説明

正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前invitro検出方法

本発明は、試験されるべき個々のDNAを含む、母親サンプル由来の胎児細胞からの、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法に関する。本発明はまた、健康なキャリア状態又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法の範囲内における、オリゴヌクレオチドプライマー及びそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験されるべき個々のDNAを含む、母親サンプル由来の胎児細胞からの、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア(a carrier afflicted with cystic fibrosis)状態の非侵襲的出生前検出方法に関する。本発明の方法は、嚢胞性線維症を診断するためのin vitroプロトコルで用いてよい。
【0002】
本発明はまた、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前検出方法と関連する、オリゴヌクレオチドプライマー及びそれらの使用にも関する。本発明はまた、母親サンプルから回収された少なくとも1つの細胞のゲノム由来のDNA調製物において、前記DNAへの二親性の寄与を実証し、結果として少なくとも1つの前記細胞の胎児起源を実証する、遺伝的多型の1つ又は複数のマーカーの同定方法と関連する、プライマー及びそれらの使用にも関する。
【0003】
本発明はまた、生物学的サンプル由来のDNA量を増幅するためのプライマーとして使用してよいポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドの組み合わせ物、並びに嚢胞性線維症の非侵襲的出生前検出用キットにも関する。
【背景技術】
【0004】
嚢胞性線維症は、罹患者の生命を危険にさらす常染色体劣性疾患であって、白人の子供に最も広がっており、米国においては、3500人の新生児のうち1人が罹患し(Kosorok, Disease, 1996)、1/20〜1/40以上のキャリア頻度を有する(Bobadilla, 2002)。この疾患は、変化に起因する、より正確には嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス制御因子遺伝子(CFTR)の突然変異に起因する塩素チャネルの欠陥により特徴づけられる(Cystic Fibrosis Foundation, 2003)。約1000個の突然変異が発見されており、特に、世界中で突然変異対立遺伝子の68%を示す、ΔF508対立遺伝子に相当するものである。
【0005】
塩素チャネルの欠陥は、外分泌腺からの電解質及び高分子分泌の異常を伴い、子宮内における膵臓チャネルの閉塞、膵臓の機能不全、慢性閉塞性気管支肺炎、及び反復呼吸感染のリスクを誘起する。患者の平均推定寿命は、約30歳であるが、嚢胞性線維症を有する患者の生存率は、この40年間増加している。
【0006】
1000万人超のアメリカ人は、嚢胞性線維症と関連するCFTR遺伝子のΔF508突然変異を保持しており、嚢胞性線維症を持って生まれる乳児の約80%が、この疾患の家系の先祖を有さない親により産まれた(Fink, Collins, 1997)。この疾患は比較的よく見られるので、その最初の徴候は初期である。この疾患の治療コストは高く、かつ不治の病である。嚢胞性線維症は、遺伝子スクリーニングについて最も有望な疾患の1つである(Balinsky, 2004, Garber, Fenerty, 1991)。
【0007】
信頼できる遺伝子診断は、羊水穿刺、絨毛膜サンプリング(CVS)、又は胎児の血液採取により得られる胎児細胞で実施されるが、これらの検査は、それぞれ0.5%、1%、及び3%の無視できない流産のリスクに悩まされている(Ciarleglio, 2003)。従って、代わりとなる診断方法、好ましくは非侵襲的な方法を研究することが重要である。
【0008】
国際特許出願WO−A−02/088736には、特に初期に胎児の性別を検査できる、母親血液サンプルから実施される非侵襲的出生前診断方法が記載されている。この特許出願における開示は、本明細書に参照として援用される。
【0009】
循環胎児細胞を豊富化して、嚢胞性線維症の出生前診断のためにそれらを使用するための試みが従来為されており(Martel−Petit, 2001)、母親血漿由来の胎児DNAが、遺伝的な父親突然変異を検出するために用いられている(Gonzalez−Gonzalez, 2002)。
【特許文献1】国際公開第02/088736号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、嚢胞性線維症の診断方法のいずれも、侵襲的プロトコルの代わりのルーチン適用のために、信頼性がありかつ十分に効率的であるものを全く提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、生検により及び/又は胎盤関門を越えることにより胎児の細胞又は組織を採取する工程を伴うことなく、ルーチン適用に信頼性があり、かつ十分に効率的な嚢胞性線維症の非侵襲的出生前検出方法に注目した。
【0012】
本発明は、既知の遺伝子異常、特に既知のCFTR遺伝子の突然変異の検出に適した手段、又は未知若しくは決定されていないCFTR遺伝子の突然変異の検出に適合される手段を定義する。
【0013】
本発明との関連において、胎児の細胞は、妊婦から回収されるサンプルから回収される。
【0014】
従って、本発明は、個体由来の試験されるべきDNAを含む、採取された母親サンプルから単離された胎児細胞のサンプルからの、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法であって、以下の工程:
a)胎児起源の細胞を含み得る純粋又は希釈母親サンプルにおける胎児細胞を豊富化する工程;
b)保持された細胞を分析し、胎児起源であると推定される細胞を選択する工程;
c)前記工程b)で選択した1つ又は複数の細胞の胎児起源を遺伝分析により実証する工程;並びに
d)前記工程c)で選択した細胞の胎児DNAについて、以下の工程:
・CFTR遺伝子上の調査される既知の突然変異を保持できる遺伝子座、又は分離の間にCFTR遺伝子の突然変異と遺伝的に連鎖(リンケージ)する遺伝子型多型を含む遺伝子座を増幅できるその能力について選択されるプライマー対を用いて胎児DNAを増幅する工程;
・前記増幅したDNA断片に対応する対立遺伝子において、調査される既知のCFTR遺伝子突然変異、若しくはCFTR遺伝子と遺伝的に連鎖する多型遺伝子座が存在するか又は不在であるかを同定する工程;並びに
・胎児対立遺伝子と、コントロールサンプルの対応する対立遺伝子とを比較し、増幅対立遺伝子の観察から、試験個体において、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の検出を測定する工程、
を用いて、ΔF508突然変異若しくは他の既知の突然変異を保持するCFTR遺伝子の対立遺伝子を調べるか、又はCFTR遺伝子の非同定病的突然変異と遺伝的に連鎖する遺伝子型多型を保持する遺伝子座の対立遺伝子を調べる工程、
を含む方法を提供する。
【0015】
本発明との関連において、「個体」とは、本発明の検出方法のために、その胎児細胞により表される、生まれてくるべき個体である。本発明の検出方法は、侵襲的方法に代わる出生前診断方法として考えられるべきもの、又は少なくとも診断プロトコルに含まれるべきものを、特異性及び感受性に関して十分に実施する。
【0016】
従って、1つ又は少数の胎児細胞由来のDNAを発端とすることにより、本発明の方法は、生まれる個体において、嚢胞性線維症に関与するCFTR遺伝子の異常を保持する対立遺伝子の存在又は不在、ヘテロ接合体又はホモ接合体を同定できる。
【0017】
CFTR遺伝子において突然変異したホモ接合体対立遺伝子の存在は、正常、健康なキャリア、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリアであるだろう個体を示す。
【0018】
以下の4つの可能性が存在する:
・健康なホモ接合体:2つの正常な対立遺伝子;
・単一のヘテロ接合体:1つの正常な対立遺伝子/1つの突然変異対立遺伝子(ΔF508又は未知の突然変異);
・罹患するホモ接合体:2つの突然変異対立遺伝子(ΔF508);
・複合へテロ接合体:1つの突然変異ΔF508対立遺伝子/1つの突然変異対立遺伝子、未知の突然変異;又は1つの突然変異対立遺伝子、未知の突然変異/1つの未知の突然変異対立遺伝子のいずれか。
【0019】
「健康なホモ接合体」及び「単一のヘテロ接合体」の場合には疾患は存在しない。
【0020】
「罹患するホモ接合体」及び「複合へテロ接合体」の場合に疾患が存在する。
【0021】
「健康なキャリア状態」という表現は、個体が、CFTR遺伝子の突然変異対立遺伝子について単一のヘテロ接合体であることを意味する。
【0022】
「罹患するキャリア状態」という用語は、個体が、CFTR遺伝子の突然変異対立遺伝子について、罹患するホモ接合体であるか、又は複合へテロ接合体であることを意味する。
【0023】
「正常な健康状態」という表現は、個体が2つの正常対立遺伝子を有することを意味する。
【0024】
前記検出は、既知の突然変異を直接探索するか、又は嚢胞性線維症に関与するCFTR遺伝子の突然変異が未知であるか、若しくは試験個体の親で同定されていない場合には、CFTR遺伝子との遺伝的連鎖を有する1つ又は複数の多型マーカーを検出する工程からなる間接方法により実施し、ここで、前記多型マーカーは、世代を超えた前記CFTR遺伝子との同時分離により受け継がれる可能性のあるものである。
【0025】
この非侵襲的出生前in vitro嚢胞性線維症検出方法との関連において、変化、特にCFTR遺伝子の既知の突然変異は、例えば、対応するアミノ酸の508位に影響を及ぼし、結果として、ΔF508として同定される3つのヌクレオチドの欠失をもたらす。
【0026】
本発明の方法が、未知の突然変異、又は試験個体の親で同定されていない突然変異を調べるために実施される場合には、遺伝的多型、特に第7染色体上のCFTR遺伝子の上流又は下流に位置する遺伝子型多型を調べるべきであり、これは、世代を超えたCFTR遺伝子との同時分離により特徴づけられる。このようなマーカーの対立遺伝子は、原則として、CFTR遺伝子の同じ対立遺伝子と常に関連する。
【0027】
「コントロールサンプル」という用語は、胎児細胞へのアクセスを提供する生物学的サンプルに関して、CFTR遺伝子の所望の突然変異が既知の突然変異、例えばΔF508遺伝子座の突然変異である場合には、父親及び母親のそれぞれに由来する1つ又は複数の生物学的サンプルを意味する。突然変異が未知である場合には、前記コントロールサンプルは、父親及び母親のそれぞれに由来する1つ又は複数の生物学的サンプルであって、そこに、嚢胞性線維症に罹患した同一家系の子供(発端患者)由来の生物学的サンプルが添加されなければならない。前記サンプルを処理して、それぞれ、父親、母親、及び同一家系の子供のゲノムDNAへのアクセスを提供する。
【0028】
「母親サンプル」という表現は、非侵襲的方法により試験個体の母親から得られた任意の生物学的サンプルを意味し、このサンプルには、胎児細胞だけでなく他のタイプの細胞も含まれる。
【0029】
特定の実施例において、母親サンプルは、胎児細胞だけでなく白血球などの他の循環細胞も含む、妊婦から回収された母親血液であってよい。この場合、本発明の方法の工程a)は、他の循環細胞から胎児細胞を分離する工程からなる。
【0030】
本発明の別の実施態様において、母親サンプルは、羊膜嚢を越えることなく、溶液(例えば生理溶液)で洗浄するか、又は洗浄することなく粘液を回収するかのいずれかにより、妊婦の子宮頚部から回収される。原則として、回収されたサンプルには胎児細胞が含まれる。
【0031】
本発明の嚢胞性線維症検出方法は、嚢胞性線維症に関与するCFTR遺伝子異常を保持する対立遺伝子の存在又は不在、ヘテロ接合体又はホモ接合体を個体において同定することにより、個体の嚢胞性線維症の素因の評価を可能にする、非侵襲的なin vitro方法であることが理解され得る。
【0032】
回収された胎児DNAに対して本発明の検出を開始する前にコントロールサンプルのDNAに関する所要の情報を入手することは別として、コントロールサンプルは、胎児DNAサンプルと同一の方法で、本発明の方法の工程c)及びd)で処理される。
【0033】
本発明の特定の実施態様において、増幅されるDNAの量は少量のDNAであり、有利には、5 pg未満、例えば2 pgオーダーの量である。ついで、増幅プライマーは、少量のDNA、例えば、単一の細胞又は低減数の胎児細胞のものに対応するDNA量の増幅を可能にするものとして定義されるべきである。
【0034】
検出方法の特定の実施例では、工程c)の増幅工程及び/又は工程d)の増幅工程には、少なくとも1つの増幅フェーズ、例えば外部プライマーを用いて実施される第一増幅フェーズ及び内部プライマーを用いて実施される第二増幅フェーズなどが含まれる。
【0035】
本発明の特定の実施例において、試験個体由来のサンプルDNAは、少なくとも1つの胎児細胞のゲノムに由来する。
【0036】
特定の実施例において、細胞サンプル由来のDNAは、少なくとも1つの単離された胎児細胞のゲノム、特に少数の細胞のゲノム、1〜20個の細胞、とりわけ1〜10個の細胞のゲノム、例えば、1、2、又は3つの細胞のゲノム、好ましくは少なくとも3つの細胞のゲノム(以下の実施例4を参照されたい)、有利には個々に単離された細胞のゲノムに由来する。
【0037】
特定の実施例において、サンプルDNAは、単一の胎児細胞のゲノム、又は20個以下の胎児細胞、とりわけ10個未満の胎児細胞のゲノムに由来する。好ましくは、胎児細胞数は少なくとも3つである。
【0038】
単一細胞由来のDNAの検出が、適切な結果を提供しない場合、特に増幅がPCRにより行われ、用いたDNAの量に起因して、所望のマーカーを保持する遺伝子の2つの対立遺伝子の1つが増幅されないか、又は検出されない場合(アレルドロップアウトとして知られる現象)には、試験されるべきDNAが回収されるべき胎児細胞数を増加させ、ついでプールの形態で用いることができる。特に、2つ、3つ、又は例えば2〜20個の細胞、好ましくは少なくとも3つの細胞、有利には3〜20個の細胞(限界を含む)を用いてよく、以下の実施例4を参照されたい(ADO不在)。
【0039】
胎児DNAのCFTR遺伝子の対立遺伝子、又はCFTR遺伝子とのリンケージを有する多型マーカーを保持する遺伝子座の対立遺伝子を決定した後、父親、母親、及び必要な場合には嚢胞性線維症に罹患した同一家系の子供(発端患者を意味する)由来の対立遺伝子を用いて比較を行い、研究されるべき試験個体由来のDNAサンプルにおいて、嚢胞性線維症と関連する遺伝子変化の対立遺伝子特徴のホモ接合体の存在、嚢胞性線維症と関連する遺伝子変化の対立遺伝子特徴のヘテロ接合体の存在、又は嚢胞性線維症と関連する遺伝子変化の対立遺伝子特徴のホモ接合体の不在があるかどうかを発見する。
【0040】
本発明の方法の工程c)における第一の検出フェーズで、試験される胎児DNAから、個体においてin vitroで嚢胞性線維症を検出できることは、胎児起源のDNAを実証することを必要とする。DNAのこの胎児特性の決定は、本出願において、これ以降、遺伝子型決定と称する。この工程は、遺伝的多型マーカーを用いて実施される。用いられる遺伝的多型マーカーは、それらが、父親により提供されるマーカーと母親により提供されるマーカーの各マーカーの対立遺伝子を区別できるという点で情報提供することが必要である。従って、母親及び父親の多型マーカーは、互いに異なるものでなければならない。
【0041】
特定の実施態様において、本発明は、工程c)で用いられる情報提供プライマーが、第16染色体、第21染色体、及び第7染色体から選択される染色体配列に由来することを特徴とする、健康なキャリア状態又は嚢胞性線維症に罹患するキャリアの検出方法に関する。
【0042】
本発明の特定の実施態様において、工程c)で用いられるプライマーは、第7染色体配列に由来し、嚢胞性線維症についての病的対立遺伝子に近接する。本明細書で示される病的対立遺伝子は、嚢胞性線維症と関与する異常を保持するCFTR遺伝子の対立遺伝子(第7染色体上に位置する)である。
【0043】
工程c)の遺伝子型決定の前、及びCFTR遺伝子の対立遺伝子又はCFTR遺伝子の異常対立遺伝子と遺伝的に連鎖する遺伝的多型を保持する遺伝子座の対立遺伝子を調べる工程の前に、本発明は実施されるべき以下の工程:
a)胎児起源の細胞を含み得る純粋又は希釈母親サンプルにおける胎児細胞を豊富化する工程;
b)工程a)の間に保持された細胞を分析し、それらの胎児又は母親起源の推定を得る工程、
を必要とする。
【0044】
本発明の非侵襲的出生前嚢胞性線維症検出方法との関連において、第一に、胎児起源の細胞を含み得る純粋又は希釈母親サンプルにおける胎児細胞の豊富化し(工程a))、第二に、工程a)の間に保持された細胞を分析して、それらの胎児又は母親起源の推定を得るために(工程b))、任意のタイプの技術を用いてよい。
【0045】
工程a)及びb)で用いられ得る様々な方法が想定され、工程c)及びd)の記述の後に、以下に例証される。本発明の特定の実施例において、細胞ゲノムは、工程c)の間に個々に分析される。工程d)の間、細胞ゲノムの分析は、個々に回収された各細胞のゲノムに対して実施されるか、又は複数の胎児細胞由来のプールされたゲノムに対して実施されるかのいずれかである。
【0046】
とりわけ、工程c)の遺伝子型決定は、単一の回収細胞(個々の細胞)のゲノム由来のDNA調製物において、DNAへの二親性の寄与を実証し、結果として少なくとも1つの前記細胞の胎児起源を実証する、1つ又は複数の遺伝的多型マーカー又は前記マーカーの組み合わせ物を同定する工程を含むか、又は前記工程からなる。
【0047】
本発明の非侵襲的出生前嚢胞性線維症検出方法との関連において、「遺伝的多型マーカー」という用語は、特定の遺伝子型と相関し、適切な場合には特定の表現型と相関する、任意の特徴の同定可能なDNA上の存在を含むことが理解されるべきである。工程c)の間に用いられるマーカーは、父親DNAと母親DNAとを区別でき、従って、胎児DNAの二親性の構成を実証できる。従って、これは、それらが特定の遺伝子型と相関するのに十分であってよい。
【0048】
言及されてよい例は、制限断片長多型マーカー(RFLP)、SNPマーカー(単一ヌクレオチド多型)、マイクロサテライトマーカー、VNTR(繰り返し配列数多型;variable number of tandem repeats)マーカー、又はSTR(ショートタンデムリピート)である。
【0049】
マイクロサテライトマーカーは、細胞の特徴づけ及び出生前診断の実施に特に好ましい。本発明の一実施態様において、同定されるべき少なくとも1つの多型マーカーは、マイクロサテライトマーカー、VNTR(繰り返し配列数多型)マーカー、SNP(単一ヌクレオチド多型)マーカー、又はSTR(ショートタンデムリピート)マーカーである。これらは、特異的プライマーを用いた増幅により同定可能であるという利点を有する。マイクロサテライト、VNTR、又はSTRマーカーは、縦列の反復配列、通常はポリCA/GTモチーフからなる。反復数のバリエーションに起因する対立遺伝子変異は、マイクロサテライトに隣接する独特配列に対応するプライマーを用いたPCRタイプの増幅により容易に検出される。これらのマイクロサテライトマーカーの物理的地図及びそれらの関連するプライマー配列はDib et alにより記載されている(Dib, C, Faure, S, Fizames, C, Samson, D, Drouot, N, Vignal, A, Missasseau, P, Marc, S, Hazan, J, Seboun, E, Lathrop, M, Gyapay, G, Morissette, J, and Weissenbach;J A comprehensive genetic map of the human genome based on 5264 micro−satellites Nature 1996 380:152−154)。この方法論を用いて、分析される細胞の遺伝子型への二親性の寄与を実証することにより、分析される細胞の胎児起源を厳密に確立できる。
【0050】
特定の実施態様において、単一の回収細胞の胎児起源、又は対照的に母親起源を実証するために、母親細胞のゲノムのものから区別される、マーカー、若しくはマーカーの組み合わせ物、又はこれらのマーカーの対立遺伝子アッセイの探索が十分であってよい。特に、前記回収細胞のゲノムについての調査は、父親細胞のDNAに特異的なマーカー又はマーカーの組み合わせ物により行ってよい。それらの存在は、必然的に、問題の細胞の胎児起源の形跡である。
【0051】
本発明の特定の実施態様において、工程c)には、以下の工程:
i)所定の遺伝的多型を増幅して母親対立遺伝子と父親対立遺伝子とを区別でき、各選択細胞において、父親対立遺伝子及び母親対立遺伝子の存在により胎児ゲノムを認識できる、情報提供プライマーと称されるプライマーを用いて、1つ又は複数の選択細胞から、個々に回収したDNAを増幅する工程;
ii)前記細胞由来のDNAの対立遺伝子と、対応する父親対立遺伝子とを比較する工程;
iii)同定された遺伝的多型について、母親対立遺伝子と父親対立遺伝子とを含む細胞由来のDNAを選択し、前記細胞由来のDNAの胎児起源を実証する工程、
が含まれてよい。
【0052】
増幅を行うための条件の例は以下のとおりである:94℃で5分間、40回×(94℃で30秒間;55〜61℃で30〜45秒間;72℃で30秒間)、72℃で5分間。
【0053】
特定の実施例において、2つの増幅フェーズを以下のとおり行ってよい:単一の回収細胞のゲノム由来のDNA調製物を増幅するための第一増幅フェーズは、標的配列に対して外部プライマーと称される1つ又は複数のヌクレオチドプライマーを用いて行い、第二増幅フェーズは、前記外部プライマーに対して内部プライマー又はネスティッドプライマーと称される1つ又は複数のヌクレオチドプライマーを用いて、先の工程により得られた増幅産物に対して行う。上記外部及び内部プライマーは、情報提供プライマーと称され、すなわち、母親対立遺伝子と父親対立遺伝子において、区別され特徴的なものとして所定の遺伝的多型を増幅でき、胎児対立遺伝子の典型的な調査される遺伝的多型の同定を可能にする。
【0054】
プライマーは合成オリゴヌクレオチドであって、その配列は、試験細胞の胎児特性についての情報提供マーカーを含むDNA配列の増幅を可能にするように決定される。
【0055】
結果として、工程c)を実施するために用いるプライマーは、細胞の胎児特性の情報提供プライマーと称されるか、又は本発明の特定の実施態様において、前記プライマーは、試験細胞の二親性の寄与の情報提供プライマーと称される。
【0056】
情報提供プライマーは、有利には、複数の多型、好ましくは多数の多型を含むDNA断片の増幅をもたらす。多型は、利用可能なデータベース(例えばNCBIなど)において、関心のあるDNA配列上、特に第7染色体上で同定される。これらのデータから、本発明の条件下での増幅を可能するオリゴヌクレオチドが同定され、効率的で高感度かつ特異的な遺伝子型決定又は検出が可能となる。
【0057】
前記情報提供プライマーは、父親及び母親のゲノムの比較遺伝分析により、家族(試験個体の父親及び母親)について特異的に同定されてよい。
【0058】
別法として、前記情報提供プライマーは、遺伝子の対立遺伝子の父親又は母親起源の情報提供特性に関して、複数の家族により共有されるか、又は共感性(consensual)である遺伝的多型マーカーを含むDNA配列の増幅が可能であることが示されているプライマーであってよい。
【0059】
これは、以下に同定されるプライマーの場合であって、このプライマーは、試験細胞のDNAへの二親性の寄与を明らかにし、その胎児起源を実証できるものである。
【0060】
工程c)で用いられ得る、情報提供プライマーと称される外部プライマーは、以下:
【0061】
【表1】

