説明

歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性向上方法

【課題】ベルベリン由来の収斂効果及びベルベリンの保存安定性に優れ、かつ保存後の使用感にも優れ、外観安定性も良好なベルベリン含有の歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性向上方法を提供する。
【解決手段】ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビットを純分のソルビトールとして10〜45質量%配合したことを特徴とする歯磨剤組成物。
ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビットを純分のソルビトールとして10〜45質量%配合して、前記歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性を向上する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に関し、更に詳述するとベルベリンの保存安定性が向上し、収斂効果に優れ、かつ保存後の使用感に優れ、外観安定性も良好なベルベリン含有の歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルベリンは独特の収斂感を有するアルカロイドの1種であり、収斂性抗炎症効果や口腔内細菌に対する抗菌効果を有することが知られている。従来から、歯周疾患予防効果、う蝕予防効果、歯苔形成阻止効果等の効果を口腔内で有効に発揮させ又は向上させるため、歯磨剤組成物に対して、ベルベリンを含有するオウバク等のミカン科植物抽出物やオウレン等のキンポウゲ科植物抽出物を、有効成分として配合することが知られている(特許文献1〜6:特開昭57−56415号、同58−39615号、同58−57320号、同61−36215号、同62−155209号公報、特開2001−97837号公報)。
【0003】
また、炭酸カルシウムは、歯磨剤に汎用される研磨剤であり、炭酸カルシウムを配合した場合、一般に練り製剤の外観に優れる。
【0004】
しかし、ベルベリンを、歯磨剤に研磨剤として汎用される炭酸カルシウムと併用し十分に安定化することは難しく、更に、ベルベリン独特の収斂性が損なわれることもあり、特に歯磨剤の湿潤剤として汎用されるソルビットを配合して製剤化すると、ベルベリンの保存安定性が十分ではなく、長期間に亘り保存するとベルベリンの残存率が低下する上、保存後に異味が生じるという課題が生じた。よって、練り肌等の外観安定性を良好に保ちつつベルベリンを安定配合し、かつ異味発現も抑えることは難しかった。
【0005】
ベルベリンの残存率が低下する課題に関する技術としては、以下のものが挙げられる。
まず、口腔用組成物に着香の目的で配合される香料組成物中に配合されるアルデヒド香料の存在によってベルベリン残存率が低下することから、それらの香料を使用しないことにより、ミカン科植物抽出物及び/又はキンポウゲ科植物抽出物を安定化配合できることが開示されている(特許文献7:特開昭63−63608号公報)。
また、一般にペパーミント油やスペアミント油などの天然系香料の中には、劣化原因となるアルデヒド系香料が微量ではあるが含有されており、徐々にベルベリンの残存率が低下することがわかっている。このような原因による劣化を解決する手段として改質ミント油を配合する方法(特許文献8:特開2000−72617号公報)が提案されている。
【0006】
この他、直鎖状ポリリン酸塩の配合により鉄イオンによるベルベリンの残存率低下を防止する技術が提案されている(特許文献9:特開2005−187329号公報)。
【0007】
更に、炭酸カルシウム含有のベルベリン配合口腔用組成物におけるベルベリンの安定化にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が有効なことが開示されている(特許文献10:特開平08−175941号公報)。
【0008】
しかしながら、これらのベルベリンの残存率低下や安定性を改善する技術では、ベルベリンに炭酸カルシウムを併用した組成において、練り肌等の外観安定性を良好に保ちつつベルベリンを十分に安定配合し、異味発現を抑え使用感も良好な製剤を得ることは難しかった。よって、練り肌等の外観安定性を良好に保ちつつベルベリンを安定配合できる技術、特に主要有効成分であるベルベリンの保存後の残存率低下、ベルベリン由来の独特の収斂性の低下、及び保存後の異味発現といった全ての課題を解消できる新たな技術が望まれる。
【0009】
一方、ソルビットは糖アルコールの一種であり、歯磨剤組成物において湿潤剤として配合されており、歯磨製剤の使用感向上、製剤の乾燥防止や液分離抑制などの目的で市販の多くの歯磨剤組成物に配合されている成分である。
【0010】
ソルビットは、グルコース、フルクトース、ソルボースなどの単糖を還元することで得られ、その製法上において未反応原料として還元糖を微量ながら含むことは知られている。歯磨製剤における還元糖量の影響に関しては、例えば銅化合物を含有する口腔用組成物において、糖アルコールを20〜60質量%含有し、組成物中の還元糖含有量が0.03質量%以下である場合に銅化合物含有組成物の色調変化が抑えられることが開示されている(特許文献11:特許第2798298号公報)。
【0011】
また、ε−アミノカプロン酸及び/又はトラネキサム酸を含有する歯磨剤組成物において、組成物中の直接還元糖の含有量が0〜0.060質量%未満である場合に歯磨剤組成物の色調変化が抑えられることが開示されている(特許文献12:特開2006−182655号公報)。
【0012】
さらに、直鎖状の水溶性ポリリン酸塩を含有する歯磨剤組成物において、直接還元糖含量が0.030質量%未満のソルビットを20〜45質量%を含有し、組成物中の直接還元糖の含有量が0.0060質量%未満とすることで、長期保存しても変色がほとんど抑えられることが開示されている(特許文献13:特開2009−155286号公報)。
【0013】
しかしながら、これら従来技術から、ベルベリンに炭酸カルシウムを併用した組成におけるベルベリンの安定化技術は予想できない。
【0014】
なお、保存後の練り肌の外観を向上させる技術としては、エチルアルコール、ポリリン酸金属塩およびポリエチレングリコールと共に、エーテル化度が0.5〜0.8と1.0〜1.5の2種のカルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩を重量比1:2〜2:1で配合する技術(特許文献14:特開平03−336416号公報)、炭酸水素ナトリウムを含有する歯磨組成物に、更にキサンタンガム、カラギーナン及びアルギン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物とポリエチレングリコールとを配合させる技術(特許文献15:特開平11−1418号公報)が提案されている。しかし、これら技術では炭酸カルシウムを含む歯磨剤組成物において保存後の練り肌の外観を必ずしも改善できない。
