歯科用模型、歯科用模型の製造方法及び歯科用模型の検査方法
【課題】スケーリング・ルートプレーニング等のトレーニング結果を正確に評価する。
【解決手段】透明な容器2内に透明樹脂を充填して歯槽骨部とし、歯槽骨部に歯牙部4を植立した後、歯牙部4の歯根部に、人工歯石や、人工壊死セメント様物質等の人工沈着物11を沈着させ、人工沈着物11には、X線不透過物質を混入させ、歯根部の表面に水溶性ワックスを築盛し、歯槽骨部の上部に軟質の樹脂を積層して歯肉部5とし、温水を供給して、水溶性ワックスを溶解させて、歯肉部5と歯牙部4の間にポケット空隙部7を形成する。
【解決手段】透明な容器2内に透明樹脂を充填して歯槽骨部とし、歯槽骨部に歯牙部4を植立した後、歯牙部4の歯根部に、人工歯石や、人工壊死セメント様物質等の人工沈着物11を沈着させ、人工沈着物11には、X線不透過物質を混入させ、歯根部の表面に水溶性ワックスを築盛し、歯槽骨部の上部に軟質の樹脂を積層して歯肉部5とし、温水を供給して、水溶性ワックスを溶解させて、歯肉部5と歯牙部4の間にポケット空隙部7を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科用模型、歯科用模型の製造方法及び歯科用模型の検査方法に係り、例えば、スケーリング・ルートプレーニング等のトレーニングのための歯科用模型、該歯科用模型の製造方法、及び例えば、歯科トレーニング結果の評価を行うために歯科用模型の人工歯石等の除去状態(残存状態)を検査する歯科用模型の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯科治療においては、義歯や歯冠補綴物の製作時に作業模型が用いられるほか(例えば、特許文献1等参照。)、歯科医師や歯科衛生士のトレーニングのためにも模型が活用される。
例えば、スケーリング・ルートプレーニングのトレーニング用として、専用の歯科用模型が用いられ、この歯科用模型は、透明な容器内に形成された透明な歯槽骨部と、歯槽骨部にその歯根部が埋まるように植立された歯牙部と、歯槽骨部上に歯牙部を囲むように形成された軟質な合成樹脂からなる歯肉部とを備えてなっている。
【0003】
また、歯牙部の歯根部と歯肉部との間にはポケット空隙部が形成されている。この歯牙部のポケット空隙部に面する所定の部位には、人工歯石や人工壊死セメント様物質等の人工沈着物が付着されている。ここで、ポケット空隙部は、歯槽骨部に歯牙部を植立し、歯槽骨部上に歯牙部を囲むように歯肉部を形成した後、歯肉部の歯牙部近傍の部位を表面側から切削して形成する。
【0004】
例えば、スケーリング・ルートプレーニングのトレーニング実施者は、透明な容器の側面部に不透明フィルムを被覆した状態の歯科用模型を片手で把持し、他方の手で歯石除去器具を操作して、ポケット空隙部に歯石除去器具を挿入し、人工歯石及び人工壊死セメント様物質等の人工沈着物を掻き出す。
トレーニング評価者は、不透明フィルムを取り外して透明な容器の側面部から透明部分を介して目視したり、上面側から内部を覗き込むようにして、人工歯石及び人工壊死セメント様物質の除去状況(残留状況)を確認する。
【特許文献1】特開平7−241304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする第1の問題点は、上記従来技術では、透明な容器の側面部から透明部分を介して目視したり、上面側から内部を覗き込むようにして、人工歯石及び人工壊死セメント様物質の除去状況(残留状況)を確認しなければならなかったので、正確にトレーニング結果の評価を行うことが困難であるという点である。
【0006】
また、第2の問題点は、ポケット空隙部の形成が困難で、例えば、樹脂を用いて成形した後に切削して形成していたので、ポケット空隙部を正確に形成することが困難であるという点である。
このため、歯石等の沈着状態を忠実に再現することができず、実際の診療のためにトレーニングが役に立たないことがある。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価することができる歯科用模型、歯科用模型の製造方法及び歯科用模型の検査方法を提供することを第1の目的としている。
また、ポケット空隙部を正確にかつ簡単に形成し、歯石等の沈着状態を忠実に再現することができる歯科用模型の製造方法を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型に係り、前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法に係り、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に、放射線不透過物質を含んでなる固着物を固着させる固着物固着工程を含むことを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法に係り、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に固着物を固着させる固着物固着工程と、前記固着物を覆うように、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、前記歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成する隆起部形成工程と、前記歯槽骨部に植立され、前記隆起部が形成された前記歯牙部の側面の周りに前記歯肉部を形成する歯肉部形成工程と、前記歯肉部と前記歯牙部との間に、前記所定の溶媒を供給して、前記可溶体を溶解させて、前記隆起部を除去し、前記歯肉部と前記歯牙部の間に前記歯周ポケットを形成するポケット形成工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型の検査方法に係り、前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着され、前記固着物の除去作業が行われた後に、前記歯科用模型に放射線を照射して透過画像を得て、前記透過画像に基づいて、前記固着物の除去状態を検査することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明の歯科用模型、歯科用模型の製造方法及び歯科用模型の検査方法の構成によれば、固着物は、放射線不透過物質を含んでいるので、歯科用模型に放射線を照射して得られた透過画像に基づいて、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価することができる。
また、この発明の歯科用模型の製造方法の構成によれば、隆起部形成工程で、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成し、歯肉部形成工程で、歯槽骨部に植立され、隆起部が形成された歯牙部の周りに歯肉部を形成した後、ポケット形成工程で、歯肉部と歯牙部との間に、所定の溶媒を供給して、可溶体を溶解させて、隆起部を除去し、歯肉部と歯牙部の間に歯周ポケットを形成するので、歯周ポケットを正確にかつ簡単に形成し、歯石等の固着物の固着状態を忠実に再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
固着物が、放射線不透過物質を含んでいることによって、歯科用模型に放射線を照射して得られた透過画像に基づいて、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価するという第1の目的を実現した。
