説明

歯科用コンポジットレジン

【課題】歯質及びボンディング材との接着性に優れる歯科用コンポジットレジンを提供する。
【解決手段】4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖、2個以上の重合性基及び2個以上の水酸基を有する重合性単量体(A)を含有してなる歯科用コンポジットレジンとする。好ましい実施態様においては、歯科用コンポジットレジンは、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部及び架橋性の重合性単量体(B)を5〜70質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用コンポジットレジンに関し、より詳しくは、歯質との接着性に優れるコンポジットレジンに関する。
【背景技術】
【0002】
歯の欠損、う蝕の治療に際して、形成した窩洞への歯科用コンポジットレジンの充填修復が行われている。歯科用コンポジットレジンは、(メタ)アクリル系モノマー等の重合性単量体と充填剤を含む材料であり(例えば、特許文献1〜4参照)、窩洞に詰めた後、硬化させて用いられる。
【0003】
歯科用コンポジットレジンの重要な特性としては、歯質との接着性又はボンディング材との接着性が挙げられる。これらの接着性が悪い場合には、硬化した歯科用コンポジットレジンが窩洞から脱落することがある。近年、歯科用コンポジットレジンの接着性の向上により、コンポジットレジン硬化物が脱落することは減ってきたものの、コンポジットレジン硬化物の脱落の可能性をより減少させるために、さらに高い接着性を有する歯科用コンポジットレジンの開発が望まれている。
【特許文献1】特開2006−131621号公報
【特許文献2】特開2005−320283号公報
【特許文献3】特開2005−053898号公報
【特許文献4】特開2001−139411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、歯質及びボンディング材との接着性に優れる歯科用コンポジットレジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖、2個以上の重合性基及び2個以上の水酸基を有する重合性単量体(A)を含有してなる歯科用コンポジットレジンである。
【0006】
本発明において、前記重合性単量体(A)が、式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Gは、水酸基又は重合性基であり、*は、結合手を示す。)
で表される基を有することが好ましい。また、前記重合性基が、下記式(2)、下記式(3)又は下記式(4)で表される基であることが好ましい。
【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
(式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示し、*は、結合手を示す。)
【0013】
本発明において重合性単量体(A)は、式(5)
【0014】
【化5】

【0015】
(式中、Gは、水酸基又は重合性基であり、nは、2以上の整数であり、Gのうち少なくとも2個が水酸基であり、かつGのうち少なくとも2個が重合性基である。)
で表される化合物であることが好ましい。より好ましい重合性単量体(A)の一つは、式(6)
【0016】
【化6】

【0017】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示し、mは、2以上の整数を示し、kは、1以上の整数を示し、m個のエステル基を有する単位とk個の水酸基を有する単位の配列順序は、任意である。)
で表される化合物であり、ここで、mが、2〜5であり、かつkが、1〜5であることが好ましい。
【0018】
より好ましい重合性単量体(A)の別の一つは、式(7)
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示し、pは、2以上の整数を示す。)
で表される化合物であり、ここで、pが、2〜4であることが好ましい。
【0021】
上記において、R1が、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0022】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、重合性単量体成分の全量100質量部中において、前記重合性単量体(A)を1〜80質量部含有してなることが好ましい。
【0023】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、架橋性の重合性単量体(B)を、重合性単量体成分の全量100質量部中において1〜90質量部さらに含有してなることが好ましい。
【0024】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)を、重合性単量体成分の全量100質量部中において1〜80質量部さらに含有してなることが好ましい。また、酸性基を有する重合性単量体(D)を、重合性単量体成分の全量100質量部中において1〜50質量部さらに含有してなることが好ましい。
【0025】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.01〜20質量部含有してなることが好ましい。また、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合促進剤(F)を0.001〜30質量部含有してなることが好ましい。また、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、フィラー(G)を40〜900質量部含有してなることが好ましい。
【0026】
本発明の歯科用コンポジットレジンの好ましい実施態様としては、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を10〜80質量部及び架橋性の重合性単量体(B)を20〜90質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンが挙げられる。
【0027】
本発明の歯科用コンポジットレジンの好ましい実施態様としてはまた、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、架橋性の重合性単量体(B)を5〜70質量部、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)を5〜70質量部、及び酸性基を有する重合性単量体(D)を1〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンが挙げられる。
【0028】
上記2つの好ましい実施態様において、架橋性の重合性単量体(B)が、トリエチレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(オキシエチレン鎖平均重合度=1〜4)、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体であることが好ましい。
【0029】
本発明の歯科用コンポジットレジンの最も好ましい実施態様の一つとしては、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンを5〜70質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5〜70質量部、及び10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェートを1〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンが挙げられる。
【0030】
本発明の歯科用コンポジットレジンの最も好ましい実施態様の別の一つとしては、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンを5〜70質量部、トリエチレングリコールジメタクリレートを5〜70質量部、及び10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェートを5〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンが挙げられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、歯質(特に象牙質)及びボンディング材との接着性に優れる歯科用コンポジットレジンが提供される。よって、本発明の歯科用コンポジットレジンを歯の欠損、う蝕の治療などに使用すれば、コンポジットレジン硬化物の窩洞からの脱落の可能性が非常に低いものとなる。また、本発明の歯科用コンポジットレジンに適切な成分を添加することにより、接着性が高くかつ粘性が良好なコンポジットレジンを得ることができる。さらに、本発明の歯科用コンポジットレジンに適切な成分を添加することにより、自己接着性コンポジットレジンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
まず、本発明の歯科用コンポジットレジンの必須成分である重合性単量体(A)について説明する。
【0033】
重合性単量体(A)
重合成単量体(A)は、4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖、2個以上の重合性基及び2個以上の水酸基を有する。重合成単量体(A)として、係る定義を満たす重合性単量体を、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
重合性単量体(A)は、2個以上の重合性基を有する。この重合性基が重合することによって硬化が可能となり、歯科用コンポジットレジンとしての機能が発現する。また、重合性基の数が2個以上であるため、重合性単量体(A)は架橋性を有する。従って、歯科用コンポジットレジンの硬化性及び硬化物の機械的強度が高い。また、ボンディング材中の未反応の重合性基と反応しやすくなり、ボンディング材との接着性も高くなると考えられる。
【0035】
重合性単量体(A)に関し、重合性基とは、ラジカル重合可能な官能基を含む基のことをいい、例えば、ビニル基を含む基が挙げられる。特に、重合性基としては、重合反応性の観点から下記式(2)、式(3)又は式(4)で表される基が好ましく、これらのうち、重合性単量体(A)への導入の容易さの観点から、式(2)で表される基が最も好ましい。
【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
ここで、R1、R2、及びR3はそれぞれ、水素原子、又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であり、*は結合手を示す。炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基等が挙げられる。
【0040】
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプタニル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロオクタニル基、n−ノニル基、シクロノナニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0041】
炭素数2〜10のアルケニル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0042】
炭素数2〜10のアルキニル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、1−エチル−2−プロピニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、1−メチル−2−ブチニル、4−ペンチニル、1−メチル−3−ブチニル、2−メチル−3−ブチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、1−エチル−2−ブチニル、3−ヘキシニル、1−メチル−2−ペンチニル、1−メチル−3−ペンチニル、4−メチル−1−ペンチニル、3−メチル−1−ペンチニル、5−ヘキシニル、1−エチル−3−ブチニル等が挙げられる。
【0043】
重合性単量体(A)を含む歯科用コンポジットレジンが使用される際には、ラジカル重合が行われる。従って、R1、R2、及びR3はそれぞれ、最終生成物のラジカル重合反応性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。また、加水分解などにより重合性基が重合性単量体(A)より脱離するおそれがある。脱離した重合性基の生体への刺激性を考慮した場合、重合性基は、メタクリロイルオキシ基を含むことが好ましい。よって、R1、R2、及びR3は、メチル基であることがより好ましい。
【0044】
重合性単量体(A)は、2個以上の重合性基を有するが、2個以上の重合性基は同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
重合性単量体(A)は、2個以上の水酸基を有する。この水酸基によって、重合性単量体(A)は、高い親水性が付与されて象牙質のコラーゲン層への浸透性が良好となり、それにより歯科用コンポジットレジンの歯質への接着性が良好となる。また、一般的な歯科用ボンディング材は、象牙質のコラーゲン層への浸透性の観点から親水性のモノマーが配合されているために親水性が高いものであるが、この水酸基によって、重合性単量体(A)は、高い親水性が付与されてボンディング材との親和性が高くなり、ボンディング材との接着性も良好となる。
【0046】
重合性単量体(A)は4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖を有する。この炭素鎖が、重合性単量体(A)の骨格の全部又は一部を構成し、当該炭素鎖に、前記重合性基と水酸基が結合していることが好ましい。
【0047】
重合性単量体(A)の例としては、4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖を有する4価以上のアルコール化合物の水酸基の一部を、水酸基及び重合性基がそれぞれ2個以上となるように重合性基に置換した化合物が挙げられる。4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖を有する4価以上のアルコール化合物の例としては、特に限定されないが、炭素数4〜20の糖アルコール、単糖類、二糖類及び三糖類などが好適なものとして例示される。糖アルコールとしては、炭素数4の糖アルコールであるエリスリトール、炭素数5の糖アルコールであるキシリトール、リビトール、アラビニトールや、炭素数6の糖アルコールであるマンニトール、ソルビトール及びイジトールや、炭素数12の糖アルコールであるマルチトールなどが好ましく用いられる。また、アミノ基を含有する糖アルコールであるグルカミンも好ましく用いられる。単糖類としては、炭素数5の単糖であるキシロース、リボース、アラビノース、リキソースや、炭素数6の単糖であるグルコース、マンノース、ガラクトース、ソルボース及びフルクトースなどが好ましく用いられる。また、アミノ基及びその誘導体を含有する単糖類であるグルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルマンノサミン、N−アセチルガラクトサミンなども好ましく用いられる。二糖類としては、トレハロース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオースなどが好ましく用いられる。三糖類としては、カップリングシュガー(登録商標)、ラクトスクロース、マルトトリオース、イソマルトトリオースなどが好ましく用いられる。歯科用コンポジットレジンの歯質(特に象牙質)との接着性の観点からは、歯質(特に象牙質)への浸透性が高いことが好ましい。かかる観点からは、前記アルコール化合物の炭素数としては、4〜15がより好ましく、4〜9がさらに好ましく、4〜7が特に好ましい。また、同様の観点から、前記アルコール化合物の水酸基の数は4〜15が好ましく、4〜9がより好ましく、4〜7が特に好ましい。好ましい具体的なアルコール化合物は、糖アルコールとしては、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール;単糖類としては、グルコース、グルコサミン;二糖類としては、トレハロース、マルトース;三糖類としては、マルトトリオースが挙げられる。これらの中でも、エリスリトール、マンニトール、グルコース、トレハロースがさらに好ましく、エリスリトール、マンニトールが特に好ましい。
【0048】
重合性単量体(A)は、下記式(1)で表される基を有することが好ましい。当該基は、上記例示した化合物に特徴的な構造である。
【0049】
【化11】

