説明

歯科用ユニット

【課題】 そこで、本発明は簡易的な構造で、より効果的に患者の動作を補助することのできる把手を備えた歯科ユニットを提供する。
【解決手段】 背もたれ(22)と着座部(23)を具備し、当該着座部及び背もたれが移動及び/又は回動可能とされた患者用椅子(20)と、患者用椅子の右側又は左側に、当該患者用椅子に並べて配置されたウォーターユニット(30)と、を備えた歯科用ユニット(10)であって、ウォーターユニットの上面又は側面に一端を取り付けられ、ウォーターユニットの患者用椅子側側面よりも当該患者用椅子側へ突出して延設された棒状である把手(60)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医等で使用される歯科用ユニットに関し、詳しくは、患者等が当該歯科用ユニットの椅子に昇降する際、又は治療中に体を支える必要がある時に利用することができる把手を備えた歯科用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医等に備えられた歯科用ユニットには、患者が座る椅子と、患者がうがい等をするためのウォーターユニットとを有している。患者が座る椅子(以後、「患者用椅子」と記述することがある。)は、事務用椅子等の通常の椅子とは異なり、患者の口腔内を適切に、効率良く治療するために、患者用椅子の背もたれ部が着座部分の端部を軸に回動させることができたり、フットレスト部が回動可能に設けられたりしている。さらには、患者の高さ位置を調整するために、患者用椅子が上下に移動することができるようにもされている。
【0003】
このように、適切かつ効率良い治療が考慮された患者用椅子については、患者が当該患者用椅子に昇降する時やウォーターユニットを利用してうがいをする時等に、患者が動作し難いことがあった。これは、主に当該動作時に患者の姿勢が不安定となることに起因し、患者が安定して動作をすることができる補助手段が必要とされていた。
【0004】
そこで、特許文献1〜3において、かかる補助手段として患者が患者用椅子に昇降する時等につかまることのできる手摺部材を備えた歯科用治療ユニットが開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている歯科用治療ユニットは、治療椅子(患者用椅子)と、スピットン(ウォーターユニットに備えられた部材)との間に、回動可能に立設された垂直部と水平部とを有するL字形の手摺部材を備え、回動の所定位置でロックが可能である旨が開示されている。
【0006】
特許文献2に開示されている歯科用治療ユニットは、治療椅子と、スピットンとの間に回動可能に立設された垂直部と水平部とを有する手摺部材を備え、回動の所定位置でロックが可能である旨が開示されている。
【0007】
特許文献3に開示されている歯科用治療ユニットは、治療椅子(患者用椅子)のいずれか一方の側方前部に回動可能に立設された垂直部と水平部とを有する手摺部材を備え、当該手摺手段が駆動されることにより自動的に回動される歯科治療ユニットが開示されている。
【0008】
特許文献1〜3の歯科治療ユニットが備える手摺手段は、いずれにおいても患者用椅子やウォーターユニットとは別に設けられ、回動する機構を有するとともに回動が所定の条件で禁止される。そして所定の回動位置で、手摺手段を患者が掴むことにより、患者が安定して動作をすることができる旨が開示されている。
【特許文献1】特開平11−19142
【特許文献2】特開平11−226066
【特許文献3】特開2004−73418
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1〜3のいずれにおいても手摺部材を使用するために、術者がいずれかの操作をして手摺部材を所定位置にまで回動させなくてはならず、患者も当該手摺部材が所定の位置にまで移動してくるのを待たなくてはならなかった。また、特許文献1〜3に備えられている手摺部材はいずれも回動可能とされており、さらにこの回動を禁止する手段を備えているので、特に回動部位において構造が複雑となる虞があった。また、特許文献1〜3に備えられている手摺部材は、床面に近接した部位から、患者用椅子の高さより高い位置にまで上方に延設されているので、部材として大きなものとなり、コストの観点や意匠的な観点から問題となる場合もあった。
【0010】
そこで、本発明は簡易的な構造で、より効果的に患者の動作を補助することのできる把手を備えた歯科ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0012】