また、隆起部形成工程で、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成し、歯肉部形成工程で、歯槽骨部に植立され、隆起部が形成された歯牙部の周りに歯肉部を形成した後、ポケット形成工程で、歯肉部と歯牙部との間に、所定の溶媒を供給して、可溶体を溶解させて、隆起部を除去し、歯肉部と歯牙部の間に歯周ポケットを形成することによって、歯周ポケットを正確にかつ簡単に形成し、歯石等の固着物の固着状態を忠実に再現するという第2の目的を実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、この発明の第1の実施例である歯科用模型の構成を示す斜視図、図2は、図1のA−A線に沿った断面図、図3は、同歯科用模型の歯牙部の構成を示す斜視図、図4は、同歯科用模型の容器の構成を示す斜視図、図5乃至図8は、同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図、図9及び図10は、同歯科用模型を用いたトレーニング方法を説明するための説明図、また、図11は、トレーニング後の同歯科用模型の検査方法を説明するための説明図である。
【0015】
この例の歯科用模型1は、例えば、スケーリング・ルートプレーニング(歯根面の歯石の除去及び歯石の再沈着防止のための根面の平滑化)等のトレーニング用の教材として用いられ、図1及び図2に示すように、透明な容器2内に形成された透明な合成樹脂からなる歯槽骨部3と、歯槽骨部3にその下部が埋まるように植立された硬質な合成樹脂からなる歯牙部4と、歯槽骨部3上に歯牙部4を囲むように形成された軟質な合成樹脂からなる歯肉部5とを備えてなっている。
【0016】
また、歯牙部4の下部の歯根部6と歯肉部5との間にはポケット空隙部7が形成されている。歯根部6には、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質(歯周組織としてのセメント質12が壊死したものに対応する模造体)9を含む人工沈着物11が、接着剤(例えば、樹脂用接着剤)を用いて、所定の接着力で、付着され、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9には、金属粉等のX線不透過物質が混入されている(図6参照)。
なお、この例で、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9の「人工」は、人体の歯根面に沈着する実際の歯石等に代わる模造品であることを意味し、材料として工業的に製造したもの以外に、例えば天然の砂等を用いた場合も含むものとする。
また、この例では、X線不透過物質として、歯科用銀アマルガム用合金(例えば、粒径略20μm)が用いられる。
【0017】
歯槽骨部3は、例えば、透明な不飽和ポリエステル樹脂からなり、人工歯石8の歯牙部4に対する沈着状況が外部から視認可能なようにされている。また、歯牙部4は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂からなり、所定の色(例えば象牙色)に着色されている。
また、歯肉部5は、例えば、軟質のアクリル樹脂(PMMA(ポリメチルメタアクリレート))からなっている。
ここで、容器2及び歯槽骨部3を透明な材料から構成することによって、歯根部6に沈着した人工歯石8や人工壊死セメント様物質9を容器2の側面から視認することができる。なお、トレーニング時には、容器2の側面は、ブラインドとしての不透明フィルムで被覆され、トレーニング実施者が内部を視認できないようにされる。
【0018】
次に、この例の歯科用模型1の製造方法について説明する。
まず、図3及び図4に示すように、無蓋の透明な容器2と、硬質な合成樹脂成形品からなる歯牙部4と、人工歯石8と、人工壊死セメント様物質9と、X線不透過物質とを用意する。
ここで、容器2は、透明樹脂からなっている。また、歯牙部4は、例えば、射出成型によって予め所定の形状に作成しておく。また、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9としては、共に微細な砂状粒子が用いられる。また、X線不透過物質としては、合金を含む金属粉が用いられる。この例では、微細な歯科用銀アマルガム用合金(例えば、粒径20μm)粉が用いられる。
【0019】
次に、図5及び図6(a)に示すように、人工壊死セメント様物質9とX線不透過物質とを混合させ、樹脂用接着剤を用いて、歯牙部4の歯根部6の所定の領域(歯頚部より所定の深さまでの領域)に、沈着(付着)させる。次に、人工歯石8とX線不透過物質とを混合させ、樹脂用接着剤を用いて、人工壊死セメント様物質9を沈着させた領域を覆うように、沈着させる。
次に、図6(b)に示すように、人工歯石8を沈着させた領域を覆うように、歯科用模型1製造中の人工歯石8等の脱落を防止するための保護用ワックス(蝋)を塗布して、歯石仮保護部14を形成する。保護用ワックスとしては、水溶性ワックスを用いる。
【0020】
次に、歯牙部4に、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を付着させ、保護用ワックスを塗布した後、図7(a)に示すように、歯石保護部14を覆うように、ポケット部形成用ワックスを築盛して(塗り重ねて)、ポケット空隙部7に対応する凸形状を有する隆起部15を形成する。ポケット形成用ワックスとしては、保護用ワックスと同様に、水溶性ワックスを用いる。
【0021】
次に、透明な容器2内に、所定の部位まで液状の透明な合成樹脂を流し込んだ後、硬化させる。この例では、中央部に、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を付着させ、保護用ワックス及びポケット部形成用ワックスによって、歯石仮保護部14及び隆起部15が形成された歯牙部4の下部が埋め込まれる凹部が予め形成される。この凹部に、歯牙部4を植立させ、凹部の隙間に合成樹脂を流し込んで補填し硬化させる(図2参照)。
【0022】
ここで、容器2及び歯槽骨部3は透明な材料から構成されていることによって、容器2の側面から目視して確認しながら、歯牙部4を、その下部が埋め込まれるように、歯槽骨部3に正確に植立させられる。こうして、硬化した上記合成樹脂からなる歯槽骨部3によって歯牙部4が支持される。
【0023】
次に、図7(b)に示すように、ポケット部形成用ワックスの周りの歯槽骨部3上に、主剤としての液状の合成樹脂と、硬化剤とを混練させて流し込んで、常温で透明な容器2に満たした後、硬化させて、歯肉部5を形成する。
次に、ポケット部形成用ワックスの形成部位に所定の温度(例えば、略40℃)の温水を供給する。これによって、ポケット部形成用ワックス及び保護用ワックスが温水に溶解する。
次に、ワックスが溶け出した温水を排出すると、歯石仮保護部14及び隆起部15が除去され、図8に示すように、歯牙部4の側周部の歯肉部5との間に空隙が形成され、ポケット空隙部7とされる。ここで、歯根部6には、人工歯石8や、人工壊死セメント様物質9が、所定の接着力で、付着されている。
【0024】
次に、この例の歯科用模型1を用いたトレーニング方法について説明する。