【0050】
ここで、Gは、水酸基又は重合性基であり、*は、結合手を示す。
【0051】
重合性単量体(A)の構造について具体的には、重合性単量体(A)は、式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0052】
【化12】

【0053】
ここで、Gは、水酸基又は重合性基であり、nは、2以上の整数であり、Gのうち少なくとも2個が水酸基であり、かつGのうち少なくとも2個が重合性基である。
【0054】
当該構造は、炭素鎖の各炭素原子に重合性基又は水酸基が結合しており、重合性基及び水酸基が高い密度で密集している。そのため、当該重合性単量体(A)を含む歯科用コンポジットレジンは、優れた硬化性及び接着性を示す。また、糖アルコールを用いて容易に製造が可能であるという利点も有する。
【0055】
歯科用コンポジットレジンの硬化性及び接着性、並びに原料の入手の容易性の観点からnは、2〜18の整数であることが好ましく、より好ましくは2〜9の整数であり、最も好ましくは2〜4の整数である。
【0056】
歯科用コンポジットレジンの接着性を重視する場合には、重合性単量体(A)は、下記式(6)で表される化合物であることが好ましい。
【0057】
【化13】

【0058】
ここで、R1は前記と同義であり、mは、2以上の整数を示し、kは1以上の整数を示し、m個のエステル基を有する単位とk個の水酸基を有する単位の配列順序は、任意である。
【0059】
歯科用コンポジットレジンの硬化性及び接着性、並びに原料の入手の容易性の観点から、mは、好ましくは2〜5であり、より好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2である。kは、好ましくは1〜5であり、より好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2である。mとkの合計は、3〜18が好ましく、3〜9がより好ましく、4〜8がさらに好ましく、4が最も好ましい。
【0060】
式(6)で表される化合物は、3個以上の水酸基を有し、うち2個が第1級水酸基である。当該第1級水酸基は、歯質(特に象牙質)及びボンディング材と相互作用するのに非常に有利であるため、歯科用コンポジットレジンが式(6)で表される化合物を含む場合には、歯質(特に象牙質)及びボンディング材との接着性が特に高い歯科用コンポジットレジンとなる。また重合性基として式(2)で表される基を2個以上有するため、硬化性も良好である。
【0061】
さらに、式(6)で表される化合物の中でも、式(8)及び式(9)で表される化合物が歯科用コンポジットレジンの硬化性及び接着性の観点から好ましい。
【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
他方で、歯科用コンポジットレジンの硬化性を重視する場合には、重合性単量体(A)は、下記式(7)で表される化合物であることが好ましい。
【0065】
【化16】

