説明

欠陥検査装置

【課題】
(1)群欠陥判定の処理時間の短縮。
(2)レンズの収差による誤判定の抑制による、群欠陥の検出精度の改善。
(3)群判定のための条件設定の工数の削減。
(4)ハードウェア変更に対する条件設定の工数の削減。
(5)検査対象のサブピクセル形状の変更に対する汎用的に維持。
を実現した欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】 複数個のサブピクセルからなるピクセルが集合した検査対象の検査エリアを撮像した画像データを処理し、この処理により計算される特徴量から識別された前記サブピクセルの単独欠陥の密集態様に基づいて群欠陥を識別する欠陥検査装置において、
前記識別された単独欠陥の固有情報を抽出する単独欠陥固有情報抽出手段と、
抽出された前記単独欠陥の固有情報を、前記検査エリアにマッピングする単独欠陥情報マッピング手段と、
マッピングされた前記単独欠陥情報の密集態様を示す特徴量に基づいて群欠陥の分類処理を実行する特徴量マッチング手段と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のサブピクセルからなるピクセルが集合した検査対象の検査エリアを撮像した画像データを処理し、この処理により計算される特徴量から識別された前記サブピクセルの単独欠陥の密集態様に基づいて群欠陥を識別する欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等のパネル状の検査対象を、エリアセンサにより撮像した画像情報を用いて輝度欠陥(黒表示をした際に光ってはならない画素が光っているような欠陥)を検査する欠陥検査装置がある。
【0003】
図6は、エリアセンサによる欠陥検査装置の基本的システム構成を示す斜視図である。複数個のサブピクセルからなるピクセルがマトリックス状に集合したパネル状の液晶表示装置等の検査対象100の被検査エリアAは、レンズ200を介してエリアセンサ301を備えるカメラ300により撮像され、撮像された画像情報が画像処理装置400に渡される。
【0004】
パーソナルコンピュータ等からなる画像処理装置400は、画像入力ボード等を介して取り込んだ画像情報を数値的に処理し、計算された特徴量に基づいて被検査エリアのサブピクセルの単独欠陥、例えば、色表示(R点灯、G点灯、B点灯)をした際に点灯しなければならない画素が点灯しないような欠陥(黒点欠陥)を識別する。更に、単独欠陥が局所的に密集して形成される群欠陥を識別する。
【0005】
図7は、マトリックス型液晶表示素子のピクセル構成を示す平面図である。縦横に周期的に並んだピクセル(画素)が発色することにより表示を行う。ピクセルは、一般に赤
(以下、R)、緑(以下、G)、青(以下、B)の、3色のより細かい複数個のサブピクセル(副画素)で構成されている。
【0006】
ピクセルを構成するサブピクセル夫々の色の強弱を調整し、3色の組み合わせで様々な色を表現する。ハッチングで示すBのサブピクセルは、表示型液晶表示素子における1連結の単独欠陥(黒点)を示している。
【0007】
一般に、液晶表示素子における欠陥の良否判定は、人間が検査対象を観察した際の目立ち具合により判断される。図7に示すような1連結の単独欠陥の場合、人間が観察した際には、目立たないため、良品として判定する場合が多い。
【0008】
欠陥が局所的に密集する(群欠陥)場合には、その目立ち具合(群欠陥としての強度)により、不良品として判断される。
【0009】
図8は、同色の単独欠陥の密集による群欠陥の例を示すパターン図である。図8(A)は1連結のパターンであり、(A−1)に示すRの1連結、(A−2)に示すGの1連結、(A−3)に示すBの1連結の各パターンは、目立たないと判断される。
【0010】
図8(B)は同色の2連結のパターンであり、(B−1)に示すRの2連結、(B−2)に示すGの2連結、(B−3)に示すBの2連結の各パターンは、目立たないと判断される。このように、同色の単独欠陥では、1連結、2連結のパターンまでは目立たないと判断される。
【0011】
図8(C)は同色の3連結のパターンであり、(C−1)に示すRの3連結、(C−2)に示すGの3連結、(C−3)に示すBの3連結の各パターンは、目立つと判断される。
【0012】
このように、同色の単独欠陥では、1連結、2連結のパターンまでは目立たないが、3連結のパターンでは目立つと判断される。この点は、ディスプレイ関連の仕様書等にも、「3連結黒点はあってはならない」というようにしばしば記述されている。
