説明

歯周病ワクチン

本発明は、コンパニオン動物において歯周病を引き起こし、16S rRNA DNAによって同定される新規細菌単離体、該細菌に含有されるポリヌクレオチド配列、こうしたポリヌクレオチド配列にコードされるポリペプチド、およびこうした細菌、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含むワクチンに関する。やはり提供するのは、歯周病を治療し、そして予防するための方法、および歯周病を検出し、そして治療するためのキット、歯周病を検出し、そして予防するためのキットである。さらに、動物における歯周病に対するワクチンの有効性を評価するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、コンパニオン動物において歯周病を引き起こし、16S rRNA DNAによって同定される新規細菌単離体、該細菌に含有されるポリヌクレオチド配列、こうしたポリヌクレオチド配列にコードされるポリペプチド、および不活化もしくは弱毒化されているこうした細菌単離体、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含むワクチンに関する。やはり提供するのは、歯周病を治療し、そして予防するための方法、および歯周病を検出し、治療し、そして予防するためのキットである。さらに、動物における歯周病に対するワクチンの有効性を評価するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
歯周病に関する実験データの大部分は、ヒトまたはヒトから単離された細菌の研究に基づく。非ヒト動物、例えばコンパニオン動物、そして特にイヌおよびネコなどにおける歯周病に関しては、比較的わずかしか知られていない。
【0003】
歯周病は、歯を支持する組織に関連する感染群を含む。これらの重症度の範囲は、歯肉(歯茎)の軽度でそして可逆的な炎症から、最終的に歯の剥脱を伴う歯周組織(歯肉、歯周靱帯、および歯槽骨)の慢性破壊に渡る。
【0004】
微生物学的な見地からは、この疾患のいくつかの特徴に興味が持たれる。細菌の病因は複雑であり、多様な生物がヒトにおける疾患の開始および進行の原因となる。これらの生物のうち、すべてでないとしても多くが、健康な個体の歯周にもまた存在しうるし、そして宿主と片利共生的な調和で存在しうる。したがって、疾患症状の発現は、例えば特定の生物の絶対数または相対数の改変、病原潜在能力の変化、または特定の宿主因子の調節の結果として、細菌および宿主の因子の間の生態学的バランスがシフトするのに続いて生じる可能性もある。局所環境は、歯肉縁上の歯表面および歯肉縁下の割れ目(疾患が進行するにつれて、歯周ポケット内に深くなっていく、歯根および歯肉間の溝)の構成要素微生物群に対して、多様なユニークな制限を課す。
【0005】
歯の石灰化された硬い組織および歯肉の上皮細胞はどちらも、コロニー形成に利用可能である。これらの組織は、宿主唾液分泌および歯肉溝浸出液(血清浸出液)に曝露され、これらはどちらも、細菌と直接相互作用して、そして広く行き渡る環境条件を改変する分子を含有する。さらに、ヒトにおいて、歯および歯肉縁下領域のコロニー形成に成功した細菌は、これらの領域に宿する、多くの(600を超える)他の細菌種と共存しなければならないことが知られる。したがって、ヒトにおける歯周病の病因の研究は、微小環境の生態学的な複雑さによって、困難になっている。
【0006】
ヒトにおける歯周病の多様な徴候の分類は、常に変化しており、そして疾患の重症度、進行速度、および罹患している歯の数が変動し、そして乳歯発生後の異なる年齢群が感受性でありうることに言及すれば十分であろう。病原体の性質は、これらの疾患実体間で多様であり、それとともに、ヒト患者間で、そして患者内の異なる疾患部位間でさえ多様である。しかし、一般的に、重症な型の疾患は、いくつかのグラム陰性嫌気性細菌と関連する。この群のうち、ヒトでは、大部分の証拠が、ポルフィロモナス(Porphyromonas)(以前のバクテロイデス(Bacteroides))・ジンジバリス(gingivalis)が病因に役割を果たすことを示す。この生物が存在することが、単独で、または他の細菌との混合感染としてのいずれかで作用して、そしておそらく有益な種が存在せず、そして宿主の特定の免疫学的応答が存在しないことと合わせて、疾患活性に必須であるようである。
【0007】
口腔のコロニー形成は、細菌がまず、口に進入し、そして次いで、利用可能な表面に局在し、そして付着することを必要とする。細菌コロニー形成を予防するように機能する宿主因子には、唾液および歯肉溝浸出液流を伴う、舌の動きの機械的剪断力が含まれる。口腔コロニー形成に成功する細菌は、したがって、宿主防御機構を克服する、多様な特質を所持する。続いて、口の硬組織および柔組織上に集積する、固着性歯垢バイオフィルムは、多様な微生物種で構成される動的な系である。ヒトでは、P.ジンジバリスは、通常、口腔の後期または二次コロニー形成細菌の1つであり、必要な環境条件を生成する先行生物を必要とする。
【0008】
ヒト口腔へのP.ジンジバリスの最初の進入は、感染した個体からの伝染によって起こると考えられる。したがって、他のベクターもまた、使用可能であるようである。これらの研究は、個体が、コロニー形成部位または臨床状態にかかわらず、単一の(または少なくとも主な)遺伝子型によってコロニー形成されることを示す。対照的に、多くの異なるクローン起源の株が、異なる個体に存在する。これは、P.ジンジバリスが、本質的に日和見病原体であり、病原性が特定のクローン種に限定されないという概念を裏付ける。
【0009】
ヒト口腔は、P.ジンジバリスが接着可能な多様な表面を提供する。歯の石化した硬組織に加えて、歯肉、頬、および舌のものを含む粘膜表面がある。
上述のように、ヒトにおける歯周病に関しては、非常に多くが知られている一方、コンパニオン動物における同じ疾患に関しては、非常にわずかしか知られていない。Fournier,D.ら,“Porphorymonas gulae sp.nov.,an Anaerobic,Gram−negative,Coccibacillus from the Gingival Sulcus of Various Animal Hosts”,International Journal of a Systematic and Evolutionary Microbiology(2001),51,1179−1189は、ATCC 57100と称するP.グラエ(P.gulae)新種の株を含む、多様な動物宿主から単離されたいくつかの株を記載する。著者らは、P.ジンジバリスの動物バイオタイプの株は、P.ジンジバリスとは異なるポルフィロモナス属種に相当すると仮定している。コンパニオン動物における歯周病を治療するのに有用なワクチンについての言及はない。HirasawaおよびTakada,“Porphyromonas gingivicanis sp. nov. and Porphyromonas crevioricanis sp. nov., Isolated from Beagles”,International Journal of Systemic Bacteriology,pp.637−640,(1994)は、ビーグル犬の歯肉溝浸出液から単離された2つの細菌種を記載する。これらの種は、米国特許第5,710,039号およびUS 5,563,063に記載される。著者らは、歯周病を治療するワクチンにおけるこれらの種の使用をどこにも示唆していない。公開番号WO 99/29870を有する国際出願PCT/AU98/01023は、多様なP.ジンジバリス・ポリペプチドおよびヌクレオチドを記載する。しかし、コンパニオン動物における歯周病を予防するのに有効なワクチンの証拠はまったく提供されない。ヒト疾患に関しては、非常に多くの情報があるが、ヒトにおいてさえ、この疾患を予防するかまたは治療する目的では、ほとんど達成されていない。
【0010】
コンパニオン動物における歯周病を治療し、そして予防するための安全でそして有効なワクチンに対する必要性が依然としてある。
Gencoら(Trends in Microbiology 6:444−449,1998)は、ポルフィロモナス・ジンジビカニス(Porphyromonas gingivicanis)が仲介する歯周病を調べるためのラット・モデルを記載する。Greccaら(J.Endodontics 27:610,2001)は、誘導された歯根周囲歯周炎のイヌの歯を歯内治療した後、歯根周囲の修復のX線写真評価を記載する。
【0011】
本発明以前には、定義され、そして定量的な方式で、1以上の歯周病原性細菌に対するワクチンの有効性を評価するために利用可能な動物モデルはまったくなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、細菌が、イヌ20Bと称されるポルフィロモナス・ジンジバリスの株でないという条件で、配列番号86〜94からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、16S rRNA DNA配列を有する、単離色素性嫌気性細菌を提供する。
【0013】
1つの態様において、細菌は、イヌ20Bと称されるポルフィロモナス・ジンジバリスの株でないという条件で、ポルフィロモナス・グラエ(Porphyromonas gulae)B43、P.カンスルシ(P.cansulci)B46、P.シルクムデンタリア(P.circumdentaria)B52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリス(P.cangingivalis)B98、P.サリボサ(P.salivosa)B104、O.デンティカニス(O.denticanis)B106、およびP.エンドドンタリス(P.endodontalis)B114からなる群より選択される。
【0014】
別の態様において、本発明は、直接、または他の病原体と組み合わされてのいずれかで、コンパニオン動物において歯周病を引き起こす、単離色素性嫌気性細菌であって、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンを調製するのに使用可能である、前記細菌を提供し、該ワクチンは、細菌がATCC 51700と称されるP.グラエ新種の株でないという条件で、不活化または弱毒化されている、少なくとも1つの細菌の免疫学的有効量を含む。好ましくは、細菌は、配列番号86〜94に示す配列いずれかに、少なくとも約95%相同である16S rRNA DNA配列を有する。より好ましくは、細菌は、配列番号86〜94からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む16S rRNA DNA配列を有する。
【0015】
別の態様において、本発明は、直接、または他の病原体と組み合わされてのいずれかで、コンパニオン動物において歯周病を引き起こす、単離色素性嫌気性細菌であって、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンを調製するのに使用可能である、前記細菌を提供し、該ワクチンは、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効な単離ポリペプチドを含み、該ポリペプチドは、細菌がATCC 51700と称されるP.グラエ新種の株でないという条件で、細菌から単離されたポリヌクレオチドにコードされる。好ましくは、細菌は、配列番号86〜94に示す配列いずれかに、少なくとも約95%相同である16S rRNA DNA配列を有する。より好ましくは、細菌は、配列番号86〜94からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む16S rRNA DNA配列を有する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、直接、または他の病原体と組み合わされてのいずれかで、コンパニオン動物において歯周病を引き起こす、単離色素性嫌気性細菌であって、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンを産生するのに使用可能である、前記細菌を提供し、該ワクチンは、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効なポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド分子を含み、該ポリヌクレオチド分子は、細菌がATCC 51700と称されるP.グラエ新種の株でないという条件で、細菌から単離されている。好ましくは、細菌は、配列番号86〜94に示す配列いずれかに、少なくとも約95%相同である16S rRNA DNA配列を有する。より好ましくは、細菌は、配列番号86〜94からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む16S rRNA DNA配列を有する。
【0017】
コンパニオン動物は、好ましくはイヌまたはネコである。
別の側面において、本発明は、細菌がATCC 51700と称されるP.グラエ新種の株でないという条件で、ポルフィロモナス・グラエB43、P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114を同定する特徴を有する細菌からなる群より選択される細菌から単離されたヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0018】
1つの態様において、単離ポリヌクレオチド分子は、ポルフィロモナス・グラエB43、P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114からなる群より選択される細菌から単離される。
【0019】
別の態様において、単離ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする。
さらに別の態様において、単離ポリヌクレオチドは、リボソームRNAまたはトランスファーRNAをコードする。
【0020】
さらにさらなる態様において、本発明は、ヌクレオチド配列がATCC 51700と称される細菌、P.グラエ新種由来の16S rRNA DNAではないという条件で、配列番号86〜94、および該配列に少なくとも95%の相同性を有する相同体からなる群より選択される、ヌクレオチド配列のいずれかを含む、単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0021】
好ましくは、単離ポリヌクレオチド分子は、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効なポリペプチドをコードする、配列番号95〜102および111〜119(それぞれfimAまたはoprF)からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはその相補体のいずれかを含む。
【0022】
やはり好ましいのは、配列番号95〜102、および111〜119に示すヌクレオチド配列、該配列に少なくとも95%の相同性を有する相同体であって、その配列が、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効なポリペプチドをコードする、前記相同体、またはその相補体のいずれかを含む、単離ポリヌクレオチド分子である。
【0023】
さらなる態様において、単離ポリヌクレオチド分子は、配列番号95〜102および111〜119に示すヌクレオチド配列、または該配列の断片もしくは変異体のいずれかであって、コンパニオン動物における歯周病を予防するかもしくは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効なポリペプチドをコードする、前記断片もしくは変異体、あるいはその相補体のいずれかを含む。
【0024】
さらにさらなる態様において、単離ポリヌクレオチド分子は、高ストリンジェンシーの条件下で、配列番号95〜102および111〜119に示す配列、またはその相補体のいずれかにハイブリダイズする、ヌクレオチド配列を含む。好ましくは、単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号95〜102に示す配列のいずれかから選択されるfimA、fimAに少なくとも約95%、98%または99%の配列同一性を有する、fimAの断片または変異体の配列を含む。やはり好ましいのは、その配列が、配列番号111〜119に示す配列のいずれかから選択されるoprF、oprFに少なくとも約95%、98%または99%の配列同一性を有する、oprFの断片または変異体の配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子である。
【0025】
好ましくは、本発明記載のポリヌクレオチド分子の断片または変異体は、該分子に少なくとも約98%相同である。
別の態様において、本発明は、配列番号95〜102に示す配列のいずれかから選択されるfimA、またはその相補体に、高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする、ヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号111〜119に示す配列のいずれかから選択されるoprF、またはその相補体に、高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする、ヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0027】
本発明はまた、配列番号95〜102および109〜119のヌクレオチド配列いずれかにコードされるポリペプチドいずれかの少なくとも約10の隣接アミノ酸の配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはその相補体を有する、DNA分子に、非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、約30ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子も提供する。好ましくは、単離ポリヌクレオチド分子は、配列番号95〜102および111〜119のヌクレオチド配列いずれかにコードされるポリペプチドいずれかの少なくとも約30の隣接アミノ酸の配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはその相補体を有する、DNA分子に、高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする、少なくとも約90ヌクレオチドを含む。
【0028】
別の側面において、本発明は、異種プロモーターに機能可能であるように連結された、本発明記載の単離ポリヌクレオチドを提供する。単離ポリヌクレオチドは、原核細胞または真核細胞において活性である複製起点を、さらに含むことも可能である。
【0029】
別の側面において、本発明は、プロモーター配列に機能可能であるように連結された、配列番号95〜102および111〜119のヌクレオチド配列、その断片または変異体のいずれかからなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む、組換え発現ベクターを提供する。
【0030】
さらに別の側面において、本発明は、プロモーター配列に機能可能であるように連結された、配列番号95〜102および111〜119のヌクレオチド配列、その断片または変異体のいずれかからなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む、プラスミドを提供する。
【0031】
さらなる側面において、本発明は、本発明記載の単離ポリヌクレオチド配列、ベクターまたはプラスミドを含む宿主細胞を提供する。
好ましくは、宿主細胞は大腸菌(E.coli)BL21であり、そして前記ポリヌクレオチドは、発現ベクターpBAD/HisAまたはλ発現プラスミドをさらに含む。
【0032】
さらなる側面において、本発明は、配列番号103〜110または120〜128に示す配列のいずれかから選択される、組換えFimAまたはOprF、あるいはその断片または変異体を産生するための方法であって、(1)請求項36の細胞を、FimA、OprF、あるいはその断片または変異体を含むポリペプチドが発現される条件下で増殖させ、そして(2)前記ポリペプチドを回収することを含む、前記方法を提供する。ポリペプチドは、可溶性型または不溶性型で回収可能である。
【0033】
別の側面において、本発明の単離ポリペプチドは、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効であり、そして配列番号103〜110および120〜128に示すアミノ酸配列を含む。
【0034】
1つの態様において、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効な単離ポリペプチドは、配列番号103〜110および120〜128に示すアミノ酸配列、並びに該配列に少なくとも95%、98%、または99%の配列同一性を有する相同体を含む。
【0035】
別の態様において、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効な単離ポリペプチドは、配列番号103〜110および120〜128に示すアミノ酸配列、あるいはその断片または変異体を含む。
【0036】
さらに別の態様において、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効な単離ポリペプチドは、配列番号95〜102および111〜119に示す配列いずれかに、高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むDNA分子にコードされる、アミノ酸配列を有する。
【0037】
さらにさらなる態様において、少なくとも約10の隣接アミノ酸を含む、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして免疫学的に有効な単離ポリペプチドは、配列番号103〜110および120〜128のポリペプチド配列いずれかの断片を含み、該ポリペプチドは、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するためのワクチンとして、単独で、またはキャリアーに連結されてのいずれかで、免疫学的に有効である。好ましくは、単離ポリペプチドは、少なくとも約25アミノ酸を含む。
【0038】
好ましくは、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するための単離ポリペプチドは、fimAの配列(配列番号95〜102)を含むヌクレオチド配列を含む、DNA分子にコードされる。
【0039】
やはり好ましくは、コンパニオン動物における歯周病を予防するかまたは治療するための単離ポリペプチドは、oprFの配列(配列番号111〜119)を含むヌクレオチド配列を含む、DNA分子にコードされる。
【0040】
好ましい態様において、単離ポリペプチドは、FimA(配列番号103〜110)およびOprF(配列番号120〜128)からなる群より選択される、組換え発現ポリペプチドである。
【0041】
別の態様において、組換え発現ポリペプチドは、キャリアー・ポリペプチドに融合される。融合ポリペプチドは、好ましくは、本質的にポリ・ヒスチジンまたはポリ・スレオニン配列である。
【0042】
さらなる側面において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンであって、本発明記載の少なくとも1つの不活化色素性嫌気性細菌の免疫学的有効量、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、前記ワクチンを提供する。
【0043】
別の態様において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンであって、少なくとも1つの不活化色素性嫌気性細菌の免疫学的有効量、少なくとも1つの他の細菌またはウイルス、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、前記ワクチンを提供する。
【0044】
好ましい態様において、ワクチンは、少なくとも1つの不活化色素性嫌気性細菌の免疫学的有効量、少なくとも1つのイヌ・ジステンパーウイルス(CDV)、イヌ・アデノウイルス−2(CAV−2)、イヌ・パルボウイルス(CPV)、イヌ・パラインフルエンザウイルス(CPI)、またはイヌ・コロナウイルス(CCV)、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む。
【0045】
別の側面において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンであって、少なくとも1つの本発明記載のポリヌクレオチド分子の免疫学的有効量、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、前記ワクチンを提供する。
【0046】
さらに別の側面において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンであって、本発明記載の少なくとも1つのポリペプチドの免疫学的有効量、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、前記ワクチンを提供する。
【0047】
好ましくは、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンは、免疫学的有効量のFimAおよび薬学的に許容しうるキャリアーを含む。
