説明

歩道橋の床構造

【課題】雨水が浸透して床躯体を劣化させることを防止でき、歩行感が優れ、外観も美しい歩道橋の床構造を得る。
【解決手段】床躯体1上にプレキャストコンクリート板からなる床版2を配置し、この上に水勾配層3を形成する。この水勾配層3上に、下地調整層4を設け、この上に防水層5を設ける。防水層5は、ポリウレア樹脂からなる防水剤を塗布し、硬化させてなるもので、変性イソシアネートと特殊変性ポリエーテルアミンとを別々にスプレーガンに加温状態で送り込み、スプレーガン内でこの二成分を混合し、吹き付ける。防水層5上に透水層6を配置する。透水層6は、小石、木片、合成樹脂、ゴムなどの粒子を接着剤によって結合してなるものであって、粒子間に微細な透水孔が形成され、この透水孔を通って雨水が防水層5に流れるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩道橋の床構造に関し、床からの雨水の浸透を防止し、美観の良好な床が得られるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
歩道橋の床構造としては、例えば鉄骨造の床躯体上にプレキャストコンクリート板を配置し、この上に防水モルタルを打設した構造やプレキャストコンクリート板上にアスファルト舗装を施した構造となっているものが多い。
【0003】
しかしながら、この床構造では、比較的短期間に防水モルタルやアスファルト舗装に亀裂が入り、雨水が内部に浸透し、プレキャストコンクリート板の目地から床躯体に伝わって行き、床躯体を構成する鉄骨を腐食させて劣化させることが往々にして起こっていた。
また、歩行者は、表面が硬い防水モルタルや舗装面の上を歩行することになるため、歩行感がよくないと言う問題もあり、さらには外観も美しいとは言えなかった。
【0004】
歩道橋の床構造に関する先行文献として、以下のものがある。
【非特許文献1】社団法人日本道路協会 編集・発行「立体横断施設技術基準・同解説」第57〜58頁 昭和54年1月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明における課題は、雨水が浸透して床躯体を劣化させることを防止でき、歩行感が優れ、外観も美しい歩道橋の床構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、歩道橋の床コンクリート上に水勾配層と防水層と透水層を順次積層してなり、上記防水層が、ポリウレア樹脂からなることを特徴とする歩道橋の床構造である。
請求項2にかかる発明は、歩道橋の床コンクリート上に防水層と透水層を順次積層してなり、上記防水層が、ポリウレア樹脂からなることを特徴とする歩道橋の床構造である。
【0007】
請求項3にかかる発明は、ポリウレア樹脂が二液混合熱硬化型であることを特徴とする請求項1または2記載の歩道橋の床構造である。
請求項4にかかる発明は、透水層が、合成樹脂またはゴムの粒子を相互に結合してなるもので、多数の透水孔が形成されているものであることを特徴とする請求項1または2記載の歩道橋の床構造である。
【0008】
請求項5にかかる発明は、透水層が、着色あるいは模様が形成されたものであることを特徴とする請求項1または記載の歩道橋の床構造である。
請求項6にかかる発明は、透水層の表面がほぼ水平の平坦面とされたことを特徴とする請求項1記載の歩道橋の床構造である。
請求項7にかかる発明は、水勾配層の勾配が、片流れまたは両流れであることを特徴とする請求項1記載の歩道橋の床構造である。
請求項8にかかる発明は、透水層を形成する材料が、リサイクル材料であることを特徴とする請求項1記載の歩道橋の床構造。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床構造によれば、防水層がポリウレア樹脂からなるため、床躯体に大きな変形等があって、長期にわたって完全な防水性能を発揮し、酸性雨などの雨水によって床躯体を劣化させることがない。また、床表面が透水層で仕上げられているので、歩行感がよく、転倒しても負傷することが少なく、安全性が高い。
【0010】
また、雨水が速やかに排水されるので、水たまりができることなく、歩行性がよい。また、透水層として、着色や模様が施されているものを用いれば、外観も美しいものとなる。さらに、施工が容易で、施工期間も短くて済む。
また、透水層の表面をほぼ水平とすれば、歩行面に傾斜がなくなり、歩行が容易で、身体障害者、老人などに優しいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の床構造の一例を模式的に示すもので、図中符号1は、床躯体を示す。
この床躯体1は、例えばH型鋼などの鉄骨を溶接、ボルト結合などによって結合して組み上げられたトラス形状のものである。