のプライマー対から選択され、ここで、Fは「フォワード」を示し、標的配列において3'〜5'向きのDNA鎖でハイブリダイズし、Rは「リバース」を示し、標的配列において5'〜3'向きのDNA鎖でハイブリダイズする。
【0062】
工程c)で用いられる、情報提供プライマーと称される内部又はネスティッドプライマーは以下:
【0063】
【表2】

のプライマー対から選択される。
【0064】
工程c)の後の工程d)は、工程c)の最後に保持された胎児細胞からの嚢胞性線維症の検出を可能にしなければならない。従って、CFTR遺伝子の既知の突然変異、又はその存在がCFTR遺伝子のDNAにおける変化の証拠である、CFTR遺伝子の突然変異対立遺伝子とリンケージを形成する多型マーカーを調べる。
【0065】
従来技術において、これらの突然変異が、主にF508遺伝子座の領域において、CFTR遺伝子に影響を及ぼし、この遺伝子座においては、3つのヌクレオチドの欠失による突然変異が、「508」位で突然変異したCFTR遺伝子の産生を導くことが既知である。結果として、本発明のプライマーを用いたCFTR遺伝子の増幅断片は、ΔF508突然変異を含むものである。従って、本発明者らは、工程d)で行うための増幅プライマーとして用いて、F508遺伝子座を含むDNA配列を増幅し、前記遺伝子座の突然変異を検出できるオリゴヌクレオチドを定義する。
【0066】
しかし、他の突然変異が、F508遺伝子座以外の領域においてCFTR遺伝子に生じてもよい。従って、本発明者らは、嚢胞性線維症と関連する、いわゆる「未知」の他の突然変異を保持する遺伝子座とリンケージ(又は遺伝的結合)を形成する遺伝的多型を保持するDNA配列を増幅できる、他のプライマーオリゴヌクレオチドを定義する。この増幅は、嚢胞性線維症検出方法との関連において実施される。これらのプライマーは、第7染色体由来のDNAから同定される。
【0067】
従って、本発明の方法の工程d)は、以下:
− ΔF508タイプの突然変異用:
・外部ΔF508アウトプライマー対(F:5'−TGGAGCCTTCAGAGGGTAAA−3'(SEQ ID NO:25);R:5'−TGCATAATCAAAAAGTTTTCACA−3'(SEQ ID NO:26)であって、単独で用いられるか、又は実施される場合には工程d)の第一増幅フェーズの間に用いられる;及び
・ΔF508内部インプライマー対(F:5'−TCTGTTCTCAGTTTTCTGG−3'(SEQ ID NO:27);R:5'−TCTTACCTCTTCTAGTTGGC−3'(SEQ ID NO:28)であって、工程d)の第二増幅フェーズの間に用いられるか、又は工程d)の単一増幅の場合には単独で用いられる;
− ΔF508遺伝子座とは別の不確定な突然変異用:
・CFTR遺伝子とリンケージを形成するDNA断片を増幅する、第7染色体上で同定されたプライマーであって、以下:
【0068】
【表3】

のプライマー、
から選択されるプライマー対を用いて行ってよい。
【0069】
本発明の特定の実施態様において、いわゆる「間接的」なアプローチを用いた嚢胞性線維症の非侵襲的出生前検出方法であって、CFTR遺伝子上の調査される異常が未知である方法との関連において、工程c)及びd)は以下:
・分離の間にCFTR遺伝子と遺伝的に連鎖(リンケージ)する遺伝子型多型を含む遺伝子座を増幅できる情報提供増幅プライマー、例えば、本出願で同定された第7染色体上のプライマーなどを用いて、前記工程c)及びd)の増幅を組み合わせて実施する;及び
・前記工程d)のコントロールサンプルとの比較が、胎児DNAから同定された対立遺伝子と、対応する父親対立遺伝子、対応する母親対立遺伝子、及び嚢胞性線維症に罹患した同一家系の子供の対応する対立遺伝子との比較を含む、
という条件下で実施される。
【0070】
本発明との関連において、この「間接」検出モードでは、胎児DNA、母親DNA、父親DNA、及び家系の子供由来のDNAを増幅するための少なくとも1つの増幅フェーズは、以下:
【0071】
【表4】

