説明

殺微生物剤として有用なエテニルカルボキサミド誘導体

殺微生物剤として用いるのに適した一般式(I)の化合物(ただしAは、A1、A2、A3、A4のいずれかであり、Bは、フェニル基、ナフチル基、キノリニル基のいずれかである)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺微生物活性のある新規なエテニルアミド、その中でも特に殺真菌活性のある新規なエテニルアミドに関する。本発明はさらに、その化合物を含む組成物と、その化合物を農業または園芸で利用して植物への植物病原性微生物(真菌が好ましい)の感染を制御または防止する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
N-[2-(ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体と、この誘導体を殺真菌剤として利用する方法が、WO 04/074280、WO 05/085238、WO 06/008193、WO 06/008194に記載されている。同様の化合物も他の技術分野で知られており、例えばシアノエナミンをリガンドとして用いて植物または動物における遺伝子の発現を変化させることがアメリカ合衆国特許出願公開2003/0109705に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
新規なエテニルアミドが殺微生物活性を有することが見いだされた。したがって本発明により、一般式(I)の化合物:
【化1】

と、その化合物の異性体および互変異性体が提供される。ただし一般式(I)において、
R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのR3は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)のいずれかを表わす;あるいは
R1とR2は、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和していて、その環の1個、または2個、または3個の炭素原子は、酸素原子、および/または窒素原子、および/またはイオウ原子で置換されていてもよく、その環は、置換されていないか、1又は数個の置換基R4で置換されており;
各置換基R4は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのR5は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)のいずれかを表わし;
AはA1
【化2】

(ただしこのA1において、
R16はハロゲンメチルであり;
R17は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R18は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)である;あるいは
AはA2
【化3】

(ただしこのA2において、
R26はハロゲンメチルであり;
R27は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)である;あるいは
AはA3
【化4】

(ただしこのA3において、
R36はハロゲンメチルであり;
R37は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R38は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)である;あるいは
AはA4
【化5】

(ただしこのA4において、
R46はハロゲンメチルであり;
R47は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であり;
Bは、フェニル、ナフチル、キノリニルのいずれかであり、これらは1又は数個の置換基R7で置換されており;
各置換基R7は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C6〜C14ビシクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、ヘテロアリール(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのR8は、互いに独立に、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、C3〜C6アルケニルオキシ、C3〜C6アルキニルオキシ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)のいずれかである。
【0004】
置換基の定義に現われるアルキル基は、直鎖または分岐鎖が可能であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、イソ-プロピル,n-ブチル、s-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチルなどがある。アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基は、ここに挙げたアルキル基から誘導される。アルケニル基とアルキニル基は、不飽和結合が1個または2個のものが可能である。
【0005】
置換基の定義に現われるシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
【0006】
置換基の定義に現われるビシクロアルキル基は、環のサイズに応じ、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[4.2.2]デカン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、アダマンタンなどである。
【0007】
ハロゲンは、一般に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかであるが、その中でもフッ素、臭素、塩素が好ましい。これは、他の基と組み合わされたハロゲン(例えばハロゲンアルキルやハロゲンアルコキシ)にも当てはまる。
【0008】
ハロゲンアルキル基は、鎖の長さが炭素原子1〜4個であることが好ましい。ハロゲンアルキルは、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、ペンタフルオロエチル、1,1-ジフルオロ-2,2,2-トリクロロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチルであるが、トリクロロメチル、ジフルオロクロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロフルオロメチルが好ましい。
【0009】
適切なハロゲンアルケニル基は、1個または複数個のハロゲンで置換されたアルケニル基であり、そのハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、その中でも特にフッ素と塩素である。ハロゲンアルケニル基は、例えば、2,2-ジフルオロ-1-メチルビニル、3-フルオロプロペニル、3-クロロプロペニル、3-ブロモプロペニル、2,3,3-トリフルオロプロペニル、2,3,3-トリクロロプロペニル、4,4,4-トリフルオロブト-2-エン-1-イルである。
【0010】
適切なハロゲンアルキニル基は、例えば、1個または複数個のハロゲンで置換されたアルキニル基であり、そのハロゲンは、臭素、ヨウ素、フッ素、塩素であり、その中でも特にフッ素と塩素である。ハロゲンアルキニル基は、例えば、3-フルオロプロピニル、3-クロロプロピニル、3-ブロモプロピニル、3,3,3-トリフルオロプロピニル、4,4,4-トリフルオロブト-2-イン-1-イルである。
【0011】
アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシであるが、メトキシとエトキシが好ましい。ハロゲンアルコキシは、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トルフルオロエトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシであるが、ジフルオロメトキシ、2-クロロエトキシ、トリフルオロメトキシが好ましい。アルキルチオは、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオであるが、メチルチオとエチルチオが好ましい。
【0012】
アルコキシアルキルは、例えば、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル、n-プロポキシメチル、n-プロポキシエチル、イソプロポキシメチル、イソプロポキシエチルである。
【0013】
本発明の文脈では、置換基R1、R2、R4、R7の定義における“1又は数個の置換基で置換された”は、一般に、置換基R1、R2、R4、R7の化学構造に応じ、1〜9回置換されていることを意味する。1〜5回置換されていることが好ましく、1回、または2回、または3回置換されていることがより好ましい。
【0014】
本発明の文脈では、置換基Bの定義における“1又は数個の置換基で置換された”は、一般に、置換基Bの化学構造に応じ、1〜7回置換されていることを意味する。1〜5回置換されていることが好ましく、1回、または2回、または3回置換されていることがより好ましい。
【0015】
一般式(I)の化合物(Z形)は、異性体の形態(II)(E形):
【化6】

でも生成する。
【0016】
本発明には、この異性体の形態(II)も含まれる。
【0017】
一般式(IA)の化合物:
【化7】

(ただし、B、R1、Aは、一般式(I)で定義したのと同じものであり、R2aとR2bは、それぞれ独立に、水素、C1〜C5アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C2〜C5アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C2〜C5アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)のいずれかであるか;R1とR2aは、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和していて、その環の1個、または2個、または3個の炭素原子は、酸素原子、および/または窒素原子、および/またはイオウ原子で置換されていてもよく、その環は、置換されていないか、1又は数個の置換基R4で置換されている)は、異性体の形態(IAI):
【化8】

でも生成する。
【0018】
本発明には、この異性体の形態(IAI)も含まれる。
【0019】
一般式(I)の化合物は、互変異性体の形態でも存在し、それは例えば互変異性体の形態(III):
【化9】

