説明

歯車の歯当り評価方法及び装置

【課題】正確な噛み合い領域及び面圧を測定できるようにすることにより、高精度に歯当りを評価できるようにする。
【解決手段】互いに噛み合う一対の歯車の少なくとも一方の歯車の歯面に潤滑油を塗布する潤滑油塗布工程と、潤滑油塗布工程後に上記一対の歯車が回転したことにより生じる上記一方の歯車の歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程と、上記歯面温度上昇が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、上記歯面温度上昇が相対的に高いほど面圧が高いと評価する歯当り評価工程とをそなえるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の歯当りを評価するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯車を製造する際に、ギアノイズが発生しないようにすることは不変的な課題である。特に、近年、自動車等の車室内の静粛性に対するユーザニーズの向上に伴い、自動車等の動力伝達系に用いられる歯車においては、比較的純音で耳につきやすいギアノイズの低減要求が厳しくなってきている。一般的にギアノイズを低減させるためには、熱処理後の歯面仕上追加等の工法見直し、あるいは、歯面精度管理を強化することが多い。歯面精度管理は、ヘリカルギアの場合、歯車測定機で行なわれることが大半であるが、特にベベルギア,ハイポイドギアにおいては、歯車測定機が高価で、且つ測定に時間を要するため、光明丹を用いた歯当たり評価方法を代用する場合が多い。この従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法は、光明丹を歯面に塗布し、噛み合わせにより光明丹が剥がれた箇所を熟練者が目視で確認したり、あるいは、カメラで撮影したりして、噛み合わせにより光明丹が剥がれた箇所とギアノイズ特性が良好なギア対の歯当たりとを比較評価することにより行なわれていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開昭60−82905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法では、本来は歯が当たらない部分においても、光明丹の厚さによって歯が当たってしまうことにより、その部分の光明丹が剥がれてしまい、正確な歯当り評価を行なうことができないといった課題や、面圧の強弱を判定することができないといった課題があり、十分な精度で歯当りを評価することが困難であった。
【0004】
さらに、ギアノイズを低減させるためには、歯車の噛み合い起振力を把握し、噛み合い起振力を低減することが有効であると考えられるが、上述したような従来からの光明丹を用いた歯当たり評価方法では、上述の課題があるため、歯車の噛み合い起振力を評価することは困難であった。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたものであり、正確な噛み合い領域及び面圧を測定できるようにすることにより、高精度に歯当りを評価できるようにした歯車の歯当り評価方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1記載の本発明の歯車の歯当り評価方法は、互いに噛み合う一対の歯車の少なくとも一方の歯車の歯面に潤滑油を塗布する潤滑油塗布工程と、上記潤滑油塗布工程後に上記一対の歯車が回転したことにより生じる上記一方の歯車の歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程と、上記歯面温度上昇検出工程で検出された上記歯面温度上昇の分布に基づいて、かかる歯面温度上昇が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度上昇が相対的に高いほど面圧が高いと評価する歯当り評価工程とをそなえたことを特徴としている。
【0006】
また、上記歯面温度上昇検出工程は、上記潤滑油塗布工程後に上記一対の歯車を回転させる歯車回転工程と、上記歯車回転工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を上記歯面温度上昇の分布として測定する回転後歯面温度測定工程とをそなえ、上記歯当り評価工程では、上記回転後歯面温度測定工程で測定された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布に基づいて、かかる歯面温度が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度が相対的に高いほど面圧が高いと評価することが好ましい(請求項2)。なお、この場合、前提として、上記歯車回転工程前には、少なくとも上記一方の歯車の歯面の各部分における温度は同一である。
【0007】
また、上記歯面温度上昇検出工程は、上記潤滑油塗布工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を測定する回転前歯面温度測定工程と、上記回転前歯面温度測定工程後に上記一対の歯車を回転させる歯車回転工程と、上記歯車回転工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を測定する回転後歯面温度測定工程と、上記回転前歯面温度測定工程で測定された回転前の上記歯面温度の分布と、上記回転後歯面温度測定工程で測定された回転後の上記歯面温度の分布との差である歯面温度差の分布を上記歯面温度上昇の分布として算出する歯面温度差算出工程とをそなえ、上記歯当り評価工程では、上記歯面温度差算出工程で算出された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布に基づいて、かかる歯面温度差が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度差が相対的に高いほど面圧が高いと評価することが好ましい(請求項3)。
【0008】
また、本発明の関連技術としての歯車の噛み合い起振力推定方法は、互いに噛み合う一対の歯車の少なくとも一方の歯車の歯面に潤滑油を塗布する潤滑油塗布工程と、上記潤滑油塗布工程後に上記一対の歯車が回転したことにより生じる上記一方の歯車の歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程と、上記歯面温度上昇検出工程で検出された上記歯面温度上昇の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割する噛み合い枚数領域分割工程と、上記噛み合い枚数領域分割工程で分割された上記歯面温度上昇の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差を算出する領域間温度差算出工程と、上記領域間温度差算出工程で算出された隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差に基づいて、噛み合い起振力を推定する噛み合い起振力推定工程とをそなえたことを特徴としている。
【0009】
なお、上記歯面温度上昇検出工程は、上記潤滑油塗布工程後に上記一対の歯車を回転させる歯車回転工程と、上記歯車回転工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を上記歯面温度上昇の分布として測定する回転後歯面温度測定工程とをそなえ、上記噛み合い枚数領域分割工程では、上記回転後歯面温度測定工程で測定された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割するとともに、上記領域間温度差算出工程では、上記噛み合い枚数領域分割工程で分割された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差を算出することが好ましい。なお、この場合、前提として、上記歯車回転工程前には、少なくとも上記一方の歯車の歯面の各部分における温度は同一である。
【0010】
また、上記歯面温度上昇検出工程は、上記潤滑油塗布工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を測定する回転前歯面温度測定工程と、上記回転前歯面温度測定工程後に上記一対の歯車を回転させる歯車回転工程と、上記歯車回転工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を測定する回転後歯面温度測定工程と、上記回転前歯面温度測定工程で測定された回転前の上記歯面温度の分布と、上記回転後歯面温度測定工程で測定された回転後の上記歯面温度の分布との差である歯面温度差の分布を上記歯面温度上昇の分布として算出する歯面温度差算出工程とをそなえ、上記噛み合い枚数領域分割工程では、上記歯面温度差算出工程で算出された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割するとともに、上記領域間温度差算出工程では、上記噛み合い枚数領域分割工程で分割された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差を算出することが好ましい。
【0011】
また、請求項8記載の本発明の歯車の歯当り評価装置は、少なくとも一方の歯車の歯面に潤滑油が塗布された、互いに噛み合う一対の歯車を回転させる歯車回転手段と、上記歯車回転手段により上記一対の歯車が回転したことにより生じる上記一方の歯車の歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出手段と、上記歯面温度上昇検出手段で検出された上記歯面温度上昇の分布に基づいて、かかる歯面温度上昇が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度上昇が相対的に高いほど面圧が高いと評価する歯当り評価手段とをそなえたことを特徴としている。
【0012】
なお、上記歯面温度上昇検出手段が、上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を上記歯面温度上昇の分布として測定する歯面温度測定手段をそなえ、上記歯当り評価手段が、上記歯面温度測定手段により測定された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布に基づいて、かかる歯面温度が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度が相対的に高いほど面圧が高いと評価することが好ましい(請求項9)。なお、この場合、前提として、上記一対の歯車回転前には、少なくとも上記一方の歯車の歯面の各部分における温度は同一である。
