説明

歯科用セラミックの立体リトグラフによる調製のための光硬化性スリップ

【課題】本発明の目的は、セラミックスペーサーおよびガラスセラミックスペーサーの立体リトグラフによる調製のための改良された光硬化性スリップを提供することである。
【解決手段】多反応性結合剤、重合開始剤、および充填剤を基にしたスリップであって、該スリップの全質量と比較して(A)5重量%〜65重量%の多反応性結合剤、(B)0.001重量%〜1.0重量%の光開始剤、および(C)35重量%〜90重量%の表面改質セラミック粒子、および/または、表面改質ガラスセラミック粒子を含有することに特徴付けられる、スリップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック成形物(例えば、歯科用インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、およびフレーム枠)の立体リトグラフによる調製のための光硬化性スリップに関する。
【背景技術】
【0002】
用語「ラピッドプロトタイピング」(RP)は、3次元モデルまたは3次元成分がコンピュータ支援デザインデータ(CADデータ)から準備される生産的製造プロセスを包含する(非特許文献1)。これらは、例えば、立体リトグラフ(SL)、選択的レーザー焼結法(selective laser sintering)(SLS)、3D印刷、溶融物堆積法(fused deposition modelling)(FDM)、インクジェット印刷(IJP)、3Dプロッティング、マルチジェットモデリング(multi−jet modelling)(MJM)、自由形状造形法(solid freeform fabrication)(SFF)、薄膜積層法(laminated object manufacturing)(LOM)、レーザー粉末形成法(laser powder forming)(LPF)、および直接セラミックジェット印刷(direct ceramic jet printing)(DCJP)のようなプロセスであり、これらのプロセスを用いるモデル、成分、またはスペーサー(spacer)は、小規模であっても安価に調製され得る(非特許文献2以下参照)。立体リトグラフはRPプロセス(非特許文献3以下参照)を含み、RPプロセスにおいてスペーサーは、CADデータに基づいて液状および硬化可能モノマー樹脂から層状に構築される。
【0003】
歯科用成形物(例えば、インレー、クラウン、またはブリッジ)の調製のための立体リトグラフプロセスは、特にセラミック材料の場合に非常に有利である。なぜなら、印象を採り鋳造するプロセス、およびすりつぶし粉砕する操作(歯科理工学実験室において相当量の労力分の経費を含む)はそれぞれ、それゆえに大いに単純化され、同時に非生産的プロセスに伴って生じる大量の材料損失を避けられ得るからである。一連の完全なデジタルプロセスは今日実施されているので、例えば複数ユニットのブリッジのフレーム枠を調製するための標準的加工段階(咬合器における調節、ワックス調整、埋め込みおよび鋳造)は、上記モデルのデジタル化、歯科用スペーサーの仮想デザイン、およびその生産的立体リトグラフ製造により、置き換えられ得る。
【0004】
セラミックスペーサーの立体リトグラフによる調製において、セラミック圧粉体は最初に、自由自在に流れるセラミックスリップの層状放射硬化により調製され、次いで、上記セラミックスリップは脱結合後に焼結され、高密度のセラミック成形物を形成する。圧粉体はまた、未焼結体とも呼ばれる。用語、脱結合は結合剤の除去を描写するために使用される。ここで、使用される結合剤は、通常、圧粉体を約90℃〜600℃の温度に加熱することによって除去される。ひび割れおよび歪みの形成は、十分に避けることが重要である。圧粉体は、脱結合の結果としていわゆる前焼結体(white body)になる。
【0005】
脱結合において、単に熱プロセスおよび熱化学プロセスが実施される。水、溶媒、ポリマー、ワックス、または油の混合物は、通常、セラミック粉末のプレスにおいて結合剤として使用される。ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、またはポリエチルメタクリレートが、ポリマーとして主に使用される(非特許文献4を参照)。これらは直鎖状ポリマーであり、上昇した温度での脱重合または鎖の分解により、容易に揮発成分へ多かれ少なかれ分解する。
【0006】
架橋モノマー混合物に基づいて立体リトグラフにより産生される未焼結体の場合、ポリマー網目構造が存在する。架橋モノマーの使用を通じて、安定な固体を得るために必要とされる硬化時間は、著しく短くなり得るが、同時に、形成するポリマー網目構造はまた、直鎖状ポリマーと比較してはるかに高い熱安定性を示す。このはるかに高い熱安定性は脱結合プロセスに不利に影響する。
【0007】
前焼結体の焼結は、焼結炉にて高温焼成中に実施される。細かく分散したセラミック粉末は、主成分の融点温度以下の温度に暴露することにより圧縮成形され、固められる。その暴露の結果として、多孔性成分はより少なくなり、そしてその強度は増加する。
【0008】
特許文献1は、歯科用修復物の調製のためのレーザー焼結プロセスの使用を記載する。ここで、金属粉末がレーザーを用いて層状に焼結される。
【0009】
特許文献2は、融解可能、凝縮し得る、熱硬化性、または、紫外線もしくは可視光硬化性、充填剤の入っている、あるいは、充填剤の入っていない材料を用いる3Dプロッティングによる、歯科用スペーサーの調製に関する。未焼結体の調製のために提案されたものは、ガラス、ガラスセラミック、またはセラミック粉末から構成される無機ペーストである。これらは、溶媒、結合剤、および可塑剤を用いて成形可能なペーストへ変換される。使用される上記粉末は表面改質されていない。
【0010】
特許文献3は、液状硬化性媒体の3次元成分の調製のためのプロセスおよび装置を記載する。上記成分は、レーザーで個々の層をそれぞれスキャンし、それを硬化させることにより層状に構築される。次いで、硬化性材料の次の層が、コーティング装置により堆積され、次に同様に硬化される。
【0011】
歯科用インプラントの調製のための立体リトグラフプロセスは、特許文献4から公知である。
【0012】
特許文献5は、立体リトグラフによる3次元体の調製のための光硬化性組成物を開示する。上記光硬化性組成物は、セラミック粒子または金属粒子を40容量%〜70容量%、モノマーを10重量%〜35重量%、光開始剤(photoinitiator)を1重量%〜10重量%、分散剤を1重量%〜10重量%、そして好ましくは、溶媒、可塑剤、およびカップリング剤もまた含む。
【0013】
特許文献6は、焼結セラミックまたは金属部品の立体リトグラフによる調製のための樹脂を開示する。上記樹脂は、3000mPa・s未満の粘度を有する。それらの調製のために、低粘度のモノマーが使用され、好ましくは、水溶液中で使用される。高固形成分および低粘度は、分散剤の使用を通して達成されることが言われる。
【0014】
特許文献7は、特許文献6に記載される方法でセラミックインプラントの立体リトグラフによる調製のための懸濁液を開示する。この懸濁液は、エネルギーが導入されるとき、後者は局所的な蒸発を通して粘度を増加させることが言われるので、希釈剤(例えば、水または有機溶媒)を含まない。懸濁液の粘度は、分散剤の濃度を変えることにより20Pa・s未満に調節される。酸基を有する共重合体のアルキルアンモニウム塩は、分散剤として使用され、ここで、後者はまた、セラミック粉末の粒子上にコーティングされ得る。
【0015】
セラミック成分の立体リトグラフによる調製のための方法および組成物が、特許文献8に記載される。特許文献5から知られる液体材料を用いて調製されるスペーサーは柔らかく、それゆえに、焼成中の変形を避ける目的で、追加の硬化段階を必要とする。一方で、ペーストの様な材料から得られる成形物は、脱結合中に内部の歪みを形成し、この歪みが焼結中にひび割れを引き起こすことが述べられている。これらの問題を避けるために、組成物の粘度が少なくとも10,000Pa・sであるように、可塑剤が使用され、セラミック粉末の量が選択される。
【0016】
可視光で硬化する組成物、およびRPプロセスによってプラスチック材料から歯科用修復物を調製するためのそれらの使用が、特許文献9、特許文献10に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1021997A2号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10114290A1号明細書
【特許文献3】国際公開第97/29901号パンフレット
【特許文献4】国際公開第95/28688号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5,496,682号明細書
【特許文献6】米国特許第6,117,612号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102005058116A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0090575A1号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第19938463A1号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第19950284A1号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】A. Gebhardt, Vision of Rapid Prototyping, Ber. DGK 83 (2006) 7−12
【非特許文献2】A. Gebhardt, Generative Fertigungsverfahren,第3編.,Carl Hanser Verlag,Munich 2007,77
【非特許文献3】A. Beil, Fertigung von Mikro−Bauteilen mittels Stereolithographie, Duesseldorf 2002, VDI−Verlag 3
