説明

欠陥検査装置

【課題】干渉光学系を用いて検査対象の欠陥を検出する場合に、高精度で欠陥検出することができる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】欠陥検査装置10は、予め定めたパターンが形成された透光性を有する検査対象物に照明光を照射する光源14、照明光が照射された検査対象物を透過した光を結像する、対物レンズ15及び結像レンズ17からなるレンズ群、レンズ群を透過する光を二つの光に分割するハーフミラー18、分割された二つの光が、予め定めた方向に横ずれするように偏向させる偏向器20A、20B、偏向された二つの光の位相をシフトさせる位相シフタ28、位相シフトされた二つの光を合波するハーフミラー30、合波された光の光学像を撮像する撮像素子34を備え、結像レンズ17を透過した二つの光が平行で且つ二つの光の主軸が平行となるように、対物レンズ15及び結像レンズ17が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置に係り、特に、干渉光学系を用いた欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィのロードマップ(例えばSEMATECH Lithography Forum 2008)によると、次々世代2016年の回路線幅HPは16−22nmと想定されている。その世代の露光装置・方式は、従来の延長である縮小投影露光方式と、新規にナノインプリント(NIL:Nano−Imprint Lithography)方式が検討されている。
【0003】
前者の光学方式においては、現行使用されている波長193nmを発振するArFレーザを光源とした露光では分解能が不足であるため、液浸法のダブルパターニングや波長13.5nmのEUV光源が必要で、これらの研究・開発が急ピッチで進められている。液浸ダブルパターニング法は、2回露光によるスループット低下とコストアップが課題である。EUV光源は、ArFレーザより一桁以上も波長が短く、その光源と光学系の実用化研究は、困難度が極めて高い。
【0004】
それに対し、近年、ナノスケールの凹凸パターンが形成されたナノインプリントモールド(金型)を樹脂薄膜が塗布された基板に押し当てて、樹脂薄膜に凹凸パターンを転写する成形加工技術であるナノインプリント技術を半導体デバイスの製造技術に利用することが行われている。
【0005】
この方法は、フォトリソグラフィ技術等と比較して、簡便且つ低コストでナノスケールの加工が可能である。
【0006】
従来の露光マスクとナノインプリントモールドとの間には、光学的に、以下に示す2つの大きな相違点がある。
【0007】
(1)欠陥サイズの微細化(等倍光学系の影響)
【0008】
従来の半導体露光は4倍の縮小光学系を組んでいるのに対し、ナノインプリントにおいては等倍のモールドを用いる。従って、露光マスクの欠陥サイズが、半導体製品の欠陥サイズの4倍で数10nm〜100nmであるのに対し、ナノインプリントモールドの欠陥サイズは、半導体の欠陥サイズと等しい10nm程度に抑える必要がある。この欠陥サイズは、光の波長(DUV光/遠紫外線のArFレーザで、193nm)に対して1桁以上も小さい。
【0009】
(2)測定サンプルの光学物性
【0010】
露光マスクは、透明な石英基板上に金属(主にCr)にてパターンを作製している。Crは不透明かつ金属光沢を持つため、サンプルに照射された光は反射・散乱と吸収とを受け、透過光・反射光とも光量が大きく変化する。従って、欠陥の有無を、直接、光の明暗として検出することができる。一方、ナノインプリントモールドは石英基板自身の凹凸によりパターンを作成しているため、欠陥は、透明体の微小な凹凸の差に過ぎない。このため、ナノインプリントモールドにおいては、欠陥が存在しても微小な位相ずれが生じるだけで、欠陥の有無に拘わらず透過する光の強度は同等となる(以下このような物体を「位相物体」と呼ぶ)。
【0011】
これらいずれの相違点も、ナノインプリントモールドの欠陥検査を難しくしている。
【0012】
透明材料(位相物体)の凹凸を検出する方法としては、例えば特許文献1に記載されたような干渉顕微鏡による方法が考えられる。
【0013】
特許文献1には、干渉顕微鏡により、パターンの無欠陥部分を光学的に消去して欠陥部分を光学的に抽出することにより検出する装置が開示されている。
【0014】
また、非特許文献1には、散乱光成分と照明光をπ−Δの位相差で干渉させ、散乱光強度を強める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−327557号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】“第7・光の鉛筆”、25節、鶴田匡夫