【0066】
ここでR1は前記と同義であり、pは2以上の整数を示す。
【0067】
式(7)で表される化合物は、4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖の両末端に式(2)で表される重合性基を有しており、立体的な要因から重合性能が特に高くなっている。従って、歯科用コンポジットレジンが式(7)で表される化合物を含む場合には、特に硬化性が高い歯科用コンポジットレジンとなる。また、複数の水酸基を有するため、象牙質のコラーゲン層及びボンディング材に対する親和性が良好であり、歯質及びボンディング材との接着性も良好である。
【0068】
口腔内において加水分解などの作用で分解物が生成された場合に、分解物がエリスリトール、キシリトール、ソルビトール又はマンニトールなどの安全性の高い化合物であることから、pは2〜4であることが好ましい。pが2〜4の化合物としては、例えば、エリスリトールジ(メタ)アクリレート、キシリトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、pが2であるエリスリトールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、前述した重合性及び生体への刺激性の観点も併せて、下記一般式(10)で表されるエリスリトールジメタクリレートが最も好ましい。
【0069】
【化17】

【0070】
重合性単量体(A)は、公知方法により製造して入手することができる。具体的には例えば、重合性基を有するカルボン酸(例えば、式(2)で表される基の結合手に水素原子が結合したカルボン酸)又はその誘導体と、4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖を有する4価以上のアルコール化合物とを常法に従いエステル化反応させ、クロマトグラフィー等の分離手段により精製すればよい。収率を向上させるために、前記重合性基を有するカルボン酸を、酸ハライド等の誘導体に変換してからエステル化反応を行ってもよい。
【0071】
重合性単量体(A)が、特に式(6)で表される化合物、中でも式(8)又は式(9)で表される化合物であった場合には、前記アルコール化合物の第1級水酸基が予め保護された化合物を原料に用い、当該化合物と重合性基を有するカルボン酸(ここでは、式(2)で表される基の結合手に水素原子が結合したカルボン酸)又はその誘導体とをエステル化する工程(a)、及び得られたエステル化合物の第1級水酸基の保護基を脱保護する工程(b)を実施して製造することが好ましい。前記重合性基を有するカルボン酸の誘導体としては特に限定されないが、酸ハライド又は酸無水物が好ましく用いられる。前記アルコール化合物との反応性を考慮した場合、酸ハライドがより好ましく用いられる。また、化合物の入手のしやすさや貯蔵安定性を考慮した場合、前記酸ハライドの中でも、酸クロリドが特に好ましく用いられる。当該工程を含む製造方法は、高収率で重合性単量体を得ることができ、工業生産に好適である。
【0072】
前記アルコール化合物の第1級水酸基が予め保護された化合物は、例えば、1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトール(1,2:5,6-Di-O-isopropylidene-D-mannitol)、1,3:4,6−ジ−O−ベンジリデン−D−マンニトール(1,3:4,6-Di-O-benzylidene-D-mannitol)など、市販品として入手することができる。また、前記アルコール化合物の第1級水酸基を保護する工程を実施して製造することもできる。前記アルコール化合物の第1級水酸基が予め保護された化合物において、第1級水酸基以外の水酸基は、複数の水酸基を残しつつ、一部が保護されていることが好ましい。このようにしておけば、水酸基を3個以上有する構造を得ることが容易となる。
【0073】
前記アルコール化合物の第1級水酸基を保護する工程は、公知の保護基を導入する反応を行うことにより実施できる。
【0074】
前記アルコール化合物の第1級水酸基の保護基としては、第1級水酸基に優先的に導入される基を選択するとよい。また、保護基は、エステル化反応時に脱保護反応を起こしにくく、またその脱保護反応時に、エステル結合を開裂させにくいものを選択するとよい。このような観点から、保護基としては、エーテル系保護基、シリルエーテル系保護基及びアセタール系保護基が好ましく用いられる。エーテル系保護基としては、1−エトキシエチルエーテル基及びトリフェニルメチルエーテル基がより好ましく用いられる。シリルエーテル系保護基としては、トリイソプロピルシリルエーテル基、t−ブチルジメチルシリルエーテル基及びt−ブチルジフェニルシリルエーテル基がより好ましく用いられる。これらの保護基はいずれも第1級水酸基に優先的に導入することができ、かつ、マイルドな酸性条件下で脱保護できるため、エステル結合を開裂させることなく脱保護できるという利点を有する。一方、アセタール系保護基としては、イソプロピリデン基、シクロヘプチリデン基、ベンジリデン基及びp−メトキシベンジリデン基がより好ましく用いられる。アセタール系保護基を用いた場合、1級水酸基に対して優先的に導入できるだけでなく、1級水酸基を含む2個以上の水酸基を一度に保護できるため、重合性単量体(A)の合成には極めて適している。このため、エーテル系保護基、シリルエーテル系保護基及びアセタール系保護基の中でもアセタール系保護基がさらに好ましく用いられる。さらに、特にマイルドな酸性条件で脱保護が可能であり、脱保護の際に精製する副生物が容易に除去できる観点から、イソプロピリデン基が特に好ましく用いられる。
【0075】
前記アルコール化合物の第1級水酸基が予め保護された化合物と、重合性基を有するカルボン酸又はその誘導体とをエステル化する工程は、公知方法に従い行うことができ、エステル化反応においては、保護基の種類を考慮して、脱保護反応が起こりにくい適切な反応条件(特に、温度条件、及び触媒の種類)を選択することが重要である。また、エステル化反応後に、1分子中に、複数のエステル結合が形成され、また保護された水酸基及び未反応の水酸基が合計で3個以上あるように、反応条件(特に、前記アルコール化合物の第1級水酸基が予め保護された化合物と、重合性基を有するカルボン酸又はその誘導体の使用量)を選択することが重要である。
【0076】
得られたエステル化合物の第1級水酸基の保護基を脱保護する工程は、保護基の種類に応じて公知方法に従って行えばよい。この際、エステル結合を開裂させにくい反応条件(特に、温度条件、及び触媒の種類)を選択することが重要である。上述したように、第1級水酸基の保護基として好ましいエーテル系保護基、シリルエーテル系保護基及びアセタール系保護基を用いた場合は、いずれもマイルドな酸性条件下で脱保護が可能であり、エステル結合を開裂させずに脱保護を行うことができる。また、シリルエーテル系保護基はTBAF(テトラブチルアンモニウムフルオライド)などのフッ素含有化合物を用いることにより極めて高い選択性を伴った脱保護が可能であり、有用性が高い。酸性条件で脱保護する場合は、塩酸、硫酸などの鉱酸及びその水溶液;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸及びその水溶液;陽イオン交換樹脂、などが好ましく用いられる。これらの中でも、酸性度が適切であり、エステル結合の開裂を効率的に抑制した脱保護が行えることから、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸及びその水溶液がより好ましく、ギ酸、酢酸及びその水溶液がさらに好ましい。
【0077】
重合性単量体(A)は、複数の重合性基及び複数の水酸基を有するために、架橋反応性に優れ、親水性基を有する化合物と強く相互作用することができる。従って、当該重合性単量体を、適切な成分と混合して歯科用コンポジットレジンとすれば、優れた硬化性並びに歯質(特に象牙質)及びボンディング材との接着性を発揮する歯科用コンポジットレジンとなる。なお、歯科用コンポジットレジンの接着性と硬化性をバランスよく両立させる観点から、前記式(6)と前記式(7)で表される化合物を併用することができる。
【0078】
重合性単量体(A)の配合量としては、適宜決定すればよく、重合性単量体成分(他の重合性単量体成分については後述する)の全量100質量部中において、重合性単量体(A)は1〜80質量部含有されることが好ましい。重合性単量体(A)の配合量がこのような範囲にある歯科用コンポジットレジンは、象牙質のコラーゲン層への浸透性、及びボンディング材との親和性が良好であり、接着強度が高い利点を有する。重合性単量体(A)の配合量が1質量部未満の場合、接着強度が低下するとともに接着耐久性が低下するおそれがあり、より好適には5質量部以上であり、さらに好適には10質量部以上である。一方、重合性単量体(A)の配合量が80質量部を超える場合、脱灰が不十分となり、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、より好適には70質量部以下であり、さらに好適には60質量部以下である。
【0079】
次に、本発明の歯科用コンポジットレジンのその他の成分について説明する。
【0080】
本発明の歯科用コンポジットレジンが含んでいてもよい重合性単量体(A)以外の重合性単量体成分として、架橋性の重合性単量体(B)、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)、酸性基を有する重合性単量体(D)等の重合性単量体成分が挙げられる。また、本発明の歯科用コンポジットレジンが含むべき成分としては、重合開始剤(E)、及びフィラー(G)が挙げられ、また、本発明の歯科用コンポジットレジンは、重合促進剤(F)、及び溶媒(H)を含んでいてもよい。
【0081】
本発明において、「重合性単量体成分の全量」とは、重合性単量体(A)〜(D)の総量を意味する。
【0082】
以下の説明において、「一官能性」、「二官能性」及び「三官能性」という用語を使用するが、「一官能性」、「二官能性」及び「三官能性」とは、1分子中に重合性基を1個、2個及び3個有することをそれぞれ表わす。この重合性基は、重合性単量体(A)の重合性基と、ラジカル共重合可能な基であることが好ましい。
【0083】
架橋性の重合性単量体(B)
本発明の歯科用コンポジットレジンは、架橋性の重合性単量体(B)を含有してなることが好ましい。本発明の歯科用コンポジットレジンが架橋性の重合性単量体(B)を含む場合には、接着強度がさらに向上する等の利点を有する。特に、芳香環を含む架橋性の重合性単量体(B)を用いた場合には、接着性向上効果が高い。また、架橋性の重合性単量体(B)の種類を適切に選ぶことによって、歯科用コンポジットレジンの粘性を適切に調整することができる。
【0084】
架橋性の重合性単量体(B)は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。架橋性の重合性単量体(B)としては、特に限定されないが、芳香族化合物系の二官能性重合性単量体、脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体、三官能性以上の重合性単量体などが挙げられる。
【0085】
芳香族化合物系の二官能性重合性単量体の例としては、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート;通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン{2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン等;特にオキシエチレン鎖平均重合度1〜4}、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテートなどが挙げられる。
【0086】
脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)等が挙げられる。
【0087】
三官能性以上の重合性単量体の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、及び1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
【0088】
架橋性の重合性単量体(B)の配合量は特に限定されないが、重合性単量体成分の全量100質量部中において、架橋性の重合性単量体(B)を1〜90質量部含有してなることが好ましい。本発明の歯科用コンポジットレジンが、架橋性の重合性単量体(B)をこのような範囲内で含む場合には、接着強度がさらに向上する等の利点を有する。架橋性の重合性単量体(B)の配合量が1質量部未満の場合、充分な接着強度が得られないおそれがあり、より好適には5質量部以上であり、さらに好適には10質量部以上であり、最も好ましくは20質量部以上である。一方、架橋性の重合性単量体(B)の配合量が90質量部を超える場合、象牙質のコラーゲン層への浸透が不十分となり、高い接着強度が得られなくなるおそれがあり、より好適には85質量部以下であり、さらに好適には80質量部以下である。
【0089】
1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)
本発明の歯科用コンポジットレジンは、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)を含有してなることが好ましい。本発明の歯科用コンポジットレジンが、重合性単量体(C)を含む場合、象牙質のコラーゲン層への浸透性が良好であるとともに、接着強度が良好となる。重合性単量体(C)が重合性基を有することによりラジカル重合が可能となるとともに、他の単量体との共重合が可能となる。1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)としては特に限定されず、重合性単量体(C)の重合性基は、重合性単量体(A)の重合性基とラジカル共重合可能な基であることが好ましい。ラジカル重合が容易である観点からは、重合性単量体(C)の重合性基は(メタ)アクリル基、又は(メタ)アクリルアミド基が好ましい。なお、口腔内は湿潤な環境であるため、加水分解などにより重合性基が脱離するおそれがある。脱離した重合性基の生体への刺激性を考慮した場合、重合性単量体(C)の重合性基は、メタクリル基、又はメタクリルアミド基であることが好ましい。
【0090】
また、重合性単量体(C)は、水酸基を1個以上有するため親水性が良好であり、かつ重合性基を1個有する一官能性重合体単量体であるため、本発明の歯科用コンポジットレジンが重合性単量体(C)を含む場合には、象牙質のコラーゲン層への浸透性がより優れているという効果もある。
【0091】
重合性単量体(C)は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。重合性単量体(C)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらの中でも、象牙質のコラーゲン層への浸透性の改善の観点からは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0092】
前記重合性単量体(C)の配合量は特に限定されないが、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(C)が1〜80質量部含有されることが好ましい。重合性単量体(C)の配合量がこのような範囲にある場合、歯科用コンポジットレジンは、象牙質のコラーゲン層への浸透性が良好であるとともに、接着強度が良好となる。重合性単量体(C)の配合量が1質量部未満の場合、重合性単量体(C)による象牙質のコラーゲン層への浸透の寄与が得られないおそれがあるとともに、接着強度が低下するおそれがある。重合性単量体(C)の配合量は、より好適には5質量部以上であり、さらに好適には10質量部以上である。一方、重合性単量体(C)の配合量が80質量部を超える場合、十分な硬化性が得られずに硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。このため、接着強度が低下するおそれがある。重合性単量体(C)の配合量は、より好適には70質量部以下であり、さらに好適には50質量部以下である。
【0093】
酸性基を有する重合性単量体(D)
本発明の歯科用コンポジットレジンが酸性基を有する重合性単量体(D)を含む場合には、酸性基を有する重合性単量体(D)自身が酸エッチング効果やプライマー処理効果を有するので、酸エッチング処理やプライマー処理などの前処理を必要としない等の利点を有する。従って、本発明の歯科用コンポジットレジンを自己接着性コンポジットレジンとする際には、重要な成分となる。
【0094】
酸性基を有する重合性単量体(D)は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。酸性基を有する重合性単量体(D)としては、特に限定されないが、分子内に1個のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体、分子内に複数のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体、分子内にホスフィニルオキシ基又はホスホノオキシ基を有する一官能性重合性単量体(一官能性ラジカル重合性リン酸エステルと呼ぶことがある)などが挙げられる。
【0095】
分子内に1個のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸等及びこれらの化合物のカルボキシル基を酸無水物基化した化合物が挙げられる。
【0096】
分子内に複数のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体の例としては、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−メタクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−2,3,6−トリカルボン酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル−1,8−ナフタル酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,8−トリカルボン酸無水物、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリルアミドウンデカン−1,1−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0097】
分子内にホスフィニルオキシ基又はホスホノオキシ基を有する一官能性重合性単量体(一官能性ラジカル重合性リン酸エステルと呼ぶことがある)の例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート等が挙げられる。
【0098】
その他の酸性基を有する一官能性重合性単量体として、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、10−スルホデシル(メタ)アクリレート等の分子内にスルホ基を有する一官能性重合性単量体などが挙げられる。
【0099】
酸性基を有する重合性単量体(D)の配合量は特に限定されないが、重合性単量体成分の全量100質量部中において、酸性基を有する重合性単量体(D)が1〜50質量部含有されることが好ましい。酸性基を有する重合性単量体(D)の配合量が1質量部未満の場合、酸エッチング効果やプライマー処理効果が得られないおそれがあり、より好適には3質量部以上であり、さらに好適には5質量部以上である。一方、酸性基を有する重合性単量体(D)の配合量が50質量部を超える場合、十分な硬化性が得られず、接着性能の低下を招くおそれがあり、より好適には45質量部以下であり、さらに好適には40質量部以下である。
【0100】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、必要に応じ、上記(A)、(B)、(C)及び(D)以外の重合性単量体を含んでいてもよい。
【0101】
重合開始剤(E)
本発明に用いられる重合開始剤(E)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用コンポジットレジンに用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。歯科用コンポジットレジンには、光重合開始剤を用いた光重合型と、化学重合開始剤を用いた化学重合型があり、近年は光重合型が主流である。従って、本発明においては、光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
【0102】
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。
【0103】
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルフォスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0104】
上記光重合開始剤として用いられる水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、アシルフォスフィンオキサイド分子内にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ピリジニウムイオン又はアンモニウムイオンを有することが好ましい。例えば、水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、欧州特許第0009348号明細書又は特開昭57−197289号公報に開示されている方法により合成することができる。
【0105】
上記水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の具体例としては、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチルベンゾイルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソブチル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(2−メチル−1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、アセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、アセチルメチルフォスフォネート・ナトリウム、メチル4−(ヒドロキシメトキシフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、メチル−4−オキソフォスフォノブタノエート・モノナトリウ厶塩、アセチルフェニールフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−オキソプロピル)ペンチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシペンチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、アセチルペンチルフォスフィネート・ナトリウム、アセチルエチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル(1,1−ジメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・リチウム塩、4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノイックアシッド・ジリチウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリディン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(2−メチルパーヒドロ−1,3−ディアジン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、アセチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフォナイト・ナトリウム塩、メチル(2−メチルオキサチオラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2,4,5−トリメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1,1−プロポキシエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1−メトキシビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−エチルチオビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−ジアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−チアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(2,2−ジシアノ−1−メチルエチニル)フォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートオキシム・ナトリウ厶塩、アセチルメチルフォスフィネート−O−ベンジルオキシム・ナトリウム塩、1−[(N−エトキシイミノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルイミノエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルヒドラゾンエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、[1−(2,4−ジニトロフェニルヒドラゾノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートセミカルバゾン・ナトリウム塩、(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(ジメトキシメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、フォーミルメチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−オキソプロピル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ドデシルグアニジン塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・イソプロピルアミン塩、アセチルメチルフォスフィネートチオセミカルバゾン・ナトリウム塩、1,3,5−トリブチル−4−メチルアミノ−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、1−ブチル−4−ブチルアミノメチルアミノ−3,5−ジプロピル−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドのアンモニウム塩などが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物も挙げられる。
【0106】
これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及び水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩が特に好ましい。
【0107】
上記光重合開始剤として用いられるチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩としては、例えば、チオキサントン、2−クロルチオキサンセン−9−オン、2−ヒドロキシ−3−(9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1−メチル−9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1,3,4−トリメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
【0108】
これらチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩の中でも、特に好適なチオキサントン類は、2−クロルチオキサンセン−9−オンであり、特に好適なチオキサントン類の第4級アンモニウ厶塩は、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドである。
【0109】
上記光重合開始剤として用いられるケタール類の例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。
【0110】
上記光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
【0111】
上記光重合開始剤として用いられるクマリン化合物の例としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0112】
上述のクマリン化合物の中でも、特に、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
【0113】
上記光重合開始剤として用いられるアントラキノン類の例としては、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
【0114】
上記光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0115】
上記光重合開始剤として用いられるα−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0116】
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及びその塩、α−ジケトン類、及びクマリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す歯科用コンポジットレジンが得られる。
【0117】
本発明の歯科用コンポジットレジンに、重合開始剤(E)として化学重合開始剤を用いて化学重合型コンポジットレジンとすることもできる。化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0118】
本発明に用いられる重合開始剤(E)の配合量は特に限定されないが、歯科用コンポジットレジンの硬化性等の観点からは、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.01〜20質量部含有してなることが好ましい。重合開始剤(E)の配合量が0.01質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05質量部以上、さらに好適には0.1質量部以上である。一方、重合開始剤(E)の配合量が20質量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、さらには歯科用コンポジットレジンからの析出を招くおそれがあるため、より好適には15質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。
【0119】
重合促進剤(F)
本発明の歯科用コンポジットレジンは、必要に応じ、重合促進剤(F)を含んでいてもよい。本発明に用いられる重合促進剤(F)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
【0120】
重合促進剤(F)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
【0121】
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0122】
重合促進剤(F)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0123】
重合促進剤(F)として用いられるボレート化合物は、好ましくはアリールボレート化合物である。好適に使用されるアリールボレート化合物を具体的に例示すると、1分子中に1個のアリール基を有するボレート化合物として、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びトリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
【0124】
また、1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物としては、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、ジアルキルジ(p−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0125】
さらに、1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリ(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びモノアルキルトリ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基又はn−ドデシル基等から選択される1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0126】
さらに1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素、(p−フロロフェニル)トリフェニルホウ素、(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルトリフェニルホウ素、(p−ニトロフェニル)トリフェニルホウ素、(m−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(m−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素及び(p−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0127】
これらアリールボレート化合物の中でも、保存安定性の観点から、1分子中に3個又は4個のアリール基を有するボレート化合物を用いることがより好ましい。また、これらアリールボレート化合物は1種又は2種以上を混合して用いることも可能である。
【0128】
