説明

歯磨き剤組成物

【課題】 歯磨き剤組成物において、特定の研磨剤を用いて、研磨と口臭除去とを同時に実現すること、また甘味が感じられなくなる原因を取除くこと。
【解決手段】 研磨剤としての火山灰を0.1〜20質量部含有し、望ましくは、1〜5質量部のコカミドプロピルベタイン(Cocamidopropylbetain)を気泡剤として更に含有する歯磨き剤組成物。上記の火山灰は、研磨作用のある成分と口臭除去作用(消臭作用)のある成分との双方を含んでいるため、研磨と口臭除去とを同時に実現することができ、また上記のコカミドプロピルベタインは、気泡剤としての作用を有すると共に、舌の甘みを感じる味覚受容体の機能を損ねるものではないため、気泡力を十分に保持でき、歯磨き後に果物などを食したときにもその甘みを味わうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨性及び口臭除去性に優れ、更には歯磨き後も舌の甘味感覚を保持できる歯磨き剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯磨き粉に用いる研磨剤としては、炭酸カルシウム(CaCO3)、シリカ(SiO2)、燐酸水素カルシウム(CaHPO4・2H2O)等が知られている。こうした原料は、研磨効果を有するが、口臭の除去には不十分なものである。そのために、通常の歯磨き粉には、研磨剤に加えて、口臭除去に効果のある緑茶や過酸化水素又は着香料を別途添加している。
【0003】
また、一般の歯磨き粉では、気泡剤(又は界面活性剤)としてラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate)を用いている(後記の特許文献1及び2)。この原料は、その界面活性作用による起泡効果で歯磨き性能を高めるためのものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した歯磨き粉においては、研磨剤の他に、口臭除去のための添加剤を別途添加する必要があるので、材料費が増える上に、その調合作業が必要となる。
【0005】
また、上記したラウリル硫酸ナトリウムは、歯磨き粉に用いると、舌の甘味を感じる味覚受容体を鈍化させるので、歯磨きの後に果物を食べると、酸味が強く感じられ、苦味も感じられる。これでは、歯磨き後に、バナナなどの果物の甘味を感じることができず、不都合である。
【0006】
こうした問題点を解消するために、ラウリル硫酸ナトリウムに代わる代替原料が検討されているが、代替気泡剤は気泡力が弱く、或いは製造が困難であるため、依然としてラウリル硫酸ナトリウムを用いているのが現状である。
【0007】
従って、本発明は、歯磨き剤(又は歯磨き粉)において、特定の研磨剤を用いて、研磨と口臭除去とを同時に実現することを第1の目的とし、また甘味が感じられなくなる原因を取除くことを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、研磨剤としての火山灰を0.1〜20質量部含有する歯磨き剤組成物に係るものであり、望ましくは、1〜5質量部のコカミドプロピルベタイン(Cocamidopropylbetain)を気泡剤として更に含有する歯磨き剤組成物に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記の火山灰は、研磨作用のある成分と口臭除去作用(消臭作用)のある成分との双方を含んでいるため、火山灰を含有させるだけで研磨と口臭除去とを同時に実現することができる。従って、歯磨き剤の材料費を低減し、その調合作業も容易となる。
【0010】
こうした研磨及び口臭除去の効果を同時実現するためには、上記の火山灰の含有量は、歯磨き剤組成物全体に対して0.1〜20質量部とすべきである。この含有量が0.1質量部未満であると、上記した作用を発揮することができず、また20質量部を超えると、研磨作用が強すぎて歯茎部の摩耗などを引起こしてしまう。この含有量は1〜15質量部が好ましく、5〜15質量部が更に好ましく、10質量部又はその前後が最も好ましい。
【0011】
また、上記のコカミドプロピルベタインは、歯磨き時に気泡剤としての作用を有する陽イオン界面活性剤であると共に、舌の甘味を感じる味覚受容体の機能を損ねるものではないため、上述したラウリル硫酸ナトリウムに代えて添加することによって、気泡力を十分に保持できる上に、甘みが感じられなくする原因をなくして、歯磨き後に果物などを食したときにもその甘味を味わうことができる。
【0012】
