説明

歩行者端末装置、コンピュータプログラム、及び、無線通信方法

【課題】無線通信の帯域を有効利用する。
【解決手段】歩行者端末装置1は、現在位置を示す位置情報を取得可能である。この歩行者端末装置1は、位置情報を無線送信可能でかつ、他の無線通信装置である車載等8から送信された当該車載装置8の位置を示す位置情報を受信する通信部6を有している。歩行者端末装置1の情報取得部22は、この車載装置8の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該車載装置8と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得する。歩行者端末装置1の通信制御部21は、情報取得部22が取得した相対位置情報に基づいて、通信部6による無線送信の継続、中断又は送信頻度の増減などについての制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)に用いられる歩行者端末装置、この歩行者端末装置のためのコンピュータプログラム、及び、この歩行者端末装置によって実行される無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
かかる高度道路交通システムは、主として、インフラ側の無線通信装置である複数の路側装置と、車両に搭載される無線通信装置である複数の車載装置とによって構成される。
【0003】
この場合、各通信主体間で行う通信の組み合わせには、路側装置と車載装置とが行う路車(又は車路)間通信と、車載装置同士が行う車車間通信とが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、歩行者と車両との間における交通事故の防止を目的として、歩行者が所持する端末装置(以下、歩行者端末装置という)と車載装置とが無線通信を行い(歩車間通信)、互いが自身の位置を伝え、相手が近くに存在していることを示す情報を報知する技術が提案されている。すわなち、車載装置が、自身の位置を示す位置情報を送信し、これを歩行者端末装置が受信する他に、歩行者端末装置も、自身の位置を示す位置情報を送信し、これを車載装置が受信する。
【0006】
このような歩車間通信では、車車間通信の通信手順に準じCSMA(Carrier Sense Multiple Access)を用いて通信を行うことが考えられる。しかし、この場合、歩行者端末装置が普及するにしたがって、特に交差点など歩行者が集まる場所では、歩行者端末装置の数が多くなり、これらが自身の都合で情報の送信を開始しようとすると、無線通信の帯域が逼迫し、車載装置による情報の送信の機会が奪われることが考えられる。この結果、歩車間通信を行うことにより歩行者と車両との間における交通事故を防止するという目的を、達成することができなくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる歩行者端末装置、この歩行者端末装置のためのコンピュータプログラム、及び、この歩行者端末装置によって実行される無線通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、現在位置を示す位置情報を取得可能な歩行者端末装置であって、前記位置情報を無線送信可能でかつ、他の無線通信装置から送信された当該他の無線通信装置の位置を示す位置情報を受信する通信部と、前記他の無線通信装置の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した相対位置情報に基づいて、前記通信部による無線送信を制御する通信制御部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報に基づいて、歩行者端末装置による無線送信が制御される。すなわち、歩行者端末装置が他の無線通信装置との関係でどのような環境により用いられているかに応じて、当該歩行者端末装置による無線送信の継続、中断又は送信頻度の増減などについての制御がされる。このため、例えば、歩行者端末装置が、他の無線通信装置と一体となって移動する環境で用いられる場合、当該歩行者端末装置による無線送信を控えて、当該他の無線通信装置による無線通信を優先させることができ、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる。
【0010】
(2)また、前記通信部によって、周囲に存在する前記他の無線通信装置である車載装置との間で無線通信が可能であるのが好ましい。
この場合、歩行者端末装置が無線送信した情報を、周囲の車載装置が受信することで、当該車載装置を搭載した車両側において、当該歩行者端末装置の存在が認識され、車両の安全走行に役立てることが可能となる。
【0011】
(3)また、前記歩行者端末装置は、前記他の無線通信装置から送信され前記通信部が受信した情報に基づいて、当該他の無線通信装置が車載装置であるか否かを判定する判定部を、更に備え、前記判定部によって車載装置であると判定された他の無線通信装置と、自身との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す前記相対位置情報が、前記取得部によって取得されると、前記通信制御部は、前記通信部による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制御を実行するのが好ましい。
判定部によって車載装置であると判定された他の無線通信装置と、歩行者端末装置(自身)との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す相対位置情報が取得されている場合は、当該他の無線通信装置(車載装置)が搭載されている車両に、歩行者端末装置(自身)も乗っていると考えられる。そこで、この場合、歩行者端末装置(自身)は、無線送信を中断又は送信頻度を低減することにより、他の無線通信装置(車載装置)による無線通信を優先させる。
【0012】
(4)また、前記歩行者端末装置は、複数の他の無線通信装置から送信され前記通信部が受信した情報に基づいて、当該複数の他の無線通信装置それぞれが車載装置であるか否かを判定する判定部を、更に備え、前記判定部によって、通信相手となっている複数の他の無線通信装置が車載装置ではないと判定され、かつ、前記取得部によって、通信相手となっている当該複数の他の無線通信装置それぞれと自身との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す前記相対位置情報が取得されると、前記通信制御部は、前記通信部による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制御を実行するのが好ましい。
