説明

正規品判定システム

【課題】正規性判定装置と被判定製品との間の通信パターンを解析しても容易に認証アルゴリズムを解読することができないようにする。
【解決手段】小型情報機器1は、ホストコンピュータ110から送信された2つの乱数のうち何れかを選択し、選択された乱数を加工した加工信号をホストコンピュータ110へ送信する加工処理を設定回数だけ繰り返す乱数加工部13を有し、ホストコンピュータ110は、1回の加工処理につき2つの乱数を発生する乱数発生部111,112と、加工信号あるいは加工信号にさらに演算処理を施した加工演算結果と、各乱数を用いて演算された複数の判定演算結果のうちの何れかと、が一致するか否かを設定回数だけ繰り返し判断する演算結果判断部115と、設定回数分の判定結果が、全て一致していた場合に、小型情報機器1を正規製品と判定しホストコンピュータ110との接続を許可する正規デバイス判定部116と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正規性判定装置に接続された被判定製品の正規性を判断し、被判定製品が正規品であることを認証する正規品判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、周辺デバイスをホストコンピュータから制御するためには、ホストコンピュータ側に各周辺デバイスに適合するデバイスドライバを備える必要がある。実際にホストコンピュータへ接続される周辺デバイスは、デバイスドライバの開発者が意図している正規製品であることが望ましい。
【0003】
デバイスドライバの提供者が意図しない正規製品以外の互換デバイスが接続された環境で動作される場面も想定される。通常、デバイスドライバは、正規製品を動作制御するために作成されているので、互換製品までもその動作を確実に制御できるとは言い切れない。このため、互換デバイスをデバイスドライバで制御した場合に、思わぬ動作を引き起こす可能性がある。
【0004】
例えば、互換デバイスとして、チェック紙を読み取るスキャナを備えた読取装置が接続されていた場合、デバイスドライバとの相性が合わず、紙ジャム、キャリブレーションのミス、モータや回路の焼き付きなどを発生する場合がある。このような、問題を解決するために、特許文献1には正規性判定装置に接続された被判定製品の正規性を判断し、被判定製品が正規品であるか否かを判定する正規品認証システムが記載されている。
【0005】
具体的には、ノート型PCに電池パックが装着されると、装着された電池パックが正規品であるかを判断するため認証システム10が動作開始する。まず、乱数発生手段が乱数aを発生し、発生した乱数aが通信バスを通じて電池パックに伝送されると同時に、比較手段に記憶される。電池パックは第1演算手段により乱数aを用いて関数b=f(a)を演算し、演算結果bを通信バスを通じてノート型PCに返送する。ノート型PC1では第2演算手段により演算結果bを用いて関数c=g(b)=g{f(a)}を演算する。比較手段は第2演算手段の演算結果cと記憶している乱数aとを比較してa=cであるか否かを判定する。a=cであると判定されると、電池パックが正規品であることが認定される。
【0006】
このように、従来の製品の正規品認証において、正規品認証の対象となる被判定製品内に暗号アルゴリズム/暗号キーを埋め込み、それを正規性判定装置が確認するという手段がある。暗号アルゴリズムによる正規品認証の場合、正規性判定装置側に組み込まれたドライバが乱数を発生してこれを送信し、被判定製品はその乱数と暗号キーとに対して暗号アルゴリズムを施した結果を応答で返す方式が多い。
【特許文献1】特開2005−94128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の正規品認証システムでは、乱数発生手段が発生した1の乱数に対して、特定の認証アルゴリズムを適用して演算処理された値を返すようになっているため、正規性判定装置と被判定製品との間の通信パターンを解析し易く、通信パターンを解析して被判定製品側で行っている認証アルゴリズムが解読される可能性がある。
【0008】
しかしながら、認証アルゴリズムが解読されてしまうと、そのままその認証アルゴリズムが被判定製品に搭載される可能性がある。正規製品以外の製品に解読された認証アルゴリズムが搭載されてしまっては、本来、非正規製品であると判定しなければならないところ正規製品であると誤って判定してしまう恐れがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、正規性判定装置に接続された被判定製品の正規性を判断し、被判定製品が正規品であることを認証する正規品認証システムにおいて、正規性判定装置と被判定製品との間の通信パターンを解析しても容易に認証アルゴリズムを解読することができないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明は、正規性判定装置に接続された被判定製品が正規製品であるか否かを判定する正規品判定システムであって、
