説明

歩行ナビゲーションシステム

【課題】施設内で人を誘導するシステムにおいて、メンテナンス管理等の手間を軽減できるようにする。
【解決手段】誘導される対象である人物に携行されるICタグ12と、建物の所定位置に配置され、ICタグと無線で通信を行なう送受信装置14と、誘導される対象である人物に、音声及び/又は画像により進むべき方向を報知する報知装置18と、送受信装置によりICタグから読み取られた情報に基づいて、報知装置の音声及び/又は画像を制御する制御装置16とを具備し、ICタグ12と送受信装置14とは、RFIDの原理により無線通信を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー施設、劇場、福祉施設、病院等の建物内において人を誘導する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院、役所等の公共施設や、遊園地、博覧会等のイベント会場において、従業員や訪問者を個別に誘導案内するシステムが知られている。
【0003】
このようなシステムとして、特開2000−149150号公報(特許文献1)には、病院内において、患者に携帯送受信機を携行させると共に、病院の通路分岐点等の迷いやすい場所に固定送受信機を設置し、携帯送受信機と固定送受信機の通信により患者についての必要な情報を得て、表示装置などにより患者を進むべき方向に誘導する案内システムが開示されている。このシステムにおいては、患者の受付時に携帯送受信機に、患者の氏名、受診科、身体障害の有無等の個人情報を記憶させておき、携帯送受信機と壁側の固定送受信機の通信により、携帯送受信機に記憶されている患者の個人情報を読み取り、その情報に応じて表示装置に名前や診察室の方向などを表示するようにしている。
【特許文献1】特開2000−149150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のシステムにおいては、携帯送受信機と固定送受信機の間で通信を行なうためには、携帯送受信機側にもバッテリー等の電源が必要となる。そのため、携帯送受信機のバッテリーを定期的に交換する作業が必要となり、病院等のように多数の患者に携帯送受信機を携行させる必要がある施設では、多数の携帯送受信機のメンテナンス管理に非常に手間がかかり、利便性のよいものではなかった。
【0005】
従って、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、施設内で人を誘導するシステムにおいて、メンテナンス管理等の手間を軽減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる歩行ナビゲーションシステムは、誘導される対象である人物に携行されるICタグと、建物の所定位置に配置され、前記ICタグと無線で通信を行なう送受信装置と、前記誘導される対象である人物に、音声及び/又は画像により進むべき方向を報知する報知装置と、前記送受信装置により前記ICタグから読み取られた情報に基づいて、前記報知装置の音声及び/又は画像を制御する制御装置とを具備し、前記ICタグと前記送受信装置とは、RFIDの原理により無線通信を行なうことを特徴とする。
【0007】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記ICタグには、前記誘導される対象である人物の行き先情報が記憶されていることを特徴とする。
【0008】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記送受信装置は、前記建物の通路の壁、柱、天井、床のいずれかに配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記送受信装置のアンテナは、前記建物の通路の壁、柱、天井、床等の建築材料のいずれかの表面に少なくとも一部が見えるように配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記報知装置は、前記送受信装置の近傍位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記送受信装置は、前記建物の所定の位置に複数配置され、該複数の送受信装置と前記ICタグとの通信状態により、前記誘導される対象である人物の位置を検出することを特徴とする。
【0012】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記ICタグはジャイロを備えることを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記制御装置はパーソナルコンピュータであることを特徴とする。
【0014】