重合促進剤(F)として用いられるバルビツール酸誘導体としては、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−1−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−メチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、1,5−ジエチルバルビツール酸、1−エチル−5−メチルバルビツール酸、1−エチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジエチル−5−ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−メチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−オクチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルバルビツール酸、5−ブチル−1−シクロヘキシルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸類の塩としては、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウム等が例示される。
【0129】
特に好適なバルビツール酸誘導体としては、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩が挙げられる。
【0130】
重合促進剤(F)として用いられるトリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が例示される。
【0131】
上記で例示したトリアジン化合物の中で特に好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
【0132】
重合促進剤(F)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
【0133】
重合促進剤(F)として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
【0134】
重合促進剤(F)として用いられるバナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物類である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物類としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等の特開2003−96122号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0135】
重合促進剤(F)として用いられるハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に用いられる。
【0136】
重合促進剤(F)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
【0137】
重合促進剤(F)として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0138】
重合促進剤(F)として用いられる亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0139】
重合促進剤(F)として用いられる亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。
【0140】
重合促進剤(F)として用いられるチオ尿素化合物としては、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素等が挙げられる。
【0141】
本発明に用いられる重合促進剤(F)の配合量は特に限定されないが、得られる歯科用コンポジットレジンの硬化性等の観点からは、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合促進剤(F)を、30質量部以下含有してなることが好ましい。重合促進剤(F)の配合量が30質量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、さらには歯科用コンポジットレジンからの析出を招くおそれがあるため、より好適には20質量部以下、さらに好適には10質量部以下である。一方、配合量が少なすぎると、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くこともあるため、重合促進剤(F)を配合する場合には、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、0.001質量部以上配合することが好ましく、より好適には0.05質量部以上である
【0142】
フィラー(G)
フィラー(G)は、本発明の歯科用コンポジットレジンが含むべき成分である。窩洞において充填・硬化したコンポジットレジンは、口腔内において咬合圧を受けるため、優れた機械強度を求められる。このフィラー(G)により、機械強度が確保される。歯科用コンポジットレジンに用いられるフィラーは、通常、有機フィラー、無機フィラー及び有機−無機複合フィラーに大別される。有機フィラーの素材としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる歯科用コンポジットレジンのハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記有機フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0143】
無機フィラーの素材としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。無機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる歯科用コンポジットレジンのハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記無機フィラーの平均粒子径は0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0144】
無機フィラーの形状としては、不定形フィラー及び球状フィラーが挙げられる。歯科用コンポジットレジンの機械強度を向上させる観点からは、前記無機フィラーとして球状フィラーを用いることが好ましい。ここで球状フィラーとは、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みをおびており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で割った平均均斉度が0.6以上であるフィラーである。前記球状フィラーの平均粒子径は好ましくは0.1〜5μmである。平均粒子径が0.1μm未満の場合、歯科用コンポジットレジン中の球状フィラーの充填率が低下し、機械的強度が低くなるおそれがある。一方、平均粒子径が5μmを超える場合、前記球状フィラーの表面積が低下し、高い機械的強度を有する硬化体が得られないおそれがある。
【0145】
前記無機フィラーは、歯科用コンポジットレジンの流動性を調整するため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0146】
本発明で用いられる有機−無機複合フィラーとは、上述の無機フィラーにモノマー化合物を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものである。前記有機−無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。前記有機−無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる歯科用コンポジットレジンのハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記有機−無機複合フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0147】
本発明の歯科用コンポジットレジンにフッ素徐放性を付与したい場合は、前記フィラー(G)として、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス及びストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、フルオロアルミノシリケートガラス及び/又はバリウムフルオロアルミノシリケートガラスを用いることがより好ましい。一方、前記コンポジットレジンにX線造影性を付与したい場合は、前記フィラー(G)として、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス及びバリウムフルオロアルミノシリケートガラスからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、バリウムガラス及び/又はバリウムフルオロアルミノシリケートガラスを用いることがより好ましい。
【0148】
本発明に用いられるフィラー(G)の配合量は特に限定されず、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、フィラー(G)を40〜900質量部が好ましく、80〜900質量部がより好ましい。フィラー(G)の含有量が40質量部未満の場合は、硬化物の機械強度が不充分となるおそれがある。一方、(G)の含有量が900質量部を超える場合は、歯科用コンポジットレジンの流動性が不足するおそれがある。
【0149】
溶媒(H)
本発明の歯科用コンポジットレジンは、特に歯質への浸透性を重視する場合には、溶媒(H)を含むことが好ましい。溶媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒等が挙げられ、接着強度が向上することから、溶媒(H)が水を含むことが好ましい。
【0150】
水は、悪影響を及ぼすような不純物を含有していないことが好ましく、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。有機溶媒は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、生体に対する安全性と、揮発性に基づく除去の容易さの双方を勘案した場合、有機溶媒が水溶性有機溶媒であることが好ましく、具体的には、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、及びテトラヒドロフランが好ましく用いられる。
【0151】
溶媒(H)の配合量は、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、好ましくは0〜15質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。
【0152】
この他、本発明の歯科用コンポジットレジンには、本発明の効果を阻害しない範囲でpH調整剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、着色剤、抗菌剤、香料等を配合してもよい。
【0153】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、重合性単量体(A)、架橋性の重合性単量体(B)、重合開始剤(E)及びフィラー(G)を含有してなることが好ましい。特に好ましい実施態様としては、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を10〜80質量部及び架橋性の重合性単量体(B)を20〜90質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンが挙げられる。
【0154】
架橋性の重合性単量体(B)は、トリエチレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(オキシエチレン鎖平均重合度=1〜4)、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体であることが好ましく、中でも、歯科用コンポジットレジンの粘性を最適に調整できることから、2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(オキシエチレン鎖平均重合度=1〜4、好ましくは2〜3)が最も好ましい。
【0155】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、上記の成分に応じて、常法に従い調製すればよい。また、本発明の歯科用コンポジットレジンは、常法に従い使用することができる。例えば、歯の欠損、う蝕の治療に際して、窩洞をまず形成し、そこにエッチング材及びプライマー、又はセルフエッチングプライマーにより、表面処理を施す。次に、ボンディング材を塗布して光硬化させた後、本発明の歯科用コンポジットレジンを充填して硬化させればよい。あるいは、1ステップ型のボンディング材を窩洞に塗布して光硬化させた後、本発明の歯科用コンポジットレジンを充填して硬化させればよい。硬化した歯科用コンポジットレジンは、歯質(特に象牙質)及びボンディング材との高い接着強度を示すため、コンポジットレジン硬化物の窩洞からの脱落の可能性が非常に低いものとなる。
【0156】
なお、上記に例示した手順では、表面処理、ボンディング材層の形成、コンポジットレジンの充填・硬化と、多くの操作が必要である。そのため、治療の迅速化・簡易化の観点から、エッチング材、プライマー及びボンディング材を使用しなくても歯質との十分な接着を行える、自己接着性コンポジットレジンの開発が望まれている。自己接着性コンポジットレジンにおいては、歯質との接着性が重要であるところ、本発明の歯科用コンポジットレジンは、重合性単量体(A)を含むことによって歯質との優れた接着性を有している。このため、本発明の歯科用コンポジットレジンに適切な成分を添加することによって、自己接着性コンポジットレジンとして使用することができる。
【0157】
本発明の歯科用コンポジットレジンを、自己接着性コンポジットレジンとする場合には、歯科用コンポジットレジンが、重合性単量体(A)、架橋性の重合性単量体(B)、酸性基を有する重合性単量体(D)、重合開始剤(E)、及びフィラー(G)を含むことが好ましく、さらに1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)を含むことが好ましい。特に好ましい実施態様としては、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、架橋性の重合性単量体(B)を5〜70質量部、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)を5〜70質量部、及び酸性基を有する重合性単量体(D)を1〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンが挙げられる。
【0158】
架橋性の重合性単量体(B)は、トリエチレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(オキシエチレン鎖平均重合度=1〜4)、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体であることが好ましく、中でも、硬化収縮の程度が小さいこと及び硬化物の強度が高いことから、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンが最も好ましい。
【0159】
自己接着性コンポジットレジンとして、最も好ましい実施態様の一つは、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンを5〜70質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5〜70質量部、及び10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェートを1〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンである。
【0160】
自己接着性コンポジットレジンとして、最も好ましい実施態様のもう一つは、重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンを5〜70質量部、トリエチレングリコールジメタクリレートを5〜70質量部、及び10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェートを5〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む歯科用コンポジットレジンである。
【0161】
当該自己接着性コンポジットレジンは、上記の成分に応じて、常法に従い調製すればよい。歯の欠損、う蝕の治療に際して、窩洞をまず形成し、自己接着性コンポジットレジンをそこへ直接充填し、光硬化させて使用することができる。硬化した歯科用コンポジットレジンは、歯質(特に象牙質)との高い接着強度を示すため、コンポジットレジン硬化物の窩洞からの脱落の可能性が非常に低いものとなる。
【実施例】
【0162】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
【0163】
実施例1
[歯科用コンポジットレジンの調製]
表1に示す組成に従って各成分を混合し、実施例1及び比較例1のペースト状の歯科用コンポジットレジンを調製した。
【0164】
【表1】