【0013】
図9は、混色の単独欠陥の密集による群欠陥の例を示すパターン図である。図9(A)はGを含まないかまたは1個含む場合の混色パターンであり、(A−1)に示すRが2個でGが1個、(A−2)に示すRが2個でBが1個、(A−3)に示すBが2個でGが1個の各パターンでは、目立たないと判断される。
【0014】
図9(B)はGを2個含む場合の混色パターンであり、(B−1)に示すRが1個でGが2個、(B−2)に示すBが1個でGが2個、(B−3)に示す近接したBが1個でGが2個の各パターンでは、目立つと判断される。
目立つパターンと目立たないパターンは、人間の比視感度特性によって判断される。図9(B)のパターンはGが2個連結した部分を含むため、図9(A)のパターンに比べて目立つパターンになっている。
【0015】
図10は、画像処理装置400の具体的な構成例を示す機能ブロック図である。カメラ300が備えるCCD等によるエリアセンサ301で撮像された画像情報は、画像入力ボード401により画像処理装置400に取り込まれ、前処理手段402に渡される。
【0016】
前処理手段402では、カメラ欠陥補正手段402aにより、エリアセンサ自身の輝度抜け箇所の補正処理をした後、シェーディング補正手段402bにより、レンズ収差に起因するエリアセンサの周辺部の感度と中心部の感度差を均一化する処理を実行し、単独欠陥検出手段403に渡す。
【0017】
単独欠陥検出手段403では、輝点欠陥を目立たせるために微分系の強調フィルタ手段403aにより処理し、二値化手段403bにより、あらかじめ設定してある閾値よりも高いレベルの部分を“1”、低いレベルの部分を“0”として単独欠陥の候補を抽出する。
【0018】
抽出された単独欠陥候補の一つ一つについて、特徴量計算手段404cにより特徴量計算を実行する。特徴量とは、欠陥を判定するための数値であり、例えば、平均輝度、最大輝度、輝度体積、平均コントラスト、最大平均コントラスト等である。
【0019】
特徴量計算手段404cで計算された特徴量は、候補識別手段404dに出力され、この特徴量とあらかじめ設定してある閾値と比較して閾値を越える候補を単独欠陥として識別し、群欠陥判定手段404に渡す。
【0020】
群欠陥判定手段404では、まず位置情報マッピング手段404aにて、識別された単独欠陥のみを検査エリアにマッピングした画像を生成する。例えば、単独欠陥の領域を“1”、その他を“0”にした画像を生成する。
【0021】
この画像に対し、パターンマッチングフィルタ404bを実行する。識別したい群欠陥のパターンの数だけ、そのパターンに応じたフィルタにより強調する。パターン毎に群欠陥を抽出し、群識別手段404cにて、群欠陥の分類および強度判定を行う。最後に結果出力手段405にて検出結果を出力する。
【0022】
図11は、画像処理装置400の信号処理手順を示すフローチャートである。ステップS1で撮像画像が入力されると、ステップS2でカメラ欠陥の補正等の前処理を実行して単独欠陥検出のステップに進む。
【0023】
単独欠陥検出のステップS3で強調フィルタ処理を行ない、ステップS4で二値化処理を行い、ステップS5で特徴量の計算を行い、ステップS6で単独欠陥候補の識別処理を行い、群欠陥判定のステップに進む。
【0024】
群欠陥判定のステップS7で位置情報のマッピングを行ない、ステップS8でパターンマッチングフィルタを実行し、ステップS9で群欠陥を識別し、ステップS10で判定結果を出力する。
【0025】
特許文献1には、フラットパネルディスプレイ等の検査対象に表示させた検査パターンを撮像し、撮像により得られる画像データに基づいて欠陥の検出を行う欠陥検出装置が記載されている。
【0026】
【特許文献1】特開2005−156396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従来技術による群欠陥の識別手法では、次のような問題点がある。
(1)レンズ200の収差によるボケのため、欠陥の検出面積が変化する。このため画像をフィルタ処理することによるパターンマッチングでは、適切な群判定が実行できない。適切な群判定を実行するためには、画像上の位置に応じて、フィルタサイズを変更する必要がある。
【0028】