また、この発明に係わる歩行ナビゲーションシステムにおいて、前記報知装置は、手話又は文字入力により行き先を案内する画像を表示することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係わる歩行ナビゲーションシステムは、誘導される対象である目が不自由な人物に携行され、内部に送受信装置を内蔵する杖と、建物の床に配置され、杖内に配置された送受信回路と無線で通信を行なうICタグテープと、前記送受信装置により前記ICタグテープから読み取られた情報に基づいて、前記誘導される対象である人物に、少なくとも音声及びその信号により進むべき方向を報知する報知装置とを具備し、前記送受信装置と前記ICタグテープとは、RFIDの原理により無線通信を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施設内で人を誘導するシステムにおいて、メンテナンス管理等の手間を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の歩行ナビゲーションシステムの第1の実施形態のシステム構成を示す模式図である。
【0019】
本実施形態のシステムは、エネルギー施設、劇場、福祉施設、病院等の建物内において、人に携帯送受信機を携行させ、建物内に設置した固定側送受信機と通信を行なうことにより、人を必要な方向に誘導するシステムである。
【0020】
図1において、本実施形態の歩行ナビゲーションシステム10は、人が携行する携帯送受信機であるICタグ12と、建物の通路の壁表面に設置され、ICタグ12と無線で通信を行なう固定側送受信機14と、固定側送受信機14と有線又は無線で通信可能な制御端末(パーソナルコンピュータ)16と、制御端末16の制御により利用者に行き先を案内する報知装置18とを備えて構成されている。
【0021】
ICタグ12には、例えば病院の場合には、診察を受ける固有の部屋、エネルギー施設の場合には、点検を必要としている部屋等の、目的とする行き先情報が書き込まれている。ただし、ICタグ12には、個人情報の漏洩を防止するために、利用者の氏名、性別、所属団体、身体的特徴等の個人情報は書き込まれていなくてもよい。
【0022】
固定側送受信機14は、建物の通路、特に通路分岐点などの迷いやすい場所に必要数設置され、ICタグ12と無線で通信を行ない、ICタグ12に記憶されている利用者の行き先情報を読み取り、制御端末16にその情報を送る。なお、固定側送受信機14は、建物の壁、柱、天井、床等の必要な場所に適宜設置することが可能である。
【0023】
制御端末16は、固定側送受信機14から送られてきた利用者の行き先情報に基づいて、報知装置18を制御し、利用者を誘導する情報を出力させる。
【0024】
報知装置18は、スピーカー、ディスプレイ等を備えており、制御端末16の制御により、音声で「右に曲がってください」のようなアナウンスを流したり、矢印や地図を画面に表示して行き先を示すといった方法により、利用者を誘導する。なお、報知装置18は、耳の不自由な患者のために、手話により行き先を誘導する機能を有していてもよい。また、患者がディスプレイ画面上に手書きで文字を描き、制御端末16側でその文字を判断して解釈し、患者に必要な情報を提示するようにしてもよい。
【0025】
次に、図2は、携帯送受信機であるICタグ12と固定側送受信機14の間における通信の原理を示すブロック図である。
【0026】
図2において、ICタグ12は、ICチップ22と、ICチップ22の制御により利用者の行き先情報を記憶又は読み出すためのメモリ24と、メモリ24から読み出された行き先情報を固定側送受信機14に送信、あるいは固定側送受信機14から送信される情報を受信するための送受信回路26と、送受信回路26と固定側送受信機14との間の信号のやり取りを行なうと共に、固定側送受信機14から発信される電磁波等によりICチップ22の電源となる起電力を発生するためのアンテナ28とを備えて構成されている。
【0027】
また、固定側送受信機14は、ICタグ12に電磁波等を送信するためのアンテナ30と、ICタグ12から利用者の行き先情報を読み出すための送受信回路32とを備えている。
【0028】
ここで、ICタグ12は無線ICタグを構成しており、固定側送受信機14とともに、所謂RFID(Radio Frequency Identification)と呼ばれる無線通信システムを構成している。
【0029】
RFIDには、125KHz帯域の静電結合方式と、120〜150KHzあるいは13.56MHz帯の短波の電磁波を利用する電磁誘導方式と、300MHz帯あるいは400〜530KHzの長波帯での交信を行なう電磁結合方式と、860〜956MHzのUHF帯を利用する電磁波伝播方式と、2.45GHzの準マイクロ波帯により交信を行なうマイクロ波方式と、5.8〜5.9GHzのマイクロ波方式とがあるが、いずれの方式も本実施形態に適用可能である。
【0030】
なお、病院などの医療機器を備える施設では、電波が医療機器に対して影響を与えることを防止するために、ICタグ12と固定側送受信機14との通信の電力を好ましくは0.3W以下、最大でも1W以下に抑えるように設定する。