【0013】
また、上記歯面温度上昇検出手段が、上記一方の歯車の歯面の温度を測定する歯面温度測定手段と、上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転前に上記歯面温度測定手段により測定された上記一方の歯車の歯面温度の分布と、上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転後に上記歯面温度測定手段により測定された上記一方の歯車の歯面温度の分布との差である歯面温度差の分布を上記歯面温度上昇の分布として算出する歯面温度差算出手段とをそなえ、上記歯当り評価手段が、上記歯面温度差算出手段で算出された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布に基づいて、かかる歯面温度差が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度差が相対的に高いほど面圧が高いと評価することが好ましい(請求項10)。
【0014】
また、本発明の関連技術としての歯車の噛み合い起振力推定装置は、少なくとも一方の歯車の歯面に潤滑油が塗布された、互いに噛み合う一対の歯車を回転させる歯車回転手段と、上記歯車回転手段により上記一対の歯車が回転したことにより生じる上記一方の歯車の歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出手段と、上記歯面温度上昇検出手段で検出された上記歯面温度上昇の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割する噛み合い枚数領域分割手段と、上記噛み合い枚数領域分割手段で分割された上記歯面温度上昇の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差を算出する領域間温度差算出手段と、上記領域間温度差算出手段で算出された隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差に基づいて、噛み合い起振力を推定する噛み合い起振力推定手段とをそなえたことを特徴としている。
【0015】
なお、上記歯面温度上昇検出手段が、上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を上記歯面温度上昇の分布として測定する歯面温度測定手段をそなえ、上記噛み合い枚数領域分割手段が、上記歯面温度測定手段により測定された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割するとともに、上記領域間温度差算出手段が、上記噛み合い枚数領域分割手段で分割された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差を算出することが好ましい。なお、この場合、前提として、上記一対の歯車回転前には、少なくとも上記一方の歯車の歯面の各部分における温度は同一である。
【0016】
また、上記歯面温度上昇検出手段が、上記一方の歯車の歯面の温度を測定する歯面温度測定手段と、上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転前に上記歯面温度測定手段により測定された上記一方の歯車の歯面温度の分布と、上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転後に上記歯面温度測定手段により測定された上記一方の歯車の歯面温度の分布との差である歯面温度差の分布を上記歯面温度上昇の分布として算出する歯面温度差算出手段とをそなえ、上記噛み合い枚数領域分割手段が、上記歯面温度差算出手段で算出された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割するとともに、上記領域間温度差算出手段が、上記噛み合い枚数領域分割手段で分割された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差を算出することが好ましい。
【0017】
なお、上記の歯面温度の分布の測定を、上記歯面に対して非接触で行なうことが好ましい(請求項4,11)。
さらに、上記の歯面温度の分布の測定を、サーモグラフィを用いて行なうことが好ましい(請求項5,12)。
また、上記潤滑油の温度は、上記歯面温度上昇検出工程前は室温と等温に保持されることが好ましい(請求項6)。
なお、上記一対の歯車の温度は、上記歯面温度上昇検出工程前は室温と等温に保持されることが好ましい(請求項7)。
さらに、上記潤滑油の温度は、上記歯車回転手段により上記一対の歯車が回転される前は室温と等温に保持されることが好ましい(請求項13)。
また、上記一対の歯車の温度は、上記歯車回転手段により上記一対の歯車が回転される前は室温と等温に保持されることが好ましい(請求項14)。
【発明の効果】
【0018】
したがって、本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置によれば、互いに噛み合う一対の歯車が、回転して上記一対の歯車の歯面に荷重がかかることによって、その歯面に塗布された潤滑油が剪断され、その結果、潤滑油が剪断された歯面の温度が上昇するということを利用して、かかる歯面の温度上昇の分布を検出することにより、上記の歯面温度上昇の分布が相対的に大きい領域を噛み合い領域と評価し、また、上記の歯面温度上昇の分布が相対的に大きいほど面圧が高いと評価することができる。したがって、本来歯面同士が接触していない部分を噛み合い領域と誤判定することを防止でき、さらには、その噛み合い領域内における面圧の強弱を判定することができ、歯車の歯当り評価を高精度に行なうことができる(請求項1〜3,8〜10)。
【0019】
また、本発明の関連技術としての歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置によれば、互いに噛み合う一対の歯車が回転して、上記一対の歯車の歯面に荷重がかかることによって、その歯面に塗布された潤滑油が剪断され、その結果、潤滑油が剪断された歯面の温度が上昇するとともに、上記一対の歯車の同時噛み合い枚数が変化することにより、歯面上に塗布された潤滑油の剪断抵抗に変動が生じ、かかる歯面上に温度差(歯面温度上昇の分布)を引き起こすということを利用することにより、かかる歯面の温度上昇の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割し、隣接する同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差を算出して、この温度差に基づいて噛み合い起振力を高精度に推定することができる。
【0020】
また、本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置、並びに、本発明の関連技術としての歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置によれば、サーモグラフィカメラを用いて歯の歯面温度の分布を非接触で測定するため、短い測定時間で測定が可能となる(請求項4,5,11,12)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明すると、図1,図2は本発明の第1実施形態としての歯車の歯当り評価方法及び装置を示すもので、図1はその機能構成を示す模式図、図2は歯車の歯当り評価方法を示すフローチャートである。
【0022】
まず、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態の歯車の歯当り評価装置は、駆動モータ(歯車回転手段)20と、トルク付与モータ21と、サーモグラフィカメラ(歯面温度測定手段)30と、フォトセンサ31と、カメラコントロールユニット32と、演算ユニット40とをそなえて構成されている。
【0023】
ここで、歯当り評価対象となる一対の歯車10,11のうち、歯車10は、その軸12が駆動モータ20に接続されており、歯車10は駆動モータ20により回転駆動される駆動歯車として構成されている。一方、歯車11は歯車10の回転に従動して回転する従動歯車として構成されている。また、歯車11は、その軸13がトルク付与モータ21に接続されており、このトルク付与モータ21が歯車11の回転数を歯車11が歯車10に従動して回転するよりも遅い回転数、すなわち、歯車10の回転数よりも遅い回転数で回転するように制御されることにより、一対の歯車10,11に回転トルク(動力伝達負荷に相当するトルク)が付与されるようになっている。
【0024】
また、歯車10の軸12の周面上のフォトセンサ31の検出領域には、所定の間隔(所定中心角毎)に突起14が突設されており、これらの複数の突起14とフォトセンサ31とから、歯車10の回転角を検出するロータリエンコーダが構成される。
フォトセンサ31は光を発信する光発信部とこの光発信部から発信された光を受信する光受信部とをそなえ、これらの光発信部と光受信部との間を突起14が通過したことを検出することにより、歯車10の回転角を検出する。これにより、歯車10中の特定の歯(ここでは歯10a)の回転位置を検出することができる。もちろん、この場合の回転位置を検出すべき特定の歯は、任意に選択できるようになっている。
【0025】
サーモグラフィカメラ30は、物体の温度を非接触で測定するものであり、ここでは、歯車11との噛み合い部通過直後の歯車10の歯面の温度の分布を測定すべく、歯車10,11の噛み合い部の下流側に設置されている。
本実施形態では、歯車10中の特定の歯10aの歯面温度の分布を測定すべく、フォトセンサ31がサーモグラフィカメラ30の起動を制御するカメラコントロールユニット32に接続され、フォトセンサ31による監視情報(即ち、上記特定の歯10aの回転位置情報)に基づいて、カメラコントロールユニット32が、サーモグラフィカメラ30を制御するようになっている。
【0026】
また、カメラコントロールユニット32は、サーモグラフィカメラ30の放射率を構成する放射率校正手段(図示略)をそなえるとともに、サーモグラフィカメラ30で測定された歯車10の歯10aの歯面温度の分布データを後述する演算ユニット40へ送信するようになっている。
演算ユニット40は、カメラコントロールユニット32から受信した歯車10の歯10aの歯面温度の分布データに基づいて、噛み合い領域及び面圧を評価して歯車10,11の歯当りを評価するものであり、歯面温度差算出手段41と、歯当り評価手段42とをそなえて構成されている。
【0027】
