先の図10と相違し、それ以外は図10と同じである。
【0070】
まず、判定不能の個眼像が2個以上あるか判定する(ステップ6001)、判定不能の個眼像が1個のみだったなら、当該被検体は欠陥なしと判断して(ステップ6016)、処理を終了とする。すなわち、当該個眼像中の仮欠陥位置はノイズとみなす。
【0071】
判定不能の個眼像が2個以上(N個とする)の場合、これらの判定不能の個眼像を番号順に昇順にソートする(ステップ6002)。そして、L=1,M=L+1(=2)と初期設定する(ステップ6003,6004)。ここで、L及びMはソート番号(1〜N)を表す。次に、ソートしたN個の判定不能の個眼像の中から、L番目の個眼像Iiと、M番目の個眼像Ijを選択する(ステップ6005,6006)。ここで、i,jは判定不能の個眼像の実際の番号(1〜6)を表す。具体的には、iは図5の縦方向の個眼像番号を表し、jは図5の横方向の個眼像番号を表す。
【0072】
次に、視差データ記憶部25の視差テーブル(図5)を参照して、M番目の個眼像Ijにおける各仮欠陥位置の座標について、L番目の個眼像Iiの座標とのずれ量(視差分)を補正する(ステップ6007)。すなわち、個眼像Iiの視点に個眼像Ijの視点を合わせる(視差補正)。例えば、個眼像IiがI、個眼像IjがIの場合、図5より、個眼像Ijの仮欠陥位置の座標(Xj,Yj)を、Xj’=Xj−F/D*dx,Yj’=Yjと補正する。これを個眼像Ijの全ての仮欠陥位置の座標について実施する。
【0073】
次に、L番目の個眼像Iiの全ての仮欠陥位置の座標とM番目の個眼像Ijのすべての仮欠陥位置の視差補正後の座標とを比較して、仮欠陥位置が同一のものがあるか判定する(ステップ6008)。そして、該個眼像IiとIjの間で仮欠陥位置が同一のものがあった場合、両者の欠陥度合いを加算し(ステップ6009)、その加算値が所定の閾値以上になるか判定して(ステップ6010)、所定の閾値以上の場合に、当該被検体は欠陥ありと判断して(ステップ6011)、処理を終了とする。なお、閾値としては、本実施例では欠陥度合いを0〜100で評価しているので、100に設定することが好ましい。
【0074】
例えば、図13(c)の例の場合、ステップ6005,ステップ6006で個眼像I,Iが選択される。そして、ステップ6007にて、個眼像Iの仮欠陥位置の座標(110,160)を視差補正した結果、(100,150)になったとする。ステップ6008で、個眼像Iの仮欠陥位置の座標(100,150),(101,150)と、個眼像Iの仮欠陥位置の視差補正後の座標(100,150)とを比較すると、座標(100,150)が同一であると判定される。図13(c)より、個眼像Iの当該仮欠陥位置の欠陥度合いは30、個眼像Iの仮欠陥位置の欠陥度合いは50であり、両者の加算値は30+50=80となる。すなわち、両者の欠陥度合いを足しても、まだ100以下であり、この場合は欠陥ありと断定しない方がよい。
【0075】
図15に戻り、L番目の個眼像IiとM番目の個眼像Ijとの間で仮欠陥位置が同一のものがなかった場合、また、同一のものがあっても両者の欠陥度合いの加算値が所定の閾値(例えば、100)未満の場合には、MがNまで来たか判定し(ステップ6012)、まだ来ない場合には、M=M+1として(ステップ6013)、ステップ6006に戻る。そして、MがNまで来たなら、LがN−1まで来たか判定し(ステップ6014)、まだ来ない場合には、次にL=L+1として(ステップ6015)、ステップ3004に戻る。その後、処理を繰り返して、LがN−1まで来たなら、当該被検体には欠陥なしと判断する(ステップ6016)。すなわち、N個の判定不能の個眼像の間で、仮欠陥位置が同一のものがなかった場合、同一のものがあっても両者の欠陥度合いの加算値が所定の閾値未満の場合、該仮欠陥位置はノイズとみなして、当該被検体は欠陥なしとする。
【0076】
なお、先に述べたように、実際には、視差補正を行っても、カメラの組み付け状態などによって、個眼像間の座標を画素レベルで一致される構成を実現することは困難である。このため、本実施例でも、判定不能の個眼像間での仮欠陥位置が同一かどうかは、適宜設定した許容範囲内で一致すれば、仮欠陥位置は、同一であるとすることが望ましい。また、m×m画素サイズのテンプレートマッングの場合には、判定不能の個眼像間での仮欠陥位置が同一かどうかの判定は、小領域同士の比較となる。この場合も、適宜設定した許容範囲内で小領域が一致すれば、仮欠陥位置(領域)は同一であるとすればよい。
【符号の説明】
【0077】
10 撮像素子