【0015】
また、平均粒径3〜7μmの炭酸カルシウム、BET比表面積300〜450m2/gの沈降性シリカ、及び脂肪酸アミドプロピルベタインを含有する技術(特許文献16:特開2010−111648号公報)が提案されているが、これは低温保存後の練り肌の外観を良好にする技術であり、長期間に亘り室温、高温で保存した後の練り肌の外観を良好にするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭57−56415号公報
【特許文献2】特開昭58−39615号公報
【特許文献3】特開昭58−57320号公報
【特許文献4】特開昭61−36215号公報
【特許文献5】特開昭62−155209号公報
【特許文献6】特開2001−97837号公報
【特許文献7】特開昭63−63608号公報
【特許文献8】特開2000−72617号公報
【特許文献9】特開2005−187329号公報
【特許文献10】特開平08−175941号公報
【特許文献11】特許第2798298号公報
【特許文献12】特開2006−182655号公報
【特許文献13】特開2009−155286号公報
【特許文献14】特開平03−336416号公報
【特許文献15】特開平11−1418号公報
【特許文献16】特開2010−111648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ベルベリンを含有し、研磨剤として炭酸カルシウムを配合した歯磨剤組成物における上記課題を解決し、ベルベリン由来の優れた収斂効果が発揮され、ベルベリンの保存安定性に優れる上、保存後の異味発現が抑制され良好な使用感を有し、外観安定性も良好なベルベリン含有の歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合した歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビットを、純分のソルビトールの含有量が組成全体の10〜45質量%となる範囲で配合することにより、意外にもベルベリンの安定性が改善し、ベルベリン由来の優れた収斂効果が発揮されると共に、ベルベリンの保存安定性に優れ、かつ保存後の異味発現が抑制され、保存時の練り肌の外観も良好に維持できること、よって、外観安定性を良好に保ちつつベルベリンを十分に安定配合でき、良好な使用感も確保できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0019】
出願人は、特許文献10に研磨剤として炭酸カルシウムを含有し、ベルベリンを配合した口腔用組成物にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することで、ベルベリンの保存安定性を改善できることを提案した。この技術は、炭酸カルシウムによるベルベリンの残存率の低下を、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することで解消した技術であるが、ベルベリンの安定配合については未だ改善の余地があり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合などによりベルベリンの収斂性に影響が生じることもあった。
【0020】
そこで、本発明者らは、歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定化を改善する新たな技術について更に検討したところ、ベルベリン及び炭酸カルシウム配合組成にソルビットを配合して製剤化すると、ベルベリンを安定化配合し難く、ベルベリン残存率が経時で低下したり、ベルベリンに由来する異味が生じて使用感も低下するという問題が生じるが、これに対して、ソルビットとして直接還元糖量が特定値以下のソルビットを適切に配合すると、ベルベリン及び炭酸カルシウムを配合した組成における上記課題を全て解消できた。本発明によれば、ベルベリン独特の優れた収斂効果が発揮され、経時でのベルベリンの残存率低下を効果的に抑えてベルベリンを長期にわたって安定配合することができ、しかも、保存後にベルベリンに由来する異味が生じることなく良好な使用感が得られ、練り肌も良好に保持できることを見出した。
なお、ベルベリン含有の歯磨剤組成物において、研磨剤である炭酸カルシウムの配合量を減らしたり、あるいはソルビットの使用量を減らしても、練り肌等の外観安定性に悪影響が生じるばかりか、ベルベリン独特の収斂性やベルベリンの残存率低下や異味発現を満足に解消することはできないが、本発明では、練り肌等の外観安定性を良好に保ちつつベルベリンの安定性を満足に改善でき異味発現も抑えることができる。
【0021】
ベルベリンに炭酸カルシウムを併用し、更にソルビットを配合して製剤化した場合、ベルベリンの収斂効果が低下したり、長期保存後のベルベリンの残存量の低下、保存後の異味が生じるメカニズムについては明らかではないが、炭酸カルシウムが存在するアルカリ性の条件下で、ソルビット中の直接還元糖のカルボニル基等がベルベリンと反応して相互作用することが、一つの要因となって生じるものと推測される。本発明によれば、ソルビット中の直接還元糖含量を極めて少量に低下させることでかかる反応を抑制し得、収斂効果を満足に保ち、ベルベリンの保存安定性を向上できる上、保存後の異味抑制が可能となるものと推測される。
【0022】
本発明では、純分のソルビトール/ベルベリンの質量比が350〜70,000であることが、効果発現により好ましい。
また、本発明では、上記特定のソルビットと共に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することで、ベルベリンの収斂性に影響を与えることなく保存安定性及び保存後の異味抑制効果をより向上させることができ、本発明の効果がより有効に発揮される。
【0023】
従って、本発明は下記の歯磨剤組成物及び歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性向上方法を提供する。
請求項1:
ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビットを純分のソルビトールとして10〜45質量%配合したことを特徴とする歯磨剤組成物。
請求項2:
ソルビトール/ベルベリンの質量比が350〜70,000である請求項1記載の歯磨剤組成物。
請求項3:
組成物中の直接還元糖含有量が0.012質量%未満である請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
請求項4:
炭酸カルシウムの配合量が5〜50質量%である請求項1、2又は3記載の歯磨剤組成物。