【非特許文献4】R.Moreno,Amer.Cer.Soc.Bull. 71 (1992) 1647−1657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
RPプロセスにおいて、放射線硬化性スリップの組成物および特性は、決定的に重要である。したがって、スリップ中のセラミック粒子の容積分率は、特に、高い密度および最終強度、ならびにセラミックスペーサーの適合の良い精度に対して、可能な限り高く必要とされる。さらには、十分に設定されたスリップのレオロジーは、欠陥の無い未焼結体の立体リトグラフによる構築に対する基本的要件であり、ここで、粘度および流れの挙動は、とりわけスリップ中のセラミック粒子のサイズおよび含有量に依存する。また結合剤が、未焼結体の脱結合の間にひび割れまたは歪みを形成すること無しに、残留物を含まずに除去され得ることが、心に留められるべきである。
【0020】
さらに、圧粉体の調製のために使用されるスリップは、十分な期間にわたる保存にも安定であり、タンクの材料、基礎となる表面、および、立体リトグラフプロセスの過程において接触する他の構成成分に対して概ね不活性であることが重要である。
【0021】
RPプロセスによるセラミックスペーサーの調製における特有の問題は、使用される着色料が脱結合プロセスおよび焼結プロセスを耐えなければならないので、セラミックの着色である。
【0022】
公知のスリップは、上で名前を挙げた要件の点で満足していない。したがって、本発明の目的は、上記要件を満たすセラミックスペーサーおよびガラスセラミックスペーサーの立体リトグラフによる調製のための改良された光硬化性スリップを提供することである。上記スリップは、変形、ひび割れまたは歪みの形成無しに脱結合され得、そして、歯科用の目的に適した高強度セラミックを焼結する際に産生する十分な強度を有する圧粉体を産生することが意図されている。好ましい実施形態にしたがって、セラミックは所望される目的の用途に適した色を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
多反応性結合剤、重合開始剤、および充填剤を基にしたスリップであって、それぞれの場合において該スリップの全質量と比較して:
(A)5重量%〜65重量%の多反応性結合剤、
(B)0.001重量%〜1.0重量%の光開始剤、および
(C)35重量%〜90重量%の表面改質セラミック粒子、および/または、表面改質ガラスセラミック粒子、
を含有することにより特徴付けられる、スリップ。
【0024】
(項目2)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、上記スリップの全質量と比較して:
(D)0.001重量%〜1.0重量%の阻害剤
もまた含有する、スリップ。
【0025】
(項目3)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、成分Aの質量と比較して:
(E)0重量%〜20重量%の脱結合促進剤
もまた含有する、スリップ。
【0026】
(項目4)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、成分(C)の質量と比較して:
(F)0.00001重量%〜2.0重量%の発色成分
もまた含有する、スリップ。
【0027】
(項目5)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、多反応性結合剤(A)として、光硬化性のラジカルもしくはカチオン重合可能樹脂、開環メタセシス重合のためのモノマー、チオール−エン樹脂、またはマイケル反応樹脂を含有する、スリップ。
【0028】
(項目6)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、成分(C)として、純粋なZrO、純粋なAl、純粋なZrO−Al、HfO、CaO、Y、CeO、および/もしくはMgOで安定化されるZrOまたはZrO−Alを基としたガラスセラミック粒子またはセラミック粒子を含有する、スリップ。
【0029】
(項目7)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、上記成分(C)の粒子が、直鎖状または分枝鎖状カルボン酸、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、もしくは、ピバル酸;酸性リン酸エステル、特に、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、もしくはジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート;ホスホン酸、特に、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、もしくはフェニルホスホン酸;または、シラン、特に、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリメチルメトキシシラン、もしくはヘキサメチルジシラザンで表面改質され、ここで、該表面改質剤がラジカル重合可能基を含有しない、スリップ。
【0030】
(項目8)
上記成分(C)の粒子が50nm〜50μmの範囲の粒子サイズを有する、上記項目のうちのいずれかに記載のスリップ。
【0031】
(項目9)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、脱結合促進剤(E)として、連鎖移動剤、特に、メルカプタン、ジスルフィド、もしくは光イニファータ、好ましくは、ラウリルメルカプタン、ジチオウレタンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、もしくはイソプロピルキサントゲン酸ジスルフィド;1つ以上の熱に不安定な基、特に、1つ以上の過酸化物基、アゾ基、もしくはウレタン基を有するコモノマー;−10℃〜150℃の天井温度を有するコモノマー、特に、α−メチルスチレンもしくはポリテトラヒドロフラン(PTHF);または、ラジカル重合可能基を有するテレケル、特に、PTHFジアクリレートテレケルもしくはPTHFジメタクリレートテレケルを含有する、スリップ。
【0032】
(項目10)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、発色成分(F)として、遷移金属化合物、特に、鉄、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ランタン、タングステン、オスミウム、テルビウム、およびマンガンといった元素のアセチルアセトネートもしくはカルボン酸塩、特に、酢酸鉄(III)もしくは鉄(III)アセチルアセトネート、酢酸マンガン(III)もしくはマンガン(III)アセチルアセトネート、酢酸プラセオジム(III)もしくはプラセオジム(III)アセチルアセトネート、または、酢酸テルビウム(III)もしくはテルビウム(III)アセチルアセトネートを含有する、スリップ。
【0033】
(項目11)
上記項目のうちのいずれかに記載のスリップであって、フタレート、特に、ジブチルフタレート、またはジヘキシルフタレート、酸性でないホスフェート、特に、トリブチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、n−オクタノール、グリセロール、ポリエチレングリコール、オクタノール、トリエチレングリコールジビニルエーテル、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、クエン酸三アンモニウム(固体)、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、エチルアセトアセテート、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シュウ酸ジブチル、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール300、1−または2−ノナノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、シュウ酸ジブチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、エチルアセトアセテート、および、これらの混合物から選択される溶媒もまた含有する、スリップ。
【0034】
(項目12)
200mPas〜2,000Pasの範囲の粘度を有する、上記項目のうちのいずれかに記載のスリップ。
【0035】
(項目13)
セラミック成形物またはガラスセラミック成形物の調製のための、上記項目のうちのいずれかに記載のスリップの使用。
【0036】
(項目14)
上記セラミック成形物が、例えば、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、またはフレーム枠といった歯科用修復物である、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
【0037】
(項目15)
セラミック成形物またはガラスセラミック成形物の調製のためのプロセスであって:
(a)未焼結体が、該未焼結体の幾何学的形状の形成を伴う、放射エネルギーの局所的導入により、上記項目のうちのいずれかに記載のスリップを硬化させることにより調製され、
(b)次いで、前焼結体を得る目的で、結合剤を除去(脱結合)するために該未焼結体が熱処理に晒され、そして
(c)該前焼結体が焼結される、
プロセス。
【0038】
(摘要)