このコカミドプロピルベタインの含有量は、上記の効果を発揮する上で、歯磨き剤組成物全体に対して1〜5質量部とすべきである。この含有量が1質量部未満であると、上記の効果を奏することができず、また5質量部を超えると、起泡作用が強くなりすぎるため、好ましくない。この含有量は1〜3質量部が好ましく、2質量部又はその前後が最も好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の歯磨き剤組成物においては、上記の火山灰は粒径10μm以下の微粒シラス(更には、粒径2μm以下の超微粒シラス)からなるのが望ましい。これは、微粒シラスが研磨作用を十二分に発揮できる粒径を有していると共に、研磨効果に優れたSiO2等の成分を有し、かつ脱臭効果のあるMgOなどのミネラル成分も有しているからである。
【0014】
こうした微粒シラスは、火山ガラス質堆積物を粉砕機で粉砕して10μm以下の粒径に微粒化することにより得られる。そして、遠心力を利用して粒径を選別する回転式の篩により、粒径を均一化するのがよい。なお、上記の超微粒シラスは、一般的なシラスバルーンの粒径が10μmであるのに対し、上記した粉砕及び篩による粒径の選別により得られる。
【0015】
この超微粒シラスはその表面がマイナスイオンに帯電されているので、プラスイオンを帯びた歯や歯茎部の表面の付着物を引きつけて除去する作用もある。これが、超微粒による優れた研磨効果と相乗効果を生じることになる。また、超微粒シラスは多孔質であることから、それ自体が対象物の表面の細部にまで行き渡ると同時に、上記した気泡剤や後記の他の添加剤を吸着保持しながらその作用を十二分に発揮させることができる。
【0016】
本発明の歯磨き剤組成物は、上記の火山灰(更には、望ましくはコカミドプロピルベタイン)からなる必須成分の他に、公知の増粘剤、湿潤剤、甘味剤及び溶剤などの他の添加剤を更に含有してよい。例えば、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(Sodium carboxymethylcellulose)など、湿潤剤としてソルビトール(Sorbitol)など、甘味剤としてステビオサイド(Stevioside)、サッカリン(Saccharin)など、溶剤又は分散媒として水などを用いることができる。
【0017】
なお、歯磨き粉を一般的な方法で作れば苦味が出るため、甘みを感じさせるためにステビオサイドやサッカリンを添加するのがよい。即ち、ステビオサイドなどは歯磨き粉の固有の甘みを出すために添加するものであるから、その作用は、気泡剤として添加するコカミドプロピルアミンの甘味感覚保持作用とは異質のものである。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例について更に詳細に説明する。
【0019】
まず、本実施例の歯磨き粉(又は歯磨き剤)組成物に研磨剤として用いる火山灰について説明する。この火山灰は、日本国鹿児島県吉田地区で採取したものであって、日本国では「ヨシダシラス」と呼ばれている。
【0020】
この火山灰は、成分分析によって次の組成からなっていることが分かっている(%は質量%を表わす)。
SiO2:73.3%
TiO2:0.37%
Al23:13.4%
Fe23:2.29%
MgO:0.38%
CaO:1.75%
Na2O:3.29%
2O:3.56%
2O:1.66%(乾燥時に蒸発する量)
【0021】
上記の成分を見れば、この火山灰は、研磨効果のあるSiO2、TiO2、Al23などを主成分にすると共に、脱臭効果のあるMgO、CaO、Na2Oなどのミネラル成分を相当量含有していることが分かる。
【0022】
ここで、研磨度について述べると、歯磨き粉の研磨度を公知の歯磨耗度(研磨度)試験法で測定した際、50以下は低研磨度、50〜100は中間研磨度、100以上は高研磨度と評価される。
【0023】
上記のヨシダシラスは、火山灰を2000メッシュ(6.4μm)の粒径となるまで粉砕した後に精製したものであって、70程度の中間研磨度を示すので、100以上の高研磨度のものに比較して、歯茎部摩耗症を誘発する可能性が少なく、安全で滑らかに使用できることが確認された。なお、他の火山灰も、ヨシダシラスと同等の作用、機能を有している。
【0024】
また、このヨシダシラスについて、一般に採用されているアンモニア(NH3)脱臭実験方法:KICM−FIR−1085(2006)によってアンモニア脱臭実験を行ったところ、60分後の脱臭率が80%以上であった。これは、口臭の原因であるアンモニアを十分に除去できることを証明している。
【0025】
次に、下記の表1に示す成分からなる歯磨き粉(又は歯磨き剤)組成物を常法に従って製造した(表中の各数値は質量部を表わす)。
【0026】
即ち、製造釜に水とソルビトールを入れて60℃まで加温し、この加温後に研磨剤を添加して撹拌し、カルボキシメチルセルロースナトリウムと二酸化珪素を入れて撹拌した後、最後に気泡剤を入れて撹拌した。
【0027】
【表1】