前記被判定製品は、
前記正規性判定装置から送信された複数の乱数のうち何れかを選択し、選択された乱数を加工した加工信号を前記正規性判定装置へ送信する加工処理を設定回数だけ繰り返す乱数加工部を有し、
前記正規性判定装置は、
1回の加工処理につき前記複数の乱数を発生する乱数発生部と、
前記加工信号あるいは前記加工信号にさらに演算処理を施した加工演算結果と、前記乱数発生部から発生された各乱数を用いて演算された複数の判定演算結果のうちの何れかと、が一致するか否かを前記設定回数だけ繰り返し判断する演算結果判断部と、
前記設定回数分の判定結果が、全て一致していた場合に、前記被判定製品を正規製品と判定し前記正規性判定装置との接続を許可する正規品判定部と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、正規性判定装置では1回の加工処理につき複数の乱数を発生し、被判定製品では、正規性判定装置から送信された複数の乱数のうち何れかの乱数を選択し、選択された乱数に加工処理を行うよう構成されている。この場合、正規性判定装置と被判定装置の間の通信パターンを解析しても、何れかの乱数が選択されたかを容易に判明することができない。そして、設定回数分の判定結果が全て一致していた場合に、被判定製品を正規製品と判定し正規性判定装置との接続を許可するので、1回でも判定結果が一致しなければ通信を不許可とすることができる。このため、容易に正規性判定処理のアルゴリズムを解読されることを防止するとともに、互換製品が正規性判定装置へ接続された場合の正規性判定装置との通信を規制することが可能となる。したがって、互換製品と正規性判定装置との相性が合わないことによる、誤動作や故障等を未然に防止することが可能となる。
【0012】
また本発明において、前記被判定製品は、前記被判定製品に固有の乱数加工情報を記憶する情報記憶部を有し、
前記乱数加工部は、選択した乱数について、前記乱数加工情報を用いて加工した加工信号と、前記乱数加工情報を用いない加工信号と、の何れかに加工することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、選択した乱数について、乱数加工情報を用いて加工した加工信号と、乱数加工情報を用いない加工信号と、の何れかに加工することができる。すなわち、選択した各乱数について、複数の加工信号のパターンを設定することができる。このため、選択した各乱数について1つの加工信号のパターンしか設定されていない場合に比べて被判定装置から正規性判定装置に対する通信パターンの解析を行うことが困難である。
従来のように、1つの加工信号のパターンしか設定されていない場合には、加工処理において必ず製品固有の乱数加工情報を用いた加工信号を返すため、正規性判定装置側では1回だけ演算結果判断を行えばよい。しかしながら、その1回の演算結果判断の信頼性を確保するには、乱数を大きな値としたり、アルゴリズム自体を複雑化する必要がある。本発明は、設定回数を適度に調整することによって、正規性判定の信頼性を強化することができる。
【0014】
前記乱数発生部は、1回の加工処理につき2つの乱数を発生し、
前記乱数加工部は、前記2つの乱数の和が偶数であるか、奇数であるかによって前記加工信号のパターンを変えて送信することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、偶数か奇数か、2つの乱数の何れかを選択するか、の組み合わせによって、4通りに加工信号のパターンを変えることが可能である。このため、1通りの加工信号のパターンしか設定されていない場合に比べて被判定装置から正規性判定装置への通信パターンの解析が困難である。また、通信パターンが解析されれば、4通りの加工信号パターンを2つの乱数の和が偶数か奇数かによって2通りの加工信号パターンまで絞ることができる可能性はあるが、2つの乱数のどちらが選択されたかを判明することは困難である。このため、容易に正規品判定処理のアルゴリズムを解読されることを防止することができる。
【0016】
また本発明において、前記乱数加工部は、前記加工処理において剰余演算を行うことを特徴とする。このような構成によれば、正規性判定装置から被判定装置に対する通信パターンの解析を行って発生した複数の乱数の値が判明しても、剰余演算の結果と乱数の値とから、乱数加工情報を導き出すことは困難であるため、容易に正規品判定処理のアルゴリズムを解読されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る正規品判定システムの1実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、ホストコンピュータと、ホストコンピュータからの指示に応じて読み取り処理を実行する小型情報機器と、から構成される情報読取システムを例に挙げて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る情報読取システムの内部処理を示すブロック図である。ホストコンピュータ110から小型情報機器1の動作を制御するために、ホストコンピュータ側には小型情報機器専用のデバイスドライバが登録されている。本実施形態では、ホストコンピュータ110へ接続された小型情報機器1が、ホストコンピュータ110に登録されているデバイスドライバに対して正規品であるか否かを判断することができるようになっている。つまり、ホストコンピュータ110と実際に接続される小型情報機器1が、デバイスドライバの開発者等が意図する正規の製品であることを判定する機能を備えている。