多反応性結合剤、重合開始剤、および充填剤を基にしたスリップであって、該スリップの全質量と比較して、(A)5重量%〜65重量%の重合可能結合剤、(B)0.001重量%〜1.0重量%の光開始剤、および(C)35重量%〜90重量%の表面改質セラミック粒子、および/または、表面改質ガラスセラミック粒子を含有するスリップ、ならびに、該スリップを用いるラピッドプロトタイピングプロセスによるセラミック成形物の調製のためのプロセス。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、上記要件を満たすセラミックスペーサーおよびガラスセラミックスペーサーの立体リトグラフによる調製のための改良された光硬化性スリップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明に従うプロセスを実行するためのデバイスの概略的描写を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この目的は、本発明に従って、ラジカル重合可能な結合剤、重合開始剤、および充填剤を基にしたスリップにより、達成される。ラジカル重合可能な結合剤、重合開始剤、および、充填剤は、それぞれの場合においてスリップの全質量と比較して以下の通りに含有する:
(A)5重量%〜65重量%、好ましくは9重量%〜65重量%、特に好ましくは10重量%〜40重量%の多反応性結合剤、
(B)0.001重量%〜1.0重量%、好ましくは0.01重量%〜1.0重量%、特に好ましくは0.1重量%〜1.0重量%の光開始剤、および
(C)35重量%〜90重量%、好ましくは50重量%〜90重量%、特に好ましくは60重量%〜90重量%の表面改質セラミック、および/または、ガラスセラミック粒子。
【0042】
特に、原則として、1つ以上の多反応性基を含む低分子量またはオリゴマーモノマーの混合物から構成される重合樹脂および重付加樹脂は、多反応性結合剤Aとして使用され得る。
【0043】
重合樹脂の場合には、ラジカルおよびカチオン重合可能樹脂およびモノマーが、好ましくは、開環メタセシス重合に使用される。重付加樹脂の場合には、チオール−エン樹脂およびマイケル反応樹脂は上記の全てに適する。
【0044】
特に、単官能もしくは多官能アクリレート(または単官能もしくは多官能メタクリレート)あるいはそれらの混合物は、特にラジカル重合樹脂として使用される。好ましいモノマーは、アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、またはイソボルニルアクリレート、および、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、またはテトラエチレングリコールジアクリレートもまたあり、アクリレート基が末端のポリ(エチレングリコール)、およびアクリレート基が末端のポリ(プロピレングリコール)、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ならびにペンタエリトリトールテトラアクリレート)である。二官能または多官能アクリレートは、好ましくは、有機懸濁液中でモノアクリレートと混合して使用される。
【0045】
本発明によれば、アクリレートは、対応するメタクリレートと比較して、それらのより高い反応性に起因して好ましく、そのより高い反応性は、より迅速な硬化となって現れる。有機成分が脱結合の間に除去される場合、アクリレートの使用は、中毒学的観点から無害であり、その結果として、アクリレートの反応性の利点が使用され得る。
【0046】
さらに好ましいモノマーは、アクリルアミド(例えば、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N’−ジエチル−1,3−ビス(アクリルアミド)−プロパン、および1,4−ビス(アクリルアミド)−ブタン)である。上記ビスアクリルアミドは、好ましくは、有機結合剤中で、モノアクリルアミドと比較して過剰に使用される。成分(A)中のモノアクリルアミドの部分は、好ましくは、30重量%以下である。
【0047】
光硬化前と光硬化後のスリップの特性は、モノマーの目標とされる組み合わせにより影響され得る。単官能および二官能モノマーの混合物は、樹脂混合物の比較的低い粘度および反応性により特徴付けられ、ここで、粘度および反応性は、単官能モノマー含有量と共に減少する。単官能モノマー含有量は、スリップの光硬化により得られる圧粉体のより低い脆弱性およびより迅速な脱結合を確実にする。二官能および三官能モノマーの混合物は、より高い粘度および反応性を有し、ここで、粘度および反応性は、三官能モノマー含有量と共に増加する。三官能モノマー含有量は、圧粉体のより高い脆弱性およびより遅い脱結合という結果をもたらす。さらに、樹脂混合物の反応性および粘度、ならびに重合収縮率(polymerization shrinkage)もまた、モノマーのモル質量により決定され、ここで、反応性および重合収縮率はモル質量の増加と共に減少する一方で、粘度は増加する。最終的に、モノマーの極性は、立体リトグラフ用タンクの材料との相互作用(例えば、重合用タンクの材料の膨張)に影響を与えるために使用され得る。シリコーンエラストマーは、しばしば、タンクの材料として使用される。OH基含有モノマーの使用を通して、シリコーンエラストマーの膨張は概ね避けられ得る。
【0048】
カチオン開環重合可能モノマー(例えば、グリシジルエーテルまたは脂環式エポキシド、環状ケトンアセタール、スピロオルトカーボネート、オキセタン、または二環式オルトエステル)は、カチオン重合樹脂として使用され得る。好ましい例としては、2−メチレン−1,4,6−トリオキサスピロ[2.2]−ノナン、3,9−ジメチレン−1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−メチレン−1,3−ジオキセパン、2−フェニル−4−メチレン−1,3−ジオキソラン、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,10−デカンジイル−ビス−(オキシメチレン)−ビス−(3−エチルオキセタン)、または3,3−(4−キシリレンジオキシ)−ビス−(メチル−3−エチルオキセタン)、および、欧州特許出願公開第0879257B1号明細書中で言及されるエポキシドが挙げられる。好ましいモノマーとしては、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、およびアジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)が挙げられる。
【0049】
カチオン重合可能基(好ましくは、エポキシド基、オキセタン基、またはスピロオルトエステル基)を保持し、そして、例えば、シランの加水分解縮合により入手可能であるケイ酸重縮合物はまた、カチオン重合可能マトリックス系として適する。そのようなケイ酸重縮合物は、例えば、独国特許出願公開第4133494C2号明細書、または米国特許第6,096,903号明細書に記載される。好ましいケイ酸重縮合物としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン、および/または、トリエトキシシランの加水分解ホモ縮合または加水分解共縮合により得られるものが挙げられる。さらに、ビニルエーテル(例えば、エチルビニルエーテルまたはイソブチルエーテル、および、N−ビニルピロリドンも)もまた、カチオン重合可能モノマーとして使用され得る。
【0050】
さらに、ラジカルおよびカチオン重合可能モノマーの混合物もまた使用され得る。
【0051】
公知のROMPモノマー(例えば、単環式アルケンもしくは単環式アルカジエン、(例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン、もしくは1,5−シクロオクタジエン)、または、二環式アルケン(例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(2−ノルボルネン))、あるいは、これらに由来する誘導体(例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、およびポリカルボン酸の7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン,ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−カルボン酸ジメチルエステル、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジエチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチルエステル、もしくは、5−ノルボルネン−2−イル−エステル、または、モノイソシアネートもしくはジイソシアネートを用いる5−ノルボルネン−2−メタノールもしくは5−ノルボルネン−2−オールの変換生成物))が、開環メタセシス重合(ROMP)のためのモノマーとして使用され得る。上記ROMPモノマーはまた、例えば、ラジカル重合可能モノマーとの混合物中で、特に単官能もしくは多官能アクリレート(または単官能もしくは多官能メタクリレート)ととの混合物中で使用され得る。
【0052】