請求項1の発明は、 背もたれ(22)と着座部(23)とを具備し、着座部及び背もたれがいずれかの方向に移動及び/又は回動可能とされた患者用椅子(20)と、患者用椅子の右側又は左側に、当該患者用椅子に並べて配置されたウォーターユニット(30)と、を備えた歯科用ユニット(10)であって、ウォーターユニットの上面又は側面に一端を取り付けられ、ウォーターユニットの患者用椅子側側面よりも当該患者用椅子側へ突出して延設された棒状である把手(60)を備える歯科用ユニットを提供することにより前記課題を解決する。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の歯科ユニットが、把手(60)が、当該把手にかかる下面側からの力を検知するセンサ(65)と、センサの検知信号に基づき患者用椅子の移動及び/又は回動を許容又は禁止する制御手段(80)とを備え、センサが、把手にかかる下面側からの力を検知した時に、患者用椅子(20)の移動及び/又は回動を禁止し、センサが、把手にかかる下面側からの力を検知していない時には、患者用椅子の移動及び/又は回動を許容することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2のいずれか一項に記載の歯科ユニット(10)のセンサ(65)が、把手(60)の全長の1/3以上に亘って配置される面状のセンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、把手はウォーターユニットから延設されているので、簡易的な構造であり、効果的に患者の動作を補助することのできるとともに、意匠性にも優れた把手を備えた歯科ユニットとすることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1に発明の効果に加え、患者が把手を利用する際、又は術者等が治療中において患者用椅子を移動及び/又は回動させる際に、当該移動及び/回動が望まれない場合における患者用椅子の移動及び/又は回動を自動的に禁止することができ、より安全で、安定して患者の動作を補助することができる歯科ユニットとすることが可能となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、把手が面状のセンサを備え、当該センサが把手の長手方向に亘って配置されているので、把手下部のいずれの部位に力が加えられても適切に患者用椅子の移動及び/又は回動を自動的に禁止できる。これにより、さらに安全で、安定して患者の動作を補助することができる歯科ユニットとすることが可能となる。
【0018】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0020】
図1は、本発明の1つの実施形態を示した斜視図である。本発明の歯科ユニット10は、台座26と、移動・回動ユニット25と、患者用椅子20と、ウォーターユニット30とを主要に備えている。台座26は、高さが幅や奥行きに比べて薄くされている略直方体である部位で、一面を床に接して配置されている。移動・回動ユニット25は、台座26の上面に配置され、後述の患者用椅子20を移動及び/又は回動させることができる不図示の昇降機構が内側に備えられ、移動・回動ユニット25の上面に着座部23が取り付けられている。患者用椅子20には、着座部23と、背もたれ22と、フットレスト24とを備えている。背もたれ22は、着座部23の一端側に連結部材23a、23b(23bは図1では死角となり見えない。)を介して回動可能に取り付けられている。また、フットレスト24は着座部23の背もたれ22が取り付けられた端部と対向する端部に当該端部を軸に回動可能に備えられている。さらに背もたれ22の着座部23と反対側端部にはヘッドレスト21が取り付けられている。このように着座部23に回動可能に背もたれ22及びフットレスト24が取り付けられることにより、いわゆるリクライニングの姿勢に患者用椅子を変形することができる。このとき、背もたれ22は、着座部23側の端部を中心に水平の姿勢に近づくように回動し、フットレスト24も着座部23側の端部を中心に水平の姿勢に近づくように回動する。また、着座部23は、背もたれ23側の端部を中心にフットレスト24側の端部が若干上昇するように回動し、背もたれ22、着座部23及びフットレスト24全体で患者のリクライニングの姿勢を快適なものとしている。このように、患者用椅子20では、患者を座る姿勢と横たわる姿勢とに治療の内容に応じて術者(歯科医)が選択することができる。さらに、移動・回動ユニット25により着座部23を上下動させ、患者の高さ位置を調整することができ、術者の治療の便宜が図られている。
