説明

殺菌剤

【課題】殺菌力を低下させず、べとつきのない使用感と保湿効果による皮膚の保護を簡便に実現する殺菌剤を提供する。
【解決手段】少なくとも1種類のアルコールの濃度が25〜95質量%である水溶液中にトレハロース化合物が含有されていることを特徴とする殺菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場等の食品関連業界、病院等の医療関連業界において、主にヒトの皮膚を消毒するのに用いる殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品関連業界、医療関連業界等では、微生物汚染を防止するため手指等の殺菌が頻繁に行なわれる。殺菌方法としてはアルコール製剤、クレゾール液等による噴霧、アルコール製剤、クレゾール液等への浸漬洗浄等が知られている。この際、タオル等からの雑菌付着を防止するため、殺菌剤塗布後は自然乾燥、熱風乾燥を行なう。又、塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンのアルコール溶液を擦り込む方法は、液が迅速に乾燥するため、近時では用いられる機会が増加している。
【0003】
こうした、殺菌剤は必要に応じて1日に数回使用されるため、含まれている高濃度アルコールによる手荒れ等が問題となる。このため、多価アルコール等の保湿成分を含む殺菌剤(特許文献1参照)、シルクタンパクを含む除菌剤(特許文献2参照)、メチルフェニルポリシロキサンを含む殺菌剤(特許文献3参照)も提案されている。
【特許文献1】特開2000−355506公報
【特許文献2】特開2002−114616公報
【特許文献3】特開2003−267862公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高濃度アルコール含有殺菌剤は、アルコールが皮膚表面の皮脂を奪ってしまうため、頻繁な使用により手荒れを起こしやすい。又、保湿剤として多価アルコールを用いると、乾燥時にべたつきを生じる問題があった。又、シリコン系化合物、シルクタンパク等の天然物は高価であり、より安価な材料が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、殺菌力を低下させず、べとつきのない使用感と保湿効果による皮膚の保護を簡便に実現する殺菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水、アルコールからなる殺菌液に保湿効果を有するトレハロース化合物を加えることにより、保湿効果が高く、快適な使用感を持つ殺菌剤が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明は下記の構成からなる。
(1)アルコール濃度が25〜95質量%であるアルコール水溶液中にトレハロース化合物が含有されていることを特徴とする殺菌剤。
【0008】
(2)アルコールがエタノール及び/又はイソプロパノールである上記(1)に記載の殺菌剤。
(3)トレハロース化合物濃度が0.01〜5質量%である上記(1)又は(2)に記載の殺菌剤。
【0009】
(4)トレハロース化合物水溶液にアルコールを添加し、所定のアルコール濃度及び所定のトレハロース化合物濃度に調整することを特徴とする殺菌剤の調製方法。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の殺菌剤を生体表面に塗布し除菌消毒することを特徴とする殺菌方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の殺菌剤は、アルコールの持つ優れた殺菌効果に加え、トレハロース化合物による保湿効果により、べとつきのない使用感と保湿効果による皮膚の保護を備えた殺菌剤として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明に使用するアルコールは、一般に殺菌剤として用いられているアルコール類を適宜使用することができる。具体例としてはエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等の1価低級脂肪族アルコールが挙げられる。食品関連での殺菌には安全性の面からエタノールが好ましく、価格面ではイソプロパノールが好ましい。これらのアルコール類は単独、又は2種類以上組み合わせて用いることが可能である。通常は、アルコール水溶液として使用し、殺菌剤中のアルコール濃度は25〜95質量%、好ましくは70〜90質量%である。アルコール濃度が25質量%未満では速乾性が低く作業性が低下するとともに、殺菌効果が薄れるので好ましくない。アルコール濃度が95質量%を超えると殺菌効果が低下し、手荒れも生じるので好ましくない。
【0012】
本発明に使用するトレハロース化合物は、これまでは非常に高価な物質であったが、でんぷんを原料とし酵素反応及び水素添加により大量生産する技術が確立したことにより安価に大量に入手可能となった。