まず、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9が沈着した初期状態の歯科用模型1に、図11に示すように、歯科用模型1にX線照射装置21を用いてX線を照射し、フィルム22上に透過画像を形成させておく(X線写真を撮影しておく。)。
この後、透明な容器2の側壁部を不透明なフィルムによって被覆して視認不可(ブラインド)とする。
【0025】
トレーニング実施者は、図9に示すように、ポケット空隙部7に、キュレットスケーラ等の歯石除去器具16を挿入し、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を掻き出す。人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9が除去されると共に、混入されたX線不透過物質が除去される。
ここで、例えばポケット空隙部7が正確に形成され、かつ、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9の歯根部6への沈着状態が病理解剖学的に忠実に再現されているために、実際の診療を再現することができる。
【0026】
次に、トレーニング結果の評価方法について説明する。
トレーニング終了後に、図11に示すように、人工歯石除去状態の歯科用模型1にX線照射装置21を用いてX線を照射し、フィルム22上に透過画像を形成させる。
ここで、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9の除去が不完全であると、その状況に応じて、X線不透過物質も残留する。
【0027】
X線透過写真には、このX線不透過物質が映し出されるので、図10に示すように、ポケット空隙部7底部に人工沈着物11を残留させた場合に、歯根部6表面に残留した、又はポケット空隙部7底部に沈着した人工歯石8(人工壊死セメント様物質9)の残留状況が確認される。これによって、トレーニング実施者の熟練度が評価される。
【0028】
このように、この例の構成によれば、人工沈着物11には、X線不透過物質が混入されているので、歯科用模型1にX線を照射して得られたX線透過写真に基づいて、残存する人工歯石8の分布を知ることができ、たとえ評価者が熟練していなくても、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価することができる。
【0029】
また、隆起部形成工程で、水溶性のワックスを用いて、ポケット空隙部6に対応した凸形状を有する隆起部15を形成し、歯肉部形成工程で、歯槽骨部3に植立され、隆起部15が形成された歯牙部5の周りに歯肉部4を形成した後、ポケット形成工程で、歯肉部4と歯牙部5との間に、例えば温水を供給して、ワックスを溶解させて、隆起部15を除去し、歯肉部4と歯牙部5の間にポケット空隙部6を形成するので、ポケット空隙部6を正確にかつ簡単に形成し、歯石等の沈着状態を病理解剖学的に忠実に再現することができる。したがって、実際の診療に寄与する正確なトレーニングを行うことができる。
また、この歯科用模型1は、ポケット空隙部の探査のトレーニングのためにも利用することができる。
【実施例2】
【0030】
この例が上述した第1の実施例と大きく異なるところは、ポケット形成用ワックスによってポケット空隙部に対応する隆起部を、専用の型を用いて形成する点である。
これ以外の構成は、上述した第1の実施例の構成と略同一であるので、その説明を簡略にする。
【0031】
この例では、歯牙部4に人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を付着させた後、保護用ワックスを塗布した歯牙部4を、ポケット形成用型内に配置して、ポケット空隙部に対応した形状を有する凹部にポケット部形成用ワックスを流し込んで硬化させ、ポケット空隙部に対応する隆起部を形成する。ポケット形成用ワックスとしては、保護用ワックスと同様に、水溶性ワックスを用いる。
【0032】
この例の構成によれば、上述した第1の実施例と略同様の効果を得ることができる。
加えて、ポケット空隙部を簡単にかつ迅速に形成することができる。
【実施例3】
【0033】
図12は、この発明の第3の実施例である歯科用模型を検査してトレーニング結果の評価を行うための検査・評価装置の構成を説明するための説明図である。
この例が上述した第1の実施例と大きく異なるところは、検査・評価装置を用いて自動的にトレーニング結果の評価を行う点である。
これ以外の構成は、上述した第1の実施例の構成と略同一であるので、その説明を簡略にする。
【0034】
この例の検査・評価装置24は、図12に示すように、CPU(中央処理装置)等を有してなる主制御部25と、主制御部25が実行する処理プログラムや各種データ等を記憶するための記憶部26と、操作部27と、表示部28とを備えたコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。
主制御部25は、記憶部26に記憶された各種処理プログラムを実行し、記憶部26に確保された各種レジスタやフラグを用いて、構成各部を制御し、評価判定処理等を実行する。
【0035】
主制御部25は、評価判定処理で、例えば、CCDセンサ29から送られてきた透過画像を、記憶部26に記憶された多数の参照画像パターンと照合して、評価判定を行う。また、主制御部25は、トレーニング実施者(被評価者)毎に評価情報の履歴管理を行う。
記憶部26は、内部記憶装置と、外部記憶装置とからなり、主制御部25が実行する制御処理プログラム等の各種処理プログラム等が記憶されたプログラム記憶領域と、各種設定情報等の各種情報が記憶される情報記憶領域とを有している。
【0036】
内部記憶装置は、ROMやRAM等の半導体メモリからなる。外部記憶装置は、FD(フレキシブル・ディスク)が装着されるFDドライバ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライバ、MO(光磁気)ディスクが装着されるMOディスクドライバ、あるいはCD(コンパクト・ディスク)−ROM、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)やDVD(デジタル・ビデオ・ディスク)−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライバ等からなる。
また、操作部27は、キーボードやマウス等からなる。表示部28は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、あるいはプラズマディスプレイなどからなる。
【0037】
この例の構成によれば、上述した第1の実施例と略同様の効果を得ることができる。
加えて、客観的で一段と正確なトレーニング結果の評価を簡単に行うことができる。
【0038】
以上、この発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
例えば、上述した実施例では、単一に歯牙について、模型を作成する場合について述べたが、複数の歯牙を含む模型を作成しても良いし、義歯の模型を含んでいても良い。
【0039】
また、人工壊死セメント様物質として、砂状粒子を用いる場合について述べたが、層状に形成するようにしても良い。また、人工歯石や人工壊死セメント様物質は、砂状粒子として天然の砂を用いても良い。