請求項5:
更に、酸化エチレンの平均付加モル数が5〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合した請求項1乃至4のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
請求項6:
ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビットを純分のソルビトールとして10〜45質量%配合して、前記歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性を向上する方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、練り肌等の外観安定性を良好に保持しつつベルベリンを安定配合でき、ベルベリン由来の高い収斂効果を奏し、ベルベリンの保存安定性に優れる上、保存後の異味発現がなく優れた使用感を有する、ベルベリン含有の歯磨剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の歯磨剤組成物は、ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が特定値未満のソルビットを配合したものであり、(A)ベルベリン、(B)直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビット、及び(C)炭酸カルシウムを含有する。
【0026】
本発明で用いる(A)成分のベルベリンは、ベルベリンを含む植物の溶媒抽出物、特にオウバク等のミカン科植物やオウレン等のキンポウゲ科植物の溶媒抽出物として配合することができる。なお、これら植物抽出物としては公知のものを使用することができる。このようなベルベリン含有植物抽出物としては、市販品を使用してもよく、例えば、小城製薬株式会社製のオウバクエキス、アルプス薬品工業株式会社製のオウレンエキスという製品名で入手することができる。また、これら植物抽出物はその1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記ベルベリン含有植物抽出物の配合量は、ベルベリンとしての純分換算で組成物全体の0.0005〜0.05%(質量%、以下同様。)が好ましく、特に収斂効果、ベルベリンの保存安定性の面から0.001%以上が好ましく、保存後の異味の点、保存時の練り肌の外観の点から0.02%以下が好ましい。0.0005%未満では、収斂効果が満足に得られなかったり、ベルベリンの保存安定性に劣る場合がある。0.05%を超えると、保存後の異味を抑制できない場合があり、また、植物抽出物を配合した場合に保存後の練り肌の外観が悪くなる場合がある。
【0028】
(B)成分のソルビットとしては、直接還元糖の含有量が純分のソルビトールに対し0.045%未満のもの、好ましくは0.030%未満のものを配合する。直接還元糖含量が0.045%を超えたものを使用すると、収斂効果の低下、保存後のベルベリンの残存量の低下、保存後に異味が経時において起こり、本発明の目的を達成できない。
なお、ソルビットは、通常、使用性の観点からソルビトール純分を60〜70%含有する水溶液として用いられるもので、本発明においてソルビットは、ソルビトールを含有する水溶液を示す。
なお、上記した直接還元糖含量は、JIS K1509におけるソルビットの直接還元糖量の測定方法に従って測定することができる。
【0029】
このようなソルビットとしては、例えば、ロケットジャパン株式会社製のNEOSORB70/02SBという製品名で市販されているものなどを使用できる。
【0030】
上記ソルビットの配合量は、純分のソルビトールとして組成物全体の10〜45%であり、特に15〜35%が好ましく、この範囲で配合することで保存後の練り肌の外観を犠牲にすることなく、優れた収斂効果、ベルベリンの保存安定性、及び保存後の異味抑制効果を奏することができる。配合量が10%未満では、歯磨剤組成物の耐乾燥性が低下し、保存後の練り肌の外観が悪くなり、45%を超えると組成物全体の直接還元糖量が多くなり、収斂効果が低下したり、ベルベリンの保存安定性に劣り、保存後の異味発現も抑制できない。
なお、本発明ではソルビットとして上記直接還元糖量のソルビットのみを配合し、他のソルビットは配合しなくてもよい。
【0031】
純分のソルビトール/ベルベリンの配合比率は、質量比で350〜70,000、特に700〜40,000、とりわけ2,000〜30,000が好ましく、5,000〜25,000が最も好ましい。このような比率で配合することが、効果発現により有効であり、収斂感、ベルベリンの保存安定性、保存後の異味の抑制、及び保存後の練り肌の外観をより良好にすることができる。配合比率が700未満では、保存後の異味や保存後の練り肌の外観を十分に改善できない場合があり、70,000を超えると、収斂感及びベルベリンの保存安定性を十分改善できない場合がある。
【0032】
(C)成分である炭酸カルシウムは、研磨剤として配合されるもので、歯磨剤組成物に使用されるものであれば特に限定されないが、重質炭酸カルシウムが好適である。
このような炭酸カルシウムとしては、市販品を使用でき、例えば備北粉化工業株式会社 製の重質炭酸カルシウム(製品名:ソフトン1000、ソフトン1200、ソフトン1500、ソフトン1800)などが挙げられる。
【0033】
炭酸カルシウムの配合量は、組成物全体の5〜50%、特に10〜40%、とりわけ15〜35%が好ましい。5%未満では保存後の練り肌の外観が悪くなる場合があり、50%を超えると、収斂効果が低下したり、ベルベリンの保存安定性の低下や、保存後の異味が生じ、本発明の目的を達成できない場合がある。
【0034】
本発明組成物には、更に(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することができ、これによりベルベリンの保存安定性、保存後の異味抑制効果をより向上できる。
【0035】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、酸化エチレンの平均付加モル数が5〜80モル、特に10〜60モルであるものが、ベルベリンの保存安定性、保存後の異味抑制の点で好ましい。10モル未満では、ベルベリンの保存安定性を十分向上できない場合があり、60モルを超えるものはベルベリンの保存安定性、保存後の異味抑制効果を十分改善できない場合がある。
【0036】