【0021】
ウォーターユニット30は、患者用椅子20の背面(ヘッドレスト21の紙面左上側)から当該患者用椅子20を見た時に、患者用椅子20の左方に配置されている。ウォーターユニット30は、床面から上方に立設された楕円形の水平断面を有する基体40を有している。基体40は中空とされており、内側には給排水管が通されている。基体40の上面には、水供給部50とスピットン53と、把手60と、テーブル板70とが備えられている。各部位については後で詳しく説明する。
【0022】
以上のように構成された歯科ユニット10により、簡易的な構造で、より効果的に患者の動作を補助することのできる把手60を備えた歯科ユニットを提供することができる。具体的に患者が当該歯科ユニット10を利用して治療を受ける過程の一例を以下に示す。最初、背もたれ22及びフットレスト24が略垂直の姿勢にされた患者用椅子20に、患者は把手60を掴むことで体を安定させて座ることができる。その後治療が進み、例えばうがいをするためにウォーターユニット30に頭を近づける必要がある場合、患者は把手60を掴んでうがい等をする時に体を安定させることができる。そして治療が完了し、患者が患者用椅子20から降りる時にも、患者は把手60を掴むことで体を安定させて動作することができる。この一連の動作中に、把手60を術者(歯科医等)や患者が掴めるように移動させる必要はなく、患者自身の意思で把手60を掴むことができる。
【0023】
また、歯科ユニット10の把手60は、非常にシンプルな印象を与えることができる把手60とされているので、意匠性にも優れたものとなる。歯科ユニットを意匠的に優れたものにすることにより、患者の治療に対する不安感等を緩和することができるので、患者及び術者の両者にとって好ましいことである。
【0024】
以上のような歯科ユニット10の構成は、その他治療に用いられる機器、器材が取り付けられることを妨げるものではない。例えばドクターユニットと呼ばれる歯科治療のための器具を収納したユニットが取り付けられても良い。
【0025】
次にウォーターユニット30の上部に着目して説明する。図2(a)は、ウォーターユニット30の上面図、図2(b)はウォーターユニット30の上部に着目して示したウォーターユニット30の正面図である。図2(a)の上面図では、紙面下方が患者側である。また、図2(b)の正面図はウォーターユニット30を患者用椅子20側から見た図である。上述したようにウォーターユニット30の上部で基部40の上面には、水供給部50と、スピットン53と、把手60と、テーブル板70とが備えられている。図2(b)からわかるように、水供給部50は、筒体50aと、スピットン台50bと、給水管51と、コップ受け52とを備えている。水供給部50では、筒体50aが基体40の上面略中央から立設され、筒体50aの上面にコップ受け52が配設されている。またコップ受け52の上面の1部位から給水管51が立設されている。給水管51の上側は、U字に曲げられその端部が下方を向くようにされている。スピットン台50bは、筒体50aの下部側面から患者が横たわる方向に略平行に延設された部材で、上面にスピットン53が載置される。スピットン53は器状の部材で底部に排水口を備えている。
【0026】
このような水供給部50とスピットン53を備えることにより、患者が患者用椅子20に座ったままでもうがい等をすることができるようになる。水供給部50に給水され、スピットン53の排水口から排水される構成についての詳細は省略するが、通常に歯科ユニットに備えられる給排水の構成が適用される。これによりコップ受けに乗せられたコップに給水管51から水が供給され、コップに注がれた水で患者がうがいした後、スピットン53からその水が排水される。
【0027】
把手60は、基体40の上面で患者に近い側に立設された柱状の部材である柱状部61と、当該柱状部61の上下方向略中央の位置で、患者側に床面に対して略平行に配置された棒状の部材である手摺部62とを主要部材として備えている。柱状部61と手摺部62とは、連結部61aを介して連結されている。手摺部62は、図2(a)からもわかるように上面視で略くの字状に折れ曲がった形状を有しており、くの字型のうち一方が患者に対して略平行となり、他方が柱状部61に沿うように折れ曲がって配置されている。さらに手摺部62は、患者用椅子20の移動及び/又は回動を禁止するためのセンサ及び当該センサの作動機構を備えている。当該センサ及びセンサ作動機構については後で詳しく説明する。
【0028】
