説明

歩行者誘導方法及び路面標示装置

【課題】路面から光を放つ方式ではなく、既設の街灯や電柱等に路面標示装置を取り付け該路面標示装置から路面に光を照射し、光による誘導マークを路面上に描出するという路面標示装置を提案する。
【解決手段】LED(発光ダイオード)を発光させて光線を発するランプユニットを具備する路面標示装置を既設の支柱2に設置し、該路面標示装置より歩行者の進行方向に沿って配列した複数のスポット光10を路面に投光し、スポット光10にて形成された誘導ラインに沿って歩行者を歩行させることによって、特に歩行者の夜間の歩行を誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者を誘導する歩行者誘導方法及びこれに供する路面標示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロービジョン者(低視力の視覚障害者)の歩行を誘導するために、駅プラットホームや、公共施設等において、誘導用ブロックや誘導用音声装置等の手段が備えられている。これらは、ロービジョン者の聴覚や触覚への刺激を誘導方向等の認知の手がかりとするものである。
多くのロービジョン者は、聴覚や触覚だけでなく残された視覚を使い、上記のような誘導手段が整備されない道路を歩行している。しかし、明るい昼間と比較して、暗い夜間の方が視覚による道路状態の認知度が劣ることから、昼間と比較して夜間の外出が困難となっている。
【0003】
高齢者、身体障害者を含め全ての人にとって道路は移動のための重要な手段であるが、これまでは、車両のための道路整備が中心に進められ、人の歩行の快適性についてはさほど配慮されてこなかった。ライトを点灯して走行する車両に十分な程度の照度の照明であったり、車両交通量の少ない道路では照明あるいは照明灯の数が少なかったりというように、道路照明においても安全性の観点から車道照明が中心で歩道照明は二の次にされてきた現状がある。
【0004】
ロービジョン者にとって歩き易い歩行環境を整えるためには、夜間照明の照度を高くして、多くのロービジョン者が歩行に十分な程度に道路状態を認知できる明るさを確保することが望ましい。
しかし、実情では、道路に隣接する家屋への影響や、照明の維持管理費などを考慮せねばならず、上記のように夜間照明の照度を高くすることは困難である。
そこで、近年では、歩行者、特にロービジョン者の夜間歩行を補助する手段として、夜間の視認性に配慮したLED(発光ダイオード)内蔵誘導用ブロックが道路や道路脇に埋設され、全国でその施工工事例が増えつつある。LED内蔵誘導用ブロックは、歩行環境を焦点的に他より明るくするものであり、歩行者はこの明るさを手がかりとして、進行方向や警告を認知することができる。
【0005】
一方、トンネルのセンターラインの位置を可変としたり、積雪した道路において停止ラインを視認可能としたりするために、路面上に車両用のラインや交通標示を、路面上方からの発光によって描出させる技術が公知となっている。
例えば、特許文献1では、積雪路面では路面上のライン標示が視認できないので、LEDの光をレンズで平行光に変えて雪面に停止線・路側線・中央線等を描出する路面標示装置が提案されている。
【特許文献1】特開2001−40625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、LED内蔵誘導用ブロックは歩行者を誘導する手段として有効であるが、LED内蔵誘導用ブロックを埋設施工する際に、地中配線等の複雑な施工が必要とされるために工事費が嵩むことや、故障時の取り替えや修理等のメンテナンスが困難である等の問題を抱えている。また、積雪時には、路面に埋設されたLED内蔵誘導用ブロックより発される光が視認不能となり、機能を発揮することができない。
【0007】
そして、上記特許文献1に示される技術は、車両の走行を補助するためのものであって、歩行者、特にロービジョン者の夜間歩行の補助としての光によって形成される誘導マークや災害時での照明による避難者の誘導等、歩行者に対する技術については言及していない。
【0008】
そこで、本発明では、路面から光を放つ方式ではなく、既設の街灯や電柱等に備え付けた路面標示装置より路面に光を照射し、光による誘導マークを路面上に形成して歩行者を誘導する方法及びこれに供するための路面標示装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、上方から路面に照射した、歩行者の進行方向に沿って配列した複数のスポット光にて、歩行者の歩行を誘導する歩行者誘導方法である。