11 レンズアレイ
12 遮光壁
13 開口アレイ
14 撮像素子
15 基板
16 筐体
20 処理装置
21 画像キャプチャ部
22 画像補正部
23 欠陥補正部
231 個眼像欠陥判定部
232 統合判定部
24 正常データ記憶部
25 視差データ記憶部
30 出力装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開平8−7566号公報
【特許文献2】特開2008−249568号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイの複数のレンズのそれぞれにより略結像される被写体の個眼像の集合である複眼像を撮像する撮像素子とを備える撮像装置と、
前記撮像装置により被写体を撮影して得られる複眼像を処理して前記被検体の欠陥を判定する処理装置と、
からなることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記撮像装置により得られる複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ手段と、前記複数の個眼像に基づいて被検体の欠陥を判定する欠陥判定手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記処理装置は、前記画像キャプチャ手段で分離された複数の個眼像それぞれを歪み補正する画像補正手段を更に有し、前記欠陥判定手段は、前記歪み補正された複数の個眼像にもとづいて被検体の欠陥を判定することを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて欠陥判定を行う個眼像欠陥判定手段と、前記個眼像欠陥判定手段での複数の個眼像それぞれの欠陥判定結果をもとに被検体の欠陥を判定する統合判定手段とを有することを特徴とする請求項2もしくは3に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記個眼像欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて、欠陥あり、欠陥なし、判定不能のいずれかに判定し、
前記統合判定手段は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には判定不能の個眼像をもとに被検体の欠陥を判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記個眼像欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて、当該個眼像と正常個眼像との各画素あるいは各小領域ごとの差分値を求めて、前記差分値を評価値とし、各画素あるいは各小領域のすべての評価値が第1の閾値以下の場合には当該個眼像は欠陥なし、一つの評価値でも第2の閾値(ただし、第1の閾値<第2の閾値)以上の場合には当該個眼像は欠陥あり、これら以外の場合には判定不能と判定し、
前記統合判定手段は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には、判定不能の個眼像をもとに、判定不能の個眼像が一つの場合には被検体を欠陥なし、判定不能の個眼像が2以上の場合には、各個眼像を視差補正して、同一位置に欠陥があれば被検体を欠陥あり、同一位置に欠陥がなければ被検体を欠陥なしと判定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記個眼像欠陥判定手段は、複数の個眼像それぞれについて、当該個眼像と正常個眼像との各画素あるいは各小領域ごとの差分値を求め、前記差分値を当該画素あるいは小領域の像高に応じて補正した値を評価値とし、前記評価値を予め定めた0〜Nの複数の段階のいずれかの欠陥度合いに分類し、各画素あるいは各小領域のすべての欠陥度合いが段階0の場合には当該個眼像は欠陥なし、一つの欠陥度合いでも段階Nの場合には当該個眼像は欠陥あり、これら以外の場合には当該個眼像は判定不能と判定し、
前記統合判定手段は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には、判定不能の個眼像をもとに、判定不能の個眼像が一つの場合には被検体を欠陥なし、判定不能の個眼像が2以上の場合には、各個眼像を視差補正して、同一位置に欠陥がある場合、それらの欠陥度合いを加算して、加算結果が段階N以上の場合に被検体を欠陥あり、同一位置に欠陥がないか、欠陥があっても前記加算結果が段階N以下の場合には被検体を欠陥なしと判定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記被検体を照明する照明具を更に有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項9】
