説明

歩道構造材

【課題】自転車の走行速度を抑制できるようにすることにより、歩行者の安全を確保できるようにした歩道構造材を提供すること。
【解決手段】表面材2と、マット状の下部構造材3との積層構造からなり、下部構造材3を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体31により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道構造材に関し、特に、自転車の走行速度を抑制できるようにすることにより、歩行者の安全を確保するようにした歩道構造材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車道と歩道とを分離した道路において、歩道を走行する自転車が歩行者に接触する事故が多発している。
【0003】
これに対処するため、歩道に自転車の進入を防止する柵を設けることも試みられているが、柵が歩行の妨げになるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の歩道が有する問題点に鑑み、自転車の走行速度を抑制できるようにすることにより、歩行者の安全を確保できるようにした歩道構造材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の歩道構造材は、表面材と、マット状の下部構造材との積層構造からなり、下部構造材を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体により構成したことを特徴とする。
【0006】
この場合において、下部構造材を、山折りと谷折りを繰り返すように折り返し重ねた連続する不織布繊維シートにより構成することができる。
【0007】
また、表面材を、人工芝で構成することができる。
【0008】
また、表面材と下部構造材をブチルゴムシートにより接着することができる。
【0009】
また、下部構造材の下面にブチルゴムシートを配設することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歩道構造材によれば、表面材と、マット状の下部構造材との積層構造からなり、下部構造材を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体により構成することから、自転車が走行した場合に、自転車の重量によって下部構造材が窪んで、自然に自転車の走行速度を抑制することができ、これにより、自転車が歩行者に接触する事故を未然に防止し、歩行者の安全を確保することができる。
そして、下部構造材を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体で構成することにより、歩道の透水性及び排水性を確保するとともに、繊維を圧密する度合いによって下部構造材の硬さを、歩行には適するが自転車の走行には適さないように容易に調整することができる。
【0011】
この場合、下部構造材を、山折りと谷折りを繰り返すように折り返し重ねた連続する不織布繊維シートで構成することにより、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体を容易に形成するとともに、該繊維の集合体の強度を向上させることができる。
【0012】
また、表面材を、人工芝で構成することにより、歩道にクッション性を持たせ、自転車や歩行者が転倒した場合に安全性を確保するとともに、歩道の透水性及び排水性を確保し、歩道に水たまりができるのを防止することができる。
【0013】
また、表面材と下部構造材をブチルゴムシートにより接着することにより、表面材と下部構造材を強固に接着するとともに、これらの剥離を長年に亘って防止することができる。
【0014】
また、下部構造材の下面にブチルゴムシートを配設することにより、下部構造材と下地とを強固に接着するとともに、これらの剥離を長年に亘って防止することができ、さらに、接着剤を使用する場合に比較し、施工時の悪臭発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の歩道構造材の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図4に、本発明の歩道構造材の一実施例を示す。
この歩道構造材1は、表面材2と、マット状の下部構造材3との積層構造からなり、下部構造材3を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体31により構成している。
歩道構造材1は、本実施例では20〜50cm角のブロック板状のものからなり、図4に示すように、複数の歩道構造材1が下地Sに敷き詰められる。
【0016】
表面材2は、特に限定されるものではないが、ポリエステル、ナイロン等の合成樹脂製の人工芝や不織布、ゴム製やウレタン等の合成樹脂製のシートからなり、少なくとも、歩行者が転んだときに大きなけがをしない程度の柔軟性を備えるようにしている。
また、表面材2には、透水性を備えた材料を使用することが好ましい。