【0011】
請求項2においては、断続的又は連続的に整列した複数のスポット光を路面に照射するランプユニットを備える路面標示装置である。
【0012】
請求項3においては、前記ランプユニットは、複数のLED(発光ダイオード)を備えて成るものである。
【0013】
請求項4においては、前記複数のLEDを相互に角度を変化させて併設し、ランプユニットより複数且つ異なる角度をもった光線を発するものである。
【0014】
請求項5においては、前記ランプユニットに、スポット光の照射面積を可変とする集光器を備えるものである。
【0015】
請求項6においては、前記路面標示装置に、太陽光を利用して発電及び蓄電するとともに電力を供給する電源ユニットを備えるものである。
【0016】
請求項7においては、前記路面標示装置に、周囲の明るさを検知する照度センサーと、ランプユニットの光照射領域における人の存否を検出する人感センサーと、ランプユニットへの電力の供給のON・OFFを切り換えるスイッチング手段と、各センサーの検知に基づいてスイッチング手段を操作し前記ランプユニットの点消灯を制御する制御手段とを備え、前記照度センサーにて検出した夜間に相当する所定の明るさの範囲内において路面表示装置を起動し、人感センサーにて光照射領域での人の存在を検出したときに、ランプユニットにて複数のスポット光を路面に投光するように制御するものである。
【0017】
請求項8においては、前記路面標示装置に、非常時において避難誘導の案内文字あるいは矢印を表示させる非常灯を設けるものである。
【0018】
請求項9においては、前記非常灯に前記電源ユニット若しくは外部電源を用いて電力を供給し該非常灯を点灯させるものである。
【0019】
請求項10においては、前記路面標示装置が街灯や電柱等の既設の支柱に設置され、複数のスポット光にて歩行者の進行方向に沿うラインを形成するものである。
【0020】
請求項11においては、前記路面標示装置が駅プラットホームに設置され、複数のスポット光にてプラットホームの縁端に沿うラインを形成するものである。
【0021】
請求項12においては、前記路面標示装置が駐車場若しくは駐輪場に配置され、複数のスポット光にて車若しくは自転車の駐車スペースの周縁に沿うラインを形成するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
請求項1においては、路面上に配列された複数のスポット光をから成る誘導マークをたよりに歩行することで、夜間においても確実に進行方向を知って且つ確実に歩行できる。また、光線は上方から路面に照射されるので、積雪や落ち葉等にて路面が隠れても前記誘導マークを視認できる。
【0024】
請求項2においては、複数のスポット光にて路面上にラインを形成することで、経年劣化や剥げるなどしてラインが不明確になるという従来の路面上に形成されるラインの不具合を解消することができる。また、ラインを形成するために路面を工事する必要がないので、施工の簡易化を図ることができる。
【0025】
請求項3においては、LEDは消費電流が少なく且つ寿命が長いので、経済性を備えるとともに、LEDは高輝度であることから、照明で照らされた路面においても高視認性と誘目性を得ることができる。
【0026】
請求項4においては、少ない路面標示装置で多くのスポット光を形成することができ、多くの設置場所やコストを必要としない。
【0027】
請求項5においては、路面におけるスポット光の範囲を拡大することで、スポット光を照明としても利用することができる。例えば、被災時等において、路面表示装置によるスポット光を照明として利用することで、生じた落下物等の障害物を避難者に視認させ、障害物にぶつかる危険を回避することができる。また、路面表示装置によるスポット光にて避難所等で広域な照明を行えば、明るい照明により避難者に安心感を与える等の心理的効果をもたらす。
【0028】
請求項6においては、自ら発電する電源ユニットを用いることで、路面標示装置を非常時にも動作可能にすることができ、また、施工時に外部電線と繋げる電線工事が不要となるので施工の簡易化を図ることができる。
【0029】
請求項7においては、照度センサーと人感センサーを備えることにて、路面標示装置は夜間や曇天時等の周囲が暗いときにのみ作動し、歩行者を感知し続ける限り点灯させ、他は照射待機状態とさせるよう制御することができる。これにより、必要な時のみに路面標示装置を使用することによって電力の無駄を省きランプユニットを長持ちさせることができる。