なお、ここでは、サーモグラフィカメラ(歯面温度測定手段)30と、歯面温度算出手段41により、駆動モータ(歯車回転手段)20により歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯10aの歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出手段が構成される。
歯面温度差算出手段41は、図2を参照しながら後述する本実施形態の歯車の歯当り評価方法における回転前歯面温度測定工程S20及び回転後歯面温度測定工程S40でそれぞれ測定された歯車10の歯10aの歯面温度の分布の同一箇所での温度差(歯面温度差の分布;歯面温度上昇の分布)を算出するものであり、具体的には、カメラコントロールユニット32から受信した回転後歯面温度測定工程S40で測定された歯10aの歯面温度の分布から回転前歯面温度測定工程S20で測定された歯10aの歯面温度の分布を差し引いて、歯車10の歯10aの歯面温度差の分布を算出するものである。
【0028】
また、歯当り評価手段42は、歯面温度差算出手段41で算出された歯車10の歯10aの歯面温度差の分布に基づいて、歯車10の歯10aにおける、かかる歯面温度差が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度差が相対的に高いほど面圧が高いと評価することにより、歯車10,11の歯当り評価を行なうものである。
次に、本実施形態の歯当り評価方法について、図2を参照しながら説明する。
【0029】
まず、潤滑油塗布工程S10において、互いに噛み合う一対の歯車10,11の少なくとも一方の歯車(ここでは歯車10)の歯面に潤滑油を塗布する。次いで、回転前歯面温度測定工程S20において、駆動歯車である歯車10の歯のうち、任意に選択した特定の歯10aの歯面温度の分布をサーモグラフィカメラ30により測定する。測定された歯面温度の分布データは、カメラコントロールユニット32を介して演算ユニット40へ送信される。
【0030】
次に、歯車回転工程S30において、駆動モータ20により、一対の歯車10,11を回転駆動する。ここで、歯車回転工程S30における歯車10,11の回転は、歯車10の歯数と歯車11の歯数とが同数で1回転毎に噛み合う歯が同一の場合には、所定回転数回転させる。また、歯車10の歯数と歯車11の歯数とが同数又は異なる場合で、歯車10が1周する毎に噛み合う歯車11の歯が異なる場合には、特定の歯10aが噛み合う歯車11の歯全てと噛み合うまで回転させる。また、このとき、トルク付与モータ21により、歯車10,11間に所定のトルクが一定付与される。
【0031】
そして、歯車回転工程S30における回転完了直後、即ち、歯車10の歯10aが、歯車11の歯との噛み合い部を通過したらすぐに、回転後歯面温度測定工程S40において歯10aの歯面温度の分布をサーモグラフィカメラ30で測定する。つまり、歯車10,11が噛み合いながら所定回転数回転されて、歯車10,11の歯面に荷重がかかることによって、その歯面(ここでは歯10aの歯面)に潤滑油塗布工程S10で塗布された潤滑油が剪断され、その結果、潤滑油が剪断された歯面(即ち、荷重がかかった歯面)の温度が上昇するということを利用して、かかる温度の上昇をサーモグラフィカメラ30で測定する。そして、測定された歯面温度の分布データは、カメラコントロールユニット32を介して演算ユニット40へ送信される。
【0032】
次に、歯面温度差算出工程S50において、演算ユニット40の歯面温度差算出手段41において回転前歯面温度測定工程S20で測定された回転前の歯10aの歯面温度の分布データと回転後歯面温度測定工程S40で測定された回転後の歯10aの歯面温度の分布データとの差である歯面温度差の分布が算出される。
そして、歯当り評価工程S60において、演算ユニット40の歯当り評価手段42において歯面温度差算出工程S50で算出された歯車10の歯10aの歯面温度差の分布に基づいて、歯面温度差が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、歯面温度差が相対的に高いほど面圧が高いと評価することにより、歯車10,11の歯当り評価を行なう。
【0033】
なお、ここでは、回転前歯面温度測定工程S20と、歯車回転工程S30と、回転後歯面温度測定工程S40と、歯面温度差算出工程S50とにより、歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯10aの歯面温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程が構成され、歯面温度差算出工程S50で算出される上記の歯面温度差の分布が歯面温度上昇の分布に相当する。
【0034】
また、本実施形態の歯当り評価方法では、潤滑油塗布工程S10において、歯車10,11の歯面に潤滑油を塗布したため、潤滑油塗布工程S10後の回転前歯面温度測定工程S20前に、カメラコントロールユニット32の放射率校正手段(図示略)により、サーモグラフィカメラ30の放射率を校正する放射率校正工程S11がそなえられている。
なお、潤滑油塗布工程S10で歯車10の歯面に塗布される潤滑油は、歯車10,11が実際に動力伝達ギアとして使用される際に使用するものを用いる。但し、歯面の温度上昇を見るために、実際に使用するものとは異なる特別な潤滑油を用いてもよい。
【0035】
また、潤滑油の温度は、歯面温度差算出工程S50で算出される歯車10の歯10aの歯面温度差の分布を正確に測定するため、基本的に(回転前歯面温度測定工程S20実行前は)、室温と等温に保持されており、さらには、同様の理由で歯車10,11自体も、基本的に室温と等温に保持されている。
ここで、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置の有効性を確認するために、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果と、上述した従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態とを比較することにより行なった試験及びその試験結果について説明する。
【0036】
なお、本試験では、一対の歯車10,11として、グリーソン式勾配歯曲がりばかさ歯車を用いた。この歯車10,11の材質はクロムモリブデン鋼で歯切後高周波焼入れが施されたものであり、モジュール4.0m、圧力角20°、軸角度90°、歯幅27mm、ねじれ角35°のもので、歯車10,11の歯数は、歯車10の歯数を20枚、歯車11の歯数を40枚のものを用いた。また、サーモグラフィカメラ30の測定波長は3〜4μm程度とした。
【0037】
本試験では、まず、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置によって、歯面温度差算出工程S50において求められた歯車10の歯10aの歯面温度差の分布と、上述した従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態とを比較することにより、歯車の歯面温度差の分布を測定することの有用性を確認した。この結果を図3(a1),(a2),(b1),(b2),(c1),(c2)に示す。
【0038】
なお、図3(a1),(a2),(b1),(b2),(c1),(c2)において、左側の図(即ち、付番号が1の図)は上述した従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態を示し、右側の図(即ち、付番号が2の図)は、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果(以下、単に歯面温度差の分布ともいう)を示す。
【0039】
また、図3及び後述する図4,図6,図7,図10において、歯面の左側は図1における歯車10の内端Xであり、歯面の右側は図1における歯車10の外端Yであるため、以下、歯面の左側を内端といい、歯面の右側を外端という。
なお、図3及び後述する図4,図6,図7,図10における従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態は、スマッジング部分が光明丹が残っている部分を示し、斜線部分に囲まれた白抜きの部分が光明丹が剥がれ落ちた部分を示す。
【0040】
また、図3及び後述する図4,図6,図7,図10における歯面温度差の分布は0.1℃の等温線であらわし、歯面が白い部分は温度差が最も低い部分を示し、歯面を斜線で示す部分は温度差が上昇している部分を示し、歯面が黒い部分は温度差が最も上昇している部分を示す。
図3に示すように、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態では、歯10aの歯面上の歯当たり位置が、内端から外端へ移動するとともに、温度上昇領域も同様に移動していることがわかる。しかし、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態では、歯当たり領域(噛み合い領域)内のばらつきを評価することは困難である。これに対して、歯面温度差の分布によれば、歯当たり領域(噛み合い領域)内でも接触部分にかなりのばらつきがあることがその温度分布により確認することができる。
【0041】
このように、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置によって歯面温度差の分布を測定することで歯当たりを確認可能であるとともに、歯当たり領域(噛み合い領域)内での接触部分のばらつきを確認することが可能になる。
なお、図3に示す、上記の歯当たり位置の内端から外端への移動は、歯車10が勾配歯曲がりばかさ歯車であり、歯の剛性が内端側よりも外端側の方が高いため生じる。
【0042】
ところで、本試験で使用した歯車10,11は、勾配歯であるため、強度や高トルク域でのギアノイズを考慮し、歯当たりが内端に寄りやすい歯形形状になっている。そのため、次に、これら歯車10,11に対して意図的に軸角度誤差を与え、外端に歯当たりを変化させた時の歯面温度差の分布と、上述した従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態とを比較した。この結果を図4(a),(b)に示す。なお、図4(a)は上述した従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態を示し、図中における線Aは光明丹が剥がれた領域において、サーモグラフィカメラ30により測定される歯面温度の分布データから推定される噛み合い接触線を示す。また、図4(b)は歯面温度差の分布を示す。
【0043】
また、図5は歯車10の歯10aの歯すじ方向各部(内端から5mm,13mm,20mm)の歯元応力値を示すものである。なお、この歯元応力値は、歯車10の歯10aの歯元隅肉部(Hoferの30°接線法に位置するところ)にひずみゲージを貼り付けて測定