から選択される1つ又は複数のプライマー対を用いて実施される。
【0072】
換言すれば、この場合、用いられるプライマーは、嚢胞性線維症についての病的対立遺伝子とリンケージを形成する遺伝的多型を保持する少なくとも1つの対立遺伝子の存在又は不在を同定することにより、試験細胞の胎児起源を実証し、かつ嚢胞性線維症を検出することの両方を可能にする。
【0073】
先のプライマー以外のプライマーを定義し、用いて、本発明の方法の工程c)で調べられるマーカーを同定してよい。
【0074】
特に、本発明の間接検出方法のさらなる実施態様において、調べられるマーカーを保持する遺伝子の2つの対立遺伝子の1つが増幅されないか、又は検出されない(アレルドロップアウト、ADOのリスク)というリスクに対抗するために、工程c)の増幅を行うために用いられるプライマーは、第7染色体を越えるDNA配列を増幅するために選択される。前記プライマーは、先の記載に従って、情報提供するように設計され、胎児細胞において、父親対立遺伝子が母親対立遺伝子から区別されることを可能にする。ついで、工程d)を実施するために、増幅のために選択されるプライマーは、本出願における記載との関連において、第7染色体由来のDNAから同定されたプライマーであってよい。
【0075】
試験細胞の遺伝子型決定のための情報提供プライマーを定義するために、父親及び母親の異なる遺伝的多型マーカーを細胞内に含む配列を、例えばPCRにより増幅できるオリゴヌクレオチドを選択する:現れる増幅産物は、父親対立遺伝子及び母親対立遺伝子について異なる、胎児細胞由来のDNAと関係のある遺伝子ピークにより示される。
【0076】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、増幅産物のサイズが1000 bp未満、又はさらに800 bp未満となるように増幅されるべき配列にわたって伸長される。増幅配列のサイズにおける制限は、試験細胞が独特である場合には、試験細胞由来のDNA量が低く、変化され得る固定細胞から得られるという事実を考慮に入れる。選択プライマーは、少量のDNA、例えば5 pg未満の量、特に約2 pg量のDNAの増幅を可能にしなければならない。
【0077】
工程d)を実施するための、本発明の健康なキャリア状態又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の検出方法との関連において、ΔF508遺伝子座を増幅可能なプライマーはまた、あるいはまた、嚢胞性線維症の場合におけるCFTR遺伝子の最も高頻度の突然変異のΔF508対立遺伝子特徴を調べるために用いられてよい。
【0078】
ΔF508遺伝子座を増幅可能な前記プライマーは、以下のプライマー:
・外部ΔF508アウトプライマー対(F:5'−TGGAGCCTTCAGAGGGTAAA−3'(SEQ ID NO:25);R:5'−TGCATAATCAAAAAGTTTTCACA−3'(SEQ ID NO:26)であって、工程d)の第一増幅フェーズの間に用いられる;及び
・内部ΔF508インプライマー対(F:5'−TCTGTTCTCAGTTTTCTGG−3'(SEQ ID NO:27);R:5'−TCTTACCTCTTCTAGTTGGC−3'(SEQ ID NO:28)であって、工程d)の第二増幅フェーズの間に用いられる、
である。
【0079】
一般に、本発明を実施するために用いられてよいプライマーは、先に記載した配列のポリヌクレオチド由来の変異オリゴヌクレオチドにより構成されてよい。
【0080】
変異オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーと、例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは80%、より好ましくは95%以上の同一性を有する。
【0081】
前記変異オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーと比較して、1つ又は複数の配列の変更、特に1つ又は複数の欠失、置換、付加タイプの変更を有する。
【0082】
特定の実施例において、前記変異オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーと同一のサイズである。
【0083】
別の特定の実施例において、前記変異オリゴヌクレオチドの長さは、その配列が由来するプライマーの長さより短く、例えば10〜20%短いか、又は任意選択で、その配列が由来するプライマーの配列よりも長い、例えば、10〜40%長い、特に30〜40%長くてよい。
【0084】
前述のオリゴヌクレオチドの変異プライマーは、例えば、前記配列の5'末端に1つ又は複数のヌクレオチドを付加することにより、これらのオリゴヌクレオチドに由来してよい。
【0085】
前記オリゴヌクレオチドは、これが生物学的サンプル由来のDNAを増幅するため、特に細胞において胎児起源のマーカーを含む配列を増幅するため、又は嚢胞性線維症の変化したCFTR遺伝子特徴とリンケージを形成する遺伝的多型マーカーを含む配列を増幅するためのプライマーとして用いられ得る場合には、その配列が由来するプライマーと同一の特性を有する。
【0086】
適切な場合には、本発明との関連において用いられ得るオリゴヌクレオチドは、例えばそれらの配列の5'又は3'末端に付加されたマーカーと関連してよい。
【0087】
本発明の健康なキャリア状態又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の検出方法との関連において、同一の家系に嚢胞性線維症に罹患した子供が全くいない場合には、工程d)の間に最初に用いられるプライマー対は、ΔF508対立遺伝子を調べるためのΔF508遺伝子座を増幅可能なプライマー、又は本発明の方法により直接検出可能な他の既知の突然変異を増幅可能なプライマーであるだろう。
【0088】
本発明の特定のモードにおいて、回収細胞の胎児又は母親起源を実証する前に、前記回収細胞を溶解し、例えば、既知のプライマー伸長−前増幅法(primer extension pre−amplification method)(PEP)(Zhang, L, Cui, X, Schmitt, K, Hubert, RWN, Arnheim, M Whole genomic amplification from a single cell:implications for genetic analysis PNAS 1992, 89:5847−5851)又はDOP−PCR法を用いて全ての可能性のある配列をカバーする一般的プライマーを用いて、そのゲノムと一緒に前増幅する。これらの方法は、単一細胞の全ゲノムを増幅できる。ついで、単一細胞からのDNA由来の得られた前増幅DNA調製物を、本発明の方法の工程c)及び/又はd)との関連における、遺伝子マーカー又は多型マーカー(1つ又は複数)の特異的検出のための遺伝物質として精製及び使用してよい。
【0089】
本発明の特定の実施例において、回収細胞の胎児又は母親起源は、単一細胞からのDNA由来の前増幅DNA調製物を発端として、遺伝子マーカー若しくは多型マーカー又は前記マーカーの組み合わせ物の増幅により実証される。胎児DNAへの二親性の寄与を実証できる遺伝的多型マーカーは、父親DNAを特徴づけるため及び母親DNAを特徴づけるために特異的に同定されたプライマーを用いた父親及び母親DNAの事前分析により同定され、又は共感性プライマー(consensual primer)が存在する場合には、問題のプライマーが、利用可能な調節サンプルの分析と関連することを確認した後、遺伝子の対立遺伝子の父親若しくは母親起源を決定するために特異的に同定されたプライマーを用いた父親及び母親DNAの事前分析により同定される。
【0090】
本発明との関連において、所与の核酸の特異的増幅を可能にする任意の技術が用いられてよい。言及されてよい例は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、又は等温増幅方法、例えばTMA(転写媒介性増幅;transcription mediated amplification)、NASBA(核酸配列ベース増幅;nucleic acid sequence based amplification)、3SR(自律配列複製;self sustained sequence replication)若しくは鎖置換増幅(strand displacement amplification)などである。
【0091】
増幅方法、特にPCRは、前増幅DNA調製物の少なくとも5分の1から実施されることに十分に感受性を示す。結果として、回収細胞からの前増幅DNA調製物のそれぞれは、少なくとも5つの異なるマーカーの増幅のために用いられてよい。
【0092】
特に、PCRにより実施される増幅は、単離細胞の胎児起源を実証するために、遺伝的多型マーカー(例えば、1、2、3、4、又は5つのマーカー)の検出を可能にする。PCR増幅はまた、嚢胞性線維症に特有のCFTR遺伝子の上流、下流、又は前記遺伝子上に位置する遺伝子マーカーを検出できる。突然変異、特にDNA配列の欠失又は反復を保持できる配列を増幅し、増幅産物を、例えば電気泳動により、サイズに応じて分離する。欠失又は対照的に反復の存在は、欠失又は反復を保持しない増幅産物よりも大きいか又は小さいサイズの増幅産物の存在により検出され、これは、前記増幅産物に対応するピークのサイズの差異により示されてよい。
【0093】
増幅産物はまた、特に、遺伝子マーカーを正確に特徴づけるか、又は点突然変異を突き止めるために、配列決定されてよい。
【0094】
本発明の方法のさらなる実施態様において、工程c)及びd)を、全て若しくは一部の前増幅DNA調製物、又は特異的DNAプローブで増幅されたDNA調製物をハイブリダイズすることにより実施する。DNAプローブは、これらがそれらの同定用マーカーと特異的にハイブリダイズするように、又は研究されるべきマーカーを保持する配列上で特異的にハイブリダイズするように選択される。マーカー上でのプローブのハイブリダイゼーションは、スロットブロット、サザンブロット、あるいは有利にはDNAチップ又はマイクロアレイ若しくはマクロアレイを用いた、核酸のハイブリダイゼーション複合体を検出するための一般的技術を用いて検出されてよい(Sambrook et al, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2001, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)。
【0095】
従って、本発明の一実施態様において、同定されるべきマーカー用の特異的DNAプローブを、DNAチップ又はマイクロアレイ若しくはマクロアレイを形成する支持体上に固定する。前増幅又は増幅したDNA調製物を、例えば、放射性マーカー又は蛍光マーカーで標識し、特異的プローブを含むDNAチップ又はマイクロアレイ若しくはマクロアレイと接触させる。特異的プローブを含む各スポットについてハイブリダイゼーション強度を測定し、それにより回収細胞のDNA上の所望のマーカーの存在を高度の感受性で測定する。
【0096】
本発明の、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の検出方法を出生前に実施する場合には、妊婦からサンプルを取り出す。本発明の特定の実施態様において、妊娠の間の初期(例えば、妊娠約5週目)に、母親サンプルを取り出す。しかし、母親サンプルの取り出し及び本発明の診断方法は、妊娠開始から妊娠の最後までの任意の期間に実施されてよい。本発明の特定の実施態様において、取り出し及び診断方法を、妊娠7〜15週目に実施する。さらなる実施態様において、取り出し及び診断方法を、妊娠10〜15週目に実施する。
【0097】
母親血液の取り出しとの関連において、通常は3〜20 mLの母親血液、好ましくは5〜10 mLの母親血液を回収する。実用的な理由から、3〜20 mLの母親血液を取り出す場合には、本発明との関連で記載の、単離した胎児細胞のその後の分析を、より限定的な体積の血液、例えば1〜10 mL、好ましくは2〜5 mLについて実施してよいことが理解されるべきである。診断感度を上昇させるために、複数の独立したサンプルを回収し、異なる独立サンプルについて診断を繰り返すことが可能である。さらに、本発明の好ましい実施態様において、任意選択で妊娠前に、父親由来のサンプルと母親由来の細胞サンプルとを並行して取り出し、例えば、スクレーピングにより口腔細胞を取り出すか又は血液を取り出すことにより取り出し、父親ゲノム及び母親ゲノムのための特異的マーカーの調査を、取り出した物質について実施することが可能である。この並行研究により、本出願に記載の実施態様を用いて単離された細胞の胎児起源を実証するために用いられてよい、父親及び母親に対する特異的遺伝子マーカーが同定され得る。
【0098】
胎児起源の細胞を含み得る純粋又は希釈母親サンプルにおける胎児細胞を豊富化するための工程a)との関連において、任意の技術を用いてよく、特に以下を用いてよい:ろ過;勾配分離;免疫学的選択(ポジティブ;免疫学的に特徴づけられる細胞は、関心のある細胞、すなわち胎児細胞である;又はネガティブ;免疫学的に特徴づけられる細胞は、該当細胞ではない);関心のある細胞、すなわち胎児細胞の増殖;非該当細胞の溶解。
【0099】
血液中で循環する上皮胎児細胞(トロホブラスト)は、母親白血球及び赤血球細胞より大きな直径を有し、FR−A−2782730に記載の方法などの血液中に循環する病原性細胞を単離するために記載される方法から適合されたろ過工程を用いて単離されてよい。この特許出願の教示は、参照により本明細書に援用される。
【0100】
特定の実施例において、工程a)は、胎児起源の細胞を含み得る純粋又は希釈母親サンプルをろ過し、胎児起源の細胞を含む特定の細胞をサイズに従ってフィルター上で濃縮する工程からなり、かつ工程b)は、前記フィルター上に保持された細胞を分析する工程、及び胎児起源であると推定される細胞を選択する工程からなる。
【0101】
細胞サンプルが母親血液由来である場合には、ろ過は、血液細胞、特に母親白血球から胎児細胞を豊富化及び分離できる。
【0102】
工程a)のろ過の前に、胎児起源の細胞中のサンプル由来の細胞集団を豊富化できる任意のプロセスを実施してよい。本発明の一実施態様において、母親起源の細胞の割合を低減させるために、胎児細胞により発現される表面マーカーの発現に応じて細胞を分類することにより胎児細胞集団を豊富化する。細胞分類技術の例は、FACS、磁気アフィニティカラム分類(magnetic affinity column sorting)(MACS)、又は物理的特性(密度)若しくは構造特性(特に、特異抗原)に基づいて1つの細胞タイプを豊富化できる任意の技術である。
【0103】
ろ過を容易にするために、特定の一実施態様において、ろ過工程前にサンプルをろ過溶液で希釈してよく、前記ろ過溶液は、有核細胞を固定するため及び/又は赤血球を溶解するための試薬からなる。ろ過溶液の一例には、赤血球の膜を分解できるサポニンなどの界面活性剤、及び有核細胞の膜を安定化できるホルムアルデヒドなどの固定剤が含まれる。
【0104】
好ましい一実施態様において、ろ過溶液中、母親サンプルを約10〜100倍希釈する。
【0105】
サイズにより細胞を分離できる多孔フィルターを用いて純粋又は希釈サンプルをろ過する。母親血液由来のサンプルとの関連において、フィルターのポロシティ(porosity)は、血液成分、特に赤血球、血小板、及び母親白血球を通過させ、特定の有核細胞、特に母親及び胎児起源の幅広い細胞(上皮又は造血前駆細胞)を保持できるように選択する。
【0106】
6〜15μmの範囲のポロシティを有し、ろ過の間にこれらの遮断を避けながら細胞を保持できる選択したポロシティに適した密度を有するフィルターを特に用いてよい。特定の実施例によると、フィルターは、約8μmの直径及び5×104〜5×105孔/cm2の範囲の密度を有する実質的に円筒状(cylindrical)の孔を有する。特定の実施例において、用いるフィルターは、孔の全てが実質的に同一の直径を有するように調整(calibrate)される。本発明のプロセスで用いられ得るフィルターの一例は、1×105孔/cm2の孔密度を有し、12μmの厚さ、及び8μmの孔サイズを有する、「トラックエッチドメンブレン(track−etched membrane)」タイプの調整ポリカーボネートタイプろ過膜であり、例えばWhatman(登録商標)により市販されているものなどである。
【0107】
本発明の方法の工程a)は、EP−A−0513139に記載のISET(isolation by size of epithelial tumor cells)(上皮腫瘍細胞のサイズによる単離)として既知の特定のデバイスの存在及び開発に基づいており、これは、フレーム上に以下:
・サイズに従って特定の細胞を保持できる(母親血液から回収されるとおり循環している)多孔質フィルターであって、ろ過方向のそれぞれ上流及び下流にある2つのクランピングデバイスの間にマウントされ、シールとして作用する、フィルター;
・分析用サンプルのための貯蔵及び/又は前処理手段を含む上流ブロック;
・不要なものを回収するために貯蔵手段に面する穿孔(perforation)を含む下流ブロック;
・強制ろ過手段、
を含む。
【0108】
従って、本発明はまた、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前検出方法のために取り出した母親サンプルに存在する胎児細胞のろ過に対する、このタイプのデバイスの適合及び使用にも関する。
【0109】
「適合及び使用」という用語は以下:
・8μm超、好ましくは10μm超、より好ましくは15μm超の平均径を有し、細胞を保持できる、好ましくは調整された、ポロシティを有するフィルターをデバイスへ組み込むこと。8μmの平均ポロシティを有するフィルターは、所望の特徴を有することが示されている。;
・ろ過能力を最適化するために、孔サイズに応じて、フィルターに対する孔密度を適合すること;
・研究下の胎児細胞の物理的完全性を保存するために、ろ過手段に適用される圧力を適合すること;
・研究下の細胞の完全性及び生存性を保存するために、母親サンプル希釈媒体を適合すること、
を意味する。
【0110】
本発明の方法の工程a)には、6〜15μmの範囲、好ましくは約8μmの平均ポロシティを有するフィルターを含むISETタイプのろ過デバイスを用いて、母親細胞サンプルから胎児細胞を単離する工程が含まれてよい。
【0111】
工程a)にはまた、フィルターが、約8μmの直径を有する孔を有し、5×104〜5×105の範囲の孔密度を有する、ISETタイプのデバイスを用いる工程が含まれてよい。
【0112】
最後に、工程a)には、適用されるろ過圧力(filtration under−pressure)が、0.05〜0.8バールの範囲、好ましくは約0.1バールである、ISETタイプのろ過デバイスを用いる工程が含まれてよい。
【0113】
本発明の特定の実施例において、工程a)の間にフィルター上に保持された細胞を個々に回収する。
【0114】
「細胞の個々の回収」という用語は、工程a)の間に保持された他の細胞とは独立したその後の分析のために、工程a)の間に保持された特定の個々の細胞を回収できる任意の方法を意味する。
【0115】
とりわけ、工程a)の間に保持された細胞を、特にマイクロダイセクションにより個々に回収してよい。
【0116】
特定の一実施例において、工程a)はろ過からなり、マイクロダイセクションは、例えば、細胞が保持されているろ過膜の一部をレーザー切断するか、又はレーザーを用いて細胞を引き離し、ついで適したチューブ中に単一の回収細胞を回収する工程からなる。これは、ついで、本発明に記載の工程b)、c)、及びd)の様々な分析を受けることを可能にする。
【0117】
特定の実施例において、工程a)の間に保持された細胞は、細胞を個々に回収することなく、工程b)の間、in situで分析されてよい。この分析は、細胞学的、免疫学的、又は分子的方法、例えば以下の一つにより実施する:FISH、in situ PCR、PNA、PRINS。
【0118】
工程a)で保持された細胞を、工程b)の間に、回収し、ついでin situで分析する。
【0119】
細胞を個々に回収することは、有利には、単一細胞のゲノムについての遺伝分析を対象とできる。これはまた、遺伝分析により実証されている胎児起源の単一の細胞のゲノムについて、嚢胞性線維症を検出できる。従って、本発明のこの実施態様を用いることにより、純粋な遺伝物質、すなわち単一細胞由来のものを得て、本発明の方法の工程c)及びd)のために用いることができる。
【0120】
本発明の嚢胞性線維症の非侵襲的出生前検出方法との関連において、工程c)若しくは工程d)又はその両方の工程を実施するための様々な適したプライマーの使用を例示する。この方法の変形において、他のプライマーを用いてもよく、これは例えば、その配列が以下:
【0121】
【表5】