【0030】
請求項8においては、非常灯を点灯して避難者を案内文字あるいは矢印で誘導することにより、避難所まで安全に誘導することができる。また、明るさを確保することにより人々の混乱を防止することができる。
【0031】
請求項9においては、非常時において、長期間の曇天等で太陽電池等の電力が得られなくなった場合に、外部電源を用いることにより非常灯を点灯させることができる。
【0032】
請求項10においては、路面上に配列された複数のスポット光をから成る誘導マークをたよりに歩行することで、夜間においても確実に進行方向を知って且つ確実に歩行できる。また、光線は上方から路面に照射されるので、積雪や落ち葉等にて路面が隠れても前記誘導マークを視認できる。
さらに、路面表示装置は、既設の柱状物に取り付けることができるので、道路工事や配線工事等の大がかりな工事や設置場所の確保を必要とせず、また、維持管理も容易である。
【0033】
請求項11においては、利用者に駅のプラットホームの縁端を強く認識させ、利用者、特に視覚障害者の転落防止を図る。また、転落防止用としてだけではなく、出口又は乗り換え通路までの誘導手段として活用することも可能である。
【0034】
請求項12においては、夜間等暗がりにおいても運転手が駐車スペースを明確に認識することができ、駐車スペースからはみ出すことなく安全に且つ明確に駐車を行うことができる。また、夜間において自動車が停車してから下車するとき、下車する際の足元を明確にすることで、水たまりや溝等を予め認識し且つ避けることができ、安全に下車することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の路面標示装置の通常時(夜間)における一実施例の説明図、図2は路面標示装置の概略ブロック図、図3は本発明の路面標示装置の非常時における一実施例の説明図、図4は駅のプラットホーム上での路面標示装置の一実施例の説明図、図5は駐車場における路面標示装置の一実施例の説明図である。
【実施例1】
【0036】
本発明の第一実施例を図1に基づいて説明する。
本発明の実施例に係る路面標示装置1は、箱形の筐体内部に光源としてのランプユニット45を備えて、主に路面4にスポット状の光(以下、スポット光と記載する)を照射するものである。
図2にも示すように、路面標示装置1には、制御手段40と、通信手段41と、人感センサー42や照度センサー43の検出センサーと、電源ユニット44と、ランプユニット45等が備えられる。これらは路面標示装置1の筐体内にまとめて内装されている。これにより、路面標示装置1を取り付け施工が容易で維持管理しやすい構造とするとともに、既設の支柱2へ設置された際に美観を損ねることのないようにすっきりとした外観としている。
【0037】
前記制御手段40は、路面標示装置1を構成する各要素を制御するものである。すなわち、制御手段40は、人感センサー42や、照度センサー43や、通信手段41からの情報を受けて、電源ユニット44やランプユニット45を動作し、ランプユニット45を発光させる。
【0038】
前記通信手段41は、災害発生時等の非常時において、路面標示装置1を作動させるために外部から送られてくる信号を受信するための手段である。通信手段41にて受信した信号は、制御手段40に送信され、制御手段40では予め設定された非常時用制御が行われる。
後述するが、路面標示装置1は、非常時において避難する人々を誘導する誘導灯として、また、街灯の代替になる照明灯として、機能することができる。
【0039】
前記照度センサー43は、路面標示装置1の周囲が夜間に相当する所定の明るさになったことを検知するための手段である。ここで、夜間に相当する所定の明るさとは、物体を視認し難いと感じる明るさ(例えば、5〜10ルクス程度の照度)である。なお、照度センサー43の検出部にて検出される所定の明るさは、路面標示装置1の配置される周囲の環境(建物や日照条件等)により決定される。
照度センサー43にて、路面標示装置1の周囲が所定の明るさになったことが検出されると、この情報が信号として制御手段40に送信される。そして、路面標示装置1の周囲が所定の明るさより暗くなった時点で、路面標示装置1が起動(ON)され照射待機状態、また、路面標示装置1の周囲が所定の明るさより明るくなった時点で、路面標示装置1が停止(OFF)される。これにより、路面標示装置1は、夜間や曇天時等の周囲が暗いときにのみ作動可能な状態となる。
【0040】
