説明

残留モノマーの低減方法

【課題】重合生成物あるいはポリマーから残留モノマーを簡単な操作で効率よく低減できる方法を提供する。
【解決手段】残留モノマーの低減方法は、極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物の重合生成物から残留モノマーを低減する方法であって、前記モノマー混合物を重合に付した後、得られた重合生成物を、前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xで処理する工程Aを含む。極性反応基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーを製造する際に有用な残留モノマーの低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料や接着剤のベースとして用いられるポリマー中に残留モノマーが多く含まれていると、環境を汚染したり、人体に悪影響を及ぼすという問題が生じる。また、レジスト等の高機能性材料に用いられるポリマー中に残留モノマーが高い濃度で存在すると、所望する特性、機能が得られないという問題も生じる。
【0003】
従来、ポリマー中の残留モノマーを低減する方法としては、重合反応における重合率を高める方法、重合生成物から残留モノマーを蒸留により留去する方法、重合生成物から目的のポリマーを沈殿、再沈殿、晶析又は再結晶(以下、これらをまとめて「再沈」と称する場合がある)により分離する方法などが知られている(特許文献1〜3など)。ポリマーを再沈殿する方法は、ポリマーの純度を高める方法として繁用されるが、ポリマーが複数のモノマーの共重合体の場合には、モノマー間の極性の差が大きいと、再沈溶媒の選定が困難であり、適切な溶媒が見つからず、何度も再沈操作をしないと残留モノマーを完全に除去できない。また、生成ポリマーと極性の近似した残留モノマーが存在する場合も、適切な再沈溶媒がないことが多い。
【0004】
【特許文献1】特開平5−214107号公報
【特許文献2】特開2001−109153号公報
【特許文献3】特開2002−145955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、重合生成物あるいはポリマーから残留モノマーを簡単な操作で効率よく低減できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含むモノマー混合物の重合生成物を、前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xで処理すると、極性の反応性基を有する未反応モノマーが化合物Xと反応して極性が低下し、複数の未反応モノマーの極性が低極性側に揃うことになると共に、極性基を有する生成ポリマーの極性との差が拡がるので、ポリマーの再沈の際には、再沈溶媒の選定が容易になり、再沈回数も減らすことができ、残留モノマー含有量の極めて少ないポリマーを効率よく得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物の重合生成物から残留モノマーを低減する方法であって、前記モノマー混合物を重合に付した後、得られた重合生成物を、前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xで処理する工程Aを含む残留モノマーの低減方法を提供する。
【0008】
この残留モノマーの低減方法は、さらに、工程Aの後、生成したポリマーを沈殿、再沈殿、晶析又は再結晶により分離する工程Bを含んでいてもよい。
【0009】
前記極性反応性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基であるのが好ましい。前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基としては、ビニルエーテル基、ビニルスルフィド基、酸無水物基、ハロホルミル基、ハロスルホニル基、リン酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アルデヒド基、ハロゲン化シリル基、カルボジイミド基から選択される基であるのが好ましい。
【0010】
前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xの使用量は、重合生成物中に残存する極性の反応性基を有するモノマーに対して当量以下の量であるのが好ましい。
【0011】
極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物は、極性の反応性基を有するモノマーの1種又は2種以上と、極性の反応性基を有しないモノマーの1種又は2種以上からなるモノマー混合物であってもよい。
【0012】
前記残留モノマーの低減方法においては、モノマー混合物中の全モノマーの50重量%以上がアクリル系モノマーであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、極性の反応性基を有するモノマーの極性を反応性官能基を有する化合物と反応させることにより低下させ、未反応モノマーの極性を低極性側に揃えることができるので、各モノマー間の極性差が縮まるとともに、極性基を有するポリマーとの極性差が拡がる。そのため、ポリマーの再沈溶媒の選定が容易になるだけでなく、少ない再沈回数で、残留モノマー含有量の極めて少ない高純度のポリマーを効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の残留モノマーの低減方法は、極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物の重合生成物から残留モノマーを低減する方法であって、前記モノマー混合物を重合に付した後、得られた重合生成物を、前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xで処理する工程Aを含むものである。
【0015】
[極性の反応性基を有するモノマー]
極性の反応性基を有するモノマーは、付加重合等によるポリマー等の調製において、側鎖の修飾により所望の機能を付与する構造単位を形成するためのモノマー、あるいは架橋構造を形成するためのモノマーとして用いられる。また、脱水縮合等の縮合反応によりポリマーを合成する際のモノマーとして用いられる。さらに、レジスト等の分野においては、溶媒に対する溶解性を高めたり、基板に対する密着性を向上させる構造単位を形成するためのモノマーとしても用いられる。
【0016】
極性の反応性基を有するモノマーにおける極性の反応性基としては、ヘテロ原子と活性水素とを有する基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、アミノ基、シラノール基などが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基が好ましい。
【0017】
極性の反応性基を有するモノマーとしては、極性の反応性基と重合性基とを有する化合物であればよい。重合性基は、ラジカル重合性基、アニオン重合性基、カチオン重合性基、脱水縮合性を有する基等のいずれであってもよいが、ラジカル重合性基、アニオン重合性基、カチオン重合性基が好ましい。なお、脱水縮合等の縮合反応によりポリマーを合成する場合には、極性の反応性基自体が重合性基であってもよい。ラジカル重合性基を有する化合物としては、アクリル系モノマー、芳香族ビニル化合物(スチレン系モノマー)、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、オレフィン(環状オレフィンを含む)などが挙げられる。これらの中でもアクリル系モノマーが好ましい。
【0018】
極性の反応性基を有するモノマーの代表的な例として、例えば、下記式(1a)〜(1g)
【化1】

(式中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。A1は連結基を示す)
で表される化合物(不飽和カルボン酸又はその誘導体)が挙げられる。
【0019】
前記Raにおけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素原子などが含まれる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などが挙げられる。炭素数1〜6のハロゲン原子を有するアルキル基としては、前記炭素数1〜6のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換した基、例えば、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、2,2,3,3,3−テトラフルオロプロピル基などが挙げられる。Raとしては水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、中でも水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0020】