通信相手となっている複数の他の無線通信装置が車載装置ではなく、これら複数の他の無線通信装置それぞれと歩行者端末装置(自身)との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す相対位置情報が取得されている場合は、通信相手となっている前記複数の他の無線通信装置も歩行者端末装置であって、自身を含めて、同じ車両(例えばバス)に乗っていると考えられる。そこで、この場合、歩行者端末装置(自身)は、無線送信を中断又は送信頻度を低減することにより、他の無線通信装置(他の歩行者端末装置)による無線通信を優先させる。
【0013】
(5)また、前記歩行者端末装置は、端末所持者は歩行している歩行状態ではなく、端末所持者は車両に乗って移動している走行状態であることを検知する検知部を、更に備え、前記検知部によって、前記走行状態であると検知され、かつ、前記取得部によって、通信相手となっている前記複数の他の無線通信装置それぞれと自身との相対的な位置の変動が大きいことを示す前記相対位置情報が取得されると、前記通信制御部は、前記通信部による無線送信を継続又は送信頻度を増やす制御を実行するのが好ましい。
端末所持者が車両に乗って移動している走行状態であり、しかも、通信相手となっている複数の他の無線通信装置それぞれと、自身との相対的な位置の変動が大きいことを示す相対位置情報が取得されている場合は、通信相手として周囲に複数の無線通信装置が存在しているが、これらは自身が乗っている車両(バス)には乗っていないと考えられる。この場合、車両(バス)の中に、無線通信機能を有する装置として、歩行者端末装置(自身)が唯一存在していることから、当該歩行者端末装置(自身)は、車載装置として機能すべく、積極的な無線送信を行うことが可能となる。なお、端末所持者とは、歩行者端末装置を所持している者である。
【0014】
(6)また、前記通信部は、前記他の無線通信装置の位置情報と共に、当該他の無線通信装置の移動速度と移動方向とのうちの一方又は双方を示す移動情報を受信し、前記取得部は、前記移動情報を補助的に用いて前記相対位置情報を取得するのが好ましい。
上記のとおり、取得部による相対位置情報の取得は、他の無線通信装置と自身との相対的な位置に基づくが、前記移動情報を補助的に用いることで、この相対的な位置に関する相対位置情報の精度が高まる。このため、通信制御部による無線送信の制御を正確に行うことが可能となる。
【0015】
(7)また、本発明は、無線送信の制御を含む各種処理を行う処理部を備えかつ現在位置を示す位置情報を取得可能な歩行者端末装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、他の無線通信装置から送信された当該他の無線通信装置の位置を示す位置情報を受信するステップと、前記他の無線通信装置の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得するステップと、取得した相対位置情報に基づいて、前記無線送信を制御するステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報に基づいて、歩行者端末装置による無線送信が制御される。すなわち、歩行者端末装置が他の無線通信装置との関係でどのような環境により用いられているかに応じて、当該歩行者端末装置による無線送信の継続、中断又は送信頻度の増減などについての制御がされる。このため、例えば、歩行者端末装置が、他の無線通信装置と一体となって移動する環境で用いられる場合、当該歩行者端末装置による無線送信を控えて、当該他の無線通信装置による無線通信を優先させることができ、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる。
【0017】
(8)また、本発明は、無線送信の制御を含む各種処理を行う処理部を備えかつ現在位置を示す位置情報を取得可能な歩行者端末装置によって実行される無線通信方法であって、他の無線通信装置から送信された当該他の無線通信装置の位置を示す位置情報を受信し、前記他の無線通信装置の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得し、取得した相対位置情報に基づいて、前記無線送信を制御することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報に基づいて、歩行者端末装置による無線送信が制御される。すなわち、歩行者端末装置が他の無線通信装置との関係でどのような環境により用いられているかに応じて、当該歩行者端末装置による無線送信の継続、中断又は送信頻度の増減などについての制御がされる。このため、例えば、歩行者端末装置が、他の無線通信装置と一体となって移動する環境で用いられる場合、当該歩行者端末装置による無線送信を控えて、当該他の無線通信装置による無線通信を優先させることができ、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、歩行者端末装置が他の無線通信装置との関係でどのような環境により用いられているかに応じて、当該歩行者端末装置による無線送信が制御されるので、歩行者端末装置の使用環境に応じて、例えば、当該歩行者端末装置による無線送信を控えて、他の無線通信装置による無線通信を優先させることができ、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略図である。
【図2】路側装置及び車載装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図3】歩行者端末装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図4】無線通信方法(第1実施形態)を説明するフロー図である。
【図5】図1の一部を示す図であり、歩行者端末装置を所持している所持者が、車載装置を搭載している車両に乗っている状態を示している。
【図6】無線通信方法(第2実施形態)を説明するフロー図である。
【図7】図1の一部を示す図であり、歩行者端末装置を所持している所持者が、車載装置を搭載していないバスに乗っている状態を示している。
【図8】図1の一部を示す図であり、1台の歩行者端末装置がバスに乗っており、その周囲の他の歩行者端末装置は、このバスに乗っていない状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略図である。この高度道路交通システムは、交通信号機13、無線通信装置である路側装置10、無線通信装置である車載装置8、車載装置8を搭載した車両41、無線通信装置であり歩行者Hが所持する歩行者端末装置1、及び、中央装置9を含む。
【0022】