した値である。あるひずみゲージから得られた歯元ひずみ量が大きければ、そのひずみゲージが貼り付けられた歯形方向の歯面上に位置する箇所にかかる荷重が大きいこととなり、その結果、その箇所の面圧も高くなる。すなわち、あるひずみゲージから得られた歯元応力値が高ければ面圧も高くなり、歯元応力値が低ければ面圧も低くなる。
【0044】
図4(a),(b)に示すように、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態では、噛み合い領域は歯面の外端によっているが、歯面温度差の分布では噛み合い領域は中央よりやや外端によっている程度である。図4(a)に示すように、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態において、外端、歯先に噛み合い領域が寄っているのは、噛み合い始めである。
【0045】
しかし、図5に示すように、噛み合い始めにおける外端の歯元応力値は、ほぼゼロに近く、内端の歯元応力値が高い値を示している。したがって、実際には、この時の歯10aの歯面にかかる荷重は歯面中央に分布し、外端での荷重は極めて小さいことがわかる。
このように、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態では、外端の歯先では、光明丹の厚みにより本来接触しない部分が剥がれてしまったか、歯面は接触しているが、荷重はほとんどかかっていないと考えられる。
【0046】
これに対して、図4(b)に示すように、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果(歯面温度差の分布)によると、噛み合い領域と評価できる温度が上昇している領域が歯面の中央部分に存在しており、外端での温度はほとんど上昇していないため、外端では面圧は極めて小さいと評価することができる。
このように、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果(歯面温度差の分布)では、図5に示す歯元応力値の結果と一致した歯当たりを評価することができ、歯車の噛み合い領域及び面圧を正確に把握することができる。
【0047】
次に、我々は、一対の歯車10,11のトルクが変化した時の歯面温度差の分布と、上述した従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態とを比較した。この結果を図6(a1),(a2),(b1),(b2),(c1),(c2)に示す。なお、図6(a1),(a2),(b1),(b2),(c1),(c2)において、左側の図(即ち、付番号が1の図)は上述した従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態を示し、右側の図(即ち、付番号が2の図)は、歯面温度差の分布を示す。また、図6(a1),(a2)はトルクが98Nm時を示し、図6(b1),(b2)はトルクが68.8Nm時を示し、図6(c1),(c2)はトルクが49Nm時を示す。なお、これらトルクの変動は、トルク付与モータ21により、歯車11の回転数を歯車11が歯車10に従動して回転するよりも遅い回転数で回転するように制御することにより行なった。
【0048】
図6に示すように、歯面温度差の分布でも従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態でも、トルクの増加にともない、噛み合い領域(噛み合い面積)が増加する。特に歯面温度差の分布では、トルクの増加にともなう噛み合い領域の増大が明確にわかる。これに比べると、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態ではあまり変化が見られない。これは、歯車10,11が起動からトルク安定域に入るまでの間(ここでは約30秒間)に、光明丹が剥がれてしまい、トルクによる変化が見られなかったと考えられる。
【0049】
以上より、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果(歯面温度差の分布)では、トルク変動による歯当たりの変化を評価する場合にも有効である。
さらに、我々は、歯車の歯面温度の分布に基づいて面圧を評価できることを確認するために、歯車10,11の歯元応力値と、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果(歯面温度差の分布)とを歯車10,11の同時噛み合い枚数に着目して比較検討した。図7(a)は噛み合い時の歯車10の歯10aの中央部分における歯元応力値を示す図であり、図7(b)はこのときの歯10aの歯面温度差の分布を示す図である。
【0050】
一対の歯車10,11の実噛み合い率は1.4程度であるため、歯車10の歯と歯車11の歯との噛み合い枚数状態(同時噛み合い枚数)には、図7(a)に示すように、噛み合い枚数状態(同時噛み合い枚数)は、1枚の場合と2枚の場合とが存在する。また、この噛み合い枚数状態は、図7(b)に示すように、サーモグラフィカメラ30により測定される歯面温度の分布データから推定される噛み合い接触線A1〜A4として歯面温度差の分布上に示すことができる。即ち、歯面温度差の分布上における噛み合い接触線A1,A2に挟まれた領域及び噛み合い接触線A3,A4に挟まれた領域が、噛み合い枚数状態が1枚噛み合いの状態である領域を示し、噛み合い接触線A2,A3に挟まれた領域が、噛み合い枚数状態が2枚噛み合い状態である領域を示す。なお、この噛み合い枚数状態を判定する方法については、下記第2実施形態の噛み合い枚数領域分割手段52の説明として後述する。
【0051】
ここで、図7(a),(b)を比較検討すると、図7(a)の歯元応力値を見ると、1枚噛み合い領域で高い歯元応力値を示すとともに、図7(b)の歯面温度差の分布においても、1枚噛み合いの領域では高い温度を示している。逆に、2枚噛み合い領域では、歯元応力値が低い値を示すとともに、歯面温度差の分布でも低い温度を示している。これは、1枚噛み合いの領域は1枚の歯で荷重を分担しており、単純に考えると面圧は2枚噛み合い時の2倍になっているためであると考えられる。
【0052】
以上の結果より、歯元応力値が高い領域、即ち、面圧が高い領域では、歯面温度差も高い温度を示しており、温度分布を確認することで面圧の強弱を把握することができる。
このように、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置によれば、歯車10,11が噛み合いながら回転して、歯車10,11の歯面に荷重がかかることによって、その歯面に塗布された潤滑油が剪断され、その結果、潤滑油が剪断された歯面の温度が上昇するということを利用し、回転前後の歯面温度差の分布に基づいて歯面温度が相対的に上昇している領域を噛み合い領域と評価し、また、歯面温度上昇が相対的に大きいほど面圧が高いと評価するようにした。このため、本来歯面同士が接触していない部分を噛み合い領域と誤判定することを確実に防止でき、さらには、その噛み合い領域内における面圧の強弱を判定することができ、歯車の歯当り評価を高精度に行なうことができる。
【0053】
また、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置では、サーモグラフィカメラ30を用いて歯10aの歯面温度の分布を非接触で測定するため、短い測定時間で測定が可能となる。また、放射率校正工程S11でサーモグラフィカメラ30の放射率を校正するため、歯10aの歯面性状あるいは潤滑油を塗布されたことによる影響を確実に除去することができて、より高精度な歯車の歯当り評価及び噛み合い起振力推定を行なうことができる。
【0054】
また、一対の歯車10,11に潤滑油を塗布するため、本歯車の歯当り評価方法及び装置において歯車10,11が噛み合うことで発生する歯車10,11の歯面の損傷を防止することができる。
さらに、サーモグラフィカメラ30により歯10aの歯面温度の分布の測定を行なうため、反射光の影響を考慮しなければならないが、本実施形態では、回転前歯面温度測定工程S20で測定された回転前の歯10aの歯面温度の分布と回転後歯面温度測定工程S40で測定された所定回転数回転後の歯10aの歯面温度の分布との差に基づいて歯当り評価及び噛み合い起振力の推定を行なうため、サーモグラフィカメラ30に対する歯10aの歯面からの反射光の影響を完全に除去することができ、より高精度に歯車の歯当り評価及び歯車の噛み合い起振力推定を行なうことができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態(本発明の関連技術)について説明すると、図8,図9は本発明の第2実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置を示すもので、図8はその機能構成を示す模式図、図9は歯車の噛み合い起振力推定方法を示すフローチャートである。
まず、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置について説明する。
【0056】
図8に示すように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力装置は、図1を参照しながら上述した第1実施形態の歯車の歯当り評価装置に対して、駆動モータ(歯車回転手段)20,トルク付与モータ21,サーモグラフィカメラ(歯面温度測定手段)30,フォトセンサ31,カメラコントロールユニット32については同様のものをそなえて構成されており、演算ユニット50の構成のみが異なっている。したがって、ここではその共通部分についての詳細な説明は省略する。なお、図8において図1と同符号のものは同様のものを示す。
【0057】
本実施形態の歯車の噛み合い起振力装置の演算ユニット50は、歯面温度差算出手段51と、噛み合い枚数領域分割手段52と、領域間温度差算出手段53と、噛み合い起振力推定手段54と、表示手段57とをそなえて構成されている。
なお、ここでは、サーモグラフィカメラ(歯面温度測定手段)30と、歯面温度差算出手段51とにより、歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯10aの歯面温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出手段が構成される。
【0058】
歯面温度差算出手段51は、図1に示した第1実施形態の歯車の歯当り評価装置における歯面温度差算出手段41と同様のものである。つまり、図9を参照しながら後述する本実施形態の歯車の歯当り評価方法における回転前歯面温度測定工程S20及び回転後歯面温度測定工程S40でそれぞれ測定された歯車10の歯10aの歯面温度差の分布(歯面温度上昇の分布)を算出するものである。