前記A1における連結基としては、2価の炭化水素基、2価の複素環式基、これらが2以上、直接、又はエーテル結合、チオエーテル結合、−NH−、−CO−、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレイド結合及び尿素結合から選択された少なくとも1つの結合を介して結合している2価の基などが挙げられる。
【0021】
2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基[アリレン(arylene)基]などが挙げられる。2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(炭素数1〜20のアルキレン基等);ビニレン、1−プロペニレン、3−メチル−2−ブテニレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基(炭素数2〜20のアルケニレン基等)などが挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基などのシクロアルキレン基;シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基;アダマンタンジイル、ノルボルナンジイル、イソボルナンジイル、トリシクロデカンジイル、テトラシクロデカンジイル基などの2価の橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,5−ナフチレン、2,6−ナフチレン、アントラニレン基などが挙げられる。
【0022】
2価の複素環式基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を1〜4個含む芳香族性又は非芳香族性の2価の複素環式基が挙げられる。
【0023】
前記2価の炭化水素基、2価の複素環式基は、それぞれ置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子;アルキル基(例えば、炭素数1〜6のアルキル基等)、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、橋架け炭化水素基などの炭化水素基;ハロゲン原子で置換された炭化水素基(トリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基等);酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含む官能基を含む炭化水素基;又はこれらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0024】
前記連結基A1の代表的な例として、下記式(2a)〜(2e)
【化2】

[式中、A2は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。Rbは、各環(単環又は多環)に結合している置換基であって、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基を示す。kは0〜4の整数を示す。kが2以上の場合、複数個のRbは同一であっても異なっていてもよい。式(2b)〜(2e)中の各2つの結合手はそれぞれ、環(単環又は多環)を構成する炭素原子に結合している]
で表される基が挙げられる。
【0025】
2における炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン基などが挙げられる。Rbにおけるハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記Raにおけるハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基と同様のものが挙げられる。Rbにおける炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
極性の反応性基を有するモノマーの他の代表的な例として、例えば、ヒドロキシスチレン(p−ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシナフタレン、カルボキシスチレン、アミノスチレンなどの、芳香環にヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基を有する芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0027】
[極性の反応性基を有するモノマー以外のモノマー]
本発明において、重合に付すモノマー混合物には、前記極性の反応性基を有するモノマー以外のモノマーが含まれていてもよい。
【0028】
極性の反応性基を有するモノマー以外のモノマーとしては、目的とするポリマーの用途や機能に応じたモノマーを使用できる。例えば、レジスト等の分野においては、酸の作用によりアルカリ可溶となる基を含む繰り返し構造単位を形成するためのモノマー、ラクトン骨格を有する繰り返し構造単位などの基板への密着性を高める繰り返し構造単位を形成するためのモノマーなどが挙げられる。また、塗料や接着剤等の分野においては、凝集力を高める構造単位を形成するためのモノマーなどが挙げられる。これらの中でも、酸の作用によりアルカリ可溶となる基を含む繰り返し構造単位を形成するためのモノマー、ラクトン骨格を有する繰り返し構造単位を形成するためのモノマーが特に好ましい。
【0029】
[酸の作用によりアルカリ可溶となる基を含む繰り返し構造単位を形成するためのモノマー]
レジストの分野におけるリソグラフィー用重合体は、ポリマー中に、酸の作用によりアルカリ可溶となる基を含む繰り返し構造単位を有することが好ましい。アルカリ可溶となる基を含む繰り返し構造単位がレジスト用樹脂に含まれることにより、酸の作用によりアルカリへの溶解性が良好となり、より鮮明なパターン形成を可能とする。
【0030】
アルカリ可溶となる基を含む繰り返し構造単位を形成するためのモノマーとして、下記式(3a)〜(3e)
【化3】

(式中、環Z1は置換基を有していてもよい炭素数5〜20の単環又は多環の脂環式炭化水素環を示す。Raは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基を示し、E1は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。mは0〜3の整数を示す。R1〜R3は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R4は、環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。nはR4の個数であって、1〜3の整数を示す。但し、n個のR4のうち少なくとも一つは−COORi基を示す。Riは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。R5、R6は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R7は水素原子又は有機基を示す。R5、R6、R7のうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する原子とともに環を形成していてもよい。R8はt−ブチル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロピラニル基、又は2−オキセパニル基を示す。pは0又は1を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0031】
aは前記と同様である。E1における炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン基等のアルキレン基;ビニレン、1−プロペニレン、3−メチル−2−ブテニレン基等のアルケニレン基;1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基などのシクロアルキレン基;シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基;アダマンタンジイル、ノルボルナンジイル、イソボルナンジイル、トリシクロデカンジイル、テトラシクロデカンジイル基などの2価の橋かけ環式炭化水素基;1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,5−ナフチレン、2,6−ナフチレン、アントラニレン基などの2価の芳香族炭化水素基;これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0032】