交通信号機13及び路側装置10は、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜12)それぞれに設置されている。各交差点に設置されている路側装置10は、当該交差点に設置された交通信号機13を制御する信号制御機12と通信可能である。信号制御機12は、交通信号機13の灯色の変更についての制御を行う。
【0023】
中央装置9は、自身が管轄するエリアに含まれる交差点Jiの交通信号機13(信号制御機12)及び路側装置10とLAN(Local Area Network)を構成している。
中央装置9は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有しており、この制御部は、路側装置10からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
【0024】
各路側装置10は、その周囲に広がる通信エリアを有し、自身の通信エリア内を走行する車両41の車載装置8との間、及び、当該通信エリア内の歩行者端末装置1との間において無線通信を行う。
各車載装置8は、車両41に搭載されることから移動するが、その周囲に広がる通信エリアを形成し、自身の通信エリア内の歩行者端末装置1との間において無線通信が可能である。また、車載装置8は、通信エリアが重複する状態で、他の車載装置8とも無線通信が可能である。
つまり、本実施形態の高度道路交通システムには、路側装置10と車載装置8とが行う路車(又は車路)間通信と、車載装置8同士が行う車車間通信と、歩行者端末装置1と路側装置10とが行う歩路(又は路歩)間通信と、歩行者端末装置1と車載装置8とが行う歩車(又は車歩)間通信と、が含まれる。
【0025】
〔車載装置について〕
図2は、路側装置10及び車載装置8を示すブロック図である。なお、歩行者端末装置1のブロック図を図3に示す。
図2において、車載装置8は、無線通信するためのアンテナ71に接続された通信部72と、この通信部72に対する通信制御を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等よりなる制御部73と、この制御部73に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部74とを備えている。
【0026】
記憶部74は、制御部73が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムを記憶している他、車載装置(自身)8を識別する識別情報(車載装置ID)、及び、車載装置(自身)8を搭載する車両を識別する識別情報(車両ID)を記憶している。
そして、制御部73は、通信手順としてCSMA(Carrier Sense Multiple Access)を用いて無線通信を行う。つまり、制御部73は、車車間通信及び歩車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部72に行わせる。
このために、通信部72は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行う。
【0027】
さらに、車載装置8は、自身の現在位置を示す位置情報を取得する位置取得部75を備えている。位置取得部75は、例えばGPS測位部を有しており、GPS測位部はGPS衛星からの電波を受信し自身の現在位置を測位する。また、位置取得部75は、方位センサ及び加速度センサを有しており、これらセンサの出力に基づいて移動方向、移動速度、及び、移動距離を検出することもできる。
【0028】
各車載装置8は、測位した自身の現在位置を示す位置情報、及び、検出した移動速度及び移動方向を示す移動情報などを含む車両情報を、通信部72を介して外部にブロードキャストで無線送信している。そして、この車両情報には、前記車両IDが含まれており、また、前記車載装置IDも含まれていてもよい。
この車両情報は、路側装置10及び歩行者端末装置1によって受信され、歩行者端末装置1は、この車両情報に基づいて、後に説明する各種処理を実行する。
【0029】
〔路側装置について〕
路側装置10は、無線通信するためのアンテナ61が接続された無線通信部62と、中央装置9及び信号制御機12と双方向通信する有線通信部63と、これらの通信制御を行うプロセッサ等よりなる制御部64と、制御部64に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部65とを備えている。
【0030】
路側装置10の記憶部65は、無線通信部62が受信した車載装置8の前記車両情報を、一時的に記憶することができ、この情報を、無線通信部62を介して周囲にブロードキャスト送信する機能を有している。つまり、車両情報は、車載装置8から直接的に歩行者端末装置1に与えられてもよいが、路側装置10を介して、歩行者端末装置1に与えられてもよい。
【0031】
〔歩行者端末装置について〕
歩行者端末装置1は、歩行者によって所持される装置であり、端末所持者(歩行者端末装置1を所持している歩行者)の位置を測位し、測位して得られた位置情報に基づいて地図上における自身の位置(現在位置)を推定することができる。また、この歩行者端末装置1は、自身の位置(つまり、端末所持者の歩行位置)及びその周囲の道路地図を表示可能であり、この表示を、当該歩行者端末装置1を携帯している歩行者が見ることにより、歩行者を案内することができる。
さらに、この歩行者端末装置1は、自装置の位置から目的地までの歩行経路を検索する機能も有している。そして、歩行者端末装置1は、検索した歩行経路を、当該歩行者端末装置1を携帯している歩行者に対して歩行時に報知することで、歩行者を案内することができる。なお、以下において、歩行者端末装置1を所持した歩行者(端末所持者)が、車両に乗った場合、その歩行者を所持者ともいう。
【0032】
図3において、歩行者端末装置1は、各種の処理を実行する中央処理部2、歩行者が操作して情報を入力する入力部3、自身の位置(現在位置)を測位して当該位置を示す位置情報を取得する位置取得部4、地図情報(地図データ)及びコンピュータプログラムなどが記憶されている記憶装置5、車載装置8の通信部72及び路側装置10の通信部62との間で無線通信を行う通信部6、及び、各種情報を歩行者に対して出力する出力部7を備えている。
【0033】
本実施形態の歩行者端末装置1は、コンピュータとしての機能を有する携帯電話(スマートフォン)からなり、無線通信の制御を含む各種処理を行う前記中央処理部2を備えている装置として、この携帯電話を機能させるためのコンピュータプログラムが、携帯電話にインストールされることにより構成される。なお、歩行者端末装置1は、コンピュータとしての機能を有するポータブルナビゲーション装置であってもよい。
【0034】