また、歯牙部は、合成樹脂製に限らず、陶器製や磁器製、金属製、ガラス製でも良いし、自然石を用いても良い。また、石膏を用いても良い。また、歯牙部は、中空であっても中実であっても良い。
【0040】
また、歯肉部も、アクリル樹脂等の軟質の合成樹脂に限らず、天然ゴムやシリコーンゴム等を用いても良い。また、歯牙部と歯槽骨部とは、合成樹脂を用いて一体的に成形しても良い。また、歯槽骨部は、不飽和ポリエステル樹脂に限らず、ポリエチレン樹脂やエポキシ樹脂等他の合成樹脂を用いて形成しても良い。
また、歯科用模型を構成する歯槽骨部、歯牙部、及び沈着物は、それぞれ、その少なくとも一部が模造物であれば良い。例えば、歯牙部としては、動物や人体のものを用いても良い。
【0041】
また、容器は、必ずしも透明でなくても良い。また、不透明フィルムに代えて、液晶フィルムを用いて、光を透過/遮光するようにしても良い。また、容器を省略しても良い。
また、第2の実施例で、人工沈着物を、成形用の型を用いて形成するようにしても良い。
また、第3の実施例で、例えば、容器に、トレーニング実施者(被評価者)のID情報に対応したバーコードを付加するようにしても良い。
【0042】
また、上述した実施例では、人工壊死セメント様物質に、X線不透過物質を混入させる場合について述べたが、X線不透過物質を粒体に被覆させるようにしても良い。例えば、多数の粒体に銀ペーストを塗布して、加熱してバインダを除去して作成するようにしても良い。この場合、粒体の必ずしも全領域を被覆しなくても良い。
また、人工歯石や人工壊死セメント様物質そのものをX線不透過物質から構成しても良い。また、X線透過撮影については、単一方向からの撮影に限らず、複数方向から撮影し、例えば、立体像を得るようにしても良い。また、放射線としては、軟X線でも硬X線でも良い。
【0043】
上述した実施例では、水溶性物質として、ワックスを用いる場合について述べたが、これに限らない。また、水に限らず油やシンナー等の有機溶媒等他の溶媒に溶ける物質を用いてポケット形成部位を覆い、樹脂成形後にこの溶媒に溶解させるようにしても良い。
このように、溶媒と可溶体との組合せは、任意であり、但し、隆起部及び歯石仮保護部を構成する可溶体を溶解させても、少なくとも、可溶体を溶解させる温度で、歯牙部や歯槽骨部、歯肉部等を構成する合成樹脂を変形させない溶媒を用いる。
【0044】
また、ワックスを溶解させる温水の温度は、略40℃に限らず、例えば、室温程度としても良し、80℃程度の比較的高温としても良い。
また、水溶性ワックスに代えて、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性プラスティクスを用いても良い。
また、ポケット空隙部を形成する際に、ポケット形成用型を嵌め込んだ状態で、歯肉部用樹脂を流し込んで、硬化させた後に、ポケット形成用型を取り出すようにしても良い。
【0045】
また、ワックスとしては、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、及び蜜蝋等や、これらの混合物を用いることができる。
また、上述した実施例では、歯牙部に、人工歯石及び人工壊死セメント様物質を付着させ、保護用ワックス及びポケット部形成用ワックスによって、歯石仮保護部及び隆起部を形成した後、この歯牙部を歯槽骨部に植立する場合に述べたが、まず、歯牙部を歯槽骨部に植立した後に、歯牙部に、人工歯石及び人工壊死セメント様物質を付着させ、保護用ワックス及びポケット部形成用ワックスによって、歯石仮保護部及び隆起部を形成するようにしても良い。
また、歯牙部にワックス等を築盛して、歯肉部を形成した後、溶媒を用いずに、ワックス等を加熱によって溶かして除去し、ポケット空隙部を形成するようにしても良い。この場合、加熱温度は、歯肉部等を構成する材料が変形しない温度とする。
【産業上の利用可能性】
【0046】
歯科用模型のほか、一般の成型品の製造においてポケット状凹部を形成する際に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1の実施例である歯科用模型の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】同歯科用模型の歯牙部の構成を示す斜視図である。
【図4】同歯科用模型の容器の構成を示す斜視図である。
【図5】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図6】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図7】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図8】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図9】同歯科用模型を用いたトレーニング方法を説明するための説明図である。
【図10】同歯科用模型を用いたトレーニング方法を説明するための説明図である。
【図11】トレーニング後の同歯科用模型の検査方法を説明するための説明図である。
【図12】この発明の第3の実施例である歯科用模型を検査してトレーニング結果の評価を行うための検査・評価装置の構成を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 歯科用模型
2 容器
3 歯槽骨部
4 歯牙部
5 歯肉部
6 歯根部
7 ポケット空隙部(歯周ポケット)
8 人工歯石
9 人工壊死セメント様物質
11 人工沈着物(固着物)
14 歯石保護部
15 隆起部
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科用模型、歯科用模型の製造方法及び歯科用模型の検査方法に係り、例えば、スケーリング・ルートプレーニング等のトレーニングのための歯科用模型、該歯科用模型の製造方法、及び例えば、歯科トレーニング結果の評価を行うために歯科用模型の人工歯石等の除去状態(残存状態)を検査する歯科用模型の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯科治療においては、義歯や歯冠補綴物の製作時に作業模型が用いられるほか(例えば、特許文献1等参照。)、歯科医師や歯科衛生士のトレーニングのためにも模型が活用される。
例えば、スケーリング・ルートプレーニングのトレーニング用として、専用の歯科用模型が用いられ、この歯科用模型は、透明な容器内に形成された透明な歯槽骨部と、歯槽骨部にその歯根部が埋まるように植立された歯牙部と、歯槽骨部上に歯牙部を囲むように形成された軟質な合成樹脂からなる歯肉部とを備えてなっている。
【0003】
また、歯牙部の歯根部と歯肉部との間にはポケット空隙部が形成されている。この歯牙部のポケット空隙部に面する所定の部位には、人工歯石や人工壊死セメント様物質等の人工沈着物が付着されている。ここで、ポケット空隙部は、歯槽骨部に歯牙部を植立し、歯槽骨部上に歯牙部を囲むように歯肉部を形成した後、歯肉部の歯牙部近傍の部位を表面側から切削して形成する。
【0004】
例えば、スケーリング・ルートプレーニングのトレーニング実施者は、透明な容器の側面部に不透明フィルムを被覆した状態の歯科用模型を片手で把持し、他方の手で歯石除去器具を操作して、ポケット空隙部に歯石除去器具を挿入し、人工歯石及び人工壊死セメント様物質等の人工沈着物を掻き出す。