単官能または多官能メルカプト化合物、および二官能または多官能不飽和モノマー(特に、アリル化合物またはノルボルネン化合物)の混合物からなるチオール−エン樹脂は、多反応性結合剤Aとして特に適する。単官能または多官能メルカプト化合物の例としては、o−ジメルカプトベンゼン,m−ジメルカプトベンゼン,またはp−ジメルカプトベンゼン、および、チオグリコールのエステル、または、エチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはブチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、もしくは、ペンタエリトリトールの3−メルカプトプロピオン酸エステルが挙げられる。二官能または多官能アリル化合物の例としては、ジカルボン酸またはトリカルボン酸(例えば、マロン酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、もしくは没食子酸)とアリルアルコールのエステル、および、単官能または三官能アリルエーテル(例えば、ジアリルエーテル、α,ω−ビス[アリルオキシ]アルカン、レゾルシノール、もしくはヒドロキノンジアリルエーテル、およびピロガロールトリアリルエーテル)、あるいは他の不飽和化合物(例えば、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、テトラアリルシラン、もしくはテトラアリルオルトシリケート)が挙げられる。二官能または多官能ノルボルネン化合物の例としては、シクロペンタジエンまたはフランと二官能もしくは多官能アクリレート(または二官能もしくは多官能メタクリレート)とのディールス=アルダー付加生成物、ならびに、5−ノルボルネン−2−メタノールまたは5−ノルボルネン−2−オールと、ジカルボン酸またはポリカルボン酸(例えば、マロン酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、もしくは没食子酸)、あるいは、ジイソシアネートまたはポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはその環状三量体、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、または、イソホロンジイソシアネート)とのエステルおよびウレタンが挙げられる。チオール−エン樹脂は、低粘度および低い重合収縮率により、有利に特徴付けられる。さらに、チオール成分のメルカプト基は、セラミック粒子表面との相互作用をもたらし、それゆえにスリップを安定化させる。
【0053】
特に好ましいチオール−エン成分は、以下の−エン成分:
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸ジメチルエステル、7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸ジエチルエステル、コハク酸またはアジピン酸の5−ノルボルネン−2−メチルエステル、および、アジピン酸、テレフタル酸または没食子酸とアリルアルコールのエステル、ヒドロキノンジアリルエーテル、ピロガロールトリアリルエーテル、ならびに、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン
のうちの1つ以上と、ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、および/またはペンタエリトリトールと3−メルカプトプロピオン酸とのエステルの混合物である。
【0054】
いわゆるマイケル反応樹脂はまた、多反応性結合剤として使用され得る。これらは、好ましくは、アシルアミドおよび/またはビスアクリルアミド(特に二官能および/または多官能アクリレート)と、二官能または多官能アセトアセテートとの混合物である。適したアクリレートの例としては、エチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジアクリレート、ポリエチレングリコール−200−ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートが挙げられる。これらのアクリレートは、特に二官能、三官能、または四官能アセトアセテート(例えば、ヘキサンジオールジアセトアセテート、トリメチロールプロパントリスアセトアセテート、およびグリセロールトリスアセトアセテート、ならびにペンタエリトリトール テトラキスアセトアセテート)を用いて、網目構造ポリマーに変換され得る。適した触媒の形成、そしてそれゆえの、二官能または多官能アセトアセテートを用いる、二官能または多官能アクリレート間のマイケル反応が、光化学的に導入され得る。光照射により対応する前駆体から放出され得る強力な塩基(例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN))は、マイケル反応の触媒として特に適する。N−ベンジル化前駆体からのDBNの光誘導放出は、例えば、K.Dietliker,T.Jung,K.Studer,J.Benkhoff,Chimia(2007)655−660に記載される。さらなる、いわゆる光潜在的塩基(photolatent base)は以下に記載される。
【0055】
アクリレートが過剰に加えられるか、もしくはアセトアセテートが重合可能な基(例えば、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート)を含む場合、またはアクリレートがモノメタクリレートもしくはジメタクリレートもしくはそれらの混合物中に溶解される場合、重付加網目構造の形成と同時に、ラジカルポリマー網目構造もまた形成され得る。付加ポリマーマトリクスの弾性、強度、および、脱結合プロセスにおけるその分解は、アセトアセテートおよびアクリレートの構造および官能基を通じて目標とされる方法によって変えられ得る。したがって、二官能成分は特に好ましく、三官能または四官能成分と比較して、比較的低い架橋密度をもたらし、それゆえにより良い脱結合性をもたらす。上記ポリマーマトリクスの柔軟性はスペーサー基の選択を通じて影響を受け得る。スペーサー基は、スペーサーとも呼ばれ、2つ以上の官能基(例えば、アセトアセテート基またはアクリレート基)を1つにつなぐ基を意味する。例えば、より長い、および/または非極性スペーサー基(例えば、デカメチレン基)はプロピレンオキシメチレンスペーサーまたはメチレンオキシメチレンスペーサーと比較して、より高い柔軟性を与える。
【0056】
本発明によると、好ましくは、20重量%未満のモノアクリレートおよびモノアセトアセテートを含む混合物が使用される。
【0057】
光開始剤Bの選択は、使用されるモノマーのタイプに依存する。ラジカル重合可能樹脂およびチオール−エン重付加樹脂を基とするスリップは、可視領域に対する公知のラジカル光開始剤(例えば、アシルホスフィンオキシドまたはビスアシルホスフィンオキシド、好ましくは、α−ジケトンを有するもの(例えば、9,10−フェナントラキノン,ジアセチル、フリル、アニシル、4,4’−ジクロロベンジル、および4,4’−ジアルコキシベンジル)、そして特に好ましくは、ショウノウキノン)を用いて重合され得る(参照、J.P.Fouassier,J.F.Rabek(編),Radiation Curing in Polymer Science and Technology,Vol.II,Elsevier Applied Science,London and New York 1993)。開始を速めるために、好ましくは、α−ジケトンが芳香族アミンと組み合わせて使用される。特に有用であることが証明されている酸化還元系は、ショウノウキノンとアミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、4−ジメチルアミノベンゾエート、または構造的に関連する系)の組み合わせである。
【0058】
特に好ましい光開始剤は、Norrish I型光開始剤、特にモノアシルトリアルキルゲルマニウム化合物またはジアシルジアルキルゲルマニウム化合物(例えば、ベンゾイルトリメチルゲルマニウム、ジベンゾイルジエチルゲルマニウム、またはビス(4−メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム)である。異なる光開始剤の混合物(例えば、ショウノウキノンおよび4−ジメチルアミノベンゾエートと組み合わせられたジベンゾイルジエチルゲルマニウム)もまた使用され得る。
【0059】
立体リトグラフのタンクの材料中に溶解させた、またははめ込んだ(embed)モノマー部分の重合を避けるために、タンクの材料中における低溶解性により特徴付けられる光開始剤および促進剤を使用することが有利である。重合が、タンクと、立体リトグラフにより生成される層との間に結合をもたらすことを、それにより妨げる。そのような結合は、基材キャリアーが次の層を生成するために持ち上げられるとき、成分がプラットホームから引き剥がされるか、成分および/またはタンクが損傷を受けるかのいずれかであることを意味する。タンクの材料中に溶解しない開始剤が使用される場合、そこで重合は起こり得ない。
【0060】
市販されるタンクは、しばしば疎水性シリコーンエラストマー(ポリシロキサン)から構成される。この場合、特に極性、または親水性光開始剤および促進剤が有利である。光開始剤および促進剤の極性または親水性は、対応する官能基(例えば、OH、もしくはイオン性基)、または極性基(例えば、ジエチレングリコール基またはトリエチレングリコール基)を組み込むことにより増加し得る。
【0061】
また、オリゴマーまたはポリマー光開始剤および促進剤(例えば、タンク材料に入り得るが、高い分子量に起因して困難である重合可能光開始剤10−メタクリロイルオキシショウノウキノンのポリマーもしくはオリゴマー、または、重合可能促進剤2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートのポリマーもしくはオリゴマー)が有利である。ポリマー光開始剤および促進剤はまた、極性コモノマー(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート)または非極性コモノマー(例えば、スチレン)を用いて、重合可能な開始剤または促進剤を熱共重合することにより得られ得る。この方法では、極性およびモル質量は、目標とされる方法に設定され、それゆえに、立体リトグラフのタンクの材料、または、他の材料中で光開始剤および/または促進剤の溶解性は効果的に減少する。
【0062】
本発明に従う、カチオン重合可能樹脂を基とするスリップは、公知のカチオン光開始剤(特にジアリールヨードニウムまたはトリアリールスルホニウム塩)を用い、必要に応じて、適した増感剤(例えば、ショウノウキノン、モノアシルトリアルキル−またはジアシルジアルキルゲルマニウム化合物(例えば、ベンゾイルトリメチルゲルマニウム、ジベンゾイルジエチルゲルマニウム、またはビス(4−メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム))の存在下、硬化され得る。ショウノウキノン、モノアシルトリアルキル−もしくはジアシルジアルキルゲルマニウム化合物、または可視領域における増感剤としてのチオキサントネンと共に使用され得るのに適したジアリールヨードニウム塩の例としては、市販されるヘキサフルオロアンチモン酸4−オクチロキシフェニル−フェニル−ヨードニウム、またはイソプロピルフェニル−メチルフェニル−ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0063】