前記中央処理部2が有する後述の各機能部は、このコンピュータプログラムが中央処理部2によって実行されることで発揮される。つまり、このコンピュータプログラムは、コンピュータとしての機能を有する携帯電話(スマートフォン)を、歩行者端末装置1として機能させるためのものである。
なお、このコンピュータプログラムの販売・譲渡は、当該コンピュータプログラムがネットワーク経由でダウンロード可能に格納されたサーバから、歩行者端末装置1にダウンロードされることで行うことができる。また、このコンピュータプログラムは、CD−ROM、DVD−ROMなどの記録媒体に格納されて販売、譲渡されるものであってもよい。中央処理部2の各機能部については、後に説明する。
【0035】
前記出力部7は、ディスプレイ7a及びスピーカ7bからなり、ディスプレイ7aは、経路案内に関する情報、及び、車載装置8(車両)が近くに存在していることを示す存在情報など各種情報を画像として出力する。また、スピーカ7bは、経路案内に関する情報、及び、前記存在情報などを音声として出力する。
【0036】
前記入力部3は、歩行者のユーザインターフェースとして機能する操作装置からなり、本実施形態では、前記ディスプレイ7aを用いたタッチパネル装置である。歩行者がこの入力部3を操作することにより、入力部3を通じて中央処理部2へと歩行経路の検索のための目的地などの各種情報が入力される。なお、入力部3は、ディスプレイ7a(タッチパネル装置)とは別に設けられたボタンなどであってもよい。
【0037】
前記位置取得部4は、例えばGPS測位部を有しており、GPS測位部はGPS衛星からの電波を受信し自身の現在位置を測位する。また、位置取得部4は、方位センサ及び加速度センサを有しており、これらセンサの出力に基づいて移動方向、移動速度及び移動距離を検出することもできる。そして、これらセンサの出力により自立航法に基づく自己の位置の測位が可能である。また、位置取得部4は、取得した自身の位置を示す位置情報を中央処理部2に与える。
【0038】
前記記憶装置5は、ROM、RAM、ハードディスクなどのメモリからなり、前記コンピュータプログラムの他に、地図情報などを記憶する。
そして、位置取得部4によって取得された現在位置(前記位置情報)に基づいて、現在位置及びその周囲の地図(地図情報)が、ディスプレイ7aに表示され、歩行者に対して経路案内がされる。
【0039】
前記通信部6は、周囲の無線通信装置である車載装置8(前記通信部72)との間で無線通信を行う狭域通信機能を有している。さらに、この狭域通信機能は、周囲の無線通信装置である路側装置10(前記通信部62)、及び、周囲の他の歩行者端末装置1との間で通信を行う機能も有している。この狭域通信機能は、道路交通情報通信システムとして車載装置8と通信する歩車間通信、及び、路側装置10と通信する歩路間通信などで用いられる周波数帯を利用した通信機能である。
【0040】
これにより、通信部6は、他の無線通信装置である車載装置8、歩行者端末装置1及び路側装置10から送信される情報を受信することができ、また、これらに対して情報を送信することができる。例えば、通信部6は、他の無線通信装置である車載装置8から送信された当該車載装置8の位置を示す位置情報を含む送信情報を受信することができる。また、位置取得部4によって自身の位置情報が取得されていることから、通信部6は、自身の位置情報を周囲に無線送信することができる。
なお、歩行者端末装置1が携帯電話(スマートフォン)である場合、通信部6は、携帯電話として機能させるための広域通信機能も有しており、この広域通信機能を用いて、他の無線通信装置からの情報を受信してもよい。
【0041】
〔中央処理部2の各機能部について〕
図3において、中央処理部2は、その機能部として、通信制御部21、情報取得部22、判定部23及び検知部24を有している。
【0042】
情報取得部22は、周囲に存在している他の無線通信装置の位置情報と、自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得する。例えば、周囲を走行している車両に搭載されている車載装置8は、上記のとおり、当該車載装置8の現在位置を示す位置情報を含む車両情報を送信していることから、この車両情報を通信部6が受信すると、情報取得部22は、この車両情報に基づいて、当該車載装置8と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得する。なお、自身の位置情報は、前記位置取得部4によって取得された情報である。
【0043】
前記相対位置情報は、例えば、位置情報を含む車両情報を送信した車載装置8と、自身との相対的な位置に関して、所定時間が経過しても、その相対的な位置の変動が小さいこと(又は変動が大きいこと)を示す情報などである。
【0044】
また、上記のとおり、車載装置8は、位置情報と共に、移動速度及び移動方向を示す移動情報も、車両情報に含めて送信している。そこで、通信部6は、車載装置8の位置情報と共に、当該車載装置8の移動速度と移動方向とのうちの一方又は双方を示す移動情報を含む車両情報を受信することができる。
そして、情報取得部22は、取得したこの移動情報を補助的に用いて、前記相対位置情報を取得してもよい。この場合、情報取得部22による相対位置情報の取得は、車載装置8と自身との相対的な位置に基づくが、移動情報を補助的に用いることで、この相対的な位置に関する相対位置情報の精度を高めることができる。
【0045】
通信制御部21は、通信手順としてCSMA(Carrier Sense Multiple Access)を用いて無線通信を行う。つまり、通信制御部21は、歩車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部6に行わせる。
このために、通信制御部21は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、通常状態では(つまり、後述の制限制御が実行されている以外では)その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行う。
【0046】
また、通信制御部21は、前記情報取得部22が取得した相対位置情報に基づいて、通信部6による無線送信を制御する。無線送信の制御としては、通信部6による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制限制御の他に、通信部6による無線送信を継続又は送信頻度を増やす制御がある。この通信制御部21による通信制御の具体例については、後述の歩行者端末装置1が実行する無線通信方法により説明する。
なお、歩行者端末装置1が行う前記無線送信により、周囲に対して送信する情報としては、当該歩行者端末装置1(自身)の位置情報などである。
【0047】
判定部23は、周囲の他の無線通信装置から送信され通信部6が受信した送信情報に基づいて、通信相手となっている他の無線通信装置が車載装置であるか否かを判定する機能を有している。
