説明

段付円筒金具の製造方法

【課題】 板材を突き合わせ溶接する段付円筒金具の製造工程において、次工程に前工程と同種の設備を用いることにより、工程間の仕掛かり品の管理や作業手間の問題を軽減し、製造コストを低減した段付円筒金具を提供する。
【解決手段】 従来、プレス、ロール、溶接、プレスと工程が替わる度に異なる加工設備を用いていたが、段付部材のロール曲げを可能にすることによって、製造工程を変更し、第1工程でプレスによる外形打ち抜きにより板状部材を形成し、第2工程でもプレスにより、段付部材を形成し、第3工程でロール曲げにより、円筒部材を形成し、第4工程で溶接によって、円筒部材の両端面を突き合わせ溶接する段付円筒金具の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両の円筒形のブッシュ、エンジンマウント、又はキャブマウントなどの防振ゴムに構成部材として用いられる比較的薄肉の板材でなる段付円筒金具の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、図1(B)に示す段付円筒金具11は、図5に示すように、第1工程でプレスによって、穴3dを打ち抜き後、外形打ち抜きによって板材から所定寸法の長さと幅の板状部材3を形成していた。そして、第2工程でロール曲げによって、板状部材3を長さ方向に丸めて円筒部材105を形成し、第3工程では溶接によって、円筒部材105の長さ方向の両端面3x、3yを突き合わせ、突き合わせた当接面を溶接線105aとして溶接していた。そして第4工程では、プレスよって、段付け加工をするが、段付け加工は、円筒部材105の両側端部を変形せずにそのまま残して、それに挟まれている中央部分を半径方向に縮径して、両側端部11b、11bを形成すると共に、中間部11cを形成して、図1(B)に示すような段付円筒金具11を製造していた。そして、図1(A)に示す段付円筒金具10は、前記の段付円筒金具11の第1工程において、穴3dを設けない板状部材3を形成して製造していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この方法では、プレス、ロール曲げ、溶接、プレスと、製造工程毎に異なる加工設備を用いて段付円筒金具を製造するために、各工程間で仕掛り品の運搬、保管等の作業が必要であるし、各工程の生産調整、管理が必要であった。
【0004】そして、このため、これらの仕掛り品の運搬、保管等の作業手間や、生産調整、管理に起因するコストが全体的にコストを押し上げると言う問題を生じてさせていた。
【0005】本発明は上記問題点を鑑みて発明されたものであって、連続する工程でも同種の加工設備を用いることにより、工程間の仕掛かり品の管理や作業手間の問題を減少することにより、それらに要した費用を解消し、それによって製造コストを低減し、より安い価格で段付円筒金具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願の発明は前記の課題を解決するために、板材から外形打ち抜きによって所定寸法の長さと幅の板状部材を形成する第1工程と、この板状部材をその幅方向に段付成形して段付部材に形成する第2工程と、この段付部材を長さ方向に丸めて円筒部材に形成する第3工程と、この円筒部材の長さ方向の両端面を突き合わせ、突き合わせた当接面を溶接する第4工程とを備えて構成したことにある。
【0007】 そして、板材に所定の穴を打ち抜き後、この穴の外郭を打ち抜きによって所定寸法の長さと幅の外形を整え、穴付きの板状部材を板材から形成する第1工程にしたことを特徴とすることもできる。
【0008】
【作用】上記のように構成した請求項1に係る発明においては、第1工程のプレス作業に引き続き、第2工程でもプレス作業を行うので、両者共に加工設備としてプレス機を使用し、連続する工程で同じ種類の加工設備を用いることができる。
【0009】また、上記のように構成した請求項2に係る発明においては、前記の請求項1に係る発明の特徴を生かしつつ、第1工程において穴をプレス機によって打ち抜きする作業を挿入したので、穴付きの段付円筒金具を容易に製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態・実施例】以下、本発明の一実施例を図に基づいて説明する。先ず、図1(A)に示したものが段付円筒金具10である。品種によっては、図1(B)に示したように、円筒金具の長さ方向の略中央部に穴11dを設けて形成した穴付きの段付円筒金具11がある。