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図12には、特許文献1に記載されたのと同様の干渉光学系を備えた欠陥検査装置100を示した。このような欠陥検査装置100でナノインプリントモールド12の欠陥を検出する場合について説明する。
【0018】
図12に示すように、欠陥検査装置100は、視野分割する干渉顕微鏡であり、ナノインプリントモールド12へ平行光の照明光を照射する光源14と、ナノインプリントモールド12を透過した光を集光する結像レンズ17と、結像レンズ17からの光を2方向に分離するハーフミラー18と、ハーフミラー18を透過した光を偏向する偏向器20Aと、偏向器20Aにより偏向された光を所定方向へ反射させるミラー22と、位相を補償するための位相補償板24と、ハーフミラー18を反射した光を偏向する偏向器20Bと、偏向器20Bにより偏向された光を所定方向へ反射するミラー26と、ミラー26からの光の位相をシフトさせる位相シフタ28と、位相シフタ28からの光を透過させると共に、位相補償板24からの光を反射させることにより両者を合波するハーフミラー30と、ハーフミラー30により合波された光による光学像を撮像する撮像素子34と、を含んで構成されている。
【0019】
ナノインプリントモールド12を透過した光のうち、ナノインプリントモールド12に形成されたパターンによって散乱した散乱光L1は、結像レンズ17を透過してハーフミラー18に入射する。ハーフミラー18に入射した散乱光L1は、ハーフミラー18を透過する散乱光L11とハーフミラー18により反射する散乱光L12に分離される。なお、図12においては、ナノインプリントモールド12を透過した光のうち、散乱光L1のみを示している。
【0020】
ハーフミラー18を透過した散乱光L11は、偏向器20Aを透過し、ミラー22によって位相補償板24の方向に反射される。
【0021】
位相補償板24は、散乱光L11と散乱光L12との相対的な位相差を調整する機能、すなわち散乱光L11の光路長と散乱光L12の光路長が同一となるように調整する機能を有する。位相補償板24を透過した散乱光L11は、ハーフミラー30に入射する。
【0022】
一方、ハーフミラー18を反射した散乱光L12は、偏向器20Bを透過し、ミラー26によって位相シフタ28の方向に反射される。
【0023】
位相シフタ28は、くさび状のプリズム28A、28Bとで構成され、プリズム28Aを図中矢印P方向にシフトさせることにより、そのシフト量に応じて散乱光L11と散乱光L12の光路差、すなわち位相シフト量を調整することができる。
【0024】
位相シフタ28からの光と位相補償板24からの光とは、ハーフミラー30によって合波される。合波された光は、結像レンズ32によって撮像素子34上に結像される。
【0025】
このような構成の欠陥検査装置10は、視野分割機能を有しているので、撮像素子34上の一つの像点と共役な物点を2つ形成できる。具体的には、偏向器20A、20Bを光軸に対して所定角度θ分各々逆方向に傾けると、散乱光L11、L12を撮像素子34の結像面と平行な方向(矢印P方向)に遠ざけるように平行シフトさせることができる。従って、偏向器20A、20Bを所定角度θ分傾けることにより、ナノインプリントモールド12上の矢印P方向に距離Dだけ離間した2つの物点P1、P2のうち物点P1からの光である散乱光L11による視野像と物点P2からの光である散乱光L12による視野像とを干渉させた干渉像を、撮像素子34上に結像させることができる。
【0026】
このように、距離Dに応じた所定角度θだけ偏向器20A、20Bを傾けることにより、ナノインプリントモールド12上の離間した2物点からの光を干渉させて撮像素子34上に結像させることができる。
【0027】
一方、図13に示すように、ナノインプリントモールド12を透過した光のうち、照明光L2は、散乱光L1と同様に、結像レンズ17を透過してハーフミラー18に入射する。ハーフミラー18に入射した照明光L2は、ハーフミラー18を透過する照明光L21とハーフミラー18により反射する照明光L22に分離される。なお、図13においては、ナノインプリントモールド12を透過した光のうち、照明光L2のみを示している。
【0028】
照明光L2についても散乱光L1と同様に、偏光器20A、20Bによって照明光L21、L22が平行シフトされて撮像素子34に入射するが、図13に示すように、照明光L21、L22の波面は球面波L21A、L22Bとなるため、これらが平行シフトして干渉すると、撮像素子34で撮像された画像に干渉縞が発生してしまう。この干渉縞は、照明光の信号強度SBの変動であり、光量変動ノイズとなるため、散乱光L1の検出、すなわち欠陥の検出が困難になってしまう。
【0029】