例えば、周囲の車載装置8が送信した送信情報は、上記のとおり車両IDなどを含む車両情報であることから、この送信情報(車両情報)を通信部6が受信すると、判定部23は、この送信情報に車両IDが含まれているか否かを判別することができる。なお、車両IDは所定のフォーマットで定義されていることから、判定部23は、通信相手から送信された送信情報に基づいて、当該送信情報に車両IDが含まれているか否か、つまり、通信相手となっている無線通信装置が車載装置であるか否か、判定することができる。
【0048】
また、歩行者端末装置1の周囲に複数の他の無線通信装置が存在している場合、これら無線通信装置それぞれからの送信情報を、歩行者端末装置1は受信する。そこで、判定部23は、これら複数の他の無線通信装置から送信され通信部6が受信した送信情報に基づいて、複数の他の無線通信装置それぞれが車載装置であるか否かを判定することができる。例えば、送信情報に車両IDが含まれていれば、その車両ID毎に対応付けてその通信相手である無線通信装置は車載装置であると判定する。
なお、車載装置であるか否かの判定は、車両ID以外の情報に基づいてもよく、車両特有の車両情報(例えばウインカーの動作に関する情報)に基づいて行うことができる。
【0049】
検知部24は、歩行者端末装置1(自身)を所持した端末所持者が歩行している歩行状態ではなく、歩行者端末装置1(自身)を所持した端末所持者は車両に乗って移動している走行状態であることを検知する機能を有している。つまり、検知部24は、端末所持者が、歩行しているのか、車両(乗物)に乗って移動しているのかを判別することができる。
【0050】
歩行者端末装置1は、加速度センサを有していることから、検知部24は、このセンサによる検出信号に基づいて、歩行特徴の有無を判断すると共に、移動速度(又は加速度)とを組み合わせて、歩行しているのか乗物に乗っているのか判別することができる。例えば、移動速度が速いが、歩行特徴に基づけば静止していると判断される場合、乗物に乗っている可能性が高いと判別される。なお、この検知部24による処理は、これ以外の手段を用いてもよい。
【0051】
このように、移動速度が速いが、歩行特徴に基づけば静止していると判断される場合、乗物に乗っている可能性が高いと判別されるが、その乗物が、車両であるか、自転車であるかなどの、乗物の種別の判別についても、検知部24は行うことが可能である。
すなわち、図示しないが、乗物それぞれに歩行者端末装置1を装着するクレードルが設けられており、乗物の種別によりクレードルの装着部の特性(形状)が変えられている。そして、歩行者端末装置1側では、この特性の違いにより通電される信号ラインが変化するように構成されている。この信号ラインの変化により、検知部24は種別の判別が可能となる。
または、クレードルの装着部の特性は乗物の種別毎に同じであるが、装着の有無を識別する第1信号ラインと、種別判定するための第2信号ラインとが、クレードル及び歩行者端末装置1に設けられており、第2信号ラインの信号に基づいて、種別を判定してもよい。例えば、第1信号ラインでは信号があり、装着されていることを判定できるが、第2信号ラインでは無信号である場合、自転車であると判定することができる。
あるいは、前記歩行者端末装置1を用いて交通手段に乗降する際に行われる電子決済が実行されたか否かで、バスや電車などに乗車したかどうかを判断してもよい。
また、特に電車に乗車する場合、歩行者の位置が通常の道路や建物の上ではなく線路の上にあると考えられるから、検出された歩行者端末装置1の位置が電車の線路上であると判断された場合に、電車に乗車していると認識するようにしても良い。
【0052】
なお、歩行者端末装置1は車両に乗っているが、この歩行者端末装置1を車載装置として機能させている場合がある。そこで、検知部24は、図示しないが、車両に搭載されているクレードルへの歩行者端末装置1の装着に基づいて、歩行者端末装置1を車載装置として機能させているか否か検知することができる。例えば、クレードルを通じて、車両側のバッテリ(外部電源)から歩行者端末装置1が電源の供給を受けていると、検知部24が判断すると、その車両では、歩行者端末装置1を車載装置として利用していると判断することができる。この場合、通信制御部21は、CSMAによる通信手順に従い、送信の機会があれば情報の送信を行う。
【0053】
〔無線通信方法の第1の実施形態〕
以上の構成を備えた歩行者端末装置1が実行する無線通信方法について説明する。
図4は、無線通信方法を説明するフロー図である。図5は、図1の一部を示す図であり、端末所持者は、車載装置8−1を搭載している車両41−1に乗っているとする。車両41−1は交差点J4に向かって走行しており、この交差点J4には、交通信号機13、信号制御機12及び路側装置10が設置されている。さらに、交差点J4の近傍には、他の車両41−2も存在しており、この車両41−2には車載装置8−2が搭載されている。車載装置8−1,8−2それぞれは、上記説明した構成を備えている。
【0054】
車両41−1に乗っている歩行者端末装置1が実行する無線通信方法を説明する。歩行者端末装置1の検知部24は、端末所持者が、歩行しているのか(歩行状態)、車両(乗物)に乗って移動しているのか(走行状態)を判別する(ステップS1)。この判別の手段は、上記のとおりであり、ここでは説明を省略する。本実施形態では、検知部24によって、端末所持者は歩行状態ではなく、車両41−1に乗って移動している走行状態であることを検知する(ステップS1でYes)。
【0055】
そして、歩行者端末装置1の位置取得部4は、自身の現在位置を示す位置情報を取得する(図4のステップS11)。この位置情報の取得は繰り返し実行されおり、刻々と変化する現在位置についての情報を更新しながら取得し続け、新しい位置情報を中央処理部2へ与える。
【0056】
また、通信部6によって、周囲に存在している他の無線通信装置から送信された送信情報を受信する(ステップS2)。この送信情報には、他の無線通信装置の位置を示す位置情報が含まれている。図5の場合、通信部6は、車載装置8−1,8−2それぞれから送信された送信情報を受信する(ステップS2)。送信情報は、車載装置8−1,8−2それぞれの位置を示す位置情報が含まれている車両情報である。
【0057】
判定部23は、通信部6が受信した前記送信情報に基づいて、通信相手となっている他の無線通信装置が車載装置であるか否かを判定する(ステップS3)。本実施形態では、送信情報は、車載装置8−1,8−2それぞれから送信されている車両情報であり、上記のとおり、この車両情報には車両IDが含まれている。このため、判定部23は、この送信情報の送信元である無線通信装置は、共に車載装置であると判定することができる(ステップS3のYes)。なお、このステップS3では、少なくとも一つの無線通信装置が車載装置であると判定された場合(ステップS3のYes)次のステップS4へと進む。