【0059】
噛み合い枚数領域分割手段52は、歯面温度差算出手段51で算出された歯面温度差の分布を、歯車10の歯10aの歯車11の歯との同時噛み合い枚数(噛み合い枚数状態)毎に分割するものである。同時噛み合い枚数毎の分割は、歯車10の歯10aの歯元(歯元隅肉部)にひずみゲージを貼り付け、このひずみゲージを歯車11とかみあった状態で回転させながら測定することにより予め求められた歯元応力値から算出される噛み合い率と、この噛み合い率に基づいて算出される噛み合い枚数毎の時間の割合と、サーモグラフィカメラ30により測定される歯面温度の分布データから推定される噛み合い接触線との関係から、同時噛み合い枚数が変化する点を判別することによって行なわれる。
【0060】
噛み合い率は、歯元応力値に表われる応力立ち上がり開始点に相当する噛み合い始めから、応力立ち下り終了点に相当する噛み合い終わりまでの時間をaとし、歯10aの1ピッチ移動時間をbとすると、aをbで除すことにより算出する。
また、この噛み合い率の値が、1以上2以下であれば、同時噛み合い枚数が1枚の領域と2枚の領域とが存在することを表わし、噛み合い枚数が2枚の領域(時間)は、下記式(1)により算出し、1枚噛み合い枚数が1枚の領域(時間)は下記式(2)により算出する。
【0061】
2枚噛み合い領域(時間)=(a/b−1)×a …(1)
1枚噛み合い領域(時間)=[1−(a/b−1)]×a …(2)
領域間温度差算出部53は、同時噛み合い枚数毎の領域に分割された歯面温度差の分布において、隣り合う領域間の温度差を算出するものである。
噛み合い起振力推定手段54は、領域間温度差算出部53により算出された、同時噛み合い枚数毎の領域に分割された歯面温度差の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差に基づいて、噛み合い起振力を推定するものであり、この噛み合い起振力推定手段54は、噛み合い起振力記憶部55と、噛み合い起振力推定部56とをそなえて構成されている。
【0062】
噛み合い起振力記憶部55は、隣り合う同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差と噛み合い起振力との対応マップ(図示略)を、かかる温度差の生じた歯面の領域毎、ここでは、歯面の内端部分、歯面の中央部分、歯面の外端部分の3つの領域毎に保持するものである。
なお、噛み合い起振力記憶部55に保持された上記3つの対応マップの値は、経験的に求められた、隣り合う同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差に応じた、噛み合い起振力の1指標である噛み合い伝達誤差(MTE= Meshing Transmission Error)に基づいて、算出された値を採用している。なお、上記の隣り合う同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差と噛み合い伝達誤差との関係については、図10を参照しながら後述する。
【0063】
そして、噛み合い起振力推定部56は、領域間温度差算出部53で算出された、隣り合う領域間の温度差と、噛み合い起振力記憶部55に保持された、かかる温度差の歯面上の領域(即ち、内端部分、中央部分、外端部分のいずれかの歯面の領域)に対応した対応マップとに基づいて、噛み合い起振力を推定するものである。
なお、表示手段57は、噛み合い起振力推定手段54で推定された噛み合い起振力を表示するものである。
【0064】
次に、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法について説明する。図9に示すように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法は、図2を参照しながら上述した第1実施形態の歯車の歯当り評価方法と、潤滑油塗布工程S10〜歯面温度差算出工程S50までは同様であり、噛み合い枚数領域分割工程S61,領域間温度差算出工程S70,噛み合い起振力推定工程S80が異なっている。したがって、潤滑油塗布工程S10〜歯面温度差算出工程S50については、その詳細な説明は省略する。なお、図9において図2と同符号のものは同様のものを示す。
【0065】
つまり、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法では、噛み合い枚数領域分割工程S61において、演算ユニット50の噛み合い枚数領域分割手段52により、歯面温度差算出工程S50において演算ユニット50の歯面温度差算出手段51により算出された歯車10の歯10aの歯面温度差の分布を、歯車10の歯10aの歯車11の歯との同時噛み合い枚数毎に分割する。
【0066】
次に、領域間温度差算出工程S70において、領域間温度差算出部53により、噛み合い枚数領域分割工程S61で同時噛み合い枚数毎の領域に分割された歯面温度差の分布における隣り合う領域間の温度差を算出する。
そして、噛み合い起振力推定工程S80において、噛み合い起振力推定手段54の噛み合い起振力推定部56により、領域間温度差算出工程S70で算出された、隣り合う領域間の温度差と、噛み合い起振力記憶部55の上記対応マップとに基づいて、噛み合い起振力を推定する。
【0067】
なお、ここでは、回転前歯面温度測定工程S20と、歯車回転工程S30と、回転後歯面温度測定工程S40と、歯面温度差算出工程S50とにより、歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯10aの歯面温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程が構成され、歯面温度差算出工程S50で算出される上記の歯面温度差の分布が歯面温度上昇の分布に相当する。
【0068】
ここで、本実施形態にかかる歯車の噛み合い起振力推定方法の噛み合い起振力推定工程S72における推定根拠を確認する、つまり、本歯車の噛み合い起振力推定装置の噛み合い起振力記憶部55に保持されている噛み合い領域毎の上記対応マップにおける、隣り合う同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差と噛み合い起振力との対応関係の根拠を確認するために行なった試験について説明する。
【0069】
本試験は、噛み合い起振力の1指標としての噛み合い伝達誤差(MTE)と、上述した図7(b)に基づく、隣り合う同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差との関係について検証したものであり、この結果を図10に示す。
ところで、上述のように、噛み合い伝達誤差(MTE)は、噛み合い起振力の1指標として、噛み合い起振力とは高い相関関係にある。また、噛み合い伝達誤差(MTE)は、一般的に、トルクの変動、噛み合い領域の歯面上の位置によって変動するものであることが知られており、さらに、その同時噛み合い枚数が1枚噛み合いから、2枚噛み合いへ変動する際の歯面にかかる荷重の変動量が大きいと、噛み合い伝達誤差(MTE)の1次成分は大きくなることが知られている。
【0070】
そこで、本試験では、1枚噛み合い領域と2枚噛み合い領域との温度差と、かかる温度差が発生した歯10aの歯面上の領域毎(ここでは、内端部分の領域と外端部分の領域毎)の噛み合い伝達誤差との関係を検証した。なお、図10における噛み合い伝達誤差(MTE)の変動は、トルクの変動によるものであり、トルクが増加するにつれ、噛み合い伝達誤差(MTE)も増加する。
【0071】
図10に示すように、内端部分の領域では外端部分の領域よりもトルクによる噛み合い伝達誤差(MTE)の変動が大きい。これは、本試験で使用した歯車10,11は、上述のように曲がりばかさ歯車であるため、外端部分によるほど歯の曲げ剛性が高く、その結果、外端部分では噛み合い伝達誤差(MTE)の変動量が少なくなったと考えられる。また、内端部分、外端部分ともに、噛み合い伝達誤差(MTE)の増加にともない温度差も増加している。しかし、同じ噛み合い伝達誤差(MTE)約40secでも、内端部分より外端部分の方が、かかる温度差は大きい。このことより、噛み合い伝達誤差(MTE)の与える影響は、歯面にかかる荷重の変動より、噛み合い領域の歯面上の位置のずれの方が大きいと考えられる。
【0072】
以上の結果より、かかる温度差が発生した歯10aの歯面上の領域(噛み合い領域)が同じ位置(領域)であれば、同時噛み合い枚数毎の領域に分割された歯面温度差の分布における隣り合う領域間の温度差と、噛み合い伝達誤差(MTE)との対応関係を予め求めておくことにより、かかる温度差から噛み合い伝達誤差(MTE)を把握することができる。したがって、この噛み合い伝達誤差(MTE)に基づいて求めることができる噛み合い起振力についても、かかる温度差が発生した歯10aの歯面上の領域毎に推定することができる。
【0073】
このように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置によれば、歯車10,11の歯面に荷重がかかることによって、その歯面に塗布された潤滑油が剪断され、その結果、潤滑油が剪断された歯面の温度が上昇するとともに、同時噛み合い枚数が変化することにより、かかる歯面上に塗布された潤滑油の剪断抵抗に変動が生じ、かかる歯面上に温度差(歯面温度上昇の分布)を引き起こすということを利用して、歯車10,11の回転前後の歯10aの歯面温度差の分布を同時噛み合い枚数毎の領域に分割し、分割された隣接する同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差を算出して、この温度差と、この温度差が発生した歯10aの歯面上の領域とに基づいて、噛み合い起振力記憶部55の対応マップから歯車10,11の噛み合い起振力を高精度に推定することができる。
【0074】
さらに、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置によれば、上述の第1実施形態にかかる歯車の歯当り評価方法及び装置と同様の構成(共通部分)により、上述した第1実施形態において、かかる同様の構成により奏する作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態(本発明の関連技術)について説明すると、図11,図12は本発明の第3実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置を示すもので、図11はその機能構成を示す模式図、図12は歯車の噛み合い起振力推定方法を示すフローチャートである。
【0076】