である。
【0020】
本発明には、互変異性体形態(III)と、一般式(II)、(IA)、(IAI)の化合物のあらゆる互変異性体形態、またはこれらの化合物を任意の比率で混合した混合物も含まれる。
【0021】
好ましい一群の化合物では、R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)のいずれかを表わすか;R1とR2は、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和しており、その環は、置換されていないか、1又は数個の置換基R4で置換されている。
【0022】
好ましい一群の化合物では、R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)のいずれかを表わすか;R1とR2は、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和しており、その環は、置換されていないか、1又は数個の置換基R4で置換されている。
【0023】
好ましい一群の化合物では、R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)のいずれかを表わすか;R1とR2は、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和しており、その環は、置換されていないか、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている。
【0024】
好ましい一群の化合物では、R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)のいずれかを表わし;R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)のいずれかを表わすことがより好ましく;R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキルのいずれかを表わすことが最も好ましい。
【0025】
好ましい別の一群の化合物では、R1とR2は、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和しており、その環は、置換されていないか、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている。
【0026】
好ましい一群の化合物では、AはA1である。
【0027】
好ましい別の一群の化合物では、AはA2である。
【0028】
好ましい別の一群の化合物では、AはA3である。
【0029】
好ましい別の一群の化合物では、AはA4である。
【0030】
特に好ましい一群の化合物では、AはA1であり、その中のR18は水素である。特に好ましい別の一群の化合物では、AはA1であり、その中のR16はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R17はC1〜C4アルキルであり;R18は、水素またはハロゲンである(水素が好ましい)。
【0031】
特に好ましい別の一群の化合物では、AはA2であり、その中のR26はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R27はC1〜C4アルキルである。
【0032】
特に好ましいさらに別の一群の化合物では、AはA3であり、その中のR36はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R37はC1〜C4アルキルであり;R38は、水素またはハロゲンである。
【0033】
特に好ましいさらに別の一群の化合物では、AはA4であり、その中のR46はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R47はC1〜C4アルキルである。
【0034】
本発明の一実施態様は、Bが、1又は数個の置換基R7で置換されたフェニル基である化合物によって表わされる。
【0035】
この実施態様では、Bは、1個、または2個、または3個の置換基R7で置換されたフェニル基であり;Bは、1個または2個の置換基R7で置換されたフェニル基であることがより好ましい。
【0036】
Bが、パラ位が少なくとも1個の置換基R7で置換されたフェニル基であることも好ましい。
【0037】
好ましい一群の化合物では、各置換基R7は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)のいずれかを表わす。
【0038】
好ましい一群の化合物では、各置換基R7は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)のいずれかを表わす。
【0039】
好ましい一群の化合物では、BはB1
【化10】

であり、その中のR17aは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17bは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17cは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17dは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17eは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;しかもR17a、R17b、R17c、R17d、R17eのうちの少なくとも1つは水素でない。
【0040】
本発明の一実施態様では、R17bとR17dは水素であり;R17a、R17c、R17eは、互いに独立に、水素、ハロゲン、シアノ、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンで置換されたフェニルのいずれかであり;しかもR17a、R17c、R17eのうちの少なくとも1つは水素でない。
【0041】
本発明の一実施態様では、R17bとR17dは水素であり;R17a、R17c、R17eは、互いに独立に、水素、ハロゲン、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ハロゲンアルキルのいずれかであり;しかもR17a、R17c、R17eのうちの少なくとも1つは水素でない。
【0042】
本発明の別の一実施態様は、Bが、1又は数個の置換基R7で置換されたナフチル基またはキノリニル基である化合物によって表わされる。
【0043】
本発明の別の一実施態様は、Bが、1又は数個の置換基R7で置換されたナフチル基である化合物によって表わされる。
【0044】
この実施態様では、Bは、1個または2個の置換基R7で置換されたナフチル基であることが好ましい。この実施態様の好ましい一群の化合物では、各置換基R7は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかを表わす。
【0045】
本発明の別の一実施態様は、Bが、1個または2個の置換基R7で置換されたキノリニル基である化合物によって表わされる。この実施態様の好ましい一群の化合物では、各置換基R7は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかを表わす。
【0046】
一般式(I)の化合物は、反応スキーム1によって調製できる。
【0047】
スキーム1:
【0048】
【化11】

【0049】
一般式(IV)のカルボニル化合物(ただしR1、R2、Bは一般式(I)で定義したのと同じものである)は、標準的な方法を利用して例えばNaHおよびNPhTf2と反応させることにより、一般式(III)のトリフルオロメタンスルホン酸エノール(ただしR1、R2、Bは一般式(I)で定義したのと同じものである)に変換することができる。この方法は、J. Am. Chem. Soc.、1991年、第113巻、8975ページ;J. Org. Chem.、1989年、第54巻、4975ページ;Tetrahedron Lett.、1983年、979ページに記載されている。反応温度は-20℃〜30℃であり、適切な溶媒はエーテル(例えばTHF、ジエチルエーテル、ジオキサン)である。一般式(II)の第一級アミド(ただしAは一般式(I)で定義したのと同じものである)を用いて一般式(III)のトリフルオロメタンスルホン酸エノールのアミド化をパラジウムを触媒として行なうと、一般式(I)の化合物と一般式(II)の異性体化合物が得られる。通常は両方の化合物が得られる。反応温度は10℃〜80℃であり、この反応に適した溶媒は例えばジオキサンである。さらに別の反応パラメータは、Organic Lett.、2003年、第5巻、4749〜4752ページに記載されている。
【0050】
一般式(IV)の化合物は、反応スキーム2によって調製できる。
【0051】
スキーム2:
【0052】
【化12】

【0053】
一般式(XI)のカルボニル化合物(ただしBは一般式(I)で定義したのと同じものである)を、一般式(X)のニトロアルカン(ただしR2は一般式(I)で定義したのと同じものである)と、(a)Baer, H.H.、Urbas., L、『ニトロ基とニトロソ基の化学』(Feuer, H.編、インターサイエンス社、ニューヨーク、1970年)、第2巻、75〜20ページ;(b)Schickh, G.、Apel, H.G.、『有機化学の方法』(ホウベン-ヴァイル社、シュツッツガルト、1971年)、第10/1巻、9〜462ページ;(c)Kabalka, G.W.、Varma, R.s.、Org. Prep. Proc. Int.、1987年、283〜328ページ;(d)Luzzio, F.A.、Tetrahedron、2001年、第57巻、915〜945ページのいずれかに従ってヘンリー反応(ニトロアルドール反応)させると、一般式(IX)の2-ニトロアルコール化合物(ただしBとR2は一般式(I)で定義したのと同じものである)が得られ、それを脱水することにより、一般式(VIII)のニトロアルケン(ただしBとR2は一般式(I)で定義したのと同じものである)が得られる。そのような脱水ステップは、例えばOrg. Synthesis Coll.、第1巻、413ページ、1941年に記載されている。ここで述べた反応群は、適切なプロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の中で0〜80℃の温度で実施されるが、溶媒なしの条件でも実施できる。文献に記載されている適切な塩基として、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシド、第四級アンモニウム塩などがある。鉄と塩酸を用いて一般式(VIII)のニトロアルケンを還元し、一般式(VII)のオキシム(ただしBとR2は一般式(I)で定義したのと同じものである)を得ることができる。このオキシムを加水分解して一般式(VI)のケトン(ただしBとR2は一般式(I)で定義したのと同じものである)にすることができる。その方法は、例えばJ. Am. Chem. Soc.、第65巻、1180ページ、1943年と、Synthetic Commun.,第35巻、913〜922ページ、2005年に記載されている。この反応は、適切な有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、t-ブタノール、トリフルオロエタノール、ジオキサン)の中で40〜100℃の温度で実施する。一般式(V)の化合物(ただしR1は一般式(I)で定義したのと同じものであり、Xは離脱基(例えばハロゲン、メシラート、トシラート)である)を用いて塩基の存在下で一般式(VI)のケトンをアルキル化すると、望む一般式(IV)のαアルキル化ケトン(ただしB、R1、R2は一般式(I)で定義したのと同じものである)が得られる。この反応は、非プロトン性の不活性な有機溶媒の中で実施することが望ましい。そのような溶媒は、炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン)である。反応温度は-20℃〜+120℃である。適切な塩基は、無機塩基である例えば水素化物(水素化ナトリウム、水素化カルシウムなど)や水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)だが、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素塩(炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなど)も塩基として使用できる。これらの塩基は、そのままで使用すること、または触媒量の相間移動触媒(例えばクラウンエーテル(その中でも特に18-クラウン-6)やテトラアルキルアンモニウム塩)とともに使用することができる。
【0054】
一般式(IB)の化合物は、反応スキーム3によって調製できる。
【0055】
スキーム3:
【0056】
【化13】