このようなポリオキシエチレン硬化ヒマシ油には、市販品を用いることができ、例えば、NIKKOL HCO−5(ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−20(ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−10(ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−20(ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−30(ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−40(ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−60(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)NIKKOL HCO−80(ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.3〜5%、特に0.8〜3%が好適である。配合量が0.3%未満では、ベルベリンの保存安定性、保存後の異味抑制効果を十分高めることができない場合があり、5%を超えると収斂感に劣ったり、保存後の練り肌の外観に影響が生じ、十分な配合効果が得られない場合がある。
【0038】
本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨剤、液体歯磨剤等、特に練歯磨剤として調製し適用することができ、その剤形に応じて、上記成分に加えてその他の適宜な公知成分を配合することができる。任意成分は、例えば(B)ソルビット以外の湿潤剤、(C)炭酸カルシウム以外の研磨剤、(A)ベルベリン以外の有効成分、界面活性剤、粘結剤、香料、pH調整剤、防腐剤、甘味剤、着色剤等が挙げられ、本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。本発明組成物は、これら成分と水とを混合し通常の方法で製造できる。
【0039】
湿潤剤としては、(B)成分のソルビットに加えて、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、多価アルコールの1種又は2種以上を配合することができる。上記湿潤剤の配合量は、組成全体に対して、練歯磨剤の場合は10〜70%、液体歯磨剤の場合は20〜90%が好ましい。
【0040】
研磨剤としては、(C)成分の炭酸カルシウムに加えて、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム等のリン酸系研磨剤、水酸化アルミニウム、アルミナ、2酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤などを、1種又は2種以上用いることができる。配合量は通常、練歯磨剤の場合は組成物全量に対して5〜50%、特に10〜40%、液状歯磨剤の場合は組成物全量に対して5〜30%、特に7〜15%である。
【0041】
各種有効成分としては、(A)成分のベルベリンに加えて、その他の有効成分、例えばフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズなどのフッ素化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼなどの酵素、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム、アスコルビン酸とその塩、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、アズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸とその塩、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物などが挙げられる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0042】
界面活性剤としては、(D)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に加えて、通常歯磨剤組成物に用いられる他の界面活性剤を配合することができる。例えばアニオン性界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム等のアシルサルコシン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルグルコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が用いられる。両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインや、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が用いられる。これら界面活性剤の配合量は、(D)成分を含めた合計配合量が通常0.3〜5%の範囲内とする。
【0043】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース系粘結剤、キサンタンガム、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を配合できる。配合量は通常、組成物全量に対して0.1〜5%である。
【0044】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、グレープフルーツ油、柚子油、スウィーティー油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、パチュリ油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、ローズアブソリュート、オレンジフラワーアブソリュート、バニラアブソリュート、マンゴーアブソリュート、パチュリアブソリュート、ジンジャーオレオレジン、ペッパーオレオレジン、カプシカムオレオレジン、トウガラシ抽出物等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前留部カット、後留部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、メンチルラクテート、フェノキシエチルイソブチレート、メチルジャスモネート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、エチルラクテート、ヘキシルアセテート、イソアミルアセテート、アリルヘキサノエート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルシンナメート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、リナリルアセテート、バニリン、炭素数4〜12のガンマ及びデルタラクトン、ヨノン、キャロン、プロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコール、マルトール、フェニルエチルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキセノール、cis−3−ヘキセノール、cis−6−ノネノール、α−テルピネオール、アンブレットリド、ジメチルサルファイド、シクロテン、フラネオール、エチルシクロペンテノロン、フルフラール、トリメチルピラジン、2−メチルブチリックアシッド、プロピオニックアシッド、エチルチオアセテート、モノメンチルサクシネート、リナロールオキサイド、バニリルブチルエーテル、イソプレゴール、スピラントール等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、ウメフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ティーフレーバー等の調合香料、及び、エチルアルコール、プロピレングリコール、トリアセチン、グリセリン脂肪酸エステル等の香料溶剤等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。これらの香料素材の配合量は特に限定されないが、組成物中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、組成物中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0045】
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、ピロリン酸、グリセロリン酸及び炭酸並びにそれらのカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩、リボ核酸及びその塩類、更に水酸化ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を、本発明の効果を妨げない範囲で通常量添加することができる。
【0046】
防腐剤としては、ブチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等の安息香酸又はその塩、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、アスパルテーム、ネオテーム、ステビオサイド、スクラロース、モネリン、ネオヘスペリジン、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン等が挙げられる。
着色剤としては青色1号、黄色4号、赤色106号等の法定色素で規定されている色素の他、スピルリナ青色色素、クチナシブルー、カーサマスイエロー、クロチン、カーサマスレッド、ビートレッド、コチニール色素等の天然色素、群青、紺青、ベンガラ等の天然顔料等を使用できる。
なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0047】
本発明の歯磨剤組成物は、組成物中の直接還元糖量が0.012%未満、特に0.008%未満であることが好ましい。直接還元糖量が0.012%以上であると、ベルベリンの保存安定性、保存後の異味の抑制について、本発明の効果を達成できない場合がある。
【0048】
収容容器としては、収容する容器の材質は特に制限されず、通常、練歯磨剤組成物、液状歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。
【0049】
本発明では、ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045%未満のソルビットを、純分のソルビトールとして10〜45%配合することで、前記歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性を有効に向上させることができる。
更に、酸化エチレンの平均付加モル数が5〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することで、上記効果をより向上させることができる。
この場合、純分のソルビトール/ベルベリンの質量比、組成物中の直接還元糖含有量等のその他の構成は上述の記載と同様とすることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を示して本発明の特徴及び効果を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において%は特に記載のない限りいずれも質量%である。
【0051】
〔実施例、比較例〕
表1に示すソルビット液を使用し、表2〜4に示す組成の歯磨剤組成物を下記製造法により調製し、下記方法で評価した。結果を表2〜4に示す。
(製造法)
(i)精製水中にサッカリン、ソルビット液等の水溶性成分(粘結剤、プロピレングリコールを除く)を常温で混合溶解させたA相を調製した。
(ii)プロピレングリコール中にベルベリンを含有する植物抽出物、粘結剤を常温で分散させたB相を調製した。
(iii)撹拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。
(iv)C相中に、香料、研磨剤、アニオン性界面活性剤等の水溶性成分以外の成分を1.5Lのニーダー(石山商店製)を用い常温で混合し、減圧による脱泡(圧力4kPa)を行い、歯磨剤組成物1.5kgを得た。
【0052】
これらの歯磨剤組成物の調製には、オウバクエキス(ベルベリン含有量6.0%、小城製薬株式会社製)、炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製 ソフトン1500)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL HCO−5(日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−20(日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−40(日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO−80(日光ケミカルズ株式会社製))を用いた。その他、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、精製水は外原規(医薬部外品原料規格)規格品を用いた。ソルビットについては、表1に示すとおりであり、いずれもソルビット純分は70%である。なお、表2〜4中には純分のソルビトールの配合量及び直接還元糖含量を示した。直接還元糖含量は、JIS K1509におけるソルビットの直接還元糖量の測定方法に従って測定した値である。
【0053】
【表1】