から選択されるプライマーの配列に由来する、変異オリゴヌクレオチドからなる。
【0122】
変異オリゴヌクレオチドは、例えば、その配列が由来するプライマーと、少なくとも60%の同一性、好ましくは80%、より好ましくは95%以上の同一性を有する。
【0123】
前記変異オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーに対して1つ又は複数の配列の変更、特に1つ又は複数の欠失、付加、又は置換タイプの変更を有する。付加されるヌクレオチドは、特に、3'末端に付加されている。
【0124】
特定の実施例において、前記変異オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーと同じサイズを有する。
【0125】
別の特定の実施例において、前記変異オリゴヌクレオチド長は、その配列が由来するプライマー長に対して、例えば10〜20%短いか、又は場合により、その配列が由来するプライマー配列に対して、例えば10〜40%、特に30〜40%大きいサイズを有する。
【0126】
前記オリゴヌクレオチドがプライマーとして用いられて、生物学的細胞サンプル由来のDNAを増幅できる場合、特に細胞の胎児起源のマーカーを含む配列を増幅できるか、又は嚢胞性線維症に特有のCFTR遺伝子の上流、下流、又は前記遺伝子上に位置する遺伝子マーカーを含む配列を増幅できる場合に、前記オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーと同じ特性を有する。
【0127】
本発明の方法の工程b)の間に、フィルター上に保持された細胞を、例えばそれらの胎児起源の推定を決定するためのそれらの形態分析のためにヘマトキシリン及びエオシンで染色した後、顕微鏡下で観察してよい。それらの上皮特性を、例えば、抗サイトケラチン抗体(KL1タイプ)を用いた免疫標識により同定してよい。この段階において、形態学的特徴、特に、細胞性栄養膜細胞;大核、凝縮クロマチン、及び減少した細胞質を有し、14〜20μmの範囲の直径を有する単核細胞;並びにより大きな直径(44〜47μm又はそれ以上)及び多核(plurinuclear)を有する合胞体栄養膜細胞に基づいて胎児起源の細胞を認識することが想定できる。
【0128】
従って、工程b)における「推定」又は「推定される」という用語は、胎児起源の細胞が存在するという強い蓋然性を示す。
【0129】
工程a)の間に保持された細胞の遺伝分析は、これらの細胞の各々の胎児又は母親起源に関する徴候を得ることにより、その推定を強めることができる。特に、高感度かつ特異的な検出及び診断を目的として、胎児起源であることが推定される細胞が、その後に、全く観察されない場合に、工程a)が繰り返されるだろう。この実施態様により、遺伝分析は、工程a)の間に保持され、胎児起源が推定される特定の細胞を含む、全ての細胞について、特に少数の細胞、1〜20個の細胞、とりわけ1〜10個の細胞のゲノムについて確立されるか、又は対照的に、分析は、例えば、1、2、3つの細胞のゲノムについて、有利には個々に単離された細胞のゲノムについて実施されるだろう。
【0130】
特定の実施態様において、フィルター上に保持された細胞の胎児又は母親起源の推定の分析は、胎児細胞に特有の免疫学的又は細胞学的マーカーの存在を調べることにより実施される。
【0131】
「胎児細胞に特有の免疫学的マーカー」という用語は、任意の抗原又は抗原の組み合わせ物であって、その発現が胎児細胞と母親細胞との間で通常は著しく異なるものであり、これは、前記抗原又は抗原の組み合わせ物に対する特異的な抗体又は抗体の組み合わせ物を用いて検出されてよい。前記免疫学的マーカーの特定の例は、国際特許出願WO−A−90/06509に記載の、栄養膜細胞と関連する抗原である。この出願の開示は、参照により本明細書に援用する。例として、胎児細胞に特有の免疫学的マーカーの存在についての調査は、
・胎児細胞に特有の抗原に対する少なくとも1つの抗体と、母親サンプル中に含まれる細胞とを接触させる工程;及び
・フィルター上に保持された細胞について、前記細胞の表面に発現している抗原と前記抗体との特異的結合を測定する工程、
からなり;細胞と抗体との前記接触は、ろ過工程の前又は後に実施される。選択する抗体は、ポリクローナルタイプ又はモノクローナルタイプであってよい。
【0132】
胎児細胞に特有の抗原の例は、胎盤性アルカリホスファターゼの抗原である。
【0133】
別の実施態様において、細胞の胎児起源の推定は、細胞性栄養膜細胞及び/又は合胞体栄養膜細胞(syncytiotrophoblastic cell)の特異的な細胞学的マーカーを決定することにより分析されてよい。用いられてよい細胞学的マーカーには、フィルター上に保持され得る他のタイプの循環細胞と区別可能な胎児細胞の全ての生物学的特徴が含まれ、特に、細胞サイズ、形状、特定の小器官(organites)の存在及びサイズ、細胞核のサイズ及び数、クロマチン構造など、又はこれらの細胞学的特徴の任意の特定の組み合わせが含まれる。細胞学的特徴は、細胞学で通常用いられる染色、特にヘマトキシリン−エオシン染色を用いて細胞を染色し、光学顕微鏡により標識化細胞を観察することにより観察されてよい。
【0134】
本発明はまた、以下:
【0135】
【表6】

から選択されるヌクレオチド配列を含むか、又は前記配列からなることを特徴とする、生物学的サンプル由来のDNA量を増幅するためのプライマーとして使用され得るポリヌクレオチドにも関する。
【0136】
変異オリゴヌクレオチドは、例えば、その配列が由来するプライマーと、少なくとも60%の同一性、好ましくは80%、より好ましくは95%以上の同一性を有する。
【0137】
前記変異オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーに対して1つ又は複数の配列の変更、特に1つ又は複数の欠失、付加、又は置換タイプの変更を有する。
【0138】
特定の実施例において、前記変異オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーと同じサイズを有する。
【0139】
さらに特定の実施例において、前記変異オリゴヌクレオチド長は、その配列が由来するプライマー長に対して10〜20%短いか、又は場合により、その配列が由来するプライマー配列に対して、例えば10〜40%、特に30〜40%大きい。
【0140】
上述のオリゴヌクレオチドの変異プライマーは、例えば、前記配列の5'末端に1つ又は複数のヌクレオチドを付加することにより、これらのヌクレオチドに由来してよい。
【0141】
前記オリゴヌクレオチドがプライマーとして用いられて、生物学的細胞サンプル由来のDNAを増幅できる場合、特に細胞の胎児起源のマーカーを含む配列を増幅できるか、又はF508遺伝子座の突然変異を含む配列、若しくは嚢胞性線維症に特有のCFTR遺伝子とリンケージを形成する遺伝的多型マーカーを含む配列を増幅できる場合に、前記オリゴヌクレオチドは、その配列が由来するプライマーと同じ特性を有する。
【0142】
本発明はまた、配列が以下:
【0143】
【表7】

を含むか、又は前記配列からなるポリヌクレオチド対から選択されることを特徴とする、生物学的サンプル由来のDNA量を増幅するためのプライマー対として使用するためのポリヌクレオチド対にも関する。
【0144】
本発明はまた、DNA調製物の第一増幅フェーズで使用される、標的配列に対して外部プライマーと称されるプライマー対と、前記第一増幅フェーズにより得られる増幅産物に対する第二増幅フェーズで使用される、前記外部プライマーに対して内部プライマー又はネスティッドプライマーと称される別のプライマー対との組み合わせ物(association)にも関し、前記プライマー対は、以下:
・F:外部プライマーとして、5'−AAAAACCCTGGCTTATGC−3';R:5'−AGCTACCATAGGGCTGGAGG−3';及び内部プライマーとして、F:5'−CTTGGGGACTGAACCATCTT−3';R:5'−AGCTACCATAGGGCTGGAGG−3';又は
・F:外部プライマーとして、5'−GGAATCTGTTCTGGCAATGGAT−3';R:5'−TTGCAATGAGCCGAGATCCTG−3';及び内部プライマーとして、F:5'−AAAGGCCAATGGTATATCCC−3';R:5'−GCCCAGGTGATTGATAGTGC−3';又は
・F:外部プライマーとして、5'−CAGATGCTCGTTGTGCACAA−3';R:5'−ATACCATTTACGTTTGTGTGTG−3';及び内部プライマーとして、F:5'−GATCCCAAGCTCTTCCTCTT−3';R:5'−ACGTTTGTGTGTGCATCTGT−3';又は
・F:外部プライマーとして、5'−TGACAGTGCAGCTCATGGTC−3';R:5'−GGTCATTGGTCAAGGGCTGCT−3';及び内部プライマーとして、F:5'−GGATAAACATAGAGCGACAGTTC−3';R:5'−AGACAGAGTCCCAGGCATT−3';又は
・F:外部プライマーとして、5'−TTGACATTCTTCTGTAAGGAAGA−3';R:5'−AGGCTTGCCAAAGATATTAAAAG−3';及び内部プライマーとして、F:5'−CCCTCTCAATTGTTTGTCTACC−3';R:5'−GCAAGAGATTTCAGTGCCAT−3';又は
・F:外部プライマーとして、5'−TTGTGAATAGTGCTGCAATG−3';R:5'−ATGTACACTGACTTGTTTGAG−3';及び内部プライマーとして、F:5'−ATGTACATGTGTCTGGGAAGG−3';R:5'−TTCTCTACATATTTACTGCCAACA−3'、又は
・F:外部プライマーとして、5'−TGGAGCCTTCAGAGGGTAAA−3';R:5'−TGCATAATCAAAAAGTTTTCACA−3';及び内部プライマーとして、F:5'−TCTGTTCTCAGTTTTCCTGG−3';R:5'−TCTTACCTCTTCTAGTTGGC−3';又は
・F:外部プライマーとして、5'−AAGTAATTCTCCTGCCTCAG−3'(SEQ ID NO:29);R:5'−AGCTACTTGCAGTGTAACAGCATTT−3'(SEQ ID NO:30);及び内部プライマーとして、F:5'−CCTTGGGCCAATAAGGTAAG−3'(SEQ ID NO:31);R:5'−AGCTACTTGCAGTGTAACAGCATTT−3'(SEQ ID NO:32);又は
・F:外部プライマーとして、5'−GAATTATAACCGTAACTGATTC−3'(SEQ ID NO:33);R:5'−GAGATAATGCTTGTCTGACTTC−3'(SEQ ID NO:34);及び内部プライマーとして、F:5'−CTGATTCATAGCAGCACTTG−3'(SEQ ID NO:35);R:5'−AAAACATTTCCATTACCACTG−3'(SEQ ID NO:36)、
から選択される。
【0145】
本発明はまた、プライマーが以下:
【0146】
【表8】