(2)膨大な数のマッチング用フィルタを用意しなければならない。更に、夫々のフィルタに対して閾値を設定する必要がある。これは処理時間が増大することだけでなく、設定のための莫大な工数を要する。
【0029】
(3)ハードウェア構成(検査対象、レンズ、エリアセンサ)を変更した場合、フィルタに対する閾値の設定変更のために莫大な工数を要する。
【0030】
以下、従来技術の問題点の詳細を説明する。
(1)レンズ収差に関して:
図12は、検査対象100とレンズ200とエリアセンサ301との配置関係を示す光学系である。検査対象100の中心付近の像の主光線B0は、レンズ200の光軸を通ってエリアセンサ301の中心付近に結像する。一方、検査対象100の周辺付近の像の主光線B1,B2はレンズ200の光軸と傾きθを持ってレンズ200に入射し、エリアセンサ301の周辺付近に結像する。
【0031】
このとき、一般的なレンズでは検査対象物1における欠陥の大きさが全面に渡って均一であっても、エリアセンサ301の像での欠陥の面積は、レンズ収差により周辺ではボケが生じ大きくなる。
【0032】
図13は、同一の輝度、同一面積の擬似欠陥が全面に分布している擬似欠陥チャートの平面図である。図14は、この擬似欠陥チャートを撮像した画像において、中央付近の高さにおける水平方向の検出面積の分布をプロットした特性図である。
【0033】
このように画像中心部と周辺部では、同一の形状の欠陥でも、レンズ収差によるボケのために検出される欠陥の面積が変化する。このため、画像をフィルタ処理することによるパターンマッチングでは適切な群判定が実行できず、誤判定を生じる。また、適切な群判定を実行するためには画像上の位置に応じてフィルタサイズを変更する必要がある。
【0034】
(2)パターンマッチング用フィルタに関して:
図15は、4×4サブピクセルの領域における群欠陥のパターン図である。図15(A)乃至(D)は、混色で3連結の群欠陥であるが、4種類のパターンを持つ。これを識別するためには、対称に変換した4つのフィルタによるマッチング処理を実行しなければならず、全てのパターンを考えると、非常に多くのフィルタを用意する必要がある。
【0035】
一般に、N×Nの領域のパターンマッチングを行う場合、用意するフィルタとしては、
2・(N2−1)−1
通りのフィルタを用意する必要があり、莫大な処理時間を要する。ここで、−1としているのは、N×N全ての領域がOFFのフィルタを処理する必要はないからである。
【0036】
また、夫々のマッチング用フィルタに対し、適切な閾値を設定する必要があり、これには莫大な工数を要する。これに加えて、(1)で述べたレンズ収差に対応して画像上の位置毎にマッチング用フィルタを設定する場合、現実的な工数での作業は不可能である。
【0037】
(3)汎用性に関して:
図6に示す撮像システム構成において、例えば、検査対象100を変更した場合、レンズ200として焦点距離、倍率の異なるものに変更した場合、あるいはエリアセンサ301の画素数を変更した場合には、検査対象とエリアセンサの画素比率が変更されることとなり、(1),(2)項で説明した閾値の設定変更がその都度必要となる。
【0038】
また、サブピクセルの形状が、例えば、矩形から三角形等に変更された場合、従来手法のパターンマッチングフィルタでは対応しきれない。
【0039】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、
(1)群欠陥判定の処理時間の短縮。
(2)レンズの収差による誤判定の抑制による、群欠陥の検出精度の改善。
(3)群判定のための条件設定の工数の削減。
(4)ハードウェア変更に対する条件設定の工数の削減。
(5)検査対象のサブピクセル形状の変更に対する汎用性の維持。
を実現した欠陥検査装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0040】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)複数個のサブピクセルからなるピクセルが集合した検査対象の検査エリアを撮像した画像データを処理し、この処理により計算される特徴量から識別された前記サブピクセルの単独欠陥の密集態様に基づいて群欠陥を識別する欠陥検査装置において、
前記識別された単独欠陥の固有情報を抽出する単独欠陥固有情報抽出手段と、
抽出された前記単独欠陥の固有情報を、前記検査エリアにマッピングする単独欠陥情報マッピング手段と、