*ソルビット液はいずれも純分のソルビトールが70%のものである(以下、同様。)。
【0054】
得られた歯磨剤組成物は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm口部内径8mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30、厚み257μm(大日本印刷株式会社製))に50g充填した。
使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
【0055】
歯磨剤組成物の収斂効果、ベルベリンの保存安定性、保存後の異味のなさ、保存後における練り製剤の外観は、以下の方法により評価した。
【0056】
(1)収斂効果の評価方法
10名の被験者により、サンプルの歯磨剤組成物(調製直後品)1gを市販品歯ブラシにとって3分間ブラッシングした後、使用後の収斂効果を以下の評点で官能評価した。10名の平均点から下記の評価基準で使用中の収斂効果を評価した。
【0057】
(評点)
4点:歯ぐきの引き締め実感を非常に強く感じる
3点:歯ぐきの引き締め実感を感じる
2点:わずかに歯ぐきの引き締め実感を感じる
1点:全く歯ぐきの引き締め実感を感じない
(評価基準)
◎:平均点が3.5点以上〜4.0点以下
○:平均点が3.0点以上〜3.5点未満
△:平均点が2.0点以上〜3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0058】
(2)ベルベリンの保存安定性
歯磨剤組成物を調製して容器に収容した直後と、50℃で3ヶ月保存後の歯磨剤組成物について、下記方法でベルベリン含量を求め、評価した。
歯磨剤組成物に内標準溶液(キノリンイエローSSのメタノール溶液)及び移動相を加え、均一に分散した後、液体クロマトグラフィー用フィルター(0.45μm)を用いて濾過し、試料溶液とした。必要に応じて均一分散後に遠心分離した。別に標準の塩化ベルベリンをメタノールに溶かした後、組成物のベルベリン濃度に合わせて移動相で希釈した後、内標準溶液を正確に加えて標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液20μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、QT(内標準物質のピーク面積に対する試料溶液のベルベリンのピーク面積の比)及びQS(内標準物質のピーク面積に対する標準溶液のベルベリンのピーク面積の比)を求め、下記式によりベルベリン含量を求め、ベルベリン残存率を算出した。
【0059】
ベルベリン含量(ppm)=
WS×(100−D)×(353.37/371.81)×(QT/QS)×(K/WT)
WS:標準塩化ベルベリンの量(g)
WT:試料の量(g)
D:標準塩化ベルベリンの水分(%)
K:定数(希釈濃度等により設定)
353.37:ベルベリンの分子量
371.81:塩化ベルベリンの分子量
【0060】
内標準物質 キノリンイエローSSのメタノール溶液
操作条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:345nm)
カラム:ODSカラム
カラム温度:室温
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=2/2/1
(ラウリル硫酸ナトリウム及び酒石酸を適量添加)
流量:ベルベリンの保持時間が約20分となるように調整
【0061】
ベルベリン残存率(%)=
〔(50℃、3ヶ月保存後のチューブ口元のベルベリン含量)/(初期のベルベリン含量)〕×100
【0062】
ベルベリンの保存安定性は下記基準で評価した。
(評価基準)
◎:ベルベリン残存率95%以上
○:ベルベリン残存率90%以上95%未満
△:ベルベリン残存率85%以上90%未満
×:ベルベリン残存率85%未満
【0063】
(3)保存後の異味のなさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。50℃、3ヶ月保存後の歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた異味について対照品(実施例1の−5℃、3ヶ月保存品)との比較で下記の4段階で評価し、10名の平均点を下記基準に従い評価し、◎、○、△、×で表に示した。なお、実施例1の−5℃で3ヶ月保存品(異味が全くない)を対照品として使用し、比較評価した。
【0064】
(評点) 保存後の異味のなさ(対照品:実施例1の−5℃、3ヶ月保存品)
4点:対照品と比較して異味が全くなかった
3点:対照品と比較して異味がほとんどなく問題なかった
2点:対照品と比較して異味があった
1点:対照品と比較してより強い異味があった
(評価基準)
◎:3.5点以上〜4.0点以下
○:3.0点以上〜3.5点未満
△:2.0点以上〜3.0点未満
×:2.0点未満
【0065】
(4)保存後における練り製剤の外観
歯磨剤組成物をラミネートチューブに充填し、各組成3本を50℃で3ヶ月間保存し、わら半紙上に直ちに歯磨剤組成物を15cm押出した場合の練り製剤の表面状態の滑らかさの評価として、艶、つぶ、しわ、均一性について以下の基準で評価した。
(評価基準)
4点:表面状態に艶があり、つぶ、しわなどが無く、練り表面が均一で滑らかである
3点:表面状態につぶ、しわが僅かに認められるが、練り表面はほぼ均一で滑らかである
2点:表面状態につぶ又はしわが認められ、練り表面の均一性がない
1点:表面状態に著しくつぶ又はしわが認められ、練り表面が不均一で連続性がない
(評点) 表面状態の程度
3本の評価点の平均値を求め、表面状態の度合いを下記基準で判定し、◎及び○のものを、保存後における練り製剤の外観の劣化(表面肌荒れ)を生じない優れた歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0066】
【表2】