但し、路面標示装置1に照度センサー43を設けず、タイマを備えて、予め設定された所定の時間なった時点で、路面標示装置1が起動(ON)されて照射待機状態となり、また、予め設定された所定の時間になった時点で、路面標示装置1が停止(OFF)されるように構成することもできる。
【0041】
前記人感センサー42は、上記照度センサー43にて路面標示装置1が起動されて照射待機状態となっているときのみ作動する、路面表示装置1による光照射領域に人が来たことを検知するための手段である。光照射領域とは、路面標示装置1の周囲であって、路面標示装置1よりスポット光が照射され得る領域である。
人感センサー42にて、光照射領域に人が来たことが検出されると、この情報が信号として制御手段40に送信される。この人感センサー42を備えることで、路面標示装置1を、人感センサー42が歩行者を感知し続ける限りスポット光を照射させ、他は照射待機状態とさせることができ、電力の無駄を省きランプユニット45を長持ちさせることができる。
人感センサー42として、例えば、赤外線検出方式や超音波検出方式等の慣用されている人感センサーが採用され、該人感センサー42の検出部から所定の検出範囲内において移動するものが存在することを検出することにて、人を検知する。
なお、検出部からの検出範囲は、隣接して配置される路面標示装置1・1間の距離の半分以上を半径とすることが好ましく、この検出範囲に基づいて人感センサー42の感度が定められる。
【0042】
前記電源ユニット44は、路面標示装置1を動作させる電力を発電するとともに、ランプユニット45へ給電するものである。電源ユニット44は、太陽光発電式であって、ソーラーパネル44aが備えられる。ソーラーパネル44aは、路面標示装置1内に設けて該路面標示装置1の筐体周囲に一体的に形成してもよいし、ソーラーパネル44aを路面標示装置1から独立した構成として既設の支柱2に取り付けてもよい。
なお、上述のように、路面標示装置1は非常時にも動作可能とするためや施工の簡易化を図るために、自ら発電する電源ユニット44を備えることが好ましいが、積雪、降雪、吹雪や地吹雪、降雨、濃霧等の悪条件又は悪天候状態のため、無照日による発電効果が得られない場合や、路面標示装置1の配置される周囲の環境が太陽光発電をするために十分でない場合には、適宜商用電源を利用して給電したり、街灯に電気を供給する電線から給電したりするように構成することもできる。
【0043】
そして、電源ユニット44は、ランプユニット45を発光させるために、上述のように発電して蓄電した電力を、ランプユニット45に供給する。電源ユニット44では、制御手段40からの信号を受けてランプユニット45への電力供給のON/OFFの切換動作を行うスイッチング手段46を備える。
【0044】
前記ランプユニット45は、発光ダイオード(以下LEDと記載する)と、集光器と、非常灯5等を備え、主に路面4にスポット光を照射するものである。
LEDへの電力の供給は前記電源ユニット44によって行われ、LEDの発光のON/OFFの切換は電源ユニット44のスイッチング手段46にて動作される。ランプユニット45には、複数のLEDが備えられ、路面4にスポット光を照射するために十分な程度に発光可能とする。なお、LEDは、高輝度発光ダイオードを採用することが好ましく、街灯で照らされる路面4においても際だって明るい高輝度のスポット光が路面標示装置1より照射されるようにする。
前記集光器は、反射板やレンズから構成されるものであり、該集光器にてLEDの発光が、複数の光線となって出射され、路面4にスポット光が投光される。なお、集光器が制御手段40の信号を受けて動作することにて、スポット光の照射範囲の拡大縮小が可能である。
また、ランプユニット45に具備される非常灯5は、非常時に避難する人々を誘導する誘導灯として機能する部分であり、制御手段40で非常時用制御が行われるときに、路面標示装置1の前面等の視認が容易な位置に避難誘導の案内文字あるいは矢印を、LEDの発光により表示する。非常灯5の光の色は、スポット光の色と異なる構成にしてもよい(例えば、非常灯5は赤色のLEDで構成して、非常時に注意を引きやすい光の色とする)。
【0045】
なお、本実施例では、上記ランプユニット45において、LEDと集光器とは、LEDにレンズを備えたレンズ一体型LED装置として構成され、該LEDの光がレンズによりほぼ平行光に屈折されて路面に出射されるため、スポット光10は輝度が高く、高視認性と誘目性が得られる。