トレーニング評価者は、不透明フィルムを取り外して透明な容器の側面部から透明部分を介して目視したり、上面側から内部を覗き込むようにして、人工歯石及び人工壊死セメント様物質の除去状況(残留状況)を確認する。
【特許文献1】特開平7−241304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする第1の問題点は、上記従来技術では、透明な容器の側面部から透明部分を介して目視したり、上面側から内部を覗き込むようにして、人工歯石及び人工壊死セメント様物質の除去状況(残留状況)を確認しなければならなかったので、正確にトレーニング結果の評価を行うことが困難であるという点である。
【0006】
また、第2の問題点は、ポケット空隙部の形成が困難で、例えば、樹脂を用いて成形した後に切削して形成していたので、ポケット空隙部を正確に形成することが困難であるという点である。
このため、歯石等の沈着状態を忠実に再現することができず、実際の診療のためにトレーニングが役に立たないことがある。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価することができる歯科用模型、歯科用模型の製造方法及び歯科用模型の検査方法を提供することを第1の目的としている。
また、ポケット空隙部を正確にかつ簡単に形成し、歯石等の沈着状態を忠実に再現することができる歯科用模型の製造方法を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型に係り、前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法に係り、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に、放射線不透過物質を含んでなる固着物を固着させる固着物固着工程を含むことを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法に係り、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に固着物を固着させる固着物固着工程と、前記固着物を覆うように、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、前記歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成する隆起部形成工程と、前記歯槽骨部に植立され、前記隆起部が形成された前記歯牙部の側面の周りに前記歯肉部を形成する歯肉部形成工程と、前記歯肉部と前記歯牙部との間に、前記所定の溶媒を供給して、前記可溶体を溶解させて、前記隆起部を除去し、前記歯肉部と前記歯牙部の間に前記歯周ポケットを形成するポケット形成工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型の検査方法に係り、前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着され、前記固着物の除去作業が行われた後に、前記歯科用模型に放射線を照射して透過画像を得て、前記透過画像に基づいて、前記固着物の除去状態を検査することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明の歯科用模型、歯科用模型の製造方法及び歯科用模型の検査方法の構成によれば、固着物は、放射線不透過物質を含んでいるので、歯科用模型に放射線を照射して得られた透過画像に基づいて、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価することができる。
また、この発明の歯科用模型の製造方法の構成によれば、隆起部形成工程で、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成し、歯肉部形成工程で、歯槽骨部に植立され、隆起部が形成された歯牙部の周りに歯肉部を形成した後、ポケット形成工程で、歯肉部と歯牙部との間に、所定の溶媒を供給して、可溶体を溶解させて、隆起部を除去し、歯肉部と歯牙部の間に歯周ポケットを形成するので、歯周ポケットを正確にかつ簡単に形成し、歯石等の固着物の固着状態を忠実に再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
固着物が、放射線不透過物質を含んでいることによって、歯科用模型に放射線を照射して得られた透過画像に基づいて、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価するという第1の目的を実現した。
また、隆起部形成工程で、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成し、歯肉部形成工程で、歯槽骨部に植立され、隆起部が形成された歯牙部の周りに歯肉部を形成した後、ポケット形成工程で、歯肉部と歯牙部との間に、所定の溶媒を供給して、可溶体を溶解させて、隆起部を除去し、歯肉部と歯牙部の間に歯周ポケットを形成することによって、歯周ポケットを正確にかつ簡単に形成し、歯石等の固着物の固着状態を忠実に再現するという第2の目的を実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、この発明の第1の実施例である歯科用模型の構成を示す斜視図、図2は、図1のA−A線に沿った断面図、図3は、同歯科用模型の歯牙部の構成を示す斜視図、図4は、同歯科用模型の容器の構成を示す斜視図、図5乃至図8は、同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図、図9及び図10は、同歯科用模型を用いたトレーニング方法を説明するための説明図、また、図11は、トレーニング後の同歯科用模型の検査方法を説明するための説明図である。
【0015】
この例の歯科用模型1は、例えば、スケーリング・ルートプレーニング(歯根面の歯石の除去及び歯石の再沈着防止のための根面の平滑化)等のトレーニング用の教材として用いられ、図1及び図2に示すように、透明な容器2内に形成された透明な合成樹脂からなる歯槽骨部3と、歯槽骨部3にその下部が埋まるように植立された硬質な合成樹脂からなる歯牙部4と、歯槽骨部3上に歯牙部4を囲むように形成された軟質な合成樹脂からなる歯肉部5とを備えてなっている。
【0016】
また、歯牙部4の下部の歯根部6と歯肉部5との間にはポケット空隙部7が形成されている。歯根部6には、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質(歯周組織としてのセメント質12が壊死したものに対応する模造体)9を含む人工沈着物11が、接着剤(例えば、樹脂用接着剤)を用いて、所定の接着力で、付着され、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9には、金属粉等のX線不透過物質が混入されている(図6参照)。
なお、この例で、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9の「人工」は、人体の歯根面に沈着する実際の歯石等に代わる模造品であることを意味し、材料として工業的に製造したもの以外に、例えば天然の砂等を用いた場合も含むものとする。
また、この例では、X線不透過物質として、歯科用銀アマルガム用合金(例えば、粒径略20μm)が用いられる。
【0017】