また、図14には、欠陥検査装置100と異なる干渉光学系を備えた欠陥検査装置101を示した。同図に示すように、欠陥検査装置101は、ハーフミラー18が偏向器を兼用すると共に、ミラー22が位相シフタを兼用している。その他の構成は、欠陥検査装置100と同様である。
【0030】
ハーフミラー18は、前述した偏向器20A、20Bと同等の機能を有し、偏向の中心点Cを中心にして回転させることにより、分離した二つの光を図中矢印P方向に横ずらしさせることができる。
【0031】
また、ミラー22は、前述した位相シフタ28と同等の機能を有し、ミラー22を図中矢印P方向と直交する方向へ移動させることにより、分離した二つの光の位相差を調整することができる。
【0032】
この欠陥検査装置101においても、欠陥検査装置100と同様に、散乱光L11と散乱光L12とを干渉させた干渉像を、撮像素子34上に結像させることができる。
【0033】
一方、図14に示すように、照明光L2は、散乱光L1と同様に、ハーフミラー18によって二つの照明光L21、L22に分離されると共に、図中矢印P方向に横ずらしされる。
【0034】
しかしながら、図14に示すように、結像レンズ17を透過した後の照明光L21、L22は、ハーフミラー18によって偏向されたことにより平行ではなくなってしまう。このため、照明光L21、L22が干渉すると、その波面L21A、L22Aが傾くため、欠陥検査装置100の場合と同様に照明光の信号強度SBが変動し、撮像素子34で撮像された画像に干渉縞が発生してしまい、欠陥の検出が困難となってしまう。
【0035】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、干渉光学系を用いて検査対象の欠陥を検出する場合に、高精度で欠陥検出することができる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、予め定めたパターンが形成された透光性を有する検査対象物に、照明光を照射する光照射手段と、前記照明光が照射された前記検査対象物を透過した光を結像する、対物レンズ及び結像レンズからなるレンズ群と、前記レンズ群を透過する光を二つの光に分割する光分割手段と、分割された二つの光が、予め定めた方向に横ずれするように前記二つの光の少なくとも一方を偏向させる偏向手段と、前記偏向手段により偏向された前記二つの光の少なくとも一方の光の位相をシフトさせる位相シフト手段と、前記位相シフト手段により位相シフトされた前記二つの光を合波する合波手段と、前記合波手段により合波された光の光学像を撮像する撮像手段と、を備え、前記結像レンズを透過した前記二つの光が平行で且つ前記二つの光の主軸が平行となるように、前記対物レンズ及び前記結像レンズが配置されたことを特徴とする。
【0037】
この発明によれば、結像レンズを透過した二つの光が平行で且つ二つの光の主軸が平行となるように、対物レンズ及び結像レンズが配置されているので、二つの光が干渉しても撮像した画像に干渉縞が発生せず、高精度で欠陥を検出することができる。
【0038】
なお、請求項2に記載したように、前記対物レンズの後側焦点位置と前記結像レンズの前側焦点位置とが一致するように、前記対物レンズ及び前記結像レンズが配置された構成としてもよい。
【0039】
また、請求項3に記載したように、前記結像レンズは、前記合波手段と前記撮像手段との間に設けられ、前記光分割手段は、前記対物レンズを透過した光の一部を透過させると共にその他の光を反射させるハーフミラーであり且つ前記偏向手段と兼用され、前記ハーフミラーの偏向の中心点が、前記対物レンズの後側焦点位置及び前記結像レンズの前側焦点位置となるように、前記対物レンズ、前記結像レンズ、及び前記ハーフミラーが配置された構成としてもよい。
【0040】
また、請求項4に記載したように、前記対物レンズと前記光分割手段との間の光路上にリレーレンズが設けられ、前記偏向手段が、前記ハーフミラーを透過した光を前記合波手段の方へ反射させるミラーと兼用され、ミラーの偏向の中心点が、前記対物レンズの後側焦点位置及び前記結像レンズの前側焦点位置となるように、前記対物レンズ、前記結像レンズ、及び前記ミラーが配置された構成としてもよい。
【0041】
また、請求項5に記載したように、前記パターンに対応したフーリエ変換パターンの光学像が形成されるフーリエ変換面に、前記フーリエ変換パターンの光学像をカットするマスク手段が設けられた構成としてもよい。
【0042】
また、請求項6に記載したように、前記結像レンズは、前記対物レンズと前記光分割手段との間に設けられた構成としてもよい。
【0043】