【0058】
車載装置であると判定された無線通信装置(車載装置8−1,8−2)に関して、情報取得部22は、前記送信情報(車両情報)に基づいて、これら車載装置8−1,8−2の位置情報と、自身の位置情報とに基づいて、車載装置8−1,8−2それぞれと自身との相対的な位置に関する相対位置情報の取得を開始する(ステップS4)。
【0059】
すなわち、車載装置8−1からの送信情報に含まれている当該車載装置8−1の位置情報と、歩行者端末装置1が取得した自身の位置情報とに基づいて、情報取得部22は、当該車載装置8−1と自身との距離を示す予備情報を取得する(ステップS5)。さらに、この予備情報の取得は、所定時間毎(例えば1秒毎)に繰り返して行われる。
この予備情報の取得の処理が繰り返し行われても、車載装置8−1と自身(歩行者端末装置1)とは同じ車両41−1内に存在しているので、車載装置8−1と自身との距離は変わらず一定(ほぼ一定)である。このため、情報取得部22は、車載装置8−1に関して、所定時間にわたって相対的な位置の変動が小さいことを示す相対位置情報(情報A)を取得する(ステップS7)。
【0060】
例えば、情報取得部22は、前記予備情報に基づく所定時間毎の前記距離の変化Δと、予め設定されている閾値αとを比較し(ステップS6)、この距離の変化Δが閾値α未満であれば(ステップS6でYes)、所定時間にわたって前記距離は変わらず一定であると判断することができ、前記情報Aが取得される(ステップS7)。なお、前記閾値としては、一般的な車両の車長(例えば4.5m)とすることができる。
【0061】
これに対して、図5の車載装置8−2に関しては、ステップS5において、車載装置8−2からの送信情報に含まれている当該車載装置8−2の位置情報と、歩行者端末装置1が取得した自身の位置情報とに基づいて、情報取得部22は、当該車載装置8−2と自身との距離を示す予備情報も取得している。さらに、この予備情報の取得は、所定時間毎に繰り返して行われている。
車両41−1と車両41−2とは共に異なる方向に向かって走行していることから、車載装置8−2と自身との距離は刻々と変化する。したがって、情報取得部22は、前記予備情報に基づく所定時間毎の前記距離の変化Δと、予め設定されている閾値αとを比較するとステップS6では「No」の判定となる。この場合、情報取得部22は、車載装置8−2に関して、相対的な位置の変動が大きいことを示す相対位置情報(情報B)を取得する(ステップS8)。
【0062】
そして、通信制御部21は、情報取得部22が取得した前記相対位置情報に基づいて、通信部6による無線送信を制御する(ステップS9、ステップS10)。
すなわち、上記のとおり、前記判定部23によって車載装置であると判定された無線通信装置(車載装置8−1)と、自身との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す相対位置情報(情報A)が、情報取得部22によって取得されているので(ステップS7)、この場合、通信制御部21は、通信部6による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制限制御を実行する(ステップS10)。
【0063】
なお、情報取得部22によって、前記情報Aが、少なくとも一つでも取得されていれば(ステップS9のYes)、前記制限制御は実行される。つまり、本実施形態では、車載機8−2との関係で、情報Bも取得されているが、車載機8−1との関係で、情報Aが取得されているので、前記制限制御が実行される。
【0064】
なお、歩行者端末装置1において、制限制御の実行が開始されるまでの通常状態では、CSMAによる通信手順に従い、送信の機会があれば情報の送信を行うが、制限制御が開始されると、この送信を中止する。この中止の処理が無線送信の中断である。この場合、通信部6は、受信専用の状態となる。
また、制限制御として実行する、送信頻度の低減とは、CSMAによって送信の機会があっても、その機会では情報の送信を行わず、次の送信機会で、情報の送信を行う場合である。
【0065】
以上のように、図4のステップS3において、判定部23が車載装置であると判定した他の無線通信装置(車載装置8−1)と、歩行者端末装置1(自身)との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す相対位置情報(情報A)が取得されている場合は(ステップS7)、当該他の無線通信装置(車載装置8−1)が搭載されている車両41−1に、歩行者端末装置1(自身)も乗っていると考えられる(図5参照)。
そこで、この場合、歩行者端末装置1は、無線送信を中断又は送信頻度を低減することにより、車載装置8−1による無線通信を優先させる。すなわち、車両41−1では、車載装置8−1が代表となって周囲に対して情報の発信を行う。これにより、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる。
【0066】
〔無線通信方法の第2の実施形態〕
図6は、無線通信方法を説明するフロー図である。図7は、図1の一部を示す図であり、歩行者端末装置1Aを所持している端末所持者は、車載装置を搭載していない車両に乗っている。この車両はバス41aであり、バス41aには、他の歩行者端末装置1B(他の無線通信装置)をそれぞれ所持している複数の端末所持者(歩行者)も乗っている。
【0067】
このバス41aに乗っている歩行者端末装置1Aが実行する無線通信方法を説明する。歩行者端末装置1Aの検知部24は、歩行者端末装置1Aを所持している端末所持者が、歩行しているのか(歩行状態)、車両(乗物)に乗って移動しているのか(走行状態)を判別する(ステップS20)。この判別の手段は、上記のとおりであり、ここでは説明を省略する。本実施形態では、検知部24によって、端末所持者は歩行状態ではなく、バス41aに乗って移動している走行状態であることを検知する(ステップS20でYes)。
【0068】
そして、歩行者端末装置1Aの位置取得部4は、自身の現在位置を示す位置情報を取得する(ステップS31)。この位置情報の取得は繰り返し実行されおり、刻々と変化する現在位置についての情報を更新しながら取得し続け、新しい位置情報を中央処理部2へ与える。
【0069】
また、通信部6によって、周囲に存在している他の無線通信装置から送信された送信情報を受信する(ステップS21)。この送信情報には、他の無線通信装置の位置を示す位置情報が含まれている。図7の場合、通信部6は、複数の他の歩行者端末装置1Bそれぞれから送信された送信情報を受信する(ステップS21)。送信情報には、歩行者端末装置1Bそれぞれの位置を示す位置情報が含まれている。
