説明

残光性発光剤を含む筆記用材料

【課題】暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできる長残光性発光剤を含む筆記用材料の提供。
【解決手段】本発明の長残光性発光剤を含む筆記用材料は、筆記用材料に長残光性発光剤を含有することを特徴とするもので、この筆記用材料は、ボールペン、マジックペン、鉛筆、白墨、墨汁等に使用される。前記の長残光性発光剤としては、Eu、DY元素を含むアルミン酸塩系長残光性発光剤、ホウ素を含むアルミン酸塩系長残光性発光剤等が用いられる。これらの長残光性発光剤の添加割合は、インキ材料100重量部に対して1〜80重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長残光性発光剤を含む筆記用材料に関するものであり、更に詳しくは夜間の暗い場所でも記載した文字や略図等が見える長残光性発光剤を含む筆記用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間工事や暗い場所などで文字や絵(略図)を書く場合には、ライトをつけて明るくし工事に必要な設計図や設計仕様をみて工事を進めるが、ライトの光が届かないところで、工事現場のメモを取ったり、見たりする場合がしばしばあり、そのようなときには、明るい場所へ戻ってメモをとるかまたは懐中電灯で照らしながら一般に用いられているボール弁やマジックペン等の筆記具で文字を記入したり、見たりすることが行われている。
【0003】
このような中で、最近特殊な用途に使用されるインキ組成物が開発されている。具体的には、可視光領域で実質的に不可視で、紫外線により発光するユーロピウムを含む色素インキ組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また発光性を有するインクジェット印刷用インキ組成物(例えば、特許文献2参照)や可視光下では実質的に無色でありながら、紫外域波長に吸収を有し、紫外光で励起すると、赤色付近の波長に強い発光を呈する赤色発光性インキ組成物(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2000−144029号公報(段落0005)
【特許文献2】特開2000−160083号公報(段落0006)
【特許文献3】特開2007−277404号公報(段落0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の発光性インキ組成物は、紫外線を照射すると発光するもので、発光持続性を有するものではなく、暗い場所で書かれた文字やメモなどを紫外線ライトの照射時しか発光の持続性がなく、暗い場所で長時間発光が持続するものではない。そこで、本発明者は、暗い場所で書かれた文字や略図などを見た場合、それらがよく見ることができ、しかも時間が経っても十分視ることができ、更に必要に応じて書き込んだ文字等が見えるばかりでなく継続して見ることができる筆記具用インキ材料について種々検討したところ、筆記用材料と残光性発光剤とを組み合わせることによって暗い場所でも書かれた文字や略図等がライトなしでも十分視たり、書いたりすることができることを見出し、この知見に基づいてインキに残光性発光剤を含有させた筆記具用インキ材料を完成した。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、工事の現場のように暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできる長残光性発光剤を含む筆記用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)筆記用材料に長残光性発光剤を含有することを特徴とする長残光性発光剤を含む筆記用材料。
(2)筆記用材料がボールペン用であることを特徴とする前記(1)に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
(3)筆記用材料がマジックペン用であることを特徴とする前記(1)に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
(4)筆記用材料が鉛筆用であることを特徴とする前記(1)に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
(5)筆記用材料が白墨用であることを特徴とする前記(1)に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
(6)筆記用材料が墨汁用であることを特徴とする前記(1)に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の前記(1)に記載の筆記具は、筆記用材料に長残光性発光剤を含有することにより、工事の現場のように暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできるという優れた効果を奏するものである。
【0009】