テーブル板70は、水供給部50を挟んでスピットン53と反対側の基体40の上方に備えられた板で、床面に対して略水平に配置されている。また、テーブル板70は、柱状部61と、当該柱状部61と同形状で患者側とは反対側の基体40の上面に備えられた柱状部71との上面に載置されて取り付けられている。これにより、例えば患者が治療中に眼鏡等をテーブル70に一時的に置いておくことができ、利便性が向上されている。
【0029】
以上のように、ウォーターユニット30の上面には、給排水のための設備だけでなく、把手60やテーブル70が備えられ、患者に対する利便性を向上させる機能が備えられている。特に把手60を上述したような構成で備えることにより、効果的に患者の動作を補助することのできる把手60を備えた歯科ユニット10を提供することができる。さらに、図2からわかるように、機能的であるだけでなく各構成要素がスッキリとした印象で配置されているので、意匠的にも優れた歯科ユニット10となっている。
【0030】
次に、把手60のうち手摺部62について説明する。図3は、手摺部62の分解斜視図で、分解されて並べられた各部材を斜め下方から見た図である。手摺部62は、上手摺63と、中間部材64と、検知センサ65と、下手摺66と、とめねじ67、67、67とを主要部材として備え、これら部材が組み合わされている。上手摺63と下手摺66とは、上手摺63を上側、下手摺66を下側として一対で手摺部62の外形状を形成している部材である。上手摺63は、柱状部61と連結部61aを介して固定されている(図2(a)参照)。また、下手摺66には、その上面に複数の突起(図3では死角となり見えない。)が設けられている。当該突起は、後述するように、突起が検知センサに接触した時に、検知信号を発するために設けられたものである。
【0031】
中間部材64や検知センサ65は、上手摺63と下手摺66との間に挟まれるように配置される。中間部材64は、筒状の部材で、とめねじ67、67、67との関係で、手摺部62を組み立てた時に後述するような上手摺63と下手摺66とが所定の位置関係を有するように配置するためのものである。検知センサ65は、面状のセンサの検知面65aで接触等を検知し、信号を発するセンサである。とめねじ67、67、67は、下手摺66を通じて上手摺63に取り付けられ、手摺部62の各部材を手摺部62として取りまとめている。
【0032】
このように面状のセンサ65とすることにより、検知面を大きく取ることができ、把手60下部のいずれの位置でも検知が可能となるので、確実に接触等の検知をすることができるようになる。
【0033】
センサは本実施形態のセンサ65のように1枚の面状センサであることに限定されない。例えばセンサが複数枚のセンサで構成されていても良い。また、面状のセンサでなく、点状のセンサが複数配置されてもよい。本実施形態では、設置のしやすさ、センサの強度、作動の確実性等の観点から好ましい形態である1枚の面状センサ65を適用している。
【0034】
図4は、図3で分解して示した手摺部62を組み立てた時の斜視図である。視点は図3と同じである。図4からわかるように、手摺部62は組み立てられた時、上手摺63と下手摺66との間に所定の間隔が設けられる。そして、通常の状態では、不図示のばねにより付勢され、当該所定の間隔が維持される。一方で、手摺部62に下からいずれかの力が加えられると下手摺66はばねの力に抗して上方に持ち上げられ、上手摺63と下手摺66との間隔が小さくなる。このとき、下手摺66の上面に設けられた不図示の突起が検知センサ65に接触する。そして当該力が除荷されると、ばねの付勢により再び所定の間隔が維持される。
【0035】
このような下手摺66の配置及び下から力が加えられた時の移動、及び除荷された時に元に戻るための機構は、通常の当業者が用いる機構が適用される。例えば押ボタン式のスイッチ等に採用されている機構を挙げることができる。
【0036】
また、検知センサ65を手摺部62の内側に配置することにより、検知センサ65は、外部から認識されず、意匠性に優れた把手60とすることができる。さらに上述したように、検知センサ65は面状とされているので、下手摺66のいずれの部位に上向きの力が加わっても的確に検知センサ65を作動させることができる。これにより、簡易的な構造であるとともに、効果的に患者の動作を補助することのでき、さらには意匠性にも優れた把手60を備えた歯科ユニット10とすることが可能となる。
【0037】