【0013】
トレハロース化合物は、2分子のD−グルコースが還元性基同士で結合したものを言い、α,α−トレハロース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロース、トレハロース骨格にグルコースが更にα−1.4結合したグルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース及びマルトトレオシルトレハロース等が知られている。これらの中ではα,α−トレハロースが好ましい。
【0014】
これらのトレハロース化合物は甘味料として食品に添加されていたが、保湿効果が高いことがわかり、凍結細胞の保護等にも応用されている。
【0015】
本発明に用いるトレハロース化合物の殺菌剤中の濃度は0.01〜5質量%であり、好ましくは0.1〜2質量%である。0.01質量%未満ではトレハロース化合物の保湿効果が不十分であり、5質量%を超えるとべたつきを感じるようになり好ましくない。
【0016】
本発明に用いるトレハロース化合物は、アルコールに対する溶解度が水に対する溶解度に比べて低い。このため、本発明の殺菌剤は、まずトレハロース化合物の水溶液を調製し、次に本水溶液にアルコールを添加し、所定のアルコール濃度、トレハロース化合物濃度に調整することで容易に製造することができる。
【0017】
本発明に用いられる水は、水道水、地下水、蒸留水、イオン交換精製水等を使用することができるが、好ましくは蒸留水、イオン交換精製水が用いられる。
【0018】
本発明は主に皮膚等の生体表面を殺菌する際に、生体表面の保湿性を保持することを目的としているが、通常の殺菌剤と同様に台所、浴室、トイレ、自動車内部、家具等の殺菌に使用することもできる。又、本殺菌剤の施用としては、エアゾール容器による噴霧、布等に染み込ませてのふき取り、貯液容器内での洗浄等の周知の方法を用いることが可能である。
【実施例】
【0019】
以下に実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
α,α−トレハロース1質量部を蒸留水24質量部に溶解させた後、局方エタノール75質量部を加え殺菌剤とした。
実施例2
局方エタノールに代えてイソプロパノールとした他は実施例1と同様である。
実施例3
α,α−トレハロース1質量部を蒸留水19質量部に溶解させた後、局方エタノール40質量部、イソプロパノール40質量部を加え殺菌剤とした。
【0020】
比較例1
トレハロース化合物を用いずに、局方エタノール75質量部と蒸留水25質量部のみで殺菌剤を調製した。
比較例2
局方エタノールに代えてイソプロパノールとした他は比較例1と同様である。
【0021】
[殺菌剤の評価]
実施例1〜3及び比較例1〜2の殺菌剤を用いて評価を行った。殺菌剤を手に塗りその時の手の感覚で判断した。
(1)べたつき
×:べたつき感がある
○:べたつき感がない
(2)手荒れ
×:塗った後の手の表面が白くなる
○:塗った後の手の表面が白くならない
(3)保湿性
×:保湿性がない
○:保湿性がある
【0022】
表1に実施例1〜3及び比較例1〜2の結果を示した。尚、表中の%は質量%である。実施例1〜3に示されたいずれの場合においても、十分な殺菌効果を示すとともに、べたつき、手荒れが少なく、保湿性の高い殺菌剤が得られた。比較例1〜2に示された殺菌剤は、殺菌効果は有するが、使用後の手荒れ及び保湿性について劣っていた。本発明の殺菌剤は、殺菌効果が高いとともに皮膚保護効果にも優れている。
【0023】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、食品関連業界、医療関連業界等での手指等の皮膚殺菌において、皮膚へのダメージが小さく、十分な殺菌効果をもつ殺菌剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール濃度が25〜95質量%であるアルコール水溶液中にトレハロース化合物が含有されていることを特徴とする殺菌剤。
【請求項2】
アルコールがエタノール及び/又はイソプロパノールである請求項1に記載の殺菌剤。
【請求項3】
トレハロース化合物濃度が0.01〜5質量%である請求項1又は2に記載の殺菌剤。
【請求項4】
トレハロース化合物水溶液にアルコールを添加し、所定のアルコール濃度及び所定のトレハロース化合物濃度に調整することを特徴とする殺菌剤の調製方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌剤を生体表面に塗布し除菌消毒することを特徴とする殺菌方法。

【公開番号】特開2006−151825(P2006−151825A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340546(P2004−340546)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】