また、請求項7に記載したように、前記光照射手段は、ナノサイズの予め定めたパターンが形成された透光性を有するナノインプリントモールドに、前記ナノサイズより大きい波長の照明光を照射し、前記位相シフト手段は、前記偏向手段により偏向された前記二つの光の位相差がπ−Δ(−90°<Δ<90°、Δ;バイアス位相)となるように、前記二つの光の少なくとも一方の光の位相をシフトさせる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、干渉光学系を用いて検査対象の欠陥を検出する場合に、高精度で欠陥検出することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態に係る欠陥検査装置の構成図である。
【図2】第1実施形態に係る欠陥検査装置の制御系のブロック図である。
【図3】孤立欠陥の検出について説明するための図である。
【図4】孤立欠陥を撮像した画像を示す図である。
【図5】模擬欠陥のコントラスト、バックグラウンド光のコントラストの測定結果を示すグラフである。
【図6】孤立欠陥を撮像した画像を示す図である。
【図7】隣接するセルの画像を干渉させてセルの欠陥を検出する場合について説明するための図である。
【図8】隣接するダイの画像を干渉させてダイの欠陥を検出する場合について説明するための図である。
【図9】第2実施形態に係る欠陥検査装置の構成図である。
【図10】第2実施形態に係る欠陥検査装置の構成図である。
【図11】第3実施形態に係る欠陥検査装置の構成図である。
【図12】従来例に係る欠陥検査装置の構成図である。
【図13】従来例に係る欠陥検査装置の構成図である。
【図14】従来例に係る欠陥検査装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0047】
(第1実施形態)
【0048】
図1には、本実施形態に係る欠陥検査装置10を示した。欠陥検査装置10は、ナノサイズの予め定めたパターンが形成されたナノインプリントモールド12の欠陥を検査するための装置である。なお、前述した欠陥検査装置100と同一部分には同一符号を付す。
【0049】
ナノインプリントモールド12は、例えば石英等の透光性を有する材料を用いて所謂ナノインプリントリソグラフィ(NIL)によって作製され、一方の面12Aにパターン幅やパターンピッチが数nm〜数十nmの予め定めたパターンが形成される。
【0050】
図1に示すように、欠陥検査装置10は、視野分割する干渉顕微鏡であり、ナノインプリントモールド12へ平行光の照明光を照射する光源14と、ナノインプリントモールド12を透過した光を結像させる対物レンズ15と、対物レンズ15を透過した光を結像させる結像レンズ17と、結像レンズ17を透過した散乱光L1を散乱光L11、L12に、照明光L2を照明光L21、L22に各々分離するハーフミラー18と、ハーフミラー18を透過した光を偏向する偏向器20Aと、偏向器20Aにより偏向された光を所定方向へ反射させるミラー22と、位相を補償するための位相補償板24と、ハーフミラー18を反射した光を偏向する偏向器20Bと、偏向器20Bにより偏向された光を所定方向へ反射するミラー26と、ミラー26からの光の位相をシフトさせる位相シフタ28と、位相シフタ28からの光を透過させると共に、位相補償板24からの光を反射させることにより両者を合波するハーフミラー30と、ハーフミラー30からの光を撮像する撮像素子34と、を含んで構成されている。
【0051】
ナノインプリントモールド12を透過した光のうち、散乱光L1は、対物レンズ15により平行光とされ、照明光L2は一度集光されて拡散し結像レンズ17に入射する。
【0052】
結像レンズ17を透過した光は、ハーフミラー18に入射する。ハーフミラー18に入射した光のうち、散乱光L1は、ハーフミラー18を透過する散乱光L11とハーフミラー18により反射する散乱光L12に分離され、照明光L2は、ハーフミラー18を透過する照明光L21とハーフミラー18により反射する照明光L22に分離される。
【0053】
ハーフミラー18を透過した散乱光L11、照明光L21は、偏向器20Aを透過し、ミラー22によって位相補償板24の方向に反射される。
【0054】
位相補償板24は、散乱光L11と散乱光L12、照明光L21と照明光L22の相対的な位相差を調整する機能、すなわち散乱光L11と散乱光L12の光路長、照明光L21と照明光L22の光路長が各々同一となるように調整する機能を有する。位相補償板24を透過した散乱光L11、照明光L21は、ハーフミラー30に入射する。
【0055】
一方、ハーフミラー18を反射した散乱光L12、照明光L22は、偏向器20Bを透過し、ミラー26によって位相シフタ28の方向に反射される。
【0056】
位相シフタ28は、くさび状のプリズム28A、28Bとで構成され、プリズム28Aを図中矢印P方向にシフトさせることにより、そのシフト量に応じて散乱光L11と散乱光L12の光路差、照明光L21と照明光L22の光路差、すなわち位相シフト量を各々調整することができる。
【0057】