歯槽骨部3は、例えば、透明な不飽和ポリエステル樹脂からなり、人工歯石8の歯牙部4に対する沈着状況が外部から視認可能なようにされている。また、歯牙部4は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂からなり、所定の色(例えば象牙色)に着色されている。
また、歯肉部5は、例えば、軟質のアクリル樹脂(PMMA(ポリメチルメタアクリレート))からなっている。
ここで、容器2及び歯槽骨部3を透明な材料から構成することによって、歯根部6に沈着した人工歯石8や人工壊死セメント様物質9を容器2の側面から視認することができる。なお、トレーニング時には、容器2の側面は、ブラインドとしての不透明フィルムで被覆され、トレーニング実施者が内部を視認できないようにされる。
【0018】
次に、この例の歯科用模型1の製造方法について説明する。
まず、図3及び図4に示すように、無蓋の透明な容器2と、硬質な合成樹脂成形品からなる歯牙部4と、人工歯石8と、人工壊死セメント様物質9と、X線不透過物質とを用意する。
ここで、容器2は、透明樹脂からなっている。また、歯牙部4は、例えば、射出成型によって予め所定の形状に作成しておく。また、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9としては、共に微細な砂状粒子が用いられる。また、X線不透過物質としては、合金を含む金属粉が用いられる。この例では、微細な歯科用銀アマルガム用合金(例えば、粒径20μm)粉が用いられる。
【0019】
次に、図5及び図6(a)に示すように、人工壊死セメント様物質9とX線不透過物質とを混合させ、樹脂用接着剤を用いて、歯牙部4の歯根部6の所定の領域(歯頚部より所定の深さまでの領域)に、沈着(付着)させる。次に、人工歯石8とX線不透過物質とを混合させ、樹脂用接着剤を用いて、人工壊死セメント様物質9を沈着させた領域を覆うように、沈着させる。
次に、図6(b)に示すように、人工歯石8を沈着させた領域を覆うように、歯科用模型1製造中の人工歯石8等の脱落を防止するための保護用ワックス(蝋)を塗布して、歯石仮保護部14を形成する。保護用ワックスとしては、水溶性ワックスを用いる。
【0020】
次に、歯牙部4に、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を付着させ、保護用ワックスを塗布した後、図7(a)に示すように、歯石保護部14を覆うように、ポケット部形成用ワックスを築盛して(塗り重ねて)、ポケット空隙部7に対応する凸形状を有する隆起部15を形成する。ポケット形成用ワックスとしては、保護用ワックスと同様に、水溶性ワックスを用いる。
【0021】
次に、透明な容器2内に、所定の部位まで液状の透明な合成樹脂を流し込んだ後、硬化させる。この例では、中央部に、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を付着させ、保護用ワックス及びポケット部形成用ワックスによって、歯石仮保護部14及び隆起部15が形成された歯牙部4の下部が埋め込まれる凹部が予め形成される。この凹部に、歯牙部4を植立させ、凹部の隙間に合成樹脂を流し込んで補填し硬化させる(図2参照)。
【0022】
ここで、容器2及び歯槽骨部3は透明な材料から構成されていることによって、容器2の側面から目視して確認しながら、歯牙部4を、その下部が埋め込まれるように、歯槽骨部3に正確に植立させられる。こうして、硬化した上記合成樹脂からなる歯槽骨部3によって歯牙部4が支持される。
【0023】
次に、図7(b)に示すように、ポケット部形成用ワックスの周りの歯槽骨部3上に、主剤としての液状の合成樹脂と、硬化剤とを混練させて流し込んで、常温で透明な容器2に満たした後、硬化させて、歯肉部5を形成する。
次に、ポケット部形成用ワックスの形成部位に所定の温度(例えば、略40℃)の温水を供給する。これによって、ポケット部形成用ワックス及び保護用ワックスが温水に溶解する。
次に、ワックスが溶け出した温水を排出すると、歯石仮保護部14及び隆起部15が除去され、図8に示すように、歯牙部4の側周部の歯肉部5との間に空隙が形成され、ポケット空隙部7とされる。ここで、歯根部6には、人工歯石8や、人工壊死セメント様物質9が、所定の接着力で、付着されている。
【0024】
次に、この例の歯科用模型1を用いたトレーニング方法について説明する。
まず、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9が沈着した初期状態の歯科用模型1に、図11に示すように、歯科用模型1にX線照射装置21を用いてX線を照射し、フィルム22上に透過画像を形成させておく(X線写真を撮影しておく。)。
この後、透明な容器2の側壁部を不透明なフィルムによって被覆して視認不可(ブラインド)とする。
【0025】
トレーニング実施者は、図9に示すように、ポケット空隙部7に、キュレットスケーラ等の歯石除去器具16を挿入し、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を掻き出す。人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9が除去されると共に、混入されたX線不透過物質が除去される。
ここで、例えばポケット空隙部7が正確に形成され、かつ、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9の歯根部6への沈着状態が病理解剖学的に忠実に再現されているために、実際の診療を再現することができる。
【0026】
次に、トレーニング結果の評価方法について説明する。
トレーニング終了後に、図11に示すように、人工歯石除去状態の歯科用模型1にX線照射装置21を用いてX線を照射し、フィルム22上に透過画像を形成させる。
ここで、人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9の除去が不完全であると、その状況に応じて、X線不透過物質も残留する。
【0027】
X線透過写真には、このX線不透過物質が映し出されるので、図10に示すように、ポケット空隙部7底部に人工沈着物11を残留させた場合に、歯根部6表面に残留した、又はポケット空隙部7底部に沈着した人工歯石8(人工壊死セメント様物質9)の残留状況が確認される。これによって、トレーニング実施者の熟練度が評価される。
【0028】
このように、この例の構成によれば、人工沈着物11には、X線不透過物質が混入されているので、歯科用模型1にX線を照射して得られたX線透過写真に基づいて、残存する人工歯石8の分布を知ることができ、たとえ評価者が熟練していなくても、正確にかつ簡単にトレーニング結果を評価することができる。
【0029】
また、隆起部形成工程で、水溶性のワックスを用いて、ポケット空隙部6に対応した凸形状を有する隆起部15を形成し、歯肉部形成工程で、歯槽骨部3に植立され、隆起部15が形成された歯牙部5の周りに歯肉部4を形成した後、ポケット形成工程で、歯肉部4と歯牙部5との間に、例えば温水を供給して、ワックスを溶解させて、隆起部15を除去し、歯肉部4と歯牙部5の間にポケット空隙部6を形成するので、ポケット空隙部6を正確にかつ簡単に形成し、歯石等の沈着状態を病理解剖学的に忠実に再現することができる。したがって、実際の診療に寄与する正確なトレーニングを行うことができる。