この床躯体1上には、プレキャストコンクリート板からなる厚さ50〜100mmの床版2が配置され、ボルト結合などにより床躯体1に固定されている。
【0012】
この床版2上には、水勾配層3が形成されている。この水勾配層3は、床全体の排水勾配を形成するためのもので、この例では歩道橋の短手方向の一側端部に向けて下る2〜5/100程度の勾配の傾斜が付けられている。水勾配層3は、通常のセメントモルタルやコンクリート、アスファルトコンクリート(アスコン)、樹脂モルタルなどを金コテで敷き均す方法で施工され、その厚さは、水上部分で厚く、水下部分で薄くされ、5〜50mm程度とされるが、この範囲の限定されることはない。
さらに、この水勾配層3の水下部分の数カ所には、図示しない鋳物製の排水ドレインが取り付けられている。
【0013】
水勾配層3上には、下地調整層4が設けられている。この下地調整層4は、水勾配層3に生じるピンホールを埋めるとともに、この層4上に施される防水層5のプライマーとして機能するものである。
この下地調整層4は、エポキシ樹脂系無溶剤型パテなどをゴムコテ、金コテ、ロール刷毛などを用いて水勾配モルタル層3に塗布することによって形成されたものである。
エポキシ樹脂系無溶剤型パテとしては、具体的には、米国、スペシャリティ・プロダクト・インク社製、商品名「AI−7515L」が好ましい。下地調整層4の厚さは、0.1〜0.5mm程度とされる。
この下地調整層4は、場合によっては省略することができる。すなわち、水勾配モルタル層3の表面状態が平滑で、ピンホールがなく、直接防水層5を形成することができるものであれば、不要とすることができる。
【0014】
さらに、下地調整層4上には、防水層5が設けられている。雨水の浸透を防ぎ、雨水を排水ドレインに流し込むためのものである。この防水層5は、ポリウレア樹脂からなる防水剤を塗布し、硬化させてなるものである。
ポリウレア樹脂とは、変性イソシアネートと特殊変性ポリエーテルアミンとの二成分からなるもので、この二成分を混合して、瞬時に化学反応させ硬化させてなるものである。
このポリウレア樹脂からなる防水剤の具体的なものとしては、米国、スペシャリティ・プロダクト・インク社製、商品名「ポリシールド」などがある。
【0015】
この防水剤にあっては、上述の二成分を混合後、2〜60秒で硬化する速硬化性であり、湿度による硬化不良がなく、水分の多い下地でも表面に水滴が存在していなければ、塗布可能である。また、得られる樹脂膜の機械強度、伸びが高く、床躯体1の動きにも追従でき、施工面に対する接着性も高い。さらに、酸、アルカリ、オゾン、塩素などの薬品に対しても高い耐久性を示し、無溶剤系であり、吹き付け作業時に作業者を有機溶媒蒸気に曝すことがなく、安全である。
【0016】
この防水剤の塗布は、変性イソシアネートと特殊変性ポリエーテルアミンとを別々にスプレーガンに加温状態で送り込み、スプレーガン内でこの二成分を混合し、直ちに吹き付ける方法が用いられる。
このようにして形成された防水層5の厚さは、特に限定されないが、通常1〜5mm程度とされる。
この防水層5は、上記排水ドレインの鍔の部分にまで形成されており、防水層5上に流れ込んだ雨水が排水ドレインにまで流れ、ここから排水されるようになっている。
【0017】
さらに、防水層5上には、透水層6が配置され、防水層5に接着剤により接着固定されている。
この透水層6は、小石、木片、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの弾性に富む合成樹脂、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴムなどのゴムの粒径0.3〜5mm程度の粒子を相互に粗にエポキシ樹脂系接着剤などの接着剤によって結合してなるもので、粒子間に微細な透水孔が形成されており、これらの多数の透水孔を通って雨水が防水層5に流れるようになっているものである。
【0018】
透水層6の形成は、施工現場において形成してもよく、予め工場でマット状やロール状に加工したものを作製し、これを施工現場に持ち込んで、防水層5上に貼り付けてもよい。
施工現場にて透水層6を形成する場合には、上記粒子に未硬化の接着液を混合して、粒子表面に接着液を塗布し、このものを防水層5上に金コテなどで敷き均して行く方法が取られ、この際透水層6の表面を水平な平坦面としてもよく、また下地の水勾配に沿った傾斜面として仕上げてもよい。
また、透水層6を構成する材料としては、使用後に回収されたリサイクル材料であってもよく、リサイクルされた合成樹脂、ゴムを再使用することもでき、これによれば、エコロジーとなる。
【0019】
また、予め工場等で製作したマット状またはロール状に加工したものを施工現場に搬入して使用する場合には、これを防水層5上に敷き拡げ、防水層5に対してエポキシ樹脂系接着剤などの接着剤を用いて貼り付けることになる。
【0020】