ROMPモノマーを基としたスリップの、可視光で誘発される開環メタセシス重合の開始に適するのは、特に、N−ヘテロ環状カルベンリガンドを保持するルテニウム錯体、好ましくは、以下の式に従うルテニウム錯体であり、ここで、RおよびRはアルキル基、特にメチルを表し、そして、Rはまたフェニル、ハロゲン、またはアルコキシであり得る。
【0064】
【化1】

いわゆる光潜在的塩基は、マイケル反応樹脂を基としたスリップの、光誘発マイケル付加を引き起こすために使用され得る。これらは、光照射により触媒活性三級アミン成分を形成する化合物である。この例としては、光潜在的アミジン(例えば、放射により1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンを形成する5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンがある。1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンは、アセトアセテートとアクリレートとのマイケル反応に対してとても効果的な触媒である。)が挙げられる。光潜在的塩基はまた、可視領域に対する公知の増感剤と組み合わされ得る。α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントラキノン,ジアセチル)または、特に、ショウノウキノンが光増感剤として好ましい。
【0065】
成分Cとして、本発明に従うスリップは、表面改質セラミック粒子および/または表面改質ガラスセラミック粒子を含む。
【0066】
セラミックは、結晶構造を有する無機材料を意味し、通常対応する粉末から調製される。セラミックの調製は通常、焼結によって実施される(焼結セラミック)。酸化物セラミックは、好ましくは、金属酸化物の粉末を(例えば、ZrOまたはAl)を焼結することにより得られる。加えて、酸化物−セラミックはまた、1つ以上のガラス相を含み得る。ガラスセラミックは、非晶質ガラス、特にシリケートガラスから、制御された結晶化により通常調製される材料であり、そして、ガラスセラミック中には、ガラス相および1つ以上の結晶相が固体で同時に存在する。焼結可能ガラスセラミックの場合、ガラス粉末およびガラスセラミック粉末の両方が、出発点として使用され得る。
【0067】
好ましい焼結可能ガラスセラミック粒子は、白榴石−もしくはリチウム−ジシリケート−強化ガラス、および/または、ZrOもしくはAlを基とするセラミック粒子(好ましくは、純粋なZrOもしくは純粋なAl、HfO、CaO、Y、CeOおよび/もしくはMgOで安定化されたZrOを基とした粒子、他の金属酸化物を基とした粒子、ならびに、いくつかの酸化物から調製され、そしてそれゆえに種々の結晶酸化物相から構築されるセラミック複合材料(好ましくはZrO−Al、特に、純粋なZrO−Al、またはHfO、CaO、Y、CeOおよび/もしくはMgOで安定化されたZrO−Al))を基とする。
【0068】
用語「純粋」は、「化学的に純粋」の意味で、すなわち、ZrOまたはAlセラミックがZrOまたはAlからのみで構成されると理解されるべきである。ZrOまたはAlといった基本の酸化物に加えて、安定化セラミックは、好ましくは、HfO、CaO、Y、CeO、MgO、およびこれらの混合物から選択される安定化剤を含む。安定化剤は、好ましくは、安定化セラミックの質量と比較して3重量%〜5重量%の量で使用される。高強度のZrOセラミックは、好ましくは、3重量%〜5重量%のY(酸化イットリウム)を含み、正方晶型結晶構造を安定化させる。このZrOセラミックは、Y−TZP(イットリウム−安定化正方晶型二酸化ジルコニウム多結晶)と呼ばれる。基本の酸化物および安定化剤のみを含むセラミック粒子は特に好ましい。
【0069】
成分Bの粒子サイズは、好ましくは、50nm〜50μmの範囲である。それは使用されるセラミックに依存する。Alの場合、成分Bとして使用される粒子のサイズは、好ましくは、50nm〜500nmの範囲であり、特に好ましくは75nmと200nmの間である;ガラスセラミックの場合、500nm〜50μmの範囲であり、特に好ましくは1μmと10μmの間である;TZP−3Y二酸化ジルコニウムの場合、50nmと500nmの間の範囲であり、特に好ましくは50nmと350nmの間である。粒子サイズは、好ましくは、沈殿安定スリップが得られるように選択される。上記粒子サイズは、絶対的な上限および下限である。
【0070】
さらに、粒子サイズが10nm〜200nmの範囲にあるセラミック粒子またはガラスセラミック粒子はまた、ナノ−またはオルガノゾル、すなわち、溶媒中のナノ粒子、成分Aの適したモノマー、またはこれらの混合物の分散液として使用され得る。
【0071】
粒子は、適した物質を用いて表面改質される。セラミック粒子またはガラスセラミック粒子の表面に対して化学的に(すなわち、イオン結合または共有結合により)結合した化合物は、好ましくは、表面改質のために使用される。酸基(好ましくは、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸水素基もしくは酸性リン酸エステル基)か、シリル基(好ましくは、アルコキシシリル基)のいずれかを含む化合物が好ましい。粒子表面は、部分的に、好ましくは完全に、改質剤で覆われ得る。本発明に従って使用される改質剤は、モノマー化合物である。
【0072】
本発明によると、いわゆる接着増進剤またはカップリング剤とは異なり、粒子表面と反応する基のみを含むが、多反応性基(例えば、ラジカル重合可能基、例えば、樹脂マトリクス(A)との共有結合に入り込むアクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、またはエポキシド基)を含まない化合物が、特に適する。そのような化合物は、ここで、非重合可能表面改質剤と呼ばれる。これらの化合物は、安定な結合がセラミック粒子表面と硬化した未焼結体中のポリマーマトリクスの間に形成しないという利点を有し、この利点は、脱結合プロセスにおいてポリマー部分の完全な除去を簡単にする。
【0073】
直鎖状または分子鎖状カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、ピバル酸)、酸性リン酸エステル(例えば、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、もしくはジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート)、またはホスホン酸(例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、もしくはフェニルホスホン酸)が、非重合可能表面改質剤として特に適する。非重合可能表面改質剤として適するシランは、例えば、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリメチルメトキシシラン、またはヘキサメチルジシラザンが挙げられる。
【0074】
好ましい実施形態によると、本発明に従ったスリップは、成分Dとしての安定化剤として、自発的多反応を防ぐための阻害剤を含む。阻害剤、または安定化剤は、スリップの貯蔵安定性を改善し、また、立体リトグラフのタンク中の制御されていない多反応を防ぐ。好ましくは、阻害剤は、スリップが約2〜3年の期間にわたって安定した貯蔵ができるような量で加えられる。特に好ましくは、阻害剤は、それぞれの場合において、スリップの総質量と比較して、0.001重量%〜1.0重量%の量で、さらに特に好ましくは、0.001重量%〜0.50重量%の量で使用される。
【0075】
フェノール(例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)または2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT))は、酸素の存在下のみでとても効果的であり、好ましくは、200ppm〜2000ppmの濃度範囲で使用され、ラジカル反応樹脂およびチオール−エン樹脂に対して、いわゆる好気性阻害剤として使用される。適した嫌気性阻害剤としては、フェノチアジン、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPO)、ヨウ素、およびヨウ化銅(I)が挙げられる。これらは、好ましくは、酸素が存在しない中で、10ppm〜50ppmの低濃度でさえ作用する。次いで、重合は、これらの添加剤が消費されるまで起きない。好気性および嫌気性阻害剤の混合物を使用することは有益である。飽和および不飽和カルボン酸の塩基性アルカリ金属塩および塩基性アルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウムメチラート、ステアリン酸カルシウム、またはオレイン酸リチウム)は、カチオン重合に対する阻害剤として有益に使用され得る。一方、マイケル反応は、酸(例えば、酢酸またはp−トルエンスルホン酸)により阻害され得る。
【0076】
スリップの総質量と比較してそれぞれ、好気性阻害剤は、好ましくは、0.01重量%〜0.50重量%の量で使用され、嫌気性阻害剤は、0.001重量%〜0.02重量%の量で使用される。好ましい混合物は、同様にスリップの総質量と比較して、0.01重量%〜0.10重量%の好気性阻害剤、および、0.001重量%〜0.01重量%の嫌気性阻害剤を含有する。
【0077】
本発明のさらに好ましい実施形態によると、上記スリップは、いわゆる脱結合促進剤を成分Eとして含む。後者は、好ましくは0重量%〜20重量%の量で、特に好ましくは0.01重量%〜10重量%の量(各場合において、スリップの全体の質量に対して)で使用される。脱結合促進剤によって、脱結合プロセスの間に結合剤の除去を促進する物質が意味される。