【0057】
一般式(IB)のシクロアルケニル化合物(ただしR4、A、Bは一般式(I)で定義したのと同じものであり、nとmは1〜3である)は、一般式(XII)の2-アリールシクロアルカノン(ただしR4とBは一般式(I)で定義したのと同じものであり、nとmは1〜3である)を一般式(II)の第一級アミド(ただしAは一般式(I)で定義したのと同じものである)と縮合させることによって調製できる。そのような縮合反応は、例えばJ. Org. Chem.、1995年、第60巻、4324〜4330ページに記載されている。この反応は、適切な溶媒の中で酸性触媒を用いて還流温度にて実施され、水が共沸除去される。適切な溶媒はトルエンまたはキシレンである。パラ-トルエンスルホン酸(PTSA)とアンバーリスト15樹脂を酸性触媒として用いることができる。
【0058】
一般式(II)の化合物は、反応スキーム4によって調製できる。
【0059】
スキーム4:
【0060】
【化14】

【0061】
公知の方法を利用して一般式(XIII)の化合物(ただしAは一般式(I)で定義したのと同じものである)をアンモニアと反応させると一般式(II)の化合物が得られる。
【0062】
一般式(I)のさらに別のあらゆる化合物(ただしA、B、R1、R2は上記のように定義されている)を調製するには、公知の適切な多数の標準的方法がある(例えばアルキル化、ハロゲン化、アシル化、アミド化、オキシム化、酸化、還元)。適切な調製法の選択は、中間体に含まれる置換基の性質(反応性)による。
【0063】
一般式(XIII)の化合物は公知であり、そのうちのいくつかは市場で入手することができる。この化合物は、例えばWO 00/09482、WO 02/38542、WO 04/018438、ヨーロッパ特許第0-589-301号、WO 93/11117、Arch. Pharm. Res.、2000年、第23巻(4)、315〜323ページに記載されているのと同様にして調製することができる。
【0064】
一般式(V)、(X)、(XI)、(XII)の化合物は公知であり、市場で入手すること、または上記の参考文献や従来技術で知られている方法に従って調製することができる。
【0065】
一般式(I)の化合物に至る反応は、不活性な非プロトン性有機溶媒の中で実施することが望ましい。そのような溶媒は、炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロベンゼン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、ニトリル(例えばアセトニトリル、プロピオニトリル)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン)である。反応温度は-20℃〜+120℃であることが望ましい。一般に、反応はわずかに発熱性であり、原則として室温で実施することができる。反応時間を短縮するため、または反応を開始させるため、混合物をその反応混合物の沸点まで短時間加熱するとよい。反応時間は、数滴の塩基を反応触媒として添加することによっても短くできる。適切な塩基は、特に、第三級アミン(例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン)である。しかし無機塩基である水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カルシウム)、水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、炭酸水素塩(例えば炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)も塩基として使用できる。これらの塩基は、そのままで、または触媒量の相間移動触媒(例えばクラウンエーテル(その中でも特に18-クラウン-6)やテトラアルキルアンモニウム塩)とともに使用することができる。
【0066】
一般式(I)の化合物は、濃縮によって、および/または溶媒の蒸発によって分離した後、得られた固形残留物を、その固形残留物が容易に溶けない溶媒(例えばエーテル、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素)の中で再結晶させること、または研和することによって精製するという一般的な方法で分離することができる。
【0067】
一般式(I)の化合物と、適切な場合のその互変異性体は、分子内に存在する不斉炭素原子の数、絶対配置、相対配置に応じ、および/または分子内に存在する非芳香族二重結合の配置に応じ、可能な異性体のうちの1つの形態で存在すること、またはそれらの混合物として存在することができる。例えば純粋な異性体(対掌体および/またはジアステレオマーなど)の形態で、または異性体混合物(鏡像異性体混合物(例えばラセミ化合物)、ジアステレオマー混合物、ラセミ化合物混合物)として存在できる。本発明は、純粋な異性体に関するとともに、可能なあらゆる異性体混合物にも関する。したがって本発明は、それぞれの場合に立体化学の詳細について具体的に言及していないときでさえ、それぞれの場合に上記の意味と後述する意味で理解されるべきである。
【0068】
選択した出発材料と方法に応じて得られる一般式(I)の化合物のジアステレオ異性体混合物またはラセミ化合物混合物は、諸成分の物理化学的な違いに基づき、公知の手段(例えば分別結晶、および/または蒸溜、および/またはクロマトグラフィ)で純粋なジアステレオマーまたはラセミ化合物に分離することができる。
【0069】
同様のやり方で得られる鏡像異性体混合物(例えばラセミ化合物)は、公知の方法で光学的対掌体に分割することができる。例えば、光学活性な溶媒からの再結晶化による方法、キラル吸着体上のクロマトグラフィ(例えばアセチルセルロース上での高性能液体クロマトグラフィ(HPLC))による方法、適切な微生物の助けを借りる方法、固定化された特定の酵素を用いた切断による方法、封入化合物の形成(例えばキラルなクラウンエーテルの使用)を通じた方法(この場合、1つの鏡像異性体だけが錯体化される)、ジアステレオマー塩への変換による方法(例えば塩基性最終生成物であるラセミ化合物を光学活性のある酸(カルボン酸(例えばショウノウ酸、酒石酸、リンゴ酸)やスルホン酸(例えばショウノウスルホン酸)など)と反応させ、このようにして得られるジアステレオマー混合物を、例えば溶解度の違いに基づいて分別結晶により分離してジアステレオマーを取得し、そこから適切な試薬(例えば塩基性試薬)の作用によって望む鏡像異性体を遊離させる方法)がある。
【0070】
純粋なジアステレオマーまたは鏡像異性体は、本発明に従い、適切な異性体混合物を分離することによってだけでなく、一般に知られているジアステレオ選択合成法または鏡像異性選択合成法(例えば適切な立体化学の出発材料を用いて本発明の方法を実施すること)によっても得ることができる。
【0071】
個々の成分が異なる生物活性を持つのであれば、それぞれの場合に生物学的により有効な異性体(例えば鏡像異性体またはジアステレオマー)または異性体混合物(例えば鏡像異性体混合物またはジアステレオマー混合物)を分離または合成することが望ましい。
【0072】
化合物(I)と、適切な場合のその互変異性体は、水和物の形態で得ること、および/または他の溶媒(例えば固体形態で存在する化合物の結晶化に使用できたであろう溶媒)を含むこともできる。
【0073】
本発明による一般式(I)の化合物は、実際的な目的において、植物病原性微生物(例えば真菌、細菌、ウイルス)によって起こる病気から有用な植物を保護する非常に有利な活性スペクトルを有することが見いだされた。
【0074】
本発明は、植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止するため、一般式(I)の化合物を、活性成分として、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法に関する。本発明による一般式(I)の化合物は、少ない散布量で優れた活性を示すとともに、植物によってよく許容され、環境にとって安全であることを特徴とする。この化合物は、非常に有用な治療特性、予防特性、全身特性を持つため、多数の有用な植物を保護するのに用いられる。一般式(I)の化合物は、有用なさまざまな作物またはその部分(果実、花、葉、茎、塊茎、根)に発生する病気を抑制する、またはなくすと同時に、あとから成長するこうした部分を例えば植物病原性微生物から保護するのに使用できる。