1〜R3及びR5、R6における置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素1〜6のアルキル基;トリフルオロメチル基等の炭素1〜6のハロアルキル基などが挙げられる。式(3c)中、R4におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素1〜20程度のアルキル基が挙げられる。R4における保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基としては、例えば、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基など)などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基としては、前記保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキレン基を介して結合している基などが挙げられる。R4で−COORiにおけるRiの第3級炭化水素基としては、例えば、t−ブチル、t−アミル、2−メチル−2−アダマンチル、(1−メチル−1−アダマンチル)エチル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基には2−テトラヒドロフラニル基が、テトラヒドロピラニル基には2−テトラヒドロピラニル基が、オキセパニル基には2−オキセパニル基が含まれる。
【0033】
環Z1における炭素数5〜20の脂環式炭化水素環は単環であっても、縮合環や橋かけ環等の多環であってもよい。代表的な脂環式炭化水素環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などが挙げられる。脂環式炭化水素環には、メチル基等のアルキル基(例えば、C1-4アルキル基など)、塩素原子等のハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、オキソ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基などの置換基を有していてもよい。環Z1は例えばアダマンタン環等の多環の脂環式炭化水素環(橋かけ環式炭化水素環)であるのが好ましい。
【0034】
7における有機基としては、炭化水素基及び/又は複素環式基を含有する基が挙げられる。炭化水素基には脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらが2以上結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基(C1-8アルキル基等);アリル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基(C2-8アルケニル基等);プロピニル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキニル基(C2-8アルキニル基等)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(3〜8員シクロアルキル基等);シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基(3〜8員シクロアルケニル基等);アダマンチル、ノルボルニル基等の橋架け炭素環式基(C4-20橋架け炭素環式基等)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等のC6-14芳香族炭化水素基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、ベンジル、2−フェニルエチル基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、アルキル基(C1-4アルキル基等)、ハロアルキル基(C1-4ハロアルキル基等)、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、オキソ基などの置換基を有していてもよい。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0035】
好ましい有機基として、C1-8アルキル基、環式骨格を含む有機基等が挙げられる。前記環式骨格を構成する「環」には、単環又は多環の非芳香族性又は芳香族性の炭素環又は複素環が含まれる。なかでも、単環又は多環の非芳香族性炭素環、ラクトン環(非芳香族性炭素環が縮合していてもよい)が特に好ましい。単環の非芳香族性炭素環として、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの3〜15員程度のシクロアルカン環などが挙げられる。
【0036】
式(3a)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、1−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、5−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン。
【0037】
式(3b)で表されるモノマーモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン、1−ヒドロキシ−3−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン、1−(1−エチル−1−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルプロピル)アダマンタン。
【0038】
式(3c)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−t−ブトキシカルボニル−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン。
【0039】
式(3d)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−アダマンチルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルメチルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、2−(1−アダマンチルエチル)オキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、1−ボルニルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロフラニル(メタ)アクリレート。
【0040】
上記式(3d)で表される化合物は、例えば、対応するビニルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸とを酸触媒を用いた慣用の方法で反応させることにより得ることができる。例えば、1−アダマンチルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレートは、1−アダマンチル−ビニルエーテルと(メタ)アクリル酸とを酸触媒の存在下で反応させることにより製造できる。
【0041】
式(3e)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。5−t−ブトキシカルボニルノルボルネン、9−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)ノルボルネン、9−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン。
【0042】
[ラクトン骨格を有する繰り返し構造単位を形成するためのモノマー]
レジストの分野におけるリソグラフィー用重合体は、ポリマー中に、ラクトン骨格を有する繰り返し構造単位を有することが好ましい。ラクトン骨格を有する繰り返し構造単位を有することにより、レジスト樹脂の基板への密着性が良好となり、より鮮明なパターン形成を可能とする。
【0043】
ラクトン骨格を有する繰り返し構造単位を形成するためのモノマーとして、下記式(4a)〜(4h)
【化4】

【化5】