また、本実施例では、一つの路面標示装置1からの照射にて形成されるスポット光10は三つで、それらは等間隔(例えば5m間隔)に一列に配置される。このように、一つの路面標示装置1にて複数のスポット光10・10・・・を形成するために、上記ランプユニット45では、LEDが複数個角度を変えて併設される。
【0046】
上述の構成の路面標示装置1は、歩道に立設されている街灯や電柱等の既設の支柱2の上部に設置される。本実施例では、既設の支柱2の片側にのみ路面標示装置1を取り付けているが、支柱の両側に路面標示装置1を取り付ける構成も可能である。
前記路面標示装置1を既設の支柱2に取り付け固定する手段として、該路面標示装置1の背面と既設の支柱2との両方に係止部を設けて着脱可能にお互いに係止させるか、若しくはボルト等の締結部材と固定具で固定させる。また、溶接固定させてもよい。
【0047】
一般に、既設の支柱2は路面4に沿って適宜の間隔(例えば15m間隔)をもって配置されており、それぞれの支柱2に路面標示装置1を取り付けることにより路面4上に等間隔でスポット光10が照射され、誘導マークが形成される。
具体的には、図1に示されているように、路面標示装置1から発せられるLED光3は路面4上に投射され、これにより高い輝度の複数のスポット光10(照射領域)が形成される。複数のスポット光10は、道路の進行方向に沿って略等間隔に配列される。道路に沿って設置された各支柱2に路面標示装置1を設置することにより、道路に沿って略等間隔に配列されたスポット光10・10・・・より成る鎖線状のライン標示(誘導マーク)が形成される。
【0048】
路面標示装置1のランプユニット45において、LEDから発せられる光は、例えば黄色光であるが、これに限定されることはない。また、路面標示装置1に備えられる複数のLEDの発光色は、全て同一であっても、或いは、異なるものであってもよいが、誘導マークを際立たせるために既設の街灯の照射光の色と異なることが望ましい。
また、スポット光10の明るさについては、JIS照度基準では、歩道は1〜10ルクスとなっているが、ロービジョン者にとって、10ルクス以下では夜間の道路は歩きづらい環境となっており、ロービジョン者が歩きやすいようにするためには、スポット光10の照度を20ルクス程度確保することが望ましい。
【0049】
なお、路面4上に形成されたスポット光10の形状は円状、長円形状であるが、形状については特に限定せず、スポット光10の形状が道路標識や誘導用矢印の形状となるように、ランプユニット45の集光器を構成することもできる。
【0050】
続いて、災害等の非常時における、路面標示装置1の非常用制御について説明する。図3には非常時における本発明の路面標示装置1の一実施例を示している。
【0051】
例えば大地震といった災害が発生すると、商用電力が遮断されて停電になり、夜間になれば街中が暗闇になる状態が生じるおそれがある。一般に、公園等の比較的広い場所が避難所に指定されているが、街灯の消えた暗闇では避難所の場所さえ確認できないことになる。そこで、図2に示すように、非常時において路面標示装置1は、避難誘導及び街灯に代わる照明としての機能を果たす。
【0052】
路面標示装置1の通信手段41にて非常信号を受信すると、制御手段40は非常時用制御を行う。非常信号は路面標示装置1を集中管理する地域の公的機関等より、無線又は有線で発信される。
なお、上記では通信手段41が非常信号を受けることにて、制御手段40が非常時用制御を開始する構成としているが、路面標示装置1に地震の揺れを感知する地震センサーを備えて、地震の揺れがある程度に達すると、制御手段40が非常時用制御を開始する構成することも可能である。
【0053】
非常時用制御では、ランプユニット45のうち路面標示装置1の前面部に設けられた非常灯5を昼夜問わず点灯させ、避難誘導の案内文字あるいは矢印を表示させる。このように、非常時に非常灯5を点灯させることで避難者誘導路を確保し、該非常灯5を避難場所の目印として活用することができる。
【0054】
また、非常時用制御では、路面標示装置1が起動されている夜間等において、照度センサー43にて、街灯が点灯されている状態よりも格段に暗い状況を検出すれば、スポット光10による広域照明を行うように制御する。
スポット光10による広域照明は、ランプユニット45の集光器を操作し、路面4に投光されるスポット光10の照射範囲を拡大して、人感センサー42での人の検出の有無を問わず断続的に照射する。このように、路面標示装置1にて広域な照明を行うことで、災害等で生じた落下物等の障害物を避難者に視認させ、障害物にぶつかる危険を回避することができる。また、避難所等で広域な照明を行うことで、避難者に安心感を与える等の心理的効果をもたらすことができる。