表面材2と下部構造材3は、本実施例では、ブチルゴムシート4により接着されており、図2に示すように、ブチルゴムシート4には透水のための複数の穴41が形成されている。
ブチルゴムシート4の開口率は、本実施例では約30%であるが、10〜80%、好ましくは、20〜50%の範囲に設定することができる。
【0017】
下部構造材3は、特に限定されるものではないが、厚さが10〜40mm、好適には15〜35mmの範囲で、一定の厚さに設けられている。
この下部構造材3は、図3に示すように、本実施例では、山折りと谷折りを繰り返すように、つづら折りに折り返し重ねた連続する不織布繊維シート(ウェブ)32で構成されている。
不織布繊維シート32は、例えば、3〜50デニールのポリエステル主体繊維30〜70%(本実施例においては、50%)と、3〜50デニールの融着用のポリエステル繊維30〜70%(本実施例においては、50%)とを均一に混合したものからなる。
そして、この不織布繊維シート32を、つづら折りに折り返し重ねるとともに、折り重ね方向に圧縮し、融着用のポリエステル繊維を熱溶融することにより、特に上面と下面を中心に熱固定する。
不織布繊維シート32の目付が30〜120g/mの場合、不織布繊維シート32を折り重ねた下部構造材3の目付は、800〜2000g/mとなるようにすることが好ましい。
なお、下部構造材3は、本実施例では、不織布繊維シート32を折り返し重ねるとともに、折り重ね方向に圧縮したもので構成しているが、例えば、一定長さに切りそろえた繊維を上下方向に指向するように配列し、上面と下面を中心に熱固定して集合体とすることによっても製造することができる。
【0018】
ところで、本実施例で使用する不織布繊維シート32を折り重ねた下部構造材3は、ポリエステル繊維が立体的に交差し、その交差点は安定した形で固定されたタングルスプリング構造を有している。
そのため、従来の不織布繊維や硬わたに比べ、繊維の結びつき方が強くしなやかで、外からの圧力にも柔軟に対応し、引っ張っても圧縮してもフレキシブルな弾力性を示すことができる。
タングルスプリング構造は、伸縮性に優れたエラスティック・ポリマーでその交錯点がアメーバ状に固着されており、そのため外からの圧力に対して交錯点が劣化しにくく当初の形態と弾力性を長く保つことができる(例えば、帝人ファイバー社製「エルク」(商品名))。
この不織布繊維シート32を折り重ねた下部構造材3は、立体的な構造であるため、空気や水の通る隙間を多く有し、かつ適度な硬さで荷重に対する抵抗力を保つことができる。
【0019】
また、下部構造材3の下面には、ブチルゴムシート4が接着されている。
ブチルゴムシート4には、透水のための複数の穴41が形成されており、その開口率は、本実施例では30%であるが、10〜80%、好適には20〜50%の範囲で実施例することができる。
また、歩道構造材1を透水性のない下地に施工する場合は、このブチルゴムシート4の穴41は省略することもできる。
なお、ブチルゴムシート4の下面には、剥離紙(図示省略)が貼着されている。
【0020】
次に、本実施例の歩道構造材1の施工を説明する。
コンクリートやアスファルトに施工する場合は、図4(a)に示すように、下部構造材3の下面のブチルゴムシート4を介して下地Sに直貼りすることにより敷設するようにする。
また、転圧した砂地等に施工する場合は、図4(b)に示すように、不織布からなる下地シート5を地面に敷いてペグ等の固定具(図示省略)を用いて固定し、その上に下部構造材3の下面のブチルゴムシート4を介して貼り付けることにより敷設するようにする。
下地シート5は、例えば、3〜50デニールのポリエステル主体繊維60〜80%と、3〜50デニールの融着用のポリエステル繊維20〜40%とを均一に混合し、目付200〜1000g/mにした不織布繊維シートを使用することができる。
【0021】
ところで、上記実施例においては、表面材2と下部構造材3とを、位置が一致するように積層したが、隣接する歩行者が歩行する際に隣接する歩道構造材1間に段差が生じないように、図5に示す変形実施例のように、表面材2と下部構造材3とを、位置をずらして積層し(特に限定されるものではないが、本実施例においては、表面材2を下部構造材3の端縁から隣接する2方向は延出するようにし、他の2方向は後退するようにしている。)、表面材2の一部が、隣接する歩道構造材1の下部構造材3にかかるように敷設するようにすることが好ましい。
なお、表面材2を下部構造材3の端縁から延出させる(後退させる)寸法dは、歩道構造材1の大きさにもよるが、通常、数cm〜十数cm程度に設定することが好ましい。
この場合、表面材2と下部構造材3の位置をずらした箇所の表面材2と下部構造材3を接着するブチルゴムシート4は、表面材2と下部構造材3のいずれの側に配設するようにしてもよい(本実施例においては、下部構造材3側に配設するようにしている。)が、その表面に剥離紙6を配するようにしておき、施工時に取り除くようにする。
【0022】
