説明

歯車伝動装置

【課題】外歯歯車及び内歯ピンの間でエッジ応力が生じるのを抑制しつつ、コストアップを抑制できる歯車伝動装置を提供する。
【解決手段】第1外歯14aのいずれか一方の端部には、その歯面が軸方向の端部に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された第1加工部142が設けられている。第2外歯16aのいずれか一方の端部には、その歯面が軸方向の端部に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された第2加工部162が設けられている。各内歯ピン3には、第1加工部142が設けられていない側の第1外歯14aの端部に対して径方向に対向する部位に第1縮径部31が設けられ、第2加工部162が設けられていない側の第2外歯16aの端部に対して径方向に対向する部位に第2縮径部32が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車伝動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内歯歯車の内歯ピンに噛み合う外歯歯車をクランク軸の偏心部の偏心回転に連動させて揺動回転させることにより入力回転から減速した出力回転を得る偏心揺動型の歯車伝動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の歯車伝動装置では、2枚の外歯歯車に噛み合う複数の内歯ピンが設けられている。各内歯ピンは、第1噛合部と第2噛合部とこれらを連結する連結部とを有している。各噛合部の軸方向両端部は、クラウニング加工されている(特許文献1の図3、図6)。これにより、各外歯歯車の歯面と内歯ピンの各噛合部における軸方向両端部の外周面との間で生じるエッジ応力が低減される。また、内歯ピンだけでなく、各外歯歯車の両端部の歯面もクラウニング加工されている(特許文献1の図7)。これにより、各外歯歯車の両端部の歯面と内歯ピンの各噛合部の軸方向両端部の外周面との間で生じるエッジ応力がさらに低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−293650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図3及び図6に記載の歯車伝動装置では、各内歯ピンにおける第1噛合部の両端部をクラウニング加工し、第2噛合部の両端部をクラウニング加工し、これらの噛合部が連結部によって連結されるので、コストアップにつながるという問題がある。これに加えて、特許文献1の図7に示すように、さらに、各外歯歯車の両端部をクラウニング加工する場合には、クラウニング加工に要する工数がさらに増加してコストアップする。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、外歯歯車及び内歯ピンの間でエッジ応力が生じるのを抑制しつつ、コストアップを抑制できる歯車伝動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る歯車伝動装置は、軸方向に延びる複数のピン溝が周方向に所定間隔で設けられた内周面を有する外筒と、前記複数のピン溝のそれぞれに配置された複数の内歯ピンと、前記外筒内において軸回りに回転可能に設けられ、互いに所定の位相差をもって前記軸方向に並んで配置された第1偏心部と第2偏心部を有するクランク軸と、前記第1偏心部に取り付けられ、第1外歯が設けられた外周面を有し、前記複数の内歯ピンの一部に前記第1外歯が噛み合いながら前記第1偏心部の偏心回転に連動して揺動回転する第1外歯歯車と、前記第2偏心部に取り付けられ、第2外歯が設けられた外周面を有し、前記複数の内歯ピンの一部に前記第2外歯が噛み合いながら前記第2偏心部の偏心回転に連動して揺動回転する第2外歯歯車と、前記第1外歯歯車及び前記第2外歯歯車の揺動回転が伝達されることにより前記外筒に対して相対回転するキャリアと、を備えている。
【0008】
前記第1外歯には、前記軸方向のいずれか一方の端部の歯面が軸方向の端部に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された第1加工部が設けられており、前記第2外歯には、前記軸方向のいずれか一方の端部の歯面が軸方向の端部に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された第2加工部が設けられている。
【0009】
各内歯ピンには、前記第1加工部が設けられていない側の前記第1外歯の端部に対して径方向に対向する部位が軸方向に向かうにつれて縮径するように加工された第1縮径部と、前記第2加工部が設けられていない側の前記第2外歯の端部に対して径方向に対向する部位が軸方向に向かうにつれて縮径するように加工された第2縮径部とが設けられている。