(式中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基を示す。R9〜R11は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。V1〜V3は、同一又は異なって、−CH2−、−CO−又は−COO−を示す。但し、V1〜V3のうち少なくとも一つは−COO−である。Y1は炭素原子、酸素原子又は硫黄原子を示し、炭素原子のときにのみR15及びR16が存在する。R12〜R16及びR17は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、シアノ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を示す。qは0又は1の整数を示す。rは1又は2の整数を示し、sは0〜5の整数を示す。Y2は酸素原子、硫黄原子又はメチレン基を示す。R18は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。R19、R20、R21及びR22は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示す。t、u、v及びwは、それぞれ0又は1を示す。R23は水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R24はラクトン骨格を有する基を示し、M1は炭素数1〜6の2価の有機基を示す。xは1〜3の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0044】
aは前記と同様である。R9〜R11、R12〜R16及びR17におけるアルキル基としては、例えば、前記Raにおける炭素数1〜6のアルキル基と同様のものを使用することができる。R12〜R16及びR17におけるハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが含まれる。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0045】
式(4a)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−5−オン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−4,7−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−5,8−ジオン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−4,8−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−5,7−ジオン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−5,7−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−4,8−ジオン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3,5−ジヒドロキシアダマンタン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3,5,7−トリヒドロキシアダマンタン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−カルボキシアダマンタン。
【0046】
式(4b)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、Y1が炭素原子の時には、5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−5−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−カルボキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−メトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−エトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−t−ブトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オンなどが挙げられる。
【0047】
また、1−シアノ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−フルオロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−トリフルオロメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−シアノ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−フルオロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−トリフルオロメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン等が挙げられる。
【0048】
また、Y1が酸素原子のときは、1−シアノ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−フルオロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−トリフルオロメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−シアノ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−フルオロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−クロロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、9−トリフルオロメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3、7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン等が挙げられる。
【0049】
式(4c)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、8−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン等が挙げられる。
【0050】
式(4d)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,β,β−トリメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,γ,γ−トリメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β,γ,γ−テトラメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,β,β,γ,γ−ペンタメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,β,β−トリメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,γ,γ−トリメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β,γ,γ−テトラメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,β,β,γ,γ−ペンタメチル−γ−ブチロラクトンなどのα−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン類;β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンなどのβ−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン類などが挙げられる。
【0051】
式(4e)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、5−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.05,9]デカン−3−オン、2−メチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.05,9]デカン−3−オン、2−エチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.05,9]デカン−3−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−4、8−ジオキサトリシクロ[5.2.1.05,9]デカン−3−オン、2−メチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−4、8−ジオキサトリシクロ[5.2.1.05,9]デカン−3−オン、2−エチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−4、8−ジオキサトリシクロ[5.2.1.05,9]デカン−3−オンなどが挙げられる。