【0031】
図3は、本実施形態におけるICタグ12の構成の一例を示す模式的平面図である。
【0032】
ICタグ12は、ICチップ22と、このICチップ22をループ状に取り巻くように配置されたループアンテナ28とを備えている。固定側送受信機14から発信された電磁波により、ループアンテナ28に電磁誘導による起電力が発生し、この起電力がICチップ22を駆動する電源となる。なお、図3においては、メモリ24と送受信回路26は、ICチップ22の中に含まれるものとして示されている。
【0033】
次に、上記のように構成される歩行ナビゲーションシステムを病院の施設に適用した場合の利用方法について説明する。
【0034】
図4A、図4Bは、病院での診察受付から患者を目的の場所に誘導しながら診察が終了するまでの流れを示す図、図5は患者を誘導する概念を示す図、図6は図5を上から見た平面図である。なお、図4A、図4Bは、患者が例えば内科を受診する例を示しており、以下の説明では内科を受診する場合について説明するが、他の科を受診する場合も全く同様の流れとなる。また、以下では診察を受ける科の情報のみがICタグに書き込まれるものとして説明する。
【0035】
まず、患者は病院の受付に行って診察受付を行ない(ステップS2)、診察を受けたい科を指定する(ステップS4)。なお以下では、受付は自動受付機で行うものとして説明するので、上記のステップS2、ステップS4では、診察券を自動受付機に挿入し、ディスプレイ上で受診科を指定することにより受付を行うことができる。
【0036】
患者が自動受付機で受診科を指定すると、自動受付機から診察券と指定した科が記載された紙が出力される(ステップS6)。また、同時に指定した受診科(本例では内科とする)に応じた行き先情報(ID)が記憶されたICタグ12が自動受付機から出力される(ステップS8)。なお、自動受付機で患者の受診科に応じた行き先情報(ID)をICタグ12に書き込むにあたっては、RFIDの原理を用いた公知の書き込み装置を自動受付機内に配置しておくことにより、容易に行き先情報をICタグ12に書き込むことができる。あるいは、受診科毎に予め行き先情報が書き込まれたICタグを多数準備しておくようにしてもよい。
【0037】
患者は、行き先として内科のIDが記憶されたICタグ12を自動受付機から受け取り、内科の方向に向かって進む(ステップS10)。
【0038】
患者が内科まで行く途中で、例えば図5、図6に示すような通路の分岐点に行き当たってどの方向に進めばよいか分からなくなった場合には(ステップS12、Yes)、ICタグ12を近くの固定側送受信機14のアンテナにかざす(ステップS14)。すると、固定側の送受信機14はICタグ12に記憶されている行き先情報(内科)を読み取り、制御端末16に伝える。制御端末16は、読み取られた行き先情報(ID)に応じて報知装置18を制御し、報知装置18のスピーカーから、例えば「内科は、右に曲がってください」といった音声が発せられると共に、報知装置18のディスプレイに地図と曲がる方向を示す矢印が表示される(ステップS16)。そして、患者は、この報知装置18の音声と表示に従って進むことにより、容易に内科に到着することができる(ステップS18)。
【0039】
なお、患者には、目の不自由な人、耳の不自由な人等がいるため、報知装置18は、音声と画像表示の両方で報知することが好ましい。また、耳の不自由な人のために手話の画面を表示することも好ましい。また、患者がディスプレイ画面上に手書きで文字を描き、制御端末16側でその文字を判断して解釈し、患者に必要な情報を提示するようにしてもよい。ただし、報知装置18は、必要に応じて音声又は画像のいずれか一方のみで報知するようにしてもよい。
【0040】
患者は、内科に到着すると、内科のポストに診察券と受付で受け取った紙を入れる(ステップS20)。そして、患者の順番に従って診察を受ける(ステップS22)。
【0041】
診察の結果、それで診察が終了であれば(ステップS24、診察終了)、ステップS48に進み、受診科で受付のIDが記憶されたICタグ12を受け取り、受付で清算を行なうと共にICタグ12を返却し(ステップS50)、帰宅する(ステップS52)。なお、患者が受診科から受付まで進む間においても、ICタグ12は患者を受付まで誘導する機能を果たす。また、上記では、受診科で受付のIDが記憶された新たなICタグ12を受け取るように説明したが、患者がそれまで携帯していたICタグ12に受付のIDを新たに書き込むようにしてもよい。
【0042】
一方、ステップS24で、診察の都合上、他の検査等が必要になった場合(ここではレントゲンを撮る必要ができたものとする)には(ステップS24、継続診察)、患者は受診科(内科)で、レントゲン室のIDが記憶されたICタグ12を受け取る(ステップS26)。なお、この場合も、新たなICタグ12を受け取る代わりに、診察室に前述したRFIDの原理を用いた公知の書き込み装置を設置しておき、医師がパソコンにレントゲン等の指示を入力することにより、患者がそれまで携帯していたICタグ12に次の行き先としてレントゲン室のIDが自動的に書き込まれるようにしてもよい。