(小型情報機器の機械的構成について)
まず、小型情報機器1の概要について説明する。本実施形態に係る小型情報機器1は、給紙部であるASF(Auto Sheet Feeder:オートシートフィーダ)に装填される小切手等の単票用紙を筐体に形成された略U字状の用紙搬送路に沿って搬送しながら、単票用紙上に印刷されている両面画像の読み取り、単票用紙上の磁気インク文字の読み取りを実行可能に構成されている。
【0019】
小切手が搬送されるU字状の用紙搬送路の底の部分に相当する部位に、各種読取装置が設けられている。用紙搬送路の上流側には、複数の小切手を装填可能なASFが設けられている。ASFに装填された複数の小切手は、一枚ずつ分離されて用紙搬送路内に送り出される。
ASFから用紙搬送路内に送り出された小切手は、用紙搬送ローラ、中間搬送ローラ、排出ローラ等により排出口から排出される。
【0020】
U字状の用紙搬送路の底の部分には、小切手の両面に印刷された画像の読み取りを行う画像読取装置(光学式文字読取装置:OCR)が設置されている。画像読取装置は、用紙搬送路を搬送される小切手の一面に光を照射し、反射した光を複数の受光素子(光電変換素子)を介して受光し、受光した光を電気信号に変換して1ライン分の画像を取得する。本実施形態では、小切手に印刷された画像を1ラインずつ順次読み取ることにより、小切手の二次元画像を取得する。
【0021】
画像読取装置のさらに下流には、磁気インク文字を読み取る磁気インク文字読取装置(MICR(Magnetic Ink Character Reader))が設置されている。磁気インク文字読取装置は、小切手の表面に印刷された磁気インク文字を読み取るためのセンサである。この磁気インク文字読取装置は、対向配置された押付レバーによって小切手が磁気インク文字読取装置の表面に押し付けられた状態で読み取りを実行する。小切手については、口座番号などの情報が磁気インク文字で印刷された磁気インク文字記録領域を読み取る。
【0022】
なお、上述した画像読取装置と磁気インク文字読取装置はCPU(Central Processing Unit)によって制御される。ROM(Read Only Memory)には、CPUが読み出して実行する制御プログラムが記憶されている。このように、小型情報機器1は、通常使用時においては、用紙搬送路に沿って搬送された単票用紙に印刷された各種情報を対応する各読取装置によって読み取り、読み取り情報をホストコンピュータ110へ送信することができるようになっている。
【0023】
(ホストコンピュータについて)
一方、ホストコンピュータは、通常のパーソナルコンピュータであって予め小型情報機器1の動作を制御する専用のデバイスドライバが登録されている。デバイスドライバからの指示によって小型情報機器1に備えられた各種読取装置、搬送機構等が制御され、小切手の読み取り処理を実行する。本実施形態では、ホストコンピュータ110に接続された小型情報機器1が、ホストコンピュータ110に登録されているデバイスドライバに対応した正規の製品であるか否かを判断する。
【0024】
(情報読取システムの正規品判定処理について)
次に、本実施形態の情報読取システムが実行する正規品判定処理について説明する。図1は、本実施形態の情報読取システムの正規品判定処理を説明する制御ブロック図である。
本実施形態の情報読取システムにおいては、ホストコンピュータ110に接続された小型情報機器1が、ホストコンピュータ110に登録されているデバイスドライバと対応する正規の製品であるか否かをシステムを立ち上げる毎に判定するよう構成されている。
【0025】
ホストコンピュータ110は、主として、2つの乱数発生部111,112と、発生した乱数を小型情報機器1へ送信する送信部113と、小型情報機器1から送信された加工信号を受信する受信部114と、演算結果が一致するか否かを判断する演算結果判断部115と、演算結果が一致した場合に小型情報機器1が正規製品であると判定してホストコンピュータ110との通信を許可する正規デバイス判定部116と、乱数記憶部117と、を備えている。
【0026】