位相シフタ28からの光と位相補償板24からの光とは、ハーフミラー30によって合波される。合波された光は、撮像素子34上に結像される。
【0058】
ここで、対物レンズ15の後側焦点位置と、結像レンズ17の前側焦点位置とが、図1における点Qの位置で一致するように、対物レンズ15と結像レンズ17とが配置されている。これにより、欠陥検査装置10は、所謂両側テレセントリック光学系を構成するため、結像レンズ17を透過した照明光L2のうち、ハーフミラー18を透過した照明光L21とその主軸L21B、ハーフミラー18を反射した照明光L22とその主軸L22Bとが平行になると共に、ハーフミラー30を透過、反射した照明光L21、L22と、これらの主軸とが全て平行となる。
【0059】
従って、図1に示すように、照明光L21、L22が干渉しても撮像した画像に干渉縞が発生せず、照明光の信号強度SBが一定となるため、後述するような欠陥を検出する際に、高精度で検出することができる。
【0060】
このような構成の欠陥検査装置10は、視野分割機能を有しているので、撮像素子34上の一つの像点と共役な物点を2つ形成できる。具体的には、偏向器20A、20Bを光軸に対して所定角度θ分各々逆方向に傾けると、分離した二つの光を撮像素子34の結像面と平行な方向(矢印P方向)に遠ざけるように平行シフトさせることができる。従って、偏向器20A、20Bを所定角度θ分傾けることにより、ナノインプリントモールド12上の矢印P方向に距離Dだけ離間した2つの物点P1、P2のうち物点P1からの光による視野像と物点P2からの光による視野像とを干渉させた干渉画像を、撮像素子34上に結像させることができる。
【0061】
このように、距離Dに応じた所定角度θだけ偏向器20A、20Bを傾けることにより、ナノインプリントモールド12上の離間した2物点からの光を干渉させて撮像素子34上に結像させることができる。
【0062】
図2には、欠陥検査装置10の制御系のブロック図を示した。同図に示すように、欠陥検査装置10は、制御部40を備えている。制御部40には、偏向器20Aを駆動する駆動部42A、偏向器20Bを駆動する駆動部42B、位相シフタ28のプリズム28Aを駆動する駆動部44、撮像素子34、及びメモリ46が接続されている。
【0063】
次に、欠陥検査装置10での孤立欠陥の検出について、電磁場光学シミュレーションによってシミュレーションした結果について説明する。
【0064】
本シミュレーションでは、図3に示すように、一例としてナノインプリントモールド12の平面領域50上に存在する縦横300nm、高さ200nmの直方体形状の孤立欠陥としての突起部52を検出する場合についてシミュレーションした。
【0065】
ここでは、物点P1が突起部52、物点P2が突起部52から距離D離間した平面領域50上であり、偏向器20A、20Bを距離Dに対応した角度θだけ逆方向に傾けることにより、突起部52からの光における画像と、平面領域50からの光における画像と、を干渉させた干渉画像がどのようになるかを、位相シフタ28によって分離した二つの光の位相差φ=π−Δを変えてシミュレーションした場合について説明する。なお、Δは位相シフト量(バイアス位相)である。また、照明光の波長は一例として638nmである。
【0066】
図4には、バックグラウンド光無しの場合及びバックグラウンド光有りの場合の各々について、位相差φ=0°(Δ=π、Δ;バイアス位相)、φ=π−60°(Δ=60°)、φ=π−30°(Δ=30°)、φ=π(Δ=0°)とした場合における干渉画像のシミュレーション結果を示した。なお、バックグラウンド光は、光学部材の欠陥や汚れ・傷・ゴミ等に起因する散乱光、鏡筒およびホルダ等からの迷光や暗電流、ノイズ等によって発生する光である。
【0067】
バックグラウンド光無しの場合とは、ナノインプリントモールド12や他の光学部材の欠陥や汚れ等によるバックグラウンド光がない理想下における場合である。
【0068】
また、バックグラウンド光有りの場合は、その光量を0.05とした。この値は、位相差φ=0°の場合、すなわち分離した二つの光を干渉させない明視野画像の光量を1とした場合における値である。
【0069】
そして、位相差φ=0°の明視野画像の場合、バックグラウンド光無しの場合も有りの場合も、突起部52を検出することはできない。そして、位相差φ=πの場合は、バックグラウンド光無しの理想状態の場合には、位相がπずれた状態で分離した二つの光の画像が干渉されるので、両画像の同じ部分の画像が打ち消され、両画像の異なる部分、すなわち突起部52の部分のみが明るくなる。このため、コントラストは1となり極めて高くなるが、光量はサイズの6乗に比例するため、信号光量は非常に小さくなる。
【0070】