やはり好ましいのは、免疫学的有効量のOprFおよび薬学的に許容しうるキャリアーを含む、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンである。
【0048】
本発明のワクチンで使用するための細菌は、ポルフィロモナス・グラエB43、P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114からなる群より選択可能である。
【0049】
好ましい態様において、色素性嫌気性細菌は、P.グラエB43、P.サリボサB104、およびO.デンティカニスB106である。
さらに別の態様において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチン組成物であって、本発明記載の少なくとも1つの不活化単離色素性嫌気性細菌の免疫学的有効量、薬学的に許容しうるキャリアー、および場合によってアジュバントを含む、前記ワクチン組成物を提供する。
【0050】
さらに別の態様において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチン組成物であって、本発明記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド分子の免疫学的有効量、薬学的に許容しうるキャリアー、および場合によってアジュバントを含む、前記ワクチン組成物を提供する。
【0051】
さらにさらなる態様において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチン組成物であって、本発明記載の少なくとも1つのポリペプチドの免疫学的有効量、薬学的に許容しうるキャリアー、および場合によってアジュバントを含む、前記ワクチン組成物を提供する。
【0052】
別の側面において、本発明は、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するための方法であって、ワクチン組成物を投与する必要があるコンパニオン動物に、本発明記載のワクチン組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0053】
別の側面において、本発明は、本発明の細菌、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して、試料を分析することによって、コンパニオン動物における歯周病を診断するための方法であって、該細菌、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの存在が疾患の指標となる、前記方法を提供する。好ましくは、分析工程には、PCR、ハイブリダイゼーション、および抗体検出からなる群より選択される方法を用いて、試料を分析する工程が含まれる。
【0054】
さらに別の側面において、本発明は、本発明の少なくとも1つの不活化単離色素性嫌気性細菌、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドの有効量、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、コンパニオン動物における歯周病を治療し、そして予防するための組成物を、少なくとも1つの容器中に含むキットであって;該キットが、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するのに有用であることを示す、印刷した使用説明書セットをさらに含む、前記キットを提供する。キットは、前記組成物を分配するための手段をさらに含むことも可能である。
【0055】
さらに別の側面において、本発明は、少なくとも1つの容器中に、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119に示すヌクレオチド配列いずれかの相補体に、非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119のいずれかから選択される、少なくとも約15の隣接ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子を含み、そして第二の容器中に、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119に示すヌクレオチド配列いずれかに、非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119に示すヌクレオチド配列いずれかの相補体から選択される、少なくとも約15の隣接ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子を含む、第二の単離DNA分子を含む、キットを提供し、該キットはさらに、該キットが、ポルフィロモナス属種の検出に有用であることを示す、使用説明書セットを含む。こうした方法は、一般的に、ヒトを含むすべての哺乳動物において使用可能である。
【0056】
さらに別の側面において、本発明は、少なくとも1つの容器中に、配列番号95〜102および111〜119のヌクレオチド配列いずれかにコードされる、少なくとも30の隣接アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するタンパク質、およびキットがポルフィロモナス属種の検出に有用であることを示す説明書を含む、キットを提供する。該キットはさらに、第二のポリペプチドを含むことも可能であり、ここで第二のポリペプチドは、比色または を触媒する酵素にコンジュゲート化された抗体である。酵素は、好ましくは、アルカリ・ホスファターゼおよび西洋ワサビ(horseradish)・ペルオキシダーゼからなる群より選択される。キットは、比色アッセイまたは化学発光アッセイのための試薬をさらに含むことも可能である。
【0057】
さらなる側面において、本発明は、少なくとも1つの容器中に、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119のいずれかから選択される、少なくとも約15の隣接ヌクレオチドのヌクレオチド配列、またはその相補体を含む、単離DNA分子を含む、ハイブリダイゼーションキットを提供し、ここでハイブリダイゼーションはポルフィロモナス属種に特異的であり、そして該キットはさらに、該キットがポルフィロモナス属種の検出に有用であることを示す使用説明書セットを含む。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、非常にストリンジェントな条件下で行われる。
【0058】
さらにさらなる側面において、本発明は、動物において、特にイヌにおいて、1以上の歯周病原性細菌に対するワクチンの有効性を評価する方法を提供する。
さらにさらなる側面において、本発明は、1以上の歯周病原性細菌に対するワクチンの有効性を評価する方法であって、動物において測定される臨床徴候が、歯肉溝浸出液、歯垢、感染した骨、または歯肉溝中の1以上の歯周病原性細菌レベルの増加、あるいはX線写真測定を介して定量化される歯槽骨(aveolar bone)量の変化を含む、前記方法を提供する。
【0059】
本発明の細菌、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ワクチン、ワクチン組成物まはたキットはいずれも、ATCC 57100と称されるP.グラエ新種株を含めて、Fournier,D.ら,“Porphorymonas gulae sp. nov.,an Anaerobic,Gram−negative,Coccibacillus from the Gingival Sulcus of Various Animal Hosts”,International Journal of a Systematic and Evolutionary Microbiology(2001), 51,1179−1189、HirasawaおよびTakada,“Porphyromonas gingivicanis sp. nov. and Porphyromonas crevioricanis sp. nov.,Isolated from Beagles”,International Journal of Systemic Bacteriology,pp.637−640,(1994)、米国特許第5,710,039号またはUS 5,563,063、あるいは公開番号WO 99/29870を有する国際出願PCT/AU98/01023に記載される、細菌、ポリヌクレオチドまたはペプチドのいずれをも含まない。
【0060】
発明の詳細な説明
細菌単離体
本発明は、16S rRNA DNA配列によって同定される、単離嫌気性細菌であって、コンパニオン動物において、歯周病、並びに多様な他の疾患および臨床徴候を引き起こす、前記細菌を提供する。より具体的には、細菌は、ポルフィロモナス属から選択される。
【0061】
好ましくは、本発明の単離細菌には、P.グラエB43、P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114が含まれるが、他の種または株が本発明に含まれる。好ましい態様において、本発明の単離細菌は、配列番号86〜94に示す16S rRNA DNA配列によって同定可能である。
【0062】
本発明の細菌での感染によって引き起こされる疾患には、限定されるわけではないが、コンパニオン動物歯周病、コンパニオン動物の口の悪臭(口臭)、ウシ腐蹄症、イヌ冠状動脈性心疾患およびイヌ全身感染が含まれる。ポルフィロモナス属内の細菌はまた、多様なヒト疾患にも関連付けられてきており、これらの疾患には、冠状動脈性心疾患、耳下腺炎、口の悪臭、歯肉炎、歯周炎、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、細菌性膣疾患、子宮内胎児発育遅延(IUGR)、および低体重乳児の早産の発生率増加が含まれる。
【0063】
本発明は、ポルフィロモナス属種の単離ポリヌクレオチドおよび単離ポリペプチド分子を提供する。より具体的には、本発明は、ポルフィロモナス属種fimA遺伝子およびoprF遺伝子またはその縮重変異体のヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチド分子、並びにそれぞれ、こうした遺伝子にコードされるFimAタンパク質およびOprFタンパク質のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチド分子を提供する。
【0064】
本発明はまた、既知の標準的同定アルゴリズムいずれかを用いて決定されるような、配列番号95〜102および111〜119のいずれかに対して、少なくとも約90%の相同性、好ましくは少なくとも約95%、そして最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列も提供する。さらに、本発明は、配列番号95〜102および111〜119に示すポリヌクレオチド配列いずれかの相補体に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を提供する。
【0065】
別の特定の態様において、配列番号86〜102および111〜119に示すポリヌクレオチド配列、またはその相補体のいずれかに、高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズ可能な核酸を提供する。例えば、そして限定ではなく、90ヌクレオチドを超えるハイブリダイゼーション領域に対する、こうした高ストリンジェンシー条件を用いる方法は、以下のとおりである。DNAを含有するフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6xSSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.02%BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAで構成される緩衝液中、65℃で8時間〜一晩行う。100μg/ml変性サケ精子DNAおよび5〜20x10cpmの32P標識プローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物中、フィルターを65℃で48時間ハイブリダイズさせる。2xSSC、0.01%PVP、0.01%Ficoll、および0.01%BSAを含有する溶液中、フィルターの洗浄を37℃で1時間行う。これに続いて、0.1xSSC中、50℃で45分間洗浄した後、オートラジオグラフィーを行う。
【0066】
使用可能な、高ストリンジェンシーの他の条件は、核酸の性質(例えば長さ、GC含量など)およびハイブリダイゼーションの目的(検出、増幅など)次第であり、そして当該技術分野に周知である。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、相補配列へのおよそ15〜40塩基のオリゴヌクレオチドのストリンジェントなハイブリダイゼーションは、以下の条件下で行われる:50mM KClの塩濃度、10mM Tris−HClの緩衝液濃度、1.5mMのMg2+濃度、7〜7.5のpH、および55〜60℃のアニーリング温度。
【0067】
好ましい特定の態様において、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件は以下のとおりである。各膜を、40mMリン酸ナトリウム、pH7.2、5%SDS、1mM EDTA、0.5%ウシ血清アルブミン中、45℃で各30分間、各2回洗浄し、その後、リン酸ナトリウム、pH7.2、1%SDS、1mM EDTA中、各30分間、4回洗浄する。高ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーションのため、膜をさらに、40mMリン酸ナトリウム、pH7.2、1%SDS、1mM EDTA中、55℃で各30分間、4回の洗浄、その後、リン酸ナトリウム、pH7.2、1%SDS、1mM EDTA中、65℃で各30分間、4回の洗浄に供する。
【0068】
本発明はさらに、療法的に有効な量でコンパニオン動物に投与した際、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防する(すなわち歯周病に対する抵抗性を与える)のに有用な、ワクチンおよびワクチン配合物を提供する。
【0069】
1つの態様において、本発明は、少なくとも1つの弱毒化(修飾生)または不活化全細胞ポルフィロモナス属種調製物(バクテリン)を含む、ワクチンを提供する。好ましい態様において、本発明は、少なくとも3つのポルフィロモナス属種、例えばP.グラエB43、P.サリボサB104およびO.デンティカニスB106の組み合わせの不活化全細胞調製物を含有する、ワクチンを提供する。ホルマリン、二元性エチレンイミン(BEI)またはベータ−プロピオラクトンなどの多様な剤を用いて、細菌細胞を不活化することも可能である。好ましくは、不活化剤として、ホルマリンを用いる。
【0070】
別の態様において、ワクチンは、免疫応答を誘導可能なポルフィロモナス属種のサブユニット分画を含む。
好ましい態様において、本発明のワクチンは、1以上のサブユニット・ポリペプチド、またはその断片もしくは変異体、あるいは1以上の単離ポリヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0071】
弱毒化(修飾生)または不活化ワクチン(バクテリン)、あるいは単離サブユニット・ポリペプチド、あるいは単離ポリヌクレオチドは、適合するアジュバント、希釈剤またはキャリアーなどの他の既知のワクチン配合構成要素と組み合わせて存在することも可能である。
【0072】
定義および略語
用語「ORF」は「オープンリーディングフレーム」、すなわち遺伝子のコード領域を示す。
【0073】
用語、ヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の「配列同一性パーセント」は、比較ウインドウに渡って、2つの最適並列配列を比較することによって決定され、ここで最適並列は、最高順位のマッチを提供し、そして試験配列または参照配列に対して、ヌクレオチド付加またはアミノ酸付加を導入することも可能である。同一性パーセントは、全配列に渡って、各位の試験配列および参照配列間で同一であるヌクレオチドの割合を計算することによって決定される。最適配列並列および同一性パーセントを手動で決定することも可能であるし、またより好ましくは、限定されるわけではないが、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、GAP、BESTFIT、およびCLUSTALW(Altschulら,1990,J. Mol. Biol.,215(3):403−10;PearsonおよびLipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85(8):2444−8;Thompsonら,1994,Nucleic Acids Res.,22(22):4673−80;Devereuxら,1984,Nuc.Acids Res.,12:387−395);Higginsら,1996,Methods Enzymol.,266:383−402)を含む、コンピュータ・アルゴリズムによって決定することも可能である。好ましくは、デフォルト・パラメータに設定したNCBI Blastサーバー(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)を用いて、相同配列に関して、多数のデータベースを検索する。
【0074】
用語「異種」は、本明細書において、異なる細菌種または株から得られることを意味する。
用語「相同性」、「相同」等は、本明細書において、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列間で共有される同一性の度合いを意味する。
【0075】
用語「相同」は、細菌種に関して用いた場合、同じ細菌種または株を意味する。
用語「宿主細胞」は、本明細書において、プラスミド、ウイルス、または他のベクターを宿する細菌または真核細胞を意味する。
【0076】
用語「単離」は、本明細書において、天然存在環境から取り除かれ、単独で存在するか、あるいは異種宿主細胞、または染色体またはベクター(例えばプラスミド、ファージなど)中にあるかいずれかであることを意味する。
【0077】
用語「単離嫌気性細菌」、「単離細菌」、「単離細菌株」等は、細菌が、他の微生物を実質的に含まない、例えば培養中にある、天然存在環境から分離されている場合などの組成物を指す。
【0078】
用語「単離ポリヌクレオチド」は、単離ヌクレオチドが、組成物の少なくとも重量50%を構成する組成物を示す。より好ましくは、単離ポリヌクレオチドは、組成物の重量の約95%、そして最も好ましくは、約99%を構成する。
【0079】
用語「単離ポリペプチド」は、単離ポリペプチドが、組成物の少なくとも重量50%を構成する組成物を示す。より好ましくは、単離ポリペプチドは、組成物の重量の約95%、そして最も好ましくは、約99%を構成する。
【0080】
用語「機能的に同等である」は、本明細書において、コンパニオン動物において歯周病を引き起こす細菌によって産生される天然ポリペプチドに対して特異的な抗体に認識されることが可能な組換えポリペプチド、あるいは内因性細菌由来の天然タンパク質のものと実質的に類似の免疫学的応答を誘発するかまたは引き起こすことが可能な組換えポリペプチドを指す。したがって、機能的に同等なポリペプチドに対して作成された抗体はまた、コンパニオン動物において歯周病を引き起こす細菌によって産生される天然ポリペプチドも認識する。
【0081】
用語「免疫原性」は、タンパク質またはポリペプチドが、コンパニオン動物における歯周病を引き起こす細菌に対して特異的に向けられる免疫応答を誘発する能力を指す。
用語「抗原性」は、タンパク質またはポリペプチドが、該タンパク質またはポリペプチドに対して作成された抗体に免疫特異的に結合される能力を指す。
【0082】
用語「抗体」は、本明細書において、抗原に結合可能な免疫グロブリン分子を指す。抗体は、ポリクローナル混合物であることもまたはモノクローナルであることも可能である。抗体は、天然供給源由来または組換え供給源由来の損なわれていない(intact)免疫グロブリンであることも可能であるし、あるいは損なわれていない免疫グロブリンの免疫反応性部分であることも可能である。抗体は、例えば、Fv、Fab’、F(ab’)、並びに一本鎖を含む、多様な型で存在することも可能である。
【0083】
用語「コンパニオン動物」は、本明細書において、ペットと見なされる捕獲された非ヒト動物いずれかを指す。これらには、限定されるわけではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、サル、並びにマウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ(gerbil)、およびフェレットを含むげっ歯類が含まれることも可能である。
【0084】
用語「防御」、「防御する」等は、本明細書においてワクチンに関して用いる場合、ワクチン中で用いられる抗原(単数または複数)が由来する生物によって引き起こされる疾患の症状を、該ワクチンが予防するかまたは減少させることを意味する。用語「防御」および「防御する」等はまた、ワクチンを用いて、被験者に既に存在する疾患または該疾患の1以上の症状を「治療」可能であることも意味する。
【0085】
用語「療法的有効量」は、投与された被験者において、免疫応答を誘発するのに十分な細菌、またはサブユニット(例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド配列)およびその組み合わせの量を指す。免疫応答は、限定なしに、細胞性免疫および/または体液性免疫の誘導を含むことも可能である。
【0086】
用語「感染を予防する」は、コンパニオン動物において歯周病を引き起こす細菌の複製を予防するかまたは阻害するか、細菌の伝染を阻害するか、あるいは宿主において細菌が自身を確立するのを予防するか、あるいは感染によって引き起こされる疾患症状を軽減することを意味する。治療は、細菌負荷の減少がある場合、療法性であると見なされる。
【0087】
用語「薬学的に許容しうるキャリアー」は、活性成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、そして投与される被験者に毒性でないキャリアー媒体を指す。
用語「療法剤」は、細菌感染、あるいはそれによって引き起こされる疾患または状態の治療を補助する、分子、化合物または治療いずれか、好ましくは抗細菌分子または化合物を指す。
【0088】
用語「その断片または変異体」は、本発明記載の部分的ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を指す。好ましくは、本発明で提供されるポリペプチドの断片または変異体は、コンパニオン動物において、体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘発することが可能である。類似体が、用語「その断片または変異体」に含まれる。ヌクレオチド残基の欠失、挿入または置換である、1以上の突然変異を所持しうる、突然変異体ポリヌクレオチドが、用語「その断片または変異体」に含まれる。アレル変異体が、用語「その断片または変異体」に含まれる。
【0089】
ポルフィロモナス属種の単離および性質決定
既知の試料採取、培養および単離技術を用いて、本発明が提供する細菌を得ることも可能である。例えば、歯周病を示すコンパニオン動物集団から、例えばイヌおよびネコから、微生物試料を得ることも可能である。>3mmの歯周ポケットを持つイヌおよび>2mmの歯周ポケットを持つネコなど、既知の目安を用いて、歯周病の証拠を観察することも可能である。コンパニオン動物の標本集団に関して、歯科指数(歯肉指数および歯周疾患指数)および歯周ポケットの深さなどの、歯周病を性質決定するための既知のパラメータを決定することも可能である。特定の動物の歯周ポケットから、個々の試料を得て、嫌気性条件下で維持し、そして多様な既知の培地を用いて培養することも可能である。
【0090】
いくつかの生化学試験、および16S rRNA DNA配列分析などの既知の技術を用いて、臨床単離体を性質決定して、その属および種を決定することも可能である。個々の単離体をプレートに移して、そして抗生物質ディスク(Anaerobe Systems)を寒天表面に置いて、各単離体の抗生物質耐性パターンを決定することも可能である。精製コロニーを既知のインドールおよびカタラーゼ試験に供することもまた可能である(Anaerobe Systems)。個々の単離体に関して、リパーゼおよびレシチナーゼ産生パターンを決定することも可能である。
【0091】
16S rRNA DNA配列に基づいて、単離体のタイプを決定することも可能である。例えばプライマーD0056およびD0057(配列番号1および配列番号2;表1)を用いた、16S rRNA領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のテンプレートとして、個々のよく単離されたコロニーを利用することも可能である。利用可能なPCR調製キット(Promega社;ウィスコンシン州マディソン)を用いて、生じたPCR産物を精製し、そして単離体ごとにプールすることも可能である。次いで、精製PCR産物を脱塩し、そしてDNA配列分析に供することも可能である。生じたDNA配列を用いて、入手可能なDNAデータベースを検索することも可能である。次いで、データベース検索によって同定された最も近いマッチに基づいて、細菌単離体のタイプを決定することも可能である。
【0092】
表1.DNA配列同定リスト。すべてのオリゴヌクレオチド・プライマーは、Gibco−BRL(米国)またはLark Technologies Inc.(米国)のいずれかによって合成された。
【0093】
【表1−1】