本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定装置は、噛み合い起振力の1指標である噛み合い伝達誤差(MTE)を推定することにより、この噛み合い伝達誤差(MTE)に基づいて噛み合い起振力の大小を推定するように構成されており、図11に示すように、演算ユニット50aの噛み合い起振力推定手段54aの構成のみが、上述した第2実施形態の歯車の噛み合い起振力推定装置と異なっている。また、本実施形態の噛み合い起振力推定方法についても、図12に示すように、噛み合い伝達誤差推定工程S81,噛み合い起振力推定工程S82のみが、上述した第2実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法と異なっている。したがって、ここでは上述した第2実施形態との共通部分についてはその詳細な説明を省略する。なお、図11において図8と同符号のものは同様のものを示し、図12において図9と同符号のものは同様のものを示す。
【0077】
図11に示すように、本実施形態の噛み合い起振力推定装置も上述した第2実施形態と同様に、駆動モータ20と、トルク付与モータ21と、サーモグラフィカメラ30と、フォトセンサ31と、カメラコントロールユニット32とをそなえ、さらに、演算ユニット50aをそなえて構成されている。
演算ユニット50aは、歯面温度差算出手段51と、噛み合い枚数領域分割手段52と、領域間温度差算出部53と、噛み合い起振力推定手段54aと、表示手段57とをそなえて構成されている。ここで、歯面温度差算出手段51,噛み合い枚数領域分割手段52,領域間温度差算出部53,表示手段57については、上述した第2実施形態のものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0078】
噛み合い起振力推定手段54aは、噛み合い伝達誤差記憶部58と、噛み合い伝達誤差推定部59と、噛み合い起振力推定部56aとをそなえて構成されており、噛み合い伝達誤差記憶部58は、隣り合う同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差と噛み合い伝達誤差(MTE)との対応マップ(図示略)を、かかる温度差の生じた歯面の領域毎、ここでは、歯面の内端部分、歯面の中央部分、歯面の外端部分の3つの領域毎に保持するものである。なお、この噛み合い伝達誤差記憶部58に保持された上記3つの対応マップは、経験的に求められたものである。
【0079】
そして、噛み合い伝達誤差推定部59は、領域間温度差算出部53で算出された、隣り合う領域間の温度差と、噛み合い伝達誤差記憶部58に保持された、かかる温度差の歯面上の領域(即ち、内端部分、中央部分、外端部分のいずれかの歯面の領域)に対応した対応マップとに基づいて、噛み合い伝達誤差(MTE)を推定するものである。
そして、噛み合い起振力推定部56aは、噛み合い伝達誤差推定部59で推定された噛み合い伝達誤差(MTE)の値に応じて、噛み合い起振力を推定するものである。つまり、噛み合い起振力推定部56aは、かかる対応マップに基づいて推定された噛み合い伝達誤差(MTE)の数値に応じて、噛み合い伝達誤差(MTE)が大きければ、噛み合い起振力も大きく、噛み合い伝達誤差(MTE)が小さければ、噛み合い起振力も小さいと推定する。
【0080】
次に、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法について説明する。
図12に示すように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法は、図9に示す第2実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法と、潤滑油塗布工程S10〜領域間温度差算出工程S70までは同様であり、噛み合い伝達誤差推定工程S71,噛み合い起振力推定工程S82のみが異なっている。したがって、ここでは、潤滑油塗布工程S10〜領域間温度差算出工程S70については、その詳細な説明は省略する。
【0081】
つまり、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法では、噛み合い伝達誤差推定工程S81において、噛み合い起振力推定手段54aの噛み合い伝達誤差推定部59により、領域間温度差算出工程S70で算出された、隣り合う領域間の温度差と、噛み合い伝達誤差記憶部58の上記対応マップとに基づいて、噛み合い伝達誤差(MTE)を推定する。
そして、噛み合い起振力推定工程S82において、噛み合い起振力推定手段54aの噛み合い起振力推定部56aにより、噛み合い伝達誤差推定工程S81で推定された噛み合い伝達誤差(MTE)に基づいて、かかる噛み合い伝達誤差(MTE)が大きければ、噛み合い起振力も大きく、かかる噛み合い伝達誤差(MTE)が小さければ、噛み合い起振力が小さいと推定する。
【0082】
このように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置によれば、同時噛み合い枚数毎の領域に分割された歯面温度差の分布における隣り合う領域間の温度差に基づいて、歯車10,11の噛み合い起振力の1指標である、噛み合い伝達誤差(MTE)を推定し、この噛み合い伝達誤差に基づいて噛み合い起振力の大小を推定するため、上述した第2実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0083】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明すると、図13,図14は本発明の第4実施形態としての歯車の歯当り評価方法及び装置を示すもので、図13はその機能構成を示す模式図、図14は歯車の歯当り評価方法を示すフローチャートである。なお、図13において、図1と同符号のものは同様のものを示し、図14において、図2と同符号のものは同様のものを示す。
【0084】
本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置は、上述の第1実施形態にかかる歯車の歯当り評価方法及び装置のように、回転前後の歯10aの歯面温度差の分布に基づいて歯車10,11の歯当り評価を行なうのではなく、回転後の歯10aの歯面温度の分布のみを測定し、この回転後の歯面温度の分布に基づいて歯車10,11の歯当りを評価するものである。
【0085】
したがって、本実施形態の歯車の歯当り評価装置は、図13に示すように、図1に示す第1実施形態の歯車の歯当り評価装置と同様に、駆動モータ20と、トルク付与モータ21と、サーモグラフィカメラ30と、フォトセンサ31と、カメラコントロールユニット32とをそなえて構成されている。なお、これら共通部分については、その詳細な説明は省略する。
【0086】
なお、ここでは、サーモグラフィカメラ(歯面温度測定手段)30が、歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯10aの歯面温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出手段として構成される。
そして、本実施形態の歯車の歯当り評価装置にかかる演算ユニット40aは、歯当り評価手段42aのみをそなえて構成されている。
【0087】
この歯当り評価手段42aは、図14を参照しながら後述する本実施形態の歯車の歯当り評価方法における回転後歯面温度測定工程S31において、サーモグラフィカメラ30により測定され、カメラコントロールユニット32から受信した回転後の歯10aの歯面温度の分布(歯面温度上昇の分布)に基づいて、歯車10,11の歯当り評価を行なうものである。つまり、歯当り評価手段42aは、回転後の歯10aにおける歯面温度の分布に基づいて、かかる歯面温度が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度が相対的に高いほど面圧が高いと評価することにより、歯車10,11の歯当り評価を行なう。
【0088】
次に、本実施形態の歯車の歯当り評価方法について説明する。上述のように、本実施形態の歯車の歯当り評価方法では、上述した第1実施形態とは異なり、回転前の歯10aの歯面温度の分布測定(図1の回転前歯面温度測定工程S20参照)は行なわず、したがって、回転前後の歯面温度差の分布算出(図1の歯面温度差算出工程S50)は行なわずに、回転後の歯10aの歯面温度の分布のみを測定して、この歯面温度の分布に基づいて歯当り評価を行なうように構成されている。
【0089】
したがって、図14に示すように、本実施形態の歯車の歯当り評価方法では、潤滑油塗布工程S10において、互いに噛み合う一対の歯車10,11の少なくとも一方の歯車(ここでは歯車10)の歯面に潤滑油を塗布し、次いで、放射率校正工程S11において、サーモグラフィカメラ30の放射率を校正する。なお、潤滑油塗布工程S10及び放射率校正工程S11は、上述の第1実施形態にかかる潤滑油塗布工程S10及び放射率校正工程S11と同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0090】
そして、潤滑油塗布工程S10後の放射率校正工程S11後に、歯車回転工程S21において、歯車10,11を所定回転数回転させる。この歯車回転工程S21は、図1を参照しながら上述した第1実施形態にかかる歯車回転工程S30に相当する工程である。
次いで、回転後歯面温度測定工程S31において、歯車10の歯10aの歯面温度の分布を測定する。この回転後歯面温度測定工程S31は、図1を参照しながら上述した第1実施形態にかかる回転後歯面温度測定工程S40に相当する工程である。なお、ここでは、歯車回転工程S21と、回転後歯面温度測定工程S31とにより、歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯10aの歯面温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程が構成される。
【0091】
そして、歯当り評価工程S41において、演算ユニット40aの歯当り評価手段42aにより、回転後歯面温度測定工程S31で測定された歯10aの回転後の歯面温度の分布(歯面温度上昇の分布)に基づいて、かかる歯面温度が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、かかる歯面温度が相対的に高いほど面圧が高いと評価する。
このように、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置によれば、上述の第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0092】
しかしながら、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置では、回転前後の歯面温度差の分布に基づいて歯当り評価を行なわないため、サーモグラフィカメラ30に対する歯車10の歯10aの歯面からの反射光の影響を完全に除去することはできない。