【0010】
この構成では、第1外歯のいずれか一方の端部に第1加工部が設けられ、第2外歯のいずれか一方の端部に第2加工部が設けられている。そして、各内歯ピンには、第1加工部が設けられていない端部及び第2加工部が設けられていない端部に対して径方向に対向する部位に第1縮径部及び第2縮径部がそれぞれ設けられている。すなわち、第1外歯及び第2外歯と各内歯ピンとの間にエッジ応力が生じるのを抑制するために、第1外歯、第2外歯及び各内歯ピンのそれぞれにおいて、必要最小限の部位に加工が施されている。これにより、第1外歯及び第2外歯と各内歯ピンとの間にエッジ応力が生じるのを抑制しつつ、加工コストの増大を抑制することができる。
【0011】
前記歯車伝動装置において、前記第1加工部は、前記第1外歯における前記第2外歯側の端部に設けられ、前記第2加工部は、前記第2外歯における前記第1外歯側の端部に設けられ、前記第1縮径部は、各内歯ピンにおける前記軸方向の一端部に設けられ、前記第2縮径部は、各内歯ピンにおける前記軸方向の他端部に設けられているのが好ましい。
【0012】
この構成では、各内歯ピンの軸方向の両端部に縮径部が設けられている。この構成では、内歯ピンの軸方向中間部に縮径部を設ける場合に比べて加工がより簡単になるので、加工コストをより効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の歯車伝動装置によれば、外歯歯車及び内歯ピンの間でエッジ応力が生じるのを抑制しつつ、コストアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る歯車伝動装置を示す断面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1に示す歯車伝動装置における内歯ピンと外歯歯車との噛み合い部分近傍の構造を示す拡大断面図である。
【図4】図1に示す歯車伝動装置における内歯ピンと外歯歯車との噛み合い部分近傍の構造を説明するために一部を破断させた拡大斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る歯車伝動装置を示しており、内歯ピンと外歯歯車との噛み合い部分近傍の構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る歯車伝動装置1について図面を参照して詳細に説明する。歯車伝動装置1は、例えばロボットの旋回胴や腕関節等の旋回部、各種工作機械の旋回部等に減速機として適用されるものである。
【0016】
<第1実施形態>
(歯車伝動装置の全体構造)
第1実施形態に係る歯車伝動装置1は、クランク軸10の第1偏心部10aに連動して第1外歯歯車14を揺動回転させるとともにクランク軸10の第2偏心部10bに連動して第2外歯歯車16を揺動回転させることにより入力回転から減速した出力回転を得るように構成されている。
【0017】
図1に示すように、歯車伝動装置1は、外筒2と、多数の内歯ピン3と、キャリア4と、入力軸8と、複数(例えば3つ)のクランク軸10と、第1外歯歯車14と、第2外歯歯車16と、複数(例えば3つ)の伝達歯車20とを備えている。
【0018】
図2に示すように、外筒2は、歯車伝動装置1の外面を構成するものであり、略円筒形状を有している。外筒2の内周面には、多数のピン溝2bが形成されている。各ピン溝2bは、外筒2の軸方向に延びているとともに、軸方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。これらのピン溝2bは、外筒2の内周面に周方向に等間隔で並んでいる。
【0019】
各内歯ピン3は、対応するピン溝2bに取り付けられている。具体的に、各内歯ピン3は、対応するピン溝2bにそれぞれ嵌め込まれており、外筒2の軸方向に延びる姿勢で配置されている。これにより、多数の内歯ピン3は、外筒2の周方向に沿って等間隔で並んでいる。ピン溝2bにおいて、各内歯ピン3はその軸回りに回転可能である。これらの内歯ピン3には、第1外歯歯車14及び第2外歯歯車16が噛み合う。内歯ピン3の詳細な構造については後述する。
【0020】
図1に示すように、キャリア4は、外筒2と同軸上に配置された状態でその外筒2内に収容されている。キャリア4は、外筒2に対して同じ軸回りに相対回転する。具体的に、キャリア4は、軸方向に互いに離間して設けられた一対のキャリア軸受6によって外筒2に対して相対回転可能に支持されている。キャリア4は、基部4aと、端板部4bと、複数(例えば3つ)のシャフト部4cとを備えている。
【0021】
基部4aは、外筒2内において軸方向の一端部近傍に配置されている。この基部4aの径方向中央部には円形の貫通孔4dが設けられている。貫通孔4dの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔4e(以下、単に取付孔4eという)が周方向に等間隔で設けられている。