複数のレンズがアレイ配列されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイの複数のレンズのそれぞれにより略結像される被写体の個眼像の集合である複眼像を撮像する撮像素子とを備える撮像装置により、被検体を撮影して得られる複眼像を処理して前記被検体の欠陥を判定する欠陥検査処理方法であって、
前記撮像装置により得られる複眼像を複数の個眼像に分離する画像キャプチャ過程と、前記複数の個眼像に基づいて被検体の欠陥を判定する欠陥判定過程とを有することを特徴とする欠陥検査処理方法。
【請求項10】
前記画像キャプチャ過程で分離された複数の個眼像それぞれを歪み補正する画像補正過程を更に有し、前記欠陥判定過程は、前記歪み補正された複数の個眼像にもとづいて被検体の欠陥を判定することを特徴とする請求項9に記載の欠陥検査処理方法。
【請求項11】
前記欠陥判定過程は、複数の個眼像それぞれについて欠陥判定を行う個眼像欠陥判定過程と、前記個眼像欠陥判定過程での複数の個眼像それぞれの欠陥判定結果をもとに被検体の欠陥を判定する統合判定過程とからなることを特徴とする請求項9もしくは10に記載の欠陥検査処理方法。
【請求項12】
前記個眼像欠陥判定過程は、複数の個眼像それぞれについて、欠陥あり、欠陥なし、判定不能のいずれかに判定し、
前記統合判定過程は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には判定不能の個眼像をもとに被検体の欠陥を判定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の欠陥検査処理方法。
【請求項13】
前記個眼像欠陥判定過程は、複数の個眼像それぞれについて、当該個眼像と正常個眼像との各画素あるいは各小領域毎の差分値を求めて、前記差分値を評価値とし、各画素あるいは各小領域のすべての評価値が第1の閾値以下の場合には当該個眼像は欠陥なし、一つの評価値でも第2の閾値(ただし、第1の閾値<第2の閾値)以上の場合には当該個眼像は欠陥あり、これら以外の場合には判定不能と判定し、
前記統合判定過程は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には、判定不能の個眼像をもとに、判定不能の個眼像が一つ場合には被検体なし、判定不能の個眼像が2以上の場合には、各個眼像を視差補正して、同一位置に欠陥があれば被検体を欠陥あり、同一位置に欠陥がなければ被検体を欠陥なしと判定する、
ことを特徴とする請求項12に記載の欠陥検査処理方法。
【請求項14】
前記個眼像欠陥判定過程は、複数の個眼像それぞれについて、当該個眼像と正常個眼像との各画素あるいは各小領域ごとの差分値を求め、前記差分値を当該画素あるいは小領域の像高に応じて補正した値を評価値とし、前記評価値を予め定めた0〜Nの複数の段階のいずれかの欠陥度合いに分類し、各画素あるいは各小領域のすべての欠陥度合いが段階0の場合には当該個眼像は欠陥なし、一つの欠陥度合いでも段階Nの場合には当該個眼像は欠陥あり、これら以外の場合には当該個眼像は判定不能と判定し、
前記統合判定過程は、複数の個眼像すべてが欠陥なしの場合には被検体を欠陥なしと判定し、複数の個眼像の一つでも欠陥ありの場合には被検体を欠陥ありと判定し、これら以外の場合には、判定不能の個眼像をもとに、判定不能の個眼像が一つの場合には被検体を欠陥なし、判定不能の個眼像が2以上の場合には、各個眼像を視差補正して、同一位置に欠陥がある場合、それらの欠陥度合いを加算して、加算結果が段階N以上の場合に被検体を欠陥あり、同一位置に欠陥がないか、欠陥があっても前記加算結果が段階N以下の場合には被検体を欠陥なしと判定する、
ことを特徴とする請求項12に記載の欠陥検査処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−185149(P2012−185149A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240980(P2011−240980)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】