説明

歪みゲージ式伸び計

【課題】小さい外形の伸びセンサで試験体の大きな伸びを測定し、しかも直線性のよいデータを得る。
【解決手段】上アーム1と下アーム2の一端は回転支持部3で互いに回転可能に連結され、上アーム1に一端が固定された板バネ6が下アーム2の方向に延び、下アーム2にはカム9が取り付けられており、押圧面10が板バネ6の接触点7に接触するように配置されている。板バネ6の中央付近には歪みゲージ8が貼付されて伸びセンサとしての受感部を形成している。試験体Sが伸ばされると板バネ6はカム9によって押圧され変形させられるので、カム9の押圧面10の形状を適当に設計された曲面としておくことによって、上下アームの開き量に対して板バネ6の変形量を少なくできるので大きな伸びが測定でき、また、直線性のよい関係とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は材料試験機により試験体に引っ張り荷重を加えたときの試験体の伸びを歪みゲージを用いて測定する伸び計に関し、特に試験体に装着する伸びセンサ部分の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の歪みゲージ式伸び計の伸びセンサ部分は、図2に示すように、上アーム31と下アーム32の一端を板バネ33で連結し、上下アームの他端には上ナイフエッジ35と下ナイフエッジ36が取り付けられている。板バネ33の中央部付近には歪みゲージ34が貼付され、その出力は計測装置に接続されている。
【0003】この伸びセンサは取付具37によって伸びを測定されるべき試験体Sに取り付けられる。このとき上ナイフエッジ35と下ナイフエッジ36の間の距離Lは所定の標点間距離となるように調整される。試験体Sに引っ張り荷重が加えられて標点間の長さに伸びが生じると、上下ナイフエッジ間の距離は標点間の伸びに追随して開き、受感部である板バネ33は撓むことになる。これに伴って板バネ33に貼着された歪みゲージ34に板バネ33の撓み(すなわち上下アームの開き量)に対応した歪みが生じ、歪みゲージ34の抵抗値の変化分を計測装置に内蔵されたブリッジ回路で検出することにより試験体Sの伸びが測定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図2に示した従来の歪みセンサ部では、試験体の伸び変位が微少の場合は問題ないが、伸び変位が大きい場合は板バネおよび歪みゲージの歪みが過大になりすぎ、測定できなくなったり伸び変位量と歪みゲージの出力との直線性が悪くなったりする。伸び量の測定範囲や感度を変更する場合は、通常、アームの長さを変更したり、受感部となる板の長さを変更することで対応する。
【0005】大きな範囲の伸び量の測定を必要とする場合は、アームの長さを長くして試験体の伸び量に対する受感板の撓み量を小さくすることが必要となり、そうすると、伸びセンサが全体として大きくなり、重量は重くなるため、伸びセンサを試験体に取り付ける際の作業性が悪く、また、試料が損傷する恐れも大きく、正確な測定ができなくなるという問題が生じる。
【0006】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、伸びセンサのアームを長くすることなく大きな伸び量を測定でき、小型軽量で、試験体に対して伸びセンサを取り付けやすい伸び計を提供することを目的とする。さらに、大きな伸び量に対しても伸びセンサ出力の直線性のよい伸び計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、歪みゲージを貼着した受感部を上下2つのアームの間に有する伸びセンサを前期アームを介して試験体に取り付けてこの試験体の伸びを計測する歪みゲージ式伸び計において、前記2つのアームが試験体の伸びにつれて開くのに伴って前記受感部を押して変形させるカムを備え、この受感部の変形によって生じる前記歪みゲージの出力から試験体の伸びを計測することを特徴とする。
【0007】本発明の伸び計においては、試験体の伸びに伴う2つのアームの開きが受感部を直接的に変形させるのではなく、カムを介して受感部を変形させるようにしている。したがって、受感部の変形を微少にすることができ、また、アームの開きと受感部の変形の間の関係を機械的に定まった関係だけでなく、所定の関数形を持つように自由に設定することができる。すなわち、最終的な歪みゲージの出力を試験体の伸び量に完全に比例させる(直線的関係とする)ことが可能となる。したがって、本発明の伸び計は、試験体の大きな変形に対応でき、しかも試験体の伸びに対して直線性のよい出力を得ることができる。
【0008】本発明における受感部は、一方のアームから他方のアームに向って伸びる片持ちの板バネであって、この板バネに歪みゲージを貼り付けた構造とすることができる。そして、この受感部を押すカムは他方のアームに固定され受感部となる板バネの固定されていない端部を押す面を持つように配置することができる。
【0009】カムの板バネを押す面の形状は、計算の上で歪みゲージの出力が試験体の伸びに比例するように設計することができ、あるいは、実験でそのような比例関係を持つような形状を見つけたうえで設計することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の伸び計の要部である伸びセンサの部分を示す正面図である。