この透水層6をなす上記各種材料からなる粒子には、1以上の色調の着色が施されたものを用いることができ、これによりカラフルな透水層6を得ることができ、意匠性が向上する。
また、単一の色調の粒子を結合したマット状のものを、その色調を変えて複数種類作製し、この色調の異なるものを複数組み合わせて配置して、全体として模様を形成してもよい。また、塗装を施してもよい。
【0021】
なお、図1中符号7は、歩道橋の欄干を示す。
【0022】
このような歩道橋の床構造にあっては、その歩行表面が透水層6から構成されているので、降雨による雨水は、その表面に留まることなく、速やかにその透水孔を経て、防水層5に流れ込み、表面に水たまりができることがない。
また、透水層6に色調や模様を施したものを使用した場合には、外観が美麗となる。
【0023】
さらに、透水層6をなす粒子に、合成樹脂、ゴムからなるものを用いた場合には、歩行感が弾力があって良好となり、また万一転倒した場合などにも大きな怪我を負うこともなく安全性も高い。
【0024】
さらに、防水層5にポリウレア樹脂からなる防水剤を塗布しているので、この防水層5の耐久性が高く、さらに伸び、引張強度が高いので、床躯体1が大きく動いたり、熱膨張、熱収縮を繰り返したりして、床版2に亀裂等が生じても、この動きによく追従し、防水層5が破断することがなく、長期にわたって防水性能が維持される。
【0025】
このため、雨水が防水層5を通って、下地の床版2や床躯体1を腐食し、劣化させることがない。このため、塩害や酸性雨によって床版2や床躯体1が損傷を受けることがない。
このため、従来の床構造に比べて、歩道橋自体の寿命を延ばすことができる。
【0026】
また、透水層6の表面を水平な平坦面とすれば、歩行面が傾斜しないものとなって、歩きやすくなり、老人、身体障害者などにとって優しいものとなる。
【0027】
また、本発明の床構造では、床躯体1上に配置する床版2を傾斜させて床躯体1に取り付けることもでき、これによって床版2自体に排水勾配を形成することができる。このため、水勾配層3を不要とすることができ、これにより、施工時間が短縮され、材料費、施工費がとも安価となる。
【0028】
さらに、上述の形態では、水勾配層3の勾配を片流れとしているが、これに限らず、水勾配層3の中央部分を水上とし、両端部分を水下とした両流れとすることもできる。
【0029】
さらに、本発明の床構造は、これを歩道橋の平坦な歩道部に適用することは勿論、この歩道部に付設される階段部や階段部の踊り場にも適用できることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の歩道橋の床構造の一例を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・床躯体、2・・・床版、3・・・水勾配層、4・・・下地調整層、5・・・防水層、6・・・透水層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩道橋の床版上に水勾配層と防水層と透水層を順次積層してなり、上記防水層が、ポリウレア樹脂からなることを特徴とする歩道橋の床構造。
【請求項2】
歩道橋の床版上に防水層と透水層を順次積層してなり、上記防水層が、ポリウレア樹脂からなることを特徴とする歩道橋の床構造。
【請求項3】
ポリウレア樹脂が二液混合熱硬化型であることを特徴とする請求項1または2記載の歩道橋の床構造。
【請求項4】
透水層が、小石、木片、合成樹脂粒子またはゴム粒子を相互に結合してなるもので、多数の透水孔が形成されているものであることを特徴とする請求項1または2記載の歩道橋の床構造。
【請求項5】
透水層が、着色あるいは模様が施されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の歩道橋の床構造。
【請求項6】
透水層の表面がほぼ水平の平坦面とされたことを特徴とする請求項1記載の歩道橋の床構造。
【請求項7】
水勾配層の勾配が、片流れまたは両流れであることを特徴とする請求項1記載の歩道橋の床構造。
【請求項8】
透水層を形成する材料が、リサイクル材料であることを特徴とする請求項1記載の歩道橋の床構造。

【図1】
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【公開番号】特開2006−183336(P2006−183336A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378645(P2004−378645)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(500140127)エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社 (61)
【Fターム(参考)】