説明

歪み耐性の腐食保護コーティング組成物およびコーティングされた物品を構成する方法

結合剤マトリクスに分散された華氏1200°(摂氏649°)でアルミナより大きな平均熱膨張率(CTE)を有する耐食性微粒子成分を含むコーティング前駆体組成物を用意するステップであって、耐食性微粒子成分の少なくとも一部分の縦横比が約2:1より大きく、結合剤マトリクスが、シリコン含有材料およびリン酸塩含有材料から成る群の少なくとも1つの要素を含む耐食性微粒子成分を含むコーティング前駆体組成物を用意するステップと、金属基体の少なくとも一部分に、このコーティング前駆体組成物を与えるステップと、このコーティング前駆体組成物を硬化させて、金属基体の少なくとも一部分に耐食性コーティングを与えるステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、耐食性コーティング組成物およびコーティングされた物品に関し、より具体的には、非ガス流路のタービンエンジン部品に使用するのに特に適切な耐食性コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンには、より大きな推力およびより優れた燃費といった性能改善が間断なく求められている。エンジン性能を改善するために、燃焼温度が非常に高温に高められている。最高の動作温度で使用するタービンエンジン部品は、一般に、鉄、ニッケル、コバルトもしくはそれらの組合せの超合金またはステンレス鋼などの他の耐食材料で作製される。このような高い動作温度では、燃焼経路外部の超合金部品さえ、劣化しやすい。高機能航空エンジンの改修の間に発見されている問題の1つに、冷却用空気が供給されるタービンディスク、シール、および他の部品のピッチングがある。クロム含有レベルの低い新世代の合金から作製されるエンジン部品は、腐食開始に対する抵抗力が低い可能性がある。
【0003】
冷却用空気には、ほこり、火山灰、フライアッシュ、コンクリートのほこり、砂、および/または微粒子もしくは気体の形態での様々な塩類などの吸入された微粒子が含まれることがある。認められたピッチング問題は、冷却用空気で運ばれた周囲の空中浮遊異物の微粒子および気体ならびにより高い動作温度からもたらされる腐食生成物の形成によって引き起こされている可能性がある。
【0004】
SermaFlow(登録商標)N3000として市販のクロム酸塩−リン吸着薬に含まれるアルミナ顔料を含む既知のコーティングは、6価クロムを利用することにより、環境上の問題を引き起こす。
【0005】
6価クロムなしで、タービン部品の耐用年数に悪影響を及ぼすことなく、所望の腐食保護をもたらすことができて、コーティングとその下にある基体の間の熱膨張率(CTE)の不一致または他の原因によって引き起こされる破砕に耐える、コーティング組成物およびコーティングシステムが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1793015号
【発明の概要】
【0007】
前述の必要性は、高温度での使用に適切なコーティングされた物品を提供する例示的実施形態によって満たされ得る。コーティングされた物品は、金属基体および基体上のコーティングを含む。このコーティングには、結合剤マトリクスに分散された華氏1200°(摂氏649°)でアルミナより大きな熱膨張率(CTE)を有する耐食性微粒子成分が含まれる。耐食性微粒子成分の少なくとも一部分の縦横比は、約2:1より大きい。この結合剤マトリクスは、シリコン含有材料および/またはリン酸塩含有材料を含む。
【0008】
例示的方法は、結合剤マトリクスに分散された華氏1200°(摂氏649°)でアルミナより大きな平均熱膨張率(CTE)を有する耐食性微粒子成分であって、耐食性微粒子成分の少なくとも一部分の縦横比が約2:1より大きく、結合剤マトリクスが、シリコン含有材料およびリン酸塩含有材料から成る群の少なくとも1つの要素を含む耐食性微粒子成分を含むコーティング前駆体組成物を用意するステップと、金属基体の少なくとも一部分にコーティング前駆体組成物を与えるステップと、コーティング前駆体組成物を硬化させて、金属基体の少なくとも一部分に耐食性コーティングを与えるステップとを含む。
【0009】
本発明と見なされる内容が、詳細に指摘され、明細書の結びの部分で明確に請求される。しかし、本発明は、添付図面とともに以下の説明を参照して解釈することにより、最も良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガスタービンエンジンのタービン部の一部分の断面図である。