【0075】
一般式(I)の化合物をドレッシング剤として用い、植物増殖材料(特に種子(果実、塊茎、穀粒))や植物の挿し穂(例えばイネ)を処理したり、真菌の感染や土中に発生する植物病原性真菌から保護したりすることもできる。
【0076】
さらに、本発明による一般式(I)の化合物は、関連する分野(例えば工業材料(木や、木に関係する工業材料)の保護、食物の保管、衛生管理)で真菌を制御するのに使用できる。
【0077】
一般式(I)の化合物は、例えば、以下のクラスの植物病原性真菌に対して有効である:不完全菌類(例えばボトリチス、ピリクラリア、ヘルミントスポリウム、フザリウム、セプトリア、ケルコスポラ、アルテルナリア)、担子菌類(例えばリゾクトニア、ヘミレイア、プクキニア)。さらに、この化合物は、子嚢菌類(例えばベンチュリア、エリシフェ、ポドスフェラ、モニリニア、ウンキヌラ)と卵菌類(例えばフィトフトラ、ピチウム、プラスモパラ)に対しても有効である。著しい活性が、うどん粉病菌(エリシフェ属)に対して観察されている。さらに、一般式(I)の新規な化合物は、植物病原性細菌とウイルス(例えばキサントモナス属、シュードモナス属、エルウィニア・アミロボラ、タバコモザイクウイルス)に対しても有効である。優れた活性が、アジアダイズさび病菌(ファコプソラ・パキリジ)に対して観察されている。
【0078】
本発明の範囲では、保護すべき有用な植物の典型例として、以下の植物種がある:穀類(コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、モロコシ、ならびに関連する種);ビート(サトウダイコン、飼料ビート);梨果、核果、小果実(例えばリンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー);マメ類(インゲンマメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ);油性植物(セイヨウアブラナ、カラシ、ポピー、オリーブ、ヒマワリ、ココナツ、ヒマ、カカオマメ、ピーナツ);ウリ科植物(カボチャ、キュウリ、メロン);繊維植物(ワタ、アマ、アサ、ジュート);柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ミカン);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ);クスノキ科(アボカド、シナモン、ショウノウ)や;タバコ、ナッツ、コーヒー、ナス、サトウキビ、茶、コショウ、ブドウの木、ホップ、バナナ、天然ゴムの木、装飾植物。
【0079】
“有用な植物”という用語には、育種または遺伝子工学の従来法を用いた結果として除草剤(例えばブロモキシニル)やさまざまなクラスの除草剤(例えばHPPD阻害剤、ALS阻害(例えばプリミスルフロン、プロスルフロン、トリフロキシスルフロン)、EPSPS(5-エノール-ピロビル-シキメート-3-ホスフェート-シンターゼ)阻害剤、GS(グルタミンシンテターゼ)阻害剤、PPO(プロトポルフィリノーゲン-オキシダーゼ)阻害剤)に対して寛容にされた有用な植物も含まれるものとする。従来の育種法(突然変異誘発)によってイミダゾリノン(例えばイマザモクス)に対して寛容にされた作物の一例は、クリアフィールド(登録商標)サマーレイプ(カノラ)である。遺伝子工学の方法によって除草剤やさまざまなクラスの除草剤に対して寛容にされた作物の例としてグリホサート耐性トウモロコシとグルホシネート耐性トウモロコシのさまざまな品種があり、ラウンドアップレディ(登録商標)、ハーキュレックスI(登録商標)、リバティリンク(登録商標)の商標名で市販されている。
【0080】
“有用な植物”という用語には、組み換えDNA技術を利用することで、選択的に作用する1種類以上の毒素(例えば毒素産生細菌、特にバシラス属の細菌からの毒素)を合成できるように改変された有用な植物も含まれるものとする。
【0081】
“有用な植物”という用語には、組み換えDNA技術を利用することで、選択的な作用を有する抗病原物質(例えばいわゆる“病原関連タンパク質”(PRP、例えばヨーロッパ特許公開EP-A-0 392 225を参照のこと))を合成できるように改変された有用な植物も含まれるものとする。そのような抗病原物質と、そのような抗病原物質を合成できるトランスジェニック植物は、例えばヨーロッパ特許公開EP-A-0 392 225、WO 95/33818、ヨーロッパ特許公開EP-A-0 353 191によって公知である。そのようなトランスジェニック植物の生産方法は当業者に広く知られており、例えば上記の公開公報に記載されている。
【0082】
この明細書では、有用な植物の“場所”という用語に、有用な植物の植物増殖材料を播くか土の中に移すかした結果としてその有用な植物が成長している場所が含まれるものとする。そのような場所の一例は、作物が成長している畑である。
【0083】
“植物増殖材料”という用語は、植物のうちでその植物を増やすのに使用できる生殖部分(例えば種子)や、生長材料(挿し穂や塊茎(例えばジャガイモ))を意味するものとする。例として、(厳密な意味での)種子、根、果実、塊茎、球根、地下茎、植物のいろいろな部分などが挙げられよう。発芽した植物と、発芽後または土から芽を出した後に移植されることになる若い植物も挙げられる。若い植物は、移植する前に全体または一部を浸漬処理して保護するとよい。“植物増殖材料”は、種子を表わすことが好ましい。
【0084】
一般式(I)の化合物は、そのままの形態で使用できるが、従来の製剤で一般に用いられている基剤およびアジュバントとともに使用するほうが好ましい。
【0085】
したがって本発明は、植物病原性微生物を制御してその植物病原性微生物から保護するため、一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物に関するとともに、有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止するため、活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物を、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法にも関する。
【0086】
この目的を実現するため、一般式(I)の化合物と不活性な基剤は、通常は、公知の方法で、乳化可能な濃縮液、被覆可能なペースト、直接スプレーできる溶液、希釈できる溶液、希釈したエマルジョン、湿潤化可能な粉末、可溶性粉末、ダスト、顆粒、カプセル(例えばポリマー物質の中に封入される)にされる。組成物のタイプと同様、散布法(例えばスプレー、噴霧、散布、ばらまき、被覆、注入)を目的と周囲環境に合わせて選択する。組成物は、さらに別のアジュバント(例えば安定剤、発泡防止剤、粘性調節剤、結合剤、粘着付与剤、肥料、微量栄養素や、植物の成長に影響を与えるそれ以外の調製物)を含むこともできる。
【0087】
適切な基剤とアジュバントは固体でも液体でもよく、それは製剤化技術において有用な物質(天然の無機物質、再生された無機物質、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤、肥料)である。このような基剤は、例えばWO 97/33890に記載されている。
【0088】
一般式(I)の化合物、または活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物は、別の化合物と同時に、または順番に、植物が生えている場所、または処理する植物に散布することができる。その別の化合物として、例えば肥料や、微量栄養素や、植物の成長に影響を与えるそれ以外の調製物が可能である。その別の化合物は、選択的除草剤、殺虫剤、殺真菌剤、殺菌剤、殺線虫剤、殺陸貝剤でもよく、望むのであれば、これら調製物のうちのいくつかと、従来の製剤で一般に用いられている基剤、界面活性剤、付着促進アジュバントとの混合物であってもよい。
【0089】