【0011】上アーム1はおよそL字型をした剛体部材であり、下アーム2はおよそ棒状の剛体部材である。上アーム1と下アーム2の一端は回転支持部3で互いに回転可能に連結され、上下アームの他端には上ナイフエッジ4と下ナイフエッジ5が取り付けられている。上アーム1に一端が固定された板バネ6が下アーム2の方向に延びており、この板バネ6の他端は下アーム2の近傍まで延びているがどこにも固定されず自由な状態となっている。この他端はカム9に対する接触点7となっている。そして板バネ6の中央付近には歪みゲージ8が貼付されて伸びセンサとしての受感部を形成し、歪みゲージ8の出力は図示していない制御装置に接続されブリッジ回路などを介して歪みゲージ8の歪み量すなわち板バネ6の撓み量が検出される。下アーム2の上アーム1に向いた面にはカム9が取り付けられており、このカム9の1つの面である押圧面10が板バネ6の接触点7に接触するように配置されている。
【0012】この伸びセンサは取付具11によって伸びを測定されるべき試験体Sに取り付けられる。このとき上ナイフエッジ4と下ナイフエッジ5の間の距離Lは所定の標点間距離となるように調整される。試験体Sに引っ張り荷重が加えられて標点間の長さに伸びが生じると、上下ナイフエッジ間の距離は標点間の伸びに追随して開き、相対的に見ると回転支持部3を中心にして上アーム1は下アーム2に対して回転する。これに伴って上アーム1に一端を固定された板バネ4は上アーム1の動きに追随して動いていくが、そのとき接触点7はカム9の押圧面10に接触しているので、押圧面9の形状に応じて次第に押されて板バネ6が変形していくことになる。そして板バネ6に貼着した歪みゲージ8には板バネ6の撓みに対応した歪みが生じ、歪みゲージ8の抵抗値の変化分を図示していないブリッジ回路等で検出することにより上下アームの開き量ひいては試験体Sの伸びが測定される。
【0013】本発明においては受感部である板バネ6は、上下アーム1,2の開き運動によって直接的に変形させられるのではなく、カム9によって押圧され変形させられるように構成されている。したがってカム9の押圧面10の形状を適当に設計された曲面としておくことによって、上下アームの開き量に対して板バネ6の変形量を少なくすることができ、また、その関係を自由に設定される関数関係とすることができる。
【0014】押圧面10の好ましい形状として、試験体Sの伸びに完全に比例した出力を歪みゲージ8が出力するような形状とすることができる。すなわち、図2に示される従来例では試験体Sが伸びると板バネ33が撓み、そのたわみ量を歪みゲージ34が検出して試験体Sの伸び量に換算している。伸び量が小さい間は試験体Sの伸び量と歪みゲージの出力は比例関係にあると見なせるが、より大きな伸び量になってくると、比例関係から外れてくるようになる。これに対して、図1に示されるような本発明の伸び計では、比例関係から外れるような領域になっても押圧面10の形状をそれを補正するような形状にすることによって試験体Sの伸び量と歪みゲージの出力の比例関係を保つことができる。
【0015】カムの板バネを押す面の形状は、回転中心3の位置や板バネ6の取付位置や長さなどのデータに基づいて幾何学的計算の上で歪みゲージの出力が試験体の伸びに比例するように設計することができる。あるいは、実験的な実測データに基づいて、歪みゲージの出力が試験体の伸びに比例するような形状を見つけたうえで押圧面10の設計をすることができる。
【0016】図1における回転支持部3の位置は、図示したような下アームの延長線上ではなく、別の位置たとえば接触点7の位置を水平に延長した線上にあってもよい。回転支持部3の位置の多少の変更は押圧面10の形状を少し変更することによって対応可能であるので回転支持部位置の厳密な最適値はないが、押圧面10の形状を設計するに当たって分かりやすく、かつ大きな伸び測定範囲の取れる位置にあることが望ましい。
【0017】また、受感部とカムとの間の接触部分について、図1に示された実施の形態では板バネ7の端である接触点7が押圧面10を摺動するようにしているが、この接触点7に回転するコロなどを設け、摩擦を少なくして耐久性を高めることもできる。
【0018】
【発明の効果】本発明の伸び計は、受感部である板バネが、上下アームの開き運動によって直接的に変形させられるのではなく、カムによって押圧され変形させられるように構成されている。したがって、カムの押圧面の形状を適当に設計された曲面としておくことによって、上下アームの開き量に対して受感部の変形量を少なくすることができ、また、その関係を自由に設定される関数関係とすることができる。これによって、本発明の伸び計は伸びセンサ部分を小さくまとめながら試験体の大きな伸びを測定することができ、しかも、伸びセンサの出力は大きな伸びの部分であっても試験体の伸びに対して直線性のよい値となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の伸び計の要部を示す図である。
【図2】従来の伸び計を示す図である。
【符号の説明】
1…上アーム 2…下アーム
3…回転支持部 4…上ナイフエッジ
5…下ナイフエッジ 6…板バネ
7…接触点 8…歪みゲージ
9…カム 10…押圧面
11…取付具
S…試験体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 歪みゲージを貼着した受感部を上下2つのアームの間に有する伸びセンサを前記アームを介して試験体に取り付けてこの試験体の伸びを計測する歪みゲージ式伸び計において、前記2つのアームが試験体の伸びにつれて開くのに伴って前記受感部を押して変形させるカムを備え、この受感部の変形によって生じる前記歪みゲージの出力から試験体の伸びを計測することを特徴とする歪みゲージ式伸び計。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−71305(P2002−71305A)
【公開日】平成14年3月8日(2002.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−262665(P2000−262665)
【出願日】平成12年8月31日(2000.8.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】