マッピングされた前記単独欠陥情報の密集態様を示す特徴量に基づいて群欠陥の分類処理を実行する特徴量マッチング手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【0041】
(2)前記計算される単独欠陥の特徴量を、予め測定された補正データに基づき補正する特徴量補正手段を備える(1)に記載の欠陥検査装置。
【0042】
(3)前記特徴量マッチング手段で分類された群欠陥情報を取得し、所定の判定基準により群欠陥の度合いを示す群欠陥強度として出力する群欠陥強度判定手段を備えることを特徴とする(1)または(2)に記載の欠陥検査装置。
【0043】
(4)前記単独欠陥情報抽出手段は、識別された単独欠陥の色、単独欠陥の連結数、座標の少なくともいずれかを固有情報として抽出することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【0044】
(5)前記特徴量マッチング手段は、マッピングされた前記単独欠陥情報の、指定範囲内の面積率、指定範囲内の単独欠陥個数、指定範囲内の連結数総和、色、の少なくともいずれかを特徴量とし、各特徴量に設定される閾値により群欠陥の分類処理を実行することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【0045】
(6)前記特徴量マッチング手段は、前記単独欠陥の連結数及び色が群欠陥の条件を満たす判定起点を検索し、この判定起点を含むように判定範囲を移動させたとき最も群欠陥強度の高い範囲をその群欠陥範囲に選択することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、次のような効果が期待できる。
(1)本発明によれば、フィルタによるパターンマッチングのように、莫大な種類のフィルタを用意する必要はなく、限られた数の分類処理を行う仕組みとなっているため、群欠陥判定の処理時間が大幅に短縮できる。
【0047】
(2)本発明によれば、撮像された画像をそのまま使用するのではなく、レンズの収差を補正した特徴量を基本とする分類処理を行うため、レンズの収差による誤判定を抑制し、群欠陥に対する検出精度を改善できる。
【0048】
(3)本発明によれば、フィルタによるパターンマッチングのように、莫大な種類のフィルタを用意する必要はなく、限られた数の分類処理を行う仕組みとなっているため、群判定のための条件設定の工数を大幅に削減できる。
【0049】
(4)本発明によれば、フィルタによるパターンマッチングのように、ハードウェア変更に対して、それに対応するフィルタをその都度用意する必要はなく、限られた数の分類処理の閾値を設定するだけでよいので、条件設定に対する工数を大幅に削減できる。
【0050】
(5)本発明によれば、密集形態の特徴量を基本とした分類を行うため、サブピクセル形状の変更に対しても、それに対応するように、分類処理の閾値を変更すればよいので、サブピクセル形状の変更に対して装置の汎用性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用した欠陥検査装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。図10で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
図10の従来装置と比較した画像処理装置400の特徴部の第1は、単独欠陥検出手段403において、特徴量計算手段403cと候補識別手段403dの間に、特徴量補正手段403eを新設すると共に、この特徴量補正手段403eに補正データDを渡す補正データ生成手段406を画像処理装置400内に新設した点にある。
【0053】
この特徴量補正手段403eの新設に伴い、従来装置において前処理手段402に設けられていたシェーディング補正手段402bが省かれている。
【0054】
特徴部の第2は、単独欠陥検出手段403において、候補識別手段403dで識別された単独欠陥からその固有情報を抽出する、単独欠陥固有情報抽出手段403fを新設した点にある。
【0055】
特徴部の第3は、群欠陥判定手段404において、単独欠陥固有情報抽出手段403fにより抽出された単独欠陥の固有情報を検査対象100の検査エリアにマッピングする、単独欠陥マッピング手段404dを新設した点にある。
【0056】