【0052】
式(4f)で表されるモノマーの代表的な例として下記化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。例えば、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−エン−5−オン、3−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−エン−4−オン、5−オキサトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン−9−エン−6−オン、4−オキサトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン−9−エン−5−オン、4−オキサペンタシクロ[6.5.1.19,12.02,6.08,13]ペンタデカン−10−エン−5−オン、3−オキサペンタシクロ[6.6.1.110,13.02,7.09,14]ヘキサデカン−11−エン−6−オン、4−オキサペンタシクロ[6.6.1.110,13.02,7.09,14]ヘキサデカン−11−エン−5−オン。
【0053】
式(4g)のモノマーの代表的な例には下記の化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。例えば、8−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン[=9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン]、9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン[=8−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン]、8−(メタ)アクリロイルオキシ−9−ヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン[=9−(メタ)アクリロイルオキシ−8−ヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン3−オン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−8−ヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン[=8−((メタ)アクリロイルオキシ−9−ヒドロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン]、8−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4−オン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン−3−オン、10−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン−3−オン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン−5−オン、10−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[6.2.1.02,7」ウンデカン−5−オン。
【0054】
式(4h)で表される化合物中のR23において、ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが含まれる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、C1-4アルキル基、特にメチル基が好ましい。置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、クロロメチル基などのクロロアルキル基;トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基などのフルオロアルキル基(好ましくは、C1-3フルオロアルキル基)などのハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基などが挙げられる。R23としては、水素原子、メチル基等のC1-3アルキル基、トリフルオロメチル基等のC1-3ハロアルキル基が好ましく、特に、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0055】
24におけるラクトン骨格を有する基としては、例えば、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環、ε−カプロラクトン環などの単環のラクトン環から構成されるラクトン骨格を有する基;6−オキサビシクロ[3.2.11,5]オクタン−7−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環等の、ラクトン環を含む多環のラクトン骨格などが挙げられる。これらの中でも、単環のラクトン環から構成されるラクトン骨格を有する基、特にγ−ブチロラクトン環から構成される単環のラクトン骨格を有する基が好ましい。
【0056】
ラクトン骨格は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基等のアルキル基(例えば、C1-4アルキル基など)、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基(例えば、C1-4ハロアルキル基など)、塩素原子やフッ素原子等のハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいスルホン酸基などが挙げられる。前記保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0057】
式(4h)において、R24におけるラクトン骨格は式中に示されるエステル結合(−COO−)と直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン基等のアルキレン基(例えばC1-6アルキレン基等)などが挙げられる。
【0058】
24の代表的な例として、γ−ブチロラクトン−2−イル基、3−メチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,3−ジメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、4−メチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、4,4−ジメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,4,4−トリメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,3,4−トリメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,3,4,4−テトラメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基等のC1-4アルキル基等の置換基を有していてもよいγ−ブチロラクトン−2−イル基;δ−バレロラクトン−2−イル基、3−メチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、3,3−ジメチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、4−メチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、4,4−ジメチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、5−メチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、5,5−ジメチル−δ−バレロラクトン−2−イル基等のC1-4アルキル基等の置換基を有していてもよいδ−バレロラクトン−2−イル基;ε−カプロラクトン−2−イル基、2−メチル−ε−カプロラクトン−2−イル基、2,2−ジメチル−ε−カプロラクトン−2−イル基等のC1-4アルキル基等の置換基を有していてもよいε−カプロラクトン−2−イル基などが挙げられる。これらの中でも、C1-4アルキル基を1又は2以上(特に2個)有するγ−ブチロラクトン−2−イル基、C1-4アルキル基を1又は2以上(特に2個)有するδ−バレロラクトン−2−イル基、C1-4アルキル基を1又は2以上(特に2個)有するε−カプロラクトン−2−イル基が好ましく、とりわけ3,3−ジメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基等のC1-4アルキル基を1又は2以上(特に2個)有するγ−ブチロラクトン−2−イル基が好ましい。