【図2】エンジンの前部またはファン部分からガス流れの方向に見て、例示的耐食性コーティングが配置されるのが望ましい場所を示すタービンディスクの斜視図である。
【図3】本明細書に開示される例示的コーティングでコーティングされた面を有する超合金基体の概略断面図である。
【図4】本明細書に開示される例示的コーティングでコーティングされた面を有する超合金基体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的実施形態が、図面を参照しながら説明され、様々な図の全体にわたって同一の参照数字は同一の要素を示す。
【0012】
本明細書で用いられる用語「微粒子」は、比較的小さな形で元来存在するか、あるいは例えば研削、切断、分解、粉砕により、そうでなければより大きな材料の形を比較的小さな形へ細分することによって形成され得る粒子、粉末、薄片などを指す。
【0013】
本明細書で用いられる用語「アルミナ微粒子」は、一般に化学式Al23を有する、水和形式および非水和形式を含む酸化アルミニウムの、混合物、組成物などを含む微粒子を指す。
【0014】
本明細書で用いられる用語「耐食性の非アルミナ微粒子」は、耐食性をもたらす、金属(アルミニウム単独を除く)、セラミック、または実質的にアルミナがないそれらの組合せを含む微粒子を指す。
【0015】
本明細書で用いられる用語「実質的にない」は、別段の定めがない限り、示された混合物、材料、部品などが、例えば約0.5%以下のレベルで、最小限存在するか、または全く存在しないことを意味する。
【0016】
本明細書で用いられる用語「耐食性の微粒子成分」は、アルミナおよび/または非アルミナの耐食性微粒子を含む成分を指す。耐食性の微粒子成分に含まれる耐腐性の非アルミナ微粒子およびアルミナ微粒子の特定のレベルおよび量は、結果として得られる耐食性コーティングに望まれる熱膨張率(CTE)の特性次第で変化させることができる。
【0017】
本明細書で用いられる用語「金属」は、単一の金属または合金(すなわち、少なくとも2つの金属の混合物)を指すことができる。
【0018】
本明細書で用いられる用語「セラミック」は、金属の酸化物、炭化物、または窒化物を指す。
【0019】
本明細書で用いられる用語「非耐熱性微粒子」は、化学式MCr、MCrX、MAl、MAlXまたはMCrAlXを有する合金を含み、ここで、Mはニッケル、鉄、コバルトまたはそれらの組合せであり、Xは、タンタル、レニウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ランタン、シリコン、ホウ素、炭素またはそれらの組合せのいずれかである。
【0020】
本明細書で用いられる用語の粒子の「縦横比」とは、粒子の長さと幅の比較である。本明細書で用いられる「微粒子成分の縦横比」は、全体として測定されるものであり、試料の平均的な縦横比を表す。
【0021】
本明細書で用いられる用語「耐食性コーティング」は、コーティング前駆体組成物を硬化して焼成した後に、アモルファスのガラス質マトリクスまたはガラス質のセラミックマトリクスに、耐食性の微粒子成分からの粒子が、埋め込まれた、カプセル化された、それによって密封された、またはそうでなければ固着した、少なくとも1つの層を含むコーティングを指す。本明細書に開示される耐食性コーティングは、吸入されたほこり、火山灰、フライアッシュ、コンクリートのほこり、砂、海塩などから、華氏2200°(摂氏1204°)もの高い温度で結果として生じる金属(例えばアルカリ)硫酸塩、亜硫酸塩、塩化物、炭酸塩、酸化物、および他の腐食塩堆積物を含む様々な腐食剤によってもたらされる腐食に対して耐性を与えることができる。
【0022】
本明細書に開示される例示的実施形態は、コーティングの多用途性を可能にする。コーティング前駆体は、基体上に重なるモノリシックの層または複数の個別の層として、必要とされる工学的要件と合致する様々な厚さで与えられてよい。個別の層は、所望のコーティングをもたらすように、成分の組成勾配を含んでよい。さらに、外面的にきれいにするために、封止するために、固着防止特性をもたらすために、空気力学的に意図されて、または任意数の他の理由のために、耐食層の上にガラス質の頂部被膜が与えられてよい。例示的頂部被膜は、市販の金属リン酸塩(例えばAlPO4またはMgPO4)を含んでよい。
【0023】