しかしながら、実際には、光学部材の欠陥や汚れ・傷・ゴミ等に起因するバックグラウンド光が存在するのが通常である。このため、図4に示すように、バックグラウンド光有りの場合におけるφ=πの場合は、バックグラウンド光の影響によって、コントラストは0.065と低くなり、突起部52を検出するのは困難である。
【0071】
これに対し、図4に示すように、バックグラウンド光有りの場合でも、φ=π−30°、π−60°の場合は、φ=0°、πの場合と比較してコントラストが向上し、突起部52を検出可能となる。このように、分離した二つの光の位相差φを、π−Δとすることにより、突起52からの信号光量を増幅することができる。従って、バックグラウンド光の存在する実際の測定系においても、位相差φを制御することによって、照明光の波長より小さいナノサイズの欠陥でも精度良く検出することが可能となる。
【0072】
また、図5には、図6に示すような模擬欠陥54を欠陥検査装置10によって撮像した場合の測定画像における模擬欠陥54のコントラスト、バックグラウンド光のコントラストを測定した結果を示した。なお、模擬欠陥54のサイズは縦横500nm、高さが200nm、欠陥検査装置10の光学系の開口度NAは0.45である。また、図6の線56は、模擬欠陥54を含むライン上の輝度を示している。図5の横軸はバイアス位相、すなわちΔを、縦軸はコントラストを示している。同図に示すように、Δ=0°の場合、すなわちφ=πの暗視野画像の場合は、模擬欠陥コントラストとバックグラウンド光のコントラストが略同一となるので、欠陥を検出するのは困難であり、Δ=πの場合、すなわちφ=2π(0°)の明視野画像の場合も、模擬欠陥コントラストが低く、欠陥を検出するのは困難である。また、コントラストが最大となるのは、Δ=−30°付近である。
【0073】
このように、照明光の波長以下のサイズの欠陥であっても、分離した二つの光の位相差をπにするのではなく、π−Δとすることで欠陥を検出することができる。なお、Δは、バックグラウンド光の光量に応じて決定され、例えばバックグラウンド光の光量が大きくなるに従って大きくなるように設定される。そして、欠陥部分とバックグラウンド光とのコントラストが、欠陥部分を検出可能な程度のコントラスト以上となるように決定される。
【0074】
欠陥検査装置10では、制御部40が、駆動部44に対して、分離した二つの光の位相差φが、φ=π−Δとなるようにプリズム28Aを駆動するように指示し、ナノインプリントモールド12を撮像素子34により撮像させる。これにより、欠陥部分が強調された干渉画像を得ることができ、照明光の波長より小さいサイズの孤立欠陥を精度良く検出することができる。
【0075】
次に、ナノインプリントモールド12が、例えば半導体回路基板の製造に用いられるものであり、ナノインプリントモールド12に形成された周期的な回路パターンの欠陥を検出する場合について説明する。
【0076】
図7に示すように、半導体ウエハ60上に、同一の回路パターンのセル62を複数含むダイ64を複数形成する際に用いられるナノインプリントモールド12の欠陥を検出する場合、近くの、望ましくは隣接するセル62からの参照光を測定光に干渉させることにより、回路パターンを消去し欠陥を検出することができる。すなわち、距離Dを参照用のセルとの間隔に設定し、この距離Dに対応した角度θ分偏向器20A、20Bを傾けると共に、隣接するセルからの二つの光の位相差がφ=π−Δとなるように位相シフタ28のプリズム28Aを駆動することにより、参照するセルからの2つの光が干渉された干渉画像が撮像素子34により撮像される。なお、Δは、前述したように、バックグラウンド光の光量に応じて決定される。
【0077】
そして、例えばセル62Cに欠陥66が存在し、参照するセル62Bには欠陥が存在しない正常なセルであった場合、両者の干渉画像68Bは、図7に示すように、両者の相違部分、すなわち欠陥66のみが強調され(図中白丸部分)、その他の部分は打ち消された画像となる。他の参照用セル68Dとの干渉画像も同様である。これにより、周期的構造の回路パターンのセルの欠陥を検出できる。
【0078】
なお、同一パターンのダイ64が複数隣接する場合も同様に、近くの、好ましくは隣接するダイ64からの参照光を測定光に干渉させた干渉画像を撮像することにより欠陥を検出できる。例えば図8に示すように、ダイ64Bに欠陥66A、66Bが存在する場合、正常なダイ64Aとの干渉画像68Aは図8のようになり、欠陥部分66A、66Bが強調された画像となる。正常なダイ64Cとの干渉画像も同様である。
【0079】