【0059】
1は炭素数1〜6の2価の有機基を示す。2価の有機基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基(特に、C1-6アルキレン基);ビニレンなどのアルケニレン基(特に、C2-6アルケニレン基);シクロペンチレン、シクロヘキシレン基等のシクロアルケニレン基;これらの2以上が、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−;−OCO−)などの連結基を介して結合した2価の有機基などが挙げられる。特に、メチレン、エチレン、プロピレンなどが好ましい。これらの例示された基にはハロゲン原子、特にフッ素原子で置換されたものも有用である。
【0060】
式(4h)で表されるモノマー(ラクトン骨格を有する単量体)の代表的な例として、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−3−メチル−γ−ブチロラクトン[=α−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン]、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−3,3−ジメチル−γ−ブチロラクトン[=α−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン]、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−4−メチル−γ−ブチロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−4,4−ジメチル−γ−ブチロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−3−メチル−δ−バレロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−3,3−ジメチル−δ−バレロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−4−メチル−δ−バレロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−4,4−ジメチル−δ−バレロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−5−メチル−δ−バレロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−5,5−ジメチル−δ−バレロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−3−メチル−ε−カプロラクトン、2−(メタ)アクリロイルオキシアセトキシ−3,3−ジメチル−ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0061】
極性の反応性基を有するモノマー以外のモノマーとしては、上記のほか、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル等]、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリルなどの(メタ)アクリル酸アルケニル[(メタ)アクリル酸C2-20アルケニルエステル等]、(メタ)アクリル酸メトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等の(メタ)アクリル酸脂環式エステル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル,プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1,3−ブタジエン、シクロヘキセン、ノルボルネンなどのオレフィン(環状オレフィンを含む)などが挙げられる。これらのモノマーに対応する構造単位がポリマー中に導入されることにより、例えば、凝集力、粘着性、柔軟性、硬さ等の物性が付与される。
【0062】
本発明においては、より顕著な効果が得られるという点から、前記モノマー混合物中の全モノマーの50重量%以上(特に70重量%以上)がアクリル系モノマーであるのが好ましい。
【0063】
[重合]
本発明においては、前記極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物を重合に付す。重合方法としては、モノマーの種類に応じて適宜選択され、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、縮重合等の何れであってもよいが、なかでもラジカル重合が好ましい。重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合など、アクリル系ポリマー等を製造する際に用いる慣用の方法により行うことができ特に制限されないが、溶液重合が好ましい。さらに、溶液重合のなかでも滴下重合が好ましい。滴下重合は、具体的には、例えば、(i)予め有機溶媒に溶解した単量体溶液と、有機溶媒に溶解した重合開始剤溶液とをそれぞれ調製し、一定温度に保持した有機溶媒中に前記単量体溶液と重合開始剤溶液とを各々滴下する方法、(ii)単量体と重合開始剤とを有機溶媒に溶解した混合溶液を、一定温度に保持した有機溶媒中に滴下する方法、(iii)予め有機溶媒に溶解した単量体溶液と、有機溶媒に溶解した重合開始剤溶液とをそれぞれ調製し、一定温度に保持した前記単量体溶液中に重合開始剤溶液を滴下する方法などの方法により行われる。
【0064】
重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを使用できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられる。特に、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、イソ−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0065】
重合溶媒としては公知の溶媒を使用でき、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル類などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、これらの混合溶媒などが挙げられる。重合温度は、例えば30〜150℃程度の範囲で適宜選択できる。
【0066】
[工程A]
本発明において、工程Aでは、前記モノマー混合物を重合して得られた重合生成物を、前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xで処理する。このような処理を施すことにより、重合生成物中に含まれる極性の反応性基を有する未反応モノマーが化合物Xと反応して極性が低下し、複数の未反応モノマーの極性が低極性側に揃うことになり、残存モノマー間の極性の差が縮まるとともに、残存モノマーの極性と極性基を有する生成ポリマーの極性との差が拡がるので、ポリマーの再沈の際には、再沈溶媒の選定が容易になり、再沈回数も減らすことができ、残留モノマー含有量の極めて少ない高純度のポリマーを効率よく得ることができる。このため、本発明は、極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物が、極性の反応性基を有するモノマーの1種又は2種以上と、極性の反応性基を有しないモノマーの1種又は2種以上からなるモノマー混合物である場合に特に有用である。
【0067】
工程Aで用いられる重合生成物としては、重合反応液であってもよく、重合反応液に濃縮、希釈、抽出、溶媒交換、液性調節、濾過等の適宜な処理を施した後の処理物であってもよく、また、再沈(沈殿、再沈殿、晶析、再結晶)などにより精製したポリマー、又はこのポリマーを適宜な溶媒に溶解させたポリマー溶液であってもよい。前記再沈などの精製によってもポリマーから残留モノマーを完全に除去することは難しい。
【0068】