特徴部の第4は、単独欠陥マッピング手段404dによって検査エリアにマッピングされた単独欠陥の密集態様を示す特徴量に基づいて、群欠陥の分類処理を実行する特徴量マッチング手段404eを新設した点にある。
【0057】
特徴部の第5は、特徴量マッチング手段404eで分類された群欠陥情報を取得し、所定の判定基準により群欠陥の度合いを示す群欠陥強度を出力して結果出力手段405に渡す、群欠陥強度判定手段404fを新設した点にある。
【0058】
図2は、本発明が適用された画像処理装置400の信号処理手順を示すフローチャートである。図11に示す従来装置のフローチャートとの相違点は、単独欠陥検出では、ステップS5の特徴量計算とステップS6候補識別の間にステップS51の特徴量補正が挿入された点、候補識別S6の後に単独欠陥固有情報抽出のステップS61が新設された点である。
【0059】
群欠陥判定では、従来のステップS7,S8,S9に代えて、ステップS71の単独欠陥マッピング、ステップS81の特徴量マッチング、ステップS91の群欠陥強度判定が新設された点である。
【0060】
以下、各特徴部の具体的な実施形態を説明する。特徴量補正手段403eは、図14で説明した、レンズ収差に起因する同一面積の欠陥に対するエリアセンサの周辺部と中央部での検出面積差を補正し、エリアセンサ全面の検出面積を常に中央部での検出面積に換算するものである。
【0061】
このため、オフライン処理により、図13に示す擬似欠陥チャートを撮像した画像データを単独欠陥検出手段403に入力し、特徴量計算手段403cで計算された擬似欠陥の特徴量Pを補正データ生成手段406に渡して、補正データDを生成し保持しておく。
【0062】
補正データ生成手段406は、特徴量計算手段403cから渡される、計算された擬似欠陥の特徴量毎に、エリアセンサ中央部を1としたときの比率を求める。その比率について、特徴量毎に、X方向の座標に対する多次多項式による近似式を、Y方向の各行につき夫々算出する。各行のY方向の座標と特徴量毎の各行の近似式の各項の係数をまとめた補正用データDを生成し、これを保持する。
【0063】
特徴量補正手段403eは、補正データ生成手段407で生成された補正データDを取得して、補正したい欠陥の座標の上下の行の近似式に欠陥のX方向座標を入力し、夫々エリアセンサ中央部に対する比率を算出する。更に、欠陥位置での対中央部比率を上下の行の比率の線形補間で算出する。
【0064】
次に、対象の欠陥の特徴量を算出した対中央部比率で除算することで、エリアセンサ中央部位置にその欠陥が存在すると仮定した場合の特徴量を算出する。特徴量毎に、対中央部比率の算出と面内補正特徴量の算出を繰り返し実行する。
【0065】
このような特徴量補正により、レンズ収差に起因する欠陥の面積検出精度低下の問題が解消されるので、従来装置において前処理手段402に設けられていたシェーディング補正手段402bが省くことができる。
【0066】
単独欠陥の密集形態を示す特徴量を基本としたマッチングによる群欠陥の分類判定の指標(群欠陥の分類条件)には、人間が観察した場合の目立ち具合と相関のある特徴量を使用する。
【0067】
このため、第1ステップとして単独欠陥固有情報抽出手段403fでは、候補識別手段403dで識別された単独欠陥の候補から、群欠陥の分類判定に有効な固有情報を抽出する。
【0068】
単独欠陥の固有情報としては、
(1)色情報(個々の単独欠陥のR、G、Bの情報であり、G,R,Bの順に目立つ)。
(2)連結数(個々の単独欠陥のサブピクセル数であり、多いほど目立つ)。連結数は、レンズの収差を補正した特徴量を元に判定される。
(3)座標情報
等である。
【0069】
単独欠陥情報マッピング手段404dは、単独欠陥固有情報抽出手段403fで抽出された単独欠陥の固有情報を、検査対象100の検査エリアの座標位置(サブピクセル)にマッピングする。
【0070】
図3は、検査エリアのサブピクセルにマッピングされた単独欠陥のパターンの例を示す平面図である。単独欠陥として識別されたサブピクセルには、色情報と連結数情報がマッピングされている。
【0071】
このようにマッピングされた単独欠陥のパターンから、マッチング手法で群欠陥を識別ために、特徴量マッチング手段404eは、単独欠陥の密集形態を示す群欠陥の特徴量を使用する。
【0072】
群欠陥の特徴量としては、
(1)判定範囲面積率(指定範囲内に占める群欠陥領域の面積の割合であり、高いほど目立つ)。
(2)単独欠陥個数数(黒点数、指定範囲内にある全ての単独欠陥の個数であり、多いほど目立つ)。