図5は、図4にAで示した方向から手摺部62を見た時の側面図である。図5(a)は、通常の状態で、上手摺63と下手摺66との間が所定距離に維持されている場面である。図5(b)は、手摺部62に下方からいずれかの力が作用し、下手摺66が上方へ移動した場面である。図4で説明した下手摺66の移動を図5を利用してさらに説明する。通常、外部からいずれの力も加えられていない時、手摺部62は手摺部の内側に設けられたばねの付勢により、図5(a)に示したような姿勢を維持している。次に手摺部62に下方からいずれかの力が加えられた時、下手摺66はばねの力に抗して上方に持ち上げられて、図5(b)に示したように上手摺63と下手摺66との間隔が小さくなる。このとき、下手摺66の上面に設けられた不図示の突起が検知センサ65に接触する。そして当該力が除荷されると、再びばねの付勢により図5(a)に示したような姿勢に戻される。このとき、下手摺66の上面に設けられた不図示の突起は検知センサ65から離脱する。
【0038】
次に、把手部60で上述のように検知センサ65が下手摺66と接触した時、又は接触していない時における歯科ユニット10の動作を説明する。図6は、歯科ユニット10に備えられた制御手段80及び当該制御手段により制御される部位を模式的に示した図である。図6に示したように、歯科ユニット10は、患者用椅子移動・回動スイッチ25aと、上述した把手60の内側に配置された検知センサ65と、制御手段80と、電源部25bと駆動部25cとが備えられている。患者用椅子移動・回動スイッチ25aは、患者用椅子20を移動及び/又は回動させるためのスイッチである。制御手段80は、所定の入力に対し所定の指令を被制御手段に発信する部位である。その内容は後で説明する。電源部25bと駆動部25cは、制御手段80の指令に基づいて、患者用椅子20を移動及び又は回動させるための駆動源及び駆動機構であり、図1に示した移動・回動ユニット25の内側に配置されている。
【0039】
制御手段80には、電源部25bを介して駆動部25cがつながれており、当該駆動部25cの動作制御を実行するCPU83と、このCPU83に対する記憶装置とが設けられている。CPU83は、マイクロプロセッサユニット、及びその動作に必要な各種周辺回路が組み合わされている。CPU83に対する記憶装置は、例えば電源部25b及び駆動部25cの動作を制御するために必要なプログラム等を記憶するROM84と、CPU83の作業領域として機能するRAM85等を組み合わせて構成される。さらに、CPU83が、ROM84に記憶されたソフトウェアを組み合わされることにより、本発明の歯科ユニット10における制御手段80が機能する。
【0040】
患者用椅子移動・回動スイッチ25a及び検知センサ65からの信号は、入力ポート81を介して、入力信号としてCPU83に達する。CPU83では、この入力信号、及びROM84に記憶されたプログラムに基づき、出力ポート82を介して、電源部25bに動作指令や動作禁止指令等の指令を発信する。これにより、入力信号に基づき駆動部25cの動作が決定され、その結果、患者用椅子20の移動及び/又は回動が開始、維持又は停止される。
【0041】
図7は、本発明にかかる歯科ユニット10の患者用椅子20の移動及び停止が検知センサ65によってどのように許容、禁止されるかを概略的に示すフローチャートである。まず術者(歯科医)等が患者用椅子20を移動又は回動させる必要が生じた時に患者用椅子移動・回動スイッチ25aを作動させる(過程S1)。次にこのとき、検知センサ65の信号が発信されているかが判断される(過程S2)。検知センサ信号が発信されている時とは、把手60が図5(b)で示したように、下側からいずれかの力を受けている時である。このとき上述のように検知センサ65には下手摺66の上部が接していることにより検知センサ65が接触の信号を発している。一方、検知センサ信号が発信されていない時とは、把手60が図5(a)の状態のときを意味する。
【0042】
過程S2で、検知信号がある(Yes)と判断された時は、電源部25bへその動作を禁止する指令が発せられる(過程S3)。これにより患者用椅子20の移動及び回動が禁止される(過程S4)。
【0043】
一方、過程S2で検知信号がない(No)と判断された時は、電源部25bへ動作指令が発せられる(過程S5)。これにより患者用椅子20の移動及び/又は回動が行われる(過程S6)。さらに、当該移動及び/又は回動が行われつつも、常に検知信号の有無の判断(過程S2)は行われており、検知信号があること(Yes)が確認され次第、結果として患者用椅子の移動及び/又は回動は禁止される。
【0044】