前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xにおいて、極性の反応性基に対して反応性を有する官能基としては、そのような機能を有する公知の官能基を使用できるが、ヘテロ原子と活性水素とを有する基に対して反応性を有する基が好ましい。極性の反応性基に対して反応性を有する官能基の具体的な例として、例えば、ビニルエーテル基、ビニルスルフィド基、酸無水物基、ハロホルミル基、ハロスルホニル基、リン酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アルデヒド基、ハロゲン化シリル基、カルボジイミド基などが挙げられる。これらの中でも、ビニルエーテル基、酸無水物基、ハロホルミル基、ハロスルホニル基が好ましく用いられる。ビニルエーテル基が特に好ましい。ヘテロ原子と活性水素を有する基とビニルエーテル基との反応により、アセタール基が生成する。化合物Xは、このような反応性官能基を少なくとも1つ有していればよく、2個以上有していてもよいが、処理後の残存モノマーとポリマーとの分離性や反応の複雑化の抑制という観点からは、このような反応性官能基を1つのみ有するのが好ましい。
【0069】
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;フェニルビニルエーテル、ナフチルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;ベンジルビニルエーテル等のアラルキルビニルエーテルなどが挙げられる。また、ビニルエーテル基を有する化合物として多官能のビニルエーテル化合物も使用できる。多官能のビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ビス(ビニルオキシメチル)ベンゼン、2,6−ビス(ビニルオキシメチル)ナフタレンなどが挙げられる。
【0070】
ビニルスルフィド基を有する化合物としては、例えば、エチルビニルスルフィド、フェニルビニルスルフィド、2,4−ジニトロフェニルビニルスルフィドなどが挙げられる。
【0071】
酸無水物基を有する化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸等の脂肪族カルボン酸の酸無水物;無水安息香酸等の芳香族カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
【0072】
ハロホルミル基を有する化合物としては、例えば、アセチルクロリド、アセチルブロミド、プロピオニルクロリド、ブチリルクロリド等の脂肪族カルボン酸ハライド;安息香酸クロリド、安息香酸ブロミド等の芳香族カルボン酸ハライドなどが挙げられる。
【0073】
ハロスルホニル基を有する化合物としては、例えば、メタンスルホン酸クロリド、エタンスルホン酸クロリド、ベンゼンスルホン酸クロリド、p−トルエンスルホン酸クロリド、ナフタレンスルホン酸クロリドなどが挙げられる。
【0074】
リン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸、メチルリン酸、ジメチルリン酸などが挙げられる。
【0075】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、イソブチルイソシアネート等の脂肪族モノイソシアネート;シクロヘキシルイソシアネート等の脂環式モノイソシアネート;フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等の芳香族モノイソシアネートなどが挙げられる。また、イソシアネート基を有する化合物として多官能イソシアネート化合物を用いることもできる。多官能イソシアネート化合物として、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0076】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、エポキシ基を有する化合物として多官能エポキシ化合物を用いることもできる。多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0077】
アルデヒド基(ホルミル基)を有する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、1−ヘキサナール等の脂肪族アルデヒド;シクロヘキサンカルバルデヒド等の脂環式アルデヒド;ベンズアルデヒド、ナフタレンカルバルデヒド等の芳香族アルデヒド;フルフラール等の複素環式アルデヒドなどが挙げられる。
【0078】
ハロゲン化シリル基を有する化合物としては、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリドなどが挙げられる。
【0079】
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジ−t−ブチルカルボジイミド、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−トリルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0080】
極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xの添加量は、特に制限されるものではないが、処理に供する重合生成物中に存在する、ポリマー以外の極性の反応性基を有する化合物[具体的には、重合における残存未反応モノマーのうち、極性の反応性基(ヒドロキシル基、カルボキシル基等)を有するモノマー]に対して当量以下の量であるのが好ましい。化合物Xの添加量が過剰となると、生成ポリマー中の極性の反応性基との反応が起こり、ポリマーの構造が所望する構造とは違ったものとなり、ポリマーの特性が変化してしまうおそれがある。
【0081】
そのため、生成ポリマーを含む液(例えば、重合反応溶液)を少量サンプリングして、化合物Xの最適添加量を確認するのが望ましい。具体的には、サンプリングしたポリマーを含む液を分割して、化合物Xの添加量を変えて反応を行い、ポリマーを精製・回収する。回収したポリマーの分子量をGPC等で確認すると共に、官能基量をNMR、酸価等の方法で確認し、ポリマーの特性に影響を及ぼさない化合物Xの最大添加量を確認する。確認された最大添加量の化合物Xをポリマーを含む液に添加・処理する。
【0082】
重合生成物に対する化合物Xによる処理は溶液の状態で実施することが好ましい。使用される溶媒としては公知の溶媒を使用でき、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル類などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0083】
溶媒としては、ポリマー及び化合物Xに対して反応性を有しない溶媒であるの好ましい。好ましい溶媒として、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、シクロヘキサノン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、炭化水素等が挙げられる。
【0084】
前記処理の具体的な操作としては、例えば、重合反応液(必要に応じて、濃縮、希釈、抽出、溶媒交換、液性調節、濾過等の適宜な処理を施した溶液)、あるいは重合反応液から単離したポリマーを適宜な溶媒に溶解した溶液に、化合物Xを添加する。化合物Xの添加方法としては、一括で添加してもよいし、分割添加、更には連続滴下により添加してもよい。処理温度は、化合物Xの種類等によっても異なるが、例えば0〜150℃、好ましくは10〜100℃程度の範囲で適宜選択できる。処理時間は、例えば2分〜5時間、好ましくは5分〜2時間程度である。
【0085】
化合物Xによる処理において、反応速度を速くするために触媒あるいは酵素等を用いてもよい。触媒としては、化合物Xの有する官能基の種類に応じて適宜選択できる。触媒の代表的な例として、酸触媒、塩基触媒などが挙げられる。例えば、化合物Xとしてビニルエーテル化合物を用いる場合には、酸触媒が好ましく用いられる。酸触媒としては、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、三フッ化ホウ素等を挙げることができる。これらのなかでは、特に、塩酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が好ましく用いられる。このような酸触媒は、使用される化合物Xに対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.05〜5モル%の範囲で用いられる。
【0086】
こうして得られる処理後の液は、そのまま、又は必要に応じて、濾過、液性調整、溶媒交換等の適宜な処理を施した後に、利用(反応、用途に応じた組成物の調製等)に供してもよいが、処理後の液から、沈殿、再沈殿、晶析、再結晶等の方法でポリマーを分離回収した後に利用に供することが好ましい。本発明の残留モノマーの低減方法によれば、前述したように、複数の未反応モノマーの極性が低極性側に揃い、残存モノマー間の極性の差が縮まるとともに、残存モノマーの極性と極性基を有する生成ポリマーの極性との差が拡がるので、ポリマーの再沈の際に用いる溶媒の選定が容易になり、再沈の回数も減らすことができる。このようにして、残留モノマー含有量の極めて少ない高純度のポリマーを効率よく製造することができる。