【0070】
判定部23は、通信部6が受信した前記送信情報に基づいて、通信相手となっているこれら複数の他の無線通信装置それぞれが車載装置であるか否かを判定する(ステップS22)。本実施形態では、歩行者端末装置1Bの送信情報には、車両IDが含まれていないことから、判定部23は、通信相手となっている複数の他の無線通信装置の全てが車載装置ではないと判定する(ステップS22でNo)。
【0071】
車載装置ではないと判定された無線通信装置(歩行者端末装置1B)それぞれに関して、情報取得部22は、通信部6が受信した前記送信情報に基づいて、これら歩行者端末装置1Bそれぞれの位置情報と、自身の位置情報とに基づいて、歩行者端末装置1Bそれぞれと自身との相対的な位置に関する相対位置情報の取得を開始する(ステップS23)。
【0072】
すなわち、各歩行者端末装置1Bからの送信情報に含まれている当該歩行者端末装置1Bの位置情報と、歩行者端末装置1Aが取得した自身の位置情報とに基づいて、情報取得部22は、当該歩行者端末装置1Bと自身(1A)との距離を示す予備情報を取得する(ステップS24)。さらに、この予備情報の取得は、所定時間毎(例えば1秒毎)に繰り返して行われる。
この予備情報の取得の処理が繰り返し行われても、他の歩行者端末装置1Bと自身(歩行者端末装置1)とは同じバス41a内に存在しているので、各歩行者端末装置1Bと自身(1A)との距離は変わらず一定(ほぼ一定)である。このため、情報取得部22は、所定時間にわたって相対的な位置の変動が小さいことを示す相対位置情報(情報A)を取得する(ステップS26)。
【0073】
例えば、情報取得部22は、前記予備情報に基づく所定時間毎の前記距離の変化Δと、予め設定されている閾値αとを比較し(ステップS25)、この距離の変化Δが閾値α未満であれば(ステップS25でYes)、所定時間にわたって前記距離は変わらず一定であると判断することができ、前記情報Aが取得される(ステップS26)。
【0074】
そして、通信制御部21は、情報取得部22が取得した前記相対位置情報に基づいて、通信部6による無線送信を制御する(ステップS27)。
すなわち、判定部23によって、複数の他の無線通信装置の全てが車載装置ではない(つまり、全てが歩行者端末装置1Bである)と判定され(ステップS22でNo)、かつ、情報取得部22によって、通信相手となっている当該複数の他の無線通信装置それぞれと自身との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す相対位置情報(情報A)が取得されると(ステップS26)、通信制御部21は、通信部6による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制限制御を実行する(ステップS27)。
【0075】
特に本実施形態では、前記判定部23によって車載装置ではないと判定された他の無線通信装置(歩行者端末装置1)と、自身と相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す相対位置情報(情報A)が、情報取得部22によって、取得されるので、これにより、通信制御部21は、通信部6による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制限制御を実行する(ステップS27)。なお、制限制御は、図4の実施形態において説明した制限制御と同じである。
【0076】
以上のように、車載装置ではない複数の他の無線通信装置それぞれと、歩行者端末装置1A(自身)との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す相対位置情報(情報A)が取得されている場合は(ステップS26)、これら複数の他の無線通信装置も歩行者端末装置1Bであって、かつ、自身を含めて、同じバス41aに乗っていると考えられる(図7参照)。
そこで、この場合、歩行者端末装置1Aは、無線送信を中断又は送信頻度を低減することにより、他の歩行者端末装置1Bによる無線通信を優先させる。すなわち、そのバス41aでは、他の歩行者端末装置1Bが代表となって周囲に対して情報の発信を行う。これにより、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる。
【0077】
なお、図7は、通信相手となる周囲の歩行者端末装置1Bが同じバス41aに乗っている場合であったが、これとは異なり、通信相手となる周囲の歩行者端末装置1Bは、図8に示しているように、歩行者端末装置1Aが乗っているバス41aに乗っておらず、バス41aの周囲に存在している場合について説明する。
この場合、周囲の歩行者端末装置1Bは、歩行者端末装置1Aの通信相手となっていることから、図6において、ステップS23までと同じ処理が実行され、さらに、情報取得部22は、歩行者端末装置1Bそれぞれと自身との距離を示す予備情報を取得する(ステップS24)。そして、この予備情報の取得は、所定時間毎(例えば1秒毎)に繰り返して行われる。
【0078】
図8の場合、予備情報の取得の処理が繰り返し行われると、他の歩行者端末装置1Bは、自身(歩行者端末装置1)と同じバス41a内に存在していないので、歩行者端末装置1Bと自身(歩行者端末装置1A)との距離は刻々と変化する。
このため、情報取得部22は、前記予備情報に基づく所定時間毎の前記距離の変化Δと、予め設定されている閾値αとを比較すると(ステップS25)、この距離の変化Δが閾値αを超えているので(ステップS25でNo)、情報取得部22は、歩行者端末装置1Bそれぞれと自身との相対的な位置の変動が大きいことを示す相対位置情報(情報B)を取得する(ステップS28)。
【0079】
この場合、通信制御部21による無線送信の制御として、通信制御部21は、通信部6による無線送信を継続又は送信頻度を増やす制御を実行する(ステップS29)。
これは、通信相手となっている複数の歩行者端末装置1Bそれぞれと、歩行者端末装置1A(自身)との相対的な位置の変動が大きいことを示す相対位置情報(情報B)が取得されていることから、通信相手として周囲に複数の歩行者端末装置1Bが存在しているが、これらは自身が乗っているバス41aには乗っていないと考えられ、この場合、バス41aの中に、無線通信機能を有する装置として、歩行者端末装置1A(自身)が唯一存在していることとなる。したがって、この歩行者端末装置1A(自身)は、車載装置として機能すべく、積極的な無線送信を行う。この積極的な無線送信として、無線送信を中止するのではなく継続する、又は、送信頻度を増やす制御が行われる。
【0080】
これにより、バス41aでは、歩行者端末装置1Aが周囲に対して情報の発信を行う。なお、送信頻度を増やす場合、バス41aの移動速度、つまり、歩行者端末装置1の加速度センサが検知する移動速度に応じて、その頻度を変化させてもよい。例えば、移動速度が大きくなるに応じて、送信頻度も増やすようにすればよい。
