説明

歯科又は外科用手持ち器械

本発明は、取り外しの可能な器具を高速で回転させるように設計された、前記器具を固定するための把持機構、該把持機構を回転駆動するモータ機構、及び前記把持機構と前記モータ機構とを連結し、内部を前記把持機構のシャフトの端部(20)がスライドすることのできる中空のシャフト(28)を有する連結システム(21)を備えた手持ち医療用器械に関する。前記連結システム(21)と前記把持機構のシャフトの端部(20)とは、該端部(20)に設けられた複数の突出部(26)が、前記中空のシャフト(28)内に設けられた停止部材(30)によって、回転すると固定される差込回転固定部材を用いて組み立てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用器械の分野に関する。より詳しくは、歯医者又は歯科研究所、及び顕微外科で使用することのできる、高速で動くことができ、その終端部がバー又は類似の部材である器具を回転させるための手持ち用の器械に関する。
【背景技術】
【0002】
この型の一器械がWO 2005/089666に記載されている。通常、器具の柄は、その端部が電気モータ又は空気タービンによって駆動される中空の回転シャフトの内側に配置されたクランプによって保持されており、固定された管状鞘の内部に設けられた軸受けによって取り付けられている。クランプによる把持と把持解除とは、シャフト上に回転可能に取り付けられたスリーブをある方向、又はその逆方向に回すことによって行うことができる。
【0003】
この型の器械は、通常、3つの部品、即ち、その駆動軸と器具を固定するために駆動される軸を有する把持機構、把持機構を回転駆動するモータ機構、及び前記把持機構と前記モータ機構とを連結する連結システムにおいて実現される。
【0004】
同じモータ機構に他の型の把持機構を作動させ、摩耗を加速させる応力を受けやすい連結システムの交換を可能にするために、これら3つの部品は、相互に容易に分離することができなければならない。
【0005】
最初に、従来技術の態様における、前記3つの部品が組み立てられる方法を示している、図1について述べる。理解を容易にするために、器具が回転駆動される機械の端部(図の右側の部分)と、該器具の動作先端を有する端部(図の左側の部分)とをそれぞれ「上流側」、「下流側」と称することにする。さらに、この図は器械の上流側の部品と下流側の部品とを示していないが、それは、これらの部品が前記文献WO 2005/089666号公報に記載されているものと全く同じであってもよいからであり、この文献を参照することによって器具が駆動される方法を理解することができる。
【0006】
図1において、参照符号の10として把持機構の駆動シャフトの上流側端部を、参照符号の11としてモータ機構のシャフトの下流側端部を、参照符号の12として本発明に係る連結システムを示した。
【0007】
連結システムは、その下流側端部に、完全に対向する、軸方向に延在する細長い2つの窓14を備えた中空のシャフト13を有している。把持機構のシャフトの上流側端部10は、中空のシャフト13の下流側端部においてスライドすることができるように取り付けられており、除去可能な接続ピン15が貫通している。このピンの移動は2つの窓14によって軸方向に制限されている。中空のシャフト13のこれらの窓を含む部分の周囲に留め付けられた割ブシュ16によって、前記接続ピン15を確実に所定の位置に保持する。駆動シャフトを連結システムの把持機構から分離するために、割ブシュ16を外して接続ピン15を露出させ、次いで、この接続ピンを除去することによって2つのシャフト10と13とを分離することができる。
【0008】
中空のシャフト13の上流側端部は、完全に対向する、軸方向に延在する細長い2つのノッチ17(図ではその一方のみが見えている)を備えており、これらのノッチは、モータ機構のシャフト11の末端をなす2つのひれ部材18(図ではその一方のみが見えている)をそれぞれ受容するようにその大きさと形状が定められている。一変形例によると、ひれ部材18の挿入を容易にするために、完全に対向するノッチの対の数は一対より多くてもよい。
【0009】
最後に、把持機構の駆動シャフト10の周囲に配設され、中空のシャフト13を上流側に押しているバネ19の存在にも言及しておく。このバネのおかげで、作業者がモータ機構を連結システムに接続する際にモータを停止するのを忘れたとしても、中空のシャフト13は、若干は内側に引っ込むことができて操作を容易にすることができる。
【0010】
モータ機構から連結システムへのこのような接続モードは完全に満足の行くものであるが、連結システムから把持機構の駆動シャフトへの接続に関しては、同じことが当てはまらない。実際、前記解決方法は比較的複雑な割ブシュを必要とし、このような割ブシュを作るのは容易ではなく、また、その組立と分解とには特別な道具を必要とする。さらに、留め付けられたこの割ブシュによっては、モータ機構が未だ回転しているときに連結システムをモータ機構に接続するのに耐えて保持することができるという保証がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2005/089666