(3)連結数総和(指定範囲内にある全ての単独欠陥の連結数の総和であり、大きいほど目立つ)。
等である。
【0073】
特徴量マッチング手段404eでは、群欠陥の分類処理を実行する。分類処理は、分類したい群欠陥のパターンに応じて複数個用意する。各分類処理は、前記の群欠陥分類判定のための特徴量夫々について閾値を持っており、全ての条件を満たす場合に、該当する群欠陥レベルを設定する。
【0074】
具体的には、各分類処理では、まず、群欠陥分類判定の特徴量の内、連結数、色の条件を満たす単独欠陥=判定起点を検索する。次に、図3に示すように、その判定起点を含むように、判定範囲を移動させながら、それぞれの判定範囲に含まれる全ての単独欠陥に対し、前記の群欠陥分類判定の特徴量を算出し、条件を満たす領域内の全ての単独欠陥を1組の群欠陥として、該当する群欠陥レベルを設定する。
【0075】
図3のように判定範囲を移動させていくと、同じ群欠陥の一部を重複して検出する場合も生じる。この場合には、群欠陥レベルの最も高い組をその位置での群欠陥として選択する。
【0076】
図4は、同じ群欠陥の一部を重複して検出する場合の群欠陥のパターン遷移図である。中央のGの3連結を共通としてRの2連結及びBの1連結が密着した群欠陥では、図4
(A)に示すGの3連結にRの2連結が密着した群欠陥及び(C)に示すGの3連結にBの1連結が密着した群欠陥は選択せず、(B)に示す全ての単独欠陥が密着して形成された群欠陥を選択する。
【0077】
分類処理は、群欠陥レベルが高いものから順番に実行し、一度群欠陥に含まれた単独欠陥(黒点)は、判定起点としない処理を実行すれば、群欠陥の分類処理時間を短縮することができる。
【0078】
群欠陥強度判定手段404fでは、群欠陥レベルに対する閾値をもとに、各群欠陥の強度(良品、不良品)を判定し判定結果を結果出力手段405に渡す。
【0079】
図5は、群欠陥強度判定手段404fによる判定アルゴリズムの例を示すテーブルである。
(1)分類Aの特徴量は、1連結及び2連結であり、群欠陥強度はレベル1で目立たないので、良品の判定となる。
【0080】
(2)分類Bの特徴量は、3連結で緑色なしであり、群欠陥強度はレベル2で目立たないため、良品の判定となる。
【0081】
(3)分類Cの特徴量は、3連結で緑色ありであり、群欠陥強度はレベル3で目立つため、不良品の判定となる。
【0082】
(4)分類Dの特徴量は、面積率50%以上であり、群欠陥強度はレベル4で目立つため、不良品の判定となる。
【0083】
(5)分類Eの特徴量は、緑色の3連結であり、群欠陥強度はレベル5で目立つため、不良品の判定となる。
【0084】
実施形態では、検査対象として、矩形のサブピクセルを有する液晶表示素子を例示したが、規則的なパターンの形成された検査対象であれば、矩形に限らず、三角形のサブピクセル等にも対応することができる。
【0085】
これは、従来のフィルタリング処理とは異なり、本発明では密集形態を示す特徴量に基づいて群欠陥を識別している理由によるものである。これにより、検査対象のサブピクセル形状の変更に対する装置の汎用性を維持することが可能となる。
【0086】
実施形態では、2次元に光電変換素子が配置されたエリアセンサ301を用いて説明したが、光電変換素子が1次元(直線上)に配置されたラインセンサを用いた欠陥検査装置に対しても適用可能である。
【0087】
検査対象100としては、液晶表示素子を例示したが、欠陥と同程度の空間周波数の規則的なパターンの形成された検査対象であれば、本発明が適用可能である。例えば、TFTが形成された液晶パネル用の基板、カラーフィルタの形成された液晶用のガラス、PDP(プラズマディスプレイパネル)用のガラスやセル、ICパターンが形成されたシリコンウェハ等にも適用可能である。
【0088】
実施形態では、エリアセンサにより検査対象100を撮像する場合を示したが、図6における検査対象100に代えて参照光源を設置し、エリアセンサ301として検査対象のエリアセンサを設置することにより、エリアセンサ自体の群欠陥の検査を実施することも可能である。検査対象とするエリアセンサとしては、CCD、C−MOSイメージセンサ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明を適用した欠陥検査装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明が適用された画像処理装置の信号処理手順を示すフローチャートである。