【0011】そして、前述の段付円筒金具10は、図1(A)に示すように、溶接線10aを有し、所定寸法の板状部材を巻いて円筒部材に形成し、円筒部材の長さ方向の両端面を突き合わせ溶接して形成したものである。そして、円筒部材の両端には側端部10b、10bが設けられ、その中間部分の中間部10cは縮径されて、その外径寸法は側端部10b、10bの外径寸法に比較しやや小さくなっている。
【0012】同様に、穴付きの段付円筒金具11は、図1R>1(B)に示すように、溶接線11aを有し、所定寸法の板状部材を巻いて円筒部材に形成し、円筒部材の長さ方向の両端面を突き合わせ溶接して形成したものである。そして、円筒部材の両端には側端部11b、11bが設けられ、その中間部分の中間部11cは縮径されて、その外径寸法は側端部11b、11bの外径寸法に比較しやや小さくなっている。そして、中間部11cには穴11dが穿設されている。即ち、段付円筒金具11が、段付円筒金具10と異なる点は、この穴11dが穿設されていることである。
【0013】従って、本発明の一実施例の説明は、図1(B)に示した、穴11dを有する段付円筒金具11を中心的に説明し、図1(A)に示した段付円筒金具10については、段付円筒金具11から異なる点についてのみ説明する。
【0014】この段付円筒金具11は、図2に示すように、第1工程から第4工程に到る4つの工程を経て製造される。
【0015】先ず、第1工程では、プレス作業により、板状部材3を形成する。このために、本実施例では、図3R>3に示すように、ロール状に巻かれJIS規格・SPHCで、厚さ1.6mmの鋼板1を、段付円筒金具11を製造する板材として用い、鋼板1をプレス機(図示せず)の穴抜き金型22a、22bに送り出し、穴3d、3dを形成し、次いでプレス機(図示せず)の外形打ち抜き金型2a、2bに送り出し、円筒部材の仕上がり寸法に見合う所定の長さと幅の板状部材3をロール状の鋼板1から所定間隔をおいて、外形打ち抜きをして形成する。そして、段付円筒金具10を製造する場合には、穴抜き金型22a、22bによる穴3d、3dの加工は不要である。
【0016】そして、第2工程では、プレス作業により、段付部材4を、前記板状部材3の幅方向に段付成形することにより、形成する。即ち、板状部材3の幅方向の両側端部4b、4bは同レベルの水平面上に位置させ、両側端部4b、4bにはさまれている中間部4cを、両側端部4b、4bから並行的に突出して段付成形する。
【0017】第3工程では、ロール曲げにより、円筒部材5を形成する。即ち、前記段付部材4を長さ方向に丸めることにより、形成にする。
【0018】この第3工程のロール曲げで使用するロール装置は、図2の第3工程で示すように、主ロール6と従ロール7、7を伴って構成された通常のロール装置と構成は同様である。ただ、ここでは平板部材ではなく段付部材4をロール曲げし、円筒部材5に成形するので、成形された円筒部材5は両端部の外径に比較し、中間部分が縮径された形状となる。そのため、ロール成形後は、中間部分の縮径によって、平板材を巻いた通常の直円筒部材のように成形品を軸方向に引き抜いて、取り出すことができない。そのために、これに用いるロール装置は、図4に示す様に、主ロール6は2分割された主ロール6e、6eで構成され、主ロール6e、6eが、互いに軸方向にスライドし、離合可能な状態で支持されている。そして、成形時には、主ロール6e、6eの両端面6f、6fが当接され、その際、インロー6gで互いに嵌合し、同心度と強度を維持しつつ一体的に係合され、主ロール6として形成される。そして、主ロール6の接線方向から挿入される段付部材4を主ロール6に巻きつけて所定寸法の円筒部材5を成形した後は、軸方向に主ロール6e、6eをスライドして両端面6f、6fを離間し、主ロール6e、6e間に間隙8をつくり、この間隙8より成形された円筒部材5を取り出す。主ロール6は、このように円筒部材5を巻き付けて成形するので、主ロール6e、6eの両側端部6b、6bの外径寸法は、段付円筒金具11の両側端部11b、11bの内径寸法に等しく、それにはさまれた中間部6c、6cの外径寸法は、段付円筒金具11の中間部11cの内径寸法に等しく形成されている。
【0019】そして、第4工程では、溶接作業により、前記円筒部材5の長さ方向の両端面4x、4yを突き合わせ、突き合わせた当接面を溶接線11aとして溶接する。溶接には、抵抗突き合わせ溶接を用いるが、その他の溶接方法、例えば、プラズマ溶接を用いても良い。