【0078】
上記圧粉体の脱結合は、適切な、すなわち多反応樹脂における多反応に有効な物質によって、標的化された様式で促進または影響され得る。一例として(On the one hand)、これらは、特に連鎖移動(chain−transfer)活性物質(いわゆる連鎖移動剤)のような網目構造形成に影響する添加剤である。これは、ポリマー網目構造密度における減少を、そしてそれによるより良い熱分解性をもたらす。例えばラジカル重合のための公知の連鎖移動剤は、特に、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタン、およびジスルフィドである。ジスルフィド、特に、例えばテトラメチルチウラム(tetramethylthiuram)ジスルフィドまたはイソプロピルキサントジェン酸ジスルフィドのようなジチオウレタンジスルフィドは、ラジカル光重合において、いわゆる光イニファータ(photoiniferter)として作用する。光イニファータは、光開始剤(photoini−)として作用し、そして移動反応(−fer−)および停止反応(−ter)にも関与する化合物である(T. Ostsu, M. Yoshida, Makromol. Chem., Rapid. Commun. 3 (1982) 127−132: Role of Initiator−Transfer Agent−Terminator (Iniferter) in Radical Polymerizations: Polymer Design by Organic Disulfides as Inifertersを参照のこと)。連鎖移動活性物質、すなわち連鎖移動剤または光イニファータの添加は、多反応樹脂混合物の反応性をほとんど変えずに、多反応網目構造の網目構造密度の減少を達成する。連鎖移動剤および光イニファータは、成分(A)に対して、好ましくは0.005重量%から2重量%の量で、そして特に好ましくは0.1重量%〜1.0重量%の量で使用される。
【0079】
本発明によると、ポリマー網目構造の熱安定性の低減を引き起こすコモノマーもまた、脱結合促進剤として有利に使用され得る。例えば過酸化物、アゾ、またはウレタン基のような、熱的に不安定な基(これは、立体リトグラフプロセスの間にポリマー網目構造中に組み込まれ、次いで熱脱結合プロセスにおけるポリマー網目構造の分解を促進する)を含有するコモノマーが、このために適している。重合可能な過酸化物の好ましい例は、塩化4−ビニルベンゾイル(4−vinyl benzoyl chloride)と過酸化ナトリウムとの反応によって得ることができる4,4’−ジビニルベンゾイル過酸化物である。重合可能なアゾ化合物の好ましい例は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートと4,4’−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)のエステルである。好ましい熱的に不安定なウレタンは、例えば、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)またはトルイレンジイソシアネート(toluylene diisocyanate)(TDI)のヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)または2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の反応によって、ジイソシアネートから得ることができる。熱的に不安定なモノマー構築ブロックのさらなる例は、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,4−ベンゼン−ジメチルアクリレートが代表的である。触媒的な酸の量の存在下での例えばジアクリレートおよびジアセトアセテート(diacetoacetate)のマイケル付加網目構造へのα,α,α’,α’−テトラメチル−1,4−ベンゼン−ジメチルアクリレートの導入は、ポリマー網目構造の分解の促進を引き起こす。
【0080】
さらに、その多反応産物が容易に熱分解可能なコモノマーが、脱結合促進剤として適している。α−メチルスチレンのように低い天井温度(T)を有するコモノマーが、ラジカル重合樹脂として好ましい。天井温度は、重合が脱重合と平衡である限界温度であり、重合エンタルピーと重合エントロピーの商によって計算され得る(H.−G. Elias, Makromolekuele, Vol. 1, 6th ed., Wiley−VCH, Weinheim etc. 1999, 193 et. seq.を参照のこと)。例えば、α−メチルスチレンのTは、61℃である。ポリテトラヒドロフラン(PTHF)の天井温度Tは、80℃である。したがって、ポリ(メタ)アクリレート網目構造の分解性は、コモノマーとしてテレケル(telechel)、特にPTHFジ(メタ)アクリレートテレケルを使用することによって促進され得る。本発明によると、−10℃〜150℃の天井温度、好ましくは10℃〜150℃の天井温度、そして特に好ましくは20℃〜130℃の天井温度を有するコモノマーが、特に適している。このコモノマーは、成分(A)に対して、0.1重量%〜30重量%の量で、そして特に好ましくは0.5重量%〜20重量%の量で使用され得る。
【0081】
セラミックまたはガラスセラミック圧粉体の脱結合の向上のための上述の連鎖移動剤、光イニファータおよびコモノマーの別個の使用または共同の使用は、同様に、本発明の主題である。
【0082】
本発明に従うスリップは、好ましくは、成分Fとして発色成分を含有する。この発色成分は、成分Cの質量に対して、好ましくは0.00001重量%〜2.0重量%の量で、そして特に好ましくは0.001重量%〜1.0重量%の量で、さらに特に好ましくは0.01重量%〜0.5重量%の量で使用される。
【0083】
慣習的な着色剤または色素は、発色成分としては、本発明に従うと適していない。なぜなら、それらは脱結合プロセスまたは焼結プロセスの間残り続けるのに十分に安定ではないからである。本発明によると、一方では結合剤Aに可溶であって光硬化の過程で有害には作用せず、そして他方では立体リトグラフにより調製されたセラミック圧粉体の脱結合またはそれから得られたセラミック白体の焼結の間に発色性遷移金属イオンを形成する反応性遷移金属化合物が、成分Fとして使用される。発色成分として好ましい遷移金属化合物は、特に、元素の鉄、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ランタン、タングステン、オスミウム、テルビウム、およびマンガンのアセチルアセトネートまたはカルボン酸塩である。カルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルヘキシルカルボン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸の塩が、好ましい。とりわけ対応するFe、Pr、MnおよびTb化合物(例えば、酢酸鉄(III)または鉄(III)アセチルアセトネート、酢酸マンガン(III)またはマンガン(III)アセチルアセトネート、酢酸プラセオジム(III)またはプラセオジム(III)アセチルアセトネート、あるいは酢酸テルビウム(III)またはテルビウム(III)アセチルアセトネート)、および対応するカルボン酸塩も、特に好ましい。
【0084】
発色成分は、歯の色をしたセラミックスペーサーが脱結合および焼結の後に得られるように、好ましくは選択される。
【0085】
有色セラミック成形物および特に有色焼結セラミック成形物への上述の遷移金属化合物の別個の使用または共同の使用、特にセラミック成形物の調製および特に焼結セラミック成形物の調製のためのRPプロセスにおける発色成分としての使用は、同様に、本発明の主題である。
【0086】
従って、本発明によると、成分A、BおよびCに加えて、阻害剤D,脱結合促進剤E、および/または発色成分Fを含むスリップが好ましい。成分A、B、CおよびD;成分A、B、C、およびE;成分A、B、C、およびFを含むスリップが特に好ましく、成分A、B、C、DおよびE;成分A、B、C、DおよびF;成分A、B、C、EおよびFを含むスリップはさらに特に好ましく、そして特に、成分A、B、C、D、EおよびFを含むスリップが好ましい。各場合において、好ましくは示された量で、上で規定された成分および好ましい成分を使用するのが好ましい。
【0087】
成分A〜Fに加えて、本発明によるスリップは、さらなる成分を添加剤として含み得る。
【0088】
本発明によると、セラミック粒子の濃縮作用はモノマーの非重合可能表面改質剤による表面の改質の結果として顕著に低減されるので、高い固体含量を達成するために、慣習的なポリマー分散剤の使用は省かれ得るが、上記スリップはまた、セラミック粒子の凝集物の形成および沈殿をさらに防ぐために、1以上の分散剤を含み得る。水性スリップのための好ましい分散剤は、とりわけポリマーであり、特に多価電解質(例えば、ポリカルボン酸もしくはポリカルボン酸塩)または非イオン性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールもしくはカルボキシメチルセルロース)である。例えばポリカルボン酸アンモニウムのような、イオン性の基を有し、そしてそれゆえに固体の表面上で(例えばセラミック粒子の表面上で)比較的容易に吸収する多価電解質が、水性スリップのための分散剤として適している。この多価電解質イオンは、次いで、その粒子に電荷を与えることができ、これが次いで電気立体効果と呼ばれる。この多価電解質の分散作用は、とりわけ、その濃度、粒子の型およびカバーの程度(degree of coverage)、溶液のpH、ならびにそのイオン強度に依存する。有機非水性スリップの場合、例えば光硬化(メタ)アクリレート樹脂中で可溶なポリ(メタ)アクリレートのようなポリマーが、分散剤として特に適している。分散剤は、上記スリップの質量に対して、好ましくは0.5重量%〜3重量%の量で必要に応じて使用される。500g/mol〜5,000g/molの範囲のモル質量の分散剤が好ましい。