から選択されることを特徴とする、母親サンプルから単離された胎児細胞由来のゲノムDNAからの、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法との関連におけるプライマーの使用にも関する。
【0147】
本発明はまた、プライマーが以下:
【0148】
【表9】

から選択されることを特徴とする、単一の回収細胞のゲノム由来のDNA調製物における、母親サンプルから回収された単一細胞の胎児特徴のin vitro同定方法との関連におけるプライマーの使用にも関する。
【0149】
本発明はまた、上述の1つ又は複数のプライマーを含み、適切な場合には、嚢胞性線維症を検出するための説明書を含む、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前検出用キットにも関する。
【0150】
本発明との関連で用いられる手段及び方法(特にプライマー)は、嚢胞性線維症の検出との関連で用いられてよく、適切な場合には、そのままであるか、又は診断手段及び方法としての他の試験により補われるものと考えられてよい。
【0151】
[実施例]
[実施例1:栄養膜細胞の効果的な豊富化、及び遺伝子型決定により胎児であることが示された単一細胞のゲノムに限定される突然変異の分析による、嚢胞性線維症の素因の非侵襲的診断]
(1−1.方法)
嚢胞性線維症の出生前診断を必要とする、11〜13週の妊婦である12人の女性の末梢血をISET(腫瘍性上皮/栄養膜細胞のサイズによる単離)により研究した。
【0152】
6 mLの母親血液(CVS前)及び2 mLの父親血液を、エチレンジアミンテトラ酢酸バッファーに回収した。父親及び母親DNAを1 mLの血液から抽出し、マイクロサテライトマーカー(STR)D7S480、D7S486、D16539、D16S3018、D21S1435、及びD21S1437の特異的プライマーを用いたアレルタイピング(allelotyping)のために1.5 ngを用いた。外部(アウト)プライマー及び内部(イン)プライマー(フルオレセイン含有)のセットを各STRマーカーのために用いた(プライマー配列及びPCRプロファイルについての表1を参照されたい)。上述のとおり(Vona et al, 2000, 2002)、回収後3時間までに、4 mLの母親血液をISETにより処理した。簡潔に述べると、ISETバッファーを用いて血液サンプルを1:10に希釈し、ISET装置(Metagenex, Paris, France)を用いて処理した。血液1 mLからの大型細胞を、ISET膜上の0.6 cm直径円形スポットに濃縮した。ISETにより処理した各母親血液サンプル2 mLを分析した。上皮細胞を同定するためのKL1抗体を用いた免疫組織化学分析(Vona et al, 2002)及びヘマトキシリンでの染色の後、単一細胞の、レーザーを用いたレーザーマイクロダイセクションを、Leica(AS LMD)とNikonレーザー(TE 2000 U、Nikon France SA)を備えた顕微鏡とを用いて実施した。単一細胞の回収を保証するために、マイクロダイセクションの前後の細胞、及びクロット上のマイクロダイセクションした細胞の写真を撮影した。
【0153】
回収細胞のそれぞれを、溶解バッファー(100 mmol/LのTris−HCl、pH=8、400μg/mLのプロテイナーゼK)15μLに37℃、16時間溶解し、それに続いて、94℃、15分間、プロテイナーゼKを失活させた。プライマー伸長−前増幅(PEP)を60μLの体積で上述のとおり(Vona et al, 2000, 2002)実施した後、追加増幅のために6μLのアリコートを用いた。母親及び父親DNAを遺伝子型決定することにより、情報提供物として示される特異的STRプライマーを用いて、単一細胞の遺伝子型決定を実施した。単一細胞から得られ、STR遺伝子型決定により胎児であることが示されたPEP産物の別の6μLのアリコートを、ΔF508遺伝子座を含むプライマーを用いたΔF508対立遺伝子の調査のために用いた。6μLのPEP産物、10 mmol/LのTris−HCl、50 mmol/LのKCl、25 mmol/LのMgCl2、200μmol/Lの各デオキシヌクレオチド、0.5μMの各外部プライマー、及び2UのTaq Gold(Applied Biosystems, Foster City, CA)を含む40μLで増幅を実施した。内部プライマー及び同一プロトコルを用いて、40μL中、2μLの第一のPCR産物を再度増幅させた(プライマー配列及びPCRプロファイルについての表1を参照されたい)。ついで、1:20希釈したPCR産物1μLを、13.5μLの脱イオン化Hi−Diホルムアミド、0.5μLのGenescan 400 HDマーカー(ROX)(Applied Biosystems, Foster City, CA)と混合し、ABI Prism 3100自動シーケンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA)上にロードした。Genescan及びGenotyperソフトウェア(Perkin Elmer, Foster City, CA)を用いて、プロファイルを分析した。
【0154】
【表10】

【表11】

【0155】
(2−2.結果)
両親のいずれもΔF508対立遺伝子のキャリアではないか、又は1人のみがそのキャリアであるカップルにおいて、我々は、第一の罹患した子供(発端患者)及び第7染色体に位置する情報提供STRプライマーに関する情報を、Laboratoire de Genetique Medicale[Medical Genetics Laboratory]に要求した。ついで、これらのプライマーを用いて、胎児細胞由来のDNAを増幅し、間接診断方法を実施した(図2及び3を参照されたい)。Microspin S−400RHカラム(Amersham Bioscience, Buckinghamshire, GB)でPCR産物を精製した後、Big Dye Terminator sequencing kit(Applied Biosystemes、Foster City, CA)を用いて配列を分析した(Vona et al, 2002)。CVS結果を知らない研究者により、全盲アプローチを用いて、カップル4及び12(表2)における母親由来の血液サンプルを分析した。
【0156】
PBL細胞から単離された父親及び母親DNAについて試験したもの(表1)の中から同定した少なくとも2つの情報提供マーカー(表2)を、マイクロダイセクションした細胞のアレルタイピングのために用いた。これは、わずか2 mLの母親血液から少なくとも2つの胎児細胞を同定することを可能にした。
【0157】
ついで、ΔF508遺伝子座を含むネスティッドプライマーを用いて、単一胎児細胞由来のDNAを分析した。この分析は、3 bp(CTT)の欠失(120 bpの代わりに、117 bpのPCR産物、図1を参照されたい)により特徴づけられるΔF508対立遺伝子を明らかにし得、胎児が嚢法制線維症に罹患するか(ΔF508対立遺伝子のホモ接合体の存在)、ΔF508対立遺伝子のキャリアであるか(ΔF508対立遺伝子のヘテロ接合体の存在)、又は正常であるか(ΔF508対立遺伝子のないホモ接合体)の識別を可能にした。表2に示すとおり、ΔF508対立遺伝子を保持するカップルの7人の女性の母親血液から単離した全ての胎児細胞において、ΔF508対立遺伝子のヘテロ接合体の存在を発見した。6つの胎児細胞において、ΔF508の特異的PCR産物を配列決定することによりこの結果が裏付けられた(図1)。ΔF508対立遺伝子を保持する3組の他のカップルの母親血液から単離した胎児細胞は、ΔF508対立遺伝子の不在についてホモ接合体であることを示した。カップル11から単離した胎児細胞(図2)は、ΔF508対立遺伝子のないホモ接合体(homozygous absence of the ΔF508 allele)を示した。父親対立遺伝子中の未知の突然変異の存在を、第7染色体上の情報提供STRプライマーにより調べた(間接診断)。この分析は、分析した胎児細胞中に突然変異対立遺伝子が存在することを証明した。カップル12の母親血液から単離した胎児細胞を、第7染色体上の情報提供STRプライマー(表2を参照されたい)を用いて試験し、間接診断を行った。この結果は、胎児が、母親及び父親の両方から、突然変異対立遺伝子のいずれも受け継いでいないことを示した(図3及び表2)。胎児細胞について得られた全ての結果は、CVSにより得られた結果と一貫していた。
【0158】
【表12】

【0159】
(3−3.考察)
我々は、栄養膜細胞の効果的な豊富化、及び遺伝子型決定により胎児であることが示された単一細胞のゲノムに限定される突然変異の分析による、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断の実現可能性をここに示す。結果は、このアプローチが、ΔF508対立遺伝子を保持するカップル、及び未知の突然変異のキャリアの両方に有効であることを示すが、ただし、後者の場合には、第一に罹患した子供(発端患者)についての情報が使用可能であるという条件である。技術的観点から、出生前診断への単一細胞分析の適用は、アレルドロップアウト(ADO)という、PCRが2つの対立遺伝子配列の1つを増幅できないというリスクにより制限される。我々の試験は、ADOが、プライマー配列及びPCRプロファイルと厳密に関係することを裏付けた。これらのパラメーターが一旦定義されると、ADOはもはや我々のアッセイに対する制限ではない。単一細胞の遺伝子型決定工程の間、たとえADOが生じるとしても(我々はこれを2回観察している)、1つの胎児細胞の損失といる結果が生じるのみであり、誤った診断を行うというリスクは伴わない。実際に、我々は、2つのSTRマーカーにより、マイクロダイセクションした細胞全体の胎児遺伝子型を確認した。単一胎児細胞において、嚢胞性線維症突然変異を増幅するために、我々は、分析される胎児細胞において、一貫した結果を得た。この段階において、2つ以上の胎児細胞から得られたPEP産物を混合することが可能であり、この手順により、ADOのリスクが排除されることが既知である。しかし、この研究において、複数の単一胎児細胞のDNAを必ずしも混合しなくとも、単一胎児細胞についての結果が得られた。本明細書に記載のデータは、循環胎児細胞について嚢胞性線維症の出生前診断を実施する、信頼できるアプローチを初めて示すものであり、嚢胞性線維症に罹患する子供を有するリスクのある両親に出生前の選択を提供するものである。
【0160】
[実施例2:特定の循環細胞、特に胎児起源の細胞のサイズに応じて、フィルター上に濃縮するための、純粋又は希釈母親血液サンプルのろ過、及びそれらの胎児又は母親起源の推定を得るための、フィルター上に保持された細胞の分析]
0.175%サポニン、0.2%パラホルムアルデヒド、0.0372%EDTA、及び0.1%BSAを含むろ過バッファーで血液サンプルを10倍希釈し、ついで調整(calibrated)した8μm直径孔を有する調整ポリカーボネートフィルターを用いてろ過した。フィルター上に保持された細胞を、直径0.6 cmの円形スポットに回収した。エオシン及びヘマトキシリンで染色した後、顕微鏡下、スポットを分析し、低倍率及び高倍率で各細胞を撮影した。Adobe Photoshopソフトウェアを用いて細胞サイズを測定し、参照として、8μmサイズの孔を撮影(take)した。Pixcell II Arcturus(Mountain View, CA)顕微鏡下、写真は、細胞の同定を可能にした。図2には、この方法により得られた顕微鏡分析を示す。
【0161】
フィルターの前処理を全く行うことなく、レーザーキャプチャーにより各細胞をマイクロダイセクションした。毎回単一細胞が回収されることを確保するために、キャップ(CapSure(商標)HS)上に置かれた(deposited)マイクロダイセクション細胞とともに、マイクロダイセクションの前後にフィルターを撮影した。ついで、15μLの溶解バッファー(100 mMのTris−HCl、pH=8、400μg/mLのプロテイナーゼK)に、細胞を37℃、16時間溶解した。遠心分離後、溶解物を回収し、90℃、10分間、プロテイナーゼKを失活させた。Zhang et al(上記参照されたい)により記載されるとおり、プライマー伸長により前増幅した後、エタノールでDNAを沈殿させ、10μLの水に再懸濁した。ついで、本出願に記載のプライマーを第一に用いて、各サンプルを試験した。
【0162】
[実施例3:増幅工程]
2μLのPEP産物(プライマー伸長−前増幅)、10 mMのTris−HCl、50 mMのKCl、1.5 mMのMgCl2、0.01%ゼラチン、200 mMの各デオキシヌクレオチド、20ピコモルの用いる各プライマー、及び1 UのTaqポリメラーゼ(Perkin−Elmer Cetus, Emeryville, CA)を含む、20μL体積の反応混合物についてPCRを実施した。Perkin Elmer 9700 thermocyclerにおいて、94℃、5分間の最初の変性ステップ後、本発明の外部プライマーを用いて、40回の増幅サイクル(94℃30秒間、55〜61℃30〜45秒間、72℃30秒間)を行い、本発明の内部プライマー及び同一プロトコルを用いてこの増幅産物を再度増幅し、ついで、最終的な伸長ステップを72℃、5分間実施した(表1を参照されたい)。
【0163】
[実施例4:嚢胞性線維症の安全な出生前診断を可能にする、母親血液から単離した胎児細胞における父親及び母親から受け継いだCFTR遺伝子における突然変異の検出]
単一細胞についての遺伝子型決定工程を迅速化するために、マルチSTRマーカーアプローチを開発し、アレルドロップアウト(ADO)の問題を回避するために、一緒にした3つの栄養膜細胞由来のゲノム(プール化ゲノム)についてΔF508突然変異の分析を行った。
【0164】
(1−1.方法及び装置)
(血液の除去及びISET)
6 mLの母親血液(CVS前)及び1 mLの父親血液を、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)バッファーに回収した。父親及び母親DNAを1 mLの血液から抽出し、フルオレセインマーカーを保持し、CFTR遺伝子座と連鎖するSTRマーカー(D7S480、D7S486、D7S490、D7S523)又は他のゲノム遺伝子座(D16539、D16S3018、D21S1435、及びD21S1437、上記表1を参照されたい)に特異的であるプライマーを用いたアレルタイピングのために1.5 ngを用いた。
【0165】
母親血液の残りの5 mLを、上述のとおり、ISET装置(Metagenex, Paris, France;www.metagenex.fr)を用いて、除去後3時間までにISETにより処理し、−20℃で保存した(Beroud et al, 2003;Vona et al, 2002)。ISETにより処理した各母親血液サンプル3 mL(すなわち、フィルター上の3つのスポット)を分析した。
【0166】
上皮細胞を同定するためにKL1抗体を用いて免疫組織化学分析を行った後(Vona et al, 2002)、Nikon TE 2000 Uレーザー(Nikon, Paris, France and MMI, Zurich, Switzerland)が提供される顕微鏡を用いて、単一細胞レーザーマイクロダイセクションを行った。ISETは、血液中の上皮細胞を豊富化するが、約0.02%の末梢血白血球も保持する(Vona et al, 2002;Vona et al, 2000)。
【0167】
従って、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断のための分子プロトコルを開発するために、5つの既知のΔF508キャリア由来の血液をISETにより処理し、75個の単一白血球細胞をマイクロダイセクションした。
【0168】
(細胞溶解、プライマー伸長−前増幅、及びSTR遺伝子型決定)
マイクロダイセクションした細胞のそれぞれを、15μLの溶解バッファー(100 mmol/LのTris−HCl、pH=8、400μg/mLのプロテイナーゼK)に60℃、2時間溶解し、それに続いて、94℃、15分間、プロテイナーゼKを失活させた。プライマー伸長−前増幅(PEP)(Zhang et al, 1992)を行った後、400μMのランダムプライマー(genPEP(商標)75 OD kit, Genetix, Boston, USA)溶液5μL、PCRバッファー(25 mMのMgCl2/ゼラチン(1 mg/mL)、100 mMのTris−HCl、pH=8.3、500 mMのKCl)6μL、4 dNTP(各2 mM)の混合物3μL、及びTaqポリメラーゼ(Applied Biosystems, foster City, USA)1μL(5 U)を、最終体積60μLで、溶解細胞に添加した。
【0169】
4μLのPEP産物、10 mMのTris−HCl、50 mMのKCl、2.5 mMのMgCl2、200μMの各デオキシヌクレオチド、0.5μMの各プライマー、及び2 UのTaq Gold(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を含む40μLについて、別のSTR増幅(上記表1を参照されたい)を実施した。ついで、1:20希釈した1μLのPCR産物を13.5μLの脱イオン化Hi−Diホルムアミド及び0.5μLのGenescan 400 HD(ROX)マーカー(Applied Biosystems)と混合し、ABI Prism 3100自動シーケンサー(Applied Biosystems)に置いた。Genescan and Genotyperプログラム(Applied Biosystems)を用いてプロファイルを分析した。
【0170】
我々は、75個のマイクロダイセクション白血球について実施したSTR試験において、PCR失敗率及びアレルドロップアウト(ADO)を計算することにより、個々の細胞遺伝子型決定効率を試験した。我々は、2つの区別可能な対立遺伝子を与える、3つのヘテロ接合体マーカー(下記表3を参照されたい)を使用した。PCR産物を産生する細胞数としてPCR効率を計算し、用いた3つのSTRマーカーの少なくとも1つで2つの対立遺伝子を示す細胞数としてPCR精度を計算した。
【0171】
【表13】