一般式(I)の化合物、または活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物を散布する好ましい1つの方法は、葉に付着させるというものである。付着させる頻度と付着量は、対応する病原菌の感染リスクによって異なる。しかし一般式(I)の化合物は、植物が生えている場所に液体製剤を散布することによって、またはその化合物を固体形態(例えば顆粒の形態)で土に散布すること(土への散布)によって、土から根を通して植物に浸透させること(全身作用)もできる。水田栽培のイネでは、そのような顆粒を水田に散布することができる。一般式(I)の化合物は、この殺真菌剤の液体製剤の中に種子または塊茎を浸すことによって、または固体製剤を種子または塊茎に被覆することによって付着させること(被覆)もできる。
【0090】
製剤、すなわち一般式(I)の化合物と、望むのであれば固体または液体のアジュバントとを含む組成物は、公知の方法で調製される。典型的には、その混合物を増量剤(例えば溶媒、固体基剤や、場合によっては界面活性化合物(界面活性剤))とともに混合および/または粉砕する。
【0091】
農業用製剤は、通常は、0.1〜99重量%(0.1〜95重量%が好ましい)の一般式(I)の化合物と、99.9〜1重量%(99.8〜5重量%が好ましい)の固体または液体のアジュバントと、0〜25重量%(0.1〜25重量%が好ましい)の界面活性剤を含んでいる。
【0092】
市販の製品は濃縮液にすることが好ましいが、エンド・ユーザーは、通常は希釈した製剤を使用することになる。
【0093】
望ましい散布量は、通常は、1ヘクタール(ha)につき活性成分(a.i.)が5g〜2kgである。この量は、10g〜1kg a.i./haであることが好ましく、20g〜600g a.i./haであることが最も好ましい。種子浸漬剤として用いる場合には、好ましい付着量は、種子1kgにつき活性物質が10mg〜1gである。望む作用を得るための付着量は実験によって決定できる。その量は、例えば作用のタイプ、有用な植物の成長段階、散布(場所、時期、付着法)に依存し、これらのパラメータのために広い範囲で異なる可能性がある。
【0094】
驚くべきことに、一般式(I)の化合物は、有用な作物を植物病原性生物の攻撃から保護したり、植物病原性生物に感染した有用な作物を治療したりする方法でも利用できることが見いだされた。この方法は、グリホサートと一般式(I)の少なくとも1種類の化合物の組み合わせを、植物(ただしこの植物はグリホサートに対する抵抗力があるか、グリホサートに敏感である)またはその植物が生えている場所に散布する操作を含んでいる。
【0095】
この方法により、グリホサートなしで一般式(I)の化合物を用いる場合と比べて病気の制御を予想以上に改善することができる。この方法は、一般式(I)の化合物による病気の制御を促進する上で有効である。グリホサートと一般式(I)の少なくとも1種類の化合物の混合物は、一般式(I)の化合物によって少なくとも部分的に制御される病気のスペクトルを広げることができるが、一般式(I)の化合物によってある程度制御されることがすでに知られている病気に対する一般式(I)の化合物の活性の増大も、観察される効果である。
【0096】
本発明の方法は、菌類界、担子菌門、サビキン綱、サビキン亜綱、サビキン目の植物病原性生物(一般にサビキンと呼ばれる)に対して特に有効である。農業に特に大きな影響のあるサビキンとして、ファコプソラ科のもの(特にファコプソラ属のもので、例えばファコプソラ・パキリジ(アジアダイズさび病菌とも呼ばれる))とプクキニア科のもの(特にプクキニア属のもので、例えば穀類で問題のある病気を起こすプクキニア・グラミニス(茎さび病菌または黒さび病菌としても知られる)や、プクキニア・レコンディタ(赤さび病菌としても知られる))がある。
【0097】
この方法の一実施態様は、有用な作物を植物病原性生物の攻撃から保護する方法および/または植物病原性生物に感染した有用な作物を治療する方法であり、この方法は、グリホサート(その塩やエステルも含む)と、その植物病原性生物に対する活性を有する一般式(I)の少なくとも1種類の化合物を、植物、その植物の一部、その植物が生えている場所のうちの少なくとも1つに散布する操作を含んでいる。
【0098】
驚くべきことに、上記の一般式(I)の化合物またはその薬理学的な塩は、動物における微生物感染症の治療および/または予防にとって望ましい活性スペクトルも有することが見いだされた。
【0099】
“動物”は任意の動物が可能であり、例えば、昆虫、哺乳動物、爬虫類、魚類、両生類などが挙げられる。しかしその中で哺乳動物が好ましく、ヒトが最も好ましい。“治療”は、微生物に感染した動物に使用して、その感染の増大または広がりを減らす、または遅延させる、または停止させること、またはその感染を減らすこと、またはその感染から治癒させることを意味する。“予防”は、微生物に感染した明らかな徴候のない動物に使用して、将来のあらゆる感染を防ぐこと、または将来の感染の増大または広がりを減らしたり遅延させたりすることを意味する。
【0100】
本発明によれば、一般式(I)の化合物を用いて動物における微生物感染症の治療および/または予防に使用する薬の製造方法が提供される。一般式(I)の化合物を医薬として用いる方法も提供される。動物の治療において一般式(I)の化合物を抗微生物剤として用いる方法も提供される。本発明によれば、活性成分としての一般式(I)の化合物またはその薬理学的に許容可能な塩と、薬理学的に許容可能な希釈剤または基剤とを含む医薬組成物も提供される。この組成物は、動物における微生物感染症の治療および/または予防に使用することができる。この医薬組成物は、経口投与に適した形態(例えば錠剤、ロゼンジ、硬質カプセル、水性懸濁液、油性懸濁液、エマルジョン、分散可能な粉末、分散可能な顆粒、シロップ、エリキシル)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、局所塗布に適した形態(例えばスプレー、クリーム、ローション)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、非経口投与に適した形態(例えば注射液)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、吸入可能な形態(例えばエーロゾル・スプレー)にすることができる。
【0101】
一般式(I)の化合物は、動物に微生物感染症を起こすさまざまな微生物種に対して有効である。そのような微生物種の例は、アスペルギルス症を起こす微生物(例えばアスペルギルス・フミガトゥス、アスペルギルス・フラブス、アスペルギルス・テルス、アスペルギルス・ニドゥランス、アスペルギルス・ニゲール)、ブラトミセス症を起こす微生物(例えばブラトミセス・デルマティティディス)、カンディダ症を起こす微生物(例えばカンディダ・アルビカンス、カンディダ・グラブラタ、カンディダ・トロピカリス、カンディダ・パラプシロシス、カンディダ・クルセイ、カンディダ・ルシタニエ)、コクシジオイデス症を起こす微生物(例えばコクシジオイデス・イミティス)、クリプトコッカス症を起こす微生物(例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス)、ヒストプラズマ症を起こす微生物(例えばヒストプラズマ・カプスラトゥム)、接合菌症を起こす微生物(例えばアブシディア・コリムビフェラ、リゾムーコル・プシルス、リゾプス・アリズス)である。別の例は、フザリウム属(例えばフザリウム・オキシスポルム、フザリウム・ソラニ)、セドスポリウム属(例えばセドスポリウム・アピオスペルムム、セドスポリウム・プロリフィカンス)である。さらに別の例は、ミクロスポルム属、トリコフィトン属、エピデルモフィトン属、ムーコル属、スポロトリックス属、フィアロフォラ属、クラドスポリウム属、ペトリエリジウム属、パラコクシジオイデス属、ヒストプラズマ属である。
【0102】
例示としての以下の実施例において、上に説明した本発明をより詳しく説明するが、本発明がこの説明に限定されることはない。
【0103】
調製の実施例:
【0104】
実施例P1:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[(E/Z)-2-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ビニル]-アミド(化合物番号1.007)の調製
【0105】
【化15】