図1は、ガスタービンエンジンのタービン部の一部分の、エンジンの中心線に沿った断面図を示す。タービン部30は2段タービンであるが、タービンの設計次第で任意数の段が利用され得る。示されるように、シャフト(図示せず)にタービンディスク32が取り付けられ、シャフトは、ディスク32の穴を通ってエンジンの中心線(CL)に沿って延在する。第1段ブレード38が第1段ディスク36に取り付けられ、第2段ブレード42が第2段ディスク40に取り付けられている。ケース420からベーン410が延在する。ケース420の内面は、ガス流れ経路を流れる燃焼の熱ガスのためのライナー430を形成する。
【0024】
第1段ブレード38、第2段ブレード42およびベーン410は、熱ガスの流れ経路の中へ延在する。ベーン410は、静止していて熱ガス流れを導く働きをし、ディスク36および40上に取り付けられているブレード38および42は、熱ガスが当たるとき回転して、エンジンを動作させるエネルギーを抽出する。封止要素34、前部シール44、後部シール46、接合部シール48、第1段の後部ブレードリテーナ50および第2段の後部ブレードリテーナ52は、封止してタービンブレードおよびノズルに対するコンプレッサ空冷回路を完成するのに役立つ。これらのシールは、ディスクに取り付けられており、ディスクと一緒に回転可能である。ベーン410の内側で第1段ディスク36と第2段ディスク40の間に、接合部シール48が配置される。ブレードをディスクに固定する任意選択のブレードリテーナ50および52も示されている。このようなリテーナの設計は、エンジン設計次第で変化することになり、これらを必要としないエンジン設計もある。
【0025】
これらのディスク、シールおよびブレードリテーナは、これらに導かれる冷却回路の空気の温度に加熱される。また、燃焼経路部分からの伝導性熱伝達も、燃焼経路に最も近い部分を加熱する。例えば、タービンブレードは、タービンディスクのリムを熱伝導で加熱する。冷却用空気の汚染物質の堆積または蓄積の結果として腐食されやすい面の任意のものを保護するために、例示的コーティングを用いることができる。
【0026】
図2は、図1のディスク36または40など、一般に超合金材料で作製される一般的なガスタービンエンジンのディスク82の斜視図である。ディスク82は、ハブ74を、一般的にはエンジンの中心線に沿って含み、ハブ74は穴を有し、それを通ってシャフト(図示せず)が延在する。ディスク82は、ディスク外側の周辺に沿ってダブテール溝86を含み、タービンブレードがダブテール溝86に挿入されている。外側の周辺とハブ74の間にウェブ部分78が延在する。本明細書で開示される例示的コーティングは、ダブテール溝86を含めてディスク82に沿ったいかなる場所にも利用され得る。ウェブ部分78の面に沿ってコーティングを用い、ダブテール溝86にもコーティングを用いると、これらが冷却用空気に直接露出されるので特に有利である。したがって、本明細書で開示された例示的コーティングは、ディスク、シール、およびブレードリテーナを含むガスタービンエンジンのロータ部品に腐食保護をもたらすように意図されているが、他の部品または領域にも同様に利益があり得る。
【0027】
図3は、例示的耐食性コーティング64を有する基体60を含む例示的エンジン部品30を概略的に示す。耐食性コーティング64は、基体60の面62上に配置される。基体60は、タービンエンジンのディスク(もしくはタービンエンジンの任意の一部分)または腐食保護を必要性とする別のエンジン部品であり得る。基板60は、ニッケル、コバルト、鉄、およびそれらの組合せに基づく適切な超合金を含んでよい。
【0028】
基体60の面62上に耐食性コーティング64を与えるのに先立って、面62は、コーティング64を受けるための準備として、機械的に、化学的に、またはその両方で前処理されてよい。適切な前処理方法には、グリットブラスト、微細機械加工、レーザーエッチング、化学的エッチャントを用いる処理、加圧水を用いる処理など、ならびに1つまたは複数の方法の組合せが含まれる。
【0029】
本明細書で開示される例示的コーティングは、耐食性の微粒子成分66および結合剤マトリクス68を利用し、微粒子成分の少なくとも一部分は、約2:1より大きい縦横比を有する。他の例示的実施形態では、縦横比は、約2:1と100:1の間にあり、すべての部分領域を含む。他の例示的実施形態は、約10:1から約15:1の間にあって、すべての部分領域を含む縦横比を少なくとも一部分が有する微粒子成分を含む。コーティングの中で、これらの高い縦横比を有する微粒子は、全般的に基体面と平行になるはずであると考えられる。したがって、より大きな金属負荷が可能になり、下にある基体とのCTE一致が改善され、全体的により大きな腐食保護がもたらされる。大きな縦横比の粒子は、任意の半球状の粒子から、従来のボールミル粉砕および磨砕ミル粉砕などの任意の既知のミル粉砕プロセスによって形成することができる。