【0172】
(個々の細胞についてのF508遺伝子座を増幅するためのプロトコル)
F508遺伝子座をカバーするフルオレセイン含有プライマーを用いたPCR増幅のために(上記表1を参照されたい)、60μLのPEP産物から4μLのアリコートを除去した。個々の細胞のゲノムを、個々に試験し(1増幅当たり4μLのPEP産物)、3つからなるグループについては、F508増幅のために、30μLのPEP産物を混合し、12μL(90μLから)を得ることにより試験した。4μLのPEP産物(又は12μLのPEP産物を含む100μL)、10 mMのTris−HCl、50 mMのKCl、2.5 mMのMgCl2、200μLの各デオキシヌクレオチド、0.5μLの各プライマー、及び2 UのTaq Gold(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を含む40μLについて、増幅を行った。このプロトコルは、DNAコピーを失うという高いリスクを冒すDNA精製工程を回避した。ついで、1:20希釈した1μLのPCR産物を13.5μLの脱イオン化Hi−Tiホルムアミド及び0.5μLのGenescan 400 HTマーカー(ROX)(Applied Biosystems)と混合し、自動ABI Prism 3100シーケンサー(Applied Biosystems)に置いた。Genescan and Genotyperプログラム(Applied Biosystems)を用いてプロファイルを分析した。
【0173】
(12人の妊娠女性における、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断へのプロトコルの適用)
嚢胞性線維症について複合ヘテロ接合性を示す子供(1の発端患者;カップル11及び12、表4)を既に有した2人の女性を含む、嚢胞性線維症の出生前診断を要求している、妊娠11〜13週の12人の女性の末梢血液を我々は試験した。全ての女性は、地域倫理委員会(local ethics committee)により認可されている、この研究にインフォームドコンセントを与えた。
【0174】
【表14】