*;オウバクエキス(小城製薬社製 水乾燥エキス ベルベリン含有量6.0%)を使用した(以下、同様。)。
**;ポリオキシエチレン(POE)硬化ヒマシ油はNIKKOL HCO−20を使用した。
【0067】
【表3−1】

【0068】
【表3−2】

【0069】
【表4−1】

【0070】
【表4−2】

【0071】
【表4−3】

【0072】
表2〜4の結果から、本発明の歯磨剤組成物(実施例)は、ベルベリン由来の収斂効果に優れ、ベルベリンの保存安定性に優れ、かつ保存後の異味が抑制され優れた使用感を有し、しかも、保存後の練り肌の外観を良好に保持できることがわかった。
【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

表中、部はいずれも質量部である(以下、同様。)。
【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
【表9】

【0078】
【表10】

【0079】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビットを純分のソルビトールとして10〜45質量%配合したことを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
ソルビトール/ベルベリンの質量比が350〜70,000である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
組成物中の直接還元糖含有量が0.012質量%未満である請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
炭酸カルシウムの配合量が5〜50質量%である請求項1、2又は3記載の歯磨剤組成物。
【請求項5】
更に、酸化エチレンの平均付加モル数が5〜80モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合した請求項1乃至4のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
ベルベリンを含有すると共に、研磨剤として炭酸カルシウムを配合してなる歯磨剤組成物に、直接還元糖量が0.045質量%未満のソルビットを純分のソルビトールとして10〜45質量%配合して、前記歯磨剤組成物におけるベルベリンの安定性を向上する方法。

【公開番号】特開2012−92042(P2012−92042A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240538(P2010−240538)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】