【0165】
(各成分の配合量の単位は質量部である。)
EDMA:エリスリトールジメタクリレート〔1,4−ビス(メタクリロイルオキシ)−2,3−ブタンジオール〕
MDMA:マンニトールジメタクリレート(3,4−ジ−O−メタクリロイル−D−マンニトール)
XDMA:キシリトールジメタクリレート〔1,5−ビス(メタクリロイルオキシ)−2,3,4−ペンタントリオール〕
SDMA:ソルビトールジメタクリレート〔1,6−ビス(メタクリロイルオキシ)−2,3,4,5−ヘキサンテトラオール〕
GDMA:グリセロールジメタクリレート〔重合性単量体(A)に該当しない比較例用の重合性単量体〕
ErMA:ペンタエリスリトールジメタクリレート
#801:1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
3G :トリエチレングリコールジメタクリレート
D−2.6E:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン{オキシエチレン鎖平均値=2.6}
CQ:カンファーキノン
PDE:N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
無機フィラー1:シラン処理バリウムガラス粉
バリウムガラス(エステック社製、商品コード「Raysorb E-3000」)をボールミルで粉砕し、バリウムガラス粉を得た。得られたバリウムガラス粉の平均粒子径をレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、2.4μmであった。このバリウムガラス粉100重量部に対して常法により3重量部の3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理を行い、シラン処理バリウムガラス粉を得た。
無機フィラー2:シラン処理コロイドシリカ粉末
蒸留水100重量部中に0.3重量部の酢酸と3重量部の3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを加えて攪拌し、さらにコロイドシリカ粉末(日本アエロジル社製、商品コード「アエロジルOX50」)を50重量部加えて1時間攪拌した。凍結乾燥により水を除去した後、80℃で5時間加熱処理を行い、シラン処理コロイドシリカ粉末を得た。
【0166】
なお、MDMAは新規化合物であり、以下の方法により合成した。
参考例 MDMAの合成
(i)1,2:5,6-Di-O-isopropylidene-3,4-di-O-methacryloyl-D-mannitolの合成
冷却管を装着した2Lセパラブルフラスコに無水ピリジン700mLを加えた後、1,2:5,6-Di-O-isopropylidene-D-mannitol(和光純薬製)65gを少しずつフラスコ内に加えて完全に溶解させた。反応系に氷浴をセットして反応系を0℃まで冷却した。続いて、反応系の温度を0℃付近に保ちつつ、かつ反応系を攪拌しながら、滴下ロートを用いてメタクリロイルクロライド(和光純薬製)60gを窒素雰囲気下で約1時間掛けて反応系に滴下した。滴下ロートをガラス栓に差し替え、オイルバスを用いて反応系を70℃に加熱した。該加熱を8時間続けた。加熱終了後、オイルバスを外して反応系を室温まで冷却した。続いて、1Lの氷水を入れたビーカーに反応系を注いで反応を停止させた。反応を停止した後、1500mLのジエチルエーテルを用いて5回抽出を行った。その後、得られた有機層を、エバポレーターを用いて減圧濃縮し、油状物質を得た。前記油状物質を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し(展開系:ヘキサン:ジエチルエーテル=7:3)、濃縮後、ヘキサンを加えて再結晶を行って目的の化合物を得た。収量は36.3g、収率は37%であった。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, δ) 1.31 (s, 6H), 1.36 (s, 6H), 1.96 (s, 6H), 3.85-3.96 (m,4H), 4.21-4.27 (m, 2H), 5.43 (dd, 2H), 5.64 (s, 2H), 6.15 (s, 2H) (ppm)
13C-NMR (100MHz, CDCl3, δ) 18.2, 25.1, 26.3, 65.5, 71.6, 74.7, 109.3, 126.6, 135.6, 166.0 (ppm)
【0167】
(ii)MDMA(3,4-di-O-methacryloyl-D-mannitol)の合成
2L丸底フラスコに酢酸540mL及び水180mLを加えた。得られた酢酸水溶液を攪拌しながら、上記で合成した1,2:5,6-Di-O-isopropylidene-3,4-di-O-methacryloyl-D-mannitol 18gを少しずつ加えて完全に溶解させた。このようにして調製した溶液の温度を25℃に保った状態で、18時間攪拌を行った。攪拌終了後、前記溶液をエバポレーターを用いて減圧濃縮することで油状物質を得た。前記油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し(展開系:酢酸エチル100%)、濃縮を行ったところ、白色の結晶が析出した。NMRにより、この結晶が目的とする化合物であることを確認した。収量は8.7g、収率は60%であった。
1H-NMR (400MHz, CD3OD, δ) 1.84 (s, 6H), 3.39 (dd, 2H), 3.51 (dd, 2H), 3.59-3.66 (m,2H), 5.28 (d, 2H), 5.56 (s, 2H), 6.03 (s, 2H) (ppm)
13C-NMR (100MHz, CD3OD, δ) 18.4, 64.2, 71.6, 73.1, 126.8, 137.4, 167.9 (ppm)
【0168】
[牛歯象牙質との接着評価方法]
牛の前歯を#1000シリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)で平滑に湿潤研磨してエナメル質表面又は象牙質表面を露出させた後、表面の水を歯科用エアーシリンジを用いて吹き飛ばした。露出したエナメル質表面又は象牙質表面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、丸穴に歯科用接着剤(クラレメディカル社製、商品名「クリアフィルトライエスボンド」)を筆を用いて塗布し、20秒間放置した後、歯科用エアーシリンジを用いて当該歯科用接着剤組成物の流動性が無くなるまで乾燥した。次いで、歯科用光照射器(モリタ社製、商品名「JETLITE3000」)を用いて10秒間光照射を行った。次いで、その歯科用接着剤の上に上記作成したコンポジットレジン組成物を載置し、離型フィルム(クラレ社製、商品名「エバール」)を被せた後、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけ、歯科用光照射器「JETLITE3000」を用いて20秒間光照射して、硬化させた。次いで、この硬化面に対して、歯科用レジンセメント(クラレメディカル社製、商品名「パナビア21」)を用いて、直径5mm、長さ1.5cmのステンレス製の円柱棒の一方の端面(円形断面)を接着し、30分間静置して、試験片とした。接着試験供試サンプルは全部で5個作製した。
【0169】
[接着強度の測定]
上記の5個の接着試験供試サンプルの引張接着強度を、万能試験機(株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定し、平均値を引張接着強度とした。
【0170】
[曲げ強度の測定]
ステンレス製の金型(寸法2mm×2mm×25mm)にコンポジットレジン組成物を充填した後、上下をスライドガラスで圧接し、歯科用技工用光照射器(モリタ製、アルファーライトII)で両面から各2分間ずつ光を照射して硬化させた。各実施例及び比較例について、硬化物を5本ずつ作製し、硬化物は、金型から取り出した後、37℃の蒸留水中に24時間保管した。インストロン万能試験機を用いて、スパン:20mm、クロスヘッドスピード:1mm/minの条件下で曲げ強度を測定し、各試験片の測定値の平均値を算出し、曲げ強度とした。
【0171】
結果を表1に示す。表1より、重合性単量体(A)を含有してなる歯科用コンポジットレジンが、高い接着強度を示し、象牙質及びボンディング材との接着性に優れていることがわかる。
【0172】
実施例2
[歯科用自己接着性コンポジットレジンの調製]
表2に示す組成に従って各成分を混合し、実施例2及び比較例2のペースト状の歯科用コンポジットレジンを調製した。
【0173】
【表2】