【図3】検査エリアのサブピクセルにマッピングされた単独欠陥のパターンを示す平面図である。
【図4】群欠陥の一部を重複して検出する場合の群欠陥のパターン遷移図である。
【図5】群欠陥強度判定手段による判定アルゴリズムの例を示すテーブルである。
【図6】エリアセンサによる欠陥検査装置の基本的システム構成を示す斜視図である。
【図7】マトリックス型液晶表示素子のピクセル構成を示す平面図である。
【図8】同色の単独欠陥の密集による群欠陥の例を示すパターン図である。
【図9】混色の単独欠陥の密集による群欠陥の例を示すパターン図である。
【図10】画像処理装置の具体的な構成例を示す機能ブロック図である。
【図11】画像処理装置の信号処理手順を示すフローチャートである。
【図12】検査対象とレンズとエリアセンサとの配置関係を示す光学系である。
【図13】擬似欠陥チャートの平面図である。
【図14】擬似欠陥チャートを撮像した画像において、中央付近の高さにおける水平方向の検出面積の分布をプロットした特性図である。
【図15】4×4サブピクセルの領域における群欠陥のパターン図である。
【符号の説明】
【0090】
200 レンズ
300 カメラ
301 エリアセンサ
400 画像処理装置
401 画像入力ボード
402 前処理手段
402a カメラ欠陥補正手段
403 単独欠陥検出手段
403a 強調フィルタ手段
403b 二値化手段
403c 特徴量計算手段
403d 候補識別手段
403e 特徴量補正手段
403f 単独欠陥固有情報抽出手段
404 群欠陥判定手段
404d 単独欠陥情報マッピング手段
404e 特徴量マッチング手段
404f 群欠陥強度判定手段
405 結果出力手段
406 補正データ生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のサブピクセルからなるピクセルが集合した検査対象の検査エリアを撮像した画像データを処理し、この処理により計算される特徴量から識別された前記サブピクセルの単独欠陥の密集態様に基づいて群欠陥を識別する欠陥検査装置において、
前記識別された単独欠陥の固有情報を抽出する単独欠陥固有情報抽出手段と、
抽出された前記単独欠陥の固有情報を、前記検査エリアにマッピングする単独欠陥情報マッピング手段と、
マッピングされた前記単独欠陥情報の密集態様を示す特徴量に基づいて群欠陥の分類処理を実行する特徴量マッチング手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記計算される単独欠陥の特徴量を、予め測定された補正データに基づき補正する特徴量補正手段を備える請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記特徴量マッチング手段で分類された群欠陥情報を取得し、所定の判定基準により群欠陥の度合いを示す群欠陥強度として出力する群欠陥強度判定手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記単独欠陥情報抽出手段は、識別された単独欠陥の色、単独欠陥の連結数、座標の少なくともいずれかを固有情報として抽出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記特徴量マッチング手段は、マッピングされた前記単独欠陥情報の、指定範囲内の面積率、指定範囲内の単独欠陥個数、指定範囲内の連結数総和、色、の少なくともいずれかを特徴量とし、各特徴量に設定される閾値により群欠陥の分類処理を実行することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記特徴量マッチング手段は、前記単独欠陥の連結数及び色が群欠陥の条件を満たす判定起点を検索し、この判定起点を含むように判定範囲を移動させたとき最も群欠陥強度の高い範囲をその群欠陥範囲に選択することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−96302(P2008−96302A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278902(P2006−278902)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】