【0106】
a)トリフルオロ-メタンスルホン酸-2-(4-クロロ-フェニル)-1-メチルビニルエステルの調製
【0107】
【化16】

【0108】
水素化ナトリウム(515mgが55〜65重量%の割合で含まれる、11.8ミリモル)を0℃のTHF(15ml)に懸濁させて撹拌している懸濁液に4クロロフェニルアセトン(1.0g、5.9ミリモル)を添加した。この反応混合物を1時間にわたって撹拌した後、N-フェニル-(ビス)-トリフルオロメタンスルホンアミド(2.5g、7.08ミリモル)を添加した。得られた反応混合物を周囲温度にて3時間にわたって撹拌した。MeOtBu(20ml)とエタノール(1ml)を添加した。その後、水(20ml)を添加し、層を分離させた。水層をMeOtBu(20ml)で抽出した。1つにまとめた有機層を水(20ml)と10%塩化ナトリウム溶液(20ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、真空中で濃縮した。この濃縮液をシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9:1)によって精製した。トリフルオロ-メタンスルホン酸-2-(4-クロロ-フェニル)-1-メチルビニルエステルのE-異性体とZ-異性体の混合物が無色の油の形態で1.5g(理論値の84%)得られた。
【0109】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ6.57 (s, 1H, (Z形))、6.1 (s, 1H, (E形))、2.27 (s, 3H, (E形))、2.25 (s, 3H, (Z形))。
【0110】
b)3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[(E/Z)-2-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ビニル]-アミド(化合物番号1.007)の調製
【0111】
実施例1aのようにして調製したトリフルオロメタンスルホン酸エノール(200mg、0.66ミリモル)をジオキサン(4ml)に溶かした溶液に、周囲温度にて、Cs2CO3(301mg、0.92ミリモル)、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アミド(150mg、0.86ミリモル)、キサントホス(38mg、0.06ミリモル)、Pd2(dba)3(20mg、0.02ミリモル)を添加した。この混合物を窒素雰囲気下で50℃にて15時間にわたって撹拌した。この混合物を濾過し、濃縮し、シリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=8:2)によって精製した。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[(E)-2-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ビニル]-アミドと3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[(Z)-2-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ビニル]-アミドの混合物が得られた。
【0112】
1H NMR (400MHz, CDCl3):E-異性体δ2.12 (d, 3H, CH3)、3.39 (s, 3H, CH3)、6.85 (t, 1H, CHF2, J=55Hz)、7.18 (m, 2H,ArH)、7.30 (m, 2H, ArH)、7.30 (s, 1H)、7.49 (s, 1H, NH)、7.97 (s, 1H, ピラゾール-H);Z-異性体δ2.34 (d, 3H, CH3)、3.98 (s, 3H, CH3)、5.83 (s, 1H)、6.83 (t, 1H, CHF2, J=55Hz)、7.19 (m, 2H, ArH)、7.26 (m, 2H, ArH)、7.64 (s, 1H, NH)、7.84 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0113】
実施例P2:1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-クロロフェニル)-シクロヘクス-1-エニル]-アミド(化合物番号2.025)の調製
【0114】
【化17】

【0115】
(J. Org. Chem.、第70巻、2005年、2967ページに記載されているようにして調製した)0.521gの2-(4-クロロフェニル)-シクロヘキサノンと0.482gの1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸アミドを5mgのp-トルエンスルホン酸とともに20mlのトルエンに懸濁させ、24時間にわたって溶媒の還流温度に加熱して水を連続的に除去した。この反応混合物を5%炭酸水素ナトリウムと水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を真空下で除去した。この反応混合物をシリカゲル・カラム上のクロマトグラフィ(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:1)によって精製した。0.55gの1-メチル-3-トリフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-クロロフェニル)-シクロヘクス-1-エニル]-アミドが結晶の形態で得られた(融点145〜148℃)。
【0116】
実施例P3:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-クロロフェニル)-シクロペント-1-エニル]-アミド(化合物番号1.024)の調製
【0117】
【化18】

【0118】
a)2-(4'-クロロフェニル)シクロペント-2-エノンの調製
【0119】
【化19】

【0120】
(Org. Lett.、第6巻、2004年、3289ページに記載されているようにして調製した)4.8gの2-ヨード-シクロペント-2-エノンと、5.4gの4-クロロフェニルボロン酸と、8.5gの酸化銀(I)と、0.425gのトリフェニルアルシンと、0.265gのPd(C6H5CN2)2Cl2を90mlのテトラヒドロフランと20mlの水に添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下で16時間にわたって撹拌した。この反応混合物を塩化アンモニウムで希釈し、濾過し、酢酸エチルで2回抽出した。残留物をクロマトグラフィによって精製し、溶媒を蒸発させた。3.44gの2-(4'-クロロフェニル)シクロペント-2-エノンが得られた(融点71〜72℃)。
【0121】
b)トリフルオロ-メタンスルホン酸-2-(4-クロロ-フェニル)-1-メチル-ビニルエステルの調製
【0122】
【化20】

【0123】
実施例3aに記載したようにして調製した0.5gの生成物を15mlのジクロロメタンに溶かし、-78℃に冷却した。ナトリウムセレクトリドの1M溶液2.85mlを一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を-78℃にて2時間にわたって撹拌した。1gのN,N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリンを添加し、得られた混合物を周囲温度まで温めた。水を添加し、得られた反応混合物をジクロロメタンで抽出し、水で洗浄し、乾燥させた。溶媒を除去した後、反応混合物のクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)をシリカゲル上で実施した。0.61gのトリフルオロメタンスルホン酸エノールが得られた。この反応生成物をさらに精製することなく直接使用した。
【0124】
c)3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-クロロフェニル)-シクロペント-1-エニル]-アミド(化合物番号1.024)の調製
【0125】
実施例3bに記載したようにして調製したトリフルオロメタンスルホン酸エノールを窒素雰囲気下で12mlのジオキサンに溶かし、0.85gの炭酸セシウムと0.425gの1-メチル-3-ジフルオロメチル-4-ピラゾールカルボキサミドを添加した。0.19gのキサントホス(登録商標)と0.1gのPd2(dba)3を添加し、得られた懸濁液を窒素雰囲気下で50℃にて16時間にわたって撹拌した。得られた反応混合物を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、溶媒を除去し、反応生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)によって精製した。0.4gの3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-クロロフェニル)-シクロペント-1-エニル]-アミドが得られた(融点103〜105℃)。
【0126】
表1〜6:一般式(IC)の化合物
【0127】
以下の表1〜6に記載した一般式(IC)の好ましい個々の化合物によって本発明をさらに説明する。特徴のデータは表13に示してある。
【0128】
【化21】

【0129】
以下の表Yに続く表1〜6のそれぞれには、一般式(IC)においてR1、R2、R7a、R7b、R7cが表Yに与えられたものであり、Aが関連する表1〜6に与えられたものである282種類の化合物が含まれている。したがって表1は、Yが1であるときの表Yに対応し、Aは表1に与えられているものであり、表2は、Yが2であるときの表Yに対応し、Aは表2に与えられたものであり、以下表3〜6に関しても同様である。一般式(IC)のあらゆる化合物は、一般式(I)の化合物に関して一般式(I)の化合物(Z形)および一般式(II)の化合物(E形)として示したように、少なくとも2種類の異なる異性体の形態で生成する。例えば番号Y.001の化合物は、2つの異なる異性体の形態Y.001(Z形)およびY.001(E形)として生成する。
【0130】
【化22】

【0131】
一般式(IC)の他のいくつかの化合物、その中でも特に挙げるならば化合物番号Y.007、Y.019、Y.033、Y.045は、3つの異なる異性体の形態として生成する。例えば化合物番号Y.007は、3つの異なる異性体の形態Y.007(Z形)、Y.007(E形)、Y.007(3):
【化23】