【0094】
【表1−2】

【0095】
【表1−3】

【0096】
【表1−4】

【0097】
【表1−5】

【0098】
【表1−6】

【0099】
【表1−7】

【0100】
【表1−8】

【0101】
【表1−9】

【0102】
【表1−10】

【0103】
【表1−11】

【0104】
【表1−12】

【0105】
【表1−13】

【0106】
【表1−14】

【0107】
【表1−15】

【0108】
【表1−16】

【0109】
【表1−17】

【0110】
【表1−18】

【0111】
【表1−19】

【0112】
【表1−20】

【0113】
【表1−21】

【0114】
【表1−22】

【0115】
【表1−23】

【0116】
【表1−24】

【0117】
【表1−25】

【0118】
【表1−26】

【0119】
【表1−27】

【0120】
【表1−28】

【0121】
【表1−29】

【0122】
【表1−30】

【0123】
【表1−31】

【0124】
【表1−32】

【0125】
【表1−33】

【0126】
【表1−34】

【0127】
【表1−35】

【0128】
【表1−36】

【0129】
【表1−37】

【0130】
【表1−38】

【0131】
【表1−39】

【0132】
【表1−40】

【0133】
【表1−41】

【0134】
注:小文字のヌクレオチドは、ターゲットDNA配列には存在しない。これらは、クローニングを補助するため、プライマーの5’領域に付加されている。NA、該当なし。
以下のコンパニオン動物歯周単離体が、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC), 10801 University Blvd., Manassas, VA, 20110, USAに、2001年8月9日に寄託された:P.グラエB43(PTA−3618)、P.カンスルシB46(PTA−3619)、P.シルクムデンタリアB52(PTA−3620)、P.グラエB69(PTA−3621)、P.シルクムデンタリアB97(PTA−3622)、P.カンジンジバリスB98(PTA−3623)、P.サリボサB104(PTA−3624)、O.デンティカニスB106(PTA−3625)、およびP.エンドドンタリスB114(PTA−3626)。本発明の好ましい態様において、本発明の単離ポリヌクレオチド分子は、配列番号86〜102および111〜119からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する。本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号103〜110および120〜128からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。
【0135】
ポルフィロモナス属ヌクレオチド配列のクローニング
本発明のポルフィロモナス属ヌクレオチド配列をクローニングするのに使用可能な、いくつかの既知の方法または技術がある。例えば、制限断片として配列を単離して、そしてクローニングおよび/または発現ベクターにクローニングすることも可能であるし、配列をPCR増幅し、そしてクローニングおよび/または発現ベクターにクローニングすることも可能であるし、またはこれらの2つの方法の組み合わせによって、配列をクローニングすることも可能である。
【0136】
当該技術分野に知られ、そして特に記載しない標準的分子生物学技術は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク(1989);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,メリーランド州ボルチモア(1989);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley & Sons,ニューヨーク(1988);Watsonら,Recombinant DNA,Scientific American Books,ニューヨーク;Birrenら(監修) Genome Analysis:A Laboratory Manual Series,Vols.1−4 Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク(1998);並びに米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号および第5,272,057号に示される方法論に記載されるように一般的に理解されうる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990)に記載されるように行われる。
【0137】
本発明のポリヌクレオチドのクローニングおよび配列決定に有用な方法の例を、実施例に提供する。
fimAおよびoprFがコードするポリペプチドおよびタンパク質
本発明は、本発明のヌクレオチド配列によって発現される組換えポリペプチドの、一部切除(truncated)型および全長(天然タンパク質)型の両方を発現するのに使用可能な、ベクターおよび宿主細胞を含む、原核発現系および真核発現系の使用を含む。
【0138】
本発明の好ましい態様において、本発明の単離ポリヌクレオチド分子は、配列番号95〜102および111〜119の配列またはその縮重変異体の1つから選択され;そしてそれぞれ、配列番号103〜110および120〜128のアミノ酸配列から選択される、対応するポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を有する。
【0139】
多様な宿主発現ベクター系を利用して、本発明のポリペプチドを発現させることも可能である。こうした宿主発現系はまた、目的のコード配列をクローニングし、そして続いて精製することも可能なビヒクルにも相当する。本発明はさらに、適切なベクターまたはヌクレオチド配列で形質転換されるかまたはトランスフェクションされた際に、コードされる本発明のポリペプチド遺伝子産物を発現することが可能である、宿主細胞を提供する。こうした宿主細胞には、限定されるわけではないが、コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば大腸菌、枯草菌(B.subtilis))などの微生物;遺伝子産物コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia));コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞ゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を宿する哺乳動物細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3)が含まれる。
【0140】
好ましい態様において、発現系は細菌系である。発現される産物に関して意図される使用に応じて、いくつかの発現ベクターを好適に選択することも可能である。例えば、ワクチン組成物を生成するため、または抗体を作成するため、多量のこうしたポリペプチドを産生しようとする場合、例えば、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましい可能性もある。好ましくは、ベクターは、誘導性遺伝子発現を指示するプロモーターを含有する。適切なベクターには、限定されるわけではないが、コード配列を、インフレームで、多数(例えば6つ)のヒスチジン残基をコードする配列に融合することが可能な、大腸菌pET発現ベクター(StudierおよびMoffatt,1986,J.Mol.Biol. 189:113;Rosenbergら,1987,Gene 56:125−135;Novagen、ウィスコンシン州マディソン);アラビノース誘導性タンパク質の調節下で異種タンパク質を発現することが可能な、pBADベクター(Guzmanら,1995,J.Bact. 177:4121−4130);およびグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として異種ポリペプチドを発現するのに用いられる、pGEXベクター(Pharmacia Biotech、米国)が含まれる。本発明のfimAまたはoprF配列をλ発現ベクターにクローニングして、そしてλ細菌株で発現させることも可能である。好ましい様式において、細菌株は、大腸菌BL21(Gibco−BRL、米国)である。好ましくは、使用可能なベクターには、限定されるわけではないが、pLEX発現ベクター(LaVallieら,1992,Bio/Technology 11:187−193;Mieschendahlら,1986,Bio/Technology 4:802−808;Invitrogen)およびpRIT2T発現ベクター(Nilssonら,1985,EMBO 4:1075;ZabeauおよびStanley,1982, EMBO 1:1217;Pharmacia Biotech)が含まれる。他のベクターおよび細菌株が使用可能であり、そして当業者に知られる。
【0141】
抗体産生
抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、または組換えのいずれかであることも可能である。好適に、免疫原またはその一部、例えば配列に基づく合成ペプチドに対して抗体を調製することも可能であるし、あるいはクローニング技術によって組換え的に調製することも可能であるし、あるいは天然遺伝子産物および/またはその一部を単離して、そして免疫原として用いることも可能である。HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー,1988、並びにBorrebaeck,Antibody Engineering−A Practical Guide,W.H.Freeman and Co.,1992に一般的に記載されるように、当業者に周知の標準的抗体産生技術によって、免疫原を用いて、抗体を産生することも可能である。抗体断片もまた、抗体から調製可能であり、そして当業者に知られる方法による、Fab、F(ab’)、およびFvが含まれる。
【0142】
抗体産生において、当該技術分野に知られる免疫学における標準法によって、所望の抗体に関するスクリーニングを達成することも可能である。具体的に記載しない技術は、一般的に、Stitesら(監修),Basic and Clinical Immunology(第8版),Appleton & Lange,コネチカット州ノーウォーク(1994)、並びにMishellおよびShiigi(監修),Selected Methods in Cellular Immunology,W.H.Freeman and Co.,ニューヨーク(1980)におけるように理解される。一般的に、ELISAおよびウェスタンブロッティングは、イムノアッセイの好ましい種類である。両方のアッセイが当業者に周知である。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体両方がアッセイに使用可能である。当該技術分野に周知であるように、抗体を固体支持担体に結合させるか、または検出可能部分にコンジュゲート化するか、または結合させ、そしてかつコンジュゲート化もさせることも可能である(蛍光部分または酵素部分のコンジュゲート化の一般的な考察に関しては、Johnstone & Thorpe,lmmunochemistry in Practice,Blackwell Scientific Publications,Oxford,1982を参照されたい)。固体支持担体への抗体の結合もまた、当該技術分野に周知である(一般的な考察に関しては、Harlow & Lane Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Publications,ニューヨーク,1988およびBorrebaeck,Antibody Engineering−A Practical Guide,W.H.Freeman and Co.,1992を参照されたい)。本発明で使用が意図される検出可能部分には、限定されるわけではないが、蛍光、金属、酵素および放射性マーカー、例えばビオチン、金、フェリチン、アルカリ・ホスファターゼ、b−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼ、フルオレセイン、ローダミン、トリチウム、14Cおよびヨウ素化が含まれることも可能である。
【0143】
適切な場合、当該技術分野に知られるように、ラジオイムノアッセイ(RIA)などの他のイムノアッセイを用いることも可能である。利用可能なイムノアッセイは、特許および科学文献に、広範囲に渡って記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,850,578号;第3,853,987号;第3,867,517号;第3,879,262号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;第4,098,876号;第4,879,219号;第5,011,771号;および第5,281,521号、並びに、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー,1989を参照されたい。
【0144】
検出、診断、および予防キット
本発明はさらに、ポルフィロモナス属種を検出するためのキットを提供する。該キットには、本発明のポルフィロモナス属生物、ポリペプチド、またはポルフィロモナス属ヌクレオチド配列の存在に関して、試料を分析するための試薬が含まれ、ここでヌクレオチド配列の存在は、生物が存在する指標となる。この方法は、症状が存在する前に、疾患を診断可能であり、そしてしたがって、患者にダメージが発生する前に、疾患の開始を予防可能であるため、価値がある。抗体、PCR、ハイブリダイゼーション、および当業者に知られる他の検出法を用いて、ポルフィロモナス属種細菌、ポリペプチド、またはヌクレオチド配列の存在を決定することも可能である。
【0145】
1つの態様において、キットは、ポルフィロモナス属に対する抗体を検出するための試薬を提供する。特定の態様において、キットは、該キットがポルフィロモナス属種の検出に有用であることを示す印刷された使用説明書またはラベルのセットを含むことも可能である。最低限、キットは、1つの容器中に、配列番号103〜110および120〜128のポリペプチドいずれかの少なくとも30の隣接アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。1つの態様において、キットはさらに、二次抗体を含む。好ましい態様において、二次抗体は、検出可能部分、例えば比色反応または化学発光反応を触媒する酵素、例えばアルカリ・ホスファターゼまたは西洋ワサビ・ペルオキシダーゼにコンジュゲート化される。さらなる態様において、キットは、比色アッセイまたは化学発光アッセイを行うための試薬を含む。
【0146】
別の態様において、キットは、ポルフィロモナス属核酸を検出するための試薬を提供する。1つの態様において、キットは、ポルフィロモナス属核酸をPCR検出するための試薬を提供し、そして少なくとも1つの容器中に、配列番号103〜110または120〜128のポリペプチドのいずれかの、少なくとも5、10、15、20、25、または30の隣接アミノ酸の配列、あるいは完全アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNA分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、少なくとも約15、20、25または30ヌクレオチドの断片を含む、第一の単離DNA分子、および配列番号103〜110または120〜128のポリペプチドのいずれかの、少なくとも5、10、15、20、25、または30の隣接アミノ酸の配列、あるいは完全アミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA分子に相補的なDNA分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、少なくとも15、20、25または30ヌクレオチドの断片を含む、第二の単離DNA分子を含み、ここで、第一および第二のDNA分子を用いて、配列番号1〜9からなる群より選択されるDNA分子にコードされる、16S rRNAをコードする、ポルフィロモナス属種核酸を特異的に増幅することも可能である。
【0147】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つの容器中に、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119に示すヌクレオチド配列いずれかの相補体に、非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119のいずれかから選択される、少なくとも約15の隣接ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子を含み、そして第二の容器中に、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119に示すヌクレオチド配列いずれかに、非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、配列番号86〜94、95〜102、および111〜119に示すヌクレオチド配列いずれかの相補体から選択される、少なくとも約15の隣接ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、単離DNA分子を含む、第二の単離DNA分子を含む、キットを提供し、該キットはさらに、該キットが、ポルフィロモナス属種の検出に有用であることを示す、使用説明書セットを含む。
【0148】
ワクチン配合物および投与法
ワクチンが、コンパニオン動物において歯周病を療法的に治療するか、または歯周病に対する抵抗性を与えるか、または歯周病を予防するように、有効量で、本発明のワクチンをコンパニオン動物に投与することも可能である。本発明のワクチンは、歯周病を引き起こす細菌の管理に有用である。本発明のワクチンを、特に、獣医学の分野で用いて、コンパニオン動物を治療することも可能であり、そして歯周病を引き起こすことが知られる、本明細書記載の細菌に対する公衆衛生の維持のために用いることも可能である。
【0149】
本発明のワクチンは、ヒトおよびコンパニオン動物に有害であるか、あるいはヒトおよびコンパニオン動物において疾患を蔓延させるか、または疾患のベクターとして作用する細菌、例えば本明細書に記載するようなものの管理に価値がある。本発明のワクチンは、コンパニオン動物に存在する細菌を管理するのに特に有用であり、この目的のため、限定されるわけではないが、経口、非経口、鼻内、皮下、または局所を含む、既知の投与法のいずれを用いて、これらを投与することも可能である。
【0150】
本発明のさらなる側面にしたがって、適合するアジュバント、希釈剤またはキャリアーと混合した、本発明のワクチンを含む組成物を提供する。好ましい態様において、本発明のワクチン配合物は、すぐ注射できる形で、好ましくは生理学的pHに緩衝されている、本発明の少なくとも1つの細菌および/または少なくとも1つのサブユニット・タンパク質を含有する水性懸濁物または溶液で構成される。別の好ましい態様において、本発明のワクチン配合物は、少なくとも3つのポルフィロモナス属種、例えばP.グラエB43、P.サリボサB104およびO.デンティカニスB106の不活化全細胞調製物で構成される。
【0151】
本発明は、細菌感染を治療するかまたは予防する方法であって、本発明のワクチンまたはワクチン配合物の有効量を用いた治療を含む、前記方法をさらに提供する。治療に対する言及には、細菌感染の予防、並びに、確立された症状の軽減も含まれることが認識されるものとする。
【0152】
本発明のワクチンおよびワクチン配合物を用いて、歯周病を引き起こす細菌によって引き起こされる歯周病に特徴的な病理学的変化を予防する応答を誘導することも可能である。ワクチン配合物において、細菌、精製タンパク質、核酸、またはその組み合わせの免疫原性である量が、望ましくは、哺乳動物で使用するのに適した慣用的ワクチンアジュバントおよび生理学的ビヒクルと混合される。
【0153】
少なくとも1つの単離および精製不活化または弱毒化細菌、精製ポリペプチド(例えば天然タンパク質、サブユニット・タンパク質、またはポリペプチド)を用いて、そしてこれらの1以上を、適合するアジュバント、希釈剤、またはキャリアーと混合して、コンパニオン動物における歯周病を予防するためのワクチン配合物を産生することも可能である。好ましくは、ポリペプチド配列は、FimA(配列番号103〜110)およびOprF(配列番号120〜128)を含む群から選択されるサブユニット・タンパク質である。
【0154】
診断ポリペプチドのため、またはワクチン調製のために使用可能な、FimAおよびOprFの断片の例には、限定されるわけではないが、ACNKDNEAEPVV、YPVLVNFESNNYTYTGDAVEK、TGPGTNNPENPITESA、NDNNNKDFVDRLGA、DLNGQINRLRREVEELSKRPVSCPECPDV、およびADPTGDTQYNERLSERRAKAV(配列番号129〜134)が含まれる。サブユニット・タンパク質は、単独で、あるいは別のポリペプチド配列またはタンパク質に融合されるかいずれかで、組換え的に発現されることも可能である。他のポリペプチド配列またはタンパク質には、限定されるわけではないが、例えばポリHisタグ、MBP、チオレドキシン、またはGSTが含まれる。本発明にやはり提供されるのは、上述のサブユニット・タンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチド配列または遺伝子である。細菌のポリヌクレオチド配列は、fimAおよびoprF、またはその断片もしくは変異体であって、該配列に少なくとも約90%、95%、または99%の相同性を示す、前記断片もしくは変異体、または高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする相補的ポリヌクレオチド配列、あるいは両方の組み合わせから選択されることも可能である。好ましくは、本発明のポリヌクレオチド配列を用いて、本発明のfimAまたはoprF DNA分子を増幅することも可能であるし、あるいは本発明のポリヌクレオチドは、FimAまたはOprFに対する抗体を作製するのに使用可能なアミノ酸断片をコードする。
【0155】
DNAに基づく療法のため、宿主細胞に異種核酸を搬送するかまたはトランスファーすることが可能なビヒクルを使用することも可能である。発現ビヒクルには、当該技術分野に知られるように、細胞選択的方式で、核酸のターゲティング、発現および転写を調節する要素が含まれることも可能である。発現ビヒクルには、異種成分の転写を調節するためのプロモーターが含まれることも可能であり、そしてこれは恒常性プロモーターまたは選択的転写を可能にする誘導性プロモーターのいずれかであることも可能である。場合によって、必要な転写レベルを得るのに必要でありうるエンハンサーを含むことも可能である。
【0156】
当該技術分野内に知られる多様な方法のいずれか1つによって、細胞または組織にベクターを導入することも可能である。こうした方法は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(1989,1992);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,メリーランド州ボルチモア(1989);Changら,Somatic Gene Therapy,CRC Press,ミシガン州アナーバー(1995);Vegaら,Gene Targeting,CRC Press,ミシガン州アナーバー(1995);R.L.Rodriguez,Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,マサチューセッツ州ボストン(1988)に、一般的に記載されて見出されることも可能であり、そして例えば、組換えウイルスベクターでの安定または一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションおよび感染を含む。
【0157】
本発明はさらに、1以上のさらなる免疫原性構成要素と組み合わせて、本発明の不活化または弱毒化細菌、ヌクレオチド配列、あるいはポリペプチド配列の少なくとも1つを有する、併用ワクチンを提供する。こうした併用ワクチンは、ワクチン接種した動物において、各構成要素を別個に投与した効果を単純に加算することによって期待されるよりも、驚くほど高い効果を生じることも可能である。このように、併用ワクチンは、動物における抗体の相乗産生を刺激することも可能である。
【0158】
好ましい態様において、本発明の併用ワクチンは、1以上のさらなる細菌またはウイルス免疫原性構成要素と組み合わされた、少なくとも3つのポルフィロモナス属種、例えばP.グラエB43、P.サリボサB104およびO.デンティカニスB106の不活化全細胞調製物で構成される。本発明の併用ワクチンで使用するのに適したさらなる免疫原性構成要素には、限定されるわけではないが、イヌ・ジステンパーウイルス(CDV)、イヌ・アデノウイルス−2(CAV−2)、イヌ・パルボウイルス(CPV)、イヌ・パラインフルエンザウイルス(CPI)、およびイヌ・コロナウイルス(CCV)が含まれる。
【0159】
本発明の少なくとも1つの不活化または弱毒化細菌、ヌクレオチド配列、あるいはポリペプチド配列と、薬学的に許容しうるキャリアー、および好ましくはアジュバントを組み合わせることによって、本発明のワクチンを調製することも可能である。
【0160】
本発明のワクチンの適切な調製物には、液体溶液または懸濁物いずれかの注射可能物質が含まれる。注射前に、液体の薬学的に許容しうるキャリアー中の溶液または懸濁物とするのに適した固体型もまた、調製可能である。ワクチン調製物を乳化することも可能である。活性免疫原性構成要素を、好ましくは、薬学的に許容可能であり、そして活性免疫原性構成要素と適合する、アジュバントと混合する。適切なアジュバントには、限定されるわけではないが:ミネラルゲル、例えば水酸化アルミニウム;表面活性物質、例えばリゾレシチン;グリコシド、例えばQuilAまたはGPI−0100などのサポニン誘導体(米国特許第5,977,081号);DDA、プルロニックポリオールなどの陽イオン性界面活性剤;ポリアニオン;非イオン性ブロック・ポリマー、例えばPluronic F−127(B.A.S.F.、米国);ペプチド;ミネラルオイル、例えばMontanide ISA−50(Seppic、フランス・パリ)、カルボポール、Amphigen(Hydronics、米国ネブラスカ州オマハ)、Alhydrogel(Superfos Biosector、デンマーク・フレデリクスン)、油エマルジョン、例えばBayolF/ArlacelAおよび水などのミネラルオイルのエマルジョン、または植物油、水およびレシチンなどの乳化剤のエマルジョン;ミョウバン、コレステロール、rmLT、サイトカインおよびその組み合わせなどが含まれる。免疫原性構成要素は、リポソームに取り込まれることも可能であるし、または多糖および/またはワクチン配合に用いられる他のポリマーにコンジュゲート化されることも可能である。本発明の方法で使用するための産物に含まれることも可能なさらなる物質には、限定されるわけではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の二ナトリウムおよび四ナトリウム塩、メルチオレートなどの1以上の保存剤が含まれる。
【0161】
ワクチンを投与する被験者は、好ましくはコンパニオン動物、最も好ましくはイヌまたはネコである。
本発明のワクチンは、ワクチン配合物において、単位投薬型で存在することが好ましい。本発明の目的のため、免疫原性の量は、投与時に、約1x10〜1x1013不活化細菌細胞、0.1μg〜1mgの精製タンパク質、または0.1μg〜10mgの核酸を含む。多数の構成要素を含有するワクチン配合物では、同一のまたはより少ない免疫原性量を有用に使用可能である。
【0162】
免疫原性量、治療しようとする状態、および動物の生理学的特徴に基づいて、当業者は、適切な療法的有効量を容易に決定することも可能である。したがって、ワクチン調製物は、免疫原性量の活性成分(単数または複数)の無菌調製物の投薬量を提供し、ここで、活性成分は、少なくとも1つの細菌、タンパク質、核酸、またはその組み合わせいずれかである。当業者は、さらなる活性剤の存在下で、これらの単位投薬量を容易に調整可能である。
【0163】
望ましい投薬措置は、所望のワクチン組成物の少なくとも1つの用量の投与を伴い、ここで各分画の抗原量は、上述のとおりである。本発明のワクチンの有効用量(免疫量)はまた、モデル試験系由来の用量−反応曲線からも推定可能である。本発明のワクチンの投与様式は、宿主にワクチンを搬送する適切な経路いずれであることも可能である。これらには、限定されるわけではないが、経口、皮内、筋内、腹腔内、皮下、鼻内経路、および乱切(例えば二股に分かれた針を用いて、皮膚の最上層を貫いて引っかく)を介するものが含まれる。しかし、ワクチンは好ましくは皮下投与または筋内注射によって投与される。望ましい場合、皮内、静脈内、鼻内、または扁桃腺内などの、他の投与様式もまた使用可能である。
【0164】
上述のワクチン組成物各々に関して、望ましくは、若い動物(8週齢以後)の一次免疫を惹起して、12週齢および16週齢で、追加用量を投与する。毎年、再ワクチン接種することが推奨される。
【0165】
個々の被験者の臨床状態、投与部位および方法、投与のスケジューリング、被験者の年齢、性別、体重、および医師に知られる他の要因を考慮に入れ、良質の医療のための原則(good medical practice)にしたがって、本発明のワクチンを投与し、そして投薬する。
【0166】
本発明はさらに、コンパニオン動物における歯周病を予防するためのキットを提供する。1つの態様において、キットは、コンパニオン動物において、歯周病を予防する組成物を療法的有効量で含む容器を提供する。同じ容器または異なる容器中に、組成物中で使用可能な薬学的に許容しうるキャリアーもまた提供される。キットはさらに、本発明の組成物に対する応答を生成するのを補助するのに使用可能なアジュバントを含むことも可能である。また、キットは、好ましくは単位投薬型で、組成物を分配するディスペンサーを含むことも可能である。ディスペンサーは、例えば、金属またはプラスチックホイル、例えばブリスター・パックを含むことも可能である。キットには、コンパニオン動物における歯周病を予防するための組成物の投与を説明する、ラベルまたは印刷された使用説明書が付随することも可能である。薬学的に許容しうるキャリアー中に配合された、本発明のワクチン組成物を含む組成物を調製し、適切な容器に入れ、そして示す歯周状態の治療のためにラベルを付けることもまた可能である。
【0167】
ワクチン有効性の決定
本発明のワクチンおよびワクチン組成物によって誘導される特定の防御機構は、以下に示すin vivo動物試験によって示されるように、ワクチン接種した動物における抗体および/または細胞性免疫応答の誘導である。
【0168】
本発明の細菌、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ワクチン、およびワクチン組成物は、コンパニオン動物歯周病、ウシ腐蹄症、冠状動脈性心疾患(イヌ)、または全身感染(イヌ)を治療するかまたは予防するのに有用でありうる。さらに、本発明の組成物はまた、冠状動脈性心(あるいは血管または動脈)疾患、耳下腺炎、口の悪臭、歯肉炎、歯周炎、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、低体重乳児の早産の発生率増加、細菌性膣疾患および子宮内胎児発育遅延(IUGR)など、ヒトにおける類似の疾病と対応する、コンパニオン動物における特定の疾病を治療するかまたは予防するのにも有用でありうる。
【0169】
本発明のさらなる側面において、動物における1以上の歯周病原性細菌に対するワクチンの有効性を評価する方法を提供する。本発明は、1以上の歯周病原性細菌に対するワクチンが、マウスまたはイヌなどの動物種、特にイヌにおいて評価可能であることを示した。
【0170】
本発明にしたがって、限定されるわけではないが、ポルフィロモナス属、バクテリオデス属(Bacteriodes)、プレボテラ属(Prevotella)、タネレラ属(Tannerella)(タネレラ・フォルシテンシス(Tannerella forsythensis)、以前のバクテロイデス・フォルシサス(Bacteroides forsythus))、およびトレポネーマ属(Treponema)を含めて、多様な歯周病原性細菌に対するワクチンが、上述の方法を用いて評価可能であり、こうしたワクチンは、これらの細菌によって引き起こされるヒトまたはコンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するために設計されている。ワクチンは、これらの細菌種いずれかの、不活性化または弱毒化細菌、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを含有することも可能である。
【0171】
ワクチン接種動物および非ワクチン接種動物に、曝露培養物を別個に導入し、そして2つの動物における臨床徴候を比較することによって、ワクチンの有効性を評価することも可能である。曝露培養物は、ワクチンと同じ歯周病原性細菌で構成されることも可能である。しかし、曝露培養物は、ワクチンが他の細菌種に対して有しうる、交差防御いずれかを評価するため、ワクチン中のものとは異なる細菌を含有することも可能である。
【0172】
本発明にしたがって、歯根成分が摘出され、その後、修復物が配置されている、動物の歯の根管内に、曝露培養物が導入されることが望ましい。曝露培養物は、典型的には、曝露用量あたり、約1x10〜約1x1012コロニー形成単位(CFU)を含有し;好ましくは、曝露用量あたり、1x10〜約1x1011コロニー形成単位(CFU)を含有し;さらにより好ましくは、曝露用量あたり、約5x10〜約5x1010コロニー形成単位(CFU)を含有する。
【0173】
評価可能な疾患の臨床徴候には、歯肉溝浸出液、歯垢、感染した骨、または歯肉溝中の1以上の歯周病原性細菌レベルの増加、あるいは歯槽骨量の変化、特に歯槽骨の歯根尖端周囲領域の変化が含まれる。例えばX線写真測定によって、骨変化を定量化することも可能である。
【0174】
本発明は、以下の限定されない実施例および付随する図によって、さらに例示される。
【実施例】
【0175】
(実施例1)
コンパニオン動物歯肉溝浸出液試料
獣医クリニックで歯周治療のために診察されたイヌおよびネコから、あるいは通常の検査のため、Pfizer Terre HauteまたはPfizer Sandwich施設のいずれかで診察されたイヌから、微生物試料を採取した。>3mmの歯周ポケットを持つイヌおよび>2mmの歯周ポケットを持つネコがこの研究に含まれた。歯科指数(歯肉指数および歯周疾患指数)および歯周ポケットの深さを記録した。目が粗い個々の吸収ペーパーポイント(Henry Schein;ニューヨーク州メルビル)を歯周ポケットに無菌的に挿入した。除去に際して、ペーパーポイントを、あらかじめ還元した嫌気性無菌(PRAS)嫌気性歯科輸送(ADT)培地(Anaerobe Systems;カリフォルニア州モーガンヒルズ)を含有するバイアルに、直ちに挿入した。
【0176】
バイアルをBactron IV嫌気性チャンバー(Sheldon Manufacturing、オレゴン州コーネリウス)に移し、そして90%N、5%H、5%CO下でプロセシングした。ペーパーポイントを50μlのPRAS脳心臓注入(BHI)培地(Anaerobe Systems)に無菌的に入れ、そして30秒間ボルテックスした。BHI培地中で1:100および1:1000の希釈を調製した。1:100および1:1000希釈の100μlのアリコットを、PRASブルセラ(Burcella)血液寒天(BRU)プレート(Anaerobe Systems)上に広げた。嫌気性チャンバー中、5〜7日間、プレートを37℃でインキュベーションした。細菌コロニー総数および黒色色素性嫌気性細菌(BPAB)コロニーの数を計数した。個々のBPAPコロニーを新規BRUプレートに移し、そして上述のように再インキュベーションした。
【0177】
臨床単離体性質決定
各臨床単離体を、いくつかの生化学分析、並びにプライマーD0056およびD0057(配列番号1および配列番号2;表1)を用いた16S rRNA DNA配列分析に供して、属および種を決定した。個々の単離体をBRUプレート上にストリークした。カナマイシン、バンコマイシン、およびコリスチン・ディスク(Anaerobe Systems)を寒天表面上に置いて、各単離体のKVC耐性パターンを決定した。また、精製コロニーをインドールおよびカタラーゼ試験(Anaerobe Systems)にも供した。リパーゼおよびレシチナーゼ産生パターンを決定するため、個々の単離体を卵黄寒天(EYA)プレート(Anaerobe Systems)に移した。このデータを表2に示す。
【0178】
表2.イヌおよびネコBPAB単離体性質決定
【0179】
【表2−1】

