説明

歩行補助車の前輪機構

【目的】段差を乗り越えることが可能であり、しかも連続した段差でも乗り越え可能であり、更には着座時に前のめりになることもない歩行補助車の前輪機構を提示すること。
【構成】請求項1:サブホルダーをホルダーに対して回動自在に、且つ、サブホルダーの先端が前輪よりも進行方向側に来る形態で取り付け、サブホルダーの進行方向側先端に、前輪よりも直径の小さな、少なくとも1つの補助輪を設け、ホルダーとサブホルダーの間に、サブホルダーを下方に押圧する、弾性部材を介在させ、補助輪の下端が、前輪の下端よりも上部に位置するよう、サブホルダーの回動を制御する。請求項2:請求項1の前輪機構において、サブホルダーに当たり部材を設け、当該当たり部材がホルダーと当接することで、サブホルダーの回動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は歩行補助車などに用いられる段差乗越え機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
足腰が衰えている人などが歩行補助や手荷物の運搬などに歩行補助車を用いることがある。使用者はこの歩行補助車を押進しながら歩行するものである。
【0003】
ところが歩行補助車を押進しながら歩道等を歩いていると、段差に出くわすことが多々ある。ことに歩行補助車は一般に車輪の直径が小さいことから20mm程度の段差でも越えることは難しく、段差に衝突した勢いで前のめりになり、転倒するといった事故が発生している。
【0004】
一方、使用者がハンドル等の押し手を手前に引き、前輪を持ち上げれば段差を越える事が可能である。しかし、かかる動作を採ると、歩行補助車は軽量のものが多くバランスを崩しがちである。また、ブレーキを掛けたままでは前進できないことから、つまり段差を越えられないことから、ブレーキを掛けずに前輪を持ち上げ段差を越えることになり、前輪を持ち上げるために余計な力が加わっていること相俟って予想外に歩行補助車が前進してしまい、歩行補助車しいては使用者までが転倒する恐れがある。
【0005】
そこでこのような危険性を回避すべく、段差を乗り越えることが可能な車椅子や歩行補助車が種々提案されている。
【0006】
係る歩行補助車に関する発明が記載された特許文献として、例えば特開2006−7855号公報や特開2008−229254号公報がある。
【0007】
ここに特開2006−7855号公報記載の発明は、前輪を回転自在に支持するホルダーを進行方向に回動自在に設けると共に、元の位置に戻すスプリングを介在させ、更に前輪前方に補助輪を設けて成るものである。
【0008】
また、特開2008−229254号公報記載の発明はフレーム下部に、ソリ部材と前輪キャスタを、フレームに対して上下動自在に設けて成るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−7855号公報
【特許文献2】特開2008−229254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特開2006−7855号公報記載の発明は、段差通過時に前輪が後方に動いて補助輪が働くことにより、そのまま段差を乗り越え通り過ぎることが可能であり、その後前輪はスプリングの力で元の位置も戻る仕組みになっている。ところが点字ブロックといった連続する段差を通過する際には前輪が元の位置に戻らず、そのまま歩行を続ければ次の段差で前輪が引っかかり、使用者がバランスを崩す恐れがある。
【0011】
また、特開2008−229254号公報記載の車椅子はソリ部材のみならず前輪も上下動を行うものであり、着座した際に前のめりになるという難点がある。
【0012】
そこで本発明は段差を乗り越えることが可能であり、しかも連続した段差でも乗り越え可能であり、更には着座時に前のめりになることもない歩行補助車の前輪機構を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は従来の歩行補助車の前輪機構、すなわちフレームの下部に車輪を回転自在に支持するホルダーを取り付けた歩行補助車の前輪機構を、以下のように改良した。
【0014】
請求項1:サブホルダーをホルダーに対して回動自在に、且つ、サブホルダーの先端が 前輪よりも進行方向側に来る形態で取り付け、サブホルダーの進行方向側先 端に、前輪よりも直径の小さな、少なくとも1つの補助輪を設け、ホルダー とサブホルダーの間に、サブホルダーを下方に回動させる力を付与する弾性 部材を介在させ、補助輪の下端が、前輪の下端よりも上部に位置するよう、 サブホルダーの回動を制御する。
【0015】
請求項2:請求項1の前輪機構において、サブホルダーに当たり部材を設け、当該当た り部材がホルダーと当接することで、サブホルダーの回動を制御する。
【発明の効果】
【0016】
以下、上述のように構成される本発明が、いかなる効果を奏するかを図面を参照しながら述べる。
【0017】
一般的な歩行補助車の前輪直径は130mm程度であり、15mm程度の段差は補助輪の作用無しに乗り越えることが可能である。ところが段差高さが20mmを越すと、段差に前輪が衝突した際に当該段差を前輪のみで越えることは出来ず、衝突した衝撃でハンドルが持ち上がってしまう。
【0018】