また、この歯科用模型1は、ポケット空隙部の探査のトレーニングのためにも利用することができる。
【実施例2】
【0030】
この例が上述した第1の実施例と大きく異なるところは、ポケット形成用ワックスによってポケット空隙部に対応する隆起部を、専用の型を用いて形成する点である。
これ以外の構成は、上述した第1の実施例の構成と略同一であるので、その説明を簡略にする。
【0031】
この例では、歯牙部4に人工歯石8及び人工壊死セメント様物質9を付着させた後、保護用ワックスを塗布した歯牙部4を、ポケット形成用型内に配置して、ポケット空隙部に対応した形状を有する凹部にポケット部形成用ワックスを流し込んで硬化させ、ポケット空隙部に対応する隆起部を形成する。ポケット形成用ワックスとしては、保護用ワックスと同様に、水溶性ワックスを用いる。
【0032】
この例の構成によれば、上述した第1の実施例と略同様の効果を得ることができる。
加えて、ポケット空隙部を簡単にかつ迅速に形成することができる。
【実施例3】
【0033】
図12は、この発明の第3の実施例である歯科用模型を検査してトレーニング結果の評価を行うための検査・評価装置の構成を説明するための説明図である。
この例が上述した第1の実施例と大きく異なるところは、検査・評価装置を用いて自動的にトレーニング結果の評価を行う点である。
これ以外の構成は、上述した第1の実施例の構成と略同一であるので、その説明を簡略にする。
【0034】
この例の検査・評価装置24は、図12に示すように、CPU(中央処理装置)等を有してなる主制御部25と、主制御部25が実行する処理プログラムや各種データ等を記憶するための記憶部26と、操作部27と、表示部28とを備えたコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。
主制御部25は、記憶部26に記憶された各種処理プログラムを実行し、記憶部26に確保された各種レジスタやフラグを用いて、構成各部を制御し、評価判定処理等を実行する。
【0035】
主制御部25は、評価判定処理で、例えば、CCDセンサ29から送られてきた透過画像を、記憶部26に記憶された多数の参照画像パターンと照合して、評価判定を行う。また、主制御部25は、トレーニング実施者(被評価者)毎に評価情報の履歴管理を行う。
記憶部26は、内部記憶装置と、外部記憶装置とからなり、主制御部25が実行する制御処理プログラム等の各種処理プログラム等が記憶されたプログラム記憶領域と、各種設定情報等の各種情報が記憶される情報記憶領域とを有している。
【0036】
内部記憶装置は、ROMやRAM等の半導体メモリからなる。外部記憶装置は、FD(フレキシブル・ディスク)が装着されるFDドライバ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライバ、MO(光磁気)ディスクが装着されるMOディスクドライバ、あるいはCD(コンパクト・ディスク)−ROM、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)やDVD(デジタル・ビデオ・ディスク)−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライバ等からなる。
また、操作部27は、キーボードやマウス等からなる。表示部28は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、あるいはプラズマディスプレイなどからなる。
【0037】
この例の構成によれば、上述した第1の実施例と略同様の効果を得ることができる。
加えて、客観的で一段と正確なトレーニング結果の評価を簡単に行うことができる。
【0038】
以上、この発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
例えば、上述した実施例では、単一に歯牙について、模型を作成する場合について述べたが、複数の歯牙を含む模型を作成しても良いし、義歯の模型を含んでいても良い。
【0039】
また、人工壊死セメント様物質として、砂状粒子を用いる場合について述べたが、層状に形成するようにしても良い。また、人工歯石や人工壊死セメント様物質は、砂状粒子として天然の砂を用いても良い。
また、歯牙部は、合成樹脂製に限らず、陶器製や磁器製、金属製、ガラス製でも良いし、自然石を用いても良い。また、石膏を用いても良い。また、歯牙部は、中空であっても中実であっても良い。
【0040】
また、歯肉部も、アクリル樹脂等の軟質の合成樹脂に限らず、天然ゴムやシリコーンゴム等を用いても良い。また、歯牙部と歯槽骨部とは、合成樹脂を用いて一体的に成形しても良い。また、歯槽骨部は、不飽和ポリエステル樹脂に限らず、ポリエチレン樹脂やエポキシ樹脂等他の合成樹脂を用いて形成しても良い。
また、歯科用模型を構成する歯槽骨部、歯牙部、及び沈着物は、それぞれ、その少なくとも一部が模造物であれば良い。例えば、歯牙部としては、動物や人体のものを用いても良い。
【0041】
また、容器は、必ずしも透明でなくても良い。また、不透明フィルムに代えて、液晶フィルムを用いて、光を透過/遮光するようにしても良い。また、容器を省略しても良い。
また、第2の実施例で、人工沈着物を、成形用の型を用いて形成するようにしても良い。
また、第3の実施例で、例えば、容器に、トレーニング実施者(被評価者)のID情報に対応したバーコードを付加するようにしても良い。
【0042】
また、上述した実施例では、人工壊死セメント様物質に、X線不透過物質を混入させる場合について述べたが、X線不透過物質を粒体に被覆させるようにしても良い。例えば、多数の粒体に銀ペーストを塗布して、加熱してバインダを除去して作成するようにしても良い。この場合、粒体の必ずしも全領域を被覆しなくても良い。
また、人工歯石や人工壊死セメント様物質そのものをX線不透過物質から構成しても良い。また、X線透過撮影については、単一方向からの撮影に限らず、複数方向から撮影し、例えば、立体像を得るようにしても良い。また、放射線としては、軟X線でも硬X線でも良い。
【0043】
上述した実施例では、水溶性物質として、ワックスを用いる場合について述べたが、これに限らない。また、水に限らず油やシンナー等の有機溶媒等他の溶媒に溶ける物質を用いてポケット形成部位を覆い、樹脂成形後にこの溶媒に溶解させるようにしても良い。
このように、溶媒と可溶体との組合せは、任意であり、但し、隆起部及び歯石仮保護部を構成する可溶体を溶解させても、少なくとも、可溶体を溶解させる温度で、歯牙部や歯槽骨部、歯肉部等を構成する合成樹脂を変形させない溶媒を用いる。
【0044】
また、ワックスを溶解させる温水の温度は、略40℃に限らず、例えば、室温程度としても良し、80℃程度の比較的高温としても良い。
また、水溶性ワックスに代えて、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性プラスティクスを用いても良い。
また、ポケット空隙部を形成する際に、ポケット形成用型を嵌め込んだ状態で、歯肉部用樹脂を流し込んで、硬化させた後に、ポケット形成用型を取り出すようにしても良い。
【0045】
また、ワックスとしては、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、及び蜜蝋等や、これらの混合物を用いることができる。