以上のような検知センサ65及び制御手段80を有する歯科ユニット10とすることにより、例えば体の大きな患者が患者用椅子20に横たわり、患者用椅子20を上方に移動させた場合に、患者の足等が患者用椅子20と把手60との間に挟まれそうになっても、把手60がそれを検知して、患者用椅子20の上下動を自動的に停止させる。または、通常の座った姿勢からリクライニングの姿勢に患者の姿勢を変えるときに、上述したような着座部23の回動動作により患者の足等が患者用椅子20と把手60との間に挟まれそうになっても、把手60がそれを検知して、患者用椅子20の回動を自動的に停止させる。このとき検知センサ65は面状なので、把手60のいずれの部位であっても的確に検知センサ65は作動する。従って、患者の安全が確保されるので、安全性高く効果的に患者の動作を補助することのできる歯科ユニット10とすることが可能となる。さらに、患者が把手60を掴んで患者用椅子20から昇降する際、又は患者が把手60を掴んで、ウォーターユニット30によりうがい等をしている時に、誤って患者用椅子移動・回動スイッチ25aが操作されても、患者が把手60を掴んでいることにより、検知センサ65が動作しているので、患者用椅子20が移動及び回動することはない。従って、これによっても患者の安全が確保され、効果的に患者の動作を補助することができる。
【0045】
さらには、把手60は、ウォーターユニット30に配置されるとともに、検知センサ65は把手60の内側に隠蔽されて配置されているので、非常にシンプルな印象を与え意匠的にも優れた歯科ユニット10とすることができる。これにより、患者に治療に対する安心感を与え、効率的で効果的な治療を行うことができる。
【0046】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う歯科ユニットもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の1つの実施形態である歯科ユニットを示した斜視図である。
【図2】ウォーターユニットの上面図(図2(a))、及びウォーターユニットの上部に着目して示した正面図(図2(b))である。
【図3】手摺部の分解斜視図である。
【図4】手摺部の斜視図である。
【図5】図4にAで示した視点からの手摺部を示した図である。
【図6】歯科ユニットに備えられた制御手段、及び当該制御手段により制御される部位を模式的に示した図である。
【図7】本発明にかかる歯科ユニットの患者用椅子の移動が検知センサによってどのように許容又は禁止されるかを概略的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
10 歯科用ユニット
20 患者用椅子
21 ヘッドレスト
22 背もたれ
23 着座部
24 フットレスト
25 移動・回動ユニット
26 台座部
30 ウォーターユニット
40 基体
50 水供給部
50a 筒状体
50b スピットン台
51 給水管
52 コップ受け
53 スピットン
60 把手
61 柱状部
62 手摺部
63 上手摺
64 中間部材
65 検知センサ
66 下手摺
67 とめねじ
70 テーブル板
71 柱状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれと着座部とを具備し、前記着座部及び前記背もたれがいずれかの方向に移動及び/又は回動可能とされた患者用椅子と、
前記患者用椅子の右側又は左側に、当該患者用椅子に並べて配置されたウォーターユニットと、を備えた歯科用ユニットであって、
前記ウォーターユニットの上面又は側面に一端を取り付けられ、前記ウォーターユニットの前記患者用椅子側側面よりも当該患者用椅子側へ突出して延設された棒状である把手を備える歯科用ユニット。
【請求項2】
前記把手が、
当該把手にかかる下面側からの力を検知するセンサと、
前記センサの検知信号に基づき前記患者用椅子の移動及び/又は回動を許容又は禁止する制御手段と、を備え、
前記センサが、前記把手にかかる下面側からの力を検知した時に、前記患者用椅子の移動及び/又は回動を禁止し、
前記センサが、前記把手にかかる下面側からの力を検知していない時には、前記患者用椅子の移動及び/又は回動を許容する、ことを特徴とする請求項1に記載の歯科ユニット。
【請求項3】
前記センサが、前記把手の全長の1/3以上に亘って配置される面状のセンサであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の歯科ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−54159(P2007−54159A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240845(P2005−240845)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】