【0055】
また、非常時において、非常灯5は自ら発電する電源ユニット44から電力を供給して発光しているが、長期間の曇天等で太陽電池等からの電力が供給されなくなった場合に、車のバッテリー電源等の外部電源を用いて非常灯5に電力を供給することにより該非常灯5を点灯させるように構成されている。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明の第二実施例を、図4より説明する。
駅のプラットホーム30からの視覚障害者の転落事故の主な原因として、視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の誤認識や踏み越え、周囲の地面と区別がつかなかったことが挙げられる。また、点字ブロックにつまずく可能性もある。
そこで、本発明の路面標示装置1にてプラットホーム30に誘導マークを描出することにより、プラットホーム30の利用者、特にロービジョン者を安全に誘導し、プラットホーム30からの転落を未然に防止することを図る。
【0057】
本実施例では、駅のプラットホーム30上の支柱31上部に、本発明の路面標示装置1を取り付けて、プラットホーム30上にスポット光10を照射し誘導マークを形成する。
誘導マークは、駅のプラットホーム30の縁端(線路側)から内側(例えば縁端より内側に80cm)上に断続的に若しくは連続的に複数のスポット光10照射して形成する。誘導マークは、周囲と比較して際立って明るいラインであり、利用者にプラットホーム30の縁端を強く認識させ、利用者、ロービジョン者の転落防止を促すことが期待できる。
【0058】
また、上述のように誘導マークを転落防止用としてだけではなく、出口又は乗り換え通路までの誘導手段として活用することも可能である。この場合、駅のプラットホーム30の縁端を示す誘導マークと、歩行者を誘導する誘導マークとを、異なる光色としたり、或いは、異なるスポット間隔としたりするなどして、容易に区別できるものとすることが好ましい。
また、プラットホーム30に停車する電車の車両を認識させるために、プラットホーム30に入ってくる電車の車両番号あるいはドア番号等の案内標示を予めプラットホーム30上の所定の位置に印刷等で施して表示しておき、それらに路面標示装置1のスポット光10を照射することにより、前記案内標示を利用者に視覚的に訴えることができる。
【実施例3】
【0059】
次に、本発明の第三実施例を、図5より説明する。
夜間での駐車場35若しくは駐輪場における問題点として、車上荒らしや違法駐車、若しくは駐車スペースからのはみ出し等が挙げられる。これらの打開策として、本実施例では、駐車場35若しくは駐輪場に本発明の路面標示装置1を備える。
【0060】
具体的には、車の駐車スペースの周囲に支柱2を立設させ、該支柱2の上部に路面標示装置1を設置する。スポット光10の照射領域に駐車若しくは駐輪させておくことで、人がその車若しくは自転車等に近付いた場合、路面標示装置1の人感センサー42が作動しスポット光10が照射されるので防犯の効果も期待できる。
また、同様の警告の効果として、夜間における不法駐車若しくは不法駐輪への整列喚起にもなる。
【0061】
また、駐車スペースに沿ってスポット光10を照射するように成されているので、夜間等暗がりにおいても運転手に駐車スペースを明確に認識させることができ、駐車スペースからはみ出すことなく確実に駐車させることができる。
また、夜間において、運転手は自動車を駐車させてから暗がりで下車しなければならなかったが、路面標示装置1を備えることで、下車する際の足下が照らされるので、水たまりや溝等を予め明確に認識して避けることができ、安全に下車することができる。
【0062】
また、車体感知センサーを前記路面標示装置1に組み合わせておくことで、駐車スペースに接近する車を検出し、より効果的に駐車させることもできる。具体的には、駐車スペースに車が近付くと、車体感知センサーが車の接近を感知し路面標示装置1からスポット光10が駐車スペースに沿って照射されるので、駐車スペースを運転手が視認でき、夜間等暗がりにおいても駐車スペースからはみ出ることなく、安全且つ明確に駐車することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の路面標示装置の通常時(夜間)における一実施例の説明図。
【図2】路面標示装置の制御回路を示す概略ブロック図。
【図3】本発明の路面標示装置の非常時における一実施例の説明図。