特定の例示的実施形態では、微粒子成分は、単一の要素(純然たるアルミニウムを除く)または例えばクロム、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、イットリウム、マグネシウム、白金族金属(例えばプラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム)、ハフニウム、シリコン、タンタルなどの合金を含んでよい。例示的実施形態は、耐食性の微粒子が実質的にない、想像線で示された最外層70を任意選択で含んでよい。例えば、最外層70は、耐食性の微粒子が実質的にない、リン酸塩含有および/またはシリコン含有のガラス質マトリクスを含んでよい。
【0030】
図4は、面62’上のコーティング64’を有する基体60’を含む例示的コーティング部品30’を概略的に示す。コーティング64’は、結合剤マトリクス94の中により大きな縦横比の耐食性の微粒子成分92を含む少なくとも1つの内層90を含んでよい。例示的実施形態では、内層90は、最も内側のコーティング層である。コーティング64’はまた、結合剤マトリクス94に類似でも異なってもよい結合剤マトリクス100の中にアルミナおよび/または他の微粒子の2峰性の粒径分布を含む耐食性の微粒子成分98を含む層96を含んでよい。層96は、他の耐食性の微粒子も含んでよい。内層90と層96の相対的な厚さは、所望のコーティングの要件および特徴次第で変化されてよい。他の開示された実施形態のように、コーティング64’は、層耐食性の微粒子が実質的にない、リン酸塩含有および/またはシリコン含有のガラス質マトリクスを含む最外層102(想像線で示されている)を任意選択で含んでよい。
【0031】
他の層の配置および耐食性微粒子の組合せが、本開示の範囲内で企図される。例えば、組成勾配を示す追加の層が用いられてよい。
【0032】
本明細書で開示された特定の例示的実施形態には、液体噴霧として使用可能な、スラリベースのコーティング前駆体組成物の微粒子が含まれる。例えば、金属基体に対して前駆体組成物の液体を噴霧する用途を可能にするために、少なくとも1つの物理的性質(例えば粘性)をもたらすように前駆体組成物が調合されてよい。本明細書で開示された他の例示的実施形態には、テープフィルムの裏当てに与えられ、乾燥されてテープコーティング前駆体を形成する、スラリベースのコーティング前駆体組成物が含まれる。本明細書で開示された例示的実施形態には、金属リン酸塩マトリクスの微粒子が含まれ得る。コーティング前駆体組成物は、タービンエンジン部品または類似の基体の上に与えられたとき耐食性コーティングを形成するように硬化されてよい。
【0033】
特定の例示的実施形態では、耐食性微粒子成分は、一般に非耐熱性微粒子成分および/または耐熱性微粒子成分を含む。例示の耐食性微粒子成分は、アルミナより大きな平均熱膨張率(CTE)を有する(約華氏1200°、摂氏649°の温度で測定された)。
【0034】
例示の耐熱性微粒子成分は、例えば、ジルコニア、酸化ハフニウム(hafnia)、イットリアで安定化したジルコニア、イットリアで安定化した酸化ハフニウム、セリア、クロミア、酸化マグネシウム、酸化鉄、チタニア、イットリア、イットリウムアルミニウムガーネットの、単独のものまたは組合せ、また、任意選択でアルミナとの組合せのうち任意ものを含んでよい。換言すれば、アルミナは、耐食性の微粒子成分の、もたらされる平均的CTEが、上記で定義されたアルミナのものより大きくなるように1つまたは複数の成分と組み合わせて微粒子成分の中に存在してよい。
【0035】
例示の非耐熱性微粒子成分は、単一要素としての金属材料(単独でのアルミニウムを除く)あるいは、例えばクロム、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、イットリウム、マグネシウム、白金族金属(例えばプラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム)、ハフニウム、シリコン、およびタンタルの合金を、単独で、または組み合わせて含んでよい。非耐熱性微粒子成分は、例えば、MCr、MCrX、MAl、MAlXまたはMCrAlXの任意のものを含んでよく、ここで、Mはニッケル、鉄、コバルトまたはそれらの組合せであり、Xは、タンタル、レニウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ランタン、シリコン、ホウ素、炭素またはそれらの組合せのいずれかである。
【0036】