【0180】
【表2−2】

【0181】
【表2−3】

【0182】
【表2−4】

【0183】
【表2−5】

【0184】
【表2−6】

【0185】
【表2−7】

【0186】
【表2−8】

【0187】
【表2−9】

【0188】
【表2−10】

【0189】
【表2−11】

【0190】
【表2−12】

【0191】
【表2−13】

【0192】
【表2−14】

【0193】
略語:D、イヌ;C、ネコ;NA、該当なし;ND、未測定;M、雄;F、雌;Y、あり;N、なし;P、陽性;Ne、陰性

16S rRNA DNA配列に基づいて、単離体のタイプを決定した。3つ組で、プライマーD0056およびD0057(配列番号1および配列番号2;表1)を用いて、16S rRNA領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のテンプレートとして、個々のよく単離されたコロニーを利用した。1xPCR緩衝液(Life Technologies;メリーランド州ロックビル)、1.0mM MgCl、各1.25μMプライマー、各300μMデオキシ−NTP、および2.5U白金Pfx DNAポリメラーゼ(Life Technologies)を含有する50μl反応体積中でPCRを行った。以下のPCR周期条件を利用した:94℃2分間の変性工程;94℃40秒間の変性、60℃40秒間のアニーリング、および72℃1分間の伸長の30周期;72℃2分間の最終伸長工程;並びに4℃への最終冷却工程。すべてのPCR増幅に、GeneAmp 9700サーモサイクラー(Perkin Elmer Applied Biosystems;カリフォルニア州フォスターシティ)を利用した。
【0194】
PCR調製キット(Promega社;ウィスコンシン州マディソン)を用いて、生じたPCR産物を精製し、そして単離体ごとにプールした。次いで、0.025μmニトロセルロース・フィルター(Millipore社;マサチューセッツ州ベッドフォード)を用いて、25ml滅菌水に対して点滴分析することによって、精製PCR産物を脱塩した。ABI自動化DNA配列決定装置(テキサス大学遺伝学コア施設、テキサス州ヒューストン、およびLark Technologies Inc.、テキサス州ヒューストン)上でのDyeDeoxy終結反応を用いて、精製脱塩PCR産物をDNA配列分析に供した。合成オリゴヌクレオチド・プライマー、D0056、D0057、PFZ175−AP1、PFZ175−AP2、およびPFZ175−AP3(それぞれ配列番号1〜5;表1)を用いて、二本鎖DNA配列を得た。生じたDNA配列を用い、米国バイオテクノロジー情報センターから公的に入手可能なBLAST−Nプログラムを用いて、公的に入手可能なDNAデータベースを検索した。
【0195】
データベース検索によって同定された最も近いマッチに基づいて、細菌単離体のタイプを決定した。B106単離体は、正確なマッチを持たず、新規細菌属/種に相当しうることが示唆された(以下を参照されたい)。すべての単離体およびそれぞれの特性の完全なリストを、表2に示す。最も頻繁に単離される株の上位9つは、以下の単離体によって例示される:P.グラエB43(イヌ試料Sandwich 4)、P.カンスルシB46(イヌ試料VHUP 1B)、P.シルクムデンタリアB52(ネコ試料VHUP 2A)、P.グラエB69(ネコ試料VHUP 3A)、P.シルクムデンタリアB97(イヌ試料TH 1bC)、P.カンジンジバリスB98(イヌ試料TH 1aC)、P.サリボサB104(イヌ試料TH 1bC)、O.デンティカニスB106(イヌ試料TH 1bE)、およびP.エンドドンタリスB114(イヌ試料TH 2bA)。
【0196】
単離体分布を表3に示す。
表3.示した細菌種を宿することが同定されたイヌおよびネコの数のまとめ
【0197】
【表3−1】