【図4】駅のプラットホーム上での路面標示装置の一実施例の説明図。
【図5】駐車場における路面標示装置の一実施例の説明図。
【符号の説明】
【0064】
1 路面標示装置
2 既設の支柱
3 LED光
5 非常灯
10 スポット光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から路面に照射した、歩行者の進行方向に沿って配列した複数のスポット光にて、歩行者の歩行を誘導することを特徴とする歩行者誘導方法。
【請求項2】
断続的又は連続的に整列した複数のスポット光を路面に照射するランプユニットを備えることを特徴とする路面標示装置。
【請求項3】
前記ランプユニットは、複数のLED(発光ダイオード)を備えて成ることを特徴とする請求項2に記載の路面標示装置。
【請求項4】
前記複数のLEDを相互に角度を変化させて併設し、ランプユニットより複数且つ異なる角度をもった光線を発することを特徴とする請求項3に記載の路面標示装置。
【請求項5】
前記ランプユニットに、スポット光の照射面積を可変とする集光器を備えることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の路面標示装置。
【請求項6】
前記路面標示装置に、太陽光を利用して発電及び蓄電するとともに電力を供給する電源ユニットを備えることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の路面表示装置。
【請求項7】
前記路面標示装置に、周囲の明るさを検知する照度センサーと、ランプユニットの光照射領域における人の存否を検出する人感センサーと、ランプユニットへの電力の供給のON・OFFを切り換えるスイッチング手段と、各センサーの検知に基づいてスイッチング手段を操作し前記ランプユニットの点消灯を制御する制御手段とを備え、
前記照度センサーにて検出した夜間に相当する所定の明るさの範囲内において路面表示装置を起動し、人感センサーにて光照射領域での人の存在を検出したときに、ランプユニットにて複数のスポット光を路面に投光するように制御することを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の路面標示装置。
【請求項8】
前記路面標示装置に、非常時において避難誘導の案内文字あるいは矢印を表示させる非常灯を設けることを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれかに記載の路面標示装置。
【請求項9】
前記非常灯に前記電源ユニット若しくは外部電源を用いて電力を供給し該非常灯を点灯させることを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれかに記載の路面標示装置。
【請求項10】
前記路面標示装置が街灯や電柱等の既設の支柱に設置され、複数のスポット光にて歩行者の進行方向に沿うラインを形成することを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれかに記載の路面標示装置。
【請求項11】
前記路面標示装置が駅プラットホームに設置され、複数のスポット光にてプラットホームの縁端に沿うラインを形成することを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれかに記載の路面表示装置。
【請求項12】
前記路面標示装置が駐車場若しくは駐輪場に配置され、複数のスポット光にて車若しくは自転車の駐車スペースの周縁に沿うラインを形成することを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれかに記載の路面表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−233503(P2006−233503A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47438(P2005−47438)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(597167748)財団法人新産業創造研究機構 (20)
【出願人】(000181826)社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団 (4)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】