【0175】
STR遺伝子型決定により胎児であることが示された循環上皮細胞において、個人レベル及び3つの細胞のグループで、ΔF508突然変異の存在を我々は調べた。試験グループを、上述のとおり、血液サンプル当たり3つの胎児細胞のPEP産物30μLを混合し、ついで12μL(F508増幅について90μLから)を得ることにより産生した。MicroSpin S−400RHカラム(Amersham Bioscience, Bucks, UK)でPCR産物を精製した後、Big Dye Terminator sequencing kit(Applied Biosystems)を用いて配列分析を行った(Vona et al, 2002)。両親のいずれもΔF508突然変異のキャリアでないか、又は両親の1人のみがΔF508突然変異のキャリアであるカップルにおいて、第7染色体上のCFTR遺伝子座と連鎖とする多型情報提供STRマーカーを用いた間接法により胎児細胞分析を行い、これは発端患者と胎児ハプロタイプとの比較を可能にした。
【0176】
病気の子供のためのHopital NeckerのBiochemistry Departmentで非侵襲的試験を行い、この試験には、同一の病院のMedical Genetics Departmentで実施した侵襲的分析の結果を知らされていないオペレーターによる全盲アプローチを用いた。
【0177】
(統計分析)
統計的な群間の頻度分析(statistical inter group frequency analysis)のためにchi2検定を用いた。0.05未満のp値が有意であると考えられた。
【0178】
(2−2.結果)
(単一細胞STR遺伝子型決定)
STR遺伝子型決定プロトコルを最適化するために、1つ又は3つのヘテロ接合体STRマーカー(M1、M2、及びM3(上記表3を参照されたい))を用いて、75個の個々の白血球のゲノムを我々は分析した。これは、遺伝子型決定工程において、2つの対立遺伝子を区別し、アレルドロップアウト(ADO)を測定することを可能にした(表3を参照されたい)。M1又はM2又はM3の1つのみのマーカーを用いることにより、それぞれ、77%、72%、及び69%のPCR効率(PCR産物を産生する細胞数)、並びにそれぞれ、72%、70%、及び75%のPCR精度(2つの対立遺伝子を有する細胞数)を得た。3つのSTRマーカーを用いて得られた結果を組み合わせた場合には、PCR効率(用いた3つのSTRマーカーの少なくとも1つでPCR産物を与える細胞数)は95%であり、PCR精度(用いた3つのSTRマーカーの少なくとも1つで、2つの対立遺伝子を有する細胞数)は94%に有意に増加した(表3を参照されたい)。これらのデータは、個々のマイクロダイセクション細胞の遺伝子型決定工程において、情報提供マルチマーカーSTR遺伝子型決定を実施することにより、効率及びPCR精度が有意に高められたことを示す。
【0179】
(CFTR遺伝子のF508遺伝子座の増幅)
アレルドロップアウト(ADO)の問題に打ち勝つプロトコルを開発するために、我々は、証明済みのΔF508キャリア由来の75個の個々の白血球由来のDNAを用いた。この場合において、正常対立遺伝子と突然変異対立遺伝子とは、個々の細胞増幅において、それらが異なるサイズを有するので(それぞれ120 bp及び117 bp)(例えば、図5A'を参照されたい)、区別可能である;我々は、75個の細胞のうちの67個において、少なくとも1つのF508対立遺伝子を検出した。他の8個の細胞では、いずれのシグナルも存在せず、これは、前増幅工程が不十分であったことを示した。従って、PCR効率は90%であった。PCRについて67個のポジティブ細胞のうち、我々は、これらの細胞の6個において、1つのアレルドロップアウト(ADO)を観察し(9%)、残りの61個の細胞において、2つの対立遺伝子の正確な増幅を観察したので、これは、91%のPCR精度をもたらした(表3を参照されたい)。
【0180】
アレルドロップアウトは確率現象であり、10の分析のうち約1の頻度(0.1)で対立遺伝子のどちらか一方に影響を及ぼすので、1/20(0.05)の頻度で同一対立遺伝子に影響を及ぼすだろう。従って、3つ以上の胎児細胞のDNAを混合したとしたら、同一対立遺伝子に影響を及ぼすアレルドロップアウトの頻度は、0.0001(0.05×0.05×0.05=0.000125)まで下がると我々は推定した。従って、我々は、30のランダムに選択した、3つからなるグループにおいて、白血球由来の67個のDNAサンプルのPEP産物を隠して(先行する結果を知らないオペレーターによる)混合し、上述のとおりのF508増幅及びフラグメント分析を行った。この場合、我々は、30の全ての試験において、アレルドロップアウトの不在を一貫して観察した(上記表3を参照されたい)。
【0181】
個々の細胞の結果と、混合サンプルの結果とを比較した場合には、3つの場合において、個々に分析した場合に1つのアレルドロップアウトを生じる2つの細胞由来のDNAと、個々に分析した場合に2つの対立遺伝子を有する1つの細胞由来のDNAとを混合したことを観察した。3つのサンプルを混合した結果は、アレルドロップアウトの不在と対応する。1つの場合において、我々は、個々の細胞試験においては結果として1つのアレルドロップアウトを個々に生じるが、共に混合した場合にはアレルドロップアウトを生じない3つの細胞を混合した。ついで、我々は、9つのランダムに選択した、3つからなるグループにおいて、1つのアレルドロップアウトを有する、6つの細胞のDNAを混合した。結果は、試験した全てにおいて、アレルドロップアウトの不在を示す。群分析において、完全混合物において、1つ(及び同一)の2対立遺伝子由来のDNA配列を含む確率は、上記で計算したとおり、非常に低い(1/10000)という事実により、我々はこの観察を説明する。従って、個々の胎児由来の3つの細胞からのPEP産物30μLを混合し、PCR用に12μLを得ることにより、2対立遺伝子(bi−allele)配列を有し、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断において、1つのΔF508対立遺伝子の存在を検出するための信頼できる試験を有する可能性が顕著に増加し得る、と我々は結論づける。
【0182】
(嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断用プロトコル(図4))
得られた結果に基づき、我々は、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断用の以下のプロトコルを定義した。母親血液(1 mL)及び父親血液(1 mL)から抽出したDNAを、情報提供STRマーカーを同定するためのSTRプライマーを用いて比較した。ISETを用いて、母親血液(5 mL)由来の胎児循環栄養膜細胞を豊富化した。ついで、KL1免疫マーキング及び細胞形態学により同定される栄養膜細胞を、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)により、ISETフィルターから個々に採取し、ついで、細胞溶解後、それらのDNAを分析する。個々の細胞の完全ゲノムを、ランダムプライマー伸長増幅(PEP)(最終体積:60μL)により最初に増幅する。PEP産物のアリコート(4μL)を、3つの情報提供STRマーカーでの遺伝子型決定のために使用し、DNAが胎児起源(母親及び父親の両方の対立遺伝子を有する)であるのか、又は母親起源であるのかを決定する。第7染色体上の情報提供STRマーカーは、嚢胞性線維症の間接診断を可能にする(発端患者が利用可能な場合)。アレルドロップアウト(ADO)のリスクを回避し、かつ嚢胞性線維症診断を確実に実施するために、3つの胎児細胞由来のPEP産物のアリコート(30μL)を混合し、12μLを、特異的F508プライマーを用いた増幅に使用する。
【0183】
(嚢胞性線維症を有する子供を有するリスクにさらされている12のカップルに対するプロトコルの適用)
ついで、嚢胞性線維症に罹患する胎児を有するリスクにさらされている母親から除去した血液細胞に、この改良方法を適用した。遺伝子型決定分析は、例えば、各母親血液3 mLから少なくとも3つの胎児細胞を同定することを可能にした(図5のA、B、及びCを参照されたい)。これらの胎児細胞を個々に、及びさらにグループで試験した。2人の両親がΔF508のキャリアであるグループ1〜10(上記表4、及び図5を参照されたい)において、我々は、ΔF508遺伝子座をカバーするプライマーを用いて、胎児細胞から抽出したDNAを研究した(図5を参照されたい)。この試験は、120 bpの代わりに117 bpのPCR産物を産生する3つの塩基対(CTT)の欠失により特徴づけられるΔF508突然変異を同定することを可能にした(図5A'、B'、及びC'を参照されたい)。ついで、ΔF508突然変異を保持するヘテロ接合体胎児(カップル1、3、5、7、9、10)(図5A'を参照されたい)、ホモ接合体胎児(カップル2、4、及び6)(図5B'を参照されたい)、及び嚢胞性線維症について突然変異胎児ホモ接合体(カップル8)(図5C'を参照されたい)を同定した。6つの個々の胎児細胞において、遺伝子型決定により我々が得た結果は、F508遺伝子座の特定PCR産物を配列決定することにより裏付けられた(図5A''、B''、及びC''を参照されたい)。遺伝子型決定により得られたデータが極めて明確であったことを考慮して、配列分析を系統的には行わなかった。我々は、各CFCを個々に試験し(上記表4を参照されたい)、各母親サンプルにおいて同定した3つのCFCを混合することにより同一の結果を得た。従って、アレルドロップアウト頻度は、我々が白血球について観察したもの(6/67)よりも、CFC由来のサンプルのほうが低かった(0/33)。我々は、3つの胎児細胞由来のPEP産物グループを発端とするPEP産物グループにおいて、アレルドロップアウトを観察しなかった。
【0184】
我々はまた、嚢胞性線維症に罹患した兄弟姉妹(発端患者)由来のDNAが、突然変異CFTR対立遺伝子と連鎖するSTR対立遺伝子を同定するために、利用可能であるという条件で、未知のCFTR突然変異を有するカップルにおいて、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断を実施できることも示した。カップル11において(表4を参照されたい)、父親はΔF508突然変異のキャリアであり、母親は未知突然変異のキャリアであった(図6A、B、及びCを参照されたい)。第7染色体上のCFTR遺伝子座と連鎖する情報提供STRプライマーを用いた個々のCFCの分析(間接診断)(図6Aを参照されたい)、及びF508遺伝子座の特異的プライマーによる分析(図6Bを参照されたい)は、ΔF508突然変異の不在、及び発端患者のゲノムにおけるその存在により同定される未知の突然変異を保持する母親対立遺伝子のヘテロ接合体の存在を示した。従って、胎児は未知の母親突然変異のキャリアであった。カップル12において、母親及び父親は、未知の突然変異のキャリアであった(図6D及びEを参照されたい)。第7染色体上の情報提供STRプライマーを用いた胎児細胞の分析(間接診断)は、発端患者のゲノムにおいて先に同定された、突然変異対立遺伝子のないホモ接合体(homozygous absence of the mutated alleles)を示した。従って、胎児は完全に正常であった。
【0185】
本研究は、全体的に、盲検プロトコルを用いて実施しており、非侵襲的ISET−CF方法により得られた結果と、独立したチームによる絨毛膜サンプリング(CVS)により実施した侵襲的方法により得られた結果とは一貫した(上記表4を参照されたい)。
【0186】
(3−3.考察)
我々の研究は、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断が可能であり、臨床的デバイスと関連してルーチン適用され得ることを示す。実際に、CFTRに罹患する子供を出産する25%のリスクを有する12人の母親の血液から単離した胎児細胞への我々の方法の臨床的適用は、全ての場合において、健康又はキャリア又は罹患胎児を有する母親の正確な同定を有する確実な診断方法であることを盲検試験において証明した。
【0187】
この方法は、ISET及びレーザーマイクロダイセクションにより循環胎児細胞(CFC)を単離する工程、父親マーカーの存在を決定するために遺伝子型決定する工程(すなわち、これらの細胞の胎児起源を確認するため)、及び遺伝的に証明されている胎児特性の3つの細胞のプールにおける突然変異の分析工程を伴う。胎児細胞は、流産の追加のリスクを伴うことなく、全ての母親から単離され得、突然変異は、証明されている胎児特性の細胞プールを用いて分析されてよく、これは、アレルドロップアウト(ADO)の可能性をほぼゼロ、及び有意にゼロにするものである。これらの特徴は、試験を信頼可能なものとし、侵襲的出生前診断手順に代わる安全なものとして、潜在的に、試験を臨床的適用可能なものとする。
【0188】
非侵襲的出生前診断のルーチンプロトコルを開発することへの従来のアプローチは、循環胎児細胞(CFC)を豊富化及び/又は同定するために用いられる方法の低効率性により、失敗していた(Bianchi 1999;Bianchi et al, 2002)。さらに、母親細胞バックグラウンドとは異なるものとして胎児細胞を同定するためのY染色体を保持する胎児についての試験は、女性の胎児に適用できなかった。
【0189】
母親血漿中の細胞を含まない胎児DNAは、全血漿DNAの3〜5%に相当し(Lo et al, 1998)、胎児の性別、胎児のRh D型の状態、及び胎児の点突然変異であって父親から受け継いだものを決定することを可能にするが、これは、このDNAが母親の遺伝系列に存在しない場合に限られる(Li et al, 2005;Li et al, 2004)。しかし、このアプローチは、母親及び父親から受け継いだ突然変異の研究を当然に必要とする、嚢胞性線維症などの劣性疾患の出生前診断にはルーチン適用できない。
【0190】
我々の新規アプローチは、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断に対する全ての障害を克服する。出生後には存続しないと考えられている(Bianchi et al, 1996)、レアな循環栄養膜細胞は、末梢血白血球より大きいので、ISETにより豊富化される。これまでのところ、我々の研究所において試験した51のグループの全ての母親からの、わずか2〜4 mLの血液の単一サンプルにおいて、3つ以上の胎児細胞が発見される場合に、この豊富化はより効果的である。レーザーマイクロダイセクション後の個々の細胞の遺伝子型決定は、それらのゲノムへの二親性の寄与により、個々に胎児細胞を同定できる。個々の細胞を遺伝子型決定する際には、たとえADOが生じるとしても、個々の細胞由来のDNAが不完全に特徴づけられ、結果として除去されるという結果になる。正確でない診断を行うリスクは全くない。しかし、3つのSTRマーカーを用いた個々の細胞の遺伝子型決定は、個々の細胞の遺伝子型決定の有効性を高め、診断プロセスを促進することにより、ADOのリスクを非常に低減させることを我々は本明細書で示す。最後に、3つの胎児細胞のプライマー伸長−前増幅産物(PEP)の半分(60μLのうち30μL)をプールするという事実、及びF508増幅のために12μLを得るという事実は、突然変異分析が、「純粋な」胎児細胞DNAについて実施されることを可能にし、ADOによる正常対立遺伝子の欠失に起因する偽陽性診断を最小化する。2つ以上の単一細胞由来のDNAの混合物は、ほぼ完全に、ADOのリスクを取り除くことが実証されているが(Piyamongkol et al, 2003)、これらの研究は、PEPにより増幅されていない全ての細胞DNA(新鮮細胞由来)について実施されていた。我々のプロトコルにおいては、我々は、PEP産物のアリコートを使用し、個々の細胞由来のゲノムについて、及び単一の胎児を発端とする複数の細胞由来のゲノムのプールについての可能な複数のPCR分析を与える。
【0191】
我々の実験において、最適化したPEPプロトコルには、DNAの保護の程度(degree of conservation)(我々は、非侵襲的出生前診断のためのISETフィルターを−20℃で貯蔵する)、細胞タンパク質を溶解するためのプロテイナーゼKでの処理(複数のプロトコルを比較して試験した)、及びPEPのために使用する縮重プライマーの量(非侵襲的出生前診断プロトコルで使用する前に、プライマーバッチの全てを確認した)が含まれる。PEPはADOの出現を妨げないが(Hahn et al, 1998)、我々の結果は、大きなアリコートの形態で混合PEP産物を混合することによりADOが妨げられることをさらに示すことを確認する。
【0192】
実際に、75個の試験細胞を個々に分析することにより、及び3つの細胞のプールを分析することにより得られた結果は、ランダムに生じる1つのADOが、3つのプール細胞の全てにおいて同一の対立遺伝子の増幅を失敗させるであろう可能性が極めて低い(1/10000)ことを示した。ルーチンプロトコルにおいて、非侵襲的出生前診断が、10 mLの血液サンプルからの3つの胎児細胞の5〜10個のプールにおいて反復され得るならば、かつ試験がまた、同じ母親から採取した2つの追加血液サンプルにおいて反復され得るならば、誤った診断のリスクは、ほぼゼロとなり得る。
【0193】
単一細胞試験において、ΔF508に対する特異的PCRにより分析した33個の胎児細胞におけるものよりも(0%)、67個のリンパ球におけるもののほうが(9%)、より高いADO発生率を有することを観察した。リンパ球由来のDNAのコンパクトな特性により、このような細胞由来のDNAがPCRプライマーにほとんどアクセスできない場合に、それらのより高いADO率が説明され得ると我々は考えている。
【0194】
発端患者(同一のカップルの罹患した子供)由来のDNAが利用可能であり、CFTR遺伝子が位置している第7染色体上の情報提供STRプライマーが同定されているならば、両方の両親が未知のCFTR突然変異を保持している場合であってさえも嚢胞性線維症の出生前診断が可能である(間接診断)ことを我々は本明細書で示す。実際には、罹患した子供は、非常に多くの場合、両親がCFTR突然変異のキャリアである唯一の指標であるため、発端患者由来のDNAは通常利用可能である。この間接診断において、母親及び父親の両方の、診断に必要なSTR対立遺伝子が観察されなければならないので、誤りを回避するために、胎児細胞をプールする必要はない。従って、2つの対立遺伝子の存在は、ADOの不在及び信頼できる診断を保証する。
【0195】
結論として、我々は、健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の信頼できかつ安全な出生前診断を提供する、ISETに基づくプロトコルを開発した。
【0196】
オートメーション化レーザーマイクロダイセクション及び特異的PCR分析用のキットの開発によりスピードアップされ得るこの最適化ストラテジーは、臨床的応用において、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断へのアクセスを可能にするだろう。
【0197】
(3−4.実施例4のための参考文献)
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【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】図1には、ΔF508対立遺伝子を保持するカップルにおける、非侵襲的出生前診断を示す。D16S539マーカーを用いたカップル1(A)及びD16S3018マーカーを用いたカップル6(A')における、STRによる遺伝子型決定。カップル1(A)において、父親(P)は標的対立遺伝子についてホモ接合体であり、他方、母親(M)はヘテロ接合体であった。父親対立遺伝子(左)及び母親対立遺伝子(右)により特徴づけられる2つの胎児細胞(CF)を示す。カップル6(A')において、2人の親は、用いたSTRマーカーでヘテロ接合体であり、2つの胎児細胞(CF)は、母親対立遺伝子(左)及び父親対立遺伝子(右)を有した。カップル1(B)及び6(B')の胎児細胞で実施されたΔF508の遺伝子型決定(B及びB')は、カップル1由来の胎児が、突然変異対立遺伝子(AM)及び正常対立遺伝子(AN)を有するΔF508対立遺伝子のキャリアであり、他方、カップル6の胎児は、完全に正常である(正常対立遺伝子についてホモ接合体)ことを示した。C及びC':胎児細胞におけるΔF508遺伝子座の配列決定は、カップル1の胎児において、突然変異プロファイル及び正常プロファイルの両方を示し(C)、カップル6の胎児において、正常対立遺伝子のホモ接合体の存在を示す(C')ことにより、診断を裏付けた。
【図2】図2には、カップル番号11における、非侵襲的出生前診断を示す。・A:第7染色体における、情報提供マーカーD7S486を用いたDNA遺伝子型決定であって、両親(P及びM)がヘテロ接合体であり、罹患した子供(CI:発端患者)が、突然変異対立遺伝子d)及びa)を保持したことを示す。妊婦の2つの胎児細胞(CF)は、単一の突然変異対立遺伝子を保持しており、胎児がキャリアであって罹患しないことを実証する。・B:ΔF508遺伝子座のDNA遺伝子型決定であって、父親が、突然変異対立遺伝子(AM)及び正常な対立遺伝子(AN)のキャリアであったことを示す。発端患者は、突然変異ΔF508対立遺伝子のキャリアである一方、妊婦由来の2つの胎児細胞は、正常対立遺伝子についてホモ接合体である。従って、胎児は、ΔF508突然変異でない第7染色体上の突然変異のキャリアである。・C:父親DNA(P)、母親DNA(M)、発端患者(CI)、及び循環胎児細胞(CF)における2つの第7染色体の図式による表示:父親はΔF508対立遺伝子を保持する一方、母親は未知の突然変異を保持する。発端患者は、2つの突然変異を保持し、胎児細胞は、未知の突然変異のみを保持する。
【図3】図3には、カップル番号11における非侵襲的出生前診断を示す。・A:第7染色体における、情報提供マーカーD7S486を用いたDNA遺伝子型決定であって、両親(P及びM)はヘテロ接合体であり、発端患者(CI)は、突然変異対立遺伝子d)及びa)を保持することを示す。妊婦の2つの胎児細胞(CF)は、いずれの突然変異対立遺伝子も保持せず(c及びb)、胎児が完全に正常であることを実証する。・B:父親DNA(P)、母親DNA(M)、発端患者(CI)、及び循環胎児細胞(CF)における2つの第7染色体の図式による表示:父親は突然変異対立遺伝子a)を保持する一方、母親は突然変異対立遺伝子d)を保持する。罹患した子供は、突然変異対立遺伝子の両方を保持し、2つの循環胎児細胞は、2つの正常対立遺伝子を保持する。
【図4】図4には、嚢胞性線維症の非侵襲的出生前診断(NI−PND)用プロトコルを示す。・STR(ショートタンデムリピート);・ISET(上皮腫瘍のサイズによる単離);・LCM(レーザーキャプチャーマイクロダイセクション);・PEP(プライマー伸長−前増幅);・MC(母親細胞);・CFC(循環胎児細胞)。
【図5】図5には、ΔF508対立遺伝子を保持するカップルにおける、非侵襲的出生前診断を示す。・A、B、C:マーカーD16S539を用いたカップル1(A)、マーカーD16S3018を用いたカップル6(B)、及びマーカーD21S1435を用いたカップル8(C)におけるSTR遺伝子型決定。カップル(A)において、父親(P)は、標的対立遺伝子についてホモ接合体であり(1つのピーク)、他方、母親(M)は、ヘテロ接合体である(2つのピーク)。このカップル由来の2つの循環胎児細胞(CFC)は、父親対立遺伝子(左)及び母親対立遺伝子(右)により特徴づけられた。カップル6(B)及びカップル8(C)において、2組の両親は、用いたSTRマーカーでヘテロ接合体であり、2つの胎児細胞(CFC)は1つの母親対立遺伝子(左)と1つの父親対立遺伝子(右)とを有する。・A'、B'、C':カップル1(A')、カップル6(B')、及びカップル8(C')由来の循環胎児細胞(CFC)について実施したΔF508遺伝子型決定は、カップル1由来の胎児が、ΔF508対立遺伝子のキャリアであって、1つの突然変異対立遺伝子(AM)と1つの正常対立遺伝子(AN)とを有しており、他方、カップル6由来の胎児は完全に正常(正常対立遺伝子についてホモ接合体)であり、カップル8由来の胎児は嚢胞性線維症(CF)に罹患する(突然変異対立遺伝子についてホモ接合体)ことを示す。・A''、B''、C'':カップル1(A'')、カップル6(B'')、及びカップル8(C'')由来の胎児細胞におけるF508遺伝子座の配列決定は、カップル1(A'')由来の胎児において、突然変異及び正常プロファイルの両方を示し、カップル6(B'')由来の胎児において、正常対立遺伝子のホモ接合体の存在を示し、カップル8(C'')由来の胎児において、突然変異対立遺伝子のホモ接合体の存在を示すことにより診断を裏付ける。
【図6】図6には、未知のCFTR突然変異を有するカップルにおける、嚢胞性線維症(CF)の非侵襲的出生前診断を示す。・A、B、C:第7染色体上の情報提供マーカーD7S486を用いた、カップル11及び彼等の罹患した子供のDNA遺伝子型決定であって、父親(P)及び母親(M)はヘテロ接合体であることを示す。父親は、c)及びa)対立遺伝子を保持する一方、母親は対立遺伝子d)及びb)を保持する。彼等の罹患した子供(CI:発端患者)は、突然変異CFTR対立遺伝子と連鎖されなければならない、対立遺伝子d)及びa)を保持する。妊婦由来の2つのCFCは、対立遺伝子d及びcを保持し、胎児が嚢胞性線維症のキャリアであって、罹患しないことを実証している。・B:F508遺伝子座のDNA遺伝子型決定であって、父親が突然変異対立遺伝子(AM)及び正常対立遺伝子(AN)を保持することを示す。発端患者は、複合ヘテロ接合性を示し、父親のΔF508対立遺伝子及び母親のCFTR突然変異を保持する。2つの胎児細胞は、正常F508対立遺伝子についてホモ接合体である。総合すれば、A及びBからのデータは、胎児が母親のCFTR突然変異のキャリアであることを示す:CFTR対立遺伝子及びCFTRと連鎖するSTR対立遺伝子の図式による表示(a、b、c、d)。グレーブロック=未知のCFTR突然変異。・D、E:第7染色体上のD7S486マーカーを用いた、カップル12由来のDNAのSTR遺伝子型決定は、父親及び母親がヘテロ接合体であり、発端患者が、突然変異CFTR対立遺伝子と連鎖されなければならないa)及びd)のD7S486対立遺伝子を保持することを示す。妊婦由来の2つのCFCは、突然変異CFTR対立遺伝子と連鎖するc)及びd)のD7S486対立遺伝子を保持し、胎児が完全に正常であることを実証している。・E:CFTR対立遺伝子及びCFTRと連鎖するSTR対立遺伝子の図式による表示(a、b、c、d)。グレーブロック=突然変異CFTR対立遺伝子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体由来の試験されるべきDNAを含む、回収されている母親サンプルから単離した胎児細胞サンプルからの、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法であって、以下の工程:
a)胎児起源の細胞を含み得る純粋又は希釈母親サンプルにおける胎児細胞を豊富化する工程;
b)保持された細胞を分析し、胎児起源であると推定される細胞を選択する工程;
c)前記工程b)で選択した1つ又は複数の細胞の胎児起源を遺伝分析により実証する工程;並びに
d)前記工程c)で選択した細胞の胎児DNAについて、以下の工程:
・CFTR遺伝子上の調査される既知の突然変異を保持できる遺伝子座、又は分離の間にCFTR遺伝子の突然変異と遺伝的に連鎖(リンケージ)する遺伝子型多型を含む遺伝子座を増幅できるその能力について選択されるプライマー対を用いて胎児DNAを増幅する工程;
・前記増幅したDNA断片に対応する対立遺伝子について、調査される既知のCFTR遺伝子突然変異、若しくはCFTR遺伝子と遺伝的に連鎖する多型遺伝子座が存在するか又は不在であるかを同定する工程;並びに
・胎児対立遺伝子と、コントロールサンプルの対応する対立遺伝子とを比較し、増幅対立遺伝子の観察から、試験個体において、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の検出を測定する工程、
を用いて、ΔF508突然変異若しくは他の既知の突然変異を保持するCFTR遺伝子の対立遺伝子を調べるか、又はCFTR遺伝子の非同定病的突然変異と遺伝的に連鎖する遺伝子型多型を保持する遺伝子座の対立遺伝子を調べる工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程c)における、選択細胞の胎児起源の実証が、以下の工程:
i)所定の遺伝的多型を増幅して母親対立遺伝子と父親対立遺伝子とを区別でき、各選択細胞において、父親対立遺伝子及び母親対立遺伝子の存在により胎児ゲノムを認識できる、情報提供プライマーと称されるプライマーを用いて、1つ又は複数の選択細胞から、個々に回収したDNAを増幅する工程;
ii)前記細胞由来のDNAの対立遺伝子と、対応する父親対立遺伝子とを比較する工程;
iii)同定された遺伝的多型について、母親対立遺伝子と父親対立遺伝子とを含む細胞由来のDNAを選択し、前記細胞由来のDNAの胎児起源を実証する工程、
を用いた前記細胞の遺伝子型決定により実施される、請求項1記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項3】
前記工程c)及びd)で用いられるプライマーが、少量のDNAを増幅できる、請求項1又は2記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項4】
前記工程c)及びd)で用いられるプライマーが、単一細胞由来のDNAを増幅できる、請求項1又は2記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項5】
用いられる前記プライマーが、5 pg未満の量のDNA、特に2 pgオーダーの量のDNAを増幅できる、請求項3又は4記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項6】
前記工程c)の増幅工程、及び/又は前記工程d)の増幅工程が、外部プライマーを用いて実施される第一増幅フェーズと、内部プライマーを用いて実施される第二増幅フェーズとを含む、請求項1乃至5のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項7】
前記工程c)で用いられる情報提供プライマーが、第16染色体、第21染色体、及び第7染色体から選択される染色体の配列に由来する、請求項1乃至6のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項8】
用いられる前記プライマーが、第7染色体の配列に由来し、かつ嚢胞性線維症についての病的対立遺伝子に近接する、請求項7記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項9】
前記工程d)において、CFTR遺伝子のΔF508遺伝子座の突然変異を保持する少なくとも1つの対立遺伝子が調べられ、試験胎児DNAが、CFTR遺伝子のΔF508遺伝子座を増幅できるプライマーを用いて増幅される、請求項1乃至7のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項10】
以下:
【表1】