かくして、本実施例の歩道構造材1は、表面材2と、マット状の下部構造材3との積層構造からなり、下部構造材3を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体31により構成することから、自転車が走行した場合に、自転車の重量によって下部構造材3が窪んで自転車の走行速度を抑制することができ、これにより、自転車が歩行者に接触する事故を未然に防止し、歩行者の安全を確保することができる。
そして、下部構造材3を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体31で構成することにより、歩道の透水性及び排水性を確保するとともに、繊維を圧密する度合いによって下部構造材3の硬さを、歩行には適するが自転車の走行には適さないように容易に調整することができる。
なお、この歩道構造材1は、自転車の運転者が自転車から下りると、自転車の重量が小さくなって自転車の走行抵抗が比較的小さくなることから、自転車を押して移動することは可能である。
【0023】
この場合、下部構造材3を、山折りと谷折りを繰り返すように折り返し重ねた連続する不織布繊維シート32で構成することにより、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体31を容易に形成するとともに、該繊維の集合体31の強度を向上させることができる。
【0024】
また、表面材2を、人工芝で構成することにより、歩道にクッション性を持たせ、自転車や歩行者が転倒した場合に安全性を確保するとともに、歩道の透水性及び排水性を確保し、歩道に水たまりができるのを防止することができる。
【0025】
また、表面材2と下部構造材3をブチルゴムシート4により接着することにより、表面材2と下部構造材3を強固に接着するとともに、これらの剥離を長年に亘って防止することができる。
【0026】
また、下部構造材3の下面にブチルゴムシート4を配設することにより、下部構造材3と下地とを強固に接着するとともに、これらの剥離を長年に亘って防止することができ、さらに、接着剤を使用する場合に比較し、施工時の悪臭発生を防止することができる。
【0027】
以上、本発明の歩道構造材について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の歩道構造材は、自転車の走行速度を抑制することにより、歩行者の安全を確保できることから、人通りの多い市街地の歩道に好適に用いることができるほか、公園の遊歩道や工事現場の架設の歩道等にも適用することができ、これらを排除するものでない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の歩道構造材の一実施例を示し、(a)はその斜視図、(b)は同縦断面図である。
【図2】同歩道構造材のブチルゴムシートの平面図である。
【図3】下部構造材の製造工程を示し、(a)は不織布繊維シートの断面図、(b)は不織布繊維シートをつづら折りにした状態を示す断面図、(c)はつづら折りにした不織布繊維シートを折り重ね方向に圧縮した状態を示す断面図である。
【図4】同歩道構造材の施工例を示し、(a)はコンクリートやアスファルトに施工した状態を示す断面図、(b)は砂利や砂地に施工した状態を示す断面図である。
【図5】同歩道構造材の変形実施例を示し、(a)はその平面図、(b)は同正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 歩道構造材
2 表面材
3 下部構造材
31 繊維の集合体
32 不織布繊維シート
4 ブチルゴムシート
41 穴
5 下地シート
6 剥離紙
S 下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材と、マット状の下部構造材との積層構造からなり、下部構造材を、繊維が上下方向に指向するように固定した繊維の集合体により構成したことを特徴とする歩道構造材。
【請求項2】
下部構造材を、山折りと谷折りを繰り返すように折り返し重ねた連続する不織布繊維シートにより構成したことを特徴とする請求項1記載の歩道構造材。
【請求項3】
表面材が、人工芝からなることを特徴とする請求項1又は2記載の歩道構造材。
【請求項4】
表面材と下部構造材をブチルゴムシートにより接着したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の歩道構造材。
【請求項5】
下部構造材の下面にブチルゴムシートを配設したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の歩道構造材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−179995(P2009−179995A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19378(P2008−19378)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(396000813)有限会社ケイエイエム (4)
【出願人】(504203653)
【出願人】(504203631)
【Fターム(参考)】