本実施形態では、前述したように、対物レンズ15の後側焦点位置と、結像レンズ17の前側焦点位置とが、図1における点Qの位置で一致するように、対物レンズ15から結像レンズ17までの光学系部材を配置し、所謂両側テレセントリック光学系となるように構成している。このため、結像レンズ17を透過した照明光L2のうち、ハーフミラー18を透過した照明光L21とその主軸L21B、ハーフミラー18を反射した照明光L22とその主軸L22Bとが平行になると共に、ハーフミラー30を透過、反射した照明光L21、L22と、これらの主軸とが全て平行となるため、照明光L21、L22が干渉しても撮像した画像に干渉縞が発生せず、信号強度SBが一定となる。これにより、高精度で欠陥を検出することができる。
【0080】
(第2実施形態)
【0081】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、欠陥検査装置101と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0082】
図9には、本実施形態に係る欠陥検出装置10Aを示した。同図に示すように、欠陥検出装置10Aは、欠陥検査装置101と構成部材は同一であるが、欠陥検査装置10Aは、両側テレセントリック光学系を構成している点で欠陥検査装置101と異なる。すなわち、図9に示すように、対物レンズ15の後側焦点位置と、結像レンズ17の前側焦点位置とが、ハーフミラー18の偏向の中心点Cの位置で一致するように、対物レンズ15と結像レンズ17とが配置されている。
【0083】
これにより、第1実施形態と同様に、結像レンズ17を透過した照明光L2のうち、照明光L21とその主軸L21B、照明光L22とその主軸L22Bとが平行になるため、照明光L21、L22の波面L21A、L22Aが平行となる。従って、照明光L21、L22が干渉しても撮像した画像に干渉縞が発生せず、照明光の信号強度SBが一定となる。これにより、高精度で欠陥を検出することができる。
【0084】
(第3実施形態)
【0085】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、欠陥検査装置10Aと同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0086】
図10には、本実施形態に係る欠陥検出装置10Bを示した。同図に示すように、欠陥検出装置10Bは、対物レンズ15とハーフミラー18との間にリレーレンズ72A、72Bを備えている点、ミラー22が偏向器を兼用している点、ミラー26が位相シフタを兼用している点で、欠陥検査装置10Aと異なる。
【0087】
そして、対物レンズ15の後側焦点位置と、結像レンズ17の前側焦点位置とが、ミラー22の偏向の中心点Cで一致するように、対物レンズ15から結像レンズ17までの光学系部材が配置されている。
【0088】
この場合も、第2実施形態と同様に、結像レンズ17を透過した照明光L2のうち、照明光L21とその主軸、照明光L22とその主軸とが平行になるため、照明光L21、L22が干渉しても撮像した画像に干渉縞が発生せず、照明光の信号強度SBが一定となる。これにより、高精度で欠陥を検出することができる。
【0089】
また、対物レンズ15とハーフミラー18との間にリレーレンズ72A、72Bを備えているので、ハーフミラー18からハーフミラー30までの干渉計の位置の自由度を向上させることができる。
【0090】
(第4実施形態)
【0091】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、欠陥検査装置10Bと同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施形態では、ナノインプリントモールド12に形成された周期パターンによる回折光をカットするための周期パターンカットマスクを用いた欠陥検査装置について説明する。
【0093】
例えばSRAM等のメモリ素子においては、1つのチップ内に規則正しい周期的な回路パターンを持つのが一般的である。この場合、その回路パターンを形成するためのナノインプリントモールド12は、波長より周期の大きい繰返しパターンを持つことがある。この場合、この繰返しパターンは光に対して回折格子として作用するため、特定の方角に回折光を発する。従って、数nmから数十nmの欠陥からの信号光量に対して、周期的な回路パターンの回折光の方が明るくなる場合、欠陥の検出能力が低下する場合がある。
【0094】
そこで、図11に示すように、本実施形態に係る欠陥検出装置10Cは、対物レンズ15とリレーレンズ72Aとの間の、ナノインプリントモールド12に形成されたパターンに対応したフーリエ変換パターンの光学像が形成されるフーリエ変換面に、このフーリエ変換パターンが形成された周期パターンカットマスク90を備えている。
【0095】
周期パターンカットマスク90は、例えば複屈折性素子や液晶等で構成される。この場合、制御部40により、ナノインプリントモールド12に形成された周期パターンに対応したフーリエ変換パターンが形成(表示)されるように、周期パターンカットマスク90を制御する。