【0198】
【表3−2】

【0199】
上に列挙する単離体は、イヌまたはネコの最も高い割合に、最も頻繁に同定され、そして存在した種に相当する。
以下のコンパニオン動物歯周単離体が、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC), 10801 University Blvd., Manassas, VA, 20110, USAに、2001年8月9日に寄託された:P.グラエB43(PTA−3618)、P.カンスルシB46(PTA−3619)、P.シルクムデンタリアB52(PTA−3620)、P.グラエB69(PTA−3621)、P.シルクムデンタリアB97(PTA−3622)、P.カンジンジバリスB98(PTA−3623)、P.サリボサB104(PTA−3624)、O.デンティカニスB106(PTA−3625)、およびP.エンドドンタリスB114(PTA−3626)。
【0200】
新規属/種の同定(オドリバクター・デンティカニス)
この研究の経過中、細菌の16S rRNA配列が、入手可能なデータベース中に非常に類似のマッチを持たず、該細菌が新規単離体に相当しうることが示される、多くの臨床単離体を同定した。これらの単離体のうち1つの群は、新規種に相当するようであった。本明細書に提示するデータに基づいて、我々は、この新規の種が、オドリバクター新属と称する新規属に位置づけられると提唱する。オドリバクター・デンティカニスの標準株は、株B106(=ATCC PTA−3625;=CNCM I−3225)である。
【0201】
オドリバクター・デンティカニスB106は、年齢不詳で歯周病の雑種の成体雄イヌから単離された。深さ4mmの歯周ポケットおよび歯肉指数1を有する下顎第一臼歯から、ペーパーポイント試料を得た。試料を上述のようにプロセシングした。RapID ANA II臨床試験キット(Remel;カンザス州レネクサ)およびVitek嫌気性生物同定(ANI)カード系(BioMerieux Inc.;ノースカロライナ州ダーハム)を用いて、精製細胞を生化学分析に供した。簡潔には、集密まで増殖させたブルセラ血液寒天プレート上の細菌細胞を、McFarland#3等価に再懸濁した。懸濁物をRapID ANA II試験ウェルまたはVitek ANIカードに添加し、そして37℃で4時間インキュベーションした。インキュベーション期間後、生化学試験の結果を記録した。
【0202】
表4は、O.デンティカニスB106、並びに6つの関連細菌のRapID ANA II試験の結果を示す。RapID ANA IIキットによって行った18の試験のうち、O.デンティカニスB106に関しては、2つ(LGYおよびIND)のみが陽性であった。これに比較して、ポルフィロモナス・ジンジバリスATCC 33277、プレボテラ・インテルメディア(Prevotella intermedia)ATCC 25611、タネレラ・フォルシテンシスATCC 43037、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)ATCC 29148、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285、およびバクテロイデス・スプランチニクス(Bacteroides splanchnicus)ATCC 29572は、それぞれ、5、4、10、12、9、および8の陽性試験を生じた。
【0203】
表4.O.デンティカニスB106および関連株のRapID ANA II生化学試験
【0204】
【表4】

【0205】
各試験の反応性成分:URE、尿素;BLTS、p−ニトロフェニル−β,D−二糖;αARA、p−ニトロフェニル−α,L−アラビノシド;ONPG、o−ニトロフェニル−β,D−ガラクトシド;αGLU、p−ニトロフェニル−α,D−グルコシド;βGLU、p−ニトロフェニル−β,D−グルコシド;αGAL、p−ニトロフェニル−α,D−ガラクトシド;αFUC、p−ニトロフェニル−α,L−フコシド;NAG、p−ニトロフェニル−n−アセチル−α,D−グルコサミニド;PO、p−ニトロフェニルホスフェート;LGY、ロイシル−グリシン−□−ナフチルアミド;GLY、グリシン−β−ナフチルアミド;PRO、プロリン−β−ナフチルアミド;PAL、フェニルアラニン−β−ナフチルアミド;ARG、アルギニン−□−ナフチルアミド;SER、セリン−β−ナフチルアミド;PYR、ピロリドニル−β−ナフチルアミド、およびIND、トリプトファン。
【0206】
略語:P、陽性;N、陰性;V、多様。

Vitek ANIカードを用いて、O.デンティカニスB106T、P.ジンジバリスATCC 53977、およびフゾバクテリウム・ヌクレアツム(Fusobacterium nucleatum)亜種ヌクレアツムATCC 23726の生化学反応パターンを決定した(表5)。O.デンティカニスB106Tは、陽性試験2つのみ(INDOLおよびTTZ)を生じたが、P.ジンジバリスATCC 53977は、5つの陽性試験(INDOL、PO4、NAG、BANA、およびTTZ)を生じた。RapID−ANA IIおよびVitek ANIカード間で共通する12の試験のすべてが類似の結果を生じた。Vitekに供給されるデータベースを用いると、O.デンティカニスB106T単離体は、信頼レベル63%で、誤ってF.ヌクレアツムと同定された(データ未提示)。この誤認は、Vitekデータベースに獣医学的PAB単離体が欠けているためである可能性もある。
【0207】
表5.O.デンティカニスB106Tおよび関連株のVitek ANI生化学試験
【0208】
【表5】

【0209】
各試験の反応性成分:IND、トリプトファン;PO、p−ニトロフェニルホスフェート;PHC、p−ニトロフェニルホスフェートコリン;ONPG、o−ニトロフェニル−β,D−ガラクトピラノシド;AGAL、p−ニトロフェニル−α,D−ガラクトピラノシド;BGLU、p−ニトロフェニル−β,D−グルコピラノシド;AGLU、p−ニトロフェニル−α,D−グルコピラノシド;BGUR、p−ニトロフェニル−β,D−グルクロニド;BLAC、p−ニトロフェニル−β,D−ラクトシド;AMAN、p−ニトロフェニル−α,D−マンノピラノシド;AFUC、p−ニトロフェニル−α,L−フコピラノシド;BFUC、p−ニトロフェニル−β,D−フコピラノシド;BXYL、p−ニトロフェニル−β,D−キシロピラノシド;AARA、p−ニトロフェニル−α,L−アラビノフラノシド;NAG、p−ニトロフェニル−N−アセチル−グルコサミニド;BANA、N−ベンジル−DL−アルギニン p−ニトロアニリド;LEU、L−ロイシン p−ニトロアニリド;PRO、L−プロリン p−ニトロアニリド;ALA、L−アラニン p−ニトロアニリド;LYS、L−リジン p−ニトロアニリド;GGT、ガンマ−グルタミル p−ニトロアニリド;TTZ、トリフェニルテトラゾリウム;ADH、アルギニン;URE、尿素;GLU、グルコース;TRE、トレハロース;ARA、アラビノース;RAF、レアフィノース(reaffinose);XLY、キシロース。
【0210】
略語:+、陽性;−、陰性。

プライマーD134(配列番号169)およびD57(配列番号2)を用いて、3つ組で、O.デンティカニスB106由来の16S rRNA遺伝子をPCR増幅した。PCR産物をプールし、精製し、脱塩し、そして直接DNA配列分析に供した。O.デンティカニスB106 16S rRNA遺伝子配列を用いた、米国バイオテクノロジー情報センターの非冗長ヌクレオチド・データベースのBLAST−N(Altschulら、1990)検索によって、O.デンティカニスB106単離体が、バクテロイデス属のメンバーに関連することが示された。O.デンティカニスB106 16S rRNA遺伝子配列は、バクテロイデス綱(Bacteroidetes)種口腔クローンFX069(寄託番号AY134906)の16S rRNA遺伝子配列と最も近く関連し、1,465bpに渡って、96.3%の同一性を示した。バクテロイデス綱種口腔クローンFX069は、HIV陽性患者における壊死性潰瘍性歯周炎(NUP)と関連する細菌種を定義する研究中、NUPのヒト患者から単離された(Paster, B.J.ら,“Phylogeny of Bacteroides, Prevotella,and Porphyromonas spp. and related bacteria”,J.Bacteriol.(1994),176:725−732)。
【0211】
CLUSTAL Xバージョン1.81ソフトウェアを用いて、16S rRNA遺伝子配列に基づく系統樹分析を行った(Thompsom,J.D.ら,“CLUSTAL W:improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting,positions−specific gap penalties and weight matrix choice”,Nucleic Acids Res.(1994)22:4673−4680)。近隣結合法を用いて、系統樹を生成した(Saitou,N.&Nei,M.,“The neighbor−joining method:a new method for reconstructing phylogenetic trees.”,Mol.Biol.Evol.,(1987)4:406−425)。1000の複製物を用いて、ブートストラップ分析値を得た。図1は、O.デンティカニスB106単離体の系統樹分析の結果を示す。主な属(ポルフィロモナス属、バクテロイデス属、プレボテラ属、タネレラ属等)の配置は、以前公表されたシトファガ−フラボバクター−バクテロイデス(CFB)群の系統樹と一致する(Pasterら,1994;Sakamoto,M.ら,“Reclassification of Bacteroides forsythus(Tanner et al. 1986)as Tannerella forsythensis corrig.,gen.nov.,comb.nov.”,Int.J Syst.Evol.Microbiol.(2002)52:841−849;Shah,H.N.& Collins,D.,“Proposal for reclassification of Bacteroides asaccharolyticus,Bacteroides gingivalis,and Bacteroides endodontalis in a new genus,Porphyromonas.”,Int.J Syst.Bacteriol.(1998)38:128−131)。
【0212】
O.デンティカニスB106Tは、B.スプランチニクス(Werner,H.ら,“A new butyric acid−producing Bacteroides species:B.splanchnicus n.sp.”,Zentralbl.Bakteriol.(1975)231:133−144)、いくつかの口腔単離体、および多くの未培養株を含む、バクテロイデス属の外集団に分類される。O.デンティカニスB106およびB.スプランチニクスの分岐点での71.0%のブートストラップ信頼値は、これらの2つの生物が関連しているという中程度に高い度合いの確実性を示す。しかし、バクテロイデス属内にB.スプランチニクスを置くかどうかに関しては、歴史的に議論されてきている(Pasterら、1994;Shahら、1998)。Pasterらは、B.スプランチニクスが新規属に相当しうると示唆した。Shahらは、B.スプランチニクスが、ポルフィロモナス属のメンバーと多くの化学分類学的特性を共有することを示した。B.スプランチニクス/B.デンティカニスB106群の枝が、バクテロイデス属の枝よりもポルフィロモナス属の枝に近いため、我々のデータは、この仮説と一致する(図1)。
【0213】
O.デンティカニスの25のさらなるイヌ臨床単離体(表1)から、上述のD56プライマーおよびD57プライマーを用いて、16S rRNA遺伝子のおよそ580bpの領域をPCR増幅した。PCR産物を精製し、そして脱塩した。次いで、PCR産物のDNA配列を決定した。O.デンティカニス単離体由来の部分的16S rRNA配列(配列番号138〜162)はすべて、同一であるかまたは非常に保存された配列群として共にクラスター形成し、これらの群間の最大多様性は、分析した領域に渡って97%の同一性であった。図2は、O.デンティカニス単離体部分的16S rRNA遺伝子配列の系統樹分析の結果を示し;関連配列各群の代表的な単離体を分析のために選択した。この観察に基づいて、これらの単離体はすべて、同じ種の多様な株であると結論付けることが可能である。
【0214】
O.デンティカニスの臨床単離体をネコからも得た(表1)。D56プライマーおよびD57プライマーを用いたPCRによって、上述の16S rRNA遺伝子の同じおよそ580bp領域を、これらの単離体から増幅した。精製PCR産物から得たDNA配列(配列番号163〜168)を、イヌ単離体から得た配列と並列させた。並列の結果によって、ネコO.デンティカニス単離体が、イヌで見出されたものと同じ種の変動株であることが示される。
【0215】
O.デンティカニスB106のポルフィロモナス属に対する関係をさらに分析するため、縮重PCRプライマーD122(配列番号84)およびD123(配列番号85)(Invitrogen社)を用いて、fimA遺伝子をPCR増幅した(3つ組)。PCR産物を精製し、脱塩し、プールし、そして直接DNA配列分析に供した。FimAアミノ酸配列を用いた、米国バイオテクノロジー情報センターの非冗長ポリペプチド・データベースのBLAST−P(Altschulら、1990)検索によって、O.デンティカニスB106 FimAタンパク質が、ポルフィロモナス属のメンバー由来のFimAタンパク質に関連することが示された。図3は、多様なFimAタンパク質配列の系統樹的関係を示す。O.デンティカニスB106タンパク質およびポルフィロモナス属種のいくつかのI型フィムブリリン・タンパク質の間には、非常に強い関係が存在する(100%のブートストラップ値)。
【0216】
O.デンティカニスB106およびポルフィロモナス・グラエB43を、走査型電子顕微鏡検査に供して、細胞形態を決定した。簡潔には、修飾PYG培地中の36時間液体培養物を1800xgで遠心分離した。0.1Mリン酸緩衝液(pH7.3)中の3%EM等級グルタルアルデヒド(Polysciences,Inc.、ペンシルバニア州ワーリントン)と培地を交換し、そして4℃で1時間インキュベーションした。次いで、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.3)で2回、細胞を洗浄し、そして緩衝1%四酸化オスミウム(Polyscience,Inc.、ペンシルバニア州ワーリントン)中に、室温で1時間懸濁した。一連の段階的エタノール中で試料を脱水し、ヘキサメチルジシラザン中に15分間浸し、その後、1時間風乾することによって、最後の脱水を行った。アルミニウム・スタブ上に試料をマウントし、そしてPolaron SEM自動コーティング装置(Polaron Instruments,Inc.、ペンシルバニア州ハットフィールド)中、200Åの金でコーティングした。ISI、DS−130走査型電子顕微鏡(ISI,Inc.、日本・東京)を用いて、各試料を調べた。Noran 4485デジタルビーム制御インターフェース(Noran Instruments,Inc.、米国)を用いて、画像を捕捉した。図4は、P.グラエB43およびO.デンティカニスB106の走査型電子顕微鏡写真を示す。P.グラエB43の短い棒状の形態(平均長1.25μm)(図4A)は、ポルフィロモナス属のメンバーに典型的である。対照的に、O.デンティカニスB106は、紡錘状で端が先細りであり、そして平均細胞長は5.9μmであった(図4B)。O.デンティカニスB106の形態は、これらの増殖条件下では、タネレラ・フォルシテンシスのものに類似である(Tannerら、1986)。P.グラエおよびO.デンティカニスの間の形態学的相違は、O.デンティカニスがポルフィロモナス属の外に配置されることをさらに裏付ける。
【0217】
ポルフィロモナス属種の培養条件
ポルフィロモナス属種の標準的増殖培地(脳心臓注入液(BHI)および肉細切れ炭水化物(CMC)培地)は、動物産物を含有し、これはワクチン産生には受け入れられないため、これらの成分を含有しない増殖培地を模索した。BHIまたはCMCの増殖のものと同等の増殖を支持する能力に関して、ヘミンおよびビタミンKの添加を伴うおよび伴わない多様な培地組成物を試験した。PYG完全培地およびME完全培地はどちらも、P.グラエB43(PTA−3618)の増殖を、BHIのものと同等のレベルに支持した(図5)。PYG完全培地は、発酵中、高密度の培養を生じる能力があるため、この培地をP.グラエB43(PTA−3618)増殖培地として選択した。この培地は、以下の成分を含有する:3%フィトン(Becton Dickinson;メリーランド州コッキースビル)、0.3%酵母エキス(Becton Dickinson)、0.3%グルコース(Sigma社;ミズーリ州セントルイス)、0.05%チオグリコール酸ナトリウム(Becton Dickinson)、0.5%塩化ナトリウム(Sigma社)、5μg/mlヘミン(Sigma社)(オートクレーブ後に添加)、0.5μg/mlメナジオン(Sigma社)(オートクレーブ後に添加)、および0.2%重炭酸ナトリウム(Sigma社)、pH7.0。
【0218】
P.グラエB43(PTA−3618)を、ブルセラ血液寒天プレート(Anaerobe Systems)上、あるいは完全PYG培地またはBHI中、90%N、5%CO下、Bactron IV嫌気性チャンバー(Shel Labs;オレゴン州コーネリウス)中で、3〜5日間(プレート)または24〜48時間(液体培養物)、日常的に培養した。全細胞バクテリン調製物のため、5リットルのPYG完全培地を用いて、BioFlo 3000バイオリアクター中、P.グラエB43(PTA−3618)を培養した。オートクレーブ後、直ちに95〜99.5%Nおよび0.5〜5%COを散布することによって、容器中の培地を嫌気性にした。還元培地に0.02%のP.グラエB43(PTA−3618)ストックを植え付け、そして100rpmの攪拌速度で37℃で培養し、そしてNaOHを自動的に添加することによって、pHを7.0に維持した。培養中、容器に定期的にNおよびCO両方を散布した。36〜48時間後、2.0〜3.5のOD600で、細菌細胞がまだ対数増殖している間に、細菌細胞を収集した。
【0219】
マウスにおける臨床単離体の病原性試験
マウス歯周骨損失モデルにおいて、病原性に関して、9つの単離体(P.グラエB43、P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114)を試験した。体重が14〜15グラムと概算される、3週齢の年齢マッチさせた雄Balb/c CyJマウス(Jackson Laboratories;メイン州バーハーバー)をこの研究に利用した。動物を陽圧下のバリアケージ装置中で飼育した。実験全体を通じて、種に標準的な食物ペレット、および水を任意に提供した。利用したベッディングは、歯肉組織における固着(impaction)を最小限にするため、顆粒Bed O’Cobbsであった。受け入れ後、すべての動物を5〜7日間、慣れさせた。競合口腔フローラを減少させるため、スルファメトキサゾール(sulfamathoxazole)およびトリメトプリムの混合物(10ml飲用水;それぞれ、およそ2mgおよび0.4mg/ml)を10日間、動物に与え、その後、5日間の流出期間を置いた。各マウスの尾静脈血から、血清試料を採取した。強制経口投与によって、1%カルボキシメチルセルロース中、適切な細菌株およそ1x1010cfu/mlの0.5ml懸濁物で動物を感染させた。さらなる滴を口腔に入れた。この感染をさらに2回反復して全部で3回行った(月曜日、水曜日、および金曜日)。
【0220】
実験第1日を、最初の感染後の火曜日と定義した。すべての動物を第2日に屠殺した。感染後の血清を収集し、微生物試料も収集した。各マウスの顎の肉を剥がし(deflesh)、染色し、そして水平方向の骨損失に関して、顕微鏡を用いてスコア付けした。スコア付けを3回反復して、実験者のエラーを減少させた。平均骨損失を、平均骨損失/部位/顎mmとして表した。SPSS Science Inc.(イリノイ州シカゴ)から入手可能なSystat(バージョン9)、SigmaStat(バージョン2)、およびSigmaPlot(バージョン2000)を用いて、生じたデータの統計分析を行った。表6は、上位9つの単離体の数値結果を示す。
【0221】
表6.マウス歯周病病原性試験の要約
【0222】
【表6】