しかし、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置の対象となる歯車10,11が、例えば、平歯車等の歯車のねじれ角が無い歯車であれば、サーモグラフィカメラ30に対する歯10aの歯面からの反射光の影響はほとんどなく、高精度に歯車の歯当り評価及び噛み合い起振力推定を行なうことができる。もちろん、対象となる歯車10,11のねじれ角が小さい場合でも、ある程度の精度で歯車の歯当り評価を行なうことができる。
【0093】
したがって、対象となる歯車10,11のねじれ角が無い場合や小さい場合には、本実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置によれば、上述の第1実施形態における、歯10aの回転前の歯面温度の分布を測定する工程(図1の回転前歯面温度測定工程S20参照)及び回転前後の歯面温度差の分布を算出する工程(図1の歯面温度差算出工程S50参照)を省略することができるため、上述の第1実施形態に比べて、より効率的に時間を短縮して歯車の歯当り評価を行なうことができる。
【0094】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態(本発明の関連技術)について説明すると、図15,図16は本発明の第5実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置を示すもので、図15はその機能構成を示す模式図、図16は歯車の噛み合い起振力推定方法を示すフローチャートである。なお、図15において、図8と同符号のものは同様のものを示し、図16において、図9と同符号のものは同様のものを示す。
【0095】
本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置は、上述した第4実施形態の歯車の歯当り評価方法及び装置と同様に、上述の第2実施形態にかかる歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置とは異なり、回転前後の歯10aの歯面温度差の分布に基づいて歯車10,11の噛み合い起振力を推定するのではなく、回転後の歯10aの歯面温度の分布のみを測定し、この回転後の歯面温度の分布に基づいて歯車10,11の噛み合い起振力を推定するものである。なお、ここでは、サーモグラフィカメラ(歯面温度測定手段)30が、歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯10aの歯面温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出手段として構成される。
【0096】
したがって、図15に示すように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定装置における演算ユニット50bでは、噛み合い枚数領域分割手段52bにより、サーモグラフィカメラ30で測定され、カメラコントロールユニット32から受信した回転後の歯10aの歯面温度の分布(歯面温度上昇の分布)を、同時噛み合い枚数毎の領域に分割する。そして、領域間温度差算出手段53により、噛み合い枚数領域分割手段52bにより分割された回転後の歯10aの歯面温度の分布に基づいて、隣り合う噛み合い枚数毎の領域間の温度差が算出され、噛み合い起振力推定手段54により、噛み合い起振力が推定される。
なお、本実施形態の噛み合い起振力推定装置における噛み合い起振力推定手段54の構成は、上述した第2実施形態と同様であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0097】
次に本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法について説明する。
図16に示すように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法は、潤滑油塗布工程S10〜回転後歯面温度測定工程S31までは、上述した第4実施形態の歯車の歯当り評価方法と同様であるため、その詳細な説明は省略する。なお、ここでは、歯車回転工程S21と、回転後歯面温度測定工程S31とにより、歯車10,11が回転されたことにより生じる歯車10の歯10aの歯面温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程が構成される。
【0098】
そして、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法では、噛み合い枚数領域分割工程S42において、回転後歯面温度測定工程S31で測定された回転後の歯10aの歯面温度の分布(歯面温度上昇の分布)を、同時噛み合い枚数毎の領域に分割する。
次いで、領域間温度差算出工程S51において、噛み合い枚数領域分割工程S42で分割された回転後の歯面温度の分布における隣接する同時噛み合い枚数毎の領域の温度差を算出し、噛み合い起振力推定工程S62において、かかる温度差に基づいて噛み合い起振力を推定する。なお、領域間温度差算出工程S51は、図9に示した第2実施形態における領域間温度差算出工程S70に相当するものであり、噛み合い起振力推定工程S62は、図9に示した第2実施形態における噛み合い起振力推定工程S80に相当するものである。
【0099】
このように、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置によれば、上述の第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
しかしながら、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置では、回転前後の歯面温度差の分布に基づいて歯当り評価及び噛み合い起振力推定を行なわないため、サーモグラフィカメラ30に対する歯車10の歯10aの歯面からの反射光の影響を完全に除去することはできない。
【0100】
しかし、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置の対象となる歯車10,11が、例えば、平歯車等の歯車のねじれ角が無い歯車であれば、サーモグラフィカメラ30に対する歯10aの歯面からの反射光の影響はほとんどなく、高精度に歯車の歯当り評価及び噛み合い起振力推定を行なうことができる。もちろん、対象となる歯車10,11のねじれ角が小さい場合でも、ある程度の精度で歯車の歯当り評価及び噛み合い起振力推定を行なうことができる。
【0101】
したがって、対象となる歯車10,11のねじれ角が無い場合や小さい場合には、本実施形態の歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置によれば、上述の第2実施形態における、歯10aの回転前の歯面温度の分布を測定する工程(図9の回転前歯面温度測定工程S20参照)及び回転前後の歯面温度差の分布を算出する工程(図9の歯面温度差算出工程S50参照)を省略することができるため、上述の第2実施形態に比べて、より効率的に時間を短縮して歯車の歯当り評価及び噛み合い起振力推定を行なうことができる。
【0102】
[その他]
以上、本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置、並びに、本発明の関連技術としての歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、噛み合い起振力を推定する際に、噛み合い起振力もしくは噛み合い伝達誤差と、同時噛み合い枚数毎に分割された歯面温度分布における隣接する噛み合い領域間の温度差との対応マップを用いて、噛み合い起振力もしくは噛み合い伝達誤差を推定するように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、噛み合い起振力推定手段に、かかる対応マップをそなえず、噛み合い起振力推定手段により噛み合い起振力を推定する際には、同時噛み合い枚数毎に分割された歯面温度分布における隣接する噛み合い領域間の温度差が大きければ噛み合い起振力も大きく、かかる温度差が小さければ噛み合い起振力も小さいと推定するように構成してもよい。
【0103】
また、本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置、並びに、本発明の関連技術としての歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置における、歯面温度上昇検出手段としては、上述した実施形態に限定されるものではなく、特に、上述の第1,第2実施形態の歯面温度上昇検出手段のように、回転前後の歯面温度差により歯面温度上昇の分布を測定するものではなく、かかる歯面温度上昇検出手段を、歯車10,11が回転したことにより生じる歯車10の歯面の温度上昇の分布(歯面の温度変化)を直接検出しうる検出装置を用いることができれば、かかる検出装置によって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施形態としての歯車の歯当り評価装置の機能構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての歯車の歯当り評価方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果と、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態とを示す図であり、図3(a1),(a2)は噛み合い領域が歯面の内端部分に生じた際の図、図3(b1),(b2)は噛み合い領域が歯面の中央部分に生じた際の図、図3(c1),(c2)は噛み合い領域が歯面の外端部分に生じた際の図である。
【図4】本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果と、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態とを示す図であり、図4(a)は歯面の外端に歯当たりを変化させた時の従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態を示す図であり、図4(b)は歯面の外端に歯当たりを変化させた時の本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果を示す図である。
【図5】図4における歯面の外端に歯当たりを変化させた時の歯面の領域毎の歯元応力値を示す図である。
