説明

歯科ユニット

【課題】操作性に優れる患者用椅子を備える歯科ユニットを提供する。
【解決手段】基台30及び患者用椅子10を備える歯科ユニット1であって、患者用椅子は、上下動可能な着座部11と、該着座部の一端側を軸に回動して傾倒起立可能な背もたれ12と、該背もたれの上端に、上下動、及び傾倒起立可能に設けられたヘッドレスト13と、着座部、背もたれ及びヘッドレストの上下動、傾倒起立を作動させる操作のためのフットスイッチ40と、を備え、フットスイッチは第一のモードと、第二のモードとを切り換える切替手段42と、着座部、背もたれ及びヘッドレストの上下動、傾倒起立を作動させる操作部材43とを有し、第一のモードが選択されたときには、操作部材の操作により着座部の上下動及び背もたれの傾倒起立が行われ、第二のモードが選択されたときには、操作部材の操作によりヘッドレストの上下動及び傾倒起立が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科において患者が着座する歯科用椅子を備えた歯科ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科ユニットに備えられる患者用椅子は、着座部が昇降自在であるとともに、背もたれを傾倒、起立できるように構成されている。また、ヘッドレストも背もたれに対して昇降、傾倒、起立が可能である。そして治療や処置の内容に応じて、着座部を適宜上げ下げし、背もたれを傾倒、起立させ、ヘッドレストも同様に上げ下げ、傾倒、起立させる。このような患者用椅子における昇降、傾倒、起立の選択、操作は施術者である例えば歯科医師等により行われる。
【0003】
患者用椅子を操作する際に操作者は通常、患者用椅子の背面側に位置することが多い。従って患者用椅子の上記操作をするための操作レバーは該患者用椅子の背面側に配置されている。具体的には例えば非特許文献1に表れているように、患者用椅子の背面には複数のジョイスティックが備えられ、それぞれヘッドレスト用(ヘッドレストの昇降、傾倒起立)、及びイスマニュアル用(患者用椅子の昇降、背もたれの傾倒起立)とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】タカラベルモント株式会社、”アルテ”、[online]、[平成21年5月27日検索]、インターネット〈URL:http://www.takara-dental.jp/products/chairunit/arte/index.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の患者用椅子の操作用部材は、非特許文献1にも表れているように、操作の種類によって異なる操作部材(ジョイスティック)を操作しなければならず、さらには当該複数の操作部材は離隔して設けられている。従って操作者は操作の内容によって場所の移動をしたり、操作のために手や脚を移動させたりしなければならなかった。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、操作性に優れる患者用椅子を備える歯科ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明は、基台(30)及び該基台上に具備される患者用椅子(10)を備える歯科ユニット(1)であって、患者用椅子は、上下動可能に設けられた着座部(11)と、該着座部の一端側を軸に回動して傾倒起立可能に設けられた背もたれ(12)と、該背もたれの上端に、該背もたれに対して上下動、及び該背もたれの上端側の端部を軸として傾倒起立可能に設けられたヘッドレスト(13)と、着座部、背もたれ及びヘッドレストの上下動、傾倒起立を作動させる操作のためのフットスイッチ(40)と、を備え、フットスイッチは、着座部の上下動及び背もたれの傾倒起立を可能とする第一のモードと、ヘッドレストの上下動及び傾倒起立を可能とする第二のモードとを切り換える切替手段(42)と、着座部、背もたれ及びヘッドレストの上下動、傾倒起立を作動させる操作部材(43)とを有し、第一のモードが選択されたときには、操作部材の操作により着座部の上下動及び背もたれの傾倒起立のいずれかが行われ、第二のモードが選択されたときには、操作部材の操作によりヘッドレストの上下動及び傾倒起立のいずれかが行われる歯科ユニットを提供することにより前記課題を解決する。
【0009】
ここで、フットスイッチ(40)は、基台(30)のうち患者用椅子(10)の背面側で、基台の下部の幅方向中央に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯科ユニットによれば、患者用椅子の一か所で該患者用椅子の上下動、傾倒、起立を操作することができ、利便性が高い。また、これが患者用椅子の左右方向略中央に設けられていれば、操作者が患者用椅子の背面側のいずれの位置からも脚が届きやすく、移動することなく、又は少ない移動で操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】1つの実施形態に係る歯科ユニットの側面図である。
【図2】1つの実施形態に係る歯科ユニットのうちの患者用椅子背面側斜視図である。