【0223】
これらの各々は、このモデルにおいて、統計的に有意な骨損失を生じた。
図6は、純骨損失をグラフで示す。平均歯槽骨レベル(セメントエナメル接合部−歯槽骨稜)をmmで14の上顎部位から得て、そし各顎に関する平均値を決定した。各実験群に関して、各顎の平均値を合計して、そしてその群の動物総数で割ることによって、群平均を得た。
【0224】
図7は、純骨損失の比較を示す。平均歯槽骨レベル(セメントエナメル接合部−歯槽骨稜)をmmで14の上顎部位から得て、そし各顎に関する平均値を決定した。各実験群に関して、各顎の平均値を合計して、そしてその群の動物総数で割ることによって、群平均を得た。各実験群から偽感染平均値を引くことによって、純骨損失を決定した。このデータを、100%と設定した陽性対照群(P.ジンジバリス53977)の割合として示す。P.ジンジバリスW50は、この動物モデルでは、病原性が減少した、線毛が少ない(poorly fimbrinated)株である。
【0225】
これらのデータによって、以下の臨床単離体が、歯周病のマウスモデルにおいて、高レベルの骨損失を生じることが可能であることが示される:P.グラエB43(PTA−3618)、P.グラエB69(PTA−3621)、P.カンジンジバリスB98(PTA−3623)、およびO.デンティカニスB106(PTA−3625)。以下の臨床単離体は、マウス歯周病モデルにおいて、穏やかな骨損失を生じた:P.カンスルシB46(PTA−3619)、P.サリボサB104(PTA−3624)、およびP.エンドドンタリスB114(PTA−3626)。以下の臨床単離体は、マウス歯周病モデルにおいて、最小限の骨損失を生じた:P.シルクムデンタリアB52(PTA−3620)およびP.シルクムデンタリアB97(PTA−3622)。臨床単離体間で多様な量の骨損失が観察されたが、各場合で、観察された骨損失の量が、偽感染マウスで観察されたものより、はるかに高かったことに注目しなければならない。これらのデータに基づいて、上位9つの臨床単離体各々が、単独であるか、または他の細菌と協調するかいずれかで、歯周病を引き起こすことが可能であると結論付け可能である。
【0226】
細菌細胞およびゲノムDNAの調製
細菌種をBHIまたは完全PYG中、37℃で48時間、嫌気性培養した。1〜3mlの培養からの細胞を、遠心分離によってペレットにして、等量の嫌気性PBS中で1回洗浄し、再度遠心分離し、そして1/10体積の嫌気性PBSに再懸濁した。
【0227】
BHIまたは完全PYG中、37℃で48時間、嫌気性培養した細菌種の5ml培養物から、ゲノムDNAを精製した。すべてのゲノムDNA調製物に関して、WizardゲノムDNA抽出キット(Promega社)を利用した。
【0228】
臨床単離体からの線毛遺伝子のクローニング
以下のPCRプライマー:D0067(順方向;配列番号6)、D0078(順方向;配列番号8)、D0097(順方向;配列番号9)、D0068(逆方向;配列番号7)およびD0098(逆方向;配列番号10)の組み合わせを用いて、上位10の臨床単離体から単離したゲノムDNAから、fimA遺伝子をPCR増幅した。1xPCR緩衝液(Life Technologies)、1.0mM MgCl、各1.25μMのプライマー、各300Mのデオキシ−NTP、および2.5U白金Pfx DNAポリメラーゼ(Life Technologies)を含有する50μl反応体積中で、PCRを行った。以下のPCR周期条件を利用した:94℃2分間の変性工程;94℃40秒間の変性、60℃40秒間のアニーリング、および72℃1.5分間の伸長の30周期;72℃5分間の最終伸長工程;並びに4℃への最終冷却工程。すべてのPCR増幅に、GeneAmp 9700サーモサイクラー(Perkin Elmer Applied Biosystems;カリフォルニア州フォスターシティ)を利用した。1.2% E−ゲル(Invitrogen;カリフォルニア州カールスバッド)上で増幅産物を視覚化した。
【0229】
10単位のKlenTaqポリメラーゼ(Ab Peptides,Inc.;ミズーリ州セントルイス)を72℃で5分間用いて、PCR産物にAテールを付加した。製造者のプロトコルを用いて、生じた産物を直ちに、pCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen)にT−テール・クローニングして、そして大腸菌Top10F’(Novagen;ウィスコンシン州マディソン)に形質転換した。正しい挿入物DNAを含む組換えプラスミドを宿する形質転換体を、コロニーPCR、制限酵素消化、およびABI自動化DNA配列決定装置(Lark Technologies,Inc.)上のDyeDeoxy終結反応を用いたDNA配列分析の組み合わせによって同定した。合成オリゴヌクレオチド・プライマー(配列番号6、7、8、11〜42)を用いて、二本鎖DNA配列を得た。
【0230】
P.グラエB43FimA遺伝子の発現プラスミドへのクローニング
高レベルのタンパク質発現を得る目的のため、P.グラエB43(PTA−3618)fimA遺伝子を、pBAD/HisA発現ベクター(Invitrogen)にクローニングした。ゲノムDNA抽出キット(Promega社)を用いて、BHI中、37℃で2日間、嫌気性にインキュベーションしたP.グラエB43の5ml培養物から、ゲノムDNAを精製した。3つ組で、プライマーD0097およびD0098(配列番号9および配列番号10)を用いて、fimA遺伝子をPCR増幅した。1xPCR緩衝液(Life Technologies)、50ng P.グラエB43ゲノムDNA、1.0mM MgCl、各1.25μMプライマー、各300μMデオキシ−NTP、および2.5U白金Pfx DNAポリメラーゼ(Life Technologies)を含有する50μl反応体積中でPCRを行った。
【0231】
以下のPCR周期条件を利用した:94℃2分間の変性工程;94℃40秒間の変性、58℃40秒間のアニーリング、および72℃1.5分間の伸長の5周期;94℃40秒間の変性、65℃40秒間のアニーリング、および72℃1.5分間の伸長の30周期;72℃5分間の最終伸長工程;並びに4℃への最終冷却工程。すべてのPCR増幅に、GeneAmp 9700サーモサイクラー(Perkin Elmer Applied Biosystems)を利用した。PCR調製キット(Promega社)を用いて、PCR産物を精製した。精製したPCR産物およびpBAD/HisAを、37℃で3時間、HindIIIおよびXhoIで二重消化した。消化の途中で、5単位のエビ(shrimp)・アルカリ・ホスファターゼ(SAP)(Amersham Pharmacia Biotech,Inc.;ニュージャージー州ピスカタウェイ)をベクター消化に加えた。DNA Clean−Upキット(Promega社)を用いて、消化したDNAを精製した。1xT4 DNAリガーゼ緩衝液の存在下、T4 DNAリガーゼ酵素(Life Technologies)を用い、HindIII/XhoIで消化した精製PCR産物を、HindIII/XhoIで消化してSAP処理したpBAD/HisAに、16℃で18時間、連結した。生じた連結混合物の一部を、コンピテント大腸菌Top10F’細胞(Novagen)に形質転換した。組換えプラスミド、pBAD:B43fimA4が、正しい配向でfimA遺伝子を含有することが見出された。生じた組換えFimAは、末端に、ベクターがコードする配列(MGGSHHHHHHGMASMTGGQMGRDLYDDDDKDRWGSELEICSQYHMGI、配列番号135)を含有し、アスパラギン−20で始まるFimAの成熟部分が続く。さらなるタンパク質発現分析のため、このプラスミドを、コンピテント大腸菌BL21細胞(Novagen)に形質転換した。
【0232】
組換えFimAタンパク質の発現および精製
大腸菌BL21/pBAD:B43fimA4の凍結作業ストックを融解し、100μg/mlアンピシリンを含有するルリア・ブロス(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)中に1:5000希釈で植え付け、そして5リットル作業体積のBioFlo3000バイオリアクター(New Brunswick Scientific;ニュージャージー州エジソン)中、37℃、100rpm攪拌速度で、A625が2.5〜3.5になるまで増殖させた。次いで、L−アラビノースを培養に添加して最終濃度0.1%にして、FimA発現を誘導した。さらに3時間、培養物をインキュベーションした。抗Express血清(Invitrogen)を用いて、組換えFimAの発現をSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析によって検出した(図8)。組換えFimAタンパク質は、45kDaの予測される分子量を有した。
【0233】
5リットル発酵から、組換えFimAを発現する大腸菌BL21形質転換体の湿細胞を、遠心分離によって採取して、そしてリン酸緩衝生理食塩水中に再懸濁した。細胞を機械的に溶解した。遠心分離後、ペレットを廃棄した。上清をNi2+アフィニティーカラムに通し、そしてイミダゾール勾配を用いて溶出させた。組換えタンパク質を含有する分画をプールし、透析してイミダゾールを取り除き、そして0.2μmフィルターを用いてフィルター滅菌した。
【0234】
臨床単離体からのoprF遺伝子のクローニング
P.ジンジバリス株W50 oprF相同体、遺伝子PG32(Genbank寄託番号AF175714)の配列に基づいて、オリゴヌクレオチド・プライマーD0086(配列番号43)、D0087(配列番号44)、およびKWK−Pg−03(配列番号45)を設計し、そして合成した(Life Technologies)。PCRのため、プライマーD0086(配列番号43)を、D0087(配列番号44)またはKWK−Pg−03(配列番号45)のいずれかと組み合わせて、1xPC2緩衝液(Ab Peptides)、各200μM dNTP、7.5U Klen Taq1(Ab Peptides)および0.15UクローニングPfu(Stratagene;カリフォルニア州ラホヤ)熱安定性ポリメラーゼ中、50μl最終試料体積で用いた。P.グラエB43、P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114由来の洗浄細胞懸濁物または精製ゲノムDNAのいずれかを、テンプレートとして用いて、3つ組で、反応を行った。増幅を以下のとおりに行った:変性(94℃、9分間);30〜40周期の変性(94℃、30秒間)、アニーリング(55〜60℃、30秒間)、および重合(72℃、1.5分間);その後、72℃7分間の最終伸長。
【0235】
P.カンジンジバリスB98からoprF相同体をポリメラーゼ連鎖増幅するため、プライマーKWK−Ps−04b(配列番号81)を、KWK−Ps−06b(配列番号83)と組み合わせて用いた。P.サリボサB104から相同体を増幅するため、プライマーKWK−Ps−04b(配列番号81)を、KWK−Ps−05b(配列番号82)と組み合わせて用いた。O.デンティカニスB106から遺伝子を増幅するため、プライマーKWK−Ps−02(配列番号79)を、KWK−Ps−03(配列番号80)と組み合わせて用いた。株、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、およびO.デンティカニスB106由来の精製した染色体DNAをテンプレートとして用いて、3つ組で反応を行った。増幅を以下のとおりに行った:変性(94℃、9分間);30〜35周期の変性(94℃、30秒間)、アニーリング(61〜72℃、30秒間)、および重合(72℃、1.5分間);この後に、72℃7分間の最終伸長が続いた。
【0236】
1.0%アガロースゲル(Sigma)上で分離することによって、PCR増幅遺伝子産物を視覚化した。QIAquickTM PCR精製キット(Qiagen;カリフォルニア州バレンシア)を用いて、PCR産物を精製し、そして3つ組試料の各セットをプールした。PCR増幅および続くクローニング工程の間に生じる突然変異によって配列アーチファクトが導入されるのを回避するために、次いで、これらの断片を直接配列決定した。次いで、プールした混合物を、ABI自動化DNA配列決定装置(Lark Technologies)上、DyeDeoxy終結反応を用いた直接配列分析に供した。合成オリゴヌクレオチド・プライマー(配列番号46〜75)を用いて、増幅産物の両方のDNA鎖を配列決定した。
【0237】
P.グラエB43、P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114由来のOprF相同体をコードするヌクレオチド配列を、配列番号111〜119に示す。各遺伝子のPCR増幅に用いた5’プライマーおよび3’プライマーに相当する配列は、それぞれの株各々の遺伝子の実際の配列に相当しない可能性があるため、こうした配列を取り除いた。配列番号111〜119にコードされるORFを、それぞれ、配列番号120〜128に示す。コードされるORFの各々に関して、5’プライマーにコードされるものが除去された場合であっても、アミノ末端配列は、原核生物シグナル配列の特徴をなお維持した(von Heijne,1985,J.Mol.Biol.184:99−105;Nielsen,H.,Engelbrecht,J.,Brunak,S.,およびvon Heijne,G.,1997 Protein Engineering,10:1−6)。基本局所並列検索ツール(BLAST)プログラムを用いて、存在するヌクレオチドおよびタンパク質データベースに対して、各ORFを比較した(Altschul,S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W.,Lipman,D.J.,1990,J.Mol.Biol. 215:403−410)。各々、最大の相同性を共有するエントリーは、P.ジンジバリス由来のPG32であった。
【0238】
P.グラエB43 oprF遺伝子の発現プラスミドへのクローニング
組換えタンパク質を発現する目的で、OprFをコードする遺伝子を、シグナルペプチドをコードする配列と一緒にクローニングした。オリゴヌクレオチド・プライマーKWK−Pg−06(配列番号76)およびKWK−Pg−03(配列番号45)を用いて、P.グラエB43からOprFを増幅した。ポリメラーゼ連鎖増幅のため、テンプレートとしての染色体DNA、1xPC2緩衝液、各200μM dNTP、各50pMolプライマー、7.5U Klen Taq1および0.15UクローニングPfu熱安定性ポリメラーゼを含有する、2つ組50μl反応物をセットアップした。増幅を以下のとおりに行った:変性(94℃、9分間);30周期の変性(94℃、30秒間)、アニーリング(60℃、30秒間)、および重合(72℃、1.5分間);その後、72℃7分間の最終伸長。増幅後、試料を精製し(QIAquickTM PCR精製キット)、そしてプールした。精製したPCR産物を、pBAD−TOPOおよびpBAD/Thio−TOPO(Invitrogen)の両方のTAクローニング部位に直接クローニングした。リガンド産物(ligand products)を最大効率大腸菌DH5α細胞に形質転換した。pBAD−TOPO:OprFから発現される、コードタンパク質の予測されるアミノ末端配列は、ベクターにコードされる配列MGSGSGDDDDKLALM(配列番号136)からなり、そのすぐ後に、OprFのグルタミン−13から始まる配列(配列番号120)が続く。適切なプラスミドを含有するクローンを同定し、そしてQIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen)を用いて、小規模ブロス培養物から、精製したプラスミドを単離した。このプラスミドを大腸菌BL21細胞(Novagen)に形質転換し、そして適切なプラスミドを含有するクローンを同定した。
【0239】
pBAD/Thio−TOPO:oprFから発現されるコード融合タンパク質の予測されるアミノ末端配列は、チオレドキシン・タンパク質および14アミノ酸残基のリンカーからなり、そのすぐ後に、OprFのグルタミン−13から始まる配列(配列番号120)が続く。適切なプラスミドを含有するクローンを同定し、そしてQIAprep Spin Miniprepキットを用いて、小規模ブロス培養物から、精製したプラスミドを単離した。このプラスミドを大腸菌BL21細胞に形質転換し、そして適切なプラスミドを含有するクローンを同定した。
【0240】
シグナルペプチドをコードする配列を欠くoprF遺伝子もまた、2つの異なるλ発現プラスミドにクローニングした。これらのプラスミドはどちらも、温度感受性λリプレッサーcl857をコードし、該リプレッサーは、30℃でλプロモーターからの発現を阻害する。42℃で、リプレッサーは不活化され、そしてλプロモーターからの発現が可能になり、高レベルの転写および翻訳を生じる。これらのベクターにクローニングするため、オリゴヌクレオチド・プライマーKWK−Pgu−14(配列番号77)およびKWK−Pgu−15(配列番号78)を用いて、P.グラエB43からoprFを増幅した。ポリメラーゼ連鎖増幅のため、テンプレートとしての洗浄P.グラエB43細胞、1xPC2緩衝液、各200μM dNTP、各50pMolプライマー、7.5U Klen Taq1および0.15UクローニングPfu熱安定性ポリメラーゼを含有する、2つ組50μl反応物をセットアップした。増幅を以下のとおりに行った:変性(94℃、9分間);45周期の変性(94℃、30秒間)、アニーリング(55℃、30秒間)、および重合(72℃、1.5分間);その後、72℃7分間の最終伸長。増幅後、試料をプールし、そして制限酵素で消化して、やはり同じ酵素を用いて直線化しておいたプラスミドと適合するオーバーハングを生成した。制限消化後、PCR断片およびプラスミドを精製し(QIAquickTM PCR精製キット;Qiagen社)、連結し、そして大腸菌DH5α細胞(Novagen)に形質転換した。予測されるアミノ末端は、ベクターにコードされる配列MGTTTTTTSLHM(配列番号137)からなり、そのすぐ後に、OprFのグルタミン−13から始まる配列(配列番号120)が続く。第二のプラスミドから発現されるタンパク質は、ベクターにコードされるMetのみに続く、OprFのグルタミン−13(配列番号120)からなるであろう。適切なプラスミドを含有するクローンを同定し、そしてQIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen社)を用いて、小規模ブロス培養物から、プラスミドを単離した。これらのプラスミドを大腸菌BL21細胞に形質転換し、そして適切なプラスミドを含有する別個のクローンを同定した。
【0241】
組換えOprFタンパク質の発現および精製
組換えOprF(N末端で配列番号137に融合)を発現する大腸菌BL21細胞を発現研究に利用した。凍結ストックを融解し、50μg/mlカナマイシン硫酸を含有する2xYT培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5NaCl)中に1:5000希釈で植え付け、そして5リットル作業体積のBioFlo3000バイオリアクター(New Brunswick Scientific;ニュージャージー州エジソン)中、29℃、100rpm攪拌速度で、A625が2.5〜3.5になるまで増殖させた。次いで、培養を42℃にシフトして、OprF発現を誘導した。さらに3時間、培養物をインキュベーションした。多様な時点でアリコットを取り除き、遠心分離し、そして還元試料緩衝液に再懸濁した。すべての試料を10%NuPAGEゲル(Invitrogen、米国)上で分析した(図9)。
【0242】
5リットル発酵から、組換えOprFを発現する大腸菌BL21形質転換体の湿細胞を、遠心分離によって採取して、そしてリン酸緩衝生理食塩水中に再懸濁した。細胞を機械的に溶解した。遠心分離後、ペレットを廃棄した。上清をイオン交換カラムに通し、そしてNaCl勾配を用いて溶出させた。組換えタンパク質を含有する分画をプールし、透析してNaClを取り除き、そして0.2μmフィルターを用いてフィルター滅菌した。
【0243】
全細胞バクテリン調製物
P.グラエB43の5リットル・バッチを、上述のように発酵装置中で増殖させ、そして1リットル部分に分けた。各1リットル分画中の細胞(4.4x1012総P.グラエB43細胞)を以下の処理によって不活化した:0.4%ホルマリンに23℃で24時間曝露、pH8.5の10mM二元性エチレンイミン(BEI)に37℃で48時間曝露、2日連続で60℃で30分間加熱、および48時間空気に曝露。BEI処理後、50mMチオ硫酸ナトリウムで処理することによって、BEIを不活化した。細胞を遠心分離によって収集した。生じた細胞ペレットを220ml PBS中に再懸濁し、1mlあたり2x1010細胞の最終濃度を生じた。各不活化細胞7mlを7mlのMPL+TDMアジュバント(Sigma社)と混合して、1mlあたり、最終濃度1.0x1010細胞を生じた。
【0244】
他の上位8つの臨床単離体(P.カンスルシB46、P.シルクムデンタリアB52、P.グラエB69、P.シルクムデンタリアB97、P.カンジンジバリスB98、P.サリボサB104、O.デンティカニスB106、およびP.エンドドンタリスB114)または他の色素性嫌気性細菌の全細胞バクテリン調製物を、同一の方式で調製することも可能である。
【0245】
マウスにおける相同ワクチン有効性
相同ワクチン有効性研究において、3週間間隔をあけて、MPL+TDMアジュバント中、上述の不活化P.グラエB43細胞の各0.2mlを2回注射して、マウスを免疫した。先に記載するように、追加免疫2週間後、これらのマウスを、P.グラエB43に感染させた。感染42日後、マウスを屠殺し、そして先に記載するようにプロセシングした。表7は、骨損失測定の数値結果を示す。
【0246】
表7.マウス相同ワクチン有効性研究結果
【0247】
【表7−1】