ところが本発明にかかる前輪機構によれば、補助輪5が前輪2の前方に、しかも前輪2よりも高い位置に存する。それゆえ図2に示すような例えば20mmを越すような段差12に前輪2が衝突した際、ハンドル8が持ち上がる動きが発生すると、補助輪5が段差12の頂部に当接し、当該ハンドル8が持ち上がる動きを抑制する。しかも、補助輪5が取り付けられたサブホルダー4が上方に回動し、他方でサブホルダー4は弾性部材9により下方に回動する力が与えられていることから、この下方に回動しようとする力でメインホルダー3、しいては前輪2が持ち上がり、段差12を超えていくことが可能となるのである。
【0019】
また、本発明によれば連続した段差であっても、各段差に補助輪5が当接する毎に前輪2が持ち上がり、スムーズに乗り越えていくことが可能である。
【0020】
更には、前輪2自体は上下動しないので、着座時に沈み込むことがなく、すなわち前のめりになって転倒するといった恐れもないのである。
【0021】
また、補助輪が前輪より進行方向側、かつ、地面より高い位置にあるので、補助輪を具備しても越え得ない段差に衝突したような場合でも、補助輪と段差が当接することで歩行補助車が前のめりになる力を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】a 本発明に係る前輪機構の実施形態を示す概略側面図 b サブホルダーと補助輪を示す概略平面図
【図2】a 本発明に係る前輪機構の作用を示す説明図 b 本発明にかかる前輪機構の作用を示す説明図
【図3】本発明に係る前輪機構の他の実施形態を示す概略側面図
【図4】本発明に係る前輪機構の他の実施形態を示す概略側面図
【図5】歩行補助車の一実施形態を示す斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明に係る前輪機構の実施形態を、歩行補助車に使用した場合を例に説明する。
【0024】
本発明にかかる前輪機構は、図1に示すように前輪フレーム1aの下端にホルダー3が固定ピン10により固着されている。このホルダー3には前輪2が回転自在に、サブホルダー4が回動自在に支持されている。軸11は前輪2の回転軸とサブホルダー4の回動軸を兼ねたものである。
【0025】
図1bや図5に示すようにサブホルダー4はホルダー3を挟持する形態に屈曲された板体であり、その進行方向側先端には補助輪5が、回転軸5aを中心に回転自在に、且つ、前輪2よりも前方にくる形態で取り付けられている。
【0026】
また、サブホルダー4の後端には、当たり部材14たる軸14aが、側壁4b,4b間にわたり設けられている。この当たり部材14は、軸11の鉛直方向仮想線13よりも後方に位置するように配設されており、このため、当たり部材14がホルダー3に当接することでサブホルダー4の下方への回動が制御される。つまりは補助輪5の下端が、前輪2の下端よりも上部に位置するように構成されるのである。
【0027】
尚、当たり部材14は軸形態に限られるものではなく、例えば突起などでも代用可能なものである。
【0028】
ホルダー3とサブホルダー4との間には、弾性部材6が介在されている。具体的には、サブホルダー4の底部4aには押しバネたる弾性部材6の下方端が固定されており、一方、上方端はホルダー3に設けた凹部3aにはめ込まれている。これにより、サブホルダー4は下方に回動する力が与えられる。
【0029】
弾性部材6は図1や図2に示すように押しバネを用いるほかに、板バネをあるいは引張りばねを用いてもよい。板バネ6は図3に示すように、ホルダー3とサブホルダーを構成する当たり部材14との間に介在させるものである。引張りバネ6は仮想線13よりも進行方向逆側において、当たり部材14とホルダー3との間に介在させるものである
図3は本発明を歩行補助車に実施した場合を示している。歩行補助車7は上部に利用者が握るハンドル部8が設けられ、フレーム1の下端には一対の前輪2及び一対の後輪15が回転自在に取り付けられている。前輪フレーム1aの下端にはホルダー3やサブホルダー4、その他の本発明にかかる前輪機構が装着されるものである。
【符号の説明】
【0030】
2・・前輪
3・・ホルダー
4・・サブホルダー
5・・補助輪
6・・弾性部材
14・・当たり部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの下部に、車輪を回転自在に支持するホルダーを取り付けた、歩行補助車の前輪機構において、
サブホルダーをホルダーに対して回動自在に、且つ、サブホルダーの先端が前輪よりも進行方向側に来る形態で取り付けたこと、
サブホルダーの進行方向側先端に、前輪よりも直径の小さな、少なくとも1つの補助輪を設けたこと、
ホルダーとサブホルダーの間に、サブホルダーを下方に回動させる力を付与する弾性部材を介在させたこと、
補助輪の下端が、前輪の下端よりも上部に位置するよう、サブホルダーの回動を制御したこと、
を特徴とする歩行補助車の前輪機構。
【請求項2】
サブホルダーに当たり部材を設け、当該当たり部材がホルダーと当接することで、サブホルダーの回動を制御した請求項1記載の歩行補助車の前輪機構。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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