【図3】フットスイッチの外観を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、1つの実施形態に係る歯科ユニット1を側面から見た図である。図2は、図1のうちの患者用椅子10を背面上方から見た斜視図である。
歯科ユニット1は、基台30上に設置された患者用椅子10を有し、その上方には、歯科用照明2が設けられている。さらに、患者用椅子10の脇には、スピットン4、ドクターユニット20、及びアシスタントユニット25がそれぞれ配置されている。
【0014】
患者用椅子10は、着座部11、背もたれ12、フットレスト14を備えている。また、背もたれ12の上端には、ヘッドレスト13が設けられている。
【0015】
ここで、患者用椅子10の着座部11は、基台30に対して上下方向に移動可能に取り付けられ、背もたれ12、ヘッドレスト13、フットレスト14は、着座部11と一体に昇降可能である。また、患者用椅子10は、傾きを変更することが可能とされており、背もたれ12及びフットレスト14は、着座部11の前後にある所定の点を支点としてそれぞれの傾きを変更することができる。
このような患者用椅子10の上下動や傾きの変更は、基台30の筐体内に収められた油圧回路等により可能とされている。また、油圧回路等の作動、停止、すなわち着座部11の上下動、背もたれ12の傾倒起立は、フットスイッチ40を操作することによって行うことができる。フットスイッチ40については後で詳しく説明する。また、ヘッドレスト13も背もたれ12に対して上下動可能、及び背もたれ12の上端側にある所定の点を支点として傾きを変更することができる。これもフットスイッチ40を操作することによって行うことが可能である。
【0016】
歯科用照明2は、治療を行うときに的確に患者の口腔内を照明することができるように、自在継ぎ手等により自由度高く移動回動可能なアーム3を介して取り付けられている。従って、歯科用照明2の位置、角度を調整することにより施術者は患者の口腔内を適切に観察することができる。
【0017】
スピットン4は、治療中や治療後に患者がうがいをして、口腔内を洗浄するときに使用するものである。従って、スピットン4は、うがい水を供給する不図示のうがい水供給部と、うがいした後の口腔内の水を吐き捨てるための鉢部5とを有している。そして鉢部5に排出された唾液や水は、ウオーターユニット8中の排水トラップを介して排出される。
【0018】
ドクターユニット20は、患者用椅子の側方を前後方向に移動可能に取り付けられている。ドクターユニット20の上面には、施術者がレントゲン写真を見ながら治療等ができるように、フィルムビュアー21が備えられている。近年のデジタル技術の進歩によりレントゲンを画像で見られることも多いので、ここには、フィルムビュアーの代わりにモニター等の映像表示装置が配置されることも多い。また、側面には操作パネル22が具備されており、歯科用照明2の点灯、消灯等が可能とされている。
【0019】
さらに、ドクターユニット20には、施術者が使用するハンドピース23、及びこれを収納するホルダーが設けられている。ハンドピース23としては、例えば、エアタービン、マイクロエンジ、スケーラ、シリンジ等を挙げることができる。ほとんど全てのハンドピース23は、チューブ類24を介して、電気回路、水回路、エア回路等と連結されている。
【0020】
アシスタントが使用する器具が設けられたアシスタントユニット25は、患者用椅子10を挟んで、ドクターユニット20に対向するように、該ドクターユニット20と同様に前後方向に移動可能に取り付けられている。アシスタントユニット25には、助手が使用するバキューム、排唾管、シリンジ等のハンドピースと、それらを収納するホルダーが設けられている。これにより、例えば、バキュームや排唾管は、吸引管を介してバキュームユニットにより吸引される。
【0021】
次に患者用椅子10についてさらに詳しく説明する。上記したように、患者用椅子10の着座部11は、基台30に対して上下方向に移動可能に取り付けられ、背もたれ12、ヘッドレスト13、フットレスト14は、着座部11と一体に昇降可能である。また、背もたれ12は、傾きを変更することが可能とされており、当該背もたれ12及びフットレスト14は、着座部11の前後にある所定の点を支点としてそれぞれの傾きを変更することができる。また、ヘッドレスト13も背もたれ12に対して上下動可能、及び背もたれ12の上端側にある所定の点を支点して傾きを変更することができる。そしてこれらは基台30内に収められた油圧回路等により可能とされ、その作動、停止、すなわち患者用椅子10の上昇下降、傾倒起立は、フットスイッチ40を操作することによって行うことができる。
【0022】
図3にフットスイッチ40の外観を示した。図3(a)は背面から見下ろした斜視図、図3(b)は側面から見た図である。フットスイッチ40は、基体41、切替スイッチ42、及び操作部材43を備えている。
基体41は、フットスイッチ40の基礎となる箱状の部材である。箱状の内側には各種電子回路等の制御系機器が配置され、後述する切替スイッチ42、操作部材43の操作を基台30の油圧回路に指令し、これらを適切に作動させる。
【0023】
切替スイッチ42は、モードの切り替えをするためのスイッチで、該スイッチを押すごとに第一のモードと第二のモードとが交互に切り換えられる。