【特許文献2】DE 197 07 373
【発明の概要】
【0012】
本発明は、特に、前記欠点のない手持ち器械を提供することを目的とする。
【0013】
この目的を達成するために、器具を固定するための把持機構と、該把持機構を回転駆動するためのモータ機構と、前記把持機構とモータ機構との連結システムとを有し、該連結システムが、前記把持機構のシャフトの端部をスライドして挿入することのできる中空のシャフトを有する、DE 197 07 373に記載されているような手持ち器械を提案する。前記連結システムと前記把持機構のシャフトの端部とは、前記把持機構のシャフト端部に設けられた複数の突起部が、各中空のシャフト内に設けられた停止部材によって、回転すると固定される差込回転固定部材を用いて組み立てられる。
【0014】
本発明の他の目的は、前段落に記載されている器械を、特に差込回転固定を行う方法に関して改良し、把持機構とモータ機構との連結を容易にすることである。
【0015】
この目的を達成するために、本発明によると、把持機構のシャフトの端部は円筒形の部分を有し、該部分は、断面が正方形である細くなった部分に繋がっている。前記円筒形の部分との接続部位において、断面が正方形である細くなった部分にはその外周面が円環形となるように切削部分が形成されており、この細くなった部分の末端が差込回転固定部材の突起部になっている。
【0016】
本発明の他の特徴及び効果は、添付の図面を参照してなされる以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術の態様において、把持機構、モータ機構、及び連結システムが組み立てられる方法を示している。
【図2a】特徴的な状態を示す、本発明による器械の部分縦断面図である。
【図2b】別の特徴的な状態を示す、本発明による器械の部分縦断面図である。
【図2c】また別の特徴的な状態を示す、本発明による器械の部分縦断面図である。
【図3】図3aと図3bとは、90度異なる角度から見た、把持機構の上流側端部を示している。
【図4】連結システムを線AAで切断した、直径方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2において、参照符号20は把持機構のシャフトの上流側端部を示し、参照符号21はモータ機構(図示されていないが、図1に示されているものと全く同じである。)のシャフトへ前記端部20を連結するためのシステムを示している。本発明の重要な特徴によると、把持機構のシャフトと連結システムとが、回転によって固定される突起部を備えた差込回転固定部材を用いて組み立てられる。
【0019】
図3a及び3bにおいても示されているように、把持機構のシャフトの上流側端部20が円筒形の部分22を有し、該円筒形の部分は、断面が正方形である細くなった部分23に繋がっている。前記断面が正方形である細くなった部分23の前記円筒形の部分22との接続部位において、その外周面が円環となるように切削部分25が形成される。最後に、前記断面が正方形である細くなった部分23の末端は、対角線上にあって対向している2つの突起部26になっており、これらは、既に述べた差込回転固定部材の一部をなしている。
【0020】
シャフトの円筒形の部分22の周囲に配置され、図1のバネ19と同じ役割を有するバネ27の存在にも注意を払う必要がある。
【0021】
以下において、連結システム21が中空のシャフト28を有していることを示している図2、また、より具体的には図4について述べる。この中空のシャフトの内側では、把持機構のシャフトの上流側端部20がスライドすることができる。また、この中空のシャフト28の上流側端部は、図1のノッチ17と同じ役割を有する、軸方向に延在する細長い2つのノッチ29(図では、その一方のみが見えている。)を備えている。
【0022】
この中空のシャフト28の独自性は、該シャフトの内側であってシャフトの両端部間のほぼ中央の位置に壁30を有していることである。この壁は停止部材となっており、また、把持機構のシャフトの2つの端部突起部26のみを通過させるように大きさを定めて形成された長方形の窓部31が開設されている。この長方形の窓部の幅は断面が正方形である細くなった部位23の辺の長さに対応する。図4において、下流側から見た壁30が示されている。その自由な回転を可能にするために、断面が正方形である細くなった部分23に設けた切削部分25の円環の外側直径が窓部31の幅に対応することに注意が必要である。
【0023】
図2は、そのa、b及びcの各場合における、前記要素を示している。
−窓部31を通過した後の把持機構のシャフトの上流側端部20が、中空のシャフト28にほぼ嵌合している第一の最極の位置にある場合。