【0174】
DD :デカンジオールジメタクリレート
(各成分の配合量の単位は質量部であり、その他の略号は上記と同義である。)
【0175】
[牛歯象牙質との接着評価方法]
牛の前歯を#1000シリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)で平滑に湿潤研磨してエナメル質表面又は象牙質表面を露出させた後、表面の水を歯科用エアーシリンジを用いて吹き飛ばした。露出したエナメル質表面又は象牙質表面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着した。丸穴に上記作成したコンポジットレジン組成物を載置し、離型フィルム(クラレ社製、商品名「エバール」)を被せた後、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけ、歯科用光照射器(モリタ社製、商品名「JETLITE3000」)を用いて20秒間光照射して、硬化させた。次いで、この硬化面に対して、歯科用レジンセメント(クラレメディカル社製、商品名「パナビア21」)を用いて、直径5mm、長さ1.5cmのステンレス製の円柱棒の一方の端面(円形断面)を接着し、30分間静置して、試験片とした。接着試験供試サンプルは全部で5個作製した。
【0176】
[接着強度の測定及び曲げ強度の測定]
接着強度及び曲げ強度の測定は、実施例1と同様にして行った。
【0177】
結果を表2に示す。表2より、重合性単量体(A)を含有してなる歯科用自己接着性コンポジットレジンが、高い接着強度を示し、象牙質との接着性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の歯科用コンポジットレジンは、歯の欠損、う蝕等の治療に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4個以上の炭素が連続して結合した非共役の炭素鎖、2個以上の重合性基及び2個以上の水酸基を有する重合性単量体(A)を含有してなる歯科用コンポジットレジン。
【請求項2】
前記重合性単量体(A)が、式(1)
【化1】