【0081】
なお、図8において、バス41aには、車載装置が搭載されていないことから、ステップS22では「No」の判定がされている。しかし、仮に、バス41aに車載装置が搭載されている場合、図4に示している通信制御方法に基づき、ステップS3で「Yes」の判定がされ、この結果、図4のステップS10の制限制御が実行される。つまり、バスの41aの車載装置が優先される。
【0082】
以上の前記各実施形態に係る歩行者端末装置1(1A)による無線通信方法は、図4により説明すると、他の無線通信装置から送信された当該他の無線通信装置の位置を示す位置情報を含む送信情報を受信し(ステップS2)、この他の無線通信装置の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得し(ステップS4〜S8)、取得した相対位置情報に基づいて、無線送信を制御する(ステップS10)。
【0083】
これにより、歩行者端末装置1Aは、他の無線通信装置との関係でどのような環境により用いられているかを識別し、これに応じて、当該歩行者端末装置1Aによる無線送信が制御される。このため、図5で説明したように、歩行者端末装置1が、他の無線通信装置である車載装置8と同じ車両41−1に乗って移動する環境で用いられる場合、歩行者端末装置1による無線送信を控えて、この車載装置8による無線通信を優先させることができ、無線通信の帯域を有効利用することが可能となる。
そして、この車両41についての情報は、車載装置8から周囲に送信され、この情報を受信した周囲の歩行者端末装置は、車両41の存在を知ることができ、安全歩行のための処理を実行することが可能となる。
【0084】
また、上記の実施形態はすべて例示であり本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での変更が含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1:歩行者端末装置 2:中央処理部(処理部) 6:通信部 8:車載装置 8−1,8−2:車載装置 21:通信制御部 22:情報取得部(取得部) 23:判定部 24:検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を示す位置情報を取得可能な歩行者端末装置であって、
前記位置情報を無線送信可能でかつ、他の無線通信装置から送信された当該他の無線通信装置の位置を示す位置情報を受信する通信部と、
前記他の無線通信装置の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した相対位置情報に基づいて、前記通信部による無線送信を制御する通信制御部と、
を備えていることを特徴とする歩行者端末装置。
【請求項2】
前記通信部によって、周囲に存在する前記他の無線通信装置である車載装置との間で無線通信が可能である請求項1に記載の歩行者端末装置。
【請求項3】
前記他の無線通信装置から送信され前記通信部が受信した情報に基づいて、当該他の無線通信装置が車載装置であるか否かを判定する判定部を、更に備え、
前記判定部によって車載装置であると判定された他の無線通信装置と、自身との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す前記相対位置情報が、前記取得部によって取得されると、
前記通信制御部は、前記通信部による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制御を実行する請求項1又は2に記載の歩行者端末装置。
【請求項4】
複数の他の無線通信装置から送信され前記通信部が受信した情報に基づいて、当該複数の他の無線通信装置それぞれが車載装置であるか否かを判定する判定部を、更に備え、
前記判定部によって、通信相手となっている複数の他の無線通信装置が車載装置ではないと判定され、かつ、前記取得部によって、通信相手となっている当該複数の他の無線通信装置それぞれと自身との相対的な位置の変動が所定時間にわたって小さいことを示す前記相対位置情報が取得されると、
前記通信制御部は、前記通信部による無線送信を中断又は送信頻度を低減する制御を実行する請求項1又は2に記載の歩行者端末装置。
【請求項5】
端末所持者は歩行している歩行状態ではなく、端末所持者は車両に乗って移動している走行状態であることを検知する検知部を、更に備え、
前記検知部によって、前記走行状態であると検知され、かつ、前記取得部によって、通信相手となっている前記複数の他の無線通信装置それぞれと自身との相対的な位置の変動が大きいことを示す前記相対位置情報が取得されると、
前記通信制御部は、前記通信部による無線送信を継続又は送信頻度を増やす制御を実行する請求項4に記載の歩行者端末装置。
【請求項6】
前記通信部は、前記他の無線通信装置の位置情報と共に、当該他の無線通信装置の移動速度と移動方向とのうちの一方又は双方を示す移動情報を受信し、
前記取得部は、前記移動情報を補助的に用いて前記相対位置情報を取得する請求項1〜5のいずれか一項に記載の歩行者端末装置。
【請求項7】
無線送信の制御を含む各種処理を行う処理部を備えかつ現在位置を示す位置情報を取得可能な歩行者端末装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
他の無線通信装置から送信された当該他の無線通信装置の位置を示す位置情報を受信するステップと、
前記他の無線通信装置の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得するステップと、
取得した相対位置情報に基づいて、前記無線送信を制御するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
無線送信の制御を含む各種処理を行う処理部を備えかつ現在位置を示す位置情報を取得可能な歩行者端末装置によって実行される無線通信方法であって、
他の無線通信装置から送信された当該他の無線通信装置の位置を示す位置情報を受信し、
前記他の無線通信装置の位置情報と自身の位置情報とに基づいて、当該他の無線通信装置と自身との相対的な位置に関する相対位置情報を取得し、
取得した相対位置情報に基づいて、前記無線送信を制御することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9027(P2013−9027A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138341(P2011−138341)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】