【0028】
上記成分からなる各歯磨き剤について、公知の歯磨耗度(研磨度)試験法によって研磨テストを行った。その結果を下記の表2に示す。
【0029】
このテストにおいては、歯研磨度(歯摩耗度)を抜歯した人の歯について生体外的に検証し、歯磨きで摩耗された標本歯の切断表面の面積により歯磨き粉の摩耗度を測定した。ここで採用した歯磨き粉の歯研磨度(歯摩耗度)の試験法は、摩耗歯質表面輪郭測定法(Surface profile Method)であるが、これ以外にも、摩耗歯質放射線測定法(Radio-tracer Method)、摩耗歯質重量測定法(Weight-loss Technique)などの試験法を用いてもよい。この際、表面輪郭測定機としてMitutoyo社のSurftest sv-2000を用いた。
【0030】
具体的には、歯磨きをする過程において、300gの張力を標本歯片(抜歯した歯の琺瑯質を除去後、象牙質で試験に供されるもの)の表面に作用させて、1分当り往復200回程度で約3000回の歯磨きを行った。この際に用いた機器は、電動歯ブラシに張力300gを維持するスプリング装置を用いた。そして、標本歯片を引き離した後、摩耗された表面を表面輪郭測定機(Surface profiler)で再測定して、記録された記録紙の上で面積機により標本歯片の摩耗された面積を測定し、歯磨き粉によって摩耗された標本歯片の表面積を算出した。
【0031】
【表2】

【0032】
この結果から、本発明に基づく実施例1及び2の歯磨き剤では、70程度の中間研磨度を示すので、歯茎部摩耗症を誘発する可能性が少なく、安全で滑らかに使用できることが確認された。
【0033】
また、上記の各歯磨き剤について、公知の口臭テスター(プラステック社製のmBAー21)を用いて、口臭の原因であるアンモニアを測定して口臭除去テストを行った。この口臭テスターでは、アンモニアの含有量に応じて数値(口臭度)で1〜100まで表しているが、数値が高いほどアンモニア濃度(ppm)が高い。一般的に、普通の人であると、歯磨き前の基本値が30程度である。それぞれ男女30人ずつを選んで歯磨き剤を使用させ、使用前と使用後の数値を測定した。測定結果を下記の表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
上記の結果から、本発明に基づく実施例1及び2の方が、各比較例に比べて口臭除去力に優れていることが分かる。
【0036】
更に、上記の各歯磨き剤をそれぞれ10人ずつに使用させ、歯磨き後にバナナなどの果物を食べさせ、このときに果物の甘味を感じるか否かをテストした。その結果を下記の表4に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
この結果から、本発明に基づく実施例1の歯磨き剤は、歯磨き後に果物を食べた時にその甘味が十分感じられるのに対し、各比較例では甘味が感じられないことが分った。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、研磨性及び口臭除去性に優れ、歯磨き後も甘味感覚を保持できる歯磨き剤組成物を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2010−155816号公報(明細書第2頁50行目〜第3頁1行目)
【特許文献2】特開平11−189518号公報(明細書の段落番号[0011]、[0016])

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山灰を0.1〜20質量部含有する歯磨き剤組成物。
【請求項2】
1〜5質量部のコカミドプロピルベタインを更に含有する、請求項1に記載した歯磨き剤組成物。
【請求項3】
前記火山灰は研磨及び口臭除去作用をなす、請求項1に記載した歯磨き粉組成物。
【請求項4】
気泡剤としての前記コカミドプロピルベタインは舌の甘味感覚を損ねない作用もなす、請求項2に記載した歯磨き剤組成物。
【請求項5】
前記火山灰は粒径10μm以下の微粒シラスからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載した歯磨き剤組成物。
【請求項6】
増粘剤、湿潤剤、甘味剤及び溶剤(又は分散媒)を更に含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載した歯磨き剤組成物。

【公開番号】特開2012−140379(P2012−140379A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23(P2011−23)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(511004209)株式会社韓国衛生センター (1)
【Fターム(参考)】