【0022】
端板部4bは、基部4aに対して軸方向に離間して設けられており、外筒2内において軸方向の他端部近傍に配置されている。端板部4bの径方向中央部には貫通孔4fが設けられている。貫通孔4fの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔4g(以下、単に取付孔4gという)が基部4aの複数の取付孔4eと対応する位置に設けられている。外筒2内には、端板部4bと基部4aの互いに対向する双方の内面と、外筒2の内周面とで囲まれた閉空間が形成されている。
【0023】
3つのシャフト部4cは、基部4aに一体的に設けられており、基部4aから端板部4b側へ直線的に延びている。この3つのシャフト部4cは、周方向に等間隔で配設されている(図2参照)。各シャフト部4cは、端板部4bにボルト4hによって締結されている(図1参照)。これにより、基部4a、シャフト部4c及び端板部4bが一体化されている。
【0024】
入力軸8は、図略の駆動モータによって回転が入力される入力部として機能するものである。入力軸8は、端板部4bの貫通孔4f及び前記基部4aの貫通孔4dに挿入されている。入力軸8は、その軸心が外筒2及びキャリア4の軸心と一致するように配置されており、その軸回りに回転する。入力軸8の先端部の外周面には入力ギア8aが設けられている。
【0025】
3つのクランク軸10は、外筒2内において入力軸8の周囲に等間隔で配置されている(図2参照)。各クランク軸10は、対応する基部4aの取付孔4eと端板部4bの取付孔4gにそれぞれ取り付けられている(図1参照)。具体的に、各クランク軸10の軸方向の一端から所定長さだけ軸方向内側の部分は、基部4aの取付孔4e内に第1クランク軸受12aを介して取り付けられている。一方、各クランク軸10の軸方向の他端部は、端板部4bの取付孔4g内に第2クランク軸受12bを介して取り付けられている。各クランク軸10は、両クランク軸受12a,12bによりキャリア4に対して軸回りに回転可能に支持されている。
【0026】
各クランク軸10は、両クランク軸受12a,12bによって支持された部分の間に軸方向に並んで配置された第1偏心部10aと第2偏心部10bとを有する。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれ円柱形状を有している。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれクランク軸10の軸心から所定の偏心量で偏心しており、互いに所定角度の位相差を有するように配置されている。また、クランク軸10の一端部、すなわち、基部4aの取付孔4e内に取り付けられる部分の軸方向外側の部位には、伝達歯車20が取り付けられる被嵌合部10cが設けられている。
【0027】
図1及び図2に示すように、第1外歯歯車14は、外筒2内の前記閉空間に配設されているとともに各クランク軸10の第1偏心部10aに第1ころ軸受18aを介して取り付けられている。第1外歯歯車14は、各クランク軸10が回転して第1偏心部10aが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0028】
第1外歯歯車14は、外筒2の内径よりも少し小さい大きさを有している。第1外歯歯車14は、第1外歯14aと、中央部貫通孔14bと、複数(例えば3つ)の第1偏心部挿通孔14cと、複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔14dとを有している。
【0029】
図2に示すように、中央部貫通孔14bは、第1外歯歯車14の径方向中央部に設けられている。中央部貫通孔14bには、入力軸8が遊びを持った状態で挿通されている。
【0030】
3つの第1偏心部挿通孔14cは、第1外歯歯車14において中央部貫通孔14bの周囲に周方向に等間隔で設けられている。各第1偏心部挿通孔14cには、第1ころ軸受18aが介装された状態で各クランク軸10の第1偏心部10aがそれぞれ挿通されている。
【0031】
3つのシャフト部挿通孔14dは、第1外歯歯車14において中央部貫通孔14bの周りに周方向に等間隔で設けられている。各シャフト部挿通孔14dは、周方向において、3つの第1偏心部挿通孔14c間の位置にそれぞれ配設されている。各シャフト部挿通孔14dには、対応するシャフト部4cが遊びを持った状態で挿通されている。第1外歯14aの詳細な構造については後述する。
【0032】
第2外歯歯車16は、外筒2内の前記閉空間に配設されているとともに各クランク軸10の第2偏心部10bに第2ころ軸受18bを介して取り付けられている。第1外歯歯車14とこの第2外歯歯車16は、第1偏心部10aと第2偏心部10bの配置に対応して軸方向に並んで設けられている。第2外歯歯車16は、各クランク軸10が回転して第2偏心部10bが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0033】
第2外歯歯車16は、外筒2の内径よりも少し小さい大きさを有している。第2外歯歯車16は、第2外歯16a、中央部貫通孔16b、複数(例えば3つ)の第2偏心部挿通孔16c及び複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔16dを有している。これらは、第1外歯歯車14の第1外歯14a、中央部貫通孔14b、複数の第1偏心部挿通孔14c及び複数のシャフト部挿通孔14dと同様の構造を有している。各第2偏心部挿通孔16cには、第2ころ軸受18bが介装された状態でクランク軸10の第2偏心部10bが挿通されている。第2外歯16aの詳細な構造については後述する。
【0034】
各伝達歯車20は、入力ギア8aの回転を対応するクランク軸10に伝達するものである。各伝達歯車20は、対応するクランク軸10の一端部に設けられた被嵌合部10cにそれぞれ外嵌されている。各伝達歯車20は、クランク軸10の回転軸と同じ軸回りにこのクランク軸10と一体的に回転する。各伝達歯車20は、入力ギア8aと噛み合う外歯20aを有している。
【0035】
(内歯ピンの構造)
図2〜図4に示すように、各内歯ピン3は、略円柱形状を有している。各内歯ピン3は、単一の棒状の金属材を切削及び/又は研磨することによって形成されている。本実施形態では、各内歯ピン3の外周面に切削及び/又は研磨によるクラウニング加工が施されることにより、各内歯ピン3の軸方向両端部は、これらの間の部位に比べて小径となっている。具体的には次の通りである。
【0036】
各内歯ピン3は、その軸方向の一方の端部に位置する第1縮径部31と、軸方向の他方の端部に位置する第2縮径部32と、これらの縮径部31,32の間に位置する柱状部(中間部)33とを有する。各内歯ピン3において、第1縮径部31、柱状部33及び第2縮径部32は、この順番で軸方向に並んで一体的に形成されている。第1縮径部31、第2縮径部32及び柱状部33は、軸方向に直交する断面が円形である。
【0037】
柱状部33は、円柱形状を有しており、その外径は、軸方向において一定である。第1縮径部31は、テーパー形状を有しており、その外径は、軸方向の一方の端縁に向かうにつれて次第に小さくなっている。第2縮径部32は、テーパー形状を有しており、その外径は、軸方向の他方の端縁に向かうにつれて次第に小さくなっている。したがって、各内歯ピン3では、柱状部33の外径が最も大きい。第1縮径部31及び第2縮径部32の外周面は、外側に凸の湾曲面であり、それぞれの端縁に向かうにつれて滑らかに湾曲している。
【0038】
柱状部33は、第1外歯歯車14及び第2外歯歯車16が噛み合う部分である。具体的に、図3及び図4に示すように、柱状部33における軸方向の中央付近から第1縮径部31側の部位は、第1外歯歯車14の第1外歯14aに対して径方向に対向する位置に設けられており、第1外歯14aが噛み合う。一方、柱状部33における軸方向の中央付近から第2縮径部32側の部位は、第2外歯歯車16の第2外歯16aに対して径方向に対向する位置に設けられており、第2外歯16aが噛み合う。
【0039】
第1縮径部31は、第1外歯14aの軸方向外側端部に対して径方向に対向する位置に設けられている。第2縮径部32は、第2外歯16aの軸方向外側端部に対して径方向に対向する位置に設けられている。
【0040】
(外歯の構造)
図2に示すように、第1外歯14aは、第1外歯歯車14の外周面に設けられている。第1外歯14aの歯面は、軸方向に直交する断面において、周方向全体にわたって滑らかに連続する波形状を有している。すなわち、第1外歯14aの歯面は、径方向外側に位置する山部と、径方向内側に位置する谷部とが周方向に沿って交互に並んでいる。
【0041】
各山部及び各谷部は、軸方向に直交する断面において略円弧形状を有している。複数の山部と複数の谷部とは、全体として滑らかな曲面を形成している。ここで、互いに隣り合う山部と谷部の境界は、第1外歯歯車14の径方向において、最も外側に位置する山部の先端(峰)と、最も内側に位置する谷部の底との真ん中に位置する歯面上の部位である。
【0042】
第1外歯14aの歯数は、内歯ピン3の数よりも若干少なく設定されている。本実施形態では、第1外歯14aの歯数は、内歯ピン3の数よりも1つ少なく設定されている。第2外歯16aは、上述した第1外歯14aと同様の構造を有している。
【0043】
図3及び図4に示すように、第1外歯14aは、内歯ピン3における柱状部33の第1縮径部31側の部位に噛み合う。第2外歯16aは、内歯ピン3における柱状部33の第2縮径部32側の部位に噛み合う。第1外歯14aは、第1外歯本体部141と、第1加工部142とを有している。第2外歯16aは、第2外歯本体部161と、第2加工部162とを有している。
【0044】
第1外歯本体部141は、その歯面が軸方向に対して平行な部位である。第1外歯本体部141は、軸方向において、第1加工部142との境界部分から第1加工部142とは反対側の歯面の端縁まで延びている。第1外歯本体部141は、内歯ピン3の第1縮径部31と径方向に対向しているとともに、内歯ピン3の柱状部33の一部と径方向に対向している。軸方向において、第1外歯本体部141は、内歯ピン3の第1縮径部31よりも第2外歯16a側に位置している。第1外歯本体部141の軸方向の長さは、第1加工部142の軸方向の長さよりも大きい。
【0045】
第2外歯本体部161は、その歯面が軸方向に対して平行な部位である。第2外歯本体部161は、軸方向において、第2加工部162との境界部分から第2加工部162とは反対側の歯面の端縁まで延びている。第2外歯本体部161は、内歯ピン3の第2縮径部32と径方向に対向しているとともに、内歯ピン3の柱状部33の一部と径方向に対向している。軸方向において、第2外歯本体部161は、内歯ピン3の第2縮径部32よりも第1外歯14a側に位置している。第2外歯本体部161の軸方向の長さは、第2加工部162の軸方向の長さよりも大きい。
【0046】
第1加工部142と第2加工部162は、軸方向において互いに隣り合う第1外歯14aの内側端部と第2外歯16aの内側端部にそれぞれ設けられている。すなわち、第1加工部142は、第1外歯14aにおける軸方向の両端部のうちの第2外歯16a側の端部に設けられている。第2加工部162は、第2外歯16aにおける軸方向の両端部のうちの第1外歯14a側の端部に設けられている。
【0047】
第1加工部142は、その歯面が軸方向の第2外歯16a側に向かうにつれて径方向内側に位置するように湾曲形状に加工された部位である。本実施形態では、第1加工部142は、第1外歯14aの周方向の全体にわたって設けられている。すなわち、第1加工部142は、周方向に並ぶ全ての山部と谷部に設けられている。第1加工部142は、内歯ピン3の柱状部33の一部に対して径方向に対向している。
【0048】
第2加工部162は、その歯面が軸方向の第1外歯14a側に向かうにつれて径方向内側に位置するように湾曲形状に加工された部位である。本実施形態では、第2加工部162は、第2外歯16aの周方向の全体にわたって設けられている。すなわち、第2加工部162は、周方向に並ぶ全ての山部と谷部に設けられている。第2加工部162は、内歯ピン3の柱状部33の一部に対して径方向に対向している。
【0049】
第1加工部142及び第2加工部162において、山部における加工深さと谷部における加工深さは、同程度であってもよいが、これに限定されない。例えば、山部における加工深さが谷部における加工深さよりも大きくてもよい。
【0050】
なお、第1外歯14aにおける山部の先端(峰)は、第1外歯歯車14の揺動回転時において、内歯ピン3への接触が抑制されるように、径方向外側への突出量が調整されるのが好ましい。第2外歯16aにおける山部の先端についても同様である。
【0051】
(動作)
次に、歯車伝動装置1の動作について説明する。まず、例えば図略のモータの駆動によって歯車伝動装置1の入力軸8に回転が入力される。これにより、入力軸8とともに入力ギア8aが回転する。この入力ギア8aの回転は、各伝達歯車20を介して各クランク軸10に伝達される。
【0052】
そして、各クランク軸10が回転するのに伴って各クランク軸10の第1偏心部10a及び第2偏心部10bが偏心回転する。これにより、第1偏心部10aの偏心回転に連動して第1外歯歯車14が内歯ピン3の柱状部33における第1縮径部31側の部位に噛み合いながら揺動回転するとともに、第2偏心部10bの偏心回転に連動して第2外歯歯車16が内歯ピン3の柱状部33における第2縮径部32側の部位に噛み合いながら揺動回転する。第1外歯歯車14及び第2外歯歯車16の揺動回転は、各クランク軸10を通じてキャリア4に伝達され、キャリア4全体が前記入力回転から減速された回転数で外筒2に対して相対回転する。
【0053】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る歯車伝動装置1を示しており、内歯ピン3と外歯歯車14,16との噛み合い部分近傍の構造を示す拡大断面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図5に示すように、第2実施形態では、各内歯ピン3は、その軸方向の中央付近に位置する第1縮径部34及び第2縮径部35と、第1縮径部34よりも軸方向の一方の外側端部に位置する第1柱状部36と、第2縮径部35よりも軸方向の他方の外側端部に位置する第2柱状部37とを有する。
【0055】
第1柱状部36は、円柱形状を有しており、その外径は、軸方向において一定である。第2柱状部37は、円柱形状を有しており、その外径は、軸方向において一定である。第1縮径部34は、第1柱状部36との境界から軸方向の第2縮径部35側に向かうにつれて縮径するように加工されている。第2縮径部35は、第2柱状部37との境界から軸方向の第1縮径部34側に向かうにつれて縮径するように加工されている。第1縮径部34及び第2縮径部35の外周面は、外側に凸の湾曲面であり、互いの境界部分に向かうにつれて滑らかに湾曲している。各内歯ピン3の外径は、第1縮径部34と第2縮径部35との境界部分が最も小さい。
【0056】
第1加工部142は、第1外歯14aにおける軸方向の一方の外側に位置する外側端部に設けられている。第1加工部142は、その歯面が軸方向の一方の外側に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された部位である。第2加工部162は、第2外歯16aにおける軸方向の他方の外側に位置する外側端部に設けられている。第2加工部162は、その歯面が軸方向の他方の外側に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された部位である。
【0057】
第1縮径部34と第1加工部142及び第2加工部162とは、径方向に対向していない。第2縮径部35と第1加工部142及び第2加工部162とは、径方向に対向していない。第1縮径部34は、第1外歯14aのうち第1加工部142が設けられていない端部(軸方向の内側端部)に対して径方向に対向している。第2縮径部35は、第2外歯16aのうち第2加工部162が設けられていない端部(軸方向の内側端部)に対して径方向に対向している。
【0058】
以上説明したように、第1及び第2本実施形態では、第1外歯14aにはいずれか一方の端部に第1加工部142が設けられ、第2外歯16aにはいずれか一方の端部に第2加工部162が設けられている。そして、各内歯ピン3には、第1加工部142が設けられていない端部及び第2加工部162が設けられていない端部に対して径方向に対向する部位に第1縮径部31(34)及び第2縮径部32(35)がそれぞれ設けられている。すなわち、第1外歯14a及び第2外歯16aと各内歯ピン3との間にエッジ応力が生じるのを抑制するために、第1外歯14a、第2外歯16a及び各内歯ピン3のそれぞれにおいて、必要最小限の部位に加工が施されている。これにより、第1外歯14a及び第2外歯16aと各内歯ピン3との間にエッジ応力が生じるのを抑制しつつ、加工コストの増大を抑制することができる。
【0059】
また、第1及び第2実施形態では、特許文献1の図7に記載されている歯車伝動装置と比較して、加工箇所が半減するという利点の他、加工寸法管理が簡易になるという利点がある。具体的には次の通りである。
【0060】
クラウニング加工の効果を得るためには歯すじ方向の修整量(歯すじ方向の膨らみ量あるいは逃がし量)が公差内に入っている必要がある。特許文献1の図7に記載されている歯車伝動装置では、内歯ピンと外歯には、径方向に対向する位置にクラウニング加工が施されている。このように径方向に互いに対向する加工部位を有する場合には、各加工部位には、上記修整量の公差の1/2の加工公差が求められる。このような修整量の公差の1/2の加工公差での加工が不可能な場合、クラウニング量の公差域を広げる必要があり、クラウニングの効果を減少させてしまう場合がある。
【0061】
一方、第1及び第2実施形態では、内歯ピンと外歯には、径方向に対向する位置に加工は施されていない。そのため、内歯ピンにおける第1縮径部31(34)や第2縮径部32(35)の加工公差は、上記修整量の公差でよい。また、加工公差が広くなるため、クラウニング量の公差域を広げる必要もない。このように、第1及び第2実施形態では、特許文献1の図7に記載されている歯車伝動装置に比べて加工の工程管理が簡易になるという利点がある。
【0062】
第1実施形態では、第1加工部142は、第1外歯14aにおける軸方向両端部のうちの第2外歯16a側の端部に設けられ、第2加工部162は、第2外歯16aにおける軸方向両端部のうちの第1外歯14a側の端部に設けられ、第1縮径部31は、各内歯ピン3における軸方向の一端部に設けられ、第2縮径部32は、各内歯ピン3における軸方向の他端部に設けられている。
【0063】
この構成では、各内歯ピン3の軸方向の両端部に縮径部31,32を設けており、第2実施形態のように軸方向中間部に縮径部34,35を設ける場合に比べて加工がより簡単になる。これにより、加工コストをより効果的に低減することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0065】
例えば、前記実施形態では、第1縮径部及び第2縮径部の外周面(歯面)が外側に凸の湾曲形状である場合を例示したが、これに限定されない。第1縮径部及び第2縮径部の外周面は、例えば円錐台形状などであってもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、第1加工部142及び第2加工部162の歯面が軸方向端部に向かうにつれて径方向内側に位置するように湾曲形状に加工された部位である場合を例示したが、これに限定されない。第1加工部142及び第2加工部162の歯面は、例えば図3に示す軸方向に平行な断面において、軸方向に対して例えば鋭角をなす角度で傾斜した傾斜面であってもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、入力軸8が径方向のセンターに設けられている場合を例示したが、これに限定されない。入力軸8は、センターから径方向にずれた位置に設けられていてもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、複数(例えば3つ)のクランク軸が設けられている場合を例示したが、例えば1つのクランク軸が径方向のセンターに設けられた形態であってもよい。この場合、貫通孔4d、貫通孔4f、貫通孔14b、貫通孔16bに筒体が嵌め込まれた構成を採用することもできる。この筒体内には例えばケーブルなどが配置される。
【0069】
前記実施形態においては、キャリアは外筒に対して相対回転する。すなわち、キャリアを固定して外筒がキャリアに対して相対的に回転する形態であってもよく、外筒を固定してキャリアが外筒に対して相対的に回転する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 歯車伝動装置
2 外筒
2b ピン溝
3 内歯ピン
31,34 第1縮径部
32,35 第2縮径部
33 柱状部
36 第1柱状部
37 第2柱状部
4 キャリア
10 クランク軸
10a 第1偏心部
10b 第2偏心部
14 第1外歯歯車
14a 第1外歯
141 第1外歯本体部
142 第1加工部
16 第2外歯歯車
16a 第2外歯
161 第2外歯本体部
162 第2加工部
20 伝達歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる複数のピン溝が周方向に所定間隔で設けられた内周面を有する外筒と、
前記複数のピン溝のそれぞれに配置された内歯ピンと、
前記外筒内において軸回りに回転可能に設けられ、互いに所定の位相差をもって前記軸方向に並んで配置された第1偏心部と第2偏心部を有するクランク軸と、
前記第1偏心部に取り付けられ、第1外歯が設けられた外周面を有し、前記複数の内歯ピンの一部に前記第1外歯が噛み合いながら前記第1偏心部の偏心回転に連動して揺動回転する第1外歯歯車と、
前記第2偏心部に取り付けられ、第2外歯が設けられた外周面を有し、前記複数の内歯ピンの一部に前記第2外歯が噛み合いながら前記第2偏心部の偏心回転に連動して揺動回転する第2外歯歯車と、
前記第1外歯歯車及び前記第2外歯歯車の揺動回転が伝達されることにより前記外筒に対して相対回転するキャリアと、を備え、
前記第1外歯における前記軸方向のいずれか一方の端部には、その歯面が軸方向の端部に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された第1加工部が設けられており、
前記第2外歯における前記軸方向のいずれか一方の端部には、その歯面が軸方向の端部に向かうにつれて径方向内側に位置するように加工された第2加工部が設けられており、
各内歯ピンには、前記第1加工部が設けられていない側の前記第1外歯の端部に対して径方向に対向する部位が軸方向に向かうにつれて縮径するように加工された第1縮径部と、前記第2加工部が設けられていない側の前記第2外歯の端部に対して径方向に対向する部位が軸方向に向かうにつれて縮径するように加工された第2縮径部とが設けられている、歯車伝動装置。
【請求項2】
前記第1加工部は、前記第1外歯における前記第2外歯側の端部に設けられ、前記第2加工部は、前記第2外歯における前記第1外歯側の端部に設けられ、前記第1縮径部は、各内歯ピンにおける前記軸方向の一端部に設けられ、前記第2縮径部は、各内歯ピンにおける前記軸方向の他端部に設けられている、請求項1に記載の歯車伝動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−92179(P2013−92179A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233700(P2011−233700)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】