【0087】
ポリマーを沈殿又は再沈殿(あるいは晶析又は再結晶)させる際の溶媒(以下、単に「再沈溶媒」と総称する場合がある)は有機溶媒及び水の何れであってもよく、また混合溶媒であってもよい。再沈溶媒として用いる有機溶媒として、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、これらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0088】
中でも、前記再沈溶媒として用いる有機溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素)を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、炭化水素(例えば、ヘキサンやヘプタンなどの脂肪族炭化水素)と他の溶媒との比率は、例えば前者:後者(体積比;25℃)=10:90〜100:0、好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=50:50〜100:0、さらに好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=70:30〜100:0である。本発明では、残留モノマーの極性が低極性側に揃うため、再沈溶媒として炭化水素のみを用いても高純度のポリマーを得ることができる。
【0089】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、用途等によっても異なるが、例えば500〜500000程度、好ましくは1000〜400000程度、さらに好ましくは2000〜300000程度であり、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.2〜10.0程度、好ましくは1.2〜4.0程度である。なお、前記Mnは数平均分子量を示し、Mn、Mwともにポリスチレン換算の値である。
【0090】
こうして得られるポリマーは、そのまま、又は極性の反応性基を有するモノマー由来の極性の反応性基に対して、架橋剤や修飾剤を反応させた後、用途に応じた組成物(例えば、レジスト組成物、塗料組成物、接着剤組成物、コーティング組成物等)の調製に供される。本発明の方法を経て得られるポリマー中には不純物としての残留モノマー量が極めて少ないため、各組成物において所望の特性が十分に発揮される。
【実施例】
【0091】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0092】
(合成例1)
[下記構造の高分子化合物を含む重合溶液の調製]
【化6】

還流管、撹拌子、3方コック、温度計を備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、CHO(シクロヘキサノン)59.58gをいれて温度を90℃に保ち、撹拌しながらMNBL(5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン)8.5g(38.3mmol)、HMA(1−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン)9.6g(40.6mmol)、IAM(1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン)10.7g(40.8mmol)、MAA(メタクリル酸)1.2g(13.9mmol)、ジメチル2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(和光純薬工業(株)製;商品名「V−601」)1.2g、CHO(シクロヘキサノン)110.0gの混合溶液を5時間かけて滴下した。さらに同温度で2時間撹拌を続けた。重合溶液は冷却して回収した。
【0093】
(実施例1)
[リソグラフィー用重合体の精製]
合成例1で得られた重合溶液50gに、p−トルエンスルホン酸1水和物0.001gを加えて均一溶液とした。17.5gのCHO(シクロヘキサノン)に均一に溶解したブチルビニルエーテル0.6gを加えて室温で2時間撹拌を行なった。反応終了後、トリエチルアミンの1重量%THF(テトラヒドロフラン)溶液1.5gを添加して中和した。得られた反応液は、410gのヘプタンに再沈殿させた。3.0μmのメンブレンフィルターを用いて減圧ろ過により湿ポリマーを回収し、45℃で10時間減圧乾燥した。得られたリソグラフィー用重合体中に含まれる残留モノマーを液体クロマトグラフィーにより測定した。測定結果を表1に示す(単位:重量%)。
【0094】
(実施例2)
[リソグラフィー用重合体の精製]
合成例1で得られた重合溶液50g、p−トルエンスルホン酸1水和物0.001gを加えて均一溶液とした。17.5gのCHO(シクロヘキサノン)に均一に溶解したブチルビニルエーテル0.6gを加えて室温で2時間撹拌を行なった。反応終了後、トリエチルアミンの1重量%THF(テトラヒドロフラン)溶液1.5gを添加して中和した。得られた反応液は、410gのヘプタン/酢酸エチル=9/1(重量比)に再沈殿させた。3.0μmのメンブレンフィルターを用いて減圧ろ過により湿ポリマーを回収し、45℃で10時間減圧乾燥した。得られたリソグラフィー用重合体中に含まれる残留モノマーを液体クロマトグラフィーにより測定した。測定結果を表1に示す(単位:重量%)。
【0095】
(比較例1)
[リソグラフィー用重合体の精製]
合成例1で得られた重合溶液50gを、特に処理することなく、410gのヘプタンに再沈殿させた。3.0μmのメンブレンフィルターを用いて減圧ろ過により湿ポリマーを回収し、45℃で10時間減圧乾燥した。得られたリソグラフィー用重合体中に含まれる残留モノマーを液体クロマトグラフィーにより測定した。測定結果を表1に示す(単位:重量%)。
【0096】
(比較例2)
[リソグラフィー用重合体の精製]
合成例1で得られた重合溶液50gを、特に処理することなく、410gのヘプタン/酢酸エチル=9/1(重量比)に再沈殿させた。3.0μmのメンブレンフィルターを用いて減圧ろ過により湿ポリマーを回収し、45℃で10時間減圧乾燥した。得られたリソグラフィー用重合体中に含まれる残留モノマーを液体クロマトグラフィーにより測定した。測定結果を表1に示す(単位:重量%)。
【0097】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物の重合生成物から残留モノマーを低減する方法であって、前記モノマー混合物を重合に付した後、得られた重合生成物を、前記極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xで処理する工程Aを含む残留モノマーの低減方法。
【請求項2】
さらに、工程Aの後、生成したポリマーを沈殿、再沈殿、晶析又は再結晶により分離する工程Bを含む請求項1記載の残留モノマーの低減方法。
【請求項3】
極性の反応性基がヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基である請求項1又は2記載の残留モノマーの低減方法。
【請求項4】
極性の反応性基に対して反応性を有する官能基が、ビニルエーテル基、ビニルスルフィド基、酸無水物基、ハロホルミル基、ハロスルホニル基、リン酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アルデヒド基、ハロゲン化シリル基、カルボジイミド基から選択される基である請求項1〜3の何れかの項に記載の残留モノマーの低減方法。
【請求項5】
極性の反応性基に対して反応性を有する官能基を有する化合物Xの使用量が、重合生成物中に残存する極性の反応性基を有するモノマーに対して当量以下の量である請求項1〜4の何れかの項に記載の残留モノマーの低減方法。
【請求項6】
極性の反応性基を有するモノマーを少なくとも含む複数種のモノマーからなるモノマー混合物が、極性の反応性基を有するモノマーの1種又は2種以上と、極性の反応性基を有しないモノマーの1種又は2種以上からなるモノマー混合物である請求項1〜5の何れかの項に記載の残留モノマーの低減方法。
【請求項7】
モノマー混合物中の全モノマーの50重量%以上がアクリル系モノマーである請求項1〜6の何れかの項に記載の残留モノマーの低減方法。

【公開番号】特開2010−100666(P2010−100666A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270463(P2008−270463)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】