本実施形態では、1回の正規品判定処理において行われる演算結果判断の実行回数が設定されており、乱数発生部111,112は演算結果判断が行われる度に、乱数を発生するよう設定されている。ここでは、乱数発生部111と乱数発生部112から各1個の乱数を発生し、1回の演算結果判断において2つの乱数を使用することとする。また、乱数発生部111,112が乱数を発生すると、発生した乱数は乱数記憶部117に保存される。
なお、以下では1回の演算結果判断において2つの乱数を発生する場合を一例として説明するが、これに限られることはない。すなわち、1回の演算結果判断において複数の乱数を発生する構成であればよく、多くの乱数を発生されればより通信パターンを解析されにくくすることができる。
【0027】
小型情報機器1は、主として、ホストコンピュータ110から送信された信号を受信する受信部11、正規品判定処理において小型情報機器1側で行われる加工処理に用いられる情報であって正規製品である小型情報機器に固有の乱数加工情報を記憶する情報記憶部12と、ホストコンピュータ110から送信された2つの乱数の何れかを選択して、情報記憶部12に記憶された乱数加工情報を用いて、選択した乱数に対して加工処理を施す乱数加工部13と、ホストコンピュータ110へ信号を送信する送信部14と、を備えている。乱数加工部13によって加工された加工信号は、送信部14を介してホストコンピュータ110へ送信される。
【0028】
次に、本実施形態の情報読取システムにおける正規品判定処理の具体的な流れを説明する。
図2は、本実施形態の正規品判定処理を説明するフローチャートである。
まず、正規品判定処理に先立ち、乱数加工情報が磁気インク文字で書き込まれた判定用チェック紙を小型情報機器1の用紙搬送路の上流側に設置されたASFへセットし、ホストコンピュータ110からの読取コマンドに応じて、読取処理を実行する。磁気インク文字読取装置によって読み取られた磁気インク文字は、情報記憶部12に乱数加工情報Mとして記憶される。
【0029】
この状態で、ホストコンピュータ110の図示せぬインターフェースを介して正規品判定処理の実行指示を受けると(ステップS11:Yes)、乱数発生部111,112がそれぞれ乱数r1,r2を生成し、送信部113を介して2つの乱数r1,r2が小型情報機器1へ送信される(ステップS12)。このとき、生成された乱数r1,r2は、乱数記憶部117に一時的に保存される。乱数加工部13は、受信部11で受信した2つの乱数r1,r2のうち何れかを選択し、選択された乱数に加工処理を行い(ステップS21)、加工信号Cとしてホストコンピュータ110へ送信する(ステップS22)。
【0030】
ここで、乱数加工部13が行う乱数加工処理を説明する。図3は、2つの乱数r1,r2の何れかによって乱数加工部13がホストコンピュータ110へ反す値(加工信号C)を示したものである。
乱数加工部13は、乱数毎に、受信した乱数r1とr2の和が偶数か奇数かによって、異なる値を返すようになっている。
【0031】
乱数r1とr2の和が偶数であって選択した乱数がr1である場合にはr1×r1modPQを、乱数r1とr2の和が奇数であって選択した乱数がr1である場合にはr1×MmodPQを加工信号Cとしてホストコンピュータ110へ返す。
なお、PQは小型情報機器1とホストコンピュータ110とが備える共通の素数である。また、modは剰余演算を意味する。
また、乱数r1とr2の和が偶数であって選択した乱数がr2である場合にはr2×r2modPQを、乱数r1とr2の和が奇数であって選択した乱数がr2である場合にはr2×MmodPQを加工信号Cとしてホストコンピュータ110へ返す。
【0032】
これらに具体的な数値を当てはめてみる。素数:PQ=71、乱数加工情報:M=65、乱数:r1=10、乱数:r2=43とする。それぞれ、以下のような加工信号Cとなる。
(1)r1×r1modPQ=10×10mod71=100を71で割った余り=29
(2)r1×MmodPQ=10×65mod71=650を71で割った余り=11
(3)r2×r2modPQ=43×43mod71=1849を71で割った余り=3
(4)r2×MmodPQ=43×65mod71=2795を71で割った余り=26
となる。
【0033】
上記値の何れかが、加工信号Cとしてホストコンピュータ110へ送信される。これを設定回数だけ繰り返し送信されると、小型情報機器1とホストコンピュータ110との間の通信パターンを解析することにより、r1+r2が偶数か奇数かによって通信パターンが4つのうち2つに絞られる可能性がある。r1+r2が偶数であった場合には上記(1),(3)が加工信号Cとして返るが、乱数加工部13がr1,r2の何れかの乱数を選択したかを判明することはできないので、(1)あるいは(3)の何れの式によって加工処理されたかを解析される虞がない。
一方、r1+r2が奇数であった場合には上記(2),(4)が加工信号Cとして返るが、同じく乱数加工部13がr1,r2の何れかの乱数を選択したかを判明することができないので、(2)あるいは(4)の何れの式によって加工処理されたかを解析される虞がない。