(式中、Gは、水酸基又は重合性基であり、*は、結合手を示す。)
で表される基を有する請求項1に記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項3】
前記重合性基が、下記式(2)、下記式(3)又は下記式(4)で表される基である請求項1又は2に記載の歯科用コンポジットレジン。
【化2】

【化3】

【化4】

(式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示し、*は、結合手を示す。)
【請求項4】
前記重合性単量体(A)が、式(5)
【化5】

(式中、Gは、水酸基又は重合性基であり、nは、2以上の整数であり、Gのうち少なくとも2個が水酸基であり、かつGのうち少なくとも2個が重合性基である。)
で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項5】
前記重合性単量体(A)が、式(6)
【化6】

(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示し、mは、2以上の整数を示し、kは、1以上の整数を示し、m個のエステル基を有する単位とk個の水酸基を有する単位の配列順序は、任意である。)
で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項6】
mが、2〜5であり、かつkが、1〜5である請求項5に記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項7】
前記重合性単量体(A)が、式(7)
【化7】

(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示し、pは、2以上の整数を示す。)
で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項8】
pが、2〜4である請求項7に記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項9】
1が、水素原子又はメチル基である請求項3〜8のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項10】
重合性単量体成分の全量100質量部中において、前記重合性単量体(A)を1〜80質量部含有してなる請求項1〜9のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項11】
架橋性の重合性単量体(B)を、重合性単量体成分の全量100質量部中において1〜90質量部さらに含有してなる請求項1〜10のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項12】
1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)を、重合性単量体成分の全量100質量部中において1〜80質量部さらに含有してなる請求項1〜11のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項13】
酸性基を有する重合性単量体(D)を、重合性単量体成分の全量100質量部中において1〜50質量部さらに含有してなる請求項1〜12のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項14】
重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.01〜20質量部含有してなる請求項1〜13のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項15】
重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合促進剤(F)を0.001〜30質量部含有してなる請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
重合性単量体成分の全量100質量部に対して、フィラー(G)を40〜900質量部含有してなる請求項1〜15のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項17】
重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を10〜80質量部及び架橋性の重合性単量体(B)を20〜90質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む請求項1〜9のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項18】
重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、架橋性の重合性単量体(B)を5〜70質量部、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(C)を5〜70質量部、及び酸性基を有する重合性単量体(D)を1〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む請求項1〜9のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項19】
架橋性の重合性単量体(B)がトリエチレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(オキシエチレン鎖平均重合度=1〜4)、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体である、請求項17又は18に記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項20】
重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンを5〜70質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを5〜70質量部、及び10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェートを1〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む請求項1〜9のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。
【請求項21】
重合性単量体成分の全量100質量部中において、重合性単量体(A)を5〜70質量部、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンを5〜70質量部、トリエチレングリコールジメタクリレートを5〜70質量部、及び10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェートを5〜50質量部含み、かつ重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤(E)を0.1〜10質量部、重合促進剤(F)を0〜10質量部、及びフィラー(G)を80〜900質量部含む請求項1〜9のいずれかに記載の歯科用コンポジットレジン。

【公開番号】特開2008−260752(P2008−260752A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7382(P2008−7382)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(301069384)クラレメディカル株式会社 (110)
【Fターム(参考)】