例示の前駆体組成物は、6価クロムがないシリコンベースの結合剤、大きな縦横比の粒子を少なくとも一部分に含む耐食性の微粒子成分、および溶剤を含んでよい。シリコンベースの結合剤は、焼成したとき微細多孔性をもたらすシリコン樹脂であり、結合剤マトリクスの中のシリコン含有材料でもあり得る。微細多孔性の源として、追加の有機体を含む他のシリコン含有材料も用いることができる。
【0037】
多孔性を改善するために変更が可能である。さらに、適合のための多孔性およびより優れたCTE一致をもたらす、金属またはより大きなCTEのセラミック追加物を利用することができる。例示的実施形態では、0.05から0.8マイクロメートルまでのサイズのアルミナ材料を、コーティング前駆体組成物の約5重量%から約70重量%まで追加してよい。最終的なコーティング密度を増加するために、ナノアルミナも利用することができる。特定の例示的実施形態は、耐食性の微粒子成分に、少なくとも1つの2峰性粒径分布を含んでいる。
【0038】
機械的適合を改善するための多孔性は、焼成中に前駆体組成物から抜け出して燃えることになる材料を組み入れることにより、または粒子サイズの成長により調整することができる。さらに、該当する層には、関連する多孔性に相違があるように、コーティングは組成勾配層を含んでよい。いくつかの例示的実施形態では、コーティング層の組成上の構成は、所望の多孔性レベルをもたらすように異なってもよい。
【0039】
例示のテープベースのコーティングは、ポリマーベースのテープシステムを含む。テープを形成するのに利用される有機結合剤は、焼成したときコーティングにさらなる多孔性をもたらすことができる。例示的結合剤には、フタル酸ジブチル(DBP)およびポリビニルブチラール(Monsanto社からB−79という名前で市販されている)が含まれる。テープが形成され、フィルムの裏当てから取り外され、次いで、テープコーティング前駆体を受け取るためにあらかじめ処理されていてよい基体に与えられる。部品は、袋詰めしてオートクレーブ処理されるか、そうでなければセラミックコーティングを形成するように焼成される。例示の耐食性コーティング前駆体は、約華氏750°(約摂氏399°)までの温度で焼成され得るが、約華氏2200°(約摂氏1204°)までの動作温度で利用されてよい。例示的テープシステムは、複数の層を含んでよく、各層が、関連する前駆体組成物を有する。したがって、最も内側のコーティング層として意図された層は、特定の金属基体との最適なCTE一致を求めて調合されてよく、一方、それより外側の層は、より大きな耐食性を求めて調合されてよい。例示的テープシステムは、より適合する下の層を有する、より高濃度の最上層を利用し得るように企図される。例示的実施形態では、約70重量%までのテープコーティング前駆体組成物は、大きな縦横比の微粒子であり得る。
【0040】
例示的コーティング前駆体組成物は、CoNiCrAlYガス噴霧粉を用いて準備され、粒子の少なくとも一部分は、大きな縦横比の微粒子をもたらすようにミルにかけられた。この前駆体組成物は、シリコン樹脂、適切な溶剤(例えばエチル95%−isop5%)、およびアルミナ微粒子もさらに含んでいた。このコーティング前駆体組成物は、適切な基体(例えばグリッドブラストしたRene’88DT、米国特許第4,957,567号に開示されているガンマプライム強化されたニッケルベース超合金)上に、約2.0ミル(50.8マイクロメートル)の目標厚さに噴霧された。コーティングは、乾燥され、次いで華氏1000°(約摂氏538°)で硬化された。これらの試料は、実質的に球状の微粒子成分を有する類似のコーティング前駆体組成物から形成されたコーティングと比較された。試料のうちのいくつかは、約6マイクロメートルの平均粒子サイズを有する球状の微粒子成分を含んでいた。他の試料は、約3マイクロメートルの平均粒子サイズを有する球状の微粒子成分を含んでいた。球状の微粒子成分を有するコーティングは顕著なマッドクラックパターンを示したが、大きな縦横比の微粒子成分を有する試料については、より微細な球状の微粒子が、より粗い構成に対して頻度の低下および亀裂の激しさを示したものの、顕著なマッドクラックパターンは見られなかった。
【0041】
コーティングされた基体の断面の光学写真を撮った。球状の微粒子成分を有するコーティングは、約1.8ミル(約46マイクロメートル)の例示的厚さを有し、コーティング厚さを通って基体まで延びる亀裂を示した。大きな縦横比の微粒子成分を有するコーティングは、2.9ミル(約74マイクロメートル)の例示的厚さを有し、1.7ミル(約43マイクロメートル)は亀裂を示さなかった。より厚いコーティングを有する試料は、取付けエポキシ樹脂の部分溶込みが見られるのみであった。約10:1と15:1の間の縦横比を有する微粒子成分は、約2.9ミル(74マイクロメートル)までの厚さでマッドクラックがないことによって有利な成果もたらし、また、これらのコーティングは、エポキシ樹脂が入り込まないことよって証拠づけられたように、より稠密に詰め込まれたと結論付けられた。約2:1より大きな縦横比を示す微粒子成分は、有利な結果をもたらすことになると予期される。