−同じ位置において、中空のシャフト28が90度回転した場合。
−把持機構のシャフトの上流側端部20と中空のシャフト28との嵌合が最も浅い、第二の最極の位置にある場合。
【0024】
把持機構のシャフトの端部20と連結システム21との接続は次のように行われる。
【0025】
(図2a)
前記断面が正方形である部分23と突起部26とが前記窓部31を通るように回転させて把持機構と連結システムとの向きを定めながら、把持機構のシャフトの端部20を中空のシャフト28の中へと導入する。円筒形の部分22が壁30に当接すると、突起部の移動が停止される。次いで、バネ27が可能な限り圧縮される。この位置において、円環形の切削部分25は完全に窓部31の中にあり、自由に回転することができる。
【0026】
(図2b)
中空のシャフト28を手で90度回転する。円環形の切削部分25によってこのような回転が可能である。
【0027】
(図2c)
この段階で残っているのは中空のシャフト28を放すことだけである。中空のシャフトを放すと、バネ27によって及ぼされる戻し作用によって、該シャフトは断面が正方形である部分23に接してスライドする。中空のシャフトが90度回転されているので、把持機構のシャフトの突起部26が窓部31を通過せずに壁30に当接する。このようにして、接続が実現される。
【0028】
把持機構と連結システムとの分離は、逆の操作を行えばよいので、詳細に記述する必要がない。
【0029】
操作者が前記90度の回転を行うのを容易にするために、把持機構と連結システムとに視覚的な記号などを設けておくこともできるのは、言うまでもない。
【0030】
このようにして、実現が容易で、操作者によるその使用がたやすく、モータが回転している状態での接続に耐えることのできる固定を保証する設計を採用した、把持機構と該把持機構のモータ機構への連結を可能にするシステムとの組立体を含む手持ち器械が提案された。把持機構のシャフトの断面が正方形である部分に形成された円環形の切削部分25は十分に下流側にあり、モータ機構を連結システムに接続する時点で、連結システムの窓部31が円環形の切削部分に達するまで中空のシャフト28が押し戻されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り外しの可能な器具を高速で回転させるように設計された、前記器具を固定するための把持機構、該把持機構を回転駆動するモータ機構、及び前記把持機構と前記モータ機構とを連結し、内部を前記把持機構のシャフトの端部(20)がスライドすることのできる中空のシャフト(28)を有する連結システム(21)を備え、前記連結システム(21)と前記把持機構のシャフトの端部(20)とは、該端部(20)に設けられた複数の突起部(26)が、前記中空のシャフト(28)内に設けられた停止部材によって、回転すると固定される差込回転固定部材を用いて組み立てられる、前記把持機構の手持ち医療用器械であって、
把持機構のシャフトの端部(20)が円筒形の部分(22)を有し、該円筒形の部分が、断面が正方形である細くなった部分(23)に繋がっており、前記円筒形の部分との接続部位において、該断面が正方形である細くなった部分には、該断面が正方形である細くなった部分の外周面が円環形となるように切削部分が形成されており、該断面が正方形である細くなった部分(23)の末端が前記複数の突起部(26)になっていることを特徴とする、器械。
【請求項2】
前記中空のシャフト(28)が、その内部に、前記停止部材を形成する壁(30)を有しており、該壁に、前記複数の突起部(26)が通るように大きさを定められて形成された窓部(31)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の器械。
【請求項3】
前記断面が正方形である細くなった部分(23)の前記円環形の切削部分(25)の直径が、該円環形の切削部分が前記窓部(31)の内側で自由に回転することのできる大きさであることを特徴とする、請求項2に記載の器械。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−501302(P2010−501302A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526033(P2009−526033)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058372
【国際公開番号】WO2008/025668
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(508078606)ビエン−エアー ホールディング エスアー (9)
【氏名又は名称原語表記】Bien−Air Holding SA
【住所又は居所原語表記】Langgasse 60,CH−2504 Bienne,Switzerland
【Fターム(参考)】