【0034】
また、(1)から(4)の何れの加工処理においても、剰余演算(mod)を適用するため、乱数r1,r2の値が解析されても、加工処理のアルゴリズムを導き出すことは困難であり、(2)及び(4)の加工処理において用いられる小型情報機器に固有の乱数加工情報Mの値を導き出すことも難しいと言える。
【0035】
ここでは、乱数r1とr2の和は、r1+r2=10+43=53であり奇数となる。ステップS21において、r1=10が選択されると、乱数加工部13は(2)の値を加工信号Cとしてホストコンピュータ110へ送信する。
【0036】
次に、ホストコンピュータ110の受信部114が加工信号を受信すると演算結果判断部115が、加工信号Cあるいは加工信号Cにさらに演算処理を施した加工演算結果Xと、各乱数r1,r2を用いて演算された複数の判定演算結果Yのうちの何れかと、が一致するか否かを判断する(ステップS13,ステップS14)。
【0037】
ここで、演算結果判断部115が行う演算結果判断処理を説明する。図4は、2つの乱数r1,r2の和が偶数であるか奇数であるかによって演算結果判断部115が行う判断式を示したものである。
演算結果判断部115は、乱数記憶部117に保存されている乱数r1とr2の和が偶数か奇数かによって、次の判断式にしたがって演算結果を判断する。なお、M2=M×MmodPQであって、演算結果判断部115が予め記憶している値である。
【0038】
以下のような判断式となる。
<乱数r1とr2の和が偶数であった場合の判断式>
(5)C=r1×r1modPQ
(6)C=r2×r2modPQ
<乱数r1とr2の和が奇数であった場合の判断式>
(7)C×CmodPQ=M2×r1×r1modPQ
(8)C×CmodPQ=M2×r2×r2modPQ
【0039】
ホストコンピュータ110の解析により上記判断式が明らかになった状態で、互換性のある非正規製品デバイスに本実施形態の正規品判定処理のアルゴリズムを適用しようとした場合、非正規製品デバイスでは乱数加工情報Mの値が必要になる。ホストコンピュータ110の解析でM2がM×MmodPQで成り立つことが推測できても、乱数加工情報Mの値が何であるかは総当りで試さなければならない。したがって、素数PQと乱数加工情報Mを十分大きな値とすることで、現実的な時間ではMを導きだすことは不可能となる。
【0040】
ここでは、乱数r1とr2の和は奇数であるため、ステップS13において小型情報機器1から送信された加工信号Cにさらに演算処理を施した加工演算結果Xを求める。
X=C×CmodPQ=11×11mod71=50
さらに、ステップS14において、判定演算結果Y1,Y2を求めて演算結果が一致するか否かを判断し、判断式(7)及び(8)について判断する。
(7)Y1=M2×r1×r1modPQ=(M×MmodPQ×r1×r1)modPQ
=65×65mod71×10×10modPQ=36×100mod71
=50
(8)Y2=M2×r2×r2modPQ=(M×MmodPQ×r2×r2)modPQ
=65×65mod71×43×43modPQ=36×1849mod71
=66564mod71=37
【0041】
したがって、ステップS14において、加工信号Cにさらに演算処理を施した加工演算結果Xと、乱数r1,r2を用いて演算された2つの判定演算結果Y1,Y2のうちのY1が一致すると判断し(ステップS14:Yes)、この判断処理が設定回数だけ行われたかを判断する(ステップS15)。設定回数だけ演算結果判断が行われていない場合には(ステップS15:No)、ステップS12へ戻り再び乱数を生成して、ステップS21,ステップS22,ステップ13,ステップ14,ステップ15の処理を繰り返し実行する。
【0042】
例えば、設定回数を20回とすれば、ステップS15の判断が行われる毎に正規デバイス判定部116が回数カウンタをカウントアップし、20回にわたるステップS15の判断処理で演算結果が全て一致した場合には、ホストコンピュータ110に接続された小型情報機器1が正規製品であると判定して、ホストコンピュータ110との接続を許可する(ステップS16)。接続が許可されると、外部からの入力指示に応じてホストコンピュータ110から送信される各種コマンドに対応じた通常処理が実行される(ステップS17)。
【0043】
一方、ステップS14において、1度でも演算結果が一致しない場合が発生したときは(ステップS14:No)、ホストコンピュータ110に接続された小型情報機器1が非正規製品であると判定して、ホストコンピュータ110との接続を不許可とする(ステップS18)。これにより、ホストコンピュータ110に登録されたデバイスドライバによって、正規品判定処理の対象となった小型情報機器1を制御することができないようになる。したがって、小型情報機器1が正規製品の互換デバイスであった場合には、デバイスドライバとの相性が合わず、紙ジャム、キャリブレーションのミス、モータや回路の焼き付きなどを発生する場合があるが、本実施形態によれば互換デバイスとホストコンピュータとの通信を不許可とするのでこれらの問題が発生することを未然に防止することができる。