【0248】
【表7−2】

【0249】
【表7−3】

【0250】
(a)陽性対照群としてのB群に基づいて計算したパーセント。
(b)陽性対照群としてのC群に基づいて計算したパーセント。
(c)NA=該当なし。

図10、11、および12は、これらの結果をグラフで示す。図11は、対照実験に関する骨損失パーセントを示す。ホルマリン不活化P.ジンジバリス53977、およびフロイントの完全/不完全またはMPL+TDLアジュバントのいずれかを含有するワクチンは、P.ジンジバリス53977の感染によって誘導される骨損失を、それぞれおよそ32%および43%減少させた。図12は、試験実験に関する骨損失パーセントを示す。ホルマリン、熱、または空気のいずれかで不活化したP.グラエB43およびMPL+TDMアジュバントを含有するワクチンは、P.グラエB43感染によって誘導される骨損失を、それぞれおよそ45%、35%、および75%減少させた。これらのデータに基づいて、ホルマリン、空気、および熱不活化P.グラエB43ワクチンは、この重感染モデルにおいて誘導される骨損失を減少させる能力が有効であった。このデータを臨床設定に当てはめると、これらの3つのワクチンは、歯周病の予防的防止に有効である可能性があり、そして歯周病の療法治療に有効であることをよく立証することも可能である。
【0251】
マウスにおける異種ワクチン有効性研究
異種ワクチン有効性研究において、3週間間隔をあけて、MPL+TDMアジュバント中、ホルマリン不活化P.グラエB43、またはホルマリン不活化P.サリボサB104およびO.デンティカニスB106細胞いずれかの各0.2mlを2回注射して、マウスを免疫した。先に記載するように、追加免疫2週間後、これらのマウスを、P.グラエB43、P.グラエB69、P.サリボサB104、またはO.デンティカニスB106いずれかに感染させた。感染42日後、マウスを屠殺し、そして先に記載するようにプロセシングした。表8は、骨損失測定の数値結果を示す。
【0252】
表8.マウス異種ワクチン有効性研究結果
【0253】
【表8】

【0254】
P.グラエB43感染マウスに関する骨損失パーセントを計算する。
P.グラエB69感染マウスに関する骨損失パーセントを計算する。
P.サリボサB104感染マウスに関する骨損失パーセントを計算する。
【0255】
O.デンティカニスB106感染マウスに関する骨損失パーセントを計算する。
NA、該当なし。

図13、14、15、16および17は、これらの結果をグラフで示す。図9は、これらの実験に関する純骨損失を示す。図14は、P.グラエB43感染群に関する骨損失パーセントを示す。ホルマリン不活化P.グラエB43およびMPL+TDMアジュバントは、P.グラエB43感染によって誘導される骨損失を、およそ84%減少させた。図15は、P.グラエB69感染群に関する骨損失パーセントを示す。MPL+TDMアジュバントを含有するホルマリン不活化P.グラエB43およびホルマリン不活化P.サリボサB104/O.デンティカニスB106ワクチンは、P.グラエB69感染によって誘導される骨損失を、それぞれおよそ40%および49%減少させた。図16は、P.サリボサB104感染群に関する骨損失パーセントを示す。ホルマリン不活化P.グラエB43およびMPL+TDMアジュバントは、P.サリボサB104によって誘導される骨損失を、およそ65%減少させた。図17は、O.デンティカニスB106感染群に関する骨損失パーセントを示す。MPL+TDMアジュバントを含むホルマリン不活化P.グラエB43は、O.デンティカニスB106の曝露に対して、交差防御に失敗した。これらのデータに基づいて、MPL+TDMをアジュバントとするホルマリン不活化P.グラエB43ワクチンは、相同体曝露からの防御だけでなく、P.グラエB69での異種曝露からの防御も提供可能であると結論付け可能であった。さらに、P.グラエB43ワクチンがP.サリボサB104曝露に対して防御したように、防御は、2つのポルフィロモナス属種間でも観察された。このデータを臨床設定に当てはめると、多価ワクチンは、歯周病の予防的防止に有効である可能性があり、そして歯周病の療法治療に有効であることをよく立証することも可能である。
【0256】
組換えFimAおよびOprFマウス血清学的研究
サブユニット・ワクチン血清学研究において、3週間間隔をあけて、QuilA/コレステロール・アジュバント中、組換え発現させて精製したP.グラエB43 FimA、または組換え発現させて精製したP.グラエB43 OprFいずれかを各0.2ml、2回注射して、マウスを免疫した。第一のワクチン接種前、および追加免疫の2週間後、マウスを出血させた。表9は、数値結果を示し、一方、図18および19は、結果をグラフで示す。
【0257】
表9.マウス・サブユニット・ワクチン血清学研究
【0258】
【表9】