【0089】
成分Cの粒子は、上記スリップが製造される前に、分散剤ですでに前処理され得る。この処理が表面改質の前に起こる場合、その表面改質の阻害を避けるために、上記粒子は、比較的少量(好ましくは、最大で1重量%)の分散剤でのみ処理される。上記粒子が表面改質の後に分散剤で処理される場合、分散剤の割合は、好ましくは0.1重量%〜5重量%(各場合において、その粒子の質量に対して)である。
【0090】
本発明によるセラミックスリップは、さらなる成分として1以上の可塑剤を含み得る。この可塑剤は、必要に応じて、光化学硬化および可能性のある乾燥の後にセラミック未焼結体がもろくなるのを防ぎ得る。可塑剤はまた、立体リトグラフにより製造された未焼結体の十分な可撓性を確実にする。好ましい可塑剤は、フタレート(例えば、ジブチルフタレートもしくはジヘキシルフタレート)、非酸性ホスフェート(例えば、トリブチルホスフェートもしくはトリクレシルホスフェート)、n−オクタノール、グリセロール、またはポリエチレングリコールである。可塑剤は、成分(A)の質量に対して、好ましくは0重量%〜15重量%の量で、特に好ましくは0.1重量%〜5重量%の量で、使用される。
【0091】
さらに、本発明によるスリップはまた、有利に溶媒も含み得る。可塑剤として上記された化合物が、例えば溶媒として適している。
【0092】
少なくとも約120℃の沸点、好ましくは150℃〜250℃の沸点、特に好ましくは180℃〜230℃の沸点を有する成分が、溶媒として好ましく使用され、上記スリップの立体リトグラフ処理が早期蒸発を生じないという結果となる。150℃と250℃との間の温度範囲において進行的に蒸発され得る溶媒の混合物が、特に適している。さらに特に適しているのは、オクタノール、トリエチレングリコールジビニルエーテル、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、クエン酸三アンモニウム(固体)、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、エチルアセトアセテート、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジブチルオキサレート、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール300、1−ノナノールもしくは2−ノナノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、ジブチルオキサレート、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、エチルアセトアセテートおよびそれらの混合物である。
【0093】
上述の溶媒の蒸発が、未焼結体における微小孔の形成につながることが見出された。この微小孔は、次いで、焼結の際に再度閉じるが、これはまた脱結合工程においてガスの排出を可能にし、そして促進し、それによってひずみおよび亀裂の形成を防ぐ。さらに、立体リトグラフによって産生される層の分離の危険性が低減され、そして有機成分の完全な除去が好都合である。
【0094】
溶媒は、成分(A)の質量に対して、好ましくは5重量%〜50重量%の量で、特に好ましくは10重量%〜30重量%の量で使用される。
【0095】
あるいは、未焼結体の有孔性はまた、熱処理の前に、抽出によって溶出可能な部分を除去することによっても達成され得る。適切な抽出可能成分は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリエチレングリコールのような水溶性ポリマーである。さらに、ベンジン溶解性物質(例えば、パラフィンまたは蝋)および長鎖脂肪酸エステルが使用され得る。樹脂マトリクス中の抽出可能成分の好ましい量は、成分(A)に対して、0重量%と40重量%との間であり、特に好ましくは0.1重量%と30重量%との間である。
【0096】
さらに、本発明によるスリップは、例えば室温で安定な過酸化物のような、脱結合プロセスの間にポリマーマトリックスの酸化分解を促進する成分、または触媒的脱結合を可能にする触媒性成分を含み得る。過酸化物に加えて、硝酸のような酸化効果を有する他の物質、または酸化剤を分離または形成する物質もまた、適している。
【0097】
加えて、本発明によるスリップは、スリップの調製の間の気泡形成またはそのスリップの処理の間の被膜(skin)の形成を防ぐ、消泡(defoaming)剤および/または抗被膜形成(antiskinning)剤を含み得る。消泡剤および/または抗被膜形成剤は、各場合において、成分(A)の質量に対して、有機マトリックスにおいて、好ましくは0重量%〜5重量%の量で、そして特に好ましくは0.1重量%〜2重量%の量で使用される。
【0098】
本発明に従うスリップのレオロジー的特性は、それらの粘度が200mPas〜2,000Pasの範囲、好ましくは500mPas〜500Pasの範囲、より好ましくは500mPas〜50Pasの範囲、最も好ましくは200mPas〜20,000mPasの範囲、特に好ましくは500mPas〜5,000mPasの範囲にあるように設定されることが好ましい。仮に可能ならば降伏点が存在しない場合、有利である。粘度は、23℃でプレート(plate)−プレート粘度計を用いて測定された。
【0099】
本発明に従うスリップは、セラミック成形物またはガラスセラミック成形物の調製、特に歯科用修復物(例えば、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、およびフレーム枠)の調製に特に適する。
【0100】
さらに、本発明の主題は、セラミック成形物またはガラスセラミック成形物を調製するためのプロセスであり、そのプロセスにおいて:
(a)未焼結体は、本発明に従って、放射エネルギーの局所的導入によって、該未焼結体の幾何学的形状の形成を伴うスリップの硬化により調製され、
(b)該未焼結体が、次いで、前焼結体を得る目的で、結合剤を除去(脱結合)するために熱処理に晒され、そして
(c)該前焼結体が、次いで焼結される。
【0101】
段階(a)における未焼結体の調製は、ラピッドプロトタイピングによって、好ましくは立体リトグラフによって実施される。セラミック未焼結体は、段階(b)において脱結合される、自由自在に流れるセラミックスリップの層状放射硬化により調製される。使用される結合剤は、好ましくは90℃〜600℃の温度に未焼結体を加熱することによって除去され、いわゆる前焼結体が得られる。前焼結体は、段階(c)において焼結され、高密度セラミック成形物を形成する。前焼結体の焼結は、焼結炉中で、ガラスセラミックに対して好ましくは650℃〜1100℃、好ましくは700℃〜900℃で実施され、二酸化ジルコニウムに対しては1100℃〜1600℃、好ましくは1400℃〜1500℃、酸化アルミニウムに対しては1400℃〜1800℃、好ましくは1600℃〜1700℃の温度で実施される。本発明に従うプロセスに従って調製されるセラミック成形物は、高強度および優れた細部の正確さにより特徴付けられる。ISO6872に従う結合強度は、100MPaより大きく、特に、ガラスセラミックで作られる成形物に対しては150MPa〜500MPaの範囲である。Alから作られる成形物は、好ましくは300MPaより大きい結合強度、特に500MPa〜700MPaの範囲を有し、ZrOから作られる成形物は500MPaより大きい結合強度、特に800MPa〜1100MPaの範囲を有する。
【実施例】
【0102】
本発明は、以下の図および実施例によって、より詳細に説明される。
【0103】
図1に示すように、上記デバイスは、本発明に従うスリップ7のための容器1を構成する。容器1は、重合タンクまたはタンクとも呼ばれる。示される実施形態において、タンク1は透明窓2を有し、透明窓2を通して、スリップは下から選択的に照射され得、硬化され得る。コンピュータ制御の可動ミラー3、いわゆるマイクロミラーアレイ(micro−mirror array)が、タンク1の下に配置される。このミラー3は、照射源4を用いて、照射される。ミラー3のイメージは、光学デバイス5によって透明窓2の上に投影される。層状に構築された本体8を運ぶ、Z方向に可動する基材キャリアー6がタンク1の上に配置される。基材キャリアー6は、ここには示されていないキャリアープレートを有し得る。基材キャリアー6は、キャリアー6またはそれに付随する本体8と、タンク1の内部表面との距離が、産生される層の厚さに一致するまで、スリップ中に浸される。次いで、キャリアー6とタンク内部表面との間のスリップ層は、選択的に照射され、ミラー3の補助を伴いながら透明窓2を通して硬化される。キャリアー6に付着する硬化範囲が形成される。次いで、キャリアー6はZ方向に持ち上げられ、その結果として、所望される厚さを有するスリップ層が、付着層とタンク内部表面との間に再び形成される。この層はまた、新たな照射により選択的に硬化され、所望される成形物、好ましくは歯科用修復物が上記プロセスを繰り返すことにより層状に構築される。
【0104】
実施例
(実施例1)
(ZrOスリップの調製、および、高強度、歯の色のセラミック試験体を形成するための立体リトグラフプロセス)
表1に列挙された液体成分を導入し、光開始剤Irgacure819(Ciba)およびプラセオジムアセトアセトネートをそれらの中に、撹拌しながら溶解させた。次いで、Yを3mol%含み、イソ酪酸で表面改質されたZrO粉末3Y TZP(Tosoh)を、Dispermat溶解器(VMA)中に15,000rpmで少量ずつ加え、約41容量%の充填レベルの高充填ZrOスリップを形成するまで、30分間分散させた。この高充填ZrOスリップは、立体リトグラフにより十分に加工可能であった。
【0105】
【表1】

スリップを、当該分野で慣例のPerfactory(Envisontec)立体リトグラフユニットによって、円筒二軸強度試験片(直径15mmおよび高さ2.2mm)に変換した。試験片の熱処理を、以下の工程において、触媒的に二次的に焼くことと共に、Nabertherm焼結炉中で実施した:
第一工程(脱結合):1K/分の速度で昇温させながら、500℃まで熱処理。次いで、500℃で90分の保持段階。
第二工程(焼結):20K/分の速度で昇温させながら、1500℃に加熱し、そして、1500℃で1時間保持する。冷却を、約12時間以内に炉中で実施した。
歯の色の試験片を得た。試験片の密度を、焼結後、浮力法にしたがって測定し、ここで、理論的な密度の値の99%より大きな値を得た。二軸強度は、ISO標準6872に従って測定した。二軸強度を測定し、(n=10試験片に対する)平均値は1110MPaであった。この平均値は、高強度セラミックの値に相当する。
【0106】
(実施例2)
(実施例1からのZrOスリップを基とした歯の色のクラウンの調製)
実施例1からのZrOスリップを基として、圧粉体を、STL(標準変換言語)データセットを用いる(当該分野で慣例の)Perfactory立体リトグラフユニット中で歯のクラウンの形状で調製し、次いで、実施例1と同様に、脱結合し、焼結した。高強度の歯の色のクラウンを得た。
【0107】
(実施例3)
(高強度の、歯の色の歯科用成形物の調製のための立体リトグラフプロセスに適した、さらなるセラミックスリップまたはガラスセラミックスリップの調製)
実施例1と同様に、表2に列挙されたセラミックスリップまたはガラスセラミックスリップの組成物を調製した。この組成物は、高強度の、歯の色の歯科用セラミックおよびガラスセラミック成形物を形成するのに容易に脱結合可能であり、容易に立体リトグラフにより加工可能である。
【0108】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多反応性結合剤、重合開始剤、および充填剤を基にしたスリップであって、それぞれの場合において、該スリップの全質量と比較して:
(A)5重量%〜65重量%の多反応性結合剤、
(B)0.001重量%〜1.0重量%の光開始剤、および
(C)35重量%〜90重量%の表面改質セラミック粒子、および/または、表面改質ガラスセラミック粒子、
を含有することにより特徴付けられる、スリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のスリップであって、上記スリップの全質量と比較して:
(D)0.001重量%〜1.0重量%の阻害剤
もまた含有する、スリップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスリップであって、成分Aの質量と比較して:
(E)0重量%〜20重量%の脱結合促進剤
もまた含有する、スリップ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスリップであって、成分(C)の質量と比較して:
(F)0.00001重量%〜2.0重量%の発色成分
もまた含有する、スリップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスリップであって、多反応性結合剤(A)として、光硬化性のラジカルもしくはカチオン重合可能樹脂、開環メタセシス重合のためのモノマー、チオール−エン樹脂、またはマイケル反応樹脂を含有する、スリップ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの1つに記載のスリップであって、成分(C)として、純粋なZrO、純粋なAl、純粋なZrO−Al、HfO、CaO、Y、CeO、および/もしくはMgOで安定化されるZrOまたはZrO−Alを基としたガラスセラミック粒子またはセラミック粒子を含有する、スリップ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のスリップであって、前記成分(C)の粒子が、直鎖状もしくは分枝鎖状カルボン酸、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、もしくは、ピバル酸;酸性リン酸エステル、特に、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、もしくはジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート;ホスホン酸、特に、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、もしくはフェニルホスホン酸;または、シラン、特に、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリメチルメトキシシラン、もしくはヘキサメチルジシラザンで表面改質され、ここで、該表面改質剤がラジカル重合可能基を含有しない、スリップ。
【請求項8】
上記成分(C)の粒子が50nm〜50μmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスリップ。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載のスリップであって、脱結合促進剤(E)として、連鎖移動剤、特に、メルカプタン、ジスルフィド、もしくは光イニファータ、好ましくは、ラウリルメルカプタン、ジチオウレタンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、もしくはイソプロピルキサントゲン酸ジスルフィド;1つ以上の熱に不安定な基、特に、1つ以上の過酸化物基、アゾ基、もしくはウレタン基を有するコモノマー;−10℃〜150℃の天井温度を有するコモノマー、特に、α−メチルスチレンもしくはポリテトラヒドロフラン(PTHF);または、ラジカル重合可能基を有するテレケル、特に、PTHFジアクリレートテレケルもしくはPTHFジメタクリレートテレケルを含有する、スリップ。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか1項に記載のスリップであって、発色成分(F)として、遷移金属化合物、特に、鉄、セリウム、プラセオジム、テルビウム、ランタン、タングステン、オスミウム、テルビウム、およびマンガンといった元素のアセチルアセトネートもしくはカルボン酸塩、特に、酢酸鉄(III)もしくは鉄(III)アセチルアセトネート、酢酸マンガン(III)もしくはマンガン(III)アセチルアセトネート、酢酸プラセオジム(III)もしくはプラセオジム(III)アセチルアセトネート、または、酢酸テルビウム(III)もしくはテルビウム(III)アセチルアセトネートを含有する、スリップ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のスリップであって、フタレート、特に、ジブチルフタレート、またはジヘキシルフタレート、酸性でないホスフェート、特に、トリブチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、n−オクタノール、グリセロール、ポリエチレングリコール、オクタノール、トリエチレングリコールジビニルエーテル、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、クエン酸三アンモニウム(固体)、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、エチルアセトアセテート、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シュウ酸ジブチル、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール300、1−または2−ノナノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、シュウ酸ジブチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、エチルアセトアセテート、および、これらの混合物から選択される溶媒もまた含有する、スリップ。
【請求項12】
200mPas〜2,000Pasの範囲の粘度を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のスリップ。
【請求項13】
セラミック成形物またはガラスセラミック成形物の調製のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載のスリップの使用。
【請求項14】
前記セラミック成形物が、例えば、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、またはフレーム枠といった歯科用修復物である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
セラミック成形物またはガラスセラミック成形物の調製のためのプロセスであって:
(a)未焼結体が、該未焼結体の幾何学的形状の形成を伴う、放射エネルギーの局所的導入により、請求項1〜10のいずれか1項に記載のスリップを硬化させることにより調製され、
(b)次いで、前焼結体を得る目的で、結合剤を除去(脱結合)するために該未焼結体が熱処理に晒され、そして
(c)該前焼結体が焼結される、
プロセス。

【図1】
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【公開番号】特開2010−31279(P2010−31279A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176955(P2009−176955)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(501151539)イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL−9494 Schaan Liechtenstein
【出願人】(509213990)
【Fターム(参考)】