【0043】
患者がレントゲン室まで行く途中で、再びどの方向に進めばよいか分からなくなった場合には(ステップS28、Yes)、ICタグ12を近くの固定側送受信機14のアンテナにかざす(ステップS30)。これにより、ステップS16の場合と同様に、報知装置18のスピーカーから音声が発せられると共に、ディスプレイに地図と曲がる方向を示す矢印が表示される(ステップS32)。そして、患者は、この報知装置18の音声と表示に従って進むことにより、容易にレントゲン室に到着することができる。
【0044】
その後、レントゲン室で撮影(診察)が終了すると(ステップS34)、再び内科に戻る必要があるので、内科のIDが記憶されたICタグ12を受け取る。又は、患者が携帯しているICタグ12に内科のIDを書き込む。
【0045】
患者は、再び内科の診察室に歩いていくが、この場合も(ステップS38〜ステップS42)、ステップS12〜ステップS16と全く同様にして、歩行ナビゲーションが行なわれる。
【0046】
患者が内科に到着すると、内科の診察室で、撮影したレントゲン写真に基づいて診察が行なわれ(ステップS44)、診察が終了すれば(ステップS46、Yes)、既に説明したステップS48〜ステップS52の手順で手続を行ない帰宅する。
【0047】
一方、ステップS46でさらに他の受診科の診察を受ける必要がある場合には、ステップS54で、他科のIDが記憶されたICタグ12を受け取るか、又は患者が携帯しているICタグ12に他科のIDを書き込み、ステップS12に進む。そして、既に説明したように、患者は他の受診科までICタグ12と固定側送受信機14により誘導される。以上を、診察が終了するまで繰り返す。
【0048】
なお、上記の歩行ナビゲーションシステムは、エネルギー施設におけるナビゲーションに利用することもできる。
【0049】
上記の歩行ナビゲーションシステムをエネルギー施設に利用する場合は、エネルギー施設には必ず危険地帯が存在するため、危険地帯に踏み込んだ場合に、音声や画像で危険を報知するようにしてもよい。RFIDによる無線通信は、ICタグ12と固定側送受信機14の距離が3m程度まで離れていても可能であるため、上記のような場合は、利用者がICタグ12を固定側送受信機14にかざさなくとも、警報を発することは可能である。
【0050】
また、目の不自由な患者が、このナビゲーションシステムを利用する場合、自分のいる位置、及び向いている方向が分からない場合がある。この場合は、固定側送受信機14を複数設けておき、少なくとも3つ以上の固定側送受信機14のICタグ12との通信状態から目の不自由な患者の位置を検出することが可能である。例えば、第1乃至第3の3つの固定側送受信機14がその順番で並んでいるとすると、第1と第2の固定側送受信機14が共にICタグ12と通信可能で、第3の固定側送受信14がICタグ12と通信が不可能であった場合、患者は第1と第2の固定側送受信機14の間の位置にいると判断することができる。このような原理で、患者の位置を判断することが可能となる。また、自分の向いている方向が分からなくなる場合に備えて、ICタグ12にジャイロセンサを設けることもでき、ICタグ12が固定側送受信機14と通信しながらジャイロセンサの角度を計算することにより、目の不自由な患者に逐次音声で行き先の方向を知らせることも可能である。これにより、目の不自由な患者に対しても、正確な誘導が可能となる。
【0051】
以上説明したように、上記の第1実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0052】
利用者が携行する携帯送受信機としてのICタグと固定側送受信機の間の通信を、RFIDの原理を用いて行なうことにより、ICタグ側に電源を持つ必要がなくなり、携帯送受信機のバッテリーの交換等の作業が不要になり、メンテナンス管理が非常に容易になる。
【0053】
固定側送受信機又はそのアンテナを壁、柱、天井、床等の内部や裏面などの外部から全く見えない位置に設置するのではなく、少なくともその一部が表面に露出して外部から見えるように設置することにより、設置がしやすくなり、また電波も伝わりやすくなり、さらに利用者がアンテナがどこにあるかが容易にわかるため、確実に通信を行うことが可能となる。
【0054】
ICタグに、氏名、所属団体名等の個人情報を書き込まないことで、個人情報の漏洩を防止することができる。
【0055】
ICタグと固定側送受信機の間の通信の電力を1W以下、好ましくは0.3W以下とすることにより、病院等においても使用することができ、また、免許が必要な周波数帯を使用することも可能となる。
【0056】
(第2の実施形態)
この第2の実施形態は、第1の実施形態の歩行ナビゲーションシステムを避難誘導に適用する場合の例である。