【0020】このように、段付円筒金具11は、第1工程から第4工程を経て成形するが、段付部材のロール曲げを可能にすることにより、プレス、プレス、ロール曲げ、溶接の順に製造工程を構成でき、第1工程のプレス作業と、その次工程である第2工程のプレス作業とを、連続して同じ種類の加工設備であるプレスを用いて製造することができる。
【0021】尚、本発明が上記実施例に限定されないことは勿論のことであり、本発明の精神に基づき特許請求の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施例では板材1としてSPHCを用いたが段付円筒金具10、11として使用される材料であれば、他の材料であっても限定されない。
【0022】また、ロール装置は3本ロールとして示したが、従ロールは必ずしも2本でなくともよく、それ以上の本数であっても、段付部材4から円筒部材5に成形できるロール装置であれば良い。また、主ロール6e、6eを互いに軸方向にスライドして両端面6f、6fを離間し、両者間に間隙8をつくると説明したが、両ロール6e、6eの軸方向の互いのスライドは相対的なもので、一方がスライドし、一方が固定されていても、隙間8を創出する構成であれば良い。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、第1工程から第4工程を経て段付円筒金具を製造するが、第1工程のプレスと、その次工程である第2工程のプレスとを、同じ種類の加工設備であるプレスによって構成した。これによって、従来の製造工程のように、第1工程のプレスから第2工程のロール曲げのように異なる加工設備に変わることに比較して、工程間で生産速度的にも同じく調節させやすく生産管理が容易になり、同種設備の設置域内にあるプレス機を用いているので、工程間の仕掛り品の運搬や保管が不必要にできる。また同種設備で工程を直結して自動化することも容易で、この場合には実質的に1工程に構成でき工程間の問題は完全に解消できる。従って、従来の製造工程では、円筒部材の仕掛り品が第2工程で製造されたので、第2と第3の工程間と、第3と第4の工程間では嵩張る円筒形部材の運搬・保管が必要であったが、本発明では、円筒部材は第3工程で製造されるので、第3と第4の工程間のみに、嵩張る円筒形部材の運搬・保管が必要となり、作業手間や保管場所が簡素化される。このように工程間の仕掛かり品の作業手間や管理の問題を解消することにより、製造コストを低減することができた。
【0024】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により生産された段付円筒金具の斜視図で、(A)は請求項1に係る段付円筒金具を示し、(B)は請求項2に係る段付円筒金具を示す。
【図2】本発明の一実施例に係り、段付円筒金具の製造工程を説明する為の流れ図である。
【図3】本発明の一実施例に係り、板状部材の加工方法を説明する為の概略図である。
【図4】本発明の一実施例に係り、段付部材を用いてロール曲げ加工する方法を説明する為の概略図である。
【図5】従来の段付円筒金具の製造工程を説明する為の流れ図である。
【符号の説明】
1 鋼板(板材)
3d 穴
3 板状部材
4x、4y 端面
4 段付部材
5 円筒部材
10a、11a 当接面(溶接線)
10、11 段付円筒金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 板材から外形打ち抜きによって所定寸法の長さと幅の板状部材を形成する第1工程と、この板状部材をその幅方向に段付成形して段付部材に形成する第2工程と、この段付部材を長さ方向に丸めて円筒部材に形成する第3工程と、この円筒部材の長さ方向の両端面を突き合わせ、突き合わせた当接面を溶接する第4工程とを備えて構成したことを特徴とする段付円筒金具の製造方法。
【請求項2】 請求項1に記載された板材から板状部材を形成する第1工程において、板材に所定の穴を打ち抜き後、この穴の外郭を打ち抜きによって所定寸法の長さと幅の外形を整え、穴付きの板状部材を板材から形成する第1工程に構成したことを特徴とする請求項1に記載の段付円筒金具の製造方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平9−66314
【公開日】平成9年(1997)3月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−246778
【出願日】平成7年(1995)8月30日
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)