【0044】
また、本実施形態において、1回の演算結果判断処理につき乱数を2つ生成し、何れか一方の乱数を選択し、選択された乱数に応じて加工信号を変更するよう構成されている。したがって、ホストコンピュータ110と小型情報機器1との間の通信パターンを解析しても容易に正規性判定処理のアルゴリズムを解読されることを防止することができ、デバイスドライバに合わない互換デバイスとホストコンピュータとの通信を規制することが可能となる。したがって、デバイスドライバとの相性が合わないことによる、誤動作や故障等を未然に防止することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態によれば、正規品判定処理のアルゴリズムに使用する演算種類が、掛け算や剰余演算等に限られている。このため例えば、さらなる処理の高速化を図るために、上述した正規品判定処理をハードウェアで実現しようとした場合でも、より低コストで実現することができる。
【0046】
また、本実施形態において、正規性判定処理の強度を変更したい場合には、ステップS14の演算結果判断を行う設定回数を変えることで容易に強度を調整することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、ステップS21の乱数加工処理において用いた乱数加工情報Mは、磁気インク文字読取装置が判定用チェック紙に書き込まれた磁気インク文字を読み取ることによって取得したが、これに限られることはない。勿論、小型情報機器1のフラッシュROM等に予め乱数加工情報Mが登録された場合であっても本発明を適用することができる。また、設定回数を乱数加工情報Mとすれば、乱数加工情報Mを判定用チェック紙から読み取る必要がなく、正規製品に予め登録する必要もないので、より正規品判定処理の信頼性を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の情報読取システムの内部処理を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の正規品判定処理を説明するフローチャートである。
【図3】2つの乱数r1,r2とホストコンピュータへ反す値(加工信号C)との対応関係を示した図である。
【図4】2つの乱数r1,r2の和が偶数であるか奇数であるかによって演算結果判断部が行う判断式を示した図である。
【符号の説明】
【0049】
1:小型情報機器、11:受信部、12:情報記憶部、13:乱数加工部、14:送信部、110:ホストコンピュータ、111:乱数発生部、112:乱数発生部、113:送信部、114:受信部、115:演算結果判断部、116:正規性デバイス判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正規性判定装置に接続された被判定製品が正規製品であるか否かを判定する正規品判定システムであって、
前記被判定製品は、
前記正規性判定装置から送信された複数の乱数のうち何れかを選択し、選択された乱数を加工した加工信号を前記正規性判定装置へ送信する加工処理を設定回数だけ繰り返す乱数加工部を有し、
前記正規性判定装置は、
1回の加工処理につき前記複数の乱数を発生する乱数発生部と、
前記加工信号あるいは前記加工信号にさらに演算処理を施した加工演算結果と、前記乱数発生部から発生された各乱数を用いて演算された複数の判定演算結果のうちの何れかと、が一致するか否かを前記設定回数だけ繰り返し判断する演算結果判断部と、
前記設定回数分の判定結果が、全て一致していた場合に、前記被判定製品を正規製品と判定し前記正規性判定装置との接続を許可する正規品判定部と、を有することを特徴とする正規品判定システム。
【請求項2】
前記被判定製品は、前記被判定製品に固有の乱数加工情報を記憶する情報記憶部を有し、
前記乱数加工部は、選択した乱数について、前記乱数加工情報を用いて加工した加工信号と、前記乱数加工情報を用いない加工信号と、の何れかに加工することを特徴とする請求項1に記載の正規品判定システム。
【請求項3】
前記乱数発生部は、1回の加工処理につき2つの乱数を発生し、
前記乱数加工部は、前記2つの乱数の和が偶数であるか、奇数であるかによって前記加工信号のパターンを変えて送信することを特徴とする請求項2に記載の正規品判定システム。
【請求項4】
前記乱数加工部は、前記加工処理において剰余演算を行うことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の正規品判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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