【0057】
図7は、例えば火災が発生した場合の避難誘導の流れを示す図であり、図8は警報を発する様子を示す図である。
【0058】
まず、火災が発生した場合には、建物の各所に設置されている固定側送受信機14に情報を伝達し、固定側送受信機14の周辺にいる人が携行しているICタグ12aに無線で情報を送信する。ICタグ12a側も固定側送受信機14から情報の送信を受けるとそれを受信した旨を固定側送受信機14に返信し、どの位置の固定側送受信機14がこの返信信号を受け取ったかによって、制御端末16は、ICタグ12aを携帯している人が建物のどこの位置にいるかを判断する。これにより、制御端末16は、固定側送受信機14を介して、その人の位置に応じて安全な方向への誘導を行なう。
【0059】
この第2の実施形態のICタグ12aは、第1の実施形態のICタグ12に音声を発する機能を付加したものであり、ICタグ12aは、固定側送受信機14からその人の位置に応じた情報を受信すると、その人の位置に応じて、例えば図8に示す様に「火災が発生しています、直進してください。」、あるいは「火災が発生しています、左折してください。」等の音声を発し、人を安全な方向に導く。また、固定側送受信機14の近くに設置されている報知装置のディスプレイに、避難の方向を示す地図を表示する。
【0060】
以上のようにすることにより、災害が発生した場合でも、建物内の人を速やかに安全な方向に誘導することが可能となる。
【0061】
このように、第2の実施形態によれば、建物内の人にそれぞれICタグ12aを携行してもらうことにより、災害が発生した場合などでも速やかに安全な方向に誘導することが可能となる。
【0062】
(第3の実施形態)
この第3の実施形態は、目の不自由な人のために、無線ICタグを連続的に配置したテープを病院等の床に設置しておき、目の不自由な人に送受信機つきの杖(スティック)を持たせ、その杖で無線ICタグ(RFIDの原理を用いる)のテープをなぞるようにしてもらうものである。
【0063】
以下、本実施形態を病院における歩行者の誘導に用いる場合について具体的に説明する。
【0064】
図9は、病院での診察受付から患者を目的の場所に誘導しながら診察が終了するまでの流れを示す図である。
【0065】
まず、目の不自由な患者は病院の受付に行って診察受付を行ない(ステップS62)、診察を受けたい科を指定する(ステップS64)。受付のオペレータは、パソコンなどの操作により、病院側で貸し出す院内用スティック(杖)の内部の記憶装置に、患者の指定した受診科に応じた行き先情報を記憶させる。そして、患者は、自分の所有している個人スティック(杖)と院内用スティックとを交換し、受診科が記載された紙を受け取る(ステップS66)。
【0066】
院内用スティックを受け取った患者は、病院の床に配置されているICタグテープに杖を沿わせながら受診科の診察室に向かって進む。
【0067】
このとき、ICタグテープ上の個々のICタグには病院内の位置情報がIDで登録されており、院内用スティック内に配置された送受信機はICタグテープ上のICタグと通信を行い現在位置情報を読み取る。また、院内用スティックにはマイクロコンピュータとスピーカーが内蔵されており、マイクロコンピュータの制御により、ICタグから読み込んだ現在位置情報に基づいて、スピーカーから患者を誘導する音声が出力される。なお、マイクロコンピュータは、ICタグとの通信により、患者が持つ院内用スティックがICタグテープからはみ出した場合には、スピーカーからの音声を小さくするか聞こえないようにして患者にICタグテープから外れたことを警告する。又は、振動で知らせるようにしてもよい。
【0068】
また、マイクロコンピュータは、患者が交差路にさしかかるときには、数メートル手前から音声で知らせる。また、該当する受診科の前では、到着したことを音声で知らせる。
【0069】
以上のようなナビゲーションにより、患者が受診科に到着すると(ステップS68)、患者は受診科に診察券と受付で受け取った紙を渡す(ステップS70)。そして、患者の順番に従って診察を受ける(ステップS72)。
【0070】
診察が終了すると、受診科で院内用スティックの記憶装置に受付のIDを書き込んでもらい(ステップS74)、院内用スティックをICタグテープに沿わせながら、院内用スティックの音声誘導に従って受付まで歩いていく。そして、受付で清算を行なうと共に院内用スティックと個人スティックを交換し(ステップS76)、帰宅する(ステップS78)。
【0071】
なお、診察の結果、レントゲン等の他の検査が必要になったり、他の科の診察を受ける必要ができた場合には、院内用スティックの記憶装置に新たな行き先IDを書き込んでもらうことにより対応することができる。
【0072】
また、院内用スティックの上部に第1の実施形態のICタグ12を取り付けておけば、建物の壁等に設置されている第1の実施形態の固定側送受信機14と通信することにより、第1の実施形態と同様に、患者を誘導することも可能である。