前記(1)の発明において、筆記用材料がボールペン用であることにより、工事の現場のように暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできるという効果に加えて使用に際し通常のボールペンと同様に使用することができるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
前記(1)の発明において、筆記用材料がマジックペン用であることにより、工事の現場のように暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできるという効果に加えて使用に際し通常のマジックペンと同様に使用することができるという優れた効果を奏するものである。
【0011】
前記(1)の発明において、筆記用材料が鉛筆用であることにより、工事の現場のように暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできるという効果に加えて使用に際し通常の鉛筆と同様に使用することができるという優れた効果を奏するものである。
【0012】
前記(1)の発明において、筆記用材料が白墨用であることにより、工事の現場のように暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできるという効果に加えて使用に際し通常の白墨と同様に使用することができるという優れた効果を奏するものである。
【0013】
前記(1)の発明において、筆記用材料が墨汁用であることにより、暗い場所でもはっきりと視える文字、メモや略図等が描けると共に描いた文字、メモや略図等を時間が経っても視ることできるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する具体的事例に限定されるものではない。
【0015】
本発明の長残光性発光剤を含む筆記用材料は、筆記用材料に長残光性発光剤を含有することを特徴とするものであり、ここで用いられる筆記用材料としては、ボールペン、マジックペン等に使用される筆記具用インキ材料を用いることができる。筆記用材料として、鉛筆、白墨、墨汁等には、通常用いられる鉛筆、白墨、墨汁に前記長残光性発光剤を添加して用いることができる。ボールペン用筆記用材料には、主に、水性インキ、油性インキの2種類があり、これらのいずれにも長残光性発光剤を添加してインキ材料を製造する。マジックペンには、汎用性マジックペン、蛍光ペン等があり、更に水性インキ、油性インキがあり、これらのいずれにも長残光性発光剤を添加してインキ材料を製造することができる。筆記用材料である鉛筆や白墨は、その芯の材料に長残光性発光剤を混合して芯を製造することができる。更に筆記用材料である墨汁の場合には、墨汁に長残光性発光剤を添加して墨汁を製造する。またこれらのボールペン、マジックペン、鉛筆、白墨、墨汁等の筆記用材料は、通常用いられる鉛筆、白墨、墨汁等であってよく、特に限定されるものではなく、一般に市販されているものでよい。
【0016】
本発明に用いられる長残光性発光剤としては、Eu、DY元素を含むアルミン酸塩系長残光性発光剤、ホウ素を含むアルミン酸塩系長残光性発光剤等が挙げられるが、これに限らず長残光性発光剤、であれば特に限定されることなく使用することができる。また長残光性発光剤は、別名、蓄光性蛍光体ともいう。
これらの長残光性発光剤は、市販されているので、これらのうち、適宜のものを選択して使用することができる。これらの長残光性発光剤の添加割合は、インキ材料100重量部に対して1〜80重量部であり、好ましくは5〜70重量部であり、更に好ましくは、10〜50重量部であり、もっとも好ましくは10〜30重量部である。長残光性発光剤の添加割合が、1重量部より少ないと、暗い場所で十分視認することができない。長残光性発光剤の添加割合が、80重量部を超えてもそれ以上発光特性が向上することはなく、経済的には好ましくない。またインキ材料としては、一例を挙げれば、スピンドル油、ヒマシ油、ジメチルシリコーンオイル等の基油、顔料、湿潤剤、pH調整剤、潤滑剤を含むものからなる。鉛筆の芯材料には、黒鉛、ピッチを含む芯材料がある。更にマーカー用インキ材料には、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ等の顔料を含む溶液分散物からなる。更にチョーク(白墨)やクレヨンは、市販のものに前記長残光性発光剤を添加して均一混合してそれぞれの用途に使用される。具体的には、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、塩化ビニル樹脂等の結合剤、タルク、炭酸カルシウム等の固形物質、パラフィンワックス、蜜ロウ等のワックス等の成分からなる。これらに染料、顔料等の着色剤を加えてもよい。これらのインキ材料は、ボールペン、マジックペン(マーカーを含む)、チョーク(クレヨウンを含む)、鉛筆、墨汁等の筆記具に用いられる。
【実施例1】
【0017】
黒色油溶性染料 5.0重量部
オレイン酸 0.4重量部
ベンジルアルコール 2.14重量部
フェニルセロソルブ 8.6重量部
長残光性発光剤(ピカリコPC−10、ケミテック(株)製)
3.0重量部
【0018】
上記成分を均一に混合してポールペン用油性インキ材料を作製した。このインキ材料をボ−ルペンのインキ管に充填した。得られたボールペンで描いた設計図を作成し、道路工事現場でしかも暗い場所で設計図を見たところ、鮮明な状態で設計図を見ることができた。更にその設計図に書き込みを行ったところ、書き込んだ文字や線図をはっきりと見ることができた。更に水で濡らししても文字や線は、にじむことはなかった。