【0042】
3つの厚さレベルの目標(1.0ミル(25.4マイクロメートル)、2.0ミル(50.8マイクロメートル)、3.0ミル(76.2マイクロメートル))で大きな縦横比の微粒子成分を用いて、追加の試料が準備された。コーティング前駆体は、以前のように乾燥され、次いで硬化された。すべて試料にマッドクラックパターンがなかった。より厚いコーティングは、面窪みを示した。コーティングされた基体の断面の光学写真を撮った。どの試料にも垂直の亀裂は観測されなかった。次いで、各試料は、基体への接着を調査するために、熱的衝撃(急冷)テストにかけられた。急冷テストでは、各試料は、華氏1400°(摂氏760°)に加熱して30分間保持された後に、室温水で急冷された。すべての試料が、この水急冷試験に耐えた。約10:1と15:1の間の縦横比を有する微粒子成分は、マッドクラックがない、より厚い部分によって有利な成果もたらし、また、これらのコーティングは、熱ショック試験において層間剥離に対する耐性を示したと結論付けられた。約2:1より大きな縦横比を示す微粒子成分は、有利な結果をもたらすことになると予期される。
【0043】
したがって、金属基体上にコーティングを設けることにより、CTE一致および腐食保護の改善を達成することができ、このコーティングには、結合剤マトリクスに分散された華氏1200°(摂氏649°)でアルミナより大きなCTEを有する耐食性の微粒子成分が含まれており、耐食性微粒子成分の少なくとも一部分の縦横比が約10:1と15:1の間にあり、また、この結合剤マトリクスは、シリコン含有材料、リン酸塩含有材料、またはその組合せである。
【0044】
この書面の説明は、最善のモードを含めて本発明を開示し、あらゆる当業者が本発明を作製して利用することも可能にするように実例を用いている。本発明が特許権を受けられる範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に想起される他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文字どおりの言葉と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字どおりの言葉との実質のない相違点を有する同等な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲に入るように意図されている。
【符号の説明】
【0045】
30 タービン部
30’ コーティング部品
32 タービンディスク
34 封止要素
36 第1段ディスク
38 第1段ブレード
40 第2段ディスク
42 第2段ブレード
44 前部シール
46 後部シール
48 接合部シール
50 第1段の後部ブレードリテーナ
52 第2段の後部ブレードリテーナ
60 基体
60’ 基体
62 面
62’ 面
64 耐食性コーティング
64’ コーティング
66 耐食性の微粒子成分
68 結合剤マトリクス
70 最外層
74 ハブ
78 ウェブ部分
82 ディスク
86 ダブテール溝
90 内層
92 耐食性の微粒子成分
94 結合剤マトリクス
96 層
98 耐食性の微粒子成分
100 結合剤マトリクス
102 最外層
410 ベーン
420 ケース
430 ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤マトリクスに分散された華氏1200°(摂氏649°)でアルミナより大きな平均熱膨張率(CTE)を有する耐食性微粒子成分であって、前記耐食性微粒子成分の少なくとも一部分の縦横比が約2:1より大きく、前記結合剤マトリクスが、シリコン含有材料およびリン酸塩含有材料から成る群の少なくとも1つの要素を含む耐食性微粒子成分を含むコーティング前駆体組成物を用意するステップと、
金属基体の少なくとも一部分に前記コーティング前駆体組成物を与えるステップと、
前記コーティング前駆体組成物を硬化させて、前記金属基体の少なくとも前記一部分に耐食性コーティングを与えるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記コーティング前駆体組成物を用意するステップが、