【0073】
このように、第3の実施形態によれば、点字ブロックなどを設置することが困難な病院などの施設内においても、目の不自由な人を確実に目的の場所に誘導することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の歩行ナビゲーションシステムの第1の実施形態のシステム構成を示す模式図である。
【図2】携帯送受信機であるICタグと固定側送受信機の間における通信の原理を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるICタグの構成の一例を示す模式的平面図である。
【図4A】病院での診察受付から患者を目的の場所に誘導しながら診察が終了するまでの流れを示す図である。
【図4B】病院での診察受付から患者を目的の場所に誘導しながら診察が終了するまでの流れを示す図である。
【図5】患者を誘導する概念を示す図である。
【図6】図5を上から見た平面図である。
【図7】火災が発生した場合の避難誘導の流れを示す図である。
【図8】警報を発する様子を示す図である。
【図9】病院での診察受付から患者を目的の場所に誘導しながら診察が終了するまでの流れを示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 歩行ナビゲーションシステム
12 ICタグ
14 固定側送受信機
16 制御端末(パーソナルコンピュータ)
18 報知装置
22 IC
24 メモリ
26 送受信回路
28 アンテナ
30 アンテナ
32 送受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導される対象である人物に携行されるICタグと、
建物の所定位置に配置され、前記ICタグと無線で通信を行なう送受信装置と、
前記誘導される対象である人物に、音声及び/又は画像により進むべき方向を報知する報知装置と、
前記送受信装置により前記ICタグから読み取られた情報に基づいて、前記報知装置の音声及び/又は画像を制御する制御装置とを具備し、
前記ICタグと前記送受信装置とは、RFIDの原理により無線通信を行なうことを特徴とする歩行ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記ICタグには、前記誘導される対象である人物の行き先情報が記憶されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記送受信装置は、前記建物の通路の壁、柱、天井、床のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記送受信装置のアンテナは、前記建物の通路の壁、柱、天井、床等の建築材料のいずれかの表面に少なくとも一部が見えるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記報知装置は、前記送受信装置の近傍位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記送受信装置は、前記建物の所定の位置に複数配置され、該複数の送受信装置と前記ICタグとの通信状態により、前記誘導される対象である人物の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項7】
前記ICタグはジャイロを備えることを特徴とする請求項1に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項8】
前記制御装置はパーソナルコンピュータであることを特徴とする請求項1に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項9】
前記報知装置は、手話又は文字入力により行き先を案内する画像を表示することを特徴とする請求項1に記載の歩行ナビゲーションシステム。
【請求項10】
誘導される対象である目が不自由な人物に携行され、内部に送受信装置を内蔵する杖と、
建物の床に配置され、杖内に配置された送受信回路と無線で通信を行なうICタグテープと、
前記送受信装置により前記ICタグテープから読み取られた情報に基づいて、前記誘導される対象である人物に、少なくとも音声及びその信号により進むべき方向を報知する報知装置とを具備し、
前記送受信装置と前記ICタグテープとは、RFIDの原理により無線通信を行なうことを特徴とする歩行ナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−125942(P2006−125942A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312829(P2004−312829)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】