【0096】
このような周期パターンカットマスク90がフーリエ変換面に配置されることにより、周期的な回路パターンによる回折光をカットすることができるため、欠陥部分を高精度で検出することができる。
【0097】
なお、本発明は上記実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された技術的思想を逸脱しない範囲で各種の変更や修正が可能であることはもちろんである。例えば、本発明に係る欠陥検出装置の干渉像を得る方法として、本実施形態では、マッハ・ツェンダー法(図1参照)を例示したが、他のジャマン法、マイケルソン法、フィゾー法、トワイマン・グリーン法などを適宜用いても構わない。
【符号の説明】
【0098】
10、10A、10B、10C 欠陥検査装置
12 ナノインプリントモールド
14 光源
15 対物レンズ
17 結像レンズ
18 ハーフミラー
20A、20B 偏向器
22、26 ミラー
24 位相補償板
28 位相シフタ
28A、28B プリズム
30 ハーフミラー
32 結像レンズ
34 撮像素子
40 制御部
42A、42B、44 駆動部
46 メモリ
72A、72B リレーレンズ
90 周期パターンカットマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めたパターンが形成された透光性を有する検査対象物に、照明光を照射する光照射手段と、
前記照明光が照射された前記検査対象物を透過した光を結像する、対物レンズ及び結像レンズからなるレンズ群と、
前記レンズ群を透過する光を二つの光に分割する光分割手段と、
分割された二つの光が、予め定めた方向に横ずれするように前記二つの光の少なくとも一方を偏向させる偏向手段と、
前記偏向手段により偏向された前記二つの光の少なくとも一方の光の位相をシフトさせる位相シフト手段と、
前記位相シフト手段により位相シフトされた前記二つの光を合波する合波手段と、
前記合波手段により合波された光の光学像を撮像する撮像手段と、
を備え、
前記結像レンズを透過した前記二つの光が平行で且つ前記二つの光の主軸が平行となるように、前記対物レンズ及び前記結像レンズが配置された
欠陥検査装置。
【請求項2】
前記対物レンズの後側焦点位置と前記結像レンズの前側焦点位置とが一致するように、前記対物レンズ及び前記結像レンズが配置された
請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記結像レンズは、前記合波手段と前記撮像手段との間に設けられ、
前記光分割手段は、前記対物レンズを透過した光の一部を透過させると共にその他の光を反射させるハーフミラーであり且つ前記偏向手段と兼用され、前記ハーフミラーの偏向の中心点が、前記対物レンズの後側焦点位置及び前記結像レンズの前側焦点位置となるように、前記対物レンズ、前記結像レンズ、及び前記ハーフミラーが配置された
請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記対物レンズと前記光分割手段との間の光路上にリレーレンズが設けられ、
前記偏向手段が、前記ハーフミラーを透過した光を前記合波手段の方へ反射させるミラーと兼用され、ミラーの偏向の中心点が、前記対物レンズの後側焦点位置及び前記結像レンズの前側焦点位置となるように、前記対物レンズ、前記結像レンズ、及び前記ミラーが配置された
請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記パターンに対応したフーリエ変換パターンの光学像が形成されるフーリエ変換面に、前記フーリエ変換パターンの光学像をカットするマスク手段が設けられた
請求項4記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記結像レンズは、前記対物レンズと前記光分割手段との間に設けられた
請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記光照射手段は、ナノサイズの予め定めたパターンが形成された透光性を有するナノインプリントモールドに、前記ナノサイズより大きい波長の照明光を照射し、
前記位相シフト手段は、前記偏向手段により偏向された前記二つの光の位相差がπ−Δ(−90°<Δ<90°)となるように、前記二つの光の少なくとも一方の光の位相をシフトさせる
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−42218(P2012−42218A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180833(P2010−180833)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】