として生成する。
【0132】
一般式(IC)の他の化合物は、4種類以上の異性体の形態として生成する。例えば化合物番号Y.008〜Y.018は、4種類以上の異性体の形態として生成する。
【0133】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0134】
表1には、一般式(IA)においてAが
【化24】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R7a、R7b、R7cが表Yに規定されているものである282種類の化合物が提示されている。例えば化合物1.001は、Z形およびE形として、またはこれらの混合物として生成する。化合物1.001(Z形)と化合物1.001(E形)は、以下の構造を持つ。
【0135】
【化25】

【0136】
表2には、一般式(IA)においてAが
【化26】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R7a、R7b、R7cが表Yに規定されているものである282種類の化合物が提示されている。
【0137】
表3には、一般式(IA)においてAが
【化27】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R7a、R7b、R7cが表Yに規定されているものである282種類の化合物が提示されている。
【0138】
表4には、一般式(IA)においてAが
【化28】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R7a、R7b、R7cが表Yに規定されているものである282種類の化合物が提示されている。
【0139】
表5には、一般式(IA)においてAが
【化29】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R7a、R7b、R7cが表Yに規定されているものである282種類の化合物が提示されている。
【0140】
表6には、一般式(IA)においてAが
【化30】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R7a、R7b、R7cが表Yに規定されているものである282種類の化合物が提示されている。
【0141】
表7〜12:一般式(ID)の化合物
【0142】
以下の表7〜12に記載した一般式(ID)の好ましい個々の化合物によって本発明をさらに説明する。特徴のデータは表13に示してある。
【0143】
【化31】

【0144】
以下の表Wに続く表7〜12のそれぞれには、一般式(ID)においてB、R1、R2が表Wに与えられたものであり、Aが関連する表7〜12に与えられたものである288種類の化合物が含まれている。したがって表7は、Wが8であるときの表Wに対応し、Aは表7に与えられたものであり、表8は、Wが8であるときの表Wに対応し、Aは表8に与えられたものであり、以下表9〜12に関しても同様である。一般式(IC)の化合物に関して説明したように、一般式(ID)の各化合物も異なる異性体の形態で生成する。
【0145】
表W:
【0146】
表Wにおいて、基Bは、基B1、B2、B3、B4のいずれかを表わす。
【0147】
【化32】

【0148】
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【0149】
表7には、一般式(IB)においてAが
【化33】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、B、R1、R2、R7d、R7eが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。例えば化合物7.001(E形)は、以下の構造を持つ。
【0150】
【化34】

【0151】
表8には、一般式(IB)においてAが
【化35】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、B、R1、R2、R7d、R7eが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0152】
表9には、一般式(IB)においてAが
【化36】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、B、R1、R2、R7d、R7eが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0153】
表10には、一般式(IB)においてAが
【化37】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、B、R1、R2、R7d、R7eが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0154】
表11には、一般式(IB)においてAが
【化38】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、B、R1、R2、R7d、R7eが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0155】
表12には、一般式(IB)においてAが
【化39】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、B、R1、R2、R7d、R7eが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0156】
表13:特徴のデータ
【0157】
表13には、表1〜12の中から選択した化合物に関する融点とNMRのデータを示してある。特に断わらない限り、NMR測定のための溶媒としてCDCl3を使用した。複数の溶媒の混合物が存在している場合には、例えばCDCl3/d6-DMSOと表記する。なお、あらゆる場合のあらゆる特徴的なデータを示そうとはしていない。
【0158】
表13と以下の説明の全体を通じ、温度は℃で表記し、“NMR”は核磁気共鳴を意味し、MSは質量スペクトルを表わし、“%”は、対応する濃度が他の単位で示されていない限り重量%である。この明細書全体を通じて以下の略号を用いる。
m.p.= 融点 b.p.= 沸点
s = 一重項 br = 広い
d = 二重項 dd = 二重の二重項
t = 三重項 q = 四重項
m = 多重項 ppm = 百万分率
【0159】
【表12】