また、上述した実施例では、歯牙部に、人工歯石及び人工壊死セメント様物質を付着させ、保護用ワックス及びポケット部形成用ワックスによって、歯石仮保護部及び隆起部を形成した後、この歯牙部を歯槽骨部に植立する場合に述べたが、まず、歯牙部を歯槽骨部に植立した後に、歯牙部に、人工歯石及び人工壊死セメント様物質を付着させ、保護用ワックス及びポケット部形成用ワックスによって、歯石仮保護部及び隆起部を形成するようにしても良い。
また、歯牙部にワックス等を築盛して、歯肉部を形成した後、溶媒を用いずに、ワックス等を加熱によって溶かして除去し、ポケット空隙部を形成するようにしても良い。この場合、加熱温度は、歯肉部等を構成する材料が変形しない温度とする。
【産業上の利用可能性】
【0046】
歯科用模型のほか、一般の成型品の製造においてポケット状凹部を形成する際に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1の実施例である歯科用模型の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】同歯科用模型の歯牙部の構成を示す斜視図である。
【図4】同歯科用模型の容器の構成を示す斜視図である。
【図5】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図6】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図7】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図8】同歯科用模型の製造方法を説明するための説明図である。
【図9】同歯科用模型を用いたトレーニング方法を説明するための説明図である。
【図10】同歯科用模型を用いたトレーニング方法を説明するための説明図である。
【図11】トレーニング後の同歯科用模型の検査方法を説明するための説明図である。
【図12】この発明の第3の実施例である歯科用模型を検査してトレーニング結果の評価を行うための検査・評価装置の構成を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 歯科用模型
2 容器
3 歯槽骨部
4 歯牙部
5 歯肉部
6 歯根部
7 ポケット空隙部(歯周ポケット)
8 人工歯石
9 人工壊死セメント様物質
11 人工沈着物(固着物)
14 歯石保護部
15 隆起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型であって、
前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着されている
ことを特徴とする歯科用模型。
【請求項2】
歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法であって、
前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に、放射線不透過物質を含んでなる固着物を固着させる固着物固着工程を含む
ことを特徴とする歯科用模型の製造方法。
【請求項3】
歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法であって、
前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に固着物を固着させる固着物固着工程と、前記固着物を覆うように、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、前記歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成する隆起部形成工程と、前記歯槽骨部に植立され、前記隆起部が形成された前記歯牙部の側面の周りに前記歯肉部を形成する歯肉部形成工程と、前記歯肉部と前記歯牙部との間に、前記所定の溶媒を供給して、前記可溶体を溶解させて、前記隆起部を除去し、前記歯肉部と前記歯牙部の間に前記歯周ポケットを形成するポケット形成工程とを含む
ことを特徴とする歯科用模型の製造方法。
【請求項4】
歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型の検査方法であって、
前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着され、
前記固着物の除去作業が行われた後に、前記歯科用模型に放射線を照射して透過画像を得て、前記透過画像に基づいて、前記固着物の除去状態を検査する
ことを特徴とする歯科用模型の検査方法。
【請求項1】
歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型であって、
前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着されている
ことを特徴とする歯科用模型。
【請求項2】
歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法であって、
前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に、放射線不透過物質を含んでなる固着物を固着させる固着物固着工程を含む
ことを特徴とする歯科用模型の製造方法。
【請求項3】
歯槽骨部に歯牙部を植立し、前記歯牙部の側面を囲むように前記歯槽骨部上に歯肉部を形成し、かつ、前記歯肉部と前記歯牙部との間に歯周ポケットを形成する歯科用模型の製造方法であって、
前記歯牙部の前記歯周ポケットに面することとなる所定の部位に固着物を固着させる固着物固着工程と、前記固着物を覆うように、所定の溶媒に溶解する可溶体を用いて、前記歯周ポケットに対応した凸形状を有する隆起部を形成する隆起部形成工程と、前記歯槽骨部に植立され、前記隆起部が形成された前記歯牙部の側面の周りに前記歯肉部を形成する歯肉部形成工程と、前記歯肉部と前記歯牙部との間に、前記所定の溶媒を供給して、前記可溶体を溶解させて、前記隆起部を除去し、前記歯肉部と前記歯牙部の間に前記歯周ポケットを形成するポケット形成工程とを含む
ことを特徴とする歯科用模型の製造方法。
【請求項4】
歯槽骨部と、前記歯槽骨部上に形成された歯肉部と、前記歯肉部を貫通し前記歯槽骨部に植立された歯牙部とを備えた歯科用模型の検査方法であって、
前記歯肉部と前記歯牙部との間には歯周ポケットが形成され、前記歯牙部の前記歯周ポケットに面する所定の部位には、放射線不透過物質を含んでなる固着物が固着され、
前記固着物の除去作業が行われた後に、前記歯科用模型に放射線を照射して透過画像を得て、前記透過画像に基づいて、前記固着物の除去状態を検査する
ことを特徴とする歯科用模型の検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−41083(P2007−41083A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222272(P2005−222272)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(505289063)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(505289063)
【Fターム(参考)】
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