【0259】
(実施例2)
イヌ曝露モデルにおける歯周病原性
この研究には、成体歯牙状態の10頭のビーグル犬を用いた。動物を麻酔し、そして高速ハンドピース(Henry Schein Inc.;ニューヨーク州メルビル)を備えたSchein Ultima 2000歯科装置中、西洋ナシ型歯科バー(burr)(Midwest Dental Products Corp;イリノイ州デスプレインズ)を用いて、下顎小臼歯および第一臼歯の根管に、アクセスを作製した。獣医用有刺根管針(21mm、サイズ#5;Roydent Dental Products;テネシー州ジョンソンシティ)を、根管の深さに近い深さまで根管内に通すことによって、根管へのアクセスがあることを確認した。有刺根管針を反復して通過させて、結合組織、血管および神経組織を取り除いた。出血は微量であり;根管中に入れた無菌ペーパーポイント(Henry Schein Inc.)を用いて止血を達成した。この時点で、根管の掘削および排出中、根管のいかなる不都合な汚染物質も取り除かれていることを確実にすることが重要である。したがって、根管を10%の漂白剤溶液で洗い流した。修復物配置に適した表面を生成するため、40%硫酸ゲル(Scotchbond Etching Gel、3M;ミネソタ州セントポール)を用いて、アクセスポート周囲のエナメルをエッチングした。残った漂白剤溶液または酸ゲルによる、曝露成分の生存度に対するいかなる影響も妨げるため、歯内針(27ga.、Dentsply Pharmaceutical;ペンシルバニア州ヨーク)および多量の無菌生理食塩水を用いて、中から外に根管を洗い流した。無菌ペーパーポイントを用いて、アクセス領域および根管を乾燥させた。
【0260】
ブルセラ血液寒天(Anaerobe Systems;カリフォルニア州モーガンヒル)上でP.グラエ株B69を増殖させ、そして嫌気性環境(5%H、5%CO、90%N)中、37℃でインキュベーションすることによって、曝露成分を調製した。細胞を採取して、そして無菌SSYG培地中に再懸濁した。次いで、およそ7.5x10コロニー形成単位(CFU)の曝露用量を、選択した歯の暴露された根管腔に、歯内針を用いて導入した。5頭の動物に曝露成分(T01)を与え、一方、他の5頭には、無菌SSYG培地からなる偽曝露(T02)を与えた。次いで、ガラス・イオノマーおよび光重合型歯科混合修復剤(Revolution 3;3M)の組み合わせを用いてアクセスポートを封印した。
【0261】
歯を取り巻く歯周骨密度の変化に基づいて、曝露生物の歯周病原性を決定した。研究第0週、第3週、第6週、第9週および第12週に、Schick Computed Dental Radiography(CDR(登録商標))センサーおよびソフトウェアを用いて、デジタルX線写真撮影のピクセル強度を測定することによって、この評価を行った。各動物において、6〜8本の歯のX線写真を撮影した。ベースライン値を得るため、処置直前にX線写真を撮影した。曝露に続いて、3週ごとに曝露後12週間、X線写真を撮影した。2つの異なる方法を介して、X線写真を分析した。最初の方法は、歯科X線写真の分析に関して訓練された獣医が、X線写真を主観的に評価することからなった。簡潔には、これは、訓練された観察者がX線写真を調べ、異常に注目し、そして各イヌの異常の度合いを視覚的アナログスケール上に記録することからなった。第二に、X線写真ソフトウェア内の面積測定ツールを用いて、曝露後0週、6週、および12週に撮影したX線写真で明らかな罹患骨の面積を測定した。これは、Schick CDRソフトウェア内の直線測定ツールを用いて、X線写真上の可視病変のおおよその直径の境界を定めることからなった。生じた距離から、病変のおよその面積を決定した。各イヌに関して、これらの面積を総計して、そして表にした。
【0262】
両方の方法を用いてX線写真を分析することによって、T01群は、T02群より多くの歯周骨を失うことが示唆された(図20)。この研究から、実行可能な曝露モデルが開発されたと結論付けた。しかし、2次元測定(X線写真)に基づいて、3次元領域(歯周骨)で生じる変化を定量化することは困難であるため、改善された定量法が追求されるであろう。
【0263】
(実施例3)
イヌ曝露モデルにおける三価ワクチン有効性評価
モデル開発後、イヌにおいて研究を行って、三価ワクチン調製物の有効性を試験した。三価バクテリンは、用量あたり、各50μgのQuilAおよびコレステロールをアジュバントとする、ホルマリン不活性化P.グラエ(B43)、P.サリボサ(B104)、およびO.デンティカニス(B106)を含有した。およそ1x1010CFU/ワクチン用量の濃度で、各バクテリン株を集めた。この研究では、成体歯牙状態の8頭の動物3群を用いた。第1群(T01)のイヌに1mlの三価ワクチンを筋内(IM)ワクチン接種した。第2群(T02)および第3群(T03)には、1mlの無菌生理食塩水を偽ワクチン接種した。すべてのイヌに、投与間を3週間間隔として3回、筋内(IM)投与した。最終投与の3週間後、動物を上述のように麻酔し、そして根成分の摘出後、下顎小臼歯および第一臼歯の根管に、曝露成分を導入した。T01群およびT02群のイヌを、実施例1に記載するように調製した、1x1010CFUの異種P.グラエ株(B69)に曝露した。処置の影響を測定する目的で、T03群のイヌを、無菌培地に曝露した。
【0264】
Heliodont歯科X線写真装置、Schick(登録商標)CDR(コンピュータデジタルX線写真)捕捉系、および標準的技術を用いて、曝露後3週、6週、9週、および12週に、X線写真を撮影した。この研究のため、デジタルX線写真を得たら、計測回転技術を持つ、プラグインTurboReg(登録商標)を用いて、ImageJ(v1.28、NIH;メリーランド州ベセスダ)を通じて、各イヌの連続画像をまず、互いに対して登録した。次いで、三次多項式関数の外部グレー・スケールを用いて、登録した画像セットを較正した。次いで、歯および空気を除いて、処置した歯の周囲の骨領域の輪郭を描き、そして各画像に関して、その領域の平均密度を記録した。こうして、歯根周囲の骨の「白さ」を表す数値が客観的に得られ、そして分析に利用可能になった。この数値を「骨反応性スコア」と呼び、そしてこれは平均骨密度の代用物である。
【0265】
この研究の結果を図21に示す。曝露に続いて、曝露後12週まで、T02群の動物に関する平均骨スコアは減少し、またはより白くなり、第12週で曝露前レベルに戻った。T01群およびT03群の平均骨反応性スコアは、最初に減少し、次いで、曝露後12週まで正常値近くまで回復したようであり、12週を過ぎると多様になった。T03群の処置対照は白くなり、一方、T01群のワクチン接種した動物は、曝露前レベルに似た平均値を維持した。したがって、ワクチン投与されたイヌは、歯内曝露に直面したとき、ワクチン未接種のイヌよりも、より迅速に骨密度を回復可能であった。さらに、観察点各々で収集した血清の分析によって、ワクチンを投与された動物が、ワクチン株に対して高い抗体力価を生じ、そして曝露株に対して、増加した抗体交差反応性を有することが示された(データ未提示)。
【0266】
骨感染の場合、より黒くなるのがより直感的な方向であるが、それとは対照的に、X線写真は、曝露後、より白くなった。骨は、二重の様式で炎症および感染に反応して、骨マトリックスを失うとともに、広がる感染を「囲い込む(wall off)」ために、周囲の骨が増加する。溶解−硬化病変の混合は、いくつかの骨感染で見られるものに典型的であるが、1)病原体の病原性、2)動物の年齢、3)動物の遺伝学、および4)炎症の扇動に関連する外傷の量に影響される。この研究に用いた動物は若く(10〜14ヶ月齢)、そして曝露処置に関連する歯および周囲の骨に対して、重大な外傷があった。これらの要因は、骨が感染および炎症にどのように反応するかに関して知られていることを考慮した際、周囲の骨の密度がなぜ増加したかを説明することも可能である。
【0267】
(実施例4)
イヌ曝露モデルにおけるワクチン有効性
このワクチン有効性研究は、実施例3に記載するものと設計が類似であった。各処置群は10頭の動物を含有した。T01群のイヌにワクチン接種して、そして曝露し;T02群には、曝露前に偽ワクチン接種し、そしてT03群には偽ワクチン接種して、そして偽曝露した。各ワクチンは、用量あたり各株1x10 CFUの濃度で、ホルマリン不活化P.グラエ株B43、P.サリボサ株B104、およびO.デンティカニス株B106を含有した。ワクチン接種スケジュールは、実施例3に示すものと同一であった。曝露接種物は、第三のワクチン接種の3週間後に投与する、P.グラエ株B69であった。X線写真を、やはり3週間間隔で撮影したが、曝露後9週までのみであり、そして実施例2に記載するのと類似の方式で分析した。図22は、骨反応性分析結果を示す。
【0268】
この研究において、動物は曝露処置に反応して、平均骨反応性スコアが増加した。これは、X線写真が骨密度の減少に対応して、より黒くなることを意味する(図23)。X線写真は、T01群およびT02群の両方で、重大な病変を示したが、ワクチン接種していない動物の骨は、ワクチン接種した動物の骨よりも、全体に、はるかに密度が低かった。第9週、T02群のワクチン接種していないイヌの平均骨反応性スコアは、ワクチン接種したT01群と有意に異なった(p=0.05)。この研究のイヌは、実施例2のものより一様に年を取っており、そして実験者の技量は、はるかに改善されていた。これらの要因が、骨感染に関連するものにより典型的な反応、すなわち骨密度減少に貢献したと仮定される。したがって、イヌ歯周炎の歯内モデルは、歯周炎を研究するための、新規でそして有用なツールである。該モデルは、ワクチン評価に関連するワクチン接種/曝露研究に価値があるだけでなく、抗微生物および局所療法研究で使用することも可能である。
【0269】
(実施例5)
ワクチンに対する全身反応性および局所反応性の評価
イヌに投与した、他のワクチンと併用した三価ワクチンに対する全身反応および局所組織反応の評価に取り掛かった。研究開始時におよそ6週齢の5頭のイヌ2群の、6週齢、9週齢、および12週齢時に、IMワクチン接種した。各ワクチン接種前に、血液試料を収集した。各ワクチン接種1週間後、全身反応および局所反応に関して、すべてのイヌを毎日調べた。これらの日にはまた、体温を測定し、そして記録した。T01群に、総抗原3x10CFUの濃度で、三価バクテリン(実施例3および4に記載するように調製)の組み合わせであり、そして用量あたり各50μgのQuilAおよびコレステロールをアジュバントとし、そして以下の修飾生ウイルスおよび死ウイルス構成要素を含む、ワクチンを接種した:イヌ・ジステンパーウイルス(CDV)、イヌ・アデノウイルス−2(CAV−2)、イヌ・パルボウイルス(CPV)、イヌ・パラインフルエンザウイルス(CPI)、およびイヌ・コロナウイルス(CCV)。T02群には、3x10CFUの濃度の三価バクテリンおよび同じ組み合わせのウイルス構成要素を投与した。図24の結果は、子犬に典型的に投与されるウイルス構成要素の組み合わせに添加した際、三価ワクチンが、試験群において、不都合な全身反応または局所反応を引き起こさなかったことを例証する。
【0270】
本出願全体で、米国特許を含めて、多様な特許および科学的刊行物が、著者および年によって引用され、そして特許は番号によって引用される。これらの刊行物および特許の開示は、本発明が関連する当該技術分野の最先端をより完全に説明するため、本出願にその全体が援用される。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】図1は、バクテロイデス綱の代表に関する近隣結合系統樹である。CLUSTAL Xバージョン1.81およびNJ Plotソフトウェアプログラム(どちらもftp://ftp−igbmc.u−strasbg.fr/pub/ClustalX/から入手可能)を用いて、系統樹を生成した。該系統樹は、大腸菌16S rRNA遺伝子配列(寄託番号J01695;データ未提示)を根とした。1000の複製物を用いて、ブートストラップ分析を行った。ブートストラップ値を、図式的に示す(●、>950;■、>850;○、>700;□、>500;指定なし<500)。スケールバーは、ヌクレオチド位あたり0.01置換を示す。矢印は、O.デンティカニスB106の位置を示す。寄託番号:P.ジンジバリスATCC 33277、J01695;P.グラエB243、AF285874;P.カンスルシVPB 4875、X76260;P.サリボサNCTC 11632、L26103;P.エンドドンタリスATCC 35406、AY253728;T.フォルシテンシスATCC 43037、AB035460;バクテロイデスcf.フォルシサス口腔クローンBU45、AF385565;B.メルダエ(B. merdae)ATCC 43184T、X83954;B.ディスタソニス(B. distasonis)ATCC 8503、M86695;ウマ糞便細菌(Equine fecal bacterium)118ds10、AY212569;D.シャヒイ(D. shahii)株CCUG 43457、AJ319867;未培養バクテロイデス科(Bacteroidaceae)クローン:Rs−P82、AB088919;未培養細菌cadhufec 059h7、AF530302;B.スプランチニクスNCTC 10825、L16496;O.デンティカニスB106、AY560020;バクテロイデス綱種口腔クローンFX069、AY134906;未培養細菌SHA−38、AJ249105;A.プトレディニス(A. putredinis)ATCC 29800、L16497;R.ミクロフサス(R. microfusus)ATCC 29728、L16498;B.デンティカニウム(B. denticanium)B78、AY549431;B.フラジリスATCC 25285T、X83935;B.テタイオタオミクロン株17.4、AY319392;B.アシドファシエンス(B. acidofaciens)株A37、AB021163;P.ビビア(P. bivia)ATCC 29303、L16475;P.ニグレセンス(P. nigrescens)ATCC 25261、L16479;P.インテルメディアATCC 25611、L16468;P.デンティコラ(P. denticola)ATCC 35308、L16467;およびP.ブカエ(P. buccae)ATCC 33690、L16478。
【図2】図2は、オドリバクター・デンティカニスの臨床単離体に関する近隣結合系統樹である。図1におけるように系統樹を生成した。該系統樹は、ポルフィロモナス・ジンジバリスATCC 53977 16S rRNA遺伝子配列(寄託番号L164942;データ未提示)を根とした。スケールバーは、ヌクレオチド位あたり0.01置換を示す。寄託番号:O.デンティカニスB106、AY560020;O.デンティカニスB113、AY560022;O.デンティカニスB150、AY560027;O.デンティカニスB155、AY560030;O.デンティカニスB172、AY560033;O.デンティカニスB183、AY560035;バクテロイデス綱種口腔クローンFX069、AY134906;未培養細菌cadhufec 059h7、AF530302;B.スプランチニクスNCTC 10825;および未培養バクテロイデス科クローン:Rs−P82、AB088919。
【図3】図3は、ポルフィロモナス・ジンジバリスFimAタンパク質ファミリー(クラスI〜V)の代表に関する近隣結合系統樹である。CLUSTAL Xバージョン1.81およびNJ Plotソフトウェアプログラムを用いて、系統樹を生成した。該系統樹は、大腸菌CFT073フィムブリリン・タンパク質(寄託番号NP 757241;データ未提示)を根とした。1000の複製物を用いて、ブートストラップ分析を行った。ブートストラップ値を、図式的に示す(●、>950;■、>850;○、>700;□、>500;指定なし<500)。スケールバーは、アミノ酸位あたり0.05置換を示す。FimA寄託番号:O.デンティカニスB106、AY573801;P.ジンジバリスHG1691、Q93R80;P.ジンジバリスBH18/10、JN0915;P.ジンジバリスATCC 33277、P13793;P.ジンジバリスOMZ314、BAA04624;P.ジンジバリスOMZ409、Q51822;P.ジンジバリス6/26、Q51826;P.ジンジバリスATCC 49417、Q51825;P.ジンジバリスW83、AAQ67087;P.ジンジバリスHG564、Q51827;およびP.ジンジバリスHNA−99、Q9S0W8。
【図4】図4は、(A)P.グラエB43および(B)O.デンティカニスB106の走査型電子顕微鏡写真からなる。スケールバーは、1000nmの距離に相当する。
【図5】図5は、ポルフィロモナス・グラエB43の増殖を支持する、「動物産物不含」培地を同定する増殖研究の結果を示すグラフである。以下の培地を試験した:ME−完全、ME−ヘミン、ME−ビタミンK、ME−ヘミンおよびビタミンK両方、PYG−完全、PYG−ヘミン、PYG−ビタミンK、PYG−ヘミンおよびビタミンK両方、並びにBHI。
【図6】図6は、示した細菌種での重感染から生じる、マウスにおける平均骨損失を示すグラフである。マウスを偽曝露するかまたは示した細菌に曝露した。純骨損失は、偽曝露群で観察されるものを上回り、そして超える骨損失に相当する。点線は、陽性対照群の純骨損失に相当する。標準誤差を示す。
【図7】図7は、示した細菌種での重感染から生じる、マウスにおける骨損失パーセントを示すグラフである。マウスを偽曝露するかまたは示した細菌に曝露した。骨損失パーセントは、100%骨損失と設定した陽性対照群の純骨損失に基づく。
【図8】図8AおよびBは、大腸菌BL21において、pBAD−HisAから発現された組換えP.グラエB43 FimAの抗XpressTMエピトープ血清(Invitrogen)を用いた、図8AではSDS PAGE、そして図8Bではウェスタンブロット分析を示す写真である。略語:Std(kDaで)、標準;Ind、(誘導);Sol、可溶性分画;およびInsol、不溶性分画。矢じりは、rFimAの位置を示す。
【図9】図9は、大腸菌BL21細胞において、発現プラスミドから発現された組換えP.グラエB43 oprFのSDS−PAGE分析を示す写真である。T=は、培養を30℃から42℃にシフトした後の時間を示す。分子量サイズ標準をkDaで示す。矢じりはrOprFの位置を示す。
【図10】図10は、純骨損失に基づく、相同ワクチン有効性研究の結果を示すグラフである。純骨損失に基づく、相同ワクチン有効性研究。マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバント(フロイントの完全および不完全アジュバントを利用したC群を除く)をワクチン接種した:A、B、およびE、PBSのみ;CおよびD、ホルマリン不活性化P.ジンジバリス53977;F、ホルマリン不活化P.グラエB43;G、BEI不活化P.グラエB43;H、熱不活化P.グラエB43;およびI、通気不活化P.グラエB43。マウスを、1%カルボキシメチルセルロース中、偽曝露(A群)、P.ジンジバリス53977に曝露(ストライプの棒)、またはP.グラエB43に曝露(塗りつぶした(solid)棒)した。標準誤差測定値を示す。
【図11】図11は、骨損失パーセントに基づく、P.ジンジバリス53977相同ワクチン有効性研究を示すグラフである。マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバント(フロイントの完全および不完全アジュバントを利用したC群を除く)をワクチン接種した:AおよびB、PBSのみ;CおよびD、ホルマリン不活性化P.ジンジバリス53977。1%カルボキシメチルセルロース中の、AではPBSに;またB〜DではP.ジンジバリス53977に、マウスを曝露した。
【図12】図12は、骨損失パーセントに基づく、P.グラエB43相同ワクチン有効性研究を示すグラフである。マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバントをワクチン接種した:A〜B、PBSのみ;C、ホルマリン不活性化P.グラエB43;D、BEI不活化P.グラエB43;E、熱不活化P.グラエB43;およびF、通気不活化P.グラエB43。1%カルボキシメチルセルロース中の、AではPBSに;またB〜FではP.グラエB43に、マウスを曝露した。
【図13】図13は、純骨損失に基づく、異種ワクチン有効性研究の結果を示すグラフである。マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバントをワクチン接種した:A〜E、PBSのみ;F〜I、ホルマリン不活化P.グラエB43;J、ホルマリン不活化P.サリボサB104およびホルマリン不活化O.デンティカニスB106。1%カルボキシメチルセルロース中の、PBS(A)、P.グラエB43(BおよびF;塗りつぶした棒)、P.グラエB69(C、G、およびJ;ストライプの棒)、P.サリボサB104(DおよびH;横線の(lined)棒)、またはO.デンティカニスB106(EおよびI;ポルカドットの棒)に、マウスを曝露した。標準誤差測定値を示す。
【図14】図14は、骨損失パーセントに基づく、異種ワクチン有効性研究のP.グラエB43曝露群に関する結果を示すグラフである。マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバントをワクチン接種した:A〜B、PBSのみ;C、ホルマリン不活化P.グラエB43。1%カルボキシメチルセルロース中の、AではPBSに;またB〜CではP.グラエB43に、マウスを曝露した。
【図15】図15は、骨損失パーセントに基づく、異種ワクチン有効性研究のP.グラエB69曝露群に関する結果を示すグラフである。マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバントをワクチン接種した:A〜B、PBSのみ;C、ホルマリン不活化P.グラエB43;またはD、ホルマリン不活化P.サリボサB104およびホルマリン不活化O.デンティカニスB106。1%カルボキシメチルセルロース中の、AではPBSに;またB〜DではP.グラエB69に、マウスを曝露した。
【図16】図16は、骨損失パーセントに基づく、異種ワクチン有効性研究のP.サリボサB104曝露群に関する結果を示すグラフである;マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバントをワクチン接種した:A〜B、PBSのみ;またはC、ホルマリン不活化P.グラエB43。1%カルボキシメチルセルロース中の、AではPBSに;またB〜CではP.サリボサB104に、マウスを曝露した。
【図17】図17は、骨損失パーセントに基づく、異種ワクチン有効性研究のO.デンティカニスB106曝露群に関する結果を示すグラフである。O.デンティカニスB106感染群に関する骨損失パーセントに基づく、異種ワクチン有効性研究。マウスに以下のワクチン抗原およびRIBI MPL+TDMアジュバントをワクチン接種した:A〜B、PBSのみ;またはC、ホルマリン不活化P.グラエB43。1%カルボキシメチルセルロース中の、AではPBSに;またB〜CではO.デンティカニスB106に、マウスを曝露した。
【図18】図18は、FimA特異的ELISAを利用した、組換えP.グラエB43 FimAまたは生理食塩水をワクチン接種したマウスの血清学的結果を示すグラフである。各16匹のマウスに、生理食塩水(A)またはrFimA/QuilA/コレステロール(B)のいずれかをワクチン接種した。FimA特異的ELISAを介し、FimA特異的抗体に関して、プールした血清を試験した。試験した最小希釈は1:100であった。この希釈で陰性結果を生じた試料にはいずれも、50の力価を与えた。
【図19】図19は、OprF特異的ELISAを利用した、組換えP.グラエB43 OprFまたは生理食塩水をワクチン接種したマウスの血清学的結果を示すグラフである。各16匹のマウスに、生理食塩水(A)またはrOprF/QuilA/コレステロール(B)のいずれかをワクチン接種した。OprF特異的ELISAを介し、OprF特異的抗体に関して、プールした血清を試験した。試験した最小希釈は1:100であった。この希釈で陰性結果を生じた試料にはいずれも、50の力価を与えた。
【図20】図20は、曝露後、第0週、第6週、および第12週の骨損失を示すグラフである。T01群は、イヌ3559424、3592669、3672859、3673375、および3691926に代表され;T02群は、イヌ3389600、3628884、3653552、3657396、3690164に代表される。
【図21】図21は、曝露後、第0週、第3週、第6週、第9週、および第12週でのT01群(ワクチン接種されそして曝露された群、またはVx/Ch群)、T02群(偽ワクチン接種され、そして曝露された群、または非Vx/Ch群)、およびT03群(偽ワクチン接種され、そして偽曝露された群、または非Vx/非Ch群)の骨反応性スコアを示すグラフである。処置効果の統計的有意性もまた示す。
【図22】図22は、曝露後、第0週、第3週、第6週、および第9週でのT01群(Vx/Ch群)、T02群(非Vx/Ch群)、およびT03群(非Vx/非Ch群)の骨反応性スコアを示すグラフである。T01群およびT02群間の統計的有意性を示す。
【図23】図23A〜23Dは、曝露後、第0週(23A)、第3週(23B)、第6週(23C)、および第9週(23D)のT01群(Vx/Ch群)の単一のイヌ由来のX線写真画像である。図23E〜23Hは、曝露後、第0週(23E)、第3週(23F)、第6週(23G)、および第9週(23H)のT02群(非Vx/Ch群)の単一のイヌ由来のX線写真画像である。
【図24A】図24A〜24Cは、T01群(Vx/Ch群)およびT02群(非Vx/Ch群)の平均全身反応を示すグラフであり;スコアは、各群それぞれのすべてのイヌの身体活動レベルの等級付け評価に基づく。
【図24B】図24A〜24Cは、T01群(Vx/Ch群)およびT02群(非Vx/Ch群)の平均全身反応を示すグラフであり;スコアは、各群それぞれのすべてのイヌの身体活動レベルの等級付け評価に基づく。
【図24C】図24A〜24Cは、T01群(Vx/Ch群)およびT02群(非Vx/Ch群)の平均全身反応を示すグラフであり;スコアは、各群それぞれのすべてのイヌの身体活動レベルの等級付け評価に基づく。
【図24D】図24D〜24Fは、T01群(Vx/Ch群)およびT02群(非Vx/Ch群)の平均局所反応を示すグラフであり;スコアは、各群それぞれのすべてのイヌの注射部位に存在する腫脹レベルの等級付け評価に基づく。
【図24E】図24D〜24Fは、T01群(Vx/Ch群)およびT02群(非Vx/Ch群)の平均局所反応を示すグラフであり;スコアは、各群それぞれのすべてのイヌの注射部位に存在する腫脹レベルの等級付け評価に基づく。
【図24F】図24D〜24Fは、T01群(Vx/Ch群)およびT02群(非Vx/Ch群)の平均局所反応を示すグラフであり;スコアは、各群それぞれのすべてのイヌの注射部位に存在する腫脹レベルの等級付け評価に基づく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するためのワクチンであって、P.グラエ(P.gulae)B43、P.サリボサ(P.salivosa)B104およびO.デンティカニス(O.denticanis)B106の不活化全細胞調製物、並びに薬学的に許容しうるキャリアーを含む、前記ワクチン。
【請求項2】
細菌がホルマリンによって不活化された、請求項1のワクチン。
【請求項3】
イヌ・ジステンパーウイルス(CDV)、イヌ・アデノウイルス−2(CAV−2)、イヌ・パルボウイルス(CPV)、イヌ・パラインフルエンザウイルス(CPI)、またはイヌ・コロナウイルス(CCV)の少なくとも1つをさらに含む、請求項1のワクチン。
【請求項4】
コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するための方法であって、ワクチンを投与する必要があるコンパニオン動物に、請求項1〜3のいずれか1項記載のワクチンを投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
薬学的に許容しうるキャリアー、並びにP.グラエB43、P.サリボサB104およびO.デンティカニスB106の不活化全細胞調製物を含む、コンパニオン動物における歯周病を治療し、そして予防するための組成物を、少なくとも1つの容器中に含む、キットであって;該キットが、コンパニオン動物における歯周病を治療するかまたは予防するのに有用であることを示す、印刷した使用説明書セットをさらに含む、前記キット。
【請求項6】
1以上の歯周病原性(periopathogenic)細菌に対するワクチンの有効性を評価するための方法であって:
a.第一の動物に、1以上の不活化または弱毒化歯周病原性細菌を含むワクチンを投与し;
b.前記動物を、1以上の歯周病原性細菌を含有する、有効量の曝露培養物に曝露し;
c.ワクチン接種していない第二の動物を、同量の前記曝露培養物に曝露し、ここで第二の動物は、第一の動物と同じ種である;
d.前記歯周病原性細菌によって引き起こされる疾患の臨床徴候を測定し;そして
e.ワクチン接種した動物に存在する疾患の臨床徴候を、ワクチン接種していない動物に存在する疾患の臨床徴候と比較して、それによって前記ワクチンの有効性を決定する
ことを含む、前記方法。
【請求項7】
前記ワクチンが、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、バクテリオデス属(Bacteriodes)、プレボテラ属(Prevotella)、タネレラ属(Tannerella)またはトレポネーマ属(Treponema)の少なくとも1種の弱毒化細菌または生細菌を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
歯根成分が摘出され、その後、修復物が配置されている、歯の根管内に、前記曝露培養物が導入される、請求項6の方法。
【請求項9】
前記の第一および第二の動物がコンパニオン動物である、請求項6の方法。
【請求項10】
前記曝露培養物が、曝露用量あたり、約1x10〜約1x1012コロニー形成単位(CFU)を含む、請求項6の方法。
【請求項11】
前記曝露培養物が、曝露用量あたり、約1x10〜約1x1011コロニー形成単位(CFU)を含む、請求項6の方法。
【請求項12】
前記曝露培養物が、曝露用量あたり、約5x10〜約5x1010コロニー形成単位(CFU)を含む、請求項6の方法。
【請求項13】
前記臨床徴候が、歯肉溝浸出液、歯垢、感染した骨、または歯肉溝中の1以上の歯周病原性細菌レベルの増加、あるいは歯槽骨(aveolar bone)量の変化を含む、請求項6の方法。
【請求項14】
前記骨変化が、歯槽骨の歯根尖端周囲領域中である、請求項6の方法。
【請求項15】
前記骨変化が、X線写真測定を介して定量化される、請求項6の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23a】
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【図23b】
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【図23c】
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【図23d】
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【図23e】
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【図23f】
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【図23g】
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【図23h】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【公表番号】特表2008−500379(P2008−500379A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517471(P2007−517471)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000822
【国際公開番号】WO2005/112993
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】