【図6】本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果と、従来からの光明丹を用いた歯当り評価方法における歯面の状態とを示す図であり、図6(a1),(a2)は歯車間のトルクが98Nmの時のものを示し、図6(b1),(b2)は歯車間のトルクが68.8Nmの時のものを示し、図6(c1),(c2)は歯車間のトルクが49Nm時のものを示す。
【図7】歯車噛み合い時における、歯車の同時噛み合い枚数毎の歯車の歯元応力値と、本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果とを示す図であり、図7(a)同時噛み合い枚数毎の歯車の歯元応力値を示す図であり、図7(b)は図7(a)に示す噛み合い時における本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定装置の機能構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定方法を示すフローチャートである。
【図10】噛み合い伝達誤差(MTE)と、本発明の歯車の歯当り評価方法及び装置における歯面の温度測定結果の隣り合う同時噛み合い枚数毎の領域間の温度差との対応関係を示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定装置の機能構成を示す模式図である。
【図12】本発明の第3実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態としての歯車の歯当り評価装置の機能構成を示す模式図である。
【図14】本発明の第4実施形態としての歯車の歯当り評価方法を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第5実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定装置の機能構成を示す模式図である。
【図16】本発明の第5実施形態としての歯車の噛み合い起振力推定方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0105】
10,11 歯車
10a 歯面
12,13 軸
14 突起
20 駆動モータ(歯車回転手段)
21 トルク付与モータ
30 サーモグラフィカメラ(歯面温度測定手段)
31 フォトセンサ
32 カメラコントロールユニット
40,40a,50,50a,50b 演算ユニット
41 歯面温度差算出手段
42,42a 歯当り評価手段
51 歯面温度差算出手段
52,52b 噛み合い枚数領域分割手段
53 領域間温度差算出手段
54,54a 噛み合い起振力推定手段
55 噛み合い起振力記憶部
56,56a 噛み合い起振力推定部
57 表示手段
58 噛み合い伝達誤差記憶部
59 噛み合い伝達誤差推定部
S10 潤滑油塗布工程
S11 放射率校正工程
S20 回転前歯面温度測定工程
S21,S30 歯車回転工程
S31,S40 回転後歯面温度測定工程
S41,S60 歯当り評価工程
S42,S61 噛み合い枚数領域分割工程
S50 歯面温度差算出工程
S51,S70 領域間温度差算出工程
S62,S80,S82 噛み合い起振力推定工程
S81 噛み合い伝達誤差推定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合う一対の歯車の少なくとも一方の歯車の歯面に潤滑油を塗布する潤滑油塗布工程と、
上記潤滑油塗布工程後に上記一対の歯車が回転したことにより生じる上記一方の歯車の歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出工程と、
上記歯面温度上昇検出工程で検出された上記歯面温度上昇の分布に基づいて、該歯面温度上昇が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、該歯面温度上昇が相対的に高いほど面圧が高いと評価する歯当り評価工程とをそなえたことを特徴とする、歯車の歯当り評価方法。
【請求項2】
上記歯面温度上昇検出工程は、
上記潤滑油塗布工程後に上記一対の歯車を回転させる歯車回転工程と、
上記歯車回転工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を上記歯面温度上昇の分布として測定する回転後歯面温度測定工程とをそなえ、
上記歯当り評価工程では、上記回転後歯面温度測定工程で測定された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布に基づいて、該歯面温度が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、該歯面温度が相対的に高いほど面圧が高いと評価することを特徴とする、請求項1記載の歯車の歯当り評価方法。
【請求項3】
上記歯面温度上昇検出工程は、
上記潤滑油塗布工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を測定する回転前歯面温度測定工程と、
上記回転前歯面温度測定工程後に上記一対の歯車を回転させる歯車回転工程と、
上記歯車回転工程後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を測定する回転後歯面温度測定工程と、
上記回転前歯面温度測定工程で測定された回転前の上記歯面温度の分布と、上記回転後歯面温度測定工程で測定された回転後の上記歯面温度の分布との差である歯面温度差の分布を上記歯面温度上昇の分布として算出する歯面温度差算出工程とをそなえ、
上記歯当り評価工程では、上記歯面温度差算出工程で算出された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布に基づいて、該歯面温度差が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、該歯面温度差が相対的に高いほど面圧が高いと評価することを特徴とする、請求項1記載の歯車の歯当り評価方法。
【請求項4】
上記の歯面温度の分布の測定を、上記歯面に対して非接触で行なうことを特徴とする、請求項2又は3記載の歯車の歯当り評価方法。
【請求項5】
上記の歯面温度の分布の測定を、サーモグラフィを用いて行なうことを特徴とする、請求項4記載の歯車の歯当り評価方法。
【請求項6】
上記潤滑油の温度は、上記歯面温度上昇検出工程前は室温と等温に保持されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯車の歯当り評価方法。
【請求項7】
上記一対の歯車の温度は、上記歯面温度上昇検出工程前は室温と等温に保持されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯車の歯当り評価方法。
【請求項8】
少なくとも一方の歯車の歯面に潤滑油が塗布された、互いに噛み合う一対の歯車を回転させる歯車回転手段と、
上記歯車回転手段により上記一対の歯車が回転したことにより生じる上記一方の歯車の歯面の温度上昇の分布を検出する歯面温度上昇検出手段と、
上記歯面温度上昇検出手段で検出された上記歯面温度上昇の分布に基づいて、該歯面温度上昇が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、該歯面温度上昇が相対的に高いほど面圧が高いと評価する歯当り評価手段とをそなえたことを特徴とする、歯車の歯当り評価装置。
【請求項9】
上記歯面温度上昇検出手段が、
上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転後に上記一方の歯車の歯面温度の分布を上記歯面温度上昇の分布として測定する歯面温度測定手段をそなえ、
上記歯当り評価手段が、上記歯面温度測定手段により測定された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度の分布に基づいて、該歯面温度が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、該歯面温度が相対的に高いほど面圧が高いと評価することを特徴とする、請求項8記載の歯車の歯当り評価装置。
【請求項10】
上記歯面温度上昇検出手段が、
上記一方の歯車の歯面の温度を測定する歯面温度測定手段と、
上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転前に上記歯面温度測定手段により測定された上記一方の歯車の歯面温度の分布と、上記歯車回転手段による上記一対の歯車回転後に上記歯面温度測定手段により測定された上記一方の歯車の歯面温度の分布との差である歯面温度差の分布を上記歯面温度上昇の分布として算出する歯面温度差算出手段とをそなえ、
上記歯当り評価手段が、上記歯面温度差算出手段で算出された上記歯面温度上昇の分布としての上記歯面温度差の分布に基づいて、該歯面温度差が相対的に高い領域を噛み合い領域と評価するとともに、該歯面温度差が相対的に高いほど面圧が高いと評価することを特徴とする、請求項8記載の歯車の歯当り評価装置。
【請求項11】
上記歯面温度測定手段が、上記歯面の温度を非接触で測定することを特徴とする、請求項9又は10記載の歯車の歯当り評価装置。
【請求項12】
上記歯面温度測定手段が、サーモグラフィで構成されていることを特徴とする、請求項11記載の歯車の歯当り評価装置。
【請求項13】
上記潤滑油の温度は、上記歯車回転手段により上記一対の歯車が回転される前は室温と等温に保持されることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載の歯車の歯当り評価装置。
【請求項14】
上記一対の歯車の温度は、上記歯車回転手段により上記一対の歯車が回転される前は室温と等温に保持されることを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載の歯車の歯当り評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−263978(P2007−263978A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157916(P2007−157916)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【分割の表示】特願2004−28560(P2004−28560)の分割
【原出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2003年9月2日 日本機械学会東海支部主催の「東海支部三重地区講演会」において文書をもって発表
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】