本実施形態では、当該切替スイッチを背面からみて右側に配置したが、これは通常施術者は患者の右側で作業することが多いからである。ただし、これに限定されるものではなく、右側と左側の両方に設けられてもよい。これにより左側からの操作も容易となる。
【0024】
操作部材43は、基体41の外に突出して設けられた棒状の部材で、図3(a)にP、Qで示した方向に移動可能であるとともに、図3(b)にR、Sで示した方向にも回動することができる。これにより上記切替スイッチ42で選択されたモードに基づいて、操作者が操作部材43をP、Q、R、Sのいずれかに移動回動させることにより、患者用椅子10を所望の姿勢にすることができる。
【0025】
すなわち、本実施形態では切替スイッチ42の第一のモードは、着座部11の上下動及び背もたれ12の傾倒起立を可能とするモードである。当該第一のモードでは操作部材43を矢印Pの方向に移動させると着座部11は上昇し、矢印Qの方向に移動させると着座部11は下降する。また、操作部材43を矢印Rの方向に移動させると背もたれ12が傾倒し、矢印Sの方向に移動させると背もたれ12が起立する。
【0026】
一方、本実施形態では切替スイッチ42の第二のモードは、ヘッドレスト13の上下動及び傾倒起立を可能とするモードである。当該第二のモードでは操作部材43を矢印Pの方向に移動させるとヘッドレスト13は上昇し、矢印Qの方向に移動させると下降する。また、操作部材43を矢印Rの方向に移動させるとヘッドレスト13が傾倒し、矢印Sの方向に移動させると起立する。
【0027】
フットスイッチ40は、上記のような操作を操作者のつま先等でできるようにするため、図1、図2からわかるように、基台30のうち患者用椅子10の背面側で、該基台30の左右方向(幅方向)の略中央の下部に配置される。
【0028】
このようなフットスイッチ40を備える歯科ユニット1により、患者用椅子10の背面側の1か所で該患者用椅子10の着座部11、背もたれ12、ヘッドレスト13の上下動、傾倒、起立を操作することができ、利便性が高い。また、これが患者用椅子10背面側の左右方向略中央に設けられているので、操作者がいずれの位置にいても、フットスイッチ40に脚が届きやすく、操作者の体全体を移動することなく、又は少ない移動で操作が可能となる。
【0029】
フットスイッチ40には、誤操作を防止するための機能を備えてもよい。具体的には例えば、いずれのモードにあるかをLED等の点灯、消灯により視覚的にわかるように表示すること、及び/又はいずれのモードにあるかを音、音声により聴覚的に認識できるようにすることを挙げることができる。
【0030】
また、一定時間フットスイッチを使用しないときには自動に第一のモード(着座部及び背もたれの作動のモード)になるようにしてもよい。これによりしばらく他の作業をした後でも、現在のモードを迷うことなく操作でき、利便性の高いものとすることができる。
【0031】
以上、現時点において実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う歯科ユニットもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0032】
1 歯科ユニット
2 歯科用照明
3 アーム
4 スピットン
5 鉢部
8 ウオーターユニット
10 患者用椅子
11 着座部
12 背もたれ
13 ヘッドレスト
14 フットレスト
20 ドクターユニット
21 フィルムビュアー
22 操作パネル
23 ハンドピース
24 チューブ類
25 アシスタントユニット
30 基台
40 フットスイッチ
41 基体
42 切替スイッチ(切替手段)
43 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台及び該基台上に具備される患者用椅子を備える歯科ユニットであって、
前記患者用椅子は、
上下動可能に設けられた着座部と、
該着座部の一端側を軸に回動して傾倒起立可能に設けられた背もたれと、
該背もたれの上端に、該背もたれに対して上下動、及び該背もたれの上端側の端部を軸として傾倒起立可能に設けられたヘッドレストと、
前記着座部、背もたれ及びヘッドレストの上下動、傾倒起立を作動させる操作のためのフットスイッチと、を備え、
前記フットスイッチは、前記着座部の上下動及び背もたれの傾倒起立を可能とする第一のモードと、前記ヘッドレストの上下動及び傾倒起立を可能とする第二のモードとを切り換える切替手段と、
前記着座部、背もたれ及びヘッドレストの上下動、傾倒起立を作動させる操作部材とを有し、
前記第一のモードが選択されたときには、前記操作部材の操作により前記着座部の上下動及び背もたれの傾倒起立のいずれかが行われ、
前記第二のモードが選択されたときには、前記操作部材の操作により前記ヘッドレストの上下動及び傾倒起立のいずれかが行われる、歯科ユニット。
【請求項2】
前記フットスイッチは、前記基台のうち前記患者用椅子の背面側で、前記基台の下部の幅方向中央に配置されている請求項1に記載の歯科ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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