液体噴霧として使用可能なスラリベース組成物の前記耐食性微粒子成分を用意するステップを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属基体の少なくとも前記一部分に前記コーティング前駆体組成物を与えるステップが、
前記金属基体の少なくとも前記一部分に、前記スラリベース組成物を目標厚さに噴霧するステップを含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記目標厚さが、少なくとも約1.5ミル(約38マイクロメートル)から、約3.0ミル(約76マイクロメートル)までである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記スラリベース組成物を噴霧するステップに続いて、
前記コーティング前駆体を乾燥させてマッドクラックパターンが実質的にない面を実現するステップをさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項6】
十分な量の耐食性粒子を、ミルにかけて所定の縦横比にするステップをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記基体の少なくとも前記面上に前記コーティング前駆体組成物を与えるステップが、ディスク、シール、およびブレードリテーナから選択された少なくとも1つのロータ部品上に前記コーティング組成物を与えるステップを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング前駆体組成物を与えるステップが、
ジルコニア、酸化ハフニウム、イットリアで安定化したジルコニア、イットリアで安定化した酸化ハフニウム、セリア、クロミア、酸化マグネシウム、酸化鉄、チタニア、イットリア、およびイットリウムアルミニウムガーネット、ならびにそれらの組合せ、また、任意選択でアルミナとの組合せから成る群から選択される耐熱性微粒子成分と、
MCr、MCrX、MAl、MAlX、MCrAlX、およびそれらの組合せから成る群から選択される非耐熱性微粒子成分であって、Mが、ニッケル、鉄、コバルト、およびそれらの組合せから選択された要素であり、Xが、タンタル、レニウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ランタン、シリコン、ホウ素、炭素、およびそれらの組合せから成る群から選択された要素である非耐熱性微粒子成分とのうち少なくとも1つを含む耐食性微粒子成分を与えるステップを含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング前駆体組成物を与えるステップが、前記耐熱性微粒子成分と前記非耐熱性微粒子成分の組合せを含む耐食性微粒子成分を与えるステップを含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング前駆体組成物を与えるステップが、前記耐食性微粒子成分の粒子サイズに少なくとも1つの2峰性分布を与えるステップを含む請求項8記載の方法。
【請求項11】
金属基体の少なくとも一部分に前記コーティング前駆体組成物を与えるステップが、第1の量の耐食性微粒子を含む第1の層および前記第1の層の上に重なる第2の層を与えるステップを含み、前記第2の層が、前記第1の量と異なる第2の量の耐食性微粒子を含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング前駆体組成物を与えるステップが、シリカ(SiO2)、ムライト(3Al23・2SiO2)、ケイ酸塩、およびそれらの組合せから成る群から選択されたシリコン含有材料を与えるステップを含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング前駆体組成物を用意するステップが、
テープベースのシステムとして使用可能なスラリベース組成物の前記耐食性微粒子成分を用意するステップを含む請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−506760(P2013−506760A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532078(P2012−532078)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045106
【国際公開番号】WO2011/041027
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】