から選択されるプライマー対が、ΔF508遺伝子座を増幅するために用いられる、請求項1乃至9のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項11】
CFTR遺伝子上の調べられる異常が未知であり、前記工程c)及びd)が、以下:
・分離の間にCFTR遺伝子と遺伝的に連鎖(リンケージ)する遺伝子型多型を含む遺伝子座を増幅できる情報提供増幅プライマーを用いて、前記工程c)及びd)の増幅を組み合わせて実施する;及び
・前記工程d)のコントロールサンプルとの比較が、胎児DNAから同定された対立遺伝子と、対応する父親対立遺伝子、対応する母親対立遺伝子、及び嚢胞性線維症に罹患した同一家系の子供の対応する対立遺伝子との比較を含む、
という条件下で実施される、請求項1乃至7のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項12】
嚢胞性線維症についての病気対立遺伝子と連鎖を形成する遺伝的多型を保持する少なくとも1つの対立遺伝子の存在又は不在を同定するために、胎児DNA、母親DNA、父親DNA、及び同一家系の子供由来のDNAを増幅するための少なくとも1つの増幅フェーズが、以下:
【表2】

から選択される1つ又は複数のプライマー対を用いて実施される、請求項1乃至11のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項13】
前記工程c)が、単一の回収胎児細胞のゲノム由来のDNA調製物について、1つ若しくは複数の遺伝的多型マーカー又は前記マーカーの組み合わせ物を同定する工程、並びに前記細胞由来のDNAの二親性の寄与を実証し、結果として、少なくとも1つの前記細胞の胎児起源を実証する工程を含むか、又は前記工程からなる、請求項1乃至10のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項14】
前記工程c)で用いられる情報提供プライマー対と称されるプライマー対が、以下:
【表3】

から選択される、請求項13記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項15】
前記工程c)において、第一増幅フェーズを実施するために、以下のプライマー:
【表4】

が用いられ;
第二増幅フェーズを実施するために、以下のプライマー:
【表5】

が用いられる、請求項11記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項16】
ΔF508遺伝子座を増幅できる、用いられるプライマーが、前記第一増幅フェーズについては、F:5'−TGGAGCCTTCAGAGGGTAAA−3'(SEQ ID NO:25)、R:5'−TGCATAATCAAAAAGTTTTCACA−3'(SEQ ID NO:26)であり、前記第二増幅フェーズについては、F:5'−TCTGTTCTCAGTTTTCTGG−3'(SEQ ID NO:27)、R:5'−TCTTACCTCTTCTAGTTGGC−3'(SEQ ID NO:28)である、請求項10記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項17】
前記工程a)の間に保持された細胞が、特にマイクロダイセクションにより、個々に回収される、請求項1乃至16のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項18】
前記工程a)の間に保持された細胞が、前記細胞を個々に回収することなく、前記工程b)の間に、回収され、ついでin situで分析される、請求項1乃至16のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項19】
前記工程a)が、胎児起源の細胞を含み得る純粋又は希釈母親サンプルをろ過して、胎児起源の細胞を含む特定の細胞のサイズに応じてフィルター上に濃縮する工程からなり、かつ前記工程b)が、前記フィルター上に保持された細胞を分析する工程、及び胎児起源であると推定される細胞を選択する工程からなる、請求項1乃至18のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項20】
前記工程c)及び/又は工程d)を実施するために用いられ得る少なくとも1つのプライマーが、変異オリゴヌクレオチドであって、その配列が前記プライマーの1つの配列に由来し、その配列が由来する前記プライマーと、少なくとも60%の同一性、好ましくは80%、より好ましくは95%以上の同一性を有する変異オリゴヌクレオチドに置き換えられる、請求項10、12、14、15、又は16記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項21】
前記工程d)が、前記工程c)で個々に選択された複数の細胞由来のDNAプールに対して実施されることを特徴とする、請求項1乃至20のいずれか一項記載の正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法。
【請求項22】
以下の配列:
【表6】

の1つを含むか、又は前記配列の1つからなる配列のポリヌクレオチドから選択されることを特徴とする、生物学的サンプル由来のDNA量を増幅するためのプライマーとして使用するためのポリヌクレオチド。
【請求項23】
以下の配列:
【表7】

を含むか、又は前記配列からなる配列のポリヌクレオチド対から選択されることを特徴とする、生物学的サンプル由来のDNA量を増幅するためのプライマー対として使用するためのポリヌクレオチド対。
【請求項24】
請求項22記載の配列と、少なくとも60%の同一性、好ましくは80%、より好ましくは95%以上の同一性を有する、ポリヌクレオチド。
【請求項25】
DNA調製物の第一増幅フェーズで使用される、標的配列に対して外部プライマーと称されるプライマー対と、前記第一増幅フェーズにより得られる増幅産物に対する第二増幅フェーズで使用される、前記外部プライマーに対して内部プライマー又はネスティッドプライマーと称される別のプライマー対との組み合わせ物であって、前記プライマー対の組み合わせ物が、以下:
・外部プライマーとして、
【表8】

及び、内部プライマーとして、
【表9】

;又は
・外部プライマーとして、
【表10】

及び、内部プライマーとして、
【表11】

;又は
・外部プライマーとして、
【表12】

及び、内部プライマーとして、
【表13】

;又は
・外部プライマーとして、
【表14】

及び、内部プライマーとして、
【表15】

;又は
・外部プライマーとして、
【表16】

及び、内部プライマーとして、
【表17】

;又は
・外部プライマーとして、
【表18】

及び、内部プライマーとして、
【表19】

;又は
・外部プライマーとして、
【表20】

及び、内部プライマーとして、
【表21】

;又は
・外部プライマーとして、
【表22】

及び、内部プライマーとして、
【表23】

;又は
・外部プライマーとして、
【表24】

及び、内部プライマーとして、
【表25】

から選択される、プライマー対の組み合わせ物。
【請求項26】
プライマーが以下:
【表26】

から選択されることを特徴とする、母親サンプルから単離された胎児細胞のゲノムDNAからの、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前in vitro検出方法と関連するプライマーの使用。
【請求項27】
プライマーが以下:
【表27】

から選択されることを特徴とする、母親サンプルから回収された単一細胞のゲノム由来のDNA調製物に対する、前記単一回収細胞の胎児特性のin vitro同定方法と関連するプライマーの使用。
【請求項28】
請求項27中に記載の1つ又は複数のプライマーと、適切な場合には、DNA増幅用試薬及び/又は正常なキャリア状態若しくは嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態を検出するための説明書とを含む、正常な健康状態、健康なキャリア状態、又は嚢胞性線維症に罹患するキャリア状態の非侵襲的出生前検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−526247(P2008−526247A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550818(P2007−550818)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000118
【国際公開番号】WO2006/077322
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507241492)アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム) (9)
【出願人】(507240336)
【出願人】(506413856)ユニヴェルシテ・ルネ・デカルト・パリ・サンク (6)
【Fターム(参考)】