【0160】
一般式(I)の化合物に関する製剤の実施例:
【0161】
実施例F-1.1〜F-1.3:乳化可能な濃縮液
【0162】
成分 F-1.1 F-1.2 F-1.3
表1〜12の化合物 25% 40% 50%
ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム 5% 8% 6%
ヒマシ油ポリエチレングリコールエーテル
(36モルのエチレンオキシ単位) 5% - -
トリブチルフェノールポリエチレングリコールエーテル
(30モルのエチレンオキシ単位) - 12% 4%
シクロヘキサノン - 15% 20%
キシレン混合物 65% 25% 20%
【0163】
望むあらゆる濃度のエマルジョンは、このような濃縮液を水で希釈することによって調製できる。
【0164】
実施例F-2:乳化可能な濃縮液
【0165】
成分 F-2
表1〜12の化合物 10%
オクチルフェノールポリエチレングリコールエーテル
(4〜5モルのエチレンオキシ単位) 3%
ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム 3%
ヒマシ油ポリグリコールエーテル(36モルのエチレンオキシ単位)4%
シクロヘキサノン 30%
キシレン混合物 50%
【0166】
望む任あらゆる濃度のエマルジョンは、このような濃縮液を水で希釈することによって調製できる。
【0167】
実施例F-3.1〜F-3.4:溶液
【0168】
成分 F-3.1 F-3.2 F-3.3 F-3.4
表1〜12の化合物 80% 10% 5% 95%
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20% - - -
ポリエチレングリコール(相対分子量:400原子質量単位)- 70% - -
N-メチルピロリド-2-オン - 20% - -
エポキシド化ココナツ油 - - 1% 5%
ベンジン(沸点の範囲:160〜190℃) - - 94% -
【0169】
溶液は、微小液滴の形態で使用するのに適している。
【0170】
実施例F-4.1〜F-4.4:顆粒
【0171】
成分 F-4.1 F-4.2 F-4.3 F-4.4
表1〜12の化合物 5% 10% 8% 21%
カオリン 94% - 79% 54%
高分散ケイ酸 1% - 13% 7%
アタパルジャイト - 90% -1 8%
【0172】
本発明の新規な化合物をジクロロメタンに溶かし、得られた溶液を基剤の表面にスプレーした後、溶媒を真空下での蒸溜によって除去する。
【0173】
実施例F-5.1とF-5.2:ダスト
【0174】
成分 F-5.1 F-5.2
表1〜12の化合物 2% 5%
高分散ケイ酸 1% 5%
タルク 97% -
カオリン - 90%
【0175】
そのまま使用できるダストは、すべての成分を密に混合することによって得られる。
【0176】
実施例F-6.1〜F-6.3:湿潤化可能な粉末
【0177】
成分 F-6.1 F-6.2 F-6.3
表1〜12の化合物 25% 50% 75%
リグニンスルホン酸ナトリウム 5% 5% -
ラウリル硫酸ナトリウム 3% - 5%
ジイソブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム - 6% 10%
オクチルフェノールポリエチレングリコールエーテル
(7〜8モルのエチレンオキシ単位) - 2% -
高分散ケイ酸 5% 10% 10%
カオリン 62% 27% -
【0178】
すべての成分を混合し、得られた混合物を適切なミルの中で完全に粉砕して湿潤化可能な粉末を得る。それを水で希釈して望むあらゆる濃度の懸濁液にすることができる。
【0179】
実施例F7:種子を処理するための流動可能な濃縮液
【0180】
表1〜12の化合物 40%
プロピレングリコール 5%
ブタノールPO/EOコポリマー 2%
EOが10〜20モルのトリスチレンフェノール 2%
1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(20%水溶液の形態) 0.5%
モノアゾ顔料カルシウム塩 5%
シリコーン油(水中の75%エマルジョンの形態) 0.2%
水 45.3%
【0181】
細かく粉砕した活性成分をアジュバントと密に混合すると懸濁濃縮液が得られ、それを水で希釈することによって望むあらゆる希釈度の懸濁液を得ることができる。このような希釈液をスプレーしたり、注いだりすることや、このような希釈液に浸したりすることで、生きている植物と植物増殖材料の処理と、微生物の感染防止ができる。
【0182】
生物での実施例:殺真菌作用
【0183】
実施例B-1:ポドスフェラ・レウコトリチャ/リンゴ(リンゴのうどん粉病菌)に対する作用
【0184】
発芽後5週間のリンゴの苗木cv.マッキントッシュ(登録商標)を、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、リンゴのうどん粉病菌に感染した植物をこの試験植物の上で揺することによってリンゴの苗木に接種する。光条件14/10時間(明/暗)のもとで22℃、相対湿度60%で12日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0185】
実施例B-2:ベンチュリア・イネクアリス/リンゴ(リンゴの赤かび病菌)に対する作用
【0186】
発芽後4週間のリンゴの苗木cv.マッキントッシュ(登録商標)を、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、胞子の懸濁液(4×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってリンゴの苗木に接種する。21℃、相対湿度95%で4日間というインキュベーション期間の後、苗を温室の中で21℃、相対湿度60%に4日間維持する。21℃、相対湿度95%でさらに4日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0187】
実施例B-3:エリシフェ・グラミニス/オオムギ(オオムギのうどん粉病菌)に対する作用
【0188】
発芽後1週間のオオムギの苗cv.エクスプレスを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、うどん粉病菌に感染した植物をこの試験植物の上で揺することによってオオムギの苗に接種する。温室の中に入れて20℃/18℃(昼/夜)、相対湿度60%で6日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0189】
実施例B-4:ボトリティス・キネレア/リンゴ(リンゴの果実の灰色かび病菌)に対する作用
【0190】
リンゴの果実cv.ゴールデン・デリシャスにドリルで穴を3つ開け、それぞれの穴に、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)の液滴30μlを満たす。その2時間後、ボトリティス・キネレアの胞子懸濁液50μl(4×105個の分生子/ml)をピペットでその付着部位に注ぐ。増殖室の中で22℃にして7日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0191】
実施例B-5:ボトリティス・キネレア/ブドウ(ブドウの灰色かび病菌)に対する作用
【0192】
発芽後5週間のブドウの苗木cv.グーテデルを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子懸濁液(1×106個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってブドウの苗木に接種する。温室の中に入れて21℃、相対湿度95%で4日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0193】
実施例B-6:ボトリティス・キネレア/トマト(トマトの灰色かび病菌)に対する作用
【0194】
発芽後4週間のトマトの苗木cv.ローター・グノムを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子の懸濁液(1×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってトマトの苗に接種する。20℃、相対湿度95%で4日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0195】
実施例B-7:ピレノフォラ・テレス/オオムギ(オオムギの網斑病菌)に対する作用
【0196】
発芽後1週間のオオムギの苗cv.エクスプレスを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子の懸濁液(3×104個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってオオムギの苗に接種する。20℃、相対湿度95%で2日間というインキュベーション期間の後、苗を温室の中で20℃、相対湿度60%に2日間維持する。接種してから4日後に病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0197】
実施例B-8:セプトリア・トリティキ/コムギ(コムギにおける斑点病菌)に対する作用
【0198】
発芽後2週間のコムギの苗cv.リバンドを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、胞子の懸濁液(10×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってコムギの苗に接種する。23℃、相対湿度95%で1日間というインキュベーション期間の後、苗を温室の中で23℃、相対湿度60%に16日間維持する。接種してから18日後に病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0199】
実施例B-9:ウンキヌラ・ネカトール/ブドウ(ブドウのうどん粉病菌)に対する作用
【0200】
発芽後5週間のブドウの苗木cv.グーテデルを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、ブドウのうどん粉病菌に感染した植物をこの試験植物の上で揺することによってブドウの苗木に接種する。光条件14/10時間(明/暗)のもとで26℃、相対湿度60%で7日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0201】
実施例B-10:アルテルナリア・ソラニ/トマト(トマトの夏枯病菌)に対する作用
【0202】
発芽後4週間のトマトの苗木cv.ローター・グノムを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子の懸濁液(2×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってトマトの苗に接種する。増殖室の中に入れて20℃、相対湿度95%で3日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.007(E形)、1.007(Z形)、1.024、1.025、1.079(E形)、1.079(Z形)、1.149(E形)、1.149(Z形)、2.025、2.079(E形)、2.079(Z形)が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物:
【化1】

と、その化合物の異性体および互変異性体(ただし一般式(I)において、
R1とR2は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R3で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのR3は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)のいずれかを表わす;あるいは
R1とR2は、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和していて、その環の1個、または2個、または3個の炭素原子は、酸素原子、および/または窒素原子、および/またはイオウ原子で置換されていてもよく、その環は、置換されていないか、1又は数個の置換基R4で置換されており;
各置換基R4は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのR5は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)のいずれかを表わし;
AはA1
【化2】

(ただしこのA1において、
R16はハロゲンメチルであり;
R17は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R18は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)である;あるいは
AはA2
【化3】

(ただしこのA2において、
R26はハロゲンメチルであり;
R27は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)である;あるいは
AはA3
【化4】

(ただしこのA3において、
R36はハロゲンメチルであり;
R37は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R38は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)である;あるいは
AはA4
【化5】

(ただしこのA4において、
R46はハロゲンメチルであり;
R47は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であり;
Bは、フェニル、ナフチル、キノリニルのいずれかであり、これらは1又は数個の置換基R7で置換されており;
各置換基R7は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C6〜C14ビシクロアルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、ヘテロアリール(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのR8は、互いに独立に、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、C3〜C6アルケニルオキシ、C3〜C6アルキニルオキシ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)のいずれかである)。
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物において、AがA1である化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物において、Bが、1又は数個の置換基R7で置換されたフェニル基である化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の一般式(I)の化合物において、各置換基R7が、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)のいずれかを表わす化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物において、AがA1であり、Bが、1又は数個の置換基R7で置換されたフェニル基であり、その置換基R7は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(H)=N(O-C1〜C6アルキル)、-C-(C1〜C6アルキル)=N(O-C1〜C6アルキル)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1又は数個の置換基R8で置換されている)のいずれかを表わす化合物。
【請求項6】
請求項3に記載の一般式(I)の化合物において、BがB1
【化6】

であり、その中のR17aは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17bは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17cは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17dは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R17eは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1又は数個のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;しかもR17a、R17b、R17c、R17d、R17eのうちの少なくとも1つは水素でない化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物において、R1とR2が、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている)のいずれかを表わすか;R1とR2が、これらの基が結合する炭素原子と合わさって5員、6員、7員いずれかの環を形成し、その環は部分的に飽和していて、その環は、置換されていないか、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1又は数個の置換基で置換されている化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物において、R1とR2が、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキルのいずれかを表わす化合物。
【請求項9】
有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止する方法であって、請求項1に記載の一般式(I)の化合物、または活性成分としてその化合物を含む組成物を、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法。
【請求項10】
植物病原性微生物を制御してその植物病原性微生物から保護するため、請求項1に記載の一般式(I)の化合物と、不活性な基剤とを含む組成物。

【公表番号】特表2009−539909(P2009−539909A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514704(P2009−514704)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005247
【国際公開番号】WO2007/144174
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】