【実施例2】
【0019】
黒色顔料水分散物(17%) 7.0重量部
グリセリン 4.0重量部
トリエタノールアミン 0.16重量部
ポリエオキシエチレンメチルエーテル 0.2重量部
長残光性発光剤(ピカリコPC−10、ケミテック(株)製)
3.0重量部
水 55.5重量部
【0020】
上記の成分を均一に混合してポールペン用水性インキ材料を作製した。このインキ材料をボ−ルペンのインキ管に充填した。得られたボールペンで描いた設計図を作成し、道路工事現場でしかも暗い場所で設計図を見たところ、鮮明な状態で設計図を見ることができた。更にその設計図に書き込みを行ったところ、書き込んだ文字や線図をはっきりと見ることができた。
【実施例3】
【0021】
黒鉛 40重量部
コールタールピッチ(軟化点180℃、平均分子量300)
40重量部
長残光性発光剤(ピカリコPC−10、ケミテック(株)製)
20重量部
【0022】
上記成分を加熱混練し、得られた混合物を加熱押出成形して直径1mmの芯素材を作製した。ついで、この芯素材を不活性気体中で加熱混練し、900℃で2時間保持した。得られた芯材で鉛筆を製造した。得られた鉛筆で描いたメモ帳の文字を暗い場所で見たところ、十分読み取れる文字を見ることができた。更にそのメモ帳に書き込みを行ったところ、書き込んだ文字や線図をはっきりと見ることができた。
【実施例4】
【0023】
ウォーターブルー3(C.I.45100) 5.0重量部
キサンタンガム 0.2重量部
グリセリン 5.0重量部
エチレングリコール 5.0重量部
フェノール 0.3重量部
長残光性発光剤(ピカリコPC−10、ケミテック(株)製)
20重量部
水 84.5重量部
【0024】
上記成分を混合し、均一な混合分散物を得た。目の粗い繊維製ペン体に、前記混合分散物を充填してマーキングペンを作製した。このマーキングペンでマークを記載したダンボール箱を暗い場所へ持って行き、マークを確認したところ、十分明るいマークを視認することができた。また暗い工事現場などで図面をみたところ、描かれた図を十分視認することができた。
【実施例5】
【0025】
タルク 10重量部
カルボキシメチルセルロース 50重量部
ステアリン酸 20重量部
パラフィンワックス 10重量部
長残光性発光剤(ピカリコPC−10、ケミテック(株)製)
10重量部
【0026】
上記成分を十分混練した後、得られた混合物を押出成形して薄緑色のチョークを作製した。このチョークは、暗い場所へ持っていくと蛍光を発し明るい緑色に見えた。また黒板を持って行き、暗い場所で黒板に文字や線を描いたところ、緑色に発光した文字や線をはっきりと見ることができた。クレヨンの製造もクレヨン素材にピカリコを添加した後、十分混練し、押出成形して作製した。同様に暗い場所でもはっきりと見ることができた。
【実施例6】
【0027】
市販の墨汁を購入した。
墨汁 60重量部
ステアリン酸 20重量部
長残光性発光剤(ピカリコPC−10、ケミテック(株)製)
20重量部
水 10重量部
【0028】
上記成分を十分混合し、均一な分散物の墨汁を得た。この墨汁でコート紙に文字を書き、暗い場所で見たところ、十分鮮明な文字を見ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の長残光性発光剤を含む筆記用材料は、文字や図面に書かれた筆記物が道路工事のような暗い場所で作業をする場合、いちいち明るい場所へ戻ってこなくてもその場で十分書かれた文字や図面を見ることができるので、作業効率が向上することからみて、極めて高い産業上の利用性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記用材料に長残光性発光剤を含有することを特徴とする長残光性発光剤を含む筆記用材料。
【請求項2】
筆記用材料がボールペン用であることを特徴とする請求項1に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
【請求項3】
筆記用材料がマジックペン用であることを特徴とする請求項1に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
【請求項4】
筆記用材料が鉛筆用であることを特徴とする請求項1に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
【請求項5】
筆記用材料が白墨用であることを特徴とする請求項1に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。
【請求項6】
筆記用材料が墨汁用であることを特徴とする請求項1に記載の長残光性発光剤を含む筆記用材料。

【公開番号】特開2011−162574(P2011−162574A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